説明

画像形成装置、画像形成装置の制御方法および画像形成装置の制御プログラム

【課題】メインとなる画像形成装置のエラー時に未印刷のページを印刷する下位機器の設定を簡易なものとする。
【解決手段】サブプリンタ10との間で、ホスト装置1から送信された印字データの開始から終了までをページ単位で通信して印刷確認を行う印刷制御手段を備えた画像形成装置2であって、ネットワークを通じて接続された他の画像形成装置を検索する検索手段と、検索手段により検索した他の画像形成装置のネットワーク設定情報と位置情報とを取得する情報取得手段と、情報取得手段が取得した他の画像形成装置の位置情報と記憶手段に記憶された位置情報とに基づいて装置間の距離を算出し、該装置間の距離が最短となる他の画像形成装置を、ネットワーク設定情報に基づいて下位機器として設定する下位機器設定手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、画像形成装置の制御方法および画像形成装置の制御プログラムに関する。さらに詳述すると、下位機器として設定された画像形成装置との間で、ホスト装置から送信された印字データの開始から終了までをページ単位で通信して印刷確認を行う印刷制御手段を備えた画像形成装置、画像形成装置の制御方法および画像形成装置の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LAN(ローカルエリアネットワーク)等のコンピュータネットワークに直接接続され、このネットワークを介して送信された印字データを印字する画像形成装置(印刷装置、複合機など)が普及している。このようなネットワーク対応の印刷装置(プリンタ)を使用することにより、1台のプリンタを、複数のユーザで共有することが可能となる。このようなシステムでは、1台のプリンタを複数のユーザが利用するため、印刷時にエラー等が発生した場合に混乱が生じることがある。そのため、これらのネットワーク対応のプリンタの印刷動作の信頼性を向上させるための方法が種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ネットワークに接続された複数のサーバーやプリンタの中で記憶手段(HDD)を有する機器を検索し、その記憶手段を利用して印刷データの保管をし、ネットワーク通信でエラーが生じた場合、印刷できなかった部分のデータがわかるようにしておき、印刷できなかった部分のデータについては、再度、送信要求するネットワークプリンタ装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、第1のプリンタが印刷不可の時、第2のプリンタで印刷するネットワークシステムが開示されている。また、特許文献3には、印刷指定されたプリンタが印刷不可能であった場合に、最も近い位置にあるプリンタで代行印刷する印刷代行サービスシステムが開示されている。
【0005】
さらに、近年、印字データの印刷開始から終了までをページ単位で通信して印刷確認を行って、印刷の高信頼性を確保する印刷プロトコルが開発されている。この印刷プロトコルは、当該プロトコル対応のプリンタとホスト装置とを連携して活用することで、ページの重複やページ抜けを防止するほか、エラー、障害発生時に機器の電源を切った場合でも、自動的に印刷が完了したページを確認して継続ページから印刷を再開することができるものである。
【0006】
特許文献4には、印字データの印刷開始から終了までをページ単位で通信しながら印刷制御を行う印刷装置が開示されている。この印刷装置は、データ送信方向下流側に位置する他の印刷装置に対して印刷処理を抑制する旨の印刷抑制情報を送信するとともに、ホスト装置から送信されたデータを下流側に位置する他の印刷装置に対して送信し、また、印刷媒体に対する印刷処理を1ページする毎に、ページ削除情報を下流側に位置する他の印刷装置に対して送信し、ページ削除情報に応じて他の印刷装置が記憶する印刷処理済みのページに対応するデータを削除させるものである。これにより、ページ削除情報を受信した他の印刷装置は、印刷処理済みページの削除を行うことで印刷処理済みのページ数の同期を取ることができるようになるので、例えば上流側に位置する当該装置が印刷処理を中止する場合であっても、下流側に位置する他の印刷装置における印刷処理の抑制を解除するようにすれば、他の印刷装置において残りのページについての印刷処理を継続することができるものである(特許文献4の図14等参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1〜3に記載の技術では、特許文献4に記載の技術のようにページ単位での出力完了のチェックや重複防止の方法については開示されていないので、障害時に他のプリンタで印刷を行うようにしても、ページの重複印刷が発生するという課題を有していた。
【0008】
