説明

画像形成装置および電子写真用トナーの製造方法

【課題】圧縮力を加えた後のトナー間非静電的付着力、トナー/感光体間の非静電的付着力、トナー/中間転写体間の非静電的付着力が適切な関係となり、感光体から中間転写体への転写時に生じる中抜け現象を抑制し、良好な画像形成を行うことができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】第1像担持体、第2像担持体、第1像担持体から第2像担持体へトナー像を転写する第1転写手段、第2像担持体から記録媒体へトナー像を転写する第2像担持体を有する画像形成装置において、遠心力により一粒子あたり2.6×10[N/m]で圧縮した後のトナー間の非静電付着力Ftp、トナー/第1像担持体間の非静電付着力Fpp、トナー/第2像担持体間の非静電付着力Fbpの関係が、Fbp>FtpまたはFbp>Fppである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタあるいはこれら機能を兼ね備えた複合機等の画像形成装置、および電子写真用トナーを製造するトナー製法に関するものである。詳しくは、感光体上に形成されたトナー像を中間転写体に転写し、その後、記録媒体にトナー像を転写する画像形成装置と、この画像形成装置に用いられる電子写真用トナーの製造方法とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、第1の像担持体/潜像担持体である感光体の表面にトナー像を形成し、各感光体上に形成された複数色のトナー像を第2の像担持体である中間転写体に転写した後に普通用紙のような記録媒体に二次転写する画像形成では、感光体上のトナー像を中間転写体に転写する際に、画像の一部が転写されない所謂「中抜け現象」が発生する場合がある。この中抜け現象は文字画像や線状画像を形成するときに顕著である。これは、接触式転写方式では、感光体表面に担持されるトナー像が感光体表面よりも外側に突出した状態で担持されていて、転写時の圧力がトナーに集中し易く、特に文字画像や線状画像等は画像面積率が低いため、中間転写体に転写する際に機械的圧力がトナーに集中し易くなり、転写効率が下がり、中抜けが発生し易くなっていると考えられている。
【0003】
このような中抜け現象を抑制するために従来から種々の工夫がなされてきた。例えば、特許文献1に開示された画像形成装置においては、感光体の表面層をフッ素原子含有樹脂微粒子を含むようにすることで表面エネルギーを下げ、転写の際に感光体に圧着されたトナーの離型性を上げることによって中抜けを抑制している。特許文献2に開示された画像形成装置においては、中間転写ベルトの表面粗さを感光体の表面粗さよりも大きくした上で、これら表面粗さと使用するトナーの体積平均粒径との関係を特定範囲に保っている。こうすることにより、中間転写ベルト側へのトナーの移動を促進させることができるとともに、感光体側へのトナーの移動を抑制することができ、中抜け現象の発生が抑制されている。特許文献3に記載された画像形成装置では、トナーに所定荷重を与えた場合のトナー凝集率を規定する一方で、転写部での転移圧接の荷重を調整して、中抜けの改善が試みられている。特許文献4に開示された画像形成装置においては、画像面積率が低い文字モードを選択した場合は転写時にかかる圧力を下げて中抜け現象を抑制している。一方、画像面積率が高い画像モードを選択した場合は転写時にかかる圧力を上げて転写性を優先する工夫がなされている。更に特許文献5では、トナー層を圧縮した後の破断力からトナー間付着力を見積もり、圧縮後のトナー間の付着力が小さいトナーを使用することにより、中抜けを抑制する方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、どの従来技術においても、ある固定した条件では中抜けを低減させることができる一方で、他の異常画像が発生したり、長期間使用した際の部材の物性変化等に対応できない等、充分な解決に至っていないのが現状である。
【0005】
様々な検討の結果、感光体から中間転写体への転写時のトナー中抜け現象は、トナーに圧縮力を加えた後のトナー間付着力、トナー/中間転写体間の付着力、およびトナー/感光体間の付着力の相互関係が大きく影響することが明らかになった。即ち、圧縮力の大きさに応じて圧縮後のトナー粒子径に対するトナー間およびトナー/部材間の非静電的付着力が大きくなり、所定の圧縮力を加えた際にはトナー間付着力がトナー/中間転写体間の付着力よりも大きくなり、かつトナー/感光体間の付着力がトナー/中間転写体間の付着力よりも大きくなる関係において、転写時の中抜け現象が悪化することが明らかになった。しかしながら、従来は画像形成に用いられる電子写真トナーの圧縮力を加えた後のトナー間付着力、トナー/感光体間付着力、トナー/中間転写体間付着力の関係について検討がなされたものがなかった。
【0006】
本発明は、以上の背景に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、圧縮力を加えた後のトナー間非静電的付着力、トナー/感光体間の非静電的付着力、トナー/中間転写体間の非静電的付着力が適切な関係となり、感光体から中間転写体への転写時に生じる中抜け現象を抑制し、良好な画像形成を行うことができる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、潜像担持体である第1像担持体、中間転写体である第2像担持体、第1像担持体から第2像担持体へトナー像を転写する第1転写手段、第2像担持体から記録媒体へトナー像を転写する第2像担持体を有する画像形成装置において、遠心力により一粒子あたり2.6×10[N/m]で圧縮した後のトナー間の非静電付着力Ftp、トナー/第1像担持体間の非静電付着力Fpp、トナー/第2像担持体間の非静電付着力Fbpの関係が、Fbp>Ftp(条件1)またはFbp>Fpp(条件2)を満たすことによって、達成される。特に条件2を満たすことが一層目的に適っている。
【0008】
遠心力により加圧した後のトナー間の非静電的付着力をFt[nN]、トナーの平均粒径をDtとする際、Ft/Dt[nN/μm]を縦軸とし、遠心力による一粒子あたりの加圧力P[N/m]を横軸としてプロットしたグラフにおける一次回帰直線の比例係数Lが3.40×10[mm]以下であるトナーであれば、好適である。トナーの真円度の平均値が1.0以上1.4以下であるのが好ましい。その際、真円度の平均値が1.4より大きくなるように製造されたトナーに対して、真円度の平均値が1.4よりも小さくなるように製造されたトナーを混合したものを使用するのが良い。
【0009】
トナーの平均粒径が1〜8[μm]の範囲に収まるように調整してあれば、好都合である。あるいはトナーが、平均粒径が異なる少なくとも二種類のトナー粒子群を混合したものであり、特に平均粒径の異なる二種類のトナー粒子群からなり、大粒径のトナー粒子群の平均粒径が4μm以上8μm以下、小粒径のトナー粒子群の平均粒径が1μm以上4μm未満であることも、好都合である。
【0010】
トナー以外の点については、第1像担持体の表面における水との接触角が90°以上であることや、第2像担持体のヤング率が6000Mpa以下であること、あるいは第2像担持体を構成する層に弾性層が含まれていることが、好適である。
【発明の効果】
【0011】
潜像担持体である第1像担持体、中間転写体である第2像担持体、第1像担持体から第2像担持体へトナー像を転写する第1転写手段、第2像担持体から記録媒体へトナー像を転写する第2像担持体を有する画像形成装置において、遠心力により一粒子あたり2.6×10[N/m]で圧縮した後のトナー間の非静電付着力Ftp、トナー/第1像担持体間の非静電付着力Fpp、トナー/第2像担持体間の非静電付着力Fbpの関係が、Fbp>Ftp(条件1)またはFbp>Fpp(条件2)を満たすトナー、第1像担持体、第2像担持体によって画像形成を行うことにより、第1像担持体から第2像担持体への転写時にトナー像に圧力が集中したとしても、中抜け現象の発生を抑制し、良好な画像形成を行うことができる。
【0012】
遠心力により加圧した後のトナー間の非静電的付着力をFt[nN]、トナーの平均粒径をDtとする際、Ft/Dt[nN/μm]を縦軸とし、遠心力による一粒子あたりの加圧力P[N/m]を横軸としてプロットしたグラフにおける一次回帰直線の比例係数Lが3.46×10[mm]以下であるトナーを使用することにより、圧縮時にトナーの凝集体が形成され難く、中抜けの発生を抑制できる。また真円度の平均値が1.0以上1.4以下であるトナーを使用することにより、球形トナーが圧縮後のトナー非静電的付着力を増加させ難くすることのために、中抜け抑制できる。その際、真円度の平均値が1.4より大きくなるように製造されたトナーに対して、真円度の平均値が1.4よりも小さくなるように製造されたトナーを混合していれば、クリーニング性を向上しつつ、中抜けを抑制できる。
【0013】
トナーの平均粒径が1〜8[μm]の範囲に収まるように調整してあれば、画像不良の発生を防止しつつ、電子写真画像の高解像度の要求に対応することができる。あるいはトナーが、平均粒径が異なる少なくとも二種類のトナー粒子群を混合したものであり、特に平均粒径の異なる二種類のトナー粒子群からなり、大粒径のトナー粒子群の平均粒径が4μm以上8μm以下、小粒径のトナー粒子群の平均粒径が1μm以上4μm未満であることも、トナー層の充填率を高めて中抜け抑制に貢献できる。
【0014】
第1像担持体の表面における水との接触角が90°以上であれば、圧縮後の第1像担持体とトナーとの付着力を低くし、中抜けを抑制することが可能になる。第2像担持体のヤング率が6000Mpa以下であれば、圧縮後の第2像担持体/トナー間の付着力を低くし、中抜けを抑制することが可能になる。第2像担持体を構成する層に弾性層を含ませることで、圧縮後の第2像担持体/トナー間の付着力を低くし、中抜けを抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】一実施形態に係るフルカラープリンタの概略構成図である。
【図2】粉体付着力測定装置における測定セルの説明分解図である。
【図3】粉体付着力測定装置の遠心分離装置の一部断面側面図である。
【図4】トナー/感光体間の非静電付着力の平均値Fneとトナー平均粒径Dの関係を示すグラフである。
【図5】二種類のトナーサンプルにおける二次転写部のスプリング力と中抜けランクとの関係を示すグラフである。
【図6】加圧力に対するトナーAの付着力の関係を示すグラフである。
【図7】加圧力に対するトナーBの付着力の関係を示すグラフである。
【図8】二種類の感光体サンプルにおける二次転写部のスプリング力と中抜けランクとの関係を示すグラフである。
【図9】加圧力に対するトナーAの付着力の関係を示す第2のグラフである。
【図10】二種類のトナーサンプルにおける加圧力に対するFt/Dtの関係を示すグラフである。
【図11】実施例1、2、4、5、7と比較例1、3、4の実験結果について、横軸を傾きL、縦軸を中抜けランクとしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る画像形成装置について説明する。図1は、画像形成装置としてのフルカラープリンタ100の装置主要部の概略構成を示すものである。図1において、プリンタ100は、互いに異なる4色(イエロー:Y、マゼンタ:M、シアン:C、ブラック:K)のトナーを用いる4組の画像形成ユニット20Y、20M、20C、20Kを並列して備えている。更に、画像形成ユニット20Y、20M、20C、20Kで形成されたトナー像が転写されるための中間転写体としての中間転写ベルト5を備える転写手段としての中間転写ユニット50を備えている。つまり、プリンタ100は、4組の画像形成ユニット20Y、20M、20C、20Kを中間転写ベルト5の移動方向に沿って並設したタンデム型の画像形成装置である。
【0017】
各画像形成ユニット20Y、20M、20C、20Kは、感光体としての感光体ドラム2Y、2M、2C、2Kと、各感光体ドラムの表面を帯電ローラによって帯電する帯電装置3Y、3M、3C、3Kとを備えている。また、画像情報に基づいて、各感光体ドラム2Y、2M、2C、2Kの帯電された表面を、レーザ光Lにより露光することで表面に潜像を形成する不図示の露光装置を備えている。また、各感光体ドラム2Y、2M、2C、2K上の潜像をトナー像化する画像形成手段としての現像装置1Y、1M、1C、1Kと、各感光体ドラム2Y、2M、2C、2Kの表面をクリーニングする感光体クリーニング装置10Y、10M、10C、10Kとを備えている。
