説明

画像形成装置、画像形成システム、及び画像読み取り方法

【課題】
読取装置による読み取り動作を繰り返し行ったとしても、地紋データに基づく画像に損傷を与えることがなく、読み取り不良となることを防ぐことが可能な画像形成装置、画像形成システム、及び画像読み取り方法の提供。
【解決手段】
印刷画像データから地紋データと通常画像データとを分離するデータ分離部と、地紋データに基づく画像が、通常画像データに基づく画像に対して鏡像の関係となるように地紋データを鏡面反転させるデータ反転部と、印刷画像データに基づく画像を媒体の両面に形成する画像形成部と、制御部は、通常画像データに基づく画像を媒体の片方の面に形成させるとともに、データ反転部により反転処理された地紋データに基づく画像を媒体の他方の面にそれぞれ分離して形成するように画像形成部を制御する制御部とを画像形成装置、画像形成システム、及びこれらにより形成された画像の読み取り方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、画像形成システム、及び画像読み取り方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、紙面等の媒体面に印刷された地紋データに基づく画像を読み取って、当該画像に対応したデータを出力する技術が知られている。これらの技術には、画像の印刷にカーボンを含有するブラックのトナーが用いられる。これは、カーボンが赤外線を吸収する性質を利用したものであり、読取装置は赤外線を照射し、その吸収パターンの差異から画像を読み取っている。したがって、例えば、4色(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)のトナーを用いてカラー画像を形成する画像形成装置においては、地紋データに基づく画像以外の通常画像の印刷には、カーボンを含有しないシアン、マゼンタ、イエローの3色のトナーが用いられるのが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−102325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、利用者が目視にて読み取る通常画像と、赤外線を使用して読み取る地紋データに基づく画像とが同一面に印刷された媒体を、読取装置で繰り返して読み取り動作を行った場合、地紋データに基づく画像を構成するトナーが読取装置との接触により剥がれ落ちてしまい、該画像の読み取りが出来なくなってしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、読取装置による読み取り動作を繰り返し行ったとしても、地紋データに基づく画像に損傷を与えることがなく、読み取り不良となることを防ぐことが可能な画像形成装置、画像形成システム、及び画像読み取り方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る画像形成装置は、地紋データを含む印刷画像データから該地紋データと通常画像データとを分離するデータ分離部と、前記データ分離部により分離された前記地紋データに基づく画像が、前記通常画像データに基づく画像に対して鏡像の関係となるように前記地紋データを鏡面反転させるデータ反転部と、前記印刷画像データに基づく画像を媒体の両面に形成する画像形成部と、前記画像形成部を制御する制御部とを有し、
前記制御部は、前記通常画像データに基づく画像を前記媒体の片方の面に形成させるとともに、前記データ反転部により反転処理された前記地紋データに基づく画像を前記媒体の他方の面にそれぞれ分離して形成するように前記画像形成部を制御することを特徴としている。
【0007】
また、本発明に係る画像形成システムは、所定のアプリケーションにより作成された印刷画像データから地紋データと通常画像データとを分離するデータ分離部と、前記地紋データに基づく画像が、前記通常画像データに基づく画像に対して鏡像の関係となるように前記地紋データを鏡面反転させるデータ反転部と、前記印刷画像データに基づく画像を媒体の両面に形成する画像形成部と、前記通常画像データに基づく画像を前記媒体の片方の面に形成させるとともに、前記データ反転部により反転処理された前記地紋データに基づく画像を前記媒体の他方の面にそれぞれ分離して形成するように前記画像形成部を制御する制御部とを有することを特徴としている。
【0008】
さらにまた、本発明に係る画像読み取り方法は、地紋データに基づく画像を媒体の一方の面に反転させて形成する工程と、前記地紋データに基づく画像を前記媒体の他方の面側から読み取る工程とを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、読取装置による読み取り動作を繰り返し行ったとしても、地紋データに基づく画像に損傷を与えることがなく、読み取り不良となることを防ぐことが可能な画像形成装置、画像形成システム、及び画像読み取り方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】プリンタの機能構成を説明するブロック図である。
