説明

画像形成装置及び画像形成方法

【課題】印画物表面に所望の凹凸を形成し、絹目調画像を実現する。
【解決手段】色材層の熱転写前後の熱転写受容シートの増加方向の厚さ変化量ΔHが0<ΔHとなる印画条件で印画し、且つ保護層の熱転写前後の熱転写受容シートの増加方向の厚さ変化量ΔLがΔL<0となる印画条件で印画することにより、印画物表面に所望の凹凸を形成し、絹目調画像を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写受容シートの表面に所望の凹凸を形成し、絹目調画像を実現可能な画像形成装置及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昇華型感熱転写記録技術は、非銀塩写真プロセス、非電子写真プロセスで、小型、保守性、即時性を備えた銀塩カラー写真画像に近い画像形成技術である。画像形成の原理は、サーマルヘッドに対し画像信号により制御された熱エネルギが加わり、熱エネルギに応じて熱転写シート上の色材が相変化(溶融または昇華)し記録紙上に転移して階調を含む画像を形成するものである。この記録方式は、使用する色材が染料であることから非常に鮮明であり、かつ透明性に優れているため、得られる画像は中間色の再現性や諧調性に優れ、銀塩写真に匹敵する画像を形成可能である。
【0003】
近年のコンピュータの家庭への普及に伴い昇華型感熱転写記録方式、インクジェット記録方式をはじめとする種々の記録方式のホームユースへの応用が盛んに行われている。また近年のディジタルカメラの急速な普及により高画質で銀塩写真に匹敵する写真プリントへの要望が急速に拡大している。
【0004】
写真プリントには種々の特性が要求されるが、要求特性のひとつとして絹目調画像が挙げられる。銀塩写真における絹目調画像とは、表面に微細な凹凸を設けることで光の散乱が発生し正反射光を減少させるものであり、表面のミクロ的な光沢を維持しつつ写像性を低下させることでより高級感のある画像を得るものである。絹目調画像は、特にポートレートサイズ等の大判写真への高級感付与に有効な手段であり、昇華型感熱転写記録方式においても絹目調画像への対応が求められている。
【0005】
特許文献1には、基材上に受容層を設けた熱転写受像シートと、基材上に昇華性染料を含有する染料層を有した熱転写シートを重ねて加熱して印画物を形成する方法が記載されている。具体的に、特許文献1では、該受容層に昇華性染料による熱転写画像を形成し、その後に基材上に熱転写性保護層を設けた熱転写シートを用いて、該熱転写画像の少なくとも一部分の上に、保護層を熱転写して設けている。そして、特許文献1では、該保護層の少なくとも一部分に、加熱条件下で、表面が凹凸形状を有するエンボス版を型押しすることにより、表面にマット形状を形成する印画物の作成方法が提案されている。しかしながら、このような特許文献1の印画物作成手法では、プリンタとは別の大掛かりな装置を用意する必要があり、コストの問題が発生する。また、プリンタによる印画とは別工程を必要とすることから生産性の問題も発生する。
【0006】
特許文献2では、画像色素をバインダー中に含む少なくとも一つの色素層領域と転写可能な保護層を構成する別の領域とを支持体上に有して成る感熱色素転写用色素供与体要素について記載されている。具体的に、特許文献2には、転写可能な保護層を構成する領域の大きさは色素層領域とほぼ同等であり、この保護層は未膨張合成熱可塑性高分子微小球体を含有し、微小球体の未膨張状態の粒径は5μm〜20μmの範囲にある。そして、画像受容性層にその表面に艶消面を付与するために保護層を転写する際の加熱時に、この微小球体の粒径は、20m〜120μmの範囲に膨張することが提案されている。しかしながら、このような特許文献2の手法では、絹目調画像に必要な表面の凹凸が得られておらず、銀塩写真並みの絹目調を得ることができない。また、特許文献2の手法では、保護層に微小球体を含むことから艶消面が常に付与されることとなり、状況に応じた光沢画像、絹目調画像の使い分けができない。