当該課題を、特許文献4に記載の印刷装置によれば、解決することが可能となる。しかしながら、特許文献4に記載の技術は、メインとなる印刷装置のエラー時等に未印刷のページを印刷するデータ送信方向下流側に位置する他の印刷装置(以下、下位機器ともいう)の設定をユーザが、例えば、オペレーションパネルなどからIPアドレス等を指定して設定する必要があり煩雑であるという問題が残されていた。また、一旦、下流側の印刷装置を設定した後、当該機器の設置位置が移動した場合や、故障等した場合は、再度設定を行う必要があり煩雑なものとなっていた。
【0009】
そこで本発明は、下位機器として設定された画像形成装置との間で、ホスト装置から送信された印字データの開始から終了までをページ単位で通信して印刷確認を行う印刷制御手段を備えた画像形成装置において、メインとなる画像形成装置のエラー時等に未印刷のページを印刷する下位機器の設定を手動によることなく、ネットワーク上から最も優先度の高い画像形成装置を選択し、自動設定することを可能とする画像形成装置、画像形成装置の制御方法および画像形成装置の制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するため、請求項1に記載の画像形成装置は、下位機器として設定された画像形成装置との間で、ホスト装置から送信された印字データの開始から終了までをページ単位で通信して印刷確認を行う印刷制御手段を備えた画像形成装置であって、ネットワークを通じて接続された他の画像形成装置を検索する検索手段と、検索手段により検索した他の画像形成装置のネットワーク設定情報と位置情報とを取得する情報取得手段と、情報取得手段が取得した他の画像形成装置の位置情報と記憶手段に記憶された位置情報とに基づいて装置間の距離を算出し、該装置間の距離が最短となる他の画像形成装置を、ネットワーク設定情報に基づいて下位機器として設定する下位機器設定手段とを備えるものである。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成装置において、他の画像形成装置のうち既にいずれかの画像形成装置の下位機器として設定済みの画像形成装置を検索対象から除外するものである。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2のいずれかに記載の画像形成装置において、下位機器設定手段は、下位機器として設定された画像形成装置を除いて、第二の下位機器を設定するものである。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1から3までのいずれかに記載の画像形成装置において、位置情報は、2次元または3次元の座標情報であるものである。
【0014】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1から4までのいずれかに記載の画像形成装置において、衛星を介して位置情報を取得する位置情報取得手段を備え、位置情報としての緯度及び経度を位置情報取得手段により取得するものである。
【0015】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1から5までのいずれかに記載の画像形成装置において、記憶手段および他の画像形成装置の記憶手段は、ネットワークがグループ化されている場合に、いずれのグループに属するかを示す識別IDを記憶しており、検索手段は、同じ識別IDを有する画像形成装置を検索対象とするものである。
【0016】
また、請求項7に記載の画像形成装置の制御方法は、下位機器として設定された画像形成装置との間で、ホスト装置から送信された印字データの開始から終了までをページ単位で通信して印刷確認を行う画像形成装置の制御方法であって、ネットワークを通じて接続された他の画像形成装置を検索する検索処理と、検索処理により検索した他の画像形成装置のネットワーク設定情報と位置情報とを取得する情報取得処理と、情報取得処理で取得した他の画像形成装置の位置情報と記憶手段に記憶された位置情報とに基づいて装置間の距離を算出し、該装置間の距離が最短となる他の画像形成装置を、ネットワーク設定情報に基づいて下位機器として設定する下位機器設定処理とを行うようにしている。
【0017】
