説明

画像形成装置における研磨ローラ

【課題】研磨部材の芯軸体に対する軸方向への位置ずれを防止でき、かつ製造コストを安価にする。
【解決手段】トナー像が形成される感光体ドラム2の表面を研磨し内側に中空部21を有する筒状の研磨部材20と、その研磨部材20の前記中空部21に挿入されて研磨部材20を支持する芯軸体30とを備える研磨ローラ6において、芯軸体30には、研磨部材20の軸心方向の両端部20a、20bに対応する箇所に、端になる程に縮径した一対の傾斜面規定部31が形成されているとともに、各傾斜面規定部31の軸心方向の外側に傾斜面規定部31の最小径よりも大径の一対のずれ防止部32が形成されており、この芯軸体30の両ずれ防止部32の間に研磨部材20が、各傾斜面規定部31と対応する箇所が端になる程に縮径した一対の傾斜面22を有する状態で支持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンターまたはファクシミリ装置等の画像形成装置に備わった感光体ドラム等の像担持体に当接させて像担持体表面を研磨する画像形成装置における研磨ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、画像形成装置においては、像担持体である感光体ドラムの表面を均一に帯電した後、画像データに応じて感光体ドラムを露光して、感光体ドラム上に静電潜像を形成する。その後、静電潜像をトナーによって現像してトナー像とし、感光体ドラムに形成されたトナー像を転写ローラによって記録用紙に転写する。そして、記録用紙は定着ユニットに搬送されてトナー像が記録用紙に定着される。
【0003】
感光体ドラムとしては、有機材料を金属管に塗工した、所謂OPC感光体や、アモルファスシリコンを表面に蒸着したシリコン感光体などがある。これらのうちのシリコン感光体は表面硬度が高く、耐摩耗性に優れており、高い耐久性を有する。
【0004】
しかし、シリコン感光体は、耐摩耗性に優れているが故に、例えば高温高湿下で画像がぼやける画像流れ現象が起こり易いという難点がある。この画像流れ現象は、ドラム表面上に堆積した帯電生成物が高湿下で吸水して静電潜像を乱すことを原因として起こる。
【0005】
このような画像流れ現象の発生防止には、ドラム表面に堆積した帯電生成物を研磨により取除くことが必要であり、ドラム表面の研磨には研磨ローラが用いられる。研磨ローラとしては、耐久性を考慮してEPDMなどの発泡体を用いたスポンジローラが一般的であるものの、芯軸体の外側にEPDMなどの発泡体からなる研磨部材を設けた2層構造のローラも安価に製造できる点で用いられている。この2層構造のローラは、EPDMの発泡体を引抜きでチューブ状に成形し、そのチューブ内に芯軸体を圧入して製造される。
【0006】
ところで、上述した2層構造の研磨ローラは、研磨部材の内径のバラツキにより、研磨部材が緩みを生じて芯軸体に対して軸方向にずれてしまうという不具合がある。このような不具合を防止するためには、研磨部材と芯軸体とを接着するか、若しくは芯軸体における研磨部材の両端部分にずれ防止部材を設けることで対応可能となる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−98855号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前者の研磨部材と芯軸体とを接着する場合にはコストアップとなってしまうという欠点がある。一方、後者のずれ防止部材を設ける場合にはずれ防止部材の追加によるコストアップに加えて、ずれ防止部材よりも研磨部材の厚みを十分に厚くしなければならず、研磨部材の厚みが制限されてしまい、以下のような不都合がある。
【0008】
すなわち、研磨ローラは、感光体ドラムに対して圧接して研磨を行うので、芯軸体の撓みを防止するために芯軸体を太くしなければならず、また限られた内部空間で感光体ドラム表面を研磨するためには研磨ローラの外径をできるだけ小さくした方がよく、必然的に外側の研磨部材の厚みは薄い方がよいからである。
【0009】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたもので、研磨部材の芯軸体に対する軸方向への位置ずれを防止でき、かつ製造コストを安価にすることができる画像形成装置における研磨ローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る画像形成装置における研磨ローラは、トナー像が形成される像担持体の表面を研磨し内側に中空部を有する筒状の研磨部材と、その研磨部材の前記中空部に挿入されて研磨部材を支持する芯軸体とを備える研磨ローラにおいて、前記芯軸体には、前記研磨部材の軸心方向の両端部に対応する箇所に、端になる程に縮径した一対の傾斜面規定部が形成されているとともに、各傾斜面規定部の軸心方向の外側に傾斜面規定部の最小径よりも大径の一対のずれ防止部が形成されており、この芯軸体の両ずれ防止部の間に上記研磨部材が、上記各傾斜面規定部と対応する箇所が端になる程に縮径した一対の傾斜面を有する状態で支持されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の画像形成装置における研磨ローラにあっては、芯軸体における研磨部材の軸心方向の両端部に対応する箇所に、端になる程に縮径した一対の傾斜面規定部が形成され、これらの傾斜面規定部の軸心方向の外側に傾斜面規定部の最小径よりも大径の一対のずれ防止部が形成された芯軸体を用いる。