【0007】
特許文献3では、基材上に、熱転写性の保護層、接着層を順次積層し、保護層が熱可塑性樹脂と無機層状化合物からなる保護層転写シートを用い、受像体上の画像の上に、この保護層転写シートを用いて保護層を熱転写し、熱転写時の加熱量を可変、制御して、保護層の表面光沢量を可変する保護層形成方法について記載されている。しかしながら、このような特許文献3の手法では、表面に光沢の差が生じているのみで絹目調画像に必要な表面の凹凸が得られておらず、銀塩写真並みの絹目調を得ることができない。
【0008】
特許文献4では、熱転写シートの色材層を被記録媒体に熱転写する際の被記録媒体の厚さ変化量Dxを下記(1)式で定義し、熱転写シートの保護層を被記録媒体に熱転写された画像上に熱転写する際の被記録媒体の厚さ変化量Dyを下記(2)式で定義したとき、Dy≧Dxとなるように、被記録媒体の搬送速度を制御することが記載されている。
Dx=|Lb−La| ・・・(1)
Dy=|Lc−La| ・・・(2)
La=画像形成前の被記録媒体の厚さ
Lb=画像形成後の被記録媒体における厚さが最小となる箇所の厚さ
Lc=被記録媒体上に保護層を熱転写可能な最小の熱エネルギをサーマルヘッドに印加したときの被記録媒体の厚さ。
【0009】
すなわち、特許文献4では、色材層の熱転写時の搬送速度を速くすることで、色材層の熱転写時に被記録媒体が厚さ方向につぶれる量を少なくし、保護層の熱転写時の搬送速度を遅くすることで、保護層の熱転写時に被記録媒体が厚さ方向に多くつぶれるようにし、絹目調画像に必要な表面の凹凸を形成することが提案されている。しかしながら、特許文献4では、色材層の熱転写時に被記録媒体が厚さ方向につぶれてしまうために、保護層の熱転写時に、銀塩写真並みの絹目調を得るに必要な高低差のある凹凸を形成するためのつぶれ量を確保することができない虞がある。
【0010】
【特許文献1】特開2006−182012号公報
【特許文献2】特開2000−153674号公報
【特許文献3】特開2004−106260号公報
【特許文献4】特開2007−076332号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、熱転写受容シートの表面に所望の凹凸を形成し、絹目調画像を実現可能な画像形成装置及び画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した目的を達成するために本発明に係る画像形成装置は、シート上に色材層と保護層とが走行方向に並んで形成された熱転写シートを走行させる走行部と、少なくとも支持体上に色材を受容する色材受容層が形成された熱転写受容シートを搬送する搬送部と、熱転写受容シートの色材受容層と熱転写シートの色材層及び保護層とを対向させた状態で熱エネルギを印加し、熱転写シートの色材層及び保護層を熱転写受容シートに順に熱転写するサーマルヘッドと、サーマルヘッドの熱エネルギを制御する制御部とを備える。
【0013】
また、本発明に係る画像形成方法は、シート上に色材層と保護層とが走行方向に並んで形成された熱転写シートを走行させるステップと、少なくとも支持体上に色材を受容する色材受容層が形成された熱転写受容シートを搬送するステップと、熱転写受容シートの色材受容層と熱転写シートの色材層とを対向させた状態でサーマルヘッドによって熱エネルギを印加し、熱転写シートの色材層を熱転写シートの色材受容層に熱転写し画像を形成するステップと、熱転写受容シートに形成された画像と熱転写シートの保護層とを対向させた状態でサーマルヘッドによって熱エネルギを印加し、熱転写シートの保護層を熱転写シートに形成された画像上に熱転写するステップとを有する。
【0014】
これら本発明に係る画像形成装置及び画像形成方法は、下記(1)式に示す色材層の熱転写前後の熱転写受容シートの増加方向の厚さ変化量ΔHが、0<ΔHとなる印画条件で印画し、且つ下記(2)式に示す保護層の熱転写前後の熱転写受容シートの増加方向の厚さ変化量ΔLが、ΔL<0となる印画条件で印画する。