【0018】
上記4組の画像形成ユニットの感光体ドラム2Y、2M、2C、2Kは、不図示の感光体ドラム駆動装置によって図中矢印A方向に回転駆動される。尚、ブラック用の感光体ドラム2Kと、カラー用の感光体ドラム2Y、2M、2Cとを独立に回転駆動できるようにしてもよく、そうすることにより、例えば、モノクロ画像を形成するときにはブラック用の感光体ドラム2Kのみを回転駆動し、カラー画像を形成するときには4つの感光体ドラム2Y、2M、2C、2Kを同時に回転駆動することができる。ちなみに、モノクロ画像を形成するときは、カラー用の感光体ドラム2Y、2M、2Cから離間するように中間転写ベルト5を有する中間転写ユニットが部分的に揺動させられる。
【0019】
中間転写ベルト5は例えば中抵抗の無端状のベルト材で構成され、二次転写部対向ローラ7および支持ローラ51、52といった複数の支持ローラに掛け回されている。これら支持ローラの一つを回転駆動することにより、中間転写ベルト5を図中矢印B方向に無端移動させることができる。
【0020】
各感光体ドラム2Y、2M、2C、2Kから中間転写ベルト5にトナー像を転写する一次転写位置には、中間転写ベルト5を間に挟んで各感光体ドラム2Y、2M、2C、2Kに対向するように一次転写ローラ4Y、4M、4C、4Kが設けられている。転写体としての中間転写ベルト5は、一次転写ローラ4Y、4M、4C、4Kによって押圧されることにより、感光体ドラム2Y、2M、2C、2Kに対して圧接し、それぞれの感光体ドラム2Y、2M、2C、2Kとの対向部で一次転写ニップを形成している。
【0021】
また、中間転写ベルト5を介して二次転写部対向ローラ7に対して対向する位置には、中間転写ベルト50に所定のニップ圧で当接され、中間転写ベルト5上に形成されたトナー像を記録媒体である転写紙Pに転写する二次転写ローラ6を備えている。
【0022】
上述のような構成のプリンタ100で、カラー画像を形成するとき、各感光体ドラム2Y、2M、2C、2Kは、図中矢印A方向に回転駆動され、このとき、各感光体ドラム2Y、2M、2C、2Kの表面は、帯電装置3Y、3M、3C、3Kによって所定の極性、例えば、マイナス極性に帯電される。次いで、各感光体ドラム2Y、2M、2C、2Kの帯電面に、画像書き込み手段から出射する光変調されたレーザ光Lを照射して、これによって、各感光体ドラム2Y、2M、2C、2Kの表面に静電潜像を形成する。即ち、レーザ光が照射され感光体表面部分の電位の絶対値が低下した部分が静電潜像(画像部)となり、レーザ光が照射されず電位の絶対値が高く保たれた部分が地肌部となる。次いで、静電潜像が、現像装置1Y、1M、1C、1Kに収納され所定の極性に帯電されたトナーによって、現像されて、トナー像として可視化される。
【0023】
各感光体ドラム2Y、2M、2C、2Kに形成された各色のトナー像は、各一次転写ニップで圧力と転写電界の作用により中間転写ベルト5上に順次重ね合わせて転写される。これにより、中間転写ベルト5上に4色のトナー像からなるフルカラートナー像が形成される。
【0024】
中間転写ベルト5に転写されずに各感光体ドラム2Y、2M、2C、2K上に残留した転写残トナーは、感光体クリーニング装置10Y、10M、10C、10Kによって掻き取られ、各感光体ドラム2Y、2M、2C、2K表面が清掃される。尚、各感光体ドラム2Y、2M、2C、2Kから除去したトナーを、不図示のトナーリサイクル装置を用いて現像装置に搬送して、トナーリサイクルすることも可能である。
【0025】
一方、不図示の給紙装置から、転写紙Pが、中間転写ベルト5と二次転写ローラ6との間に、矢印Fの方向から所定のタイミングで搬送される。このとき、中間転写ベルト5上に重ね合わされたフルカラートナー像は、二次転写ローラ6と二次転写部対向ローラ7との間に形成された二次転写ニップで転写紙P上に一括転写される。フルカラートナー像が転写された転写紙Pは、不図示の定着装置により加熱・加圧されてトナー像が転写紙P上に定着される。その後、像定着された記録紙は不図示の排紙部から排出される。中間転写ベルト5上に残留した転写残トナーは、中間転写体クリーニング装置8によって掻き取られ、ベルト表面が清掃される。
【0026】
図1で説明したプリンタ100の構成に限らず、一般に、画像形成装置の一次転写過程では、転写率の向上や、主走査方向の転写ムラを抑制する目的で、転写部に圧力を加えて接触させる。しかし、トナーの性状とニップ部の圧力の関係により文字画像、線状画像の一部が転写時に欠落或いは感光体に再転写する「中抜け」現象が発生する。本形態では、「中抜け」現象と圧縮後のトナー間付着力、トナー/感光体間の付着力、トナー/中間転写ベルト間の付着力との関係から、所定の加圧力を加えた際にトナー間付着力がトナー/中間転写ベルト間の付着力よりも小さくなるか、またはトナー/感光体間の付着力がトナー/中間転写ベルト間の付着力よりも小さくなる関係に調整して、転写時の中抜け現象を大幅に低減する。
【0027】
まず、トナーの性状を示す値として使用される圧縮後のトナーと感光体の間の付着力、トナー/中間転写ベルト間の付着力およびトナー間付着力の測定方法について説明する。
トナーの付着力を測定する方法は、トナーの付着している物体からトナーを分離するのに必要な力を見積もる方法が一般的である。トナーを分離させる方法としては、遠心力、振動、衝撃、空気圧、電界、磁界等を用いた方法が知られている。このうち、遠心力を利用した方法は定量化が容易で、且つ測定精度が高い。このため、本例ではトナー/感光体間の付着力を測定する方法として、遠心分離法を用いた。以下、遠心分離によるトナー付着力測定方法について説明するが、IS&TNI P7th、200頁(1991)等に記載されているものが知られている。
【0028】
まず、トナー付着力測定を実施する際の装置について説明する。図2、図3は、トナー付着力測定装置の測定セル、遠心分離装置の一例を示す図である。トナー付着力測定装置の測定セルを説明する図2において、11は測定セルであり、測定セル11は、トナーを付着させた試料面12aを有する試料基板12と、試料基板12から分離したトナーを付着させる付着面13aを有する受け基板13と、試料基板12の試料面12aと受け基板13の付着面13aの間に設けられたスペーサ14から構成されている。遠心分離装置の一部断面を示す図3において、遠心分離装置15は、測定セル11を回転させるロータ16と、保持部材17を備えている。ロータ16は、自身の回転中心軸19に対して垂直な断面で穴形状であり保持部材17を設置する試料設置部18を有している。保持部材17は、棒状部17aと、棒状部17aに設けられ測定セル11を保持するセル保持部30、測定セル11をセル保持部30から押し出すための穴部31を備えている。セル保持部30は、測定セル11(試料基板12、受け基板13、スペーサ14)を設置したときに、測定セル11の垂直方向がロータの回転中心軸19に垂直となるように構成される。
【0029】
次に、遠心分離装置15を用いてトナーの付着力を測定する方法を説明する。まず、試料基板12上に直接感光体を形成するか、または感光体の一部を切り出して試料基板12上に接着剤で貼り付ける。次に、トナーを、試料基板12上の感光体(試料面12a)上に付着させる。次に、図3のように、試料基板12、受け基板13およびスペーサ14によって構成された測定セル11を、保持部材17をロータ16の試料設置部18に設置したときに試料基板12が受け基板13とロータ16の回転中心軸9の間に位置するように、保持部材17のセル保持部30に設置する。保持部材17を、測定セル11の垂直方向がロータの回転中心軸19に垂直となるように、ロータ16の試料設置部18に設置する。遠心分離装置15を稼働してロータ16を一定の回転数で回転させる。試料基板12に付着したトナーは回転数に応じた遠心力を受け、トナーの受ける遠心力がトナー/試料面12a間の付着力よりも大きい場合は、トナーが試料面12aから分離し、付着面13aに付着する。
【0030】
トナーの受ける遠心力Fは、トナーの重量m、ロータの回転数f(rpm)、ロータの中心軸から試料基板のトナー付着面までの距離rを用いて、下記式1より求められる:
F=m×r×(2πf/60) ・・・(式1)
トナーの重量mは、トナーの真比重ρ、円相当径dを用いて、下記式2より求められる:
m=(π/6)×ρ×d ・・・(式2)
上記式1と式2より、トナーの受ける遠心力Fは、下記式3から求められる:
F=(π/5400)×ρ×d×r×f・・・(式3)
【0031】
遠心分離終了後、保持部材17をロータ16の試料設置部18から取り出し、保持部材17のセル保持部17bから測定セル11を取り出す。受け基板13を交換し、測定セル11を保持部材17に設置し、保持部材17をロータ16に設置し、ロータ16を前回よりも高回転数で回転させる。トナーの受ける遠心力が前回よりも大きくなり、付着力の大きなトナーが、トナーが試料面12aから分離して付着面13aに付着する。
【0032】
遠心分離装置の設定回転数を低回転数から高回転数へ変えて同様の操作を実施することにより、各回転数で受ける遠心力と付着力の大小関係に応じて、試料面12a上のトナーが付着面13aに移動する。全ての設定回転数について遠心分離を実施後、各回転数の受け基板13の付着面13aに付着したトナーの粒径を計測することにより、式3を用いて各トナーの付着力を求めることができる。トナーの粒径および個数の測定は、光学顕微鏡で付着面13a上のトナーを観察し、その画像をCCDカメラを通して画像処理装置に入力し、画像処理装置を用いて各トナーの粒径測定を行うことができる。
【0033】
上記の方法によって測定したトナー/感光体間の付着力Fの常用対数分布が得られる。付着力分布は、トナーの平均粒径、粒径分布、形状、構成材料、添加剤等の様々な条件によって変化する。
【0034】
上記の測定方法では、受け基板13の付着面13aに付着した各トナーの粒径を測定しているので、各粒径毎の付着力の平均値を求めることができる。このため、一回の付着力測定によって、測定したトナーに関する平均粒径と付着力の関係を求めることができる。測定されるトナーの付着力は図4のように、各粒径における非静電的付着力の平均値Fne(D)は平均粒径Dに比例する。図4における直線は測定値の一次回帰直線で、この一次回帰直線の比例係数をKとする。同じ構成材料を用いて作製したトナーでも、トナーの粒径分布や平均粒径が異なると、トナー全体の非静電的付着力の平均値Favは異なる値をとる。しかし、比例係数Kはトナーの粒径分布、平均粒径に依存しない。このため、比例係数Kを用いることにより、粒径分布や平均粒径の違いを考慮せずに、トナー付着力の大小関係を比較することができる。
【0035】
本例で測定する圧縮後の付着力を測定する場合には、トナーとの付着力を測定したい試料面12aを有する試料基板12と受け基板13を図3の描写とは逆の位置に配置し、遠心分離装置5を稼動させる。これにより、試料基板12に付着したトナー粒子はローターの回転数に応じた遠心力で試料面12aに押し付けられる。トナー一粒子が押し付けられる加圧力Pは、円相当径dを用いて、下記式4により求めることができる。
P=(π/5400)×ρ×d×r×f/(π×d/4)・・・(式4)
圧縮後、上記付着力測定方法により、トナー/試料面12a間の付着力を測定する。測定される付着力は、トナー一粒子が押し付けられる力が大きくなるほど大きくなる。本例では試料基板12に感光体を貼り付けた場合、中間転写ベルトを貼り付けた場合、トナー粒子層を貼り付けた場合の三つの態様で測定を行った。トナー粒子層は上記方法と同様に試料基板12に接着剤で接着し、接着剤により固定されていない表層を取り除いて作製した。
【0036】
上述の遠心分離法を用いて、性状の異なる様々なトナーの圧縮後のトナー間非静電的付着力を測定して定量的に評価し、画像形成装置で発生する中抜け現象についての関係を検討した。
【0037】