また、請求項8に記載の画像形成装置の制御プログラムは、下位機器として設定された画像形成装置との間で、ホスト装置から送信された印字データの開始から終了までをページ単位で通信して印刷確認を行う印刷制御手段を備えた画像形成装置に、ネットワークを通じて接続された他の画像形成装置を検索する検索処理と、検索処理により検索した他の画像形成装置のネットワーク設定情報と位置情報とを取得する情報取得処理と、情報取得処理で取得した他の画像形成装置の位置情報と記憶手段に記憶された位置情報とに基づいて装置間の距離を算出し、該装置間の距離が最短となる他の画像形成装置を、ネットワーク設定情報に基づいて下位機器として設定する下位機器設定処理とを実行させるものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ネットワーク上から最も優先度の高い画像形成装置を選択し、メインとなる画像形成装置のエラー時等に未印刷のページを印刷する下位機器として自動設定することができるので、下位機器の設定をユーザが行なう手間を省くことができ、下位機器の設定を簡易なものとすることができる。また、メインとなる画像形成装置にエラー等が発生した場合でも、自動設定された下位機器での印刷を継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】画像形成装置の機能ブロック図の一例である。
【図2】印刷制御処理全体の一例を示すフローチャートである。
【図3】画像形成装置の検索とテーブルの作成処理の一例を示すフローチャートである。
【図4】メインプリンタと下位機器の候補となる他のプリンタの配置の一例である。
【図5】メインプリンタに記憶された画像形成装置一覧テーブルの一例である。
【図6】下位機器の検索と設定処理の一例を示すフローチャートである。
【図7】メインプリンタと下位機器の候補となる他のプリンタの配置の他の例である。
【図8】下位機器に記憶された画像形成装置一覧テーブルの一例である。
【図9】下位機器の検索と設定処理の他の例を示すフローチャートである。
【図10】画像形成装置の機能ブロック図の他の例である。
【図11】画像形成装置の検索とテーブルの作成処理の他の例を示すフローチャートである。
【図12】識別IDによりネットワークのセグメント化がされている場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る構成を図1から図12に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。本実施形態に係る画像形成装置は、下位機器(サブプリンタ10)として設定された画像形成装置との間で、ホスト装置1から送信された印字データの開始から終了までをページ単位で通信して印刷確認を行う印刷制御手段を備えた画像形成装置(メインプリンタ2)であって、ネットワークを通じて接続された他の画像形成装置を検索する検索手段と、検索手段により検索した他の画像形成装置のネットワーク設定情報と位置情報とを取得する情報取得手段と、情報取得手段が取得した他の画像形成装置の位置情報と記憶手段に記憶された位置情報とに基づいて装置間の距離を算出し、該装置間の距離が最短となる他の画像形成装置を、ネットワーク設定情報に基づいて下位機器として設定する下位機器設定手段とを備えるものである。
【0021】
なお、下位機器10との間で、ホスト装置1から送信された印字データの開始から終了までをページ単位で通信して印刷確認を行う印刷制御手段を備えた画像形成装置の基本的な構成は、例えば、上記特許文献4に開示されており、詳細な説明は省略する。
【0022】
(画像形成装置の構成)
図1に本実施形態に係る画像形成装置の機能ブロック図を示す。本実施形態に係る画像形成装置(以下、メインプリンタ2)は、プリンタコントローラ3、プリンタエンジン4、ネットワーク処理部5、プリンタシステム制御部6、制御コマンド処理部7、エンジン制御部8を備えており、ネットワークを介してホスト装置1、サブプリンタ10(ネットワーク処理部11)に接続されている。なお、メインプリンタ2は、プリンタシステム制御部6に制御コマンド処理部7を備えていることにより以下に述べるような制御が可能となり、本実施形態では、ネットワーク処理部5、プリンタシステム制御部6および制御コマンド処理部7が協働して検索手段、情報取得手段および下位機器設定手段として機能する。また、ネットワークにおける通信回線(有線/無線)、通信プロトコル等は特に限られるものではない。また、図示は省略するが、サブプリンタ10と示す画像形成装置も以下に述べるようにメインプリンタ2ともなり得るので、同様の構成を備えることが好ましい。
【0023】
(制御の概要)
本実施形態に係るメインプリンタ2が実行する処理(本発明に係る画像形成装置の制御方法)の全体概要を示すフローチャートを図2に示す。
【0024】
先ず、メインプリンタ2の電源がオンになると(S1)、通常の初期化ルーチンにおいて、画像形成装置の検索とテーブルの作成処理(S2)を実行する。当該処理(S2)は、検索手段および情報取得手段により実行され、ネットワーク上に存在する画像形成装置を検索し、画像形成装置一覧テーブル(図5参照)を作成する。
【0025】
次に、下位機器の検索と設定処理(S3)を実行する。当該処理(S3)は、下位機器設定手段により実行され、S2で作成された画像形成装置一覧テーブル上の画像形成装置群のうち、最も優先度が高い、例えば、メインプリンタ2の位置から最も近い画像形成装置をメインプリンタ2の下位機器10(第1のサブプリンタともいう)として設定を行う。
【0026】
