説明

画像形成装置、画像形成方法

【課題】記録ヘッドが千鳥状配置のノズル列を有するヘッドチップを複数つなぎ合わせて構成されるとき、単純な処理で描画最小単位での調整を行えるようにする。
【解決手段】隣り合うヘッドチップとなるヘッド1とヘッド2とは第1、第2のノズル列A(A列)、B(B列)を有し、一部のノズルをヘッドチップ配列方向で重複させて同じ領域を異なるヘッドチップから印字できるように配置し、ヘッド2の第1のノズル列Aのデータと第2のノズル列Bのデータを入れ替え、ヘッド2のノズル列Aのデータのみを1ドット分(1ノズル分)シフトし、ヘッド2のノズル列Aは2ドット分をマスクし、ノズル列Bは1ドット分をマスクする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置、画像形成方法、プログラムに関し、特に記録ヘッドに記録液を供給するサブタンクに対するメインタンクからの記録液の供給制御に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、これらの複合機等の画像形成装置として、例えば、記録液(液体)の液滴を吐出する液体吐出ヘッドで構成した記録ヘッドを含む液体吐出装置を用いて、媒体(以下「用紙」ともいうが材質を限定するものではなく、また、被記録媒体、記録媒体、転写材、記録紙なども同義で使用する。)を搬送しながら、液体としての記録液(以下、単に「インク」という。)を用紙に付着させて画像形成(記録、印刷、印写、印字も同義語で用いる。)を行なうものがある。
【0003】
なお、画像形成装置は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体にインクを吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与することをも意味する。また、インクとは上記画像形成を行うことができる液体であれば特に限定されるものではない。
【0004】
このような画像形成装置における印刷速度の高速化の一環として、記録ヘッドのライン化が進められている。ライン型記録ヘッドとしては、複数の単尺のヘッドチップ(ヘッドユニット、あるいは、単にヘッドなどとも称される。)を媒体搬送方向と交差する方向に、ノズル列が媒体搬送方向と直交する方向に千鳥状に並べて配置したもの、あるいは、ノズル列が媒体搬送方向に対して斜めになるように傾斜させて並べて配置したものなどがある。
【特許文献1】特開2002−273878号公報
【0005】
このように複数のヘッドチップを並べた構成とした場合、各ヘッドチップの端部の異なるノズルから吐出された液滴で印字を行う画像の合わせ目で、白スジ、黒スジといった問題が発生し易い。
【0006】
そこで、例えば、特許文献2には、ヘッドチップ間で重複する印刷データを抽出する手段と、抽出した印刷データを分配する手段と、分配した印刷データに基づいて印刷データを補正する手段とを備える補正方法が記載されている。
【特許文献2】特開2005−297236号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、複数のヘッドチップを並べて配列することで媒体幅の長さを確保する記録ヘッドにおいては、各ヘッドチップ間のギャップの調整を行わないと、組み付け誤差などによってヘッドチップのつなぎ部における白スジやラインなどの印字ムラの原因となることから、隣り合うヘッドチップのつなぎ部で1ドット分以上ノズルをヘッドチップ配列方向で重複させ、異なるヘッドチップから印字できる領域(重なり領域)を持たせ、画データのシフト、マスク等の簡単な処理でヘッドチップ間ギャップを調整することが行われる。
【0008】
しかしながら、ヘッドチップに第1のノズル列と第2のノズル列を千鳥状に配置したヘッドチップを並べて配置した場合、単純に画データのシフト、マスクを行うだけでは、ヘッドチップの描画最小単位でのデータシフトができないため、描画最小単位の2倍での調整となるという課題がある。
【0009】
例えば、図16に示すように、150dpi相当のノズルピッチでノズル501を配列した第1のノズル列502A及び第2のノズル列502Bを千鳥状に配置することで、ヘッドチップとしては300dpi相当のノズルピッチを実現した場合、画データのシフトは各ノズル列のノズルピッチ単位(150dpi)でしか行うことができないため、描画最小単位(300dpi)でのデータシフトができなくなる。