ΔH=(色材層の熱転写後の熱転写受容シートの厚さ)−(色材層の熱転写前の熱転写受容シートの厚さ)・・・(1)式
ΔL=(保護層の熱転写後の熱転写受容シートの厚さ)−(保護層の熱転写前の熱転写受容シートの厚さ)・・・(2)式
【0015】
また、本発明に係る画像形成装置は、制御部は、凹凸パターンに応じて、保護層を熱転写受容シートに熱転写し、保護層の熱転写時の凹凸パターンは、保護層の熱転写時に印加される熱エネルギの違いにより形成される異なる3つの熱エネルギ領域を有し、異なる3つの熱エネルギ領域に印加する熱エネルギe1,e2,e3は、熱転写受容シート上に保護層を熱転写可能な最小の熱エネルギe0に対し、下記の(3)式に示す関係を有する。
第1の熱エネルギe1>第2の熱エネルギe2>e0>第3の熱エネルギe3・・・(3)式
【0016】
また、本発明に係る画像形成装置は、保護層の熱転写時の凹凸パターンは、第1の熱エネルギ領域と第2の熱エネルギ領域との境界において、第3の熱エネルギ領域を有する。
【0017】
また、本発明に係る画像形成装置は、熱転写受容シートが、少なくとも支持体に中間層と色材受容層とを順次積層してなり、中間層が、中空粒子を含有してなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、色材層の熱転写前後の熱転写受容シートの増加方向の厚さ変化量ΔHが、0<ΔHとなる印画条件で印画し、且つ保護層の熱転写前後の熱転写受容シートの増加方向の厚さ変化量ΔLが、ΔL<0となる印画条件で印画することにより、印画物表面に所望の凹凸を形成し、高品質な絹目調画像が実現可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を適用した昇華型の画像形成装置を、図面を参照して説明する。
【0020】
この画像形成装置1は、図1に示すように、印画時、印画紙等の被記録媒体2である熱転写受容シート2を、搬送部3を構成するガイドローラ4でガイドし、キャプスタン5とピンチローラ6とで挟持して走行させる。また、この画像形成装置1には、熱転写シート7を収容したカートリッジが装着され、走行部8を構成する巻取リール9が回転駆動されることによって、熱転写シート7を供給リール10から巻取リール9に走行させる。熱転写シート7のインクを熱転写受容シート2に熱転写する印画位置には、サーマルヘッド11とプラテンローラ12とが対向配置されている。熱転写シート7は、サーマルヘッド11によって熱転写受容シート2に所定の圧力で押圧されながら、染料が昇華され、熱転写受容シート2に熱転写される。
【0021】
ここで、熱転写受容シート2について図2を参照して説明する。この熱転写受容シート2は、支持体2aの一方の面に中間層2bと色材受容層2cとが順次積層してなり、支持体2aの他方の面に、バックコート層2dが形成されてなる。
【0022】
支持体2aは、セルロースパルプを主成分とする紙類や合成樹脂フィルム等が挙げられる。セルロースパルプを主成分とする紙類としては、上質紙、中質紙、コート紙、樹脂ラミネート紙等が挙げられる。また、合成樹脂フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート等が挙げられる。なお、支持体2aは、これらに限定されるものではなく、これらの樹脂フィルム同士、あるいは他のフィルムやセルロースパルプを主成分とする支持体2aとの積層貼合による多層フィルムであってもよい。
【0023】
中間層2bは、中空粒子を含有する層を積層してなる。この中空粒子としては、低沸点炭化水素をコアとし、塩化ビニリデン、アクリロニトリルなどの熱可塑性樹脂の殻壁でマイクロカプセル化したもの挙げられる。例えば、ダイフォーム(大日精化工業株式会社)、アドバンセル(積水化学工業株式会社)、マツモトマイクロスフェアーF(松本油脂製薬株式会社)が挙げられる。なお、これらの中空粒子は、上述したようなものに限定されるものではなく、未発泡の状態で塗工した後の乾燥工程で発泡させる、あるいは予め発泡させ中空粒子層塗工液を作成し塗工してもよい。