以上が終了すると印刷待ち状態へ移行する(S4)。印刷待ち状態(S4)において所定時間が経過した場合は(S5:Y)、再び、S2へ戻る。2回目以降の画像形成装置の検索とテーブルの作成処理(S2)では、作成した画像形成装置一覧テーブルの更新が行われる。このように処理を行うことにより、画像形成装置一覧テーブル上の画像形成装置の電源がオフになったり、装置自体が移動されたりした場合にも所定の時間が経過した後には自動的に更新がなされる。以上が本実施形態に係る画像形成装置が実行する制御の概要である。以下、各処理の詳細について説明する。
【0027】
(画像形成装置の検索とテーブルの作成処理:S2)
図3に画像形成装置の検索とテーブルの作成処理(S2:S201〜S206)のフローチャートの一例を示す(検索処理および情報取得処理)。また、図4にメインプリンタ2と下位機器10の候補となる他のプリンタ(プリンタ0〜3)の配置の一例、図5に作成される画像形成装置一覧テーブル(以下、単にテーブルともいう)の一例を示す。
【0028】
先ず、LAN上に存在する装置についての情報を順に取得する(S201)。ここで、取得する情報には、ネットワーク設定情報(IPアドレス、サブネットマスク、デフォルトゲートウェイ等、以下、IPアドレスのみ取得する場合を例に説明する)、ネットワーク上の各機器の種別情報(例えば、プリンタ、PC、サーバ等)が含まれる。なお、ネットワーク処理部5によるネットワーク設定情報の取得は、公知の技術によれば良く特に限られるものではない。
【0029】
取得した種別情報に基づいてプリンタであるか否かを判断し(S202)、プリンタでない場合(S202:N)は、S201へ戻り、ネットワーク上の次の機器の情報取得に移る。これに対し、プリンタであった場合(S202:Y)は、当該プリンタの位置情報を取得する。
【0030】
位置情報の値は、特に限られるものではないが、2次元の配列(x,y)として、例えば、図4に示すように簡易的に(2,2)や(6,7)等として表すようにしたり、緯度経度、例えば(139.171820,35.374475)のような値としても良い。また、3次元の配列(x,y,z)で表わすようにしても良い。なお、位置情報は、例えば、オペレーションパネルなどからユーザが入力可能とすることで各装置内の記憶装置(不揮発性RAMなど)に予め記憶させておくことができる。
【0031】
ここで、位置情報の取得は、新たな制御コマンドにより実行される。本実施形態では、取得したIPアドレスの機器に対し位置情報の問い合わせを行う(S203)。問い合わせを受けたプリンタ側では記憶装置に記憶されている位置情報を応答コマンドとして送り返す。
【0032】
問い合わせを送信したメインプリンタ2は、応答が戻ってきたら(S204:Y)、当該位置情報とIPアドレスとを関連付けて画像形成装置一覧テーブルに保存する(S205)。一方、問い合わせを送信したプリンタから応答がない場合(S204:N)は、画像形成装置一覧テーブルへの保存は行なわず、S201へ戻り次の装置についての処理に移る。
【0033】
画像形成装置一覧テーブルへ保存した場合は、次のプリンタは存在するか判断し(S206)、存在する場合(S206:Y)は、S201へ戻り処理を継続する。以上の処理をネットワーク上のすべての装置について実行することにより(S206:Y)、処理の実行時における画像形成装置一覧テーブルを作成することができる。なお、すでに画像形成装置一覧テーブルが作成されている場合は、更新処理を行うようにすれば良い。
【0034】
(下位機器の検索と設定処理:S3)
次に、作成した画像形成装置一覧テーブルを使用して、メインプリンタ2の位置から最も近い位置にあるプリンタを検索する。この下位機器の検索と設定処理(S3:S301〜S308)のフローチャートの一例を図6に示す。
【0035】
先ず、テーブルの何番目かを示す変数nと現状の最短距離を示す変数dをそれぞれ初期化する(S301)。次に、画像形成装置一覧テーブルのn番目の装置の位置情報((X,Y)とする)を取得する(S302)
【0036】
次に、取得した位置情報(X,Y)とメインプリンタ2の位置情報((X,Y)とする)から装置間の距離dを算出する(S303)。ここで、装置間の距離は、例えば、次式(1)により算出できる。ここで、算出した距離dを画像形成装置一覧テーブルのn番目の距離情報として保存するようにしても良い。
√((X−X+(Y−Y) ・・・(1)
【0037】
次に、現状(当該処理までの)の最短距離を示す変数dと算出した距離dとの比較を行なう(S304)。dの方が小さい場合(S304:Y)は、最短距離が更新、即ち、当該装置の方がメインプリンタ2までの距離が近いことを意味するので、最短距離を示す変数dをdで更新する(S305)。また、最短の機器の番号を示すNをnで書き換える(S306)。
【0038】