【図2】作成された印刷画像データの構成例を示す図である。
【図3】実施形態に係る主動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】図3のフローチャートにおけるステップS104、並びにステップS109に係る画像作成処理を説明するためのフローチャートである。
【図5】実施形態に係る両面印刷時の媒体搬送機構を説明するための概略構成図である。
【図6】実施形態に係る画像イメージの向きを説明する図である。
【図7】スキャナによる地紋イメージの読み取り動作を説明する図である。
【図8】図7における読み取り動作を説明するための媒体に印刷された画像イメージの断面図である。
【図9】プリンタの機能構成を説明するブロック図である。
【図10】図3のフローチャートにおけるステップS104、並びにステップS109に係る画像作成処理を説明するためのフローチャートである。
【図11】実施形態に係る両面印刷時の媒体搬送機構を説明するための概略構成図である。
【図12】スキャナによる地紋イメージの読み取り動作を説明する図である。
【図13】図12における読み取り動作を説明するための媒体に印刷された画像イメージの断面図である。
【図14】他の形態における読み取り動作を説明するための媒体に印刷された画像イメージの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、本発明は、以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨に逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0012】
[第1の実施形態]
図1は、本実施形態に係る画像形成装置としてのプリンタ100の機能構成を説明するブロック図である。プリンタ100は、例えば、LAN(Local Area Network)ケーブル等の通信線3を介して接続された情報端末としてのPC(Personal Computer)1から送信された、地紋データと通常画像データとを含む印刷画像データに基づく画像を媒体に印刷することが可能な画像形成装置である。
【0013】
プリンタ100は、受信部としてのデータ受信部101と、データ編集部102と、データ分離部としての分離部104、通常画像作成部105、地紋データ作成部106、及びデータ反転部としての反転部107を有する制御部103と、エンジン制御部108と、エンジン部109と、両面制御部112と、受信バッファ113と、画像イメージバッファ114と、媒体収容部115と、反転済み媒体収容部116と、表示部Bとを備える。
【0014】
データ受信部101は、例えば、LANケーブル等の通信線3に接続可能なインタフェースを備え、PC1から送信された印刷画像データを受信する。そして、データ受信部101は、受信した印刷画像データを後述する受信バッファ113に格納させ、該印刷画像データの格納完了の旨をデータ編集部102に通知する。なお、PC1により作成される印刷画像データについては後ほど説明する。
【0015】
データ編集部102は、データ受信部101から印刷画像データの格納完了の旨の通知を受けると、格納された印刷画像データを受信バッファ113から読み出し、これを解析して、画像データの種別を判別する。そして、データ編集部102は、判別した種別の画像データの作成を制御部103に対して通知する。
【0016】
制御部103は、以下に説明する分離部104、通常画像作成部105、地紋データ作成部106、並び反転部107を有する。制御部103は、図示せぬCPU(Central Processing Unit)等の演算手段を備え、図示せぬROM(Read Only Memory)等の記憶装置に格納された制御プログラムを実行することにより、分離部104、通常画像作成部105、地紋データ作成部106、並び反転部107の機能を実現する。
【0017】
分離部104は、データ編集部102から通知を受けた種別の画像データを印刷画像データから分離し、対応する画像データを作成するように通常画像作成部105、又は地紋データ作成部106に対して指示を与える。
【0018】
通常画像作成部105は、分離部104からの指示に基づき、利用者が目視にて読み取るための画像(通常画像イメージ)の基となる通常画像データを分離部104により分離された印刷画像データから作成し、これを画像イメージバッファ114に格納させ、格納完了の旨をエンジン制御部108に通知する。
【0019】