【0024】
また、中空粒子層に用いるバインダー樹脂としては、水溶性高分子化合物または水に対し分散した樹脂が好ましい。例えば、バインダー樹脂としては、ポリビニルアルコール、カルボキシル変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、アクリル系エマルジョン、アクリル酸エステル系エマルジョン、スチレン−アクリル系エマルジョン、スチレン-ブタジエン系ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン系ラテックス等が用いられる。なお、これに限定されるものではなく、水溶性高分子化合物または水に対し分散した樹脂であればよい。
【0025】
このような中空粒子層は、グラビアコーター、ロールコーター、ダイコーター、カーテンコーター、ブレードコーター、ワイヤーブレード等により塗工される。中空粒子層の固形分塗工量は、好ましくは1〜100g/mであり、さらに好ましくは5〜50g/mである。ここでは、中空粒子層の固形塗工量が1g/m以上とすることにより、十分な断熱性、クッション性を得られることができる。また、中空粒子層の固形塗工量が100g/m以下とすることにより、飽和状態となることを防止することができる。
【0026】
色材受容層2cは、中間層2bの一方の面上に設けられる。色材受容層2cは、熱転写シート7から熱転写される染料を受容し、受容した染料を保持する層である。色材受容層2cとしては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル−ポリ酢酸ビニル共重合体樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。なお、色材受容層2cは、インクリボンから熱転写される染料との相溶性に優れ、熱転写後のインクリボンの剥離性に優れ、ラミネート層樹脂との相溶性に優れるものであれば、これらの樹脂に限定されるものではない。また、これらの樹脂に対し、架橋剤、離型剤、フィラー、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を添加したものであってもよい。
【0027】
このような色材受容層2cの固形分塗工量は、好ましくは1〜15g/mであり、さらに好ましくは2〜10g/mである。色材受容層2cの固形分塗工量は、1g/m以上とすることにより、塗料の成膜性の向上を図ることができ、すなわち、支持体2a、中間層2bの凹凸の影響を受けずに平滑な色材受容層2cを形成することができる。また、固形分塗工量は、15g/mを以下とすることにより、サーマルヘッド11から加えられた熱エネルギの断熱効果の低下を防止することができ、印画濃度の低下を防止することができる。加えて、色材受容層2cの割れやカール等、種々の問題の発生を防止することができる。
【0028】
バックコート層2dは、支持体2aの他方の面に形成され、色材受容層2cと接触した際の色材受容層2cの傷つき防止、帯電防止、カール矯正、ガイドローラ4やプラテンローラ12との摩擦の低減等を図り、印画時にプリンタの搬送性を向上させる。このようなバックコート層2dは、樹脂とフィラーとから構成される。樹脂として好適なものとしては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等が挙げられる。フィラーとして好適なものとしては、種々の有機、無機フィラーが挙げられる。有機フィラーの代表的なものとしては、ナイロンフィラー、セルロースフィラー、ベンゾグアナミンフィラー、スチレンフィラー、アクリルフィラー、シリコンフィラー等が挙げられる。無機フィラーとして代表的なものとしては、シリカ、タルク、クレー、カオリン、マイカ、スメクタイト、硫酸バリウム、二酸化チタン、炭酸カルシウム等が挙げられる。
【0029】