図5は性状が異なる任意の二種類のトナーサンプルA、Bに対し、既存の画像形成装置を用いて測定した転写加圧スプリング力と中抜けランクの関係を示すグラフである。画像形成装置は中間転写方式のタンデム型フルカラープリンタであり、シングルカラーモードを使用し、転写圧力を変化させて各トナーによる画像を出力した。図5において、転写加圧スプリング力とは、一次転写部において、中間転写ベルトと感光体とを加圧し、転写を補助するためのスプリング力の大きさである。本装置の加圧スプリングは、転写ローラの両端に一つずつ設置されており、転写加圧スプリング力は、両端のスプリング力の合計値である。中抜けランクは主走査方向3ドット、副走査方向60ドットの細線が均等に配されたテストチャートを使用して、出力された画像に対し中抜けの状態を1〜5の五段階にランク評価したものである。このテストチャートは画像面積率が低い文字画像や線状画像等を想定したものであり、トナー像に圧力が集中し易い条件である:
ランク5:目視観察で中抜けが発見されない状態
ランク4:目視観察で中抜けを判断することが難しいくらいに辛うじて中抜けを発見できる状態
ランク3:目視観察で中抜けを辛うじて発見でき、その中抜けが画像品質を損ねない状態
ランク2:目視観察で中抜けを比較的容易に発見できる状態
ランク1:目視観察で誰が観察しても中抜けをすぐに発見できる状態
【0038】
ここで、ランク4以上は画像として問題のない範囲である。また、スプリング力16[N]以上は通常使用されるスプリング力を超える範囲である。このように、画像形成装置による評価では、トナーによってスプリング力と中抜けランクの関係が異なり、図5中のトナーサンプルBが中抜けに対する余裕度が高く好ましい。
【0039】
次に、図5の実験に用いた画像形成装置の感光体および中間転写ベルトを切り抜き、上述の遠心分離法を用いて、トナーサンプルA、Bの各トナーについて、複数の値の加圧力を加えた後のトナー間非静電的付着力Ft、トナー/感光体間の非静電的付着力Fpcおよびトナー/中間転写ベルト間の非静電的付着力Fbを測定した。トナーAの測定結果を図6に、トナーBの測定結果を図7に示す。図5において中抜けが発生し易かったサンプルトナーAは、図6に示すように、高い加圧力を加えた場合に、トナー間非静電的付着力Ftの値がトナー/中間転写ベルト間の付着力Fbの値よりも大きく、且つトナー/感光体間の非静電的付着力Fpの値がトナー/中間転写ベルト間の付着力Fbの値よりも大きい。具体的には、トナーサンプルAのトナー平均粒径Dtは7.0[μm]であり、加圧力が2.6×10[N/m]のとき、Fbの値が75[nN]でFtの値が85[nN]、Fpの値が115[nN]となった。尚、加圧力2.6×10[N/m]の値は2.6×10[N/m]前後の加圧力測定結果から直線近似により求めた。一方、高いスプリング力において中抜けが発生し難かったサンプルトナーBは、図7に示すように、高い加圧力を加えた場合でも、トナー間非静電的付着力Ftの値がトナー/中間転写ベルト間の付着力Fbの値よりも小さい。具体的には、トナーサンプルBのトナー平均粒径Dtは7.0[μm]であり、加圧力が2.6×10[N/m]のとき、Fbの値が52[nN]でFtの値が41[nN]となった。尚、加圧力2.6×10[N/m]の値は2.6×10[N/m]前後の加圧力測定結果から直線近似により求めた。
【0040】
次に、図5の実験に用いた画像形成装置の感光体Aを性状の異なる感光体Bと交換し、トナーサンプルAについて改めて測定した中抜けの状態を、図5の場合と同様の方法で測定した結果を感光体Aの場合と比較して示したものが図8であり、また感光体Bにおける加圧力印加後の付着力測定結果を感光体Aの場合と比較して示したものが図9である。図8において、中抜けが発生し難かった感光体Bは、図9に示すように、高い加圧力を印加した場合に、トナー/感光体間非静電的付着力Fpの値がトナー/中間転写ベルト間の付着力Fbの値よりも小さい。具体的には、トナーサンプルAのトナー平均粒径Dtが7.0[μm]、加圧力が2.6×10[N/m]のとき、Fbの値が75[nN]でFtの値が85[nN]、Fpの値が59[nN]となった。
【0041】
以上のような、トナーの非静電的付着力の値と加える加圧力との関係と、画像形成装置における転写スプリング力と中抜けの関係を多数調査した結果、以下の方法により「中抜け」を抑制できることを本発明者は見出した。遠心力により一粒子あたり2.6×10[N/m]で圧縮した後のトナー/中間転写ベルト間に働く非静電的付着力の平均値Fbpと、トナー間に働く非静電的付着力Ftpおよびトナー/感光体間に働く非静電的付着力Fppの関係が、下記式5を満たすトナーを用いることにより、画像形成装置における「中抜け」現象を抑制することができる:
Fbp>FtpまたはFbp>Fpp・・・(式5)
【0042】
また、圧縮後のトナー間付着力が小さいほど、多くの種類の部材に対応することができるため、圧縮後のトナー間付着力ができるだけ小さいことが好ましい。図10に、遠心力により加圧された後に遠心分離法によって測定されるトナー間の非静電的付着力をFt[nN]、トナーの平均粒径をDtとした場合に、Ft/Dt[nN/μm]を縦軸とし、遠心力による一粒子あたりの加圧力p[N/m]を横軸としてプロットしたものを示した。このグラフにおける傾きが小さいほど、圧縮後のトナー間付着力が小さい。圧縮後のトナー間付着力が小さいと、感光体や中間転写ベルトの性状が変化しても中抜けを抑制し易い。尚、トナー間、トナー/感光体間、トナー/中間転写ベルト間の付着力はトナーの粒子径に比例するため、付着力を粒子径で除した値で比較することが必要である。具体的にはFt/Dt[nN/μm]を縦軸とし、遠心力による一粒子あたりの加圧力を横軸としてプロットしたグラフにおける一次回帰直線の比例係数Lが3.46×10[mm]より小さいトナーを使用することが、細線等での「中抜け」現象の抑制に好ましい。
【0043】
また本発明者は、前記条件を満たすためのトナー粒子の条件として、下記式5より表される真円度の平均値が1.0〜1.4であることが好適であると見出した。真円度は、真球に近づくほど1に近づく:
真円度={(粒子の周囲長)/(粒子の投影面積)}×(1/4π)・・・(式5)
【0044】
真円度は、完全な球形であれば1.0となり、その値が小さいほど球形に近い粒子である。そして、真円度の値が小さいほど、即ち、球形に近いほど、上記遠心分離法で測定される加圧力に対する、トナーの非静電的付着力Ftをトナー平均粒径Dtで除した値の増加量が小さくなる。一方、真円度の平均値が1.4を超えると凝集性が高くなり、加圧時に凝集体になり易いため、中抜けが多く発生する。
【0045】
前記真円度の測定方法としては、例えば、日立製作所製FE−SEM(S−4500)を用い、1000倍に拡大したトナー像を100個無作為にサンプリングし、その画像情報を、例えば画像処理ソフト(Media Cybernetics製Image-Pro Plus)を用いて解析を行い算出することにより測定することが可能である。
【0046】
上述のように、トナーの真円度が1.0に近ければ近いほど、中抜けを抑制する上では好ましい。真円度が1.0に近いトナーは中抜けし難く転写率も高いため、転写残トナーは少なくなるが、転写残トナーとなった際の除去は困難である。これは、転写残トナーをクリーニングブレードでクリーニングする際、球形に近いトナーだと感光体若しくは中間転写体の表面とクリーニングブレードとの間を回転しながらすり抜けるためである。市場のサンプルを数点測定した結果、真円度は1.25以上あることがクリーニングする上では好ましいことが明らかになった。
【0047】
クリーニング性を考慮すると真円度が1.0よりもできるだけ大きいトナーであることが好ましい。真円度が1.0に近い略球形のトナーは重合法により化学的に製造することで容易に作製することが可能であるが、重合法において形状を異形化し真円度を高くしたトナーを作製するためには、トナーを作製するプロセスに異形化する工程を追加することとなるため、技術的な制約やコスト等の面で略球形のトナーを作製する場合よりも不利となる。一方、粉砕方式で作られるトナーの真円度は1.5〜2.0程度であり、真円度を小さくするためには、熱で表面を丸める等の処理が必要となり、やはり製造工程追加に伴う技術的な制約やコストアップが発生する。このような問題に対して、真円度が1.4以上の粉砕トナーに対し、真円度が1.4以下の重合トナーを混合させることにより、「中抜け」現象を抑制しつつ、クリーニング性の向上を図ることができる。真円度が1.4以上の粉砕トナーに対し、真円度が1.4以下の球形トナーを混合させることにより、粉砕トナーであっても凝集体を形成し難くなり、「中抜け」現象を防ぐことができる。また、不定形トナーである粉砕トナーを混ぜることにより、球形トナーを用いたとしても、クリーニング性を向上することができた。これは、集団として不定形のものが入ってくることにより、不定形のトナー粒子が球形のトナー粒子の回転を抑制したり、不定形トナーがクリーニングブレードと感光体との隙間に詰まることで、球形トナーがこの隙間に入りこむことを防止したりするためと考えられる。
【0048】
また、本発明で用いる電子写真用トナーの体積平均粒径は1〜8[μm]であることが好ましい。トナー平均粒径Dt[μm]は小さくなるほど、付着性や凝集性が高くなり、トナー粒子の移動が非常に困難になり、制御が難しくなる。体積平均粒径につき、トナー平均粒径が1[μm]未満であると、画像形成が困難となる。一方、トナー平均粒径が8[μm]を超えると、電子写真画像の高解像度の要求に対応するのが困難となることがある。
【0049】
本発明で用いる電子写真用トナーは、平均粒径が異なる少なくとも二種類以上のトナーを混合したものであることが好ましく、特に4μm以上8μm以下の大粒径のトナー群と1μm以上4μm未満の小粒径トナー群の二種類を混合したものがより好適である。本発明者は遠心分離法よる圧縮後のトナー間非静電的付着力測定において、充填率が高くなると加圧力に対するFt/Dt[nN/μm]の傾きLの値が小さくなり易い傾向を確認した。充填率が高い場合、トナー同士が多くの接触点で支えあうため、圧力に対してトナーが変形し難く、非静電的付着力が増加し難いためと考えられる。大粒径の粒子の間に小粒径の粒子が入り込む層を形成するように、異なる粒径の粒子を混合することで、充填率を上げることができる。
【0050】
形状の異なるトナーや平均粒径の異なるトナーを混合させて使うやり方として、出荷時に予め所定の比率で混合したトナーを収容する容器を画像形成装置に装着して使うことが可能である。この場合、通常のトナー交換作業と同様となるため、利用者に負担にならない。また、キャリアとの混合攪拌が行われるユニットにおいて、形状の異なるトナーを混合攪拌させる方法も可能である。この場合、トナー供給時は別々の容器に封入された形状や平均粒径の異なるトナーを、キャリアとの混合攪拌時に混合する方法や、予めキャリアとトナーが攪拌された現像剤の中に形状や平均粒径の異なるトナーを混合させておく方法等がある。このような、形状や平均粒径の異なるトナーを別々に供給する方法をとれば、状況に応じてトナーの混合比率を変更することで、使用トナーの凝集性を調節することが可能となる。
【0051】
本形態の画像形成装置に用いられるトナーは、その材料に関しては基本的には公知のものが全て可能である。バインダー樹脂としては、ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレンおよびその置換体の重合体が挙げられる。
【0052】
スチレンの置換重合体としては、以下のものが挙げられる:スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体等のスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックス。
【0053】
着色剤としては公知の染料および顔料が全て使用でき、例えば以下に示すもの、およびこれらの混合物が使用できる:カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン。使用量は一般にバインダー樹脂100[重量%]に対し0.1〜50[重量%]である。
【0054】