地紋データ作成部106は、分離部104からの指示に基づき、専用の読取装置にて読み取らせる画像(地紋イメージ)の基となる地紋データを分離部104により分離された印刷画像データから作成する。
【0020】
反転部107は、地紋データ作成部106により作成された地紋データに基づく地紋イメージが、通常画像イメージに対して鏡像の関係となるように地紋データを鏡面反転させ、さらに180度回転させて上下反転させる。そして、反転処理された地紋データ(以下、反転地紋データと称する)を画像イメージバッファ114に格納させ、格納完了の旨をエンジン制御部108に通知する。
【0021】
エンジン制御部108は、通常画像作成部105、又は反転部107からの通知を受け、画像イメージバッファ114に格納された通常画像データ、又は反転地紋データに基づく画像イメージを印刷するようエンジン部109に指示を与えるとともに、両面制御部112に対して媒体の画像形成面の裏面への反転の指示を与える。
【0022】
エンジン部109は、赤外線を吸収するカーボンを含有したブラックのトナーが貯蔵され、反転地紋データに基づく地紋イメージを印刷する画像形成ユニット110K、及びイエローのトナー、マゼンタのトナー、シアンのトナーがそれぞれが貯蔵され、通常画像データに基づく通常画像イメージを印刷する画像形成ユニット110Y、110M、110Cを備えた画像形成部110と、画像形成部110により媒体上に印刷された画像イメージに熱、及び圧力を付与することにより定着させる定着部111とを備える。
【0023】
両面制御部112は、エンジン制御部108からの指示に基づき、図示せぬ駆動ローラを制御して、媒体の画像形成面の裏表を反転させる。
【0024】
受信バッファ113、及び画像イメージバッファ114は、例えば、図示せぬRAM(Random Access Memory)や、フラッシュメモリ等の書き換え可能な記憶装置等から構成され、受信バッファ113は受信した印刷画像データを、画像イメージバッファ114は通常画像データ、又は反転地紋データをそれぞれ格納する。なお、受信バッファ113、及び画像イメージバッファ114は、それぞれ独立した記憶装置として構成してもよいが、単一の記憶装置が備える記憶領域を各バッファ領域毎に区分して構成する形態としてもよい。
【0025】
媒体収容部115は、印刷前の媒体を収容する容器であり、反転済み媒体収容部116は、両面制御部112の制御により画像形成面の裏表が反転した媒体を一時的に収納する容器である。
【0026】
表示部Bは、プリンタ100の状態を表示するための、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示装置を備える。
【0027】
このような構成を有するプリンタ100に対して通信線3を介して接続されるPC(Personal Computer)1は、少なくとも、印刷画像データを作成する印刷画像データ作成部、並びに該印刷画像データ作成部により作成された印刷画像データをプリンタ100に対して送信する送信部としての機能を有する、例えば、文書作成、図表作成のための文書・図表作成アプリケーションソフト2(AP2)を備えた情報端末である。
【0028】
図2は、PC1のAP2により作成された印刷画像データの構成例を示す図である。本実施形態に係る印刷画像データは、ジョブの開始符号200に続き、通常画像データの開始符号201から地紋データの開始符号202前までが通常画像データとして構成される。そして、地紋データ開始符合202から印刷開始符号203前までが地紋データとして構成され、1ページ分のジョブの終了は、終了符号204によって示される。プリンタ100の通常画像作成部105は、通常画像データの開始符号201から地紋データの開始符号202前までのデータに基づき通常画像データを、地紋データ作成部106は、地紋データ開始符合202から印刷開始符号203前までのデータに基づき地紋データを作成する。
【0029】
次に、本実施形態に係る主動作について図3のフローチャートを用いて説明する。まず、PC1がAP2によって作成された印刷画像データを送信すると、プリンタ100は、データ受信部101を介してこれを受信する(ステップS100)。
【0030】
そして、データ受信部101は、受信した印刷画像データを受信バッファ113に格納させ(ステップS101)、該印刷画像データの格納完了の旨をデータ編集部102に通知する(ステップS102)。
【0031】
次に、ステップS103において、データ編集部102は印刷画像データの格納完了の旨の通知を受けると、データ編集処理を開始する。具体的には、データ編集部102は、図2で説明した印刷画像データにおいて、1ページ分の通常画像データの編集を行い、制御部103の分離部104に対して画像データの種別たる通常画像データの作成を通知する。
【0032】