そして、この外周面に筒状の研磨部材を取付け、芯軸体の傾斜面規定部に対応する研磨部材の位置に、傾斜面規定部と同様に傾斜した傾斜面を形成させる。この研磨部材の傾斜面の外側端面は、芯軸体のずれ防止部の内面側に当接することにより位置が規制され、軸方向への位置ずれが防止される。また、傾斜面規定部の芯軸体端側における径は最小径となるため、ずれ防止部は径をあまり大きくすることなく形成しても、上述した位置ずれを防止できるので、芯軸体の加工の際に形成することで、別部材を用いるのとは異なり、製造コストを安価にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明を具体的に説明する。
【0013】
図1は、本発明に係る研磨ローラが用いられる画像形成装置の一例について説明する。
【0014】
この画像形成装置1は、像担持体として概略円柱状をした、表面がアモルファスシリコンからなる感光体ドラム2を有し、その感光体ドラム2の周囲に、帯電器3、現像装置4、転写ローラ5、研磨ローラ6、クリーニングブレード7および除電器8が感光体ドラム2の回転方向に沿って配置されている。
【0015】
この画像形成装置1による画像形成処理は、以下のように行われる。帯電器3によって感光体ドラム2の表面を均一に帯電した後、感光体ドラム2の表面に、画像データに応じてレーザ光9を照射することによる露光を行い、これにより感光体ドラム2上に静電潜像が形成される。その後、現像装置4によって感光体ドラム2上の静電潜像が現像されてトナー像とされ、感光体ドラム2上のトナー像は、転写ローラ5によって転写材、例えば記録用紙10に転写される。この際、帯電したトナーの移動によって、感光体ドラム2と転写ローラ5との間に電流が流れるが、この電流を所定の値に制御して、つまり定電流制御して記録用紙10に対するトナーの付着量を安定化させている。
【0016】
転写の後、感光体ドラム2上に残留したトナーは、研磨ローラ6による感光体ドラム2の研磨にて研磨ローラ6に付着し、その後にクリーニングブレード7によって回収される。その後、感光体ドラム2上の残留電位が除電器8によって消去される。その後、再び帯電器3によって帯電されて、以上の画像形成処理が繰返される。
【0017】
一方、記録用紙10は、用紙搬送ライン11に沿って搬送され、感光体ドラム2と転写ローラ5との間に送られ、ここで転写ローラ5によって感光体ドラム2上のトナー像が転写され、その後定着ユニット12を経て排紙トレイ13に排紙される。
【0018】
図2は、本実施形態で用いた研磨ローラを示す正面図(部分断面図)である。
【0019】
この研磨ローラ6は、中空部21を有する筒状の研磨部材20と、その研磨部材20の中空部21に挿入されて研磨部材20を支持する芯軸体30とを備える。研磨部材20は、トナー像が形成される感光体ドラム2の表面を研磨するもので、例えばEPDMの発泡体を引抜いて成形されている。
【0020】
芯軸体30は、金属製のもので、研磨部材20の軸心方向の両端部20a、20bに対応する箇所に、端になる程に縮径した一対の傾斜面規定部31が形成されているとともに、各傾斜面規定部31の軸心方向の外側に傾斜面規定部31の最小径D2よりも大径(D3>D2)の一対のずれ防止部32が形成され(図3(b)参照)、更に両ずれ防止部32の軸心方向外側には軸部33が形成されている。
【0021】
この芯軸体30の両ずれ防止部32の間に、上記研磨部材20が支持されていて、研磨部材20は各傾斜面規定部31と対応する箇所、図示例では両端部が、端になる程に縮径した一対の傾斜面22を有する。
【0022】
よって、このように構成された研磨ローラ6にあっては、研磨部材20の傾斜面22の外側端面が、芯軸体30のずれ防止部32の内面側に当接することにより位置が規制され、軸方向への位置ずれを防止できる。また、傾斜面規定部31の芯軸体端側における径が傾斜面規定部31の最小径D2となるため、ずれ防止部32はその直径D3をあまり大きくすることなく形成しても、上述した位置ずれを防止できるので、芯軸体30の加工の際に形成することで、別部材を用いるのとは異なり、製造コストを安価にできる。