本形態のトナーの製造方法としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、高画質トナー像において体積平均粒径が小さいトナーが好適に利用できるため、以下に説明する重合法によって製造されたものが好ましい。例えば、活性水素基含有化合物と、当該活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体と、少なくとも二種の樹脂微粒子とを水系媒体中で分散させ且つ反応させて接着性基材を生成させつつトナーを得る工程を含み、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程を含む。
【0055】
前記工程においては、例えば、水系媒体相の調製、有機溶媒相の調製、乳化・分散、その他(前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(プレポリマー)の合成、前記活性水素基含有化合物の合成等)を行う。前記水系媒体相の調製は、例えば、前記少なくとも二種の樹脂微粒子を前記水系媒体に分散させることにより行うことができる。当該樹脂微粒子の当該水系媒体中の添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.5〜10[重量%]が好ましい。前記有機溶媒相の調製は、前記有機溶媒中に、前記活性水素基含有化合物、前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体、前記着色剤、前記離型剤、前記帯電制御剤、前記未変性ポリエステル樹脂等のトナー原料を、溶解乃至分散させることにより行うことができる。
【0056】
尚、前記トナー原料の中で、前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(プレポリマー)以外の成分は、前記水系媒体相調製において、前記樹脂微粒子を前記水系媒体に分散させる際に当該水系媒体中に添加混合してもよく、あるいは、前記有機溶媒相を前記水系媒体相に添加する際に、当該有機溶媒相と共に前記水系媒体相に添加してもよい。
【0057】
前記有機溶媒としては、トナー原料を溶解乃至分散可能な溶媒であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、除去の容易性の点で沸点が150[℃]未満の揮発性のものが好ましくい。例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。これらの中でも、酢酸エチル、トルエン、キシレン、ベンゼン、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等が特に好ましい。これらは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。有機溶媒の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トナー原料100[部]に対し、40〜300[部]が好ましく、60〜140[部]がより好ましく、80〜120[部]が更に好ましい。
【0058】
前記乳化・分散は、先に調製した有機溶媒相を、先に調製した水系媒体相中に乳化・分散させることにより行うことができる。そして、乳化・分散の際、活性水素基含有化合物と、活性水素基含有化合物と反応可能な重合体とを伸長反応乃至架橋反応させると、前記接着性基材が生成する。この接着性基材(例えば、前記ウレア変性ポリエステル樹脂)は、例えば、(1)前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(例えば、イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A))を含む有機溶媒相を、活性水素基含有化合物(例えば、アミン類(B))と共に、水系媒体相中に乳化・分散させ、分散体を形成し、当該水系媒体相中で両者を伸長反応乃至架橋反応させることにより生成させてもよく、(2)前記有機溶媒相を、予め活性水素基含有化合物を添加した水系媒体中に乳化・分散させ、分散体を形成し、当該水系媒体相中で両者を伸長反応乃至架橋反応させることにより生成させてもよく、あるいは(3)前記有機溶媒相を、水系媒体中に添加混合させた後で、活性水素基含有化合物を添加し、分散体を形成し、当該水系媒体相中で粒子界面から両者を伸長反応乃至架橋反応させることにより生成させてもよい。尚、前記方法(3)の場合、生成するトナー表面に優先的に変性ポリエステル樹脂が生成され、当該トナー粒子において濃度勾配を設けることもできる。
【0059】
前記乳化・分散により、接着性基材を生成させるための反応条件としては、特に制限はなく、活性水素基含有化合物と反応可能な重合体と、活性水素基含有化合物との組合せに応じて適宜選択することができ、反応時間としては、10[分間]〜40[時間]が好ましく、2[時間]〜24[時間]がより好ましく、反応温度としては、0〜150[℃]が好ましく、40〜98[℃]がより好ましい。
【0060】
前記水系媒体相中において、前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(例えば、イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A))を含む分散体を安定に形成する方法としては、例えば、前記水系媒体相中に、有機溶媒に溶解乃至分散させた活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(例えば、イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A))、前記着色剤、前記離型剤、前記帯電制御剤、前記未変性ポリエステル樹脂等のトナー原料を加えて、せん断力により分散させる方法等が挙げられる。
【0061】
前記分散は、その方法としては特に制限はなく、公知の分散機等を用いて適宜選択することができ、当該分散機としては、例えば、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波分散機等が挙げられる。これらの中でも、分散体の平均粒径を2〜20[μm]に制御することができる点で、高速せん断式分散機が好ましい。高速せん断式分散機を用いた場合、回転数、分散時間、分散温度等の条件については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば回転数としては、1000〜30000[rpm]が好ましく、5000〜20000[rpm]がより好ましく、分散時間としては、バッチ方式の場合は0.1〜5[分]が好ましく、分散温度としては、加圧下において0〜150℃が好ましく、40〜98[℃]がより好ましい。尚、分散温度は高温である方が一般に分散が容易である。
【0062】
前記乳化・分散において、水系媒体の使用量としては、トナー原料100[部]に対し、50〜2000[部]が好ましく、100〜1000[部]がより好ましい。使用量が、50[部]未満であると、トナー原料の分散状態が悪く、所定の平均粒径のトナー粒子が得られないことがあり、2,000[部]を超えると、生産コストが高くなることがある。
【0063】
前記乳化・分散においては、必要に応じて、粒度分布をシャープにし、安定に分散を行う観点から、分散剤を用いることが好ましい。分散剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、界面活性剤、難水溶性の無機化合物分散剤、高分子系保護コロイド等が挙げられる。これらは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。これらの中でも、界面活性剤が好ましい。界面活性剤としては、例えば、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。
【0064】
陰イオン界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステル等が挙げられ、フルオロアルキル基を有するものが好適に挙げられる。このフルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、例えば、以下のものが挙げられる:炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸またはその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[オメガ−フルオロアルキル(炭素数6〜11)オキシ]−1−アルキル(炭素数3〜4)スルホン酸ナトリウム、3−[オメガ−フルオロアルカノイル(炭素数6〜8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(炭素数11〜20)カルボン酸またはその金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(炭素数7〜13)またはその金属塩、パーフルオロアルキル(炭素数4〜12)スルホン酸またはその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(炭素数6〜10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(炭素数6〜10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(炭素数6〜16)エチルリン酸エステル等。このフルオロアルキル基を有する界面活性剤の市販品としては、例えば、以下のものが挙げられる:サーフロンS−111、S−112、S−113(旭硝子社製);フロラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129(住友3M社製);ユニダインDS−101、DS−102(ダイキン工業社製);メガファックF−110、F−120、F−113、F−191、F−812、F−833(大日本インキ社製);エクトップEF−102、103、104、105、112、123A、123B、306A、501、201、204(ト−ケムプロダクツ社製);フタージェントF−100、F150(ネオス社製)等。
【0065】
前記陽イオン界面活性剤としては、例えば、アミン塩型界面活性剤、四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤等が挙げられる。アミン塩型界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリン等が挙げられる。四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。
【0066】
前記陽イオン界面活性剤の中でも、フルオロアルキル基を有する脂肪族一級、二級または三級アミン酸、パーフルオロアルキル(炭素数6〜10個)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩等の脂肪族四級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等が挙げられる。陽イオン界面活性剤の市販品としては、例えば、サーフロンS−121(旭硝子社製)、フロラードFC−135(住友3M社製)、ユニダインDS−202(ダイキン工業杜製)、メガファックF−150、F−824(大日本インキ社製)、エクトップEF−132(ト−ケムプロダクツ社製)、フタージェントF−300(ネオス社製)等が挙げられる。
【0067】
前記非イオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体等が挙げられる。
前記両性界面活性剤としては、例えば、アラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシン、N−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムべタイン等が挙げられる。
【0068】
前記難水溶性の無機化合物分散剤としては、例えば、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイト等が挙げられる。