通常画像データの作成の通知を受けた分離部104は、通常画像作成部105に対して通常画像データの作成を指示する(ステップS104)。なお、ステップS104に係る処理については、後ほど説明する。
【0033】
通常画像作成部105により通常画像データが作成され、画像イメージバッファ114に格納されると、この旨の通知を受けたエンジン制御部108は、画像イメージバッファ114に格納された通常画像データに基づく通常画像イメージを媒体に印刷するようエンジン部109に指示を与える(ステップS105)。
【0034】
指示を受けたエンジン部109は、媒体収容部115に収容された媒体の画像形成面に通常画像イメージを印刷する(ステップS106)。このとき、エンジン制御部108は、画像形成ユニット110Y、110M、110Cを用いて通常画像イメージの画像形成をさせる。
【0035】
通常画像イメージの印刷後、エンジン制御部108は、両面制御部112に対して媒体の画像形成面の裏面への反転の指示を与える。指示を受けた両面制御部112は、図示せぬ駆動ローラを制御して、媒体の画像形成面の裏表を反転させ、反転後の媒体を反転済み媒体収容部116に収容させる(ステップS107)。
【0036】
次に、ステップS108において、データ編集部102は、図2で説明した印刷画像データにおいて、1ページ分の地紋データの編集を行い、制御部103の分離部104に対して画像データの種別たる地紋データの作成を通知する。
【0037】
地紋データの作成の通知を受けた分離部104は、地紋データ作成部106に対して地紋データの作成を指示する(ステップS109)。なお、ステップS109に係る処理については、後ほど説明する。
【0038】
地紋データ作成部106による地紋データの作成後、反転部107により反転処理されて生成した反転地紋データが画像イメージバッファ114に格納されると、この旨の通知を受けたエンジン制御部108は、画像イメージバッファ114に格納された反転地紋データに基づく地紋イメージを媒体に印刷するようエンジン部109に指示を与える(ステップS110)。
【0039】
指示を受けたエンジン部109は、反転済み媒体収容部116に収容された媒体の画像形成面に地紋イメージを印刷し(ステップS111)、一連の処理を終了する。このとき、エンジン制御部108は、画像形成ユニット110Kを用いて地紋イメージの画像形成をさせる。
【0040】
次に、図3のフローチャートにおけるステップS104、並びにステップS109に係る画像作成処理について図4のフローチャートを用いて説明する。
【0041】
図3のステップS103において、データ編集部102から通常画像データの作成の通知を受けた場合、分離部104は、通常画像データの開始符号201から地紋データの開始符号202前までのデータを印刷画像データから分離する(ステップS112)。
【0042】
そして、通常画像作成部105は、分離部104により分離された印刷画像データに基づき、シアン、マゼンタ、イエローの3色によって通常画像データを作成する(ステップS113)。
【0043】
一方、図3のステップS108において、データ編集部102から地紋データの作成の通知を受けた場合、分離部104は、地紋データ開始符合202から印刷開始符号203前までのデータまでのデータを印刷画像データから分離する(ステップS112)。
【0044】
そして、地紋データ作成部106は、分離部104により分離された印刷画像データに基づき、カーボンを含むブラックの色によって地紋データを作成する(ステップS114)。
【0045】
次に、反転部107は、地紋データ作成部106により作成された地紋データに基づく地紋イメージが、通常画像イメージに対して鏡像の関係となるように地紋データを鏡面反転させ(ステップS115)、さらに180度回転させて上下反転させ、反転地紋データを生成する(ステップS116)。
【0046】
ここで、本実施形態に係る両面印刷時の媒体搬送機構について図5を用いて説明する。前述したように、本実施形態に係るプリンタ100のエンジン部109は、赤外線を吸収するカーボンを含有したブラックのトナーが貯蔵され、反転地紋データに基づく地紋イメージを印刷する画像形成ユニット110K、及びイエローのトナー、マゼンタのトナー、シアンのトナーがそれぞれが貯蔵され、通常画像データに基づく通常画像イメージを印刷する画像形成ユニット110Y、110M、110Cを備えた画像形成部110を備える。
【0047】
媒体収容部115から給紙された媒体は、経路212にて装置内を通過し、画像形成ユニット110Y、110M、110Cにより、画像形成面たる片方の面に通常画像イメージが印刷され、定着部111において該通常画像イメージが定着される。通常画像イメージの定着後、媒体は経路213まで進んだ所でその後端部から経路214、経路215にて装置内に引き戻され、反転済み媒体収容部116に収容される。
【0048】