以上のような構成を有する熱転写受容シート2は、中間層2bに対し中空粒子を含有する層を積層することにより、中空粒子が色材層の熱転写時の熱エネルギによりわずかに膨張することで、色材層の熱転写時の意図しない凹凸形成を抑制することができる。このとき、熱転写受容シート2は、更に、中間層2bと色材受容層2cとの密着性を向上させることができるとともに、サーマルヘッド11から加えられる所定の圧力に対するクッション性の向上を図ることができる。
【0030】
また、熱転写受容シート2は、後述するサーマルヘッド11を用いて保護層7fの熱転写時の熱エネルギを選択的に変化させて中間層2bに加わる熱エネルギに差が設けられることで、中間層2bの中空粒子のつぶれ方の差により所望の凹凸パターンが形成され、表面が任意に絹目調に表面加工処理される。この際、熱転写受容シート2は、中空粒子が色材層の熱転写時の熱エネルギにより膨張することで、色材層の熱転写時に厚さ方向につぶれてしまう従来の熱転写受容シートよりも、保護層7fの熱転写時のつぶれ量を多く取ることができ、高低差のある凹凸パターンを形成することができる。
【0031】
なお、本発明で使用する熱転写受容シート2は、支持体2a上に中間層2bと色材受容層2cとが形成されていれば、その他の構成は、特に限定されるものではない。
【0032】
一方、熱転写シート7は、図3に示すように、ポリエステルフィルム、ポリスチレンフィルム等の合成樹脂フィルムでなる支持体7aの一方の面に、画像を形成するイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の染料と熱可塑性樹脂とで形成された色材層7b、7c、7d、7e及び例えば色材層7b、7c、7d、7eと同じ熱可塑性樹脂で形成され画像表面を保護する保護層7fが長手方向に並んで設けられている。そして、支持体7aには、色材層7b、7c、7d、7e及び保護層7fを一組として、順次、長手方向に並んで形成されている。色材層7b、7c、7d、7e及び保護層7fは、サーマルヘッド11により印画する画像データに応じた熱エネルギが印加されることによって、熱転写受容シート2の色材受容層2cに順次熱転写される。
【0033】
なお、本発明で使用する熱転写シート7は、少なくとも一の色材層7b、7c、7d、7eと保護層7fとを有していれば、その他の構成は特に限定されるものではない。例えば、熱転写シート7は、ブラックの色材層7eと保護層7fで構成されていても良く、また、イエロー、マゼンタ、シアンの色材層7b、7c、7dと保護層7fとで構成されていても良い。
【0034】
サーマルヘッド11は、図4に示すように、セラミック基板11aにグレース層11bを介して発熱抵抗体等でなる発熱素子11cがライン状に設けられ、その上層に、発熱素子11cを保護する保護層11dが設けられている。セラミック基板11aは、放熱性に優れ、発熱素子11cの蓄熱を防止する機能を有する。また、グレース層11bは、発熱素子11cを熱転写受容シート2や熱転写シート7に当接させるため、発熱素子11cを熱転写受容シート2や熱転写シート7に突出させるものであり、また、発熱素子11cの熱がセラミック基板11aに吸収され過ぎないようにするためのバッファ層となる。サーマルヘッド11は、1ラインずつ熱転写受容シート2との間に介在する熱転写シート7の染料を発熱素子11cで加熱し昇華させて熱転写受容シート2に熱転写する。
【0035】
以上のように構成された画像形成装置1の制御システム20について説明する。
【0036】
図5に示すように、制御システム20は、制御メモリ21aに格納された画像形成装置1の全体の動作を制御する制御プログラムに基づいて、全体の動作を制御するシステム制御部21を有する。また、制御メモリ21aには、サーマルヘッド11によって保護層7fの熱転写時に使用する熱転写パターンとなる保護層7fの凹凸パターンが格納されている。なお、保護層7fの凹凸パターンについては、後述する。
【0037】