前記高分子系保護コロイドとしては、例えば、酸類、水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体、ビニルアルコールまたはビニルアルコールとのエーテル類、ビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類、アミド化合物またはこれらのメチロール化合物、クロライド類、窒素原子若しくはその複素環を有するもの等のホモポリマーまたは共重合体、ポリオキシエチレン系、セルロース類等が挙げられる。酸類としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマール酸、マレイン酸、無水マレイン酸等が挙げられる。水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体としては、以下のものが挙げられる:アクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ2−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等。ビニルアルコールまたはビニルアルコールとのエーテル類としては、例えば、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル等が挙げられる。前記ビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等が挙げられる。アミド化合物またはこれらのメチロール化合物としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド酸、またはこれらのメチロール化合物等が挙げられる。クロライド類としては、例えば、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド等が挙げられる。前記窒素原子若しくはその複素環を有するもの等ホモポリマーまたは共重合体としては、例えば、ビニルビリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミン等が挙げられる。ポリオキシエチレン系としては、例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステル等が挙げられる。セルロース類としては、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
【0069】
前記乳化・分散においては、必要に応じて分散安定剤を用いることができる。この分散安定剤としては、例えば、リン酸カルシウム塩等の酸、アルカリに溶解可能なもの等が挙げられる。分散安定剤を用いた場合は、塩酸等の酸によりリン酸カルシウム塩を溶解した後、水洗する方法、酵素により分解する方法等によって、微粒子からリン酸カルシウム塩を除去することができる。
【0070】
前記乳化・分散においては、前記伸長反応乃至前記架橋反応の触媒を用いることができる。当該触媒としては、例えば、ジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレート、等が挙げられる。
【0071】
前記乳化・分散において得られた乳化スラリーから、有機溶媒を除去する。有機溶媒の除去は、(1)反応系全体を徐々に昇温させて、液滴中の前記有機溶媒を完全に蒸発除去する方法、(2)乳化分散体を乾燥雰囲気中に噴霧して、液滴中の非水溶性有機溶媒を完全に除去してトナー微粒子を形成し、併せて水系分散剤を蒸発除去する方法等が挙げられる。
【0072】
有機溶媒の除去が行われると、トナー粒子が形成される。当該トナー粒子に対し、洗浄、乾燥等を行うことができ、更にその後、所望により分級等を行うことができる。この分級は、例えば、液中でサイクロン、デカンター、遠心分離等により、微粒子部分を取り除くことにより行うことができ、乾燥後に粉体として取得した後に分級操作を行ってもよい。
【0073】
こうして、得られたトナー粒子を、着色剤、離型剤、帯電制御剤等の粒子と共に混合したり、更に機械的衝撃力を加えることにより、当該トナー粒子の表面から離型剤等の粒子が脱離するのを防止することができる。機械的衝撃力を加える方法としては、例えば、高速で回転する羽根によって混合物に衝撃力を加える方法、高速気流中に混合物を投入し加速させて粒子同士または複合化した粒子を適当な衝突板に衝突させる方法等が挙げられる。この方法に用いる装置としては、例えば、オングミル(ホソカワミクロン社製)、I式ミル(日本ニューマチック社製)を改造して粉砕エアー圧力を下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所社製)、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、自動乳鉢等が挙げられる。
【0074】
更に、本発明の画像形成装置に用いられるトナーとしては、表面が外添剤によって被覆されているトナーが好適である。トナーの表面を外添剤で被覆することにより、トナーと感光体との付着力が低減され、中抜けが発生し難くなる。外添剤の外添剤被覆率としては、10〜90[%]であることが好ましく、30〜60[%]であることがより好ましい。外添剤被覆率が10[%]未満であると、トナーと感光体との間の付着力を適切な大きさにすることが困難となり、中抜けの増加を引き起こす。外添剤被覆率が90[%]を超えると、外添剤の遊離が発生し易くなり、特に繰返しの画像形成により感光体等の画像形成装置の構成部材が損傷し易くなることがある。尚、外添剤被覆率は、トナー一粒子の表面積に対する外添剤の被覆面積比を、トナー表面の電子顕微鏡画像を画像解析することによって計測することが可能である。
【0075】
外添剤は一次粒子径の平均値が50[nm]〜150[nm]である微粒子と、この微粒子より小粒径の超微粒子とを混合したものであることが好適である。外添剤粒径は小粒径である方が、付着力が小さく、凝集性が低いが、平均粒径が50[nm]未満の粒子では、トナーが長期間攪拌された時にトナー母体表面に外添剤が埋没してしまう。外添剤が埋没することにより、トナーの付着力が変化し、中抜けを増加させ、画質の低下を引き起こすこととなる。また、粒径の大きい粒子であるほど、圧縮時のトナー母体の変形を防ぎ、圧縮後のトナー間付着力の増加を低減させることができる。しかし、平均粒径が150[nm]を超える外添剤粒子を使用すると、トナー母体から離脱し易くなり他部材への付着が起こり、感光体フィルミング等による異常画像を引き起こす。このため、小粒径の外添剤の使用により凝集性を低減させ、トナー圧縮後の付着力増加を防ぎ、トナーが長期間攪拌された時の付着力の増加を防ぎ、凝集性、流動性の安定を図るために平均粒径が50〜150[nm]の外添剤粒子を混合して使用することが効果的である。また、外添剤の形状は実質的に球形であることが好ましい。外添剤形状を球形にすることにより、長期間攪拌された時のトナー母体への埋没が進行し難くなる。
【0076】
外添剤の材料に関しては基本的には公知のものが全て可能であり、シリカ(SiO)、酸化チタン(TiO)、アルミナ(Al)等がより好適である。記外添剤としては、例えば、吸湿性を有する無機微粒子である場合には、環境安定性等を考慮すると、疎水化処理を施したものが好ましい。疎水化処理の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、疎水化処理剤と前記微粉末とを高温度下で反応させる方法等が挙げられる。疎水化処理剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シラン系カップリング剤、シリコーンオイル等が挙げられる。
【0077】
外添剤の外添方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノフージョン等の各種混合装置を用い方法が好適に挙げられる。
【0078】
本発明に使用される感光体も、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、金属からなる円筒体の周面に、感光層としての光導電性の有機半導体(OPC)等を塗布してなる構造が好適に挙げられる。
【0079】
前記感光体表面と水との接触角としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、90°以上であることが好ましい。接触角が90°未満であると、トナー/感光体間の付着力が大きく、遠心力により一粒子あたり2.6×10[N/m]で圧縮した後のトナー/中間転写ベルト間に働く非静電的付着力の平均値Fbpとトナー/感光体間に働く非静電的付着力Fppの関係が、Fpp>Fbpとなり易い。Fpp>Fbpの関係になると、トナー間付着力Ftが大きくFtp>Fbpの関係となる場合には中抜けが発生し易く、Ftp<Fbpの場合には転写率低下が発生し易い。前記接触角の測定としては、協和界面科学(株)社製自動接触角計CA−Wを用いて行うことが可能である。感光体表面における水との接触角を90°以上とする方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、感光体表面における表面エネルギーを小さくする方法が挙げられる。
【0080】
感光体表面における表面エネルギーを小さくする方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、感光層としての光導電性の有機半導体(OPC)材料に、表面エネルギーの小さい材料を添加する方法、表面エネルギーの小さい材料を感光層の厚み方向に濃度分布を持たせて存在させる方法、感光体表面に撥水性物質等を塗布する方法等が好適に挙げられる。
【0081】
表面エネルギーの小さい材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、パーフルオロアルキルビニルエーテル、これらの中から選ばれる二種以上を含有する重合体、これらの中から選ばれる二種以上を含有する共重合体、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸鉄等の金属石鹸、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンポリシロキサン、環状ジメチルポリシロキサン、アルキル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸変性シリコーンオイル等のシリコーンオイル、酸化チタン、シリカ、酸化アルミ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化アンチモンをドープした酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物等が挙げられる。
【0082】
前記感光体表面に撥水性物質等を塗布する方法としては、例えば、撥水性物質等をアルコール等の適当な溶媒に希釈し、感光体最表面に塗布方法等が挙げられる。感光体表面に撥水性物質等を塗布することにより、感光体表面が低表面エネルギー化され、接触角の条件を満たすことができる。
【0083】
前記撥水性物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンポリシロキサン、環状ジメチルポリシロキサン、アルキル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸変性シリコーンオイル等のシリコーンオイル、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルジメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のメルカプト基を含有するシランカップリング剤、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のエポキシ基を含有するカップリング剤、フッ素含有シランカップシング剤等のシランカップリング剤、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、イソプロピルトリ、(ジオクチルパイロホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリルデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、イソプロピルトリオクタノイトチタネート等のチタンカップリング剤等が挙げられる。