このため、片方の面に印刷された通常画像イメージの方向に対して、媒体の搬送方向の上下は逆の向きとなっている。そして、反転済み媒体収容部116から給紙された媒体は、経路216にて、画像形成面が他方の面に反転し、画像形成ユニット110Kにより地紋イメージが印刷され、定着部111において該地紋イメージが定着後、経路217にてスタッカAに排出される。
【0049】
ところで、地紋イメージを媒体に印刷して、読取装置にて読み取る場合には、地紋イメージが媒体面に正確に配置されている必要がある。両面印刷を行う場合に、地紋イメージを印刷し後に、通常画像イメージを印刷すると、地紋イメージが印刷された媒体が、2度定着部を通過することになり、定着熱等の影響により地紋イメージが収縮する可能性があるため、本実施形態においては、先に通常画像イメージを印刷した後に、地紋イメージを印刷することとしている。しかしながら、連続印刷等で媒体の印刷順通りに印刷物を得る必要がある場合には、印刷の順を逆にしてもかまわない。
【0050】
図6は、本実施形態に係る画像イメージの向きを説明する図である。図6(a)は、通常画像イメージの印刷向きを表したものであり、媒体の表面となる。図6(b)は、通常画像イメージを媒体の表面に印刷した後に、両面制御部112の制御により、裏面に反転され、反転済み媒体収容部116から再び経路212に給紙された状態を表しており、媒体の表面の後端部が裏面の先端部となるように裏返されている。図6(c)は、地紋イメージを媒体の表面に印刷した場合の状態を表している。なお、本来の地紋イメージは、該地紋イメージが適用される領域に対し一様に印刷されることが一般的であるが、媒体が反転された状態を説明するため、本図では、「あ」、「い」などの形状で説明している。図6(d)は、通常画像イメージが印刷される表面側から媒体を透かして見た際に、正規の地紋イメージとなるようにするため、地紋イメージの左右を反転させた鏡像を表しており、図6(e)では、更に、180度回転させて上下反転させた状態を表している。すなわち、図6(e)は、反転済み媒体収容部116に収容された媒体に地紋イメージを印刷したときの状態を表している。図6(f)は、先に表面に通常画像イメージを印刷した媒体の裏面に、反転された地紋イメージを印刷した状態を表しており、これを媒体の表面側から見た状態を表したのが図6(g)である。すなわち、本実施形態によれば、表面側から媒体を透かして見た裏面側の地紋イメージも正規の向きで印刷される結果となる。
【0051】
次に、表面に通常画像イメージを印刷し、裏面に反転された地紋イメージを印刷した媒体に対して、媒体の表面側から裏面に印刷した地紋イメージを読取装置としてのスキャナで読み取る動作について図7を用いて説明する。
【0052】
本実施形態においては、裏面に反転された地紋イメージ240が印刷された媒体231を赤外線を反射する赤外線反射手段としての下敷きの様な素材230に重ねて配置した状態で、PC233に信号線235を介して接続されたスキャナ232を媒体231に接触させて地紋イメージ240の読み取りを行う。ここで、赤外線反射手段としては、下敷きの様な素材230に限らず、単に媒体231を載置する机のようなものであってもかまわない。また、ここでいう赤外線反射手段は、厳密に赤外線を反射させるものでなくてもよく、地紋イメージがスキャナ232で読み取れればよい。
【0053】
なお、PC233には、スキャナ232で読み取った地紋イメージに対応する地紋データを認識するための専用のアプリケーションソフト234(AP234)アプリケーションが備えられており、該AP234は、認識された地紋データに応じたアクションに関連づけしたテーブル236を有する。
【0054】
図8は、図7における読み取り動作を説明するための媒体に印刷された画像イメージの断面図である。スキャナ232は、媒体231の表面に印刷された通常画像イメージ241に接触することにより、媒体231の裏面に印刷された地紋イメージ240を読み取るようになっている。すなわち、図7において、スキャナ232は、媒体231の表面の通常画面イメージ241たるコーヒーの図柄を読み取っているように見えるが、実際にはその裏面に印刷された地紋イメージ240たる「あ」を読み取っている。そして、該「あ」に対応するアクションとして、PC233は、テーブル236を参照してコーヒーが注文されたことを認識する。
【0055】
以上のように、第1の実施形態によれば、地紋イメージを媒体の裏面に印刷することにより、読取装置による読み取り動作を繰り返し行ったとしても、地紋イメージに損傷を与えることがなく、読み取り不良となることを防ぐことができる。また、一般的な印刷媒体を用いて簡単に読取装置から地紋イメージを保護することができる。
【0056】
なお、本実施形態では、PC1から送信された印刷画像データから通常画像データと地紋データとを分離して媒体のそれぞれの面に印刷する形態について説明したが、PC1において通常画像データと地紋画像データとを分離し、それぞれの印刷面に合致するように印刷向きを調整した一組のデータをプリンタ100に送信する形態としてもかわまない。