S306の処理の後、または、dの方が大きい場合(S304:N)は、画像形成装置一覧テーブルに他の機器が残っているか否かのチェックを行い(S307)、残っている場合(S307:Y)は、変数nをインクリメントしてS302へ戻る(S308)。残っていない場合(S307:N)は、処理は終了する。当該処理により、画像形成装置一覧テーブルの最後まで繰り返すと、最短の機器はN番目の機器であることが判明する。当該Nのアドレスを記憶して下位機種10の設定とすることができる。
【0039】
このように構成することにより、ユーザが、下位機器10として相応しい機器を選択し、当該機器のIPアドレス等を調査し、オペレーションパネルなどから手入力で下位機器10のアドレスを設定する手間を省くことができ、メインプリンタ2が自動的に最も近い位置にあるプリンタを選択して自動的に下位機種10として設定することが可能となる。
【0040】
(その他の実施形態)
【0041】
また、下位機器10として設定するのは1台に限られるものではなく、下位機器10を複数設定することも好ましい。これにより、メインプリンタ2および下位機器10(第1のサブプリンタ)の双方で障害等が発生した場合も、印刷を継続することが可能となる。
【0042】
ここで、2台目以降の下位機器10(第2のサブプリンタ、第3のサブプリンタ...という)の設定は、上記S3の処理において2番目に距離の近いものを第2のサブプリンタとして設定するようにしても良いし、また、図7〜図8に示すように、設定された第1のサブプリンタから最短距離にあるプリンタを検索し、これを第2のサブプリンタとしても良い。すなわち、第1のサブプリンタをメインプリンタ2として上述の処理を実行することで実現される。なお、図7は、メインプリンタ(図中のプリンタ0)から設定した第1のサブプリンタ(図中のプリンタ1)が、さらに、第2のサブプリンタ(図中の下位機器検索中プリンタ)を設定し、この第2のサブプリンタが第3のサブプリンタを検索する様子を示す図である。また、図8は、第2のサブプリンタが作成した画像形成装置一覧テーブルの一例である。
【0043】
ここで下位機器10は、例えば、機器A→機器D→機器B→機器Cのようにシリアルに連結されなければならない。しかしながら、複数のメインプリンタ2がネットワーク上に存在する場合、すでに他のプリンタの下位機器10として連結されてしまっている機器を下位機種10として連結させることはできない。
【0044】
そこで、画像形成装置一覧テーブルは、上記の情報に加えて、既に他の機器に連結済みであるか否かを示す情報を有するようにすることが好ましい。本実施形態では、下位機種10として設定された機器に関して連結済みであることを示す「連結済みフラグ」を設けている。上述のようにメインプリンタ2が下位機器10の検索、設定を行なう際、対象とする機器は既に他の機器の下位機器10として設定済みになっていることは十分考えられるが、「連結済みフラグ」を設けておくことにより、そのような機器は「連結済みフラグ」が済みになっているので下位機器10の候補としては対象から除外することができる。
【0045】
メインプリンタ2が他の機器の「連結済みフラグ」を取得するために、上記制御コマンドの応答として位置情報に加えて「連結済みフラグ」情報も返すようする。また、メインプリンタ2の下位機器10に設定した機器へは、「連結済みフラグ」を「連結済み」に切り替える(フラグをオンにする)ため、制御コマンドの一つとして、「連結済みフラグ」書き換えコマンドを用意して、メインプリンタ2が下位機器10として設定した機器に対しては、同コマンドで「連結済みフラグ」を「連結済み」に切り替えさせる。一方、メインプリンタ2の連結状態は、記憶装置上に別途「連結済みフラグ」を設けておき、他の機器から問い合わせを受けた場合は、位置情報と共に、「連結済みフラグ」を応答する。また、他の機器から、「連結済みフラグ」書き換えコマンドを受けた場合は、「連結済みフラグ」を「連結済み」に書き換えるようにすれば良い。
【0046】
この連結済みでないことを条件に加えた下位機器の検索と設定処理(S310〜S313)のフローチャートの一例を図9に示す。先ず、上記下位機器の検索と設定処理(S310、(S3に対応、図6参照))を実施し、N番目が最短である結果を得ると、画像形成装置一覧テーブルにおけるN番目の機器の「連結済みフラグ」をチェックする(S311)。
【0047】
連結済みの場合(S311:Y)は、下位機器10に設定することはできないため、S310に戻り最短機器の検索を、当該機器Nを検索対象から除外して検索する(S312)。なお、除外の方法は、例えば、図6のS308において、n=n+1を行なった後に、除外対象であるか否かの判断を追加し、除外対象であった場合は、さらにn=n+1を繰り返し、除外対象でない番号まで進めることを行なえば良い。
【0048】