【0084】
感光体の表面エネルギーを低下させる方法として、感光体表面に固形潤滑剤を塗布する方法がある。本発明の画像形成装置には感光体表面に固形潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布手段を有することが好ましい。感光体表面に固形潤滑剤を塗布することにより感光体の表面エネルギーが下がり、付着力が低下する。これにより、Fpp<Fbpの条件に達し易くなり、中抜けを低減することができる。固形潤滑剤としては、例えば、オレイン酸鉛、オレイン酸亜鉛、オレイン酸銅、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸鉄、ステアリン酸銅、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸銅、リノレン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩類や、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリトリフルオロクロルエチレン、ジクロロジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−オキサフルオロプロピレン共重合体等のフッ素系樹脂が挙げられる。特に、感光体の摩擦を低減する効果の大きいステアリン酸金属塩、更にはステアリン酸亜鉛が一層好ましい。
【0085】
本発明の画像形成装置に使用される中間転写ベルトのヤング率は6000Mpa以下であることが好ましい。ヤング率は、JIS K 7127に準じて引張試験を行い、得られた応力・歪曲線の初期ひずみ領域の曲線に接線を引き、その傾きにより求める。本発明者の検討により、中間転写ベルトのヤング率が低い方が遠心力により一粒子あたり2.6×10[N/m]で圧縮した後のトナー/中間転写ベルト間に働く非静電的付着力の平均値Fbpが大きい傾向を示すことが分かった。これは、中間転写ベルトのヤング率が低いと圧力印加により中間転写ベルトが変形し易く、トナー/中間転写ベルト間の接触面積が増加して、付着力が大きくなるものと考えられる。
【0086】
Fbpが大きい方がFbp>Fppとなり易い。Fbp>Fppとなると、Ftが大きくFtp>Fbpとなり凝集体が形成し易い場合でも圧縮時に形成されるトナーの凝集体が集団で中間転写ベルト側へ移動するため、中抜けが発生し難い。中間転写ベルトのヤング率が6000Mpa以上であると中間転写ベルト側が変形し難いため、転写時にトナー層に強い圧力が加わり、凝集体が発生し易い上に、トナー/中間転写ベルト間の付着力が小さいために、凝集体が感光体側に残留し易くなり、中抜けの発生が顕著となる。
【0087】
また、本発明の画像形成装置に用いられる中間転写ベルトの材質や構成は特に制限されず、公知の材料および構成が全て使用できるが、性質の異なる複数層から構成されるものが好ましい。材料および構成の一例を以下に示す。(1)ヤング率(引張弾性率)の高い材料を単層ベルトとして用いたものであり、PC(ポリカーボネート)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PAT(ポリアルキレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)/PAT(ポリアルキレンテレフタレート)のブレンド材料、ETFE(エチレンテトラフロロエチレン共重合体)/PC、ETFE/PAT、PC/PATのブレンド材料、カーボンブラック分散の熱硬化性ポリイミド等。これらヤング率の高い単層ベルトは画像形成時の応力に対する変形量が少なく、特にカラー画像形成時にレジズレを生じ難いという利点を有しているが、ヤング率が高すぎると中抜けが発生し易い。(2)上記のヤング率の高いベルトを基層とし、その外周上に表面層または中間層を付与した2〜3層構成のベルト。これら2〜3層構成のベルトは、ヤング率の調整や抵抗の調整が可能となり、それら特性に由来した異常画像を防止することができる。層の中にはゴムやエラストマーを用いた弾性層を用いることも可能である。
【0088】
本発明の画像形成装置に使用される中間転写ベルトは、層の一部を弾性層にした中間転写ベルトを使用することが好ましい。また、弾性層は発泡体層とすることも可能である。更に、中間転写ベルトを多層構成とし、発泡体層を含む場合、表層には無発泡体層を形成することが好ましい。表層を発泡体層とした場合、表層の穴にトナーが入り込むことや、付着力が大きくなりすぎて二次転写の転写率が下がる等の悪影響が生じる可能性がある。
【0089】
弾性ベルトの樹脂は、ポリカーボネート、フッ素系樹脂(ETFE,PVDF)、ポリスチレン、クロロポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体(例えば、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体およびスチレン−アクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体(例えば、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体等のスチレン系樹脂(スチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体)、メタクリル酸メチル樹脂、メタクリル酸ブチル樹脂、アクリル酸エチル樹脂、アクリル酸ブチル樹脂、変性アクリル樹脂(例えば、シリコーン変性アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂変性アクリル樹脂、アクリル・ウレタン樹脂等)、塩化ビニル樹脂、スチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニリデン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂およびポリビニルブチラール樹脂、ポリアミド樹脂、変性ポリフェニレンオキサイド樹脂等からなる群より選ばれる一種類あるいは二種類以上の組み合わせを使用することができる。ただし、上記材料に限定されるものではないことは当然である。
【0090】
弾性材ゴム、エラストマーとしては、ブチルゴム、フッ素系ゴム、アクリルゴム、EPDM、NBR、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンゴム天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレンターポリマー、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴム、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン、エピクロロヒドリン系ゴム、リコーンゴム、フッ素ゴム、多硫化ゴム、ポリノルボルネンゴム、水素化ニトリルゴム、熱可塑性エラストマー(例えば、ポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、ポリウレア,ポリエステル系、フッ素樹脂系)等からなる群より選ばれる一種類あるいは二種類以上の組み合わせを使用することができる。ただし、上記材料に限定されるものではない。
【0091】
発泡体層に好適な材料は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ビスコース、アイオノマー等の熱可塑性フォームまたはウレタン、ラバーフォーム、エポキシ、フェノールユリア、ピラニル、シリコーン、アクリル等の熱硬化性フォームが挙げられるが、その中でウレタンが最適である。また、発泡体層の材料がウレタンである場合、ポリオールとしては、疎水性および親水性のいかなるポリオールでも使用できる。中でも、ポリプロピレングリコールおよびエチレンオキサイド付加体のポリエーテル系のポリオールが好ましい。また、発泡体層のセル形態は、単泡、連泡等の何れの形態でも使用可能だが、連泡の方が温度による寸法変化が少ないので好ましい。発泡体層の上に他の層を形成する場合に、発泡体層の外皮、即ち、スキン層は研磨により除いても良いし、研磨せずにそのまま他の層を形成しても良い。尚、他の層と発泡体層との間に接着層を設けることもできる。
【0092】
抵抗値調節用導電剤にも特に制限はないが、例えば、カーボンブラック、グラファイト、アルミニウムやニッケル等の金属粉末、酸化錫、酸化チタン、酸化アンチモン、酸化インジウム、チタン酸カリウム、酸化アンチモン−酸化錫複合酸化物(ATO)、酸化インジウム−酸化錫複合酸化物(ITO)等の導電性金属酸化物を用いることができる。導電性金属酸化物は、硫酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の絶縁性微粒子を被覆したものでもよい。この中で、価格が安く、少量で導電性を制御し易いものは、カーボンブラックである。発泡体層であるウレタンに用いる場合は100重量部に対して0.5〜50重量部、特に1〜30重量部の範囲で好適に用いられる。
【0093】
また、表層は表面エネルギーを小さくすることが好ましく、ポリウレタン、ポリエステル、エポキシ樹脂等の一種類あるいは二種類以上の組み合わせを使用し潤滑性を高める材料、例えばフッ素樹脂、フッ素化合物、フッ化炭素、2酸化チタン、シリコンカーバイト等の粉体、粒子群を一種類あるいは二種類以上または平均粒径が異なるものの組み合わせを分散させ使用することができる。また、フッ素系ゴム材料のように熱処理を行うことで表面にフッ素リッチな層を形成させ表面エネルギーを小さくさせたものを使用することもできる。転写体層の製造方法は限定されるものではなく、例えば、回転する円筒形の型に材料を流し込みベルトを形成する遠心成型法、液体塗料を噴霧し膜を形成させるスプレイ塗工法、円筒形の型を材料の溶液の中に浸けて引き上げるディッピング法、内型,外型の中に注入する注型法、円筒形の型にコンパウンドを巻き付け,加硫研磨を行う方法等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、複数の製法を組み合わせて製造することが一般的である。
【0094】
ベルト状の場合の伸びを防止する方法として、伸びの少ない芯体樹脂層にゴム層を形成する方法、芯体層に伸びを防止する材料を入れる方法等があるが、特定の製法に限定されるものではない。伸びを防止する芯体層を構成する材料は、例えば、綿、絹、等の天然繊維;ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリビニルアルコール繊維,ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、ポリウレタン繊維、ポリアセタール繊維、ポリフロロエチレン繊維、フェノール繊維等の合成繊維;炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維等の無機繊維;鉄繊維、銅繊維等の金属繊維からなる群より選ばれる一種あるいは二種以上の組み合わせ用いて、織布状または糸状としたものも用いられる。もちろん上記材料に限定されるものではない。糸は一本または複数のフィラメントを撚ったもの、片撚糸、諸撚糸、双糸等、どのような撚り方であってもよい。また、例えば上記材料群から選択された材質の繊維を混紡してもよい。もちろん糸に適当な導電処理を施して使用することもできる。一方、織布は、メリヤス織り等どのような織り方の織布でも使用可能であり、もちろん交織した織布も使用可能であり当然導電処理を施すこともできる。
【0095】
芯体層を設ける製造方法は特に限定されるものではない、例えば、筒状に織った織布を 金型等に被せ、その上に被覆層を設ける方法、筒状に織った織布を液状ゴム等に浸漬して芯体層の片面あるいは両面に被覆層を設ける方法、糸を金型等に任意のピッチで螺旋状に巻き付け、その上に被覆層を設ける方法等を挙げることができる。
【0096】