【0057】
[第2の実施形態]
第2の実施形態に係るプリンタ300の構成は、第1の実施形態に係るプリンタ100の構成と略同一であり、また、プリンタ300の主動作についても図3で説明したフローチャートに基づき同様に実行することができる。したがって、同一の箇所には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0058】
図9は、プリンタ300の機能構成を説明するブロック図である。プリンタ300は、第1の実施形態に係るプリンタ100の構成に加え、赤外線反射手段としての反射データ作成部301を備える。
【0059】
反射データ作成部301は、地紋イメージ上に赤外線を反射させる面を印刷するための画像イメージ(赤外線反射画面イメージ)を追加する。
【0060】
図10は、第2の実施形態における、図3のステップS104、並びにステップS109に係る画像作成処理を説明するフローチャートである。
【0061】
図3のステップS103において、データ編集部102から通常画像データの作成の通知を受けた場合、分離部104は、通常画像データの開始符号201から地紋データの開始符号202前までのデータを印刷画像データから分離する(ステップS200)。
【0062】
そして、通常画像作成部105は、分離部104により分離された印刷画像データに基づき、シアン、マゼンタ、イエローの3色によって通常画像データを作成する(ステップS201)。
【0063】
一方、図3のステップS108において、データ編集部102から地紋データの作成の通知を受けた場合、分離部104は、地紋データ開始符合202から印刷開始符号203前までのデータまでのデータを印刷画像データから分離する(ステップS200)。
【0064】
そして、地紋データ作成部106は、分離部104により分離された印刷画像データに基づき、カーボンを含むブラックの色によって地紋データを作成する(ステップS202)。
【0065】
次に、反転部107は、地紋データ作成部106により作成された地紋データに基づく地紋イメージが、通常画像イメージに対して鏡像の関係となるように地紋データを鏡面反転させ(ステップS203)、さらに180度回転させて上下反転させ、反転地紋データを生成する(ステップS204)。
【0066】
さらに、反射データ作成部301は、赤外線を反射する特性を備えたホワイト色で全面を印刷するための赤外線反射画面イメージを地紋イメージに追加し、画像イメージバッファ114に格納する。
【0067】
次に、本実施形態に係る両面印刷時の媒体搬送機構について図11を用いて説明する。本実施形態に係るプリンタ300のエンジン部109は、赤外線を吸収するカーボンを含有したブラックのトナーが貯蔵され、反転地紋データに基づく地紋イメージを印刷する画像形成ユニット110K、赤外線を反射する特性を有するホワイトのトナーが貯蔵され、反転地紋データに基づく地紋イメージの全面に亘って赤外線反射画面イメージを印刷する画像形成ユニット110W、及びイエローのトナー、マゼンタのトナー、シアンのトナーがそれぞれが貯蔵され、通常画像データに基づく通常画像イメージを印刷する画像形成ユニット110Y、110M、110Cを備えた画像形成部110を備える。
【0068】
媒体収容部115から給紙された媒体は、経路212にて装置内を通過し、画像形成ユニット110Y、110M、110Cにより、画像形成面たる片方の面に通常画像イメージが印刷され、定着部111において該通常画像イメージが定着される。通常画像イメージの定着後、媒体は経路213まで進んだ所でその後端部から経路214、経路215にて装置内に引き戻され、反転済み媒体収容部116に収容される。
【0069】
このため、片方の面に印刷された通常画像イメージの方向に対して、媒体の搬送方向の上下は逆の向きとなっている。そして、反転済み媒体収容部116から給紙された媒体は、経路216にて、画像形成面が他方の面に反転し、画像形成ユニット110Kにより地紋イメージが印刷され、さらに、画像形成ユニット110Wにより赤外線反射画面イメージが印刷され、定着部111において両画像イメージが定着後、経路217にてスタッカAに排出される。
【0070】
次に、表面に通常画像イメージを印刷し、裏面に反転された地紋イメージ、及び赤外線反射画面イメージを印刷した媒体に対して、媒体の表面側から裏面に印刷した地紋イメージを読取装置としてのスキャナで読み取る動作について図12を用いて説明する。
【0071】
本実施形態においては、裏面に反転された地紋イメージ240、及び赤外線反射画面イメージ242が印刷された媒体231をPC233に信号線235を介して接続されたスキャナ232を媒体231に接触させて地紋イメージ240の読み取りを行う。ここで、赤外線反射手段として赤外線反射画面イメージ242が地紋イメージ上に印刷されているため、第1の実施形態において説明した、下敷きの様な素材230を用いる必要はない。