上記S310〜S312の処理を繰り返し、最初にS311で連結済みでない機器があれば(S311:N)、その時のNに該当する機器が最短で連結済みでない機器となる。したがって、Nに該当する機器に制御コマンドである、「連結済みフラグ」書き換えコマンドを送信し、対象機種の「連結済みフラグ」を「連結済み」として(S313)、Nを下位機器10として設定する。
【0049】
また、上記位置情報は、ユーザにより設定されることに限られず、位置情報取得手段、例えば、GPS(グローバルポジショニングシステム:Global Positioning System)により位置情報を取得することも好ましい。
【0050】
このGPSを備えた画像形成装置(メインプリンタ2)の機能ブロック図の一例を図10に示す。この実施形態のメインプリンタ2は、GPS9をプリンタコントローラ3内に、プリンタシステム制御部6と通信可能に設けたものである。プリンタシステム制御部6は、GPS9から機器の緯度および経度を取得し、これをメインプリンタ2の位置情報とする。なお、GPS9は、公知のものによれば良く、その他、図1と同様の構成についての説明は省略する。
【0051】
このようにGPSを備えることとすることにより、さらに、ユーザが位置情報を設定する手間を省くことができ、かつ、常に正確な位置情報を自動的に取得することが可能となる。例えば、画像形成装置の設置位置が変わった場合も位置情報の再設定の手間を省き位置情報の更新ができる。また、設置位置を変更した場合に位置情報の更新を忘れるといった事態等も生じない。
【0052】
また、緯度及び経度の2次元の情報に加えて、高さ位置情報を含む3次元の情報を取得可能なGPSを用い、高さ位置も含めた位置情報とし、下位機器の検索と設定処理(S3)において、3次元の距離を計算するようにすることも好ましい。これにより、例えば、同じ建物内でフロアが異なる(高さが異なる)場合等にも正確な位置を認識することができるようになる。
【0053】
また、ネットワークの規模が大きい場合などは、ネットワークがいくつかのセグメントに分けられている(グループ化されている)ことが多い。例えば、企業においてフロア毎やフロア内のエリア毎に部署が分けられている場合などは、部署ごとにネットワークがセグメント化されている場合がある。このような場合において、同一ネットワーク内に存在するすべてのプリンタを検索対象とすることは検索効率の低下を招き、また、ユーザの要求にも適さない。
【0054】
そこで、本実施形態では、さらに識別IDを記憶装置に保持しておくことにより処理の効率化を図ることとしている。識別IDを用いた場合の画像形成装置の検索とテーブルの作成処理(S211〜S217)の一例を図11のフローチャートに示す。当該フローチャートは、図3に示した画像形成装置の検索とテーブルの作成処理(S201〜S206)に、識別IDの判断処理(S215)を追加したものである。識別IDが一致しない場合(S215:N)は、検索対象から外され、次の機器の処理へと移るものである。なお、その他の処理は、図3に示した処理と同様であるので、説明は省略する。
【0055】
ここで、識別IDは、位置情報や連結済みフラグと同様に記憶装置に記憶領域を用意し、「識別ID情報」として保存しておけば良い。また、識別IDは、オペレーションパネル等からの識別ID入力により設定可能なものとすれば良い。また、他の機器への識別IDの問い合わせは、位置情報の問い合わせと同様に制御コマンドにより応答で得られるようにすれば良く、他の機器から識別IDの問い合わせを受けた場合は、「識別ID情報」に記憶している情報を応答として返す処理を行うようにすれば良い。
【0056】
このように構成することにより、識別IDを、例えば、図12に示すように、フロア毎に1階であれば「1xx」に、2階であれば「2xx」のように識別可能な値として予め設定することにより、同じネットワーク内でも異なるフロアとの連結を防ぐことができる。また、同じフロア内において複数のセグメントを設ける場合にも、識別IDを分けて設定しておくことにより連結を防ぐことが可能となる。
【0057】
このようにすることにより、検索対象を絞ることができるため処理量を低減し、処理の高速化を図ることが可能となる。また、所定のエリア内のプリンタから出力させることができるので、ユーザの要求も満たすことができる。
【0058】
以上の実施形態において説明した画像形成装置の制御方法は、ROM等の本体メモリに格納されているプログラム(本発明に係る画像形成装置の制御プログラム)で実行することができる。この画像形成装置の制御プログラムは、例えばインターネット上からのダウンロードによって提供し、画像形成装置にインストールすることができる。また、本発明は、画像形成装置の制御プログラムを画像形成装置で実行可能に記録した記録媒体の態様にも適用される。
【0059】
尚、上述の実施形態は本発明の好適な実施の例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 ホスト装置
2 メインプリンタ(画像形成装置)
3 プリンタコントローラ