また、制御システム20は、例えば記録媒体が装着される記録及び/又は再生装置等の図示しない電気機器と接続され、画像データが入力される画像入力部22と、画像入力部22より入力された画像データを一旦保存するメモリ23とを有する。
【0038】
また、制御システム20は、保護層7fの凹凸パターンを制御メモリ21aから読み出し、メモリ23に保存するメモリ制御部24を有する。
【0039】
また、制御システム20は、メモリ23に保存された画像データに画像処理を施し印画用画像データを生成する画像処理部25を有する。画像処理部25は、例えば、メモリ23に保存された画像データを、色変換、ガンマ処理、シャープネス処理、蓄熱補正処理等、或いは、後述する操作・表示部28から指示された印画サイズ変換や画像修飾等、また、サーマルヘッド11の特性や駆動方式、熱転写受容シート2や熱転写シート7の特性等、種々の印画条件に合わせた画像処理を施し、印画用画像データを生成する。
【0040】
この際、画像処理部25は、上述した種々の印画条件に合わせた画像処理を施すとともに、下記(1)式に示す色材層7b、7c、7d、7eの熱転写前後の熱転写受容シート2の増加方向の厚さ変化量ΔH(μm)が0<ΔHとなる印画条件で印画し、且つ下記(2)式に示す保護層7fの熱転写前後の熱転写受容シート2の増加方向の厚さ変化量ΔL(μm)がΔL<0となる印画条件で印画するように印画用画像データを生成する。
ΔH=(色材層の熱転写後の熱転写受容シートの厚さ)−(色材層の熱転写前の熱転写受容シートの厚さ)・・・(1)式
ΔL=(保護層の熱転写後の熱転写受容シートの厚さ)−(保護層の熱転写前の熱転写受容シートの厚さ)・・・(2)式
【0041】
また、制御システム20は、画像処理部25から供給された印画用画像データ及び保護層7fの凹凸パターンに基づいて、サーマルヘッド11を構成する発熱素子11cを駆動する駆動信号を生成するヘッド制御部26を有する。ヘッド制御部26は、印画用画像データ及び保護層7fの凹凸パターンに応じた駆動信号をサーマルヘッド11へ供給し、サーマルヘッド11の発熱素子11cを駆動する。
【0042】
また、制御システム20は、画像処理部25から供給された印画用画像データに基づいて、熱転写受容シート2を所定の搬送路上を搬送する搬送部3と熱転写シート7を所定の搬送路上を走行する走行部8とを制御する制御部27を有する。
【0043】
また、制御システム20は、印画する画像を表示する例えばLCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)等の図示しない表示装置が接続される操作・表示部28を有する。操作・表示部28は、表示装置をユーザが操作することにより指示された印画する画像の印画サイズ変換や画像修飾等の指示データが入力される。
【0044】
また、制御システム20は、図示しない外部のコンピュータやネットワークに接続されるIF部29を有する。IF部29は、外部のコンピュータからネットワークを介して、画像データや保護層7fの凹凸パターンが入力されたり、遠隔地の遠隔操作装置からの本装置の操作信号が入力されたり、ネットワークを介して、本装置の稼動状況データを遠隔地の外部のコンピュータに送信する。
【0045】
また、制御システム20は、イエローの色材層7b、マゼンタの色材層7c、シアンの色材層7d、ブラックの色材層7e及び保護層7fの位置や、熱転写受容シート2の印画開始位置を検出するセンサ部30とを有する。具体的に、センサ部30は、画像を熱転写受容シート2に印画する際に、熱転写受容シート2に設けられ、熱転写受容シート2の印画領域の始端及び終端を示す検知マークや、図3に示すような熱転写シート7の各色材層7b,7c,7d,7e及び保護層7fの搬送方向上流側に設けられ、各色材層7b,7c,7d,7e及び保護層7fの始端及び終端を示す検出マーク7g,7h,7i,7j,7kや、保護層7fの搬送方向下流側に設けられ、一組の各色材層7b,7c,7d,7e及び保護層7fの終端を示す検出マーク7lを検出する。
【0046】
