説明

画像形成装置及び画像形成処理方法

【課題】入力された印刷データの全ページに対して最短時間で処理を行う。
【解決手段】同時に起動されて複数ページからなる印刷データから解析された解析データをもとにページ単位で描画データを生成して出力する機能の異なる複数の第1印刷データ処理部11及び第2印刷データ処理部13と、描画データの生成が最初に全ページ完了した印刷データ処理部を判定する判定部7と、判定部7の判定結果に基づき描画データの生成が最初に全ページ完了した第1描画処理部17又は第2描画処理部21から出力を行わせる出力制御部9とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力された印刷データから解析された解析データをもとに描画データを生成して出力する画像形成装置及び画像形成処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の画像形成装置としては、例えば特許文献1のようなものがある。すなわち、画像形成装置は、入力された印刷データとしてのPDLデータを解析し解析データとしての内部描画データに変換するPDLトランスレータと、内部描画データから描画データとしての印刷用イメージデータを生成する複数のレンダラーとを備えている。
【0003】
この画像形成装置では、PDLトランスレータで1ページ分の内部描画データの生成が完了すると、印刷用イメージデータの生成を全てのレンダラーに指示する。何れかのレンダラーにおいて印刷用イメージデータの生成が完了すると、そのレンダラーによりPDLデータ全体に対する処理を実行させる。
【0004】
このような画像形成装置では、最初の1ページ分の描画データに基づいて最短時間で処理が可能なレンダラーを決定することができる。
【0005】
しかしながら、かかる従来の画像形成措置では、決定されたレンダラーにPDLデータの全ページに対する処理を行わせると、次ページ以降についてはレンダラーの機能からエラーが生じるおそれがある。
【0006】
この場合は、入力されたPDLデータの全ページに対する処理が完了せず、結果として最短時間で処理を行うことができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−150738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする問題点は、入力された印刷データの全ページに対して最短時間で処理を行うことができないおそれがあった点である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、入力された印刷データの全ページに対して最短時間で処理を行うため、同時に起動されて複数ページからなる印刷データから解析された解析データをもとに全ページ分の描画データを生成して出力する機能の異なる複数の印刷データ処理部と、前記描画データの生成が最初に全ページ完了した印刷データ処理部を判定する判定部と、前記判定部の判定結果に基づき前記描画データの生成が最初に全ページ完了した印刷データ処理部から前記出力を行わせる出力制御部とを備えたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、機能の異なる複数の印刷データ処理部を同時に起動すると共に最初に全ページの描画データの生成が完了した印刷データ処理部から出力を行わせることで、印刷データの全ページに対する処理を最短時間で確実に行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】画像形成装置のブロック図である(実施例1)。
【図2】画像形成処理のフローチャートである(実施例1)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
入力された印刷データの全ページに対して最短時間で処理を行うという目的を、機能の異なる複数の印刷データ処理部を同時に起動すると共に最初に全ページの描画データの生成が完了した印刷データ処理部から出力を行わせることで実現した。
【実施例1】
【0013】
[画像形成装置の構成]
図1は本発明の実施例1に係る画像形成装置を示すブロック図である。
【0014】
図1のように、画像形成装置1は、例えば、少なくとも印刷出力機能を有するデジタル複合機に適用されたものである。この画像形成装置1は、コンピューターで構成された制御部3を備えている。
【0015】
制御部3は、CPU(Central Process Unit)等の制御要素であり、ROM等の記憶部(図示せず)内のソフトウェアプログラムを実行してデジタル複合機の印刷出力制御の他、各種制御や作業を行わせる。
【0016】
この制御部3は、記憶部内の画像形成プログラムを実行することで、複数の印刷データ処理部である第1印刷データ処理部11及び第2印刷データ処理部13、判定部7、出力制御部9を備える。
【0017】
第1及び第2印刷データ処理部11及び13は、同時に起動される機能の異なるインタープリターであり、例えば透明化処理の入ったデータの処理の可否や対応可能なページ記述言語が異なる等のように処理可能なデータが異なっている。
【0018】
第1及び第2印刷データ処理部11及び13には、ホストコンピューター等の外部入力装置から複数ページからなるPDLデータ(ページ記述言語データ)が印刷データとして入力される。第1及び第2印刷データ処理部11及び13は、入力された印刷データを解析して解析データとしての中間データを生成すると共に中間データから全ページ分の描画データを生成する。
【0019】
これらの第1及び第2印刷データ処理部11及び13は、それぞれ第1解析部15及び第1描画処理部17、第2解析部19及び第2描画処理部21を備えている。
【0020】
なお、第1及び第2印刷データ処理部11及び13は、上記のように機能は異なっているものの、具体構成は相互に同一である。このため、第1印刷データ処理部11の具体構成についてのみ説明し、第2印刷データ処理部13の具体構成については説明を省略する。