弾性層の厚さは、弾性層の硬度にもよるが、厚すぎると表面の伸縮が大きくなり表層に亀裂が発生し易くなる。また、伸縮量が大きくなることにより、画像に伸び縮みが大きくなること等から、厚すぎる(およそ1mm以上)ことは好ましくない。
【0097】
更に、本形態に用いられる中間転写ベルトの体積抵抗率は10〜1012Ωcmの範囲とすることが好ましい。本形態に用いられる中間転写ベルトにはヤング率、反発弾性を制御するために弾性層を用いることが好適であるが、抵抗の制御も重要である。中間転写ベルトの体積抵抗率が上記範囲を超えると、転写に必要なバイアスが高くなるため、電源コストの増大を招くため好ましくない。また、転写工程、転写材剥離工程等で中間転写ベルトの帯電電位が高くなり、且つ自己放電が困難になるため除電手段を設ける必要が生じる。また、体積抵抗率が上記範囲を下回ると、帯電電位の減衰が早くなるため自己放電による除電には有利となるが、転写後のトナー飛び散りが発生してしまう。
【実施例】
【0098】
以下、本発明を適用した電子写真用トナーの具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0099】
[実施例1]
まず、トナーバインダーの合成について説明する。
冷却管、攪拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4―ヒドロキシフェーノール)プロパン810[部]、テレフタル酸300[部]およびジブチルチンオキサイド2[部]を入れ、常圧で230[℃]で8[時間]反応し、更に10〜15[mmHg]の減圧で5[時間]反応した後、160[℃]まで冷却して、これに32[部]の無水フタル酸を加えて2[時間]反応した。
【0100】
次いで、80[℃]まで冷却し、酢酸エチル中にてイソホロンジイソシアネート188[部]と2[時間]反応を行い、イソシアネート含有プレポリマー(1)を得た。次いでプレポリマー(1)267[部]とイソホロンジアミン14[部]を50[℃]で2時間反応させ、重量平均分子量58000のウレア変性ポリエステル(1)を得た。上記と同様にビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物724[部]、テレフタル酸276[部]を常圧下、250[℃]で5[時間]重縮合し、次いで10〜15[mmHg]の減圧で5時間反応して、ピーク分子量5000の変性されていないポリエステル(a)を得た。ウレア変性ポリエステル(1)200[部]と変性されていないポリエステル(a)800[部]を酢酸エチル溶媒2000[部]に溶解、混合し、トナーバインダー(1)の酢酸エチル溶液を得た。一部減圧乾燥し、トナーバインダー(1)の物性を測定した。MW分布のピーク5500、Tgは71[℃]、酸価は5.5であった。
【0101】
次に、トナーの作製について説明する。
ビーカー内に前記トナーバインダー(1)の酢酸エチル溶液240[部]、銅フタロシアニンブルー顔料4[部]を入れ、60[℃]にてTK式ホモミキサーで12000[rpm]で攪拌し、均一に溶解、分散させた。ビーカー内にイオン交換水706[部]、ハイドロキシアパタイト10%懸濁液(日本化学工業(株)製スーパタイト10)294[部]、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.2[部]を入れて均一に溶解した。次いで60[℃]に昇温し、TK式ホモミキサーで12000[rpm]に攪拌しながら、上で述べたトナー材料の溶液を投入し10[分間]攪拌した。次いでこの混合液を攪拌棒および温度計付のコルベンに移し、98[℃]まで昇温して溶媒を除去し、濾別、洗浄、乾燥した後、風力分級し、母体粒子を得た。
【0102】
帯電制御剤としてサリチル酸誘導体の亜鉛塩をトナー量の4.0[重量%]混合し、加温雰囲気中で攪拌し、トナーの表面に帯電制御剤を固着させ、体積平均粒径が5.8[μm]、真円度の平均値1.34のトナー母粒子Aを得た。このトナー母粒子Aに対して、疎水化処理したシリカA(一次粒子径平均値25[nm])をトナー量0.85[重量%]、疎水化処理した酸化チタンA(一次粒子径平均値15[nm])をトナー量0.95[重量%]となるように配合し、ヘンシェルミキサーによって攪拌混合処理して実施例1のトナー粒子を作製した。
【0103】
−中抜けの評価−
次に、上記実施例1で得られたトナーにおいて、リコー製カラー複写機ImagioNeo C7500改造機を用いて、転写加圧スプリング力16Nのときの中抜け評価を行った。この時、感光体と転写ベルトには潤滑剤を塗布しないようにした。
【0104】
本装置の加圧スプリングは、転写ローラの両端に一つずつ設置されており、転写加圧スプリング力は、両端のスプリング力の合計値である。中抜けランクは主走査方向3ドット、副走査方向60ドットの細線が均等に配置されたテストチャートを使用して、出力された画像に対し、中抜けの状態を1〜5の五段階(1が悪く5が良い)にランク評価したものである。ランク4以上は画像として問題のない範囲である。
【0105】
各ランクの評価基準は以下のとおりである:
ランク5:目視観察で中抜けが発見されない状態
ランク4:目視観察で中抜けを判断することが難しいくらいに辛うじて中抜けを発見できる状態
ランク3:目視観察で中抜けを辛うじて発見でき、その中抜けが画像品質を損ねない状態
ランク2:目視観察で中抜けを比較的容易に発見できる状態
ランク1:目視観察で誰が観察しても中抜けをすぐに発見できる状態
【0106】
また、潤滑剤を塗布しない感光体と水との接触角は80度、中間転写ベルトはポリイミドを主とする単層構成厚さ60μmのベルトでヤング率6800Mpaであった。
【0107】
−圧縮後のトナー付着力の測定−
遠心分離法を用いて、上記実施例1で得られたトナーの一粒子あたり2.6×10[N/m]の力で圧縮した後のトナー間付着力Ftp、およびトナー/感光体間付着力Fpp、トナー/中間転写ベルト間付着力Fbpを測定する。感光体は上記リコー製カラー複写機ImagioNeo C7500に搭載されている未使用の感光体を使用し、中間転写ベルトも同製品の転写ベルトを使用した。その際、トナー間の加圧力0[N/m]のときの付着力も測定し、加圧力に対するFt/Dtの傾きLも算出する。
【0108】
付着力測定に使用した装置および測定条件は以下のとおりである。
遠心分離装置:日立工機製CP100α(最高回転数:100000rpm、最大加速度:800000G)
ロータ:日立工機製アングルロータP100AT
画像処理装置:インタークエスト製ImageHyper700
試料基板と受け基板:直径8mm、厚み1.5mmの円板で、材料はアルミニウム
スペーサ:外径8mm、内径5.2mm、厚み1mmのリングで、材料はアルミニウム
保持部材:直径13mm、長さ59mmの円筒で、材料はアルミニウム
ロータの中心軸から試料基板のトナー付着面までの距離:64.5mm
【0109】
−結果−
上述の実施例1のトナーのFpp、Fbp、Ftpおよび加圧力に対するFt/Dtの傾きLは次のようになった。
Fpp=82[nN]
Fbp=50[nN]
Ftp=32[nN]
L=1.64×10−4
中抜けランクは4であった。
【0110】
[比較例1]
トナー組成物である樹脂や着色剤等を混合攪拌した後に、溶融混練し、次いで、溶融混練された前記構成材料を粉砕・分級して不定形のトナー母粒子Bを得た。トナー母粒子Bの体積平均粒径は、7.0[μm]、真円度の平均値は1.55であった。
【0111】
トナー母粒子Bに対して、疎水化処理したシリカA(一次粒子径平均値25[nm])をトナー量0.7[重量%]、疎水化処理した酸化チタンA(一次粒子径平均値15[nm])をトナー量0.8[重量%]となるように配合し、ヘンシェルミキサーによって攪拌混合処理して実施例1のトナー粒子を作製した。
【0112】
以上のようにして得られた比較例1のトナーにおいて実施例1と同様にして、Fpp、Fbp、Ftp、傾きLの値を算出し、中抜けの評価を行った。
Fpp=115[nN]
Fbp=75[nN]
Ftp=85[nN]
L=4.29×10−4
中抜けランクは1であった。
【0113】
比較例1では、トナーの真円度が高いため、圧縮後のトナー間の付着力が大きく増加したと考えられる。結果、FtpがFbpより大きくなり、中抜けが悪化した。
【0114】
[実施例2]
比較例1と同様に作製したトナー母粒子Bを熱気流中で結着樹脂の軟化点転以上の温度に加熱することにより球形化処理を施し、更に、球形処理を施した後、分級して球形のトナー母粒子Cを作製した。得られたトナー母粒子Cの体積平均粒径は、7.0[μm]、真円度の平均値は1.21であった。
【0115】
トナー母粒子Cに対して、疎水化処理したシリカA(一次粒子径平均値25[nm])をトナー量0.7[重量%]、疎水化処理した酸化チタンA(一次粒子径平均値15[nm])をトナー量0.8[重量%]となるように配合し、ヘンシェルミキサーによって攪拌混合処理して実施例1のトナー粒子を作製した。
【0116】
以上のようにして得られた、実施例2のトナーにおいて実施例1と同様にして、Fpp、Fbp、Ftp、傾きLの値を算出し、中抜けの評価を行った。
Fpp=85[nN]
Fbp=52[nN]
Ftp=41[nN]
L=1.87×10−4
中抜けランクは5であった。
【0117】
[実施例3]
比較例1と同様にして体積平均粒径、7.0[μm]、真円度の平均値1.55のトナーを使用し、感光体に潤滑剤を塗布して実験を行った。実施例1と同様の画像形成装置に感光体への潤滑剤塗布を行った。潤滑剤にはステアリン酸亜鉛を用いた。付着力測定にも同様の潤滑剤を塗布した感光体について測定した。このとき、潤滑剤の塗布量を変化させることによって、感光体と水との接触角を92°以上に保った。
【0118】
以上のようにして得られた、実施例3のトナーにおいて実施例1と同様にして、Fpp、Fbp、Ftp、傾きLの値を算出し、中抜けの評価を行った。
Fpp=59[nN]
Fbp=75[nN]
Ftp=85[nN]
L=4.29×10−4
中抜けランクは5であった。
【0119】
実施例3では、比較例1と同様のトナーを用いたが、感光体へ潤滑剤を塗布したことにより感光体の付着力が低下したと考えられる。結果、FppがFbpより小さくなり、中抜けランクは5と良好になった。
【0120】
[比較例2]
実施例1と同様にして体積平均粒径、5.8[μm]、真円度の平均値1.34のトナーを使用し、中間転写ベルトに潤滑剤を塗布して実験を行った。実施例1と同様の画像形成装置に中間転写ベルトへの潤滑剤塗布を行った。潤滑剤にはステアリン酸亜鉛を用いた。付着力測定にも同様の潤滑剤を塗布した中間転写ベルトについて測定した。
【0121】
以上のようにして得られた、比較例2のトナーにおいて実施例1と同様にして、Fpp、Fbp、Ftp、傾きLの値を算出し、中抜けの評価を行った。
Fpp=82[nN]
Fbp=27[nN]
Ftp=32[nN]
L=1.64×10−4
中抜けランクは2であった。
【0122】
比較例2では、実施例1と同様のトナーを用いたが、中間転写ベルトへ潤滑剤を塗布したことにより中間転写ベルトの付着力が低下したと考えられる。結果、FbpがFtpより小さくなり、中抜けランクが悪化した。
【0123】
[実施例4]
比較例1で使用した真円度1.52のトナーと、実施例2で使用した真円度1.21トナーとを1:1の重量比で混合し、体積平均粒径7.0[μm]、真円度の平均値が1.38となったトナーを作製した。
【0124】
以上のようにして得られた、実施例4のトナーにおいて実施例1と同様にして、Fpp、Fbp、Ftp、傾きLの値を算出し、中抜けの評価を行った。
Fpp=89[nN]
Fbp=60[nN]
Ftp=57[nN]
L=3.13×10−4
中抜けランクは4であった。
【0125】
このように、真円度の異なるトナー同士を混合することにより、真円度が高く中抜けし易いトナーも使いこなすことが可能となる。
【0126】
[実施例5]
比較例1と同様にトナー組成物である樹脂や着色剤等を混合攪拌した後に、溶融混練し、次いで、溶融混練された前記構成材料を粉砕・分級して不定形のトナー母粒子Dを得た。トナー母粒子Dの体積平均粒径は、3.6[μm]、真円度の平均値は1.55であった。疎水化処理したシリカA(一次粒子径平均値25[nm])をトナー量1.35[重量%]、疎水化処理した酸化チタンA(一次粒子径平均値15[nm])をトナー量1.5[重量%]となるように配合し、ヘンシェルミキサーによって攪拌混合処理してトナーを作製した。この体積平均粒径3.6[μm]のトナーと比較例1で作製した体積平均粒径7.0[μm]、真円度の平均値1.55のトナーを重量比1:1で混合し、実施例5のトナーを作製した。