ここで、以上のように構成された画像形成装置1の印画動作について説明する。
【0047】
システム制御部21は、画像入力部22又はIF部29から入力された画像データをメモリ23に一旦保存する。次いで、システム制御部21は、メモリ制御部24を介して、保護層7fの凹凸パターンを制御メモリ21aから読み出し、メモリ23に保存する。
【0048】
次いで、システム制御部21は、画像処理部25を介して、メモリ23に保存された画像データに、色変換、ガンマ処理、シャープネス処理、蓄熱補正処理等の画像処理を施す。そして、システム制御部21は、画像処理部25を介して、画像処理が施された画像データから、上記(1)式に示す色材層7b、7c、7d、7eの熱転写前後の熱転写受容シート2の増加方向の厚さ変化量ΔHが、0<ΔHとなる印画条件で印画する印画用画像データを生成する。なお、特許文献4のような従来では色材層7b、7c、7d、7eを熱転写すると、0>ΔHとなっていたのを、ここでは、熱転写受容シート2が、色材層7b、7c、7d、7eの熱転写時の熱エネルギにより膨張する中空粒子を含有した中間層2bを有することで、0<ΔHとなるようにしている。
【0049】
次いで、システム制御部21は、ヘッド制御部26を介して、画像処理部25から供給された印画用画像データ及び保護層7fの凹凸パターンに応じて、サーマルヘッド11を構成する発熱素子11cを駆動する駆動信号を生成する。
【0050】
次いで、システム制御部21は、制御部27を介して、駆動信号に応じて搬送部3を駆動制御し、センサ部30により検出された熱転写受容シート2の印画開始位置を、サーマルヘッド11の位置まで搬送する。
【0051】
また、システム制御部21は、搬送した熱転写受容シート2にイエローの色材層7b、マゼンタの色材層7c、シアンの色材層7d、ブラックの色材層7e、保護層7fの順に熱転写できるように、制御部27を介して、駆動信号に応じて走行部8を駆動制御し、熱転写シート7を走行させる。
【0052】
次いで、システム制御部21は、ヘッド制御部26を介して、印画用画像データに応じた駆動信号に応じてサーマルヘッド11を駆動し、色材層7b、7c、7d、7eの熱転写前後の熱転写受容シート2の増加方向の厚さ変化量ΔHが、0<ΔHとなり、熱転写シート7の色材層7b、7c、7d、7eをイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの順に印画用画像データに応じた濃度となるように熱転写し、熱転写受容シート2に画像を形成する。
【0053】
次いで、システム制御部21は、熱転写受容シート2を走行させながら、ヘッド制御部26を介して、保護層7fの凹凸パターンに応じた駆動信号に応じてサーマルヘッド11を駆動し、保護層7fの熱転写前後の熱転写受容シート2の増加方向の厚さ変化量ΔLがΔL<0となるとともに、保護層7fの凹凸パターンに応じて、保護層7fを画像上に熱転写する。
【0054】
ここで、保護層7fの凹凸パターンについて説明を行う。保護層7fの熱転写時の保護層7fの凹凸パターンとしては、図8(A)に示すように、保護層7fの熱転写時に印加される熱エネルギの違いにより形成される異なる3つの熱エネルギ領域E1,E2,E3を有する。なお、図8(A)中において、入力信号強度が高いほど保護層7fの熱転写時の熱エネルギが高いことになる。そして、異なる3つの熱エネルギ領域E1,E2,E3に印加する熱エネルギe1,e2,e3は、熱転写受容シート2上に保護層7fを熱転写可能な最小の熱エネルギe0に対し、下記の(3)式に示す関係を有する。
第1の熱エネルギe1>第2の熱エネルギe2>e0>第3の熱エネルギe3・・・(3)式
【0055】
熱転写受容シート2上には、第1の熱エネルギ領域E1と第2の熱エネルギ領域E2との保護層7fの熱転写時に印加される熱エネルギe1,e2の違いにより、中間層2bに加わる熱エネルギに差が設けられ、保護層7fの表面及び中間層2bの中空粒子のつぶれ方の差により凹凸が形成される。具体的に、第1の熱エネルギ領域E1によって、保護層7fの凹凸パターンの凸部分が形成される。また、第2の熱エネルギ領域E2によって、保護層7fの凹凸パターンの凹部分が形成される。これにより、熱転写受容シート2上には、絹目調画像が形成される。