【0072】
なお、PC233には、スキャナ232で読み取った地紋イメージに対応する地紋データを認識するための専用のアプリケーションソフト234(AP234)アプリケーションが備えられており、該AP234は、認識された地紋データに応じたアクションに関連づけしたテーブル236を有する。
【0073】
図13は、図12における読み取り動作を説明するための媒体に印刷された画像イメージの断面図である。スキャナ232は、媒体231の表面に印刷された通常画像イメージ241に接触することにより、媒体231の裏面に印刷された地紋イメージ240を読み取るようになっている。すなわち、図13において、スキャナ232は、媒体231の表面の通常画面イメージ241たるコーヒーの図柄を読み取っているように見えるが、実際にはその裏面に印刷された地紋イメージ240たる「あ」を読み取っている。そして、該「あ」に対応するアクションとして、PC233は、テーブル236を参照してコーヒーが注文されたことを認識する。
【0074】
以上のように、第2の実施形態によれば、地紋イメージを赤外線を反射させるための反射画面イメージとともに媒体に印刷することにより、第1の実施形態に係る効果に加え、赤外線を反射させる素材を媒体に重ね合わせてから地紋イメージを読み取るという手間を省くことができ、簡単に読み取り操作を行うことができる。
【0075】
ところで、第1の実施形態、第2の実施形態の説明においては、スイッチバックによる反転方法を用いて媒体の一方の面に通常画像イメージを印刷し、もう一方の面に地紋画像イメージを印刷する例について述べた。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、図11に示すように、媒体収容部115で通常画像イメージを印刷しスタッカAに排紙した後、通常画像イメージを印刷して排紙された媒体に地紋画像イメージを再度印刷するために、表示部Bに例えば、図6(b)の方向を示して媒体のセット方向を示唆し、再度、媒体収容部115から媒体を繰り出して地紋画像イメージを形成するようにしてもよい。このとき、地紋イメージのセット方向によっては(例えば、図6(b)を上下反転させてセットした場合)、地紋画像イメージは鏡面反転のみでよく、上下反転させなくてもよい。
【0076】
また、第1の実施形態、第2の実施形態の説明においては、簡易な方法で本発明の効果が得られるようにするために、一般的に市販されている印刷用紙を媒体として用いる例として示した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、透明フィルムを媒体として用いる場合は、図14に示すように、媒体としての透明フィルム331の一方の面に鏡像反転した通常画像イメージ341を画像形成し、その後、同じ面側に鏡像反転した地紋画像イメージ340を重ねて形成し、更に、地紋画像イメージ340に重ねて赤外線反射用画像イメージ342を重ねて、地紋画像イメージ340が形成された反対側から読取装置332によって読み取る形態としてもかまわない。
【0077】
さらにまた、第1の実施形態、第2の実施形態の説明においては、画像形成装置側で印刷画像データから通常画像データと地紋データとを分離する形態を用いて説明したが、本発明は、通常画像データと地紋データとの分離を上位装置側で行いプリンタは、上位装置で分離された通常画像データと地紋データとのそれぞれを媒体の表面、裏面に印刷する形態としてもかまわない。
【符号の説明】
【0078】
1 PC
2 AP
3 信号線
100、300 プリンタ
101 データ受信部
102 データ編集部
103 制御部
104 データ分離部
105 通常画像作成部
106 地紋データ作成部
107 反転部
108 エンジン制御部
109 エンジン部
112 両面制御部
113 受信バッファ
114 画像イメージバッファ
115 媒体収容部
116 反転済み媒体収容部
110K、110Y、110M、110C、110W 画像形成ユニット
111 定着部
301 反射データ作成部
A スタッカ
B 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地紋データを含む印刷画像データから該地紋データと通常画像データとを分離するデータ分離部と、
前記データ分離部により分離された前記地紋データに基づく画像が、前記通常画像データに基づく画像に対して鏡像の関係となるように前記地紋データを鏡面反転させるデータ反転部と、
前記印刷画像データに基づく画像を媒体の両面に形成する画像形成部と、
前記画像形成部を制御する制御部とを有し、
前記制御部は、前記通常画像データに基づく画像を前記媒体の片方の面に形成させるとともに、前記データ反転部により反転処理された前記地紋データに基づく画像を前記媒体の他方の面にそれぞれ分離して形成するように前記画像形成部を制御すること
を特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記地紋データに基づく画像と重なる位置に前記地紋データに基づく画像に用いられる色材とは異なる色材を用いて赤外線反射用画像を作成する画像作成部を備え、
前記制御部は、前記媒体の他方の面に前記地紋データに基づく画像と前記赤外線反射用画像とを重ねて形成するように前記画像形成部を制御すること
を特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記データ反転部は、前記地紋データを鏡面反転させ、さらに上下反転させること
を特徴とする請求項1、又は請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記データ反転部は、スイッチバックにより前記媒体を反転させることにより前記地紋データの反転を行うこと
を特徴とする請求項3記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記地紋データに基づく画像は、赤外線を吸収する色材により形成されること
を特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記赤外線反射用画像は、白色の色材を有する画像形成部によって形成される画像であること
を特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項7】
所定のアプリケーションにより作成された印刷画像データから地紋データと通常画像データとを分離するデータ分離部と、
前記地紋データに基づく画像が、前記通常画像データに基づく画像に対して鏡像の関係となるように前記地紋データを鏡面反転させるデータ反転部と、
前記印刷画像データに基づく画像を媒体の両面に形成する画像形成部と、
前記通常画像データに基づく画像を前記媒体の片方の面に形成させるとともに、前記データ反転部により反転処理された前記地紋データに基づく画像を前記媒体の他方の面にそれぞれ分離して形成するように前記画像形成部を制御する制御部とを有すること
を特徴とする画像形成システム。
【請求項8】
前記地紋データに基づく画像と重なる位置に前記地紋データに基づく画像に用いられる色材とは異なる色材を用いて赤外線反射用画像を作成する画像作成部を備え、
前記制御部は、前記媒体の他方の面に前記地紋データに基づく画像と前記赤外線反射用画像とを重ねて形成するように前記画像形成部を制御すること
を特徴とする請求項7記載の画像形成システム。
【請求項9】
前記データ反転部は、前記地紋データを鏡面反転させ、さらに上下反転させること
を特徴とする請求項7、又は請求項8記載の画像形成システム。
【請求項10】
前記データ反転部は、スイッチバックにより前記媒体を反転させることにより前記地紋データの反転を行うこと
を特徴とする請求項9記載の画像形成システム。
【請求項11】
前記地紋データに基づく画像は、赤外線を吸収する色材により形成されること
を特徴とする請求項7乃至請求項10の何れか1項記載の画像形成システム。
【請求項12】
前記赤外線反射用画像は、白色の色材を有する画像形成部によって形成される白色画像であること
を特徴とする請求項8記載の画像形成システム。
【請求項13】
地紋データに基づく画像を媒体の一方の面に反転させて形成する工程と、
前記地紋データに基づく画像を前記媒体の他方の面側から読み取る工程とを備えること
を特徴とする画像読み取り方法。
【請求項14】
通常画像データに基づく画像を前記媒体の他方の面に形成する工程を更に有すること
を特徴とする請求項13記載の画像読み取り方法。
【請求項15】
前記通常画像データに基づく画像を前記媒体の一方の面に形成する工程と、前記地紋データに基づく画像を前記媒体の一方の面に反転させて形成する工程とにおいて、
前記地紋データに基づく画像は、前記通常画像データに基づく画像に重ねて形成されること
を特徴とする請求項14記載の画像読み取り方法。
【請求項16】
前記媒体の一方の面に前記地紋データに重ねて赤外線反射用画像を形成する工程を更に備えること
を特徴とする請求項13乃至請求項15の何れか1項記載の画像読み取り方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−93748(P2013−93748A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234647(P2011−234647)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】