4 プリンタエンジン
5 ネットワーク処理部
6 プリンタシステム制御部
7 制御コマンド処理部
8 エンジン制御部
9 GPS(位置情報取得手段)
10 サブプリンタ(下位機器)
11 ネットワーク処理部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0061】
【特許文献1】特開2003−122539号公報
【特許文献2】特開2002−189581号公報
【特許文献3】特開2002−132462号公報
【特許文献4】特開2009−101679号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下位機器として設定された画像形成装置との間で、ホスト装置から送信された印字データの開始から終了までをページ単位で通信して印刷確認を行う印刷制御手段を備えた画像形成装置であって、
ネットワークを通じて接続された他の画像形成装置を検索する検索手段と、
前記検索手段により検索した前記他の画像形成装置のネットワーク設定情報と位置情報とを取得する情報取得手段と、
前記情報取得手段が取得した前記他の画像形成装置の位置情報と記憶手段に記憶された位置情報とに基づいて装置間の距離を算出し、該装置間の距離が最短となる前記他の画像形成装置を、前記ネットワーク設定情報に基づいて前記下位機器として設定する下位機器設定手段と
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記他の画像形成装置のうち既にいずれかの画像形成装置の下位機器として設定済みの画像形成装置を検索対象から除外することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記下位機器設定手段は、下位機器として設定された画像形成装置を除いて、第二の下位機器を設定することを特徴とする請求項1また2のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記位置情報は、2次元または3次元の座標情報であることを特徴とする請求項1から3までのいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
衛星を介して前記位置情報を取得する位置情報取得手段を備え、
前記位置情報としての緯度及び経度を前記位置情報取得手段により取得することを特徴とする請求項1から4までのいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記記憶手段および前記他の画像形成装置の記憶手段は、前記ネットワークがグループ化されている場合に、いずれのグループに属するかを示す識別IDを記憶しており、
前記検索手段は、同じ識別IDを有する画像形成装置を検索対象とすることを特徴とする請求項1から5までのいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
下位機器として設定された画像形成装置との間で、ホスト装置から送信された印字データの開始から終了までをページ単位で通信して印刷確認を行う画像形成装置の制御方法であって、
ネットワークを通じて接続された他の画像形成装置を検索する検索処理と、
前記検索処理により検索した前記他の画像形成装置のネットワーク設定情報と位置情報とを取得する情報取得処理と、
前記情報取得処理で取得した前記他の画像形成装置の位置情報と記憶手段に記憶された位置情報とに基づいて装置間の距離を算出し、該装置間の距離が最短となる前記他の画像形成装置を、前記ネットワーク設定情報に基づいて前記下位機器として設定する下位機器設定処理と
を行うことを特徴とする画像形成装置の制御方法。
【請求項8】
下位機器として設定された画像形成装置との間で、ホスト装置から送信された印字データの開始から終了までをページ単位で通信して印刷確認を行う印刷制御手段を備えた画像形成装置に、
ネットワークを通じて接続された他の画像形成装置を検索する検索処理と、
前記検索処理により検索した前記他の画像形成装置のネットワーク設定情報と位置情報とを取得する情報取得処理と、
前記情報取得処理で取得した前記他の画像形成装置の位置情報と記憶手段に記憶された位置情報とに基づいて装置間の距離を算出し、該装置間の距離が最短となる前記他の画像形成装置を、前記ネットワーク設定情報に基づいて前記下位機器として設定する下位機器設定処理と
を実行させることを特徴とする画像形成装置の制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−51251(P2011−51251A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202666(P2009−202666)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】