【0010】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、記録ヘッドが千鳥状配置のノズル列を有するヘッドチップを複数つなぎ合わせて構成されるとき、単純な処理で描画最小単位での調整を行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、液滴を吐出するノズルを千鳥状に配列した第1、第2のノズル列を有するヘッドチップが複数個並べて配列された記録ヘッドを備える画像形成装置において、前記ヘッドチップ内の第1のノズル列に対応する画データと第2のノズル列に対応する画データとを入れ替える手段と、前記ヘッドチップ内の第1、第2のノズル列に対応する画データを独立してシフトさせる手段とを備えている構成とした。
【0012】
ここで、前記複数のヘッドチップは、ヘッドチップ配列方向と交差する方向で一部のノズルが重複するように配置され、前記重複するノズルに対応する画データをノズル列ごとに独立してマスクする手段を備えている構成とできる。また、前記マスクする手段はノズル列の一端部側、他端部側及び両端部側のいずれかの画データをマスクする構成とできる。また、各ノズル列の液滴吐出開始タイミングを入れ替える手段を備えている構成とできる。また、前記画データをシフトする手段は両方向のいずれにも前記画データをシフト可能である構成とできる。
【0013】
本発明に係る画像形成方法は、液滴を吐出するノズルを千鳥状に配列した第1、第2のノズル列を有するヘッドチップが複数個並べて配列された記録ヘッドを用いて画像を形成する画像形成方法において、前記ヘッドチップ内の第1のノズル列に対応する画データと第2のノズル列に対応する画データとを入れ替えるとともに、前記ヘッドチップ内の第1、第2のノズル列に対応する画データを独立してシフトさせる構成とした。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る画像形成装置、画像形成方法によれば、ヘッドチップ内の第1のノズル列に対応する画データと第2のノズル列に対応する画データとを入れ替えるとともに、ヘッドチップ内の第1、第2のノズル列に対応する画データを独立してシフトさせるので、1ノズル分のデータシフトであっても最小描画単位でのデータシフトを行うことができるようになり、ヘッドチップのつなぎ目の精度が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係る画像形成装置の概要について図1を参照して説明する。
この画像形成装置は、装置本体1の内部に画像形成部2等を有し、装置本体1の下方側に給紙部4を備え、給紙部4には多数枚の記録媒体(用紙)13を積載可能な給紙トレイ14を備え、この給紙トレイ14から給紙される用紙13を取り込み、搬送機構5によって用紙13を搬送しながら画像形成部2によって所要の画像を記録した後、装置本体1の側方に装着された排紙トレイ6に用紙13を排紙する。
【0016】
また、装置本体1に対して着脱可能な両面ユニット7を備え、両面印刷を行うときには、一面(表面)印刷終了後、搬送機構5によって用紙13を逆方向に搬送しながら両面ユニット7内に取り込み、反転させて他面(裏面)を印刷可能面として再度搬送機構5に送り込み、他面(裏面)印刷終了後排紙トレイ6に用紙13を排紙する。
【0017】
ここで、画像形成部2は、例えばブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色の液滴を吐出する、フルライン型の4個の液体吐出ヘッドで構成した記録ヘッド11k、11c、11m、11y(色を区別しないときには「記録ヘッド11」という。)を備え、各記録ヘッド11は液滴を吐出するノズルを形成したノズル面を下方に向けてヘッドホルダ13に装着している。
【0018】
また、各記録ヘッド11に対応してヘッドの性能を維持回復するための維持回復機構12k、12c、12m、12y(色を区別しないときには「維持回復機構12」という。)を備え、パージ処理、ワイピング処理などのヘッドの性能維持動作時には、記録ヘッド11と維持回復機構12とを相対的に移動させて、記録ヘッド11のノズル面に維持回復機構12を構成するキャッピング部材などを対向させる。
【0019】
1つの記録ヘッド11は、例えば、図2に示すように、ヘッドチップ支持部材110に、複数のヘッドチップ(液体吐出ヘッド)111a〜111fを媒体搬送方向(用紙搬送方向)と直交する方向に、複数のノズル112の並び方向をヘッドチップ並び方向として、千鳥状に並べて配置して構成したもの(これを「千鳥配列の記録ヘッド11」という。)を用いることができる。