【0023】
次に、このように構成された研磨ローラ6の製造方法の一例を、図3に基づき説明する。
【0024】
まず、図3(a)に示すような筒状の研磨部材20を形成する。この研磨部材20の形成と前後して、図3(b)に示すような芯軸体30を形成する。研磨部材20の内径Rは、傾斜面規定部31の最小径D2と同一かそれ以下にする。
【0025】
次に、図3(c)に示すように芯軸体30の両端部の少なくとも一方に、スペーサ40を装着する。このスペーサ40は、先端側(図3の右側)が弾丸状に丸くなっていて、基端側(図3の左側)には芯軸体30の端部が丁度入る凹部41が形成されている。この凹部41は、軸部33が入る小径穴部41aと、ずれ防止部32が入る大径穴部42bとを有し、大径穴部42bよりも外側は傾斜面規定部31に応じた傾斜面41cが形成されている。
【0026】
このスペーサ40を芯軸体30の端部に装着した状態において、スペーサ40の基端側の外周面は、芯軸体30の傾斜面規定部31よりも中央寄りの中央部分の直径D1(図3(b)参照)と面一になるように設計されている。このような面一とするために、ずれ防止部32の直径D3は、傾斜面規定部31の最小径D2より大で、芯軸体30の中央部分の直径D1より小とするのが好ましい。
【0027】
次に、研磨部材20の内側にエアを吹き込んで研磨部材20を膨らませ、その研磨部材20の中空部21に、スペーサ40が装着された芯軸体30を挿入する。このとき、スペーサ40を芯軸体30よりも先に挿入させる。その後、エアの吹き込みを止め、図3(d)に示すように研磨部材20と芯軸体30とが密着した状態とする。その後、芯軸体30を回転させつつ、研磨部材20の外周面を、図示しない研磨手段により研磨する。研磨後、研磨部材20の両端部をカットし、芯軸体30の両ずれ防止部32の間に研磨部材20が入り得る長さ寸法に調整する。その後、スペーサ40を芯軸体30から引き抜いて取り外す。
【0028】
なお、上述した実施形態では明言していないが、ずれ防止部32の直径D3は傾斜面規定部31の最小径D2より少しでも大きければよいものの、研磨部材20の端が撓んでずれ防止部32を乗り越えることがないような寸法に設定することが好ましい。
【0029】
また、上述した実施形態では明言していないが、研磨部材20の両端と、これに対向するずれ防止部32の内面との離隔間隔は、少ない方が好ましい。更には、離隔間隔が0となるようにするのが望ましい。
【0030】
更に、上述した実施形態では表面がアモルファスシリコンからなる感光体ドラムに対し本発明の研磨ローラを適用しているが、本発明はこれに限らず、表面がアモルファスシリコンからなる感光体ドラム以外のものにも適用できることは勿論である。
【0031】
更にまた、上述した実施形態では感光体ドラムを1つ有する画像形成装置を例に挙げているが、本発明はこれに限らず、感光体ドラムを2以上有する画像形成装置の各感光体ドラム毎に設けられる研磨ローラにも同様に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る研磨ローラが用いられる画像形成装置の一例の説明図(正面図)である。
【図2】本発明の一実施形態に係る研磨ローラを示す正面図(部分断面図)である。
【図3】図2の研磨ローラの製造方法例の説明図である。
【符号の説明】
【0033】
1 画像形成装置
2 感光体ドラム(像担持体)
6 研磨ローラ
20 研磨部材
20a、20b 端部
21 中空部
22 傾斜面
30 芯軸体
31 傾斜面規定部
32 ずれ防止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像が形成される像担持体の表面を研磨し内側に中空部を有する筒状の研磨部材と、その研磨部材の前記中空部に挿入されて研磨部材を支持する芯軸体とを備える画像形成装置における研磨ローラにおいて、
前記芯軸体には、前記研磨部材の軸心方向の両端部に対応する箇所に、端になる程に縮径した一対の傾斜面規定部が形成されているとともに、各傾斜面規定部の軸心方向の外側に傾斜面規定部の最小径よりも大径の一対のずれ防止部が形成されており、この芯軸体の両ずれ防止部の間に上記研磨部材が、上記各傾斜面規定部と対応する箇所が端になる程に縮径した一対の傾斜面を有する状態で支持されていることを特徴とする画像形成装置における研磨ローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−111950(P2008−111950A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−294230(P2006−294230)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】