【0056】
この際、熱転写受容シート2上には、第1の熱エネルギ領域E1と第2の熱エネルギ領域E2との境界において、熱転写受容シート2上に保護層7fを熱転写可能な最小の熱エネルギe0より小さな熱エネルギである第3の熱エネルギe3が印加される第3の熱エネルギ領域E3を有する。これにより、熱転写受容シート2上には、より高低差の大きい凹凸が形成される。したがって、熱転写受容シート2上には、更に絹目調画像の画質の向上を図ることができる。
【0057】
このとき、第3の熱エネルギe3は、単独では熱転写受容シート2上に保護層7fを熱転写不能の大きさであるが、隣接する画素に印加される第1の熱エネルギe1及び第2の熱エネルギe2が伝わることで、第3の熱エネルギ領域E3が第1の熱エネルギ領域E1及び第2の熱エネルギ領域E2と混在する場合、熱転写受容シート2上に保護層7fを熱転写することができる。したがって、第3の熱エネルギ領域E3の他の第1の熱エネルギ領域及び第2の熱エネルギ領域に対する比率は、保護層7fの転写性に問題のない程度とすることが望ましい。
【0058】
なお、保護層7fの凹凸パターンは、制御メモリ21aに格納されていることに限定されるものではなく、メモリ23に格納されていてもよい。
【0059】
また、保護層7fの凹凸パターンは、画像入力部22又はIF部29から入力され、第1の熱エネルギ領域E1と第2の熱エネルギ領域E2とを有する凹凸パターン、或いは、制御メモリ21a又はメモリ23に既に格納されている第1の熱エネルギ領域E1と第2の熱エネルギ領域E2とを有する保護層7fの凹凸パターンから、これら異なる第1及び第2の熱エネルギ領域E1,E2の境界において、画像処理部25でシャープネス制御を行いシャープネス化を図り、図9(A)に示すような熱転写受容シート2上に保護層7fを熱転写可能な最小の熱エネルギe0より小さな第3の熱エネルギe3で保護層7fの熱転写を行う第3の熱エネルギ領域E3を形成し、異なる3つの熱エネルギ領域E1,E2,E3を有するようなものでもよい。更に、上述したようなシャープネス化した保護層7fの凹凸パターンを、予め制御メモリ21a又はメモリ23に格納しておくようにしてもよい。
【実施例1】
【0060】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0061】
<熱転写受容シートA>
支持体2aとして厚さ150μmのアート紙を使用し、その片面に下記表1に示す組成の中間層塗工液を固形分塗工量40g/mとなるよう塗工乾燥させ中間層2bを形成した。
【0062】
【表1】

【0063】
上記中間層2bを塗工乾燥後の支持体2aに対し、下記表2に示す組成の色材受容層塗工液を固形分塗工量が5g/mとなるよう塗工乾燥させた後、50℃で48時間硬化させ色材受容層2cを形成し、熱転写受容シートAとした。
【0064】
【表2】

【0065】
<熱転写受容シートB>
熱転写受容シートAの中間層2bに替えて空隙構造を有するポリオレフィン系熱可塑性樹脂(トヨパール−SS P4256、東洋紡績株式会社)を用いた。該樹脂フィルムを、ポリウレタン系接着剤を使用し、ドライラミネート法により支持体と貼合した。支持体2a及び色材受容層2bは、熱転写受容シートAと同様の組成・手法で形成し、熱転写受容シートBとした。
【0066】
<評価1>
熱転写受容シートA及びBに対し、下記条件で印画後、熱転写受容シートの膜厚を測定し、印画前後の膜厚変化を算出した。
【0067】
<印画条件>
・プリンタ:デジタルフォトプリンター(UP−DR150、ソニー株式会社製、解像度334dpi)
・熱転写シート:2UPC−R155(イエロー、マゼンタ、シアンの各染料インク層及び保護層を有する)
・印画画像:イエロー、マゼンタ、シアンