説明

画像形成装置及び画像形成方法

【課題】用紙をリユースすることが可能であり、かつセキュリティモードを有する画像形成装置。
【解決手段】 消去可能なインクを用いて印字された用紙には、機密情報を含んでいること示唆するマークがマーキングされる。これにより、用紙トレイ16に積載された使用済み用紙がマーク検知センサ6を通過する際に、当該マークが読み取られる。そして、マーク検知センサ123によって当該マークが検出された用紙は、前画像を認識不能とするための処理が実行される。給紙トレイ16に積載される通常の使用済み用紙は、画像消去部125によってインクが消去される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙をリユースすることができる画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、用紙をリユースするものとして、ロイコ染料を含有したインクをインクジェット装置によって印字し、サーマルバーやサーマルヘッドを用いて消去するインクジェットプリンターなどが提案されている。
【0003】
例えば、特開2001−302954号公報(特許文献1)には、40℃以下の常温で発色剤と顕色剤との化学結合により発色し、100℃以上でその化学結合が崩壊し、顕色剤と消色剤との化学結合により無色化するインクが開示されている。また、特許文献1には、そのインクを用いたインクジェットプリンター、更には消去用の加熱機構を設けた記録消去兼用インクジェットプリンターが開示されている。
【0004】
また、特開2005−89548号公報(特許文献2)には、室温状態で発色、消色を安定させるために、発色・消色カーブにヒステリシス特性を持たせたインク材料が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1,2に開示されるようなインクを用いて画像形成と消色とを行った用紙をリユースする場合にその用紙を冷却するとインクが再発色する恐れがある。これは加熱することで一旦切り離された色素と発色剤が、常温よりも低い所定の温度以下の環境下に置くと、再結合してしまうからである。つまり、消去後に用紙を冷却して、意図的に前画像を用紙に再現することが可能となる。従って、リユースのため消去した内容が、第三者に漏洩する危険性があり、セキュリティ上大きな問題がある。
【0006】
本発明は、こうした実情に鑑みなされたものであり、用紙リユースのため消去した内容が再現されてしまうことを抑制し、機密性を向上させた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の画像形成装置は、消去可能なインクを用いて用紙上に画像を印字する画像形成部と、
前記インクを用いて画像が印字された用紙を載置する用紙トレイと、
前記用紙トレイから搬送された前記使用済み用紙上に形成された前記画像が機密情報を含むことを示すマークを検出するマーク検出部と、
前記マーク検出部によって前記マークが検出された場合、前記使用済み用紙に形成された前記画像のうち少なくとも機密情報を含む領域の画像を認識不能とするオーバーコートを実行するオーバーコート部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、用紙リユースのため消去した内容が再現されてしまうことを抑制し、機密性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施の形態における画像形成装置の構成を示す断面図。
【図2】第1の実施の形態における画像形成装置で用いるインクの温度特性を表すグラフ。
【図3】第1の実施の形態における画像形成装置とサーバ等が接続されたシステムを示す概略図。
【図4】第1の実施の形態における画像形成装置の画像消去処理を示すフローチャート。
【図5】第1の実施の形態における画像形成装置の画像形成処理を示すフローチャート。
【図6】第2の実施の形態における画像形成装置の構成を示す断面図。
【図7】第3の実施の形態における画像形成装置の構成を示す断面図。
【図8】第4の実施の形態における画像形成装置の構成を示す断面図。
【図9】機密情報を含むことを示すマークを印刷したサンプルを示す略図。
【図10】過去に形成された画像が読めないように上書きした例を示す略図。