【0127】
以上のようにして得られた、実施例5のトナーにおいて実施例1と同様にして、Fpp、Fbp、Ftp、傾きLの値を算出し、中抜けの評価を行った。
Fpp=80[nN]
Fbp=49[nN]
Ftp=30[nN]
L=1.72×10−4
中抜けランクは4であった。
【0128】
このように、平均粒径の異なるトナー同士を混合することにより、同程度の平均粒径のトナーよりも充填率が高まり、圧縮後のトナー間付着力の増加が抑制されたと考えられる。その結果、中抜けの発生も抑制された。
【0129】
[実施例6]
中間転写ベルトを新たに作製して使用する以外は比較例1と同様の条件、同様のトナーで評価を行った。中間転写ベルトは次のように作製した。ポリイミドワニス中の樹脂成分100重量部に対して、CB20重量部を添加して均一分散させ、1000rpmで回転する円筒形金型に注入し、130℃、100分乾燥させながら遠心成型を行った。型から剥がしたポリイミドフィルムを円筒型にかぶせ、300℃にて硬化処理を行った。そして、NBRゴム100重量部、加硫剤(沈降硫黄)2重量部、CB20重量部、可塑剤30重量部のコンパウンドを、上記ポリイミドフィルムに巻き付け、150℃、80分の加熱加硫を行った。これを研磨後、表層にポリウレタンプレポリマー100重量部、硬化剤(イソシアネート)3重量部、PTFE微粉末粉体50重量部、分散剤 4重量部、MEK 500重量部を均一分散させた分散液をスプレー塗布し、室温で乾燥後、130℃で100分の架橋を行った。このようにして、樹脂層;90μm、弾性層;80μmの転写ベルトを得た。得られた転写ベルトのヤング率は5400Mpaであった。評価結果を以下に示す。
Fpp=115[nN]
Fbp=124[nN]
Ftp=85[nN]
L=4.29×10−4
中抜けランクは5であった。
【0130】
このように、中間転写ベルトに弾性層を設けることによりヤング率が低下する。結果、FbpがFppより大きくなり、中抜けランクが発生し難い。
【0131】
[比較例3]
比較例1で使用したトナー素材を粉砕・分級して、体積平均粒径、4.0[μm]、真円度の平均値1.56のトナートナー母粒子B’を作製し、外添剤のトナー表面に対する被覆率が比較例1と同様になるように、比較例1と同様の外添剤を添加してトナー粒子を作製した。
【0132】
以上のようにして得られた比較例3のトナーにおいて、比較例1と同様にして、Fpp、Fbp、Ftp、傾きLの値を算出し、中抜けの評価を行った。評価結果を以下に示す。
Fpp=64[nN]
Fbp=43[nN]
Ftp=51[nN]
L=4.50×10−4
中抜けランクは1であった。
【0133】
[実施例7]
比較例3と同様に作製したトナー母粒子B’を熱気流中で結着樹脂の軟化点転以上の温度に加熱することにより球形化処理を施し、更に、球形処理を施した後、分級して球形のトナー母粒子C’を作製した。得られたトナー母粒子C’の体積平均粒径は、4.0[μm]、真円度の平均値は1.23であった。
【0134】
以上のようにして得られたトナーにおいて比較例1と同様にして、Fpp、Fbp、Ftp、傾きLの値を算出し、中抜けの評価を行った。評価結果を以下に示す。
Fpp=48[nN]
Fbp=30[nN]
Ftp=23[nN]
L=1.85×10−4
中抜けランクは5であった。
【0135】
比較例1、実施例2、比較例3、実施例7の結果から、粒径が異なっていても加圧力2.6×10[N/m]で圧縮した後の付着力を比較することで、トナー形状に依存した中抜けの特性を評価することができる。
【0136】
[比較例4]
ビーカー内に、実施例1と同様にして得たトナーバインダー(1)の酢酸エチル溶液240[部]、銅フタロシアニンブルー顔料4[部]を入れ、60[℃]にてTK式ホモミキサーで12000[rpm]で攪拌し、均一に溶解、分散させた。ビーカー内にイオン交換水706[部]、ハイドロキシアパタイト10%懸濁液(日本化学工業(株)製スーパタイト10)294[部]、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.2[部]を入れ均一に溶解した。次いで60[℃]に昇温し、TK式ホモミキサーで12000[rpm]に攪拌しながら、上で述べたトナー材料の溶液を投入し10[分間]攪拌した。次いでこの混合液を攪拌棒および温度計付のコルベンに移し、攪拌周速20[m/分]で攪拌しながら35[℃]、減圧下の条件下9[時間]で溶媒を除去し、濾別、洗浄、乾燥した後、風力分級し、トナー母粒子Eを得た。
【0137】
帯電制御剤としてサリチル酸誘導体の亜鉛塩をトナー量の4.0[重量%]混合し、加温雰囲気中で攪拌し、トナーの表面に帯電制御剤を固着させ、体積平均粒径が5.9[μm]、真円度の平均値1.47のトナー母粒子E’を得た。このトナー母粒子E’に対して、疎水化処理したシリカA(一次粒子径平均値25[nm])をトナー量の0.85[重量%]、疎水化処理した酸化チタンA(一次粒子径平均値15[nm])をトナー量の0.95[重量%]となるように配合し、ヘンシェルミキサーによって攪拌混合処理して比較例4のトナー粒子を作製した。
【0138】
以上のようにして得られた、比較例4のトナーにおいて実施例1と同様にして、Fpp、Fbp、Ftp、傾きLの値を算出し、中抜けの評価を行った。
Fpp=107[nN]
Fbp=70[nN]
Ftp=76[nN]
L=3.50×10−4
中抜けランクは2であった。
【0139】
比較例4では、トナーの真円度が高いため、圧縮後のトナー間の付着力が大きく増加したと考えられる。結果、FtpがFbpより大きくなり、中抜けが悪化した。
【0140】
実施例1、2、3、4、5、6、7および比較例1、2、3の遠心力により一粒子あたり2.6×10[N/m]で圧縮した後のトナー間付着力Ftp、トナー/感光体間の付着力Fpp、トナー/中間転写ベルト間の付着力Fbpと、加圧力に対するFt/Dtの傾きLと、トナーの真円度と、転写加圧スプリング力16[N]で画像形成を行った際の中抜けランクを表1に示す(Ft:トナー間付着力、Dt:トナー平均粒径)。
【0141】
【表1】

【0142】
表1に示すように、実施例1〜実施例5は遠心力により一粒子あたり2.6×10[N/m]で圧縮した後のトナー間の非静電付着力Ftp、トナー/感光体間の非静電付着力Fpp、トナー/中間転写ベルト間の非静電付着力Fbpの関係が、Fbp>Ftp(条件1)またはFbp>Fpp(条件2)であり、転写加圧スプリング力16[N]の時の中抜けランクが高く、通常に使用した場合の画像形成装置において良好な画像が得られる。
【0143】
また、感光体および中間転写ベルトの表面状態が同じである実施例1、2、4、5、7と比較例1、3、4を比べると、トナー間の非静電的付着力をFt[nN]、トナーの平均粒径をDtとした場合に、Ft/Dt[nN/μm]を縦軸とし、遠心力による一粒子あたりの加圧力を横軸としてプロットしたグラフにおける一次回帰直線の比例係数Lが3.40×10[mm]以下であるトナーにおいて中抜けが良好である(図11)。よって、トナー間の非静電的付着力をFt[nN]、トナーの平均粒径をDtとした場合に、Ft/Dt[nN/μm]を縦軸とし、遠心力による一粒子あたりの加圧力を横軸としてプロットしたグラフにおける一次回帰直線の比例係数Lが3.40×10[mm]以下であるトナーを使用することにより、圧縮時にトナーの凝集体が形成され難く、中抜けの発生を抑制できる。
【0144】
また、感光体および中間転写ベルトの表面状態が同じであり、かつ単一の粒径群のトナーを用いた実施例1、2、4、7と比較例1、3を比べると、真円度の平均値が1.0〜1.4であるトナーにおいて中抜けが良好である。よって、真円度の平均値が1.0〜1.4であるトナーを使用することにより、球形トナーは、圧縮力印加後のトナーの非静電的付着力が増加し難いため、中抜けを抑制することができる。
【符号の説明】
【0145】
1 現像装置
2 感光体ドラム
3 帯電装置
4 一次転写ローラ
5 中間転写ベルト
6 二次転写ローラ
7 二次転写部対向ローラ
8,10 クリーニング装置
11 測定セル
12 試料基板
13 受け基板
14 スペーサ
15 遠心分離機
16 ロータ
17 保持部材
18 試料設置部
19 回転中心軸
20 画像形成ユニット
50 中間転写ユニット
【先行技術文献】
【特許文献】
【0146】
【特許文献1】特開平6−250414号公報
【特許文献2】特開2001−235946号公報
【特許文献3】特開2004−334004号公報
【特許文献4】特開2005−10389号公報
【特許文献5】特開2008−003554号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜像担持体である第1像担持体、中間転写体である第2像担持体、第1像担持体から第2像担持体へトナー像を転写する第1転写手段、第2像担持体から記録媒体へトナー像を転写する第2像担持体を有する画像形成装置において、
遠心力により一粒子あたり2.6×10[N/m]で圧縮した後のトナー間の非静電付着力Ftp、トナー/第1像担持体間の非静電付着力Fpp、トナー/第2像担持体間の非静電付着力Fbpの関係が、
Fbp>FtpまたはFbp>Fpp
であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
Fbp>Fppであることを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
遠心力により加圧した後のトナー間の非静電的付着力をFt[nN]、トナーの平均粒径をDtとする際、Ft/Dt[nN/μm]を縦軸とし、遠心力による一粒子あたりの加圧力P[N/m]を横軸としてプロットしたグラフにおける一次回帰直線の比例係数Lが3.40×10[mm]以下であるトナーを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
トナーの真円度の平均値が1.0以上1.4以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
真円度の平均値が1.4より大きくなるように製造されたトナーに対して、真円度の平均値が1.4よりも小さくなるように製造されたトナーを混合したものを使用することを特徴とする、請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
トナーの平均粒径が1〜8[μm]の範囲に収まるように調整したことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
トナーが、平均粒径が異なる少なくとも二種類のトナー粒子群を混合したものであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
トナーが、平均粒径の異なる二種類のトナー粒子群からなり、大粒径のトナー粒子群の平均粒径が4μm以上8μm以下、小粒径のトナー粒子群の平均粒径が1μm以上4μm未満であることを特徴とする、請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
第1像担持体の表面における水との接触角が90°以上であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
第2像担持体のヤング率が6000Mpa以下であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
第2像担持体を構成する層に弾性層が含まれていることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2010−231182(P2010−231182A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250255(P2009−250255)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】