【0021】
第1解析部15は、入力された印刷データの全ページ分のコマンドを解析する。このコマンド解析により、印刷データから全ページ分のページ単位の中間データを生成し、中間データを第1描画処理部17に送信する。なお、中間データは、全ページ分をまとめたのものであってもよい。
【0022】
この第1解析部15では、入力された印刷データに対する解析エラーが発生した場合に、判定部7へ解析エラー信号を送信する。なお、解析エラーが発生した場合は、解析データ及び描画データの生成が中断することになる。
【0023】
第1描画処理部17は、第1解析部15から受信した全ページ分の中間データからビットマップ形式の描画データの生成を行い、判定部7へ描画データの生成完了信号を送信する。
【0024】
判定部7は、生成完了信号に基づき、最初に全ページ分の描画データの生成が完了した第1描画処理部17及び第2描画処理部21の一方を、最も早く処理ができる描画処理部であると判定する。この判定結果は、判定部7から出力制御部9に送信される。
【0025】
出力制御部9は、判定部7から受信した判定結果をもとに、第1及び第2印刷データ処理部11及び13の他方に対して描画データの生成中止信号を送信する。
【0026】
すなわち、出力制御部9は、描画データの生成が全ページ完了しなかった印刷データ処理部の処理を中止させ、結果として描画データの生成が完了した印刷データ処理部から描画データの出力を行わせる。
[画像形成処理]
図2は、本発明の実施例1に係る画像形成処理のフローチャートである。
【0027】
画像形成装置1では、印刷データが入力されると、図2のフローチャートが開始してステップS1から画像形成処理が順に行われる。
【0028】
ステップS1では、印刷データ処理手順の一部として「印刷データ処理部を全て起動」の処理が実行される。この処理では、第1印刷データ処理部11及び第2印刷データ処理部13の全てを同時に起動し、印刷データに対する処理が同時に開始される。これにより、ステップS2へ移行する。
【0029】
ステップS2では、印刷データ処理手順の一部である解析手順として「印刷データ解析」の処理が実行される。この処理では、第1及び第2印刷データ処理部11及び13の第1及び第2解析部15及び19において、印刷データに対する全ページ分の解析が行われる。解析された印刷データからは、それぞれページ単位毎の中間データが生成される。
【0030】
生成された中間データは、第1描画処理部17及び第2描画処理部21に送信され、ステップS3へ移行する。
【0031】
ステップS3では、印刷データ処理手順の一部である描画処理手順として「描画データ生成」の処理が実行される。この処理では、第1描画処理部17及び第2描画処理部21が、受信した全ページ分の中間データに対してビットマップ形式の描画データの生成を完了するまで行う。こうしてステップS3が完了してステップS4へ移行する。
【0032】
ステップS4では、判定手順として「全ページの描画データの生成が完了した描画処理部がある?」の処理が実行される。この処理では、第1描画処理部17及び第2描画処理部21の何れか一方で全ページ分の描画データの生成が完了すると、生成完了信号が送信される。
【0033】
この生成完了信号の受信により、判定部7は第1描画処理部17及び第2描画処理部21の一方が最初に全ページ分の描画データの生成を完了した描画処理部であると判定する。この場合は、判定部7が判定結果を出力制御部9に送信してステップS5へ移行する。
【0034】
一方、判定部7は、生成完了信号の受信がないと、ステップS6へ移行する。これについては後述する。
【0035】
ステップS5では、出力制御手順の一部として「処理が完了していない描画処理部の処理を中止」の処理が実行される。この処理では、全ページ分の描画データの生成が完了しなかった第1描画処理部17及び第2描画処理部21の他方に対して、出力制御部9が生成中止信号を送信する。
【0036】
これにより、第1描画処理部17及び第2描画処理部21の他方は、描画データの生成処理を中止する。こうしてステップS5が完了してステップS7へ移行する。
【0037】
ステップS7では、出力制御手順の一部として「描画データ出力」の処理が実行される。この処理では、第1描画処理部17及び第2描画処理部21の一方から描画データの出力が行われる。すなわち、最初に全ページ分の描画データの生成が完了した印刷データ処理部から描画データの出力が行われる。
【0038】
これにより、本実施例の画像形成処理が完了する。その後は、描画データから最終的な出力画像が形成されて用紙等へ印刷出力されることになる。
【0039】
ステップS4においてステップS6へ移行した場合は、「全ての解析部で解析エラーが発生した?」の処理が実行される。すなわち、判定部7が生成完了信号を受信しない場合は、第1解析部15及び第2解析部19の双方において印刷データに対する解析エラーが発生した可能性がある。
【0040】
従って、ステップS6では、判定部7により第1解析部15及び第2解析部19で解析エラーが発生したか否かの判定を行う。具体的には、判定部7が、第1解析部15及び第2解析部19の双方から解析エラー信号を受信しているか否かが判定される。
【0041】
解析エラー信号を受信していない場合は、第1及び第2の印刷データ処理部11及び13が処理継続中であると判断されてステップS4へ戻ることになる。
【0042】
解析エラー信号を受信している場合は、その判定結果を判定部7から出力制御部9へ送信される。出力制御部9は、第1印刷データ処理部11及び第2印刷データ処理部13の双方へ生成中止信号を送信して処理を中止させる。この場合も、画像形成処理が完了することになる。
[実施例1の効果]
本実施例の画像形成装置1では、同時に起動されて複数ページからなる印刷データから解析された解析データをもとにページ単位で描画データを生成して出力する機能の異なる複数の第1印刷データ処理部11及び第2印刷データ処理部13と、描画データの生成が最初に全ページ完了した印刷データ処理部を判定する判定部7と、判定部7の判定結果に基づき描画データの生成が最初に全ページ完了した第1描画処理部17又は第2描画処理部21から出力を行わせる出力制御部9とを備えた。
【0043】
従って、本実施例の画像形成装置1では、機能の異なる第1及び第2印刷データ処理部11及び13を同時に起動すると共に最初に全ページの描画データの生成が完了した第1又は第2印刷データ処理部11又は13から出力を行わせることで、印刷データの全ページに対する処理を最短時間でエラーなく確実に行わせることができる。
【0044】
本実施例では、出力制御部9が、第1描画処理部17又は第2描画処理部21の一方において描画データの生成が全ページ完了したことを確認できた場合、同他方の処理を中止させる。
【0045】
従って、本実施例では、描画データの生成が最初に全ページ完了した第1描画処理部17又は第2描画処理部21から容易且つ確実に出力を行わせることができる。同時に、継続不要となった第1描画処理部17又は第2描画処理部21の起動による記憶領域の圧迫を抑制することができる。
【0046】
さらに、本実施例では、第1及び第2印刷データ処理部11及び13が、それぞれ解析部15,19及び描画処理部17,21を備えているので、より確実に印刷データの全ページに対する処理を行わせることができる。
[その他]
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各種の変更ができる。
【0047】
例えば、上記実施例では、二つの第1及び第2印刷データ処理部11及び13を備えていたが、画像形成装置1内の記憶部(図示せず)の容量が許す限り三つ以上の印刷データ処理部を備えていてもよい。
【0048】
また、判定部7と出力制御部9とは、別に設けられていたが、一体的に設けてもよい。例えば、判定部7及び出力制御部9の一方が、同他方の機能も備えるように構成することができる。
【0049】
また、上記実施例では、出力制御部9が、第1及び第2印刷データ処理部11及び13の一方に対して描画データの生成中止信号を送信していたが、例えば描画データの出力許可を行うように構成してもよい。
【0050】
この場合は、双方の印刷データ処理部11及び13での描画データの生成を中止することなく、最初に描画データの生成が完了した印刷データ処理部11及び13の一方に対してのみ描画データの出力を許可する。
上記実施例では、各印刷データ処理部11(13)が、解析部15(19)及び描画処理部17(21)を備えていたが、例えば、描画処理部17(21)のみを備えて解析部15(19)を別構成としてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 画像形成装置
3 制御部
7 判定部
9 出力制御部
11 第1印刷データ処理部
13 第2印刷データ処理部
15 第1解析部
17 第1描画処理部
19 第2解析部
21 第2描画処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同時に起動されて複数ページからなる 印刷データから解析された解析データをもとに全ページ分の描画データを生成して出力する機能の異なる複数の印刷データ処理部と、
前記描画データの生成が最初に全ページ完了した印刷データ処理部を判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に基づき前記描画データの生成が最初に全ページ完了した印刷データ処理部から前記出力を行わせる出力制御部と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像形成装置であって、
前記出力制御部は、前記最初に全ページ完了したと判定された印刷データ処理部以外の印刷データ処理部の描画データの生成を中止させる、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の画像形成装置であって、
前記印刷データ処理部は、前記印刷データを解析し解析データを生成する解析部と、
前記解析データをもとにページ単位で描画データを生成する描画解析部とを備えた、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
同時に起動されて複数ページからなる印刷データから解析された解析データをもとに全ページ分の描画データを生成して出力する機能の異なる複数の印刷データ処理手順と、
前記描画データの生成が最初に全ページ完了した印刷データ処理手順を判定する判定手順と、
前記判定手順の判定結果に基づき前記描画データの生成が最初に全ページ完了した印刷データ処理手順から前記出力を行わせる出力制御手順と、
をコンピューターに実行させることを特徴とする画像形成プログラム。
【請求項5】
請求項4記載の画像形成プログラムであって、
前記出力制御手順は、前記最初に全ページ完了したと判定された印刷データ処理手順以外の印刷データ処理手順の描画データの生成を中止させる、
ことを特徴とする画像形成プログラム。
【請求項6】
請求項4又は5記載の画像形成プログラムであって、
前記印刷データ処理手順は、前記印刷データを解析し解析データを生成する解析手順と、前記解析データをもとにページ単位で描画データを生成する描画処理手順と備えた、
ことを特徴とする画像形成プログラム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−101424(P2012−101424A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251105(P2010−251105)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】