【0020】
また、1つの記録ヘッド11は、例えば、図3に示すように、ヘッドチップ支持部材110に、複数のヘッドチップ(液体吐出ヘッド)111a〜111gを媒体搬送方向(用紙搬送方向)に対して複数のノズル112の並び方向が斜めになるように傾斜させて並べて配置して構成したもの(これを「傾斜配置の記録ヘッド11」という。)を用いることもできる。
【0021】
また、1つの記録ヘッド11は、例えば、図4に示すように、ヘッドチップ支持部材110に、複数のヘッドチップ(液体吐出ヘッド)111a〜111cを媒体搬送方向(用紙搬送方向)と直交する方向に、複数のノズル112の並び方向をヘッドチップ並び方向として、千鳥状に並べて配置して構成した分割記録ヘッド10を2組ノズル112の並び方向に沿って並べて配置して構成したものを用いることもできる。
【0022】
これらの記録ヘッド11における1つのヘッドチップ111は、図5にも示すように、液滴を吐出するノズル112を配列した第1のノズル列112A及び第2のノズル列112Bを千鳥状に配置して構成されている。
【0023】
なお、ここでは、用紙搬送方向上流側から、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの順に各色の液滴を吐出する記録ヘッド11を配置しているが、配置及び色数はこれに限るものではない。また、ライン型ヘッドとこのヘッドに記録液を供給する記録液カートリッジを一体とすることも別体とすることもできる。
【0024】
また、記録ヘッド11を構成するヘッドチップ(液体吐出ヘッド)としては、液滴を吐出する圧力を発生させる圧力発生手段(アクチュエータ手段)として、圧電素子などの電気機械変換素子によって振動板を変形させる圧電型アクチュエータ、電気熱変換素子を用いて液体中に膜沸騰による泡を発生させるサーマル型アクチュエータ、振動板と電極との間で生じる静電力で振動板を変形させる静電型アクチュエータなどを用いたものなどいずれの方式であってもよい。
【0025】
図1に戻って、給紙部4の給紙トレイ14の用紙13は、給紙コロ(半月コロ)21と図示しない分離パッドによって1枚ずつ分離され装置本体1内に給紙され、搬送ガイド部材23のガイド面23aに沿ってレジストローラ25と搬送ローラ31との間に送り込まれ、所定のタイミングでガイド部材26を介して記録ヘッド11により画像形成領域に送り込まれる。
【0026】
また、搬送ガイド部材23には両面ユニット7から送り出される用紙13を案内するガイド面23bも形成されている。更に、両面印刷時に搬送機構5から戻される用紙13を両面ユニット7に案内するガイド部材27も配置している。
【0027】
搬送機構5は、駆動ローラである搬送ローラ31と従動ローラ32との間に掛け渡した無端状の搬送ベルト33と、この搬送ベルト33を帯電させるための帯電ローラ34と、画像形成部2に対向する部分で搬送ベルト33の平面性を維持するプラテン部材35と、搬送ベルト33から送り出す用紙3を搬送ローラ31側に押し付ける押さえコロ36と、その他図示しないが、搬送ベルト33に付着した記録液(インク)を除去するためのクリーニング手段である多孔質体などからなるクリーニングローラなどを有している。
【0028】
この搬送機構5の下流側には、画像が記録された用紙3を排紙トレイ6に送り出すための排紙ローラ38及び拍車39を備えている。
【0029】
このように構成した画像形成装置において、搬送ベルト33は矢示方向に周回移動し、高電位の印加電圧が印加される帯電ローラ34と接触することで正に帯電される。この場合、帯電ローラ34の帯電電圧は所定の時間間隔で極性を切り替えることによって、搬送ベルト33を所定の帯電ピッチで帯電させる。
【0030】
ここで、この高電位に帯電した搬送ベルト33上に用紙3が給送されると、用紙3内部が分極状態になり、搬送ベルト33上の電荷と逆極性の電荷が用紙3の搬送ベルト33と接触している面に誘電され、搬送ベルト33上の電荷と搬送される用紙3上に誘電された電荷同士が互いに静電的に引っ張り合い、用紙3は搬送ベルト33に静電的に吸着される。このようにして、搬送ベルト33に強力に吸着した用紙3は反りや凹凸が校正され、高度に平らな面が形成される。
【0031】
そして、搬送ベルト33を周回させて用紙3を移動させ、記録ヘッド11から液滴を吐出することで、用紙3上に所要のカラー画像が形成され、画像が記録された用紙3は排紙ローラ38によって排紙トレイ6に排紙される。
【0032】
次に、このような画像形成装置における制御部の主な機能について図6のブロック図を参照して説明する。
制御部200は、外部情報処理装置としてのパーソナルコンピュータ(PC)301、スキャナ・デジカメ等の外部機器、メモリカード等の外部記憶装置302から入力されるデータをそれぞれデータ受信部201、202で受信し、受信したデータを、画像処理部203を経て、あるいは、データ受信部201から直接メモリ204に格納する。
【0033】
そして、図示しないCPU、ROM、RAM、ASICなどで構成される主制御部によってヘッド出力用データを生成し、圧縮処理して、メモリ204に保持し、印字動作を開始すると、ヘッド出力用データをメモリ204から読み出して画像伸長部・ヘッド制御部205によって所定のタイミングで記録ヘッド11にヘッド出力用データを出力する。
【0034】
この制御部における画像伸長部・ヘッド制御部205は、本発明に係るヘッドチップ内の第1のノズル列に対応する画データと第2のノズル列に対応する画データとを入れ替える手段と、ヘッドチップ内の第1、第2のノズル列に対応する画データを独立して少なくとも1ドットピッチ分シフトする手段と、重複するノズルに対応する画データをノズル列ごとに独立してマスクする手段と、各ノズル列の液滴吐出開始タイミングを入れ替える手段とを兼ねている。
【0035】
なお、記録ヘッド11を構成する複数のヘッドチップ111をN個としてヘッド1〜ヘッドNのように表記し、各ヘッド1〜Nのヘッドチップ111の各ノズル列112A、112Bをそれぞれノズル列A(又はA列)、ノズル列B(又はB列)と表記する。
【0036】
また、メカ制御部206によってモータ等211を駆動制御して前述したように搬送ベルト31の周回移動を行わせるとともに、図示しないACバイアス供給部による帯電ローラ34に対するACバイアスの供給、給紙コロ21の回転による給紙動作を行わせる。なた、このメカ制御部206には各種センサ等212からの検出信号が入力される。
【0037】
ここで、1ページ分のヘッド出力データの内訳の一例について図7を参照して説明する。
メモリ204には、各ヘッド1〜Nの各ノズル列A、Bごとに分離されたデータが格納されている。そして、ヘッド出力データのヘッダには、少なくとも、(a)各ノズル列用のヘッドデータが格納されているアドレス、(b)各ノズル列のインク吐出開始位置、のデータが格納されている。ただし、インク吐出開始位置のデータは、は必ずしも全ノズル分まとめて格納されている必要はなく、たとえば各ノズル列データの先頭に記載してあってもよい。
【0038】
このヘッダに記載されているアドレス及び吐出開始位置情報は、画像伸長部・ヘッド制御部205に設定され、印字動作が開始されると、上記設定されたアドレスをもとに、全てのノズル列用ヘッドデータが一斉にメモリ204からリードされ、用紙が搬送されて、各ノズル列のインク吐出開始位置に達するとヘッドデータが出力され始め、記録ヘッド11からインク滴が吐出される。
【0039】
次に、1つのヘッドチップ111を駆動するヘッドドライバの構成とヘッドドライバに入力する信号について図8及び図9を参照して説明する。
ヘッドドライバ220は、図8に示すように、nビットのシフトレジスタ221と、ラッチレジスタ222と、アナログスイッチドライバ223とで構成される。
【0040】
そして、図9にも示すように、シフトレジスタ221では、シリアルクロックの立ち上がりエッジにより、ヘッドデータの取り込み及びデータシフトを行い、ラッチレジスタ222はラッチ信号の立ち下がりエッジにより、シフトレジスタ221のデータを取り込む。アナログドライバスイッチ223は、ラッチレジスタ222の値を元に、駆動信号のON/OFFを決定する。ラッチレジスタ222のデータが「0」であるチャネルは駆動波形をOFFとし、データが「1」であるチャネルは駆動波形を「ON」とする。
【0041】
これによって、各チャンネル(ノズルに対応するアクチュエータ手段)へ出力される駆動信号が決定され、各駆動信号によってヘッドチップ111のアクチュエータ手段(例えばピエゾ素子)224が駆動されて、所要のチャンネルからの液滴が吐出される。
【0042】
次に、この画像形成装置におけるヘッドチップ間のつなぎ部分の調整について図10以降を参照して説明する。
まず、ここでは、図10に示すように、N個のヘッドチップ111(ヘッド1〜ヘッドN)を傾斜させて配置した記録ヘッド11とし、隣り合うヘッドチップ111、111を1ドット分以上、ノズルをチップ配列方向に重複させて、異なるヘッドチップ111、111のノズル112から同じ領域に印字できる重なり部があるように配置し、重複部(重なり部)においては、同一のデータを印字できる構成としている。
【0043】
この場合、隣り合うヘッドチップ111間のギャップ量(重複量)に応じて、各ヘッドチップ111へ転送するデータをシフトし、また、同一の点に重複して印字することを防ぐために一部データをマスクすることにより、ヘッドチップ間のギャップ量に応じた印字データの調整を行うことができる。
【0044】
また、図11(a)に拡大して示すように、ヘッドチップ111の配列方向(ここでは用紙送り方向と直交する方向)で、第1、第2のノズル列A、B(A列、B列)の各ノズル112、112の間を150dpi相当とし、第1のノズル列Aのノズル112と第2のノズル列Bのノズル112との間が300dpi相当となるようにしている。
【0045】
そこで、まず、1ノズルピッチ相当の150dpi単位でヘッド間調整を行う場合について図11を参照して説明する。
ヘッド2が図11(a)で左側に150dpi相当分ずれて組みつけられているとする。また、図11図(b)の上段に示すように、ヘッド1のノズル列Aのノズルに対して数字1、3、5、7のデータが、ノズル列Bのノズルに対して同じく2、4、6、8のデータが対応し、ヘッド2のノズル列Aのノズルに対して数字7、9、11、13、15のデータが、ノズル列Bのノズルに対して同じく8、10、12、14、16のデータが対応するものとする。
【0046】
ここで、図11(b)の中段に示すように、ヘッド2のノズル列Aのデータ及びノズル列Bのデータをそれぞれ1ドットピッチ分(1ノズル分)右方向シフトする。これにより、ヘッド2のノズル列Aのノズルに対して数字5、7、9、11、13のデータが対応し、ノズル列Bのノズルに対して数字6,8、10、12、14のデータが対応することになる。
【0047】
そして、図11(b)の下段に示すように、ヘッド2のノズル列A及びノズル列Bの2ドット分(数字5、7、6、8のデータ)をマスクする。
【0048】
このような調整を行うことによって、図11(c)に示すように、調整後の描画データ配置は、ヘッド1について数字1〜8のデータが、ヘッド2について数字9〜14のデータが対応して、出力される画データ(印字データ)が作成される。
【0049】
したがって、この画データで記録ヘッドを駆動することによって、同図(d)に示すように、ヘッド1のノズル列Aとヘッド2のノズル列Bで数字1、3、5、7、9、11、13の画データが、ヘッド2のノズル列Aとヘッド2のノズル列Bで数字2、4、6、8、10、12、14の画データがそれぞれ出力される。
【0050】
このようにすれば、ノズル間のピッチ(ノズルピッチ)に相当する150dpi単位を最小調整単位として調整することができる。
【0051】
次に、この1ドット分のシフト、マスクを行う調整をヘッド2が300dpi相当分左側にずれて組みつけられた場合に適用した比較例について図12を参照して説明する。
この場合、ヘッド2のデータを1ドット分ライト(右方向)でシフトし、ヘッド2のノズル列A列及びノズル列Bのデータをそれぞれ2ドット分マスクすると、描画結果に示すとおり、300dpi分の白スジが生じる。また、図示しないが、ヘッド2のデータをシフトせず、ヘッド2のノズル列A及びノズル列Bの各データをそれぞれ1ドット分マスクする調整方法を行った場合には、300dpi分の重なりを生じる結果となる。同様に、ヘッド2が右側に300dpi分ずれて組みつけられた場合にも、白スジや重なりを生じることになる。
【0052】
このように、データシフト自体は1ノズル分が最小単位となるため、解像度(最小描画単位)が300dpiの単位であるにも関わらず、ノズルピッチ相当の150dpi単位でしか調整できないという不都合がある。
【0053】
そこで、本発明を適用した調整について図13を参照して説明する。ここで、例えば、図13(a)に示す隣り合うヘッド1とヘッド2とは、ヘッド2がヘッド1側に300dpi相当分ずれて組みつけられているものとする。また、同図(b)の上段に示すように、ヘッド1のノズル列Aのノズルに対して数字1、3、5、7のデータが、ノズル列Bのノズルに対して同じく2、4、6、8のデータが対応し、ヘッド2のノズル列Aのノズルに対して数字7、9、11、13、15のデータが、ノズル列Bのノズルに対して同じく8、10、12、14、16のデータが対応するものとする。
【0054】
そこで、次の第1ステップないし第3ステップの3つのステップの処理を行うことによって300dpi相当の調整を行う。
<第1ステップ>
先ず、図13(b)の中段に示すように、ヘッド2の第1のノズル列Aのデータと第2のノズル列Bのデータを入れ替え、ヘッド2のノズル列Aのノズルに対して数字で示す8、10、12、14、16のデータが、ノズル列Bのノズルに対して同じく7、9、11、13、15のデータが対応するようにする。
【0055】
<第2ステップ>
ヘッド2のノズル列Aのデータのみを1ドット分(1ノズル分)シフトする。これにより、ヘッド2のノズル列Aのノズルに対して数字で示す6、8、10、12、14のデータが対応することになる。
【0056】
<第3ステップ>
図13(b)の下段に示すように、ヘッド2のノズル列Aは2ドット分(数字6、8のデータ)をマスクし、ノズル列Bは1ドット分(数字7のデータ)をマスクする。
【0057】
このような調整を行うことによって、図13(c)に示すように、調整後の描画データ配置は、ヘッド1について数字1〜8のデータが、ヘッド2について数字9〜14のデータが対応して、出力される画データ(印字データ)が作成される。
【0058】
そこで、この画データで記録ヘッドを駆動することによって、図13(d)に示すように、ヘッド1のノズル列Aとヘッド2のノズル列Bで数字1、3、5、7、9、11、13の画データが、ヘッド2のノズル列Aとヘッド2のノズル列Bで数字2、4、6、8、10、12、14の画データがそれぞれ出力される。
【0059】
このようにして、第1のノズル列Aのノズル112と第2のノズル列Bのノズル112との間のピッチ(最小描画単位)に相当する300dpi単位を最小調整単位として調整することができるようになる。
【0060】
この場合、ヘッド2がヘッド1に対して上述したと反対側にずれて組みつけられているときには、シフトの向きを逆にすることで調整することができる。
【0061】
このように、ヘッドチップ内の第1のノズル列に対応する画データと第2のノズル列に対応する画データとを入れ替えるとともに、ヘッドチップ内の第1、第2のノズル列に対応する画データを独立してシフトさせるので、1ドット分のデータシフトによって最小描画単位のデータシフトを行うことができ、ヘッドチップのつなぎ目の調整精度が向上する。
【0062】
また、上述した例では、便宜上マスクされる部分(ヘッド2の数字6〜8)にデータを割り当てているが、マスクされるドットのデータは必ずしもヘッド1と同一のデータである必要はない。また、ヘッド2のデータのみがマスクされているが、条件によってはヘッド1のデータのみマスクされる場合や、ヘッド1及びヘッド2のそれぞれのデータをマスクする場合もある。さらに、ここではヘッドチップの配列方向におけるヘッドチップ間ギャップの調整(同色のヘッド)の例で説明しているが、用紙搬送方向における記録ヘッドのヘッドチップ間のギャップの調整(別色のヘッド)にも同様の方法で適用することができる。
【0063】
次に、ノズル列の画データの入れ替え方法について図14を参照して説明する。
この例では、ヘッド1のノズル列Aとノズル列Bのデータを入れ替えている。この場合、列データ全体を入れ替えているのではなく、ヘッダ情報のみを入れ替えている。このように、ヘッダのアドレス情報のみを入れ替えることで、ヘッド制御部がリードする領域が入れ替わり、結果、列データ全体を入れ替えた場合と同様の効果が得られる。また、ノズル列A及びノズル列Bの物理的位置が異なるため、滴吐出開始位置も入れ替える必要がある。
【0064】
次に、データのシフト方法及びマスク方法について図15を参照して説明する。
図15(a)はシフト及びマスクをしない場合のヘッド転送データ信号のタイムチャートであり、同図(b)は1ドット分のシフト及び2ドット分のマスクをする場合を示している。
【0065】
ヘッドデータ(画データ)のシフトは、シリアルクロックのタイミングを1サイクル分早めることで実現できる。また、ヘッドデータのマスクは、マスクの期間、ヘッドデータに「0」を出力することで実現できる。この図15の例と逆方向に1ドット分シフトする場合には、シリアルクロックのタイミングを1サイクル分遅らせることで実現できる。
【0066】
なお、本発明に係る画像形成装置は、プリンタ単機能構成のものに限らず、プリンタ/ファクシミリ/複写などの複合機能を有する画像形成装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一例の概要を説明する説明図である。
【図2】同画像形成装置における記録ヘッドの構成の一例を説明する平面説明図である。
【図3】同画像形成装置における記録ヘッドの構成の他の例を説明する平面説明図である。
【図4】同画像形成装置における記録ヘッドの構成の更に他の例を説明する平面説明図である。
【図5】同記録ヘッドを構成するヘッドチップの一例を示す平面説明図である。
【図6】同画像形成装置の制御部の概要を説明するブロック図である。
【図7】1ページ分のヘッド出力データの内訳を説明する説明図である。
【図8】1つのヘッドチップに対するヘッドドライバのブロック図である。
【図9】同ヘッドドライバに対する入力信号の説明に供する説明図である。
【図10】記録ヘッド構成の一例を説明する平面説明図である。
【図11】隣り合うヘッドの組み付け誤差がノズルピッチ相当分である場合の調整方法(処理)の説明に供する説明図である。
【図12】図11の調整方法(処理)を隣り合うヘッドの組み付け誤差が描画最小単位相当分である場合に適用した比較例の説明に供する説明図である。
【図13】隣り合うヘッドの組み付け誤差が描画最小単位相当分である場合に本発明を適用した例の説明に供する説明図である。
【図14】本発明におけるノズル列データの入れ替え処理の説明に供する説明図である。
【図15】同じくデータのシフト及びマスク処理の説明に供する説明図である。
【図16】1ノズルピッチ相当分のデータシフトを行う場合の不都合の説明に供する説明図である。
【符号の説明】
【0068】
11…記録ヘッド
111…ヘッドチップ
112…ノズル
112A…第1のノズル列(A列)
112B…第2のノズル列(B列)
205…画像伸長部・ヘッド制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出するノズルを千鳥状に配列した第1、第2のノズル列を有するヘッドチップが複数個並べて配列された記録ヘッドを備える画像形成装置において、
前記ヘッドチップ内の第1のノズル列に対応する画データと第2のノズル列に対応する画データとを入れ替える手段と、
前記ヘッドチップ内の第1、第2のノズル列に対応する画データを独立してシフトさせる手段と
を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、前記複数のヘッドチップは、ヘッドチップ配列方向と交差する方向で一部のノズルが重複するように配置され、前記重複するノズルに対応する画データをノズル列ごとに独立してマスクする手段を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像形成装置において、前記マスクする手段はノズル列の一端部側、他端部側及び両端部側のいずれかの画データをマスクすることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成装置において、各ノズル列の液滴吐出開始タイミングを入れ替える手段を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の画像形成装置において、前記画データをシフトする手段は両方向のいずれにも前記画データをシフト可能であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
液滴を吐出するノズルを千鳥状に配列した第1、第2のノズル列を有するヘッドチップが複数個並べて配列された記録ヘッドを用いて画像を形成する画像形成方法において、
前記ヘッドチップ内の第1のノズル列に対応する画データと第2のノズル列に対応する画データとを入れ替えるとともに、前記ヘッドチップ内の第1、第2のノズル列に対応する画データを独立してシフトさせることを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−18528(P2009−18528A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−184027(P2007−184027)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】