【図11】過去に形成された画像が読めないように上書きした他の例を示す略図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態について、図1乃至図3を参照して説明する。
【0011】
図1は、消去可能なインクを用いた画像形成部と、そのインクを消去する画像消去部とを有する画像形成装置1を示す。画像形成装置1は、用紙カセット10、画像形成部12、排紙トレイ14、給紙トレイ16、および、リユース処理部18を有している。
【0012】
用紙カセット10は、用紙を収納するカセットである。用紙カセット10は、画像形成部12により画像がプリントされるプリント用の用紙Pを収納する。画像形成部12は、用紙Pに画像を形成する。画像形成部12は、インクジェット方式のプリンタである。画像形成部12は、カラープリンタである。排紙トレイ14は、画像形成部12によりプリント処理された用紙を保持する。
【0013】
給紙トレイ16は、リユース処理部18によるリユース処理の対象となる用紙を保持する用紙保持部である。給紙トレイ16には、機密文書が印字された用紙と、一般文書が印字された用紙とが混在して積載されても良い。この場合、ユーザは、機密情報の有無を考えずにプリント済みの用紙を給紙トレイ16に積載すれば良い。給紙トレイ16に積載された用紙は取り込みローラ17によって装置内部に取り込まれ、搬送ローラ122によってマーク検知センサ123へ搬送される。リユース処理部18ではマーク検知センサ123によって、機密文書が印字された用紙と一般文書が印字された用紙とを分別する。このマーク検知センサ123が対象の用紙上に機密情報を含んでいることを示唆するマークを検知すると、画像形成装置1はインクジェットヘッド124によって用紙全面もしくは機密情報に該当する箇所に画像が認識できないように上書き印字する。また、マークの検知ができない用紙には上書き印字を行わずに、画像消去部125にて用紙P上に印字された画像を消去したうえで、搬送ローラ126を介して用紙カセット10へ用紙を案内する。この用紙カセット10に積載された用紙Pはユーザからの印字命令により画像形成部12にて画像が形成される。
【0014】
次に、画像形成部12の構成について詳細に説明する。画像形成部12は、図1に示すように、給紙ローラ102、搬送ローラ対103、レジストローラ対104、駆動ローラ106、搬送ベルト107、押圧ローラ108、インクジェットヘッド群109(109Bk、109Y、109M及び109C)、搬送ローラ対110などを有している。
【0015】
給紙ローラ102は、用紙カセット10に保持されている用紙Pを1枚づつ取り出す。給紙ローラ102は、用紙カセット10から取り出した用紙Pを搬送ローラ対103およびレジストローラ対104に搬送する。レジストローラ対104は、所定のタイミングで用紙Pを搬送ベルト107上に搬送する。搬送ベルト107は、駆動ローラ106と従動ローラ105とで張力が与えられる。搬送ベルト107は、駆動ローラ106の回転に伴って駆動される。押圧ローラ108は、用紙Pを搬送ベルト107に押し付ける。
【0016】
搬送ベルト107は、表面に所定間隔で穴が空いている。搬送ベルト107の内側には、用紙Pを搬送ベルト107に吸着させるための図示されないファンに連結された図示されない負圧チャンバが設置される。用紙Pは、搬送ベルト107に吸着されながら搬送される。
【0017】
インクジェットヘッド群109は、インクジェットヘッド109Bk、インクジェットヘッド109Y、インクジェットヘッド109M、および、インクジェットヘッド109Cにより構成される。各インクジェットヘッド109Bk、109Y、109M、109Cは、搬送ベルト107に沿って順に設置される。たとえば、図1及び図2に示す例では、搬送ベルト107による用紙Pの搬送方向に対して上流側からインクジェットヘッド109Bk、109Y、109M、109Cの順に並べられる。
【0018】
インクジェットヘッド109Bkは、消色可能なブラック(Bk)色のインクを吐出するインクジェットヘッドである。インクジェットヘッド109Yは、消色可能なイエロー(Y)色のインクを吐出するインクジェットヘッドである。インクジェットヘッド109Mは、消色可能なマゼンタ(M)色のインクを吐出するインクジェットヘッドである。インクジェットヘッド109Cは、消色可能なシアン(C)色のインクを吐出するインクジェットヘッドである。
【0019】
画像形成部12で使用するインクは、特定の材質に限定されるものではなく、所定の温度に加熱されて消色されるインクであれば良い。なお、画像形成部12がインクとして使用可能な画像形成材料は、たとえば、特開2007−212613号公報、特開2007−90704号公報あるいは特許3711017号などに開示されている。
【0020】
たとえば、消色可能なインクあるいはトナーなどの画像形成材料の基本的な成分は、呈色性化合物、顕色剤、バインダー樹脂などにより構成することが可能である。このような画像形成材料は、予め顕色剤の作用を受けて呈色性化合物が発色しているために使用者は色を認識することが可能である。発色した状態の画像形成材料に熱を加えると、バインダー樹脂が軟化し、主に顕色剤がバインダー樹脂の内部から表面へ移動し易くなると供に、用紙中へ移動及び拡散がし易くなる。このため、呈色性化合物が顕色剤の作用を受けなくなり、呈色性化合物は、消色して画像形成材料として色を認識できなくなる。
【0021】
呈色性化合物は、文字あるいは図形などの発色画像を形成する色素の前駆体化合物である。呈色性化合物は、ロイコオーラミン類、ジアリールフタリド類、ポリアリールカルビノール類、アシルオーラミン類、アリールオーラミン類、ローダミンB ラクタム類、インドリンスピロピラン類、フルオラン類などの電子供与性有機物を用いることが好ましい。
【0022】
顕色剤は、呈色性化合物との相互作用(主に電子またはプロトンの授受)により呈色性化合物を発色させる化合物である。顕色剤は、フェノール類、フェノール金属塩類、カルボン酸金属塩類、ベンゾフェノン類、スルホン酸、スルホン酸塩、リン酸類、リン酸金属塩類、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステル金属塩類、亜リン酸類、亜リン酸金属塩類等を用いることが好ましい。
また、バインダー樹脂は、呈色性化合物と顕色剤を発色状態で分散させるものである。一方、加熱時には呈色性化合物と相溶し、顕色剤と親和性を有しない特性をもったものである。
【0023】
上述したような熱により消色可能な画像形成材料としてのインクを用いて画像を形成するプリンタは、当該プリント処理においてインクに消去温度以上の温度が加えられないように設計される必要がある。プリンタ内の温度が消去温度よりも高くなることがあると、インクは、用紙にプリントされる前に消色されてしまう可能性がある。このような場合、当然ながら、用紙には正常な画像が形成されない。さらに、プリンタ自体の消費エネルギーを考えると、インクの消去温度は、極力低く設定されるのが好ましい。従って、プリンタ内では、インクに加えられる温度が極力高くならないように工夫することが求められる。
【0024】
インクジェットヘッド109Bk、109Y、109M、109Cは、それぞれ用紙上に各色の画像を形成する。インクジェットヘッド109Bk、109Y、109M、109Cは、それぞれカラー画像における黒成分、イエロー成分、マゼンタ成分、シアン成分に応じたインクを吐出する。インクジェットヘッド群109は、各色の画像を用紙に重ねてプリントすることにより用紙にカラー画像を形成する。
【0025】
搬送ローラ対110は、インクジェットヘッド群109により画像をプリントした用紙を排紙トレイ14に排紙する。
【0026】
画像形成は以下のような手順で行う。図3は画像形成装置1のネットワーク上の構成を示す図、図5は画像形成の処理の手順を示すフローチャートである。画像形成装置1は、ネット31を介してパーソナルコンピュータ(以下、パソコン)32やプリンタサーバ33と接続される。画像形成装置1は、パソコン32、画像形成装置30に設けられた操作パネル等から印字命令を受けると(512)、給紙ローラ102を駆動して、用紙カセット10に収納された用紙Pをピックアップしてその用紙Pを画像形成部12へ搬送する(513)。この後、特に印字する画像が機密モードであることを指定しない場合(514:N)は、そのままプリンタサーバから転送される画像データに基づき、画像形成部12は消去可能なインクを用いて用紙P上に画像を形成する(516)。画像が形成された用紙Pは、排紙トレイ14へ排出される(517)。画像データは、画像形成装置1の読取部(図示しない)で読み取られた画像データであっても良い。
【0027】
なお、画像形成の際に形成する画像に機密情報が含まれている場合は、印字命令を与える際に機密モードを指定するなどして(414:Y)、形成される画像にマークを合成する(415)。
【0028】
マーキングは以下のようにして行う。パソコン32に予め導入されているプリンタドライバを通して画像形成装置1にプリントの命令を与えるとき、プリントする画像に機密情報が含まれていることをドライバ上で指定し、マーキングを施すようにする。マーキングの指示は、画像形成装置1に備えられているセキュリティ印字モードの選択に応じてマーキングを施す方法であってもよい。また、画像形成装置1の操作パネル上に設けられている機密ボタンを押下して機密モードが設定されたことに応じてマーキングを施す方法であってもよい。更には、画像形成装置1に画像読取装置を設けて、印字対象文書のヘッダ画像を解析して「極秘」、「秘」、「社外秘」などのマーク又は文字を読み取らせる。このマークの認識結果によりマーキングを施す方法であってもよい。
【0029】
たとえば、マークは図9に示すようなヘッダ画像が考えられる。プリント命令を与える際に、この図に示すような「極秘」など書類の機密性の高さに従ったマークを選択して印字するようにプリンタドライバや画像形成装置にオプション機能を持たせておく。また、画像の消去命令を与えたときはパターン検出部123にて、読み取った画像と予めROMに格納されているパターンとを照合し、一致していると判断された場合は対象用紙に機密事項が含まれていると判断される。
【0030】
以上の過程で、印字対象文書中に機密情報が含まれていると指定もしくは判定した場合は、画像形成部12にて画像印字と同時に機密情報を含んでいること示唆するマークを全頁にマーキングする。
【0031】
次に、マーキング処理の一例について説明する。マーキングは、画像形成装置1がカラー画像処理装置である場合は、画像形成部12にて印字するC、M及びYの各色インクのインク量をわずかに変更して、人間に視認されにくい形で印字する。例えば、高周波数かつ低コントラストの周期パターンをマーキングする。この周期パターンの埋め込みは、例えば黄色と青色方向に変調がかかるように、インク量を調整する。
【0032】
次に、マーキング処理の一例について説明する。マーキングは、画像形成装置1がカラー画像処理装置である場合は、画像形成部12にて印字するC、M及びYの各色インクのインク量をわずかに変更して、人間に視認されにくい形で印字する。例えば、高周波数かつ低コントラストの周期パターンをマーキングする。この周期パターンの埋め込みは、例えば黄色と青色方向に変調がかかるように、インク量を調整する。
【0033】
このインク量の調整に用いる値Δdの算出は、画像を形成する際に与えられている同一箇所にn個の周期パターンを埋め込む場合、例えば数式1を用いて行う。
【数1】

この数式1で、αは埋め込む周期成分の振幅、rはその周期成分の周波数(dot/cycle)、θはその周期成分が主走査方向となす角度、xは対象画素の主走査方向の位置、yは副走査方向の位置を、それぞれ表す。さらに、数式1によって求めたΔdからY、M、Cそれぞれのインク量の調整値を数式2にて求める。
【数2】

このように色インクのインク量を調整することにより、黄色と青に変調がかかった周期パターンが現れる。また、n個の周期パターンのうち埋め込むパターンと埋め込まないパターンを調整して、機密情報のおおよその位置を表してもよい。
【0034】
前記振幅αは、使用する周期パターンの周波数と角度とによって異なるように調整する。例えば、人間の視覚特性や出力装置の劣化特性等に従って、周波数が高いほど振幅αを大きくする。また、一般に主走査と副走査とのいずれかの方向に沿った周期成分以外は認識されづらい。したがって、主走査方向を0°とすると90°の倍数に当たる角度をなす方向のみ振幅αが小さくする。なお、周波数r、角度θとそれらに対応する振幅αは、画像形成装置1に搭載されているROM(図示せず)等にその値が予め格納されている。
【0035】
この周期パターンを埋め込む領域は、画像の印字されている領域を含む広い領域とする。また、前記ROMに、予め設定したマーキングの埋め込み位置と領域とを格納し、それを使用してもよい。このマーキングのための周期パターンは、前述したように人間には認識しにくく、かつ画像が印字されている位置にも埋め込み可能なパターンであることが必要である。この周期パターンの埋め込み以外に、画像を印字する領域とは重ならない位置に2次元バーコードやQRコード等、認識可能なパターンを埋め込む技術を取り入れてもよい。
【0036】
以上の操作により、画像形成装置1の機密モードを用いて印字された用紙Pには、機密情報を含んでいることを示唆するマークが形成されることになる。これにより、給紙トレイ16に積載された使用済み用紙が取り込みローラ17及び搬送ローラ122を介してマーク検知センサ123を通過する際に、当該マークが読み取られる。マーク検知センサ123によってマークが検出されない場合は、用紙Pは消去部125を経て画像の消去を実行し、画像の消去が完了した用紙Pは用紙カセット10に収納される。
【0037】
次に、画像消去について説明する。画像消去部125は、たとえば、画像形成材料としてのインクの消去温度となるように用紙Pを加熱する。画像消去部125により消去温度で加熱された用紙は、画像が消去される。画像消去部125は、用紙に熱を加えることにより画像を消色する。この場合、消去機構としては、サーマルヘッド、サーマルバーあるいはヒートローラを用いた構成が考えられる。ヒートローラを用いるタイプは、ヒートローラを消去処理が可能な温度に昇温するのに時間を要する。たとえば、予めヒートローラが加熱されていない場合、給紙トレイ16に載置されたリユースすべき用紙Pに対して、すぐに消去処理を実行することはできない。このため、運用状況によっては、給紙トレイ16に消去すべき用紙がたまってしまう可能性がある。また、サーマルヘッドあるいはサーマルバーを用いた消去機構では、昇温のための待ち時間は短時間である。しかしながら、サーマルヘッドあるいはサーマルバーを用紙Pの表面に接触させる構成では、インクあるいはトナーなどの画像形成材料がサーマルヘッドあるいはサーマルバーの表面に付着しやすくなるため、消去性能の劣化が大きい。
【0038】
使用済み用紙の消去処理は図4のフローチャートに示された手順で行う。まず、ユーザは使用済み用紙を給紙トレイ16に積載する。そして、例えば、画像形成装置1上に設置された操作パネル等を操作して消去命令を与える(402)。画像形成装置1は、取り込みローラ17を駆動して、給紙トレイ16に積載された使用済みの用紙を1枚ずつ装置1の内部に取り込む(403)。用紙がマーク検知部123を通過する際、機密情報があることを示すマークがあると判定された場合(404:Y)は、インクジェットヘッド124にて用紙上の画像に上書き(405)したうえで、画像消去部125を加熱して用紙上に形成された画像を消去する(406)。マークがない場合(404:N)は上書きせずに、画像を消去する。画像形成装置1は、画像を消去した用紙を用紙カセット10に収納する(407)。
【0039】
画像消去部125で画像が消去された用紙は、一旦用紙カセット10に所定時間保存される。これにより、加熱消去され、熱を帯びた用紙は、所定時間を経ない限り再度印字されることはないから、熱を帯びた用紙に消去可能インクで印字しても画像が直ちに消色してしまう現象が起こることを防止することができる。なお、余熱により画像形成時の不具合が生じないように、用紙カセット10もしくはその周辺に通風孔112を設ける、用紙カセットに積載された用紙に風が当たるようファン114を設ける、などの措置を採るとよい。あるいは、用紙カセット10内に積載された用紙Pの最上面付近にサーミスタを設置して、印字命令が与えられても用紙Pの表面温度が所定の温度以上、例えば図2に示す温度T2以上である場合は給紙ローラ102の駆動はさせず、用紙Pを用紙カセット10内に待機させておくようにするとよい。
【0040】
ところで、消去可能なインクを用いて印字された使用済み用紙を再利用する場合、常温環境を含めたある程度の温度範囲で付着したインクを発色状態に維持しておく必要がある。また、画像消去部125で消去した後は、常温周辺を含めたある程度の温度範囲で消色状態を維持しなければならない。したがって、このインクは次のような温度と発色の特性が求められる。すなわち、図2に示すように常温T0(20℃前後)よりかなり高い温度T2(たとえば100℃)以上にすると消色し始め、さらに高い温度T4にすると完全に無色となる。一方、低い温度T1(たとえば0℃)以下にすると発色し始めて、さらに低い温度T3で色材が全て発色する。また、常温T0では発色化も無色化も起こらずに安定した状態が保たれる。このようなインクを用いた場合、インクの発色温度T1以下に冷却すると、消去した画像が用紙に再現されてしまい、機密上問題になる恐れがある。
【0041】
これに対して、本実施形態の画像形成装置1では、給紙トレイ16に積載した使用済み用紙の過去に形成された画像を判読不能にすることで、この問題を解決する。すなわち、使用済み用紙の過去に形成された画像に機密情報が含まれていることを示すマークを検出すると、画像全面をインクで覆うか所定のパターンを上書きして過去に形成された画像を判読不能とする。
【0042】
当該マークが検出された用紙Pは、過去に形成された画像が機密文書であったと判定されたことを意味する。この場合、画像形成装置1では、印字ヘッド124にて消去可能な黒インクのみで全面または機密情報に該当する画像の領域に黒印字を行う。また、用紙P上のマークが画像と離れた位置に配置されている場合は、マーク上にも上書き印字して、再度マークが検出されないようにしても良い。この後、フラッパ129を駆動して、上書き印字を終えた用紙Pは用紙経路130を経て、画像消去部125へ案内される。ここで用紙P上に形成された画像は上書きされた画像とともに消去される。この結果、ベタ画像(a solid image)を形成した後の消去なので温度が低下して再発色してもベタ画像が浮かび上がるだけなので機密性を保つことができる。
【0043】
以上、第1の実施形態の画像形成装置1を用いることによって、使用済み用紙に印字されていた過去に形成された画像に機密情報を含む場合、当該用紙の過去に形成された画像を判読不能する画像を上書き印字して、再利用を図るものである。更に、画像を印字する段階で機密情報を示唆するパターンを同時にマーキングし、給紙トレイ16上の使用済み用紙に機密情報を含むものが混入していた場合も、判読不能とする対象である使用済み用紙を識別することが可能である。これにより、画像の消去工程で誤って機密情報が再現されてしまうことを防止することが可能となる。
【0044】
(第2の実施形態)
前述した第1の実施形態では、用紙上に過去に形成された画像に機密情報を含んでいるかいないかに関わらず、共有の用紙カセット10に用紙を収納する構成とした。そして、当該用紙上に印字されている過去に形成された画像に機密情報を含んでいることを示すパターンをマーク検知センサ123にて認識する処理とした。しかし、前記パターンが劣化した場合、マーク検知センサ123にて読み取れない恐れもある。また、使用済み用紙に機密情報が印字された用紙とそれ以外の用紙が混在している場合に、その都度画像消去部125の加熱のONとOFFを切り替えることは困難でもある。そこで、この実施形態では、通常の用紙カセット10とは別に機密書類カセット611を設けた構成としている。
【0045】
当該マークが検出された用紙は、過去に形成された画像が機密文書であったと判定されたことを意味する。この場合、その結果、図6に示すように、画像形成装置601では、フラッパ624を駆動して用紙を用紙経路632に沿って搬送ローラ627を経て、機密書類カセット611に収納され、画像消去部125での消去動作を行わない。リユース処理部618では、フラッパ624、用紙経路632及び搬送ローラ627を含んでいる。この場合、用紙は画像消去部125を通過していないため、用紙を冷ます必要がない。したがって、直ちに当該用紙を画像形成部12に供給して、インクジェットヘッド109Bkで消去可能な黒インクのみで全面または機密情報に該当する画像の領域に黒印字を行う。この画像形成部12にインク残量の検知センサを備えて、黒インクが少ない場合は、黒インクの代わりにインクジェットヘッド109Cのシアンインクで全面印字を行ってもよい。この印字を行うことで、用紙に消去可能インクで印字された過去に形成された画像(機密情報)を認識不能にするため、消去可能な画像が上書き印字されたことになる。この後、フラッパ129を駆動して、上書き印字を終えた用紙は用紙経路630を経て、画像消去部125へ案内される。ここで用紙上に形成された画像は上書きされた画像とともに消去される。この結果、ベタ打ちした後の消去なので温度が低下して再発色してもベタ画像が浮かび上がるだけなので機密性を保つことができる。
【0046】
前述した第1の実施形態では、使用済み用紙に印字されていた過去に形成された画像に機密情報を含んでいるかいないかに関わらず、共有の給紙トレイ16に用紙を積載する構成とした。そして、当該用紙上に印字されている過去に形成された画像に機密情報を含んでいることを示すパターンをマーク検知センサ123にて認識する処理とした。しかし、前記パターンが劣化した場合、マーク検知センサ123にて読み取れない恐れもある。そこで、第2の実施形態では、通常の用紙カセット10とは別に機密書類カセット611を設けた構成としている。
【0047】
(第3の実施形態)
図7は、第3の実施形態による画像形成装置701の構成図である。通常の使用済み用紙の給紙トレイ16とは別に、機密書類用トレイ732を有する点が、第1の実施形態と異なっている。この場合、機密書類用トレイ732に積載された使用済み用紙は、検知センサを経ずに、搬送ローラ734及び搬送ローラ727を通過して黒インクジェットヘッド109Bkに向かう。そして、全ての用紙に対して黒インクジェットヘッド109Bkによって全面または機密情報に該当する画像の領域に黒インクで意味の無い画像を上書きする。こうして、使用済み用紙の過去に形成された画像の上に意味のない画像を上書きすることで、過去に形成された画像を認識不能とする。上書きされた用紙は、第1の実施形態と同様に用紙経路730を経て画像消去部125に搬送される。画像消去部125に搬送された用紙は、通常の使用済み用紙と同様に画像の消去が行われて、用紙カセット10に収納される。リユース処理部718は、機密書類用トレイ732から取り込まれた用紙を搬送する搬送ローラ734及び727が含まれている。
【0048】
(第4の実施形態)
図8は、第4の実施形態を示す画像形成装置801の断面図である。図7の構成では、誤って給紙トレイ16に、過去に形成された画像に機密情報を含んだ使用済み用紙を置いてしまう恐れがある。そこで、図8では、リユース処理部818として、給紙トレイ16と画像消去部125の間にマーク検知センサ123を設けている。さらに、機密書類用トレイ832と画像消去部125との間に搬送ローラ834及びセキュリティ専用の印字ヘッド836を設けている。
【0049】
この画像形成装置801において、機密書類用トレイ832に積載された使用済み用紙が内部に搬送されると、直ちに印字ヘッド836にて全面黒印字が行われる。すなわち、使用済み用紙の過去に形成された画像の上に意味のない画像を上書きすることで、過去に形成された画像を認識不能とする。その後、画像消去部125に搬送されて、画像が消去される。画像消去部125で画像が消去された用紙は、一旦用紙カセット10に所定時間保存される。これにより、加熱消去され、熱を帯びた用紙は、所定時間を経ない限り再度印字されることはないから、熱を帯びた用紙に消去可能インクで印字しても画像が直ちに消色してしまう現象が起こることを防止することができる。一方、給紙トレイ16上に誤って過去に形成された画像に機密情報を含んだ使用済み用紙が積載されて場合、マーク検知センサ123によってマーキングされた用紙であることが検出される。その検出された用紙は、画像消去部125と画像形成部12とを通過して排紙トレイ14上に排出される。この場合、オペレータにマーキングされた用紙であることを報知する。例えば、操作パネルに、「排紙トレイに排出された用紙は機密書類用トレイに載置して下さい」と表示する。
【0050】
このように、一般の使用済みの用紙トレイとは別に、機密書類用トレイを設けることで、機密書類用トレイに積載された使用済み用紙は、直接画像形成部又は印字ヘッドに給送され、全面黒印字が行われる構成とした。よって、使用済み用紙の過去に形成された画像が完全に認識不能とすることができる。また、印字ヘッド836にはコール酸などの消色剤を格納し、画像全面をオーバーコートもしくはランダムにコートすることにより認識可能な画像が再現できないようにしてもよい。
【0051】
このランダムにコートする例を図10に示す。このようにランダムにコートするパターンは過去に形成された画像が読めないほどの密度であればよく、さらに規則的でないほうが過去に形成された画像が認識しづらい。また、オーバーコートは過去に形成された画像が隠すことができればよいので、図11に示すようにサイズの大きな文字列の形状をなす画像を上書きしてもよい。
【0052】
前記実施形態では、消去可能な発色剤の例としてインクを採用したが、本発明はそれに限定されず、消去可能なトナーを用いても良い。
【0053】
なお、本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において上述した実施形態を適宜設計変更しても良い。また、上述した実施形態を適宜組合せても良い。
【符号の説明】
【0054】
1‥画像形成装置
10‥用紙カセット
12‥画像形成部
16‥給紙トレイ
125‥画像消去部
123‥マーク検知センサ
109Bk、109Y、109M、109C‥印字ヘッド
【先行技術文献】
【特許文献】
【0055】
【特許文献1】特開2001−302954公報
【特許文献2】特開2005−89548公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消去可能なインクを用いて用紙上に画像を印字する画像形成部と、
前記インクを用いて画像が印字された用紙を載置する用紙トレイと、
前記用紙トレイから搬送された前記使用済み用紙上に形成された前記画像が機密情報を含むことを示すマークを検出するマーク検出部と、
前記マーク検出部によって前記マークが検出された場合、前記用紙上に形成された前記画像のうち少なくとも機密情報を含む領域の画像を認識不能とするように上書きする上書き部とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記上書きとは、前記領域の全面を色材で覆うことであることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記上書きとは、前記領域上に色材でパターンを形成することであることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記上書き部は前記画像形成部がその動作を兼ねることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記上書き部とは前記画像形成部とは別に設けられた画像形成部であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記マークは、通常の画像形成に用いる色材とは異なる色材を用いて形成することを特徴とする特許請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記マークは、高周波数と低コントラストの少なくともいずれか一方の特性を有する周期パターンで形成することを特徴とする特許請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項8】
消去可能なインクを用いて用紙上に画像が印字された使用済み用紙を載置する第1の用紙トレイと、
消去可能な前記インクを用いて用紙上に機密情報が印字された使用済み用紙を載置する第2の用紙トレイと、
前記第1の用紙トレイから搬送された前記使用済み用紙に印字された前記画像を消去する画像消去部と、
消去可能な前記インクを用いて用紙に画像を印字するもので、前記第2の用紙トレイから搬送された前記使用済み用紙に印字されている前画像を認識不能とするパターンを上書き印字する画像形成部と、
を有することを特徴する画像形成装置。
【請求項9】
消去可能なインクを用いて用紙上に画像を形成し、
用紙上に形成された画像が機密情報を含むことを示すマークを検出し、
前記マークが検出された場合、前記画像のうち少なくとも機密情報を含む領域の画像を認識不能とする上書きを実行することを特徴する画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−100044(P2010−100044A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212651(P2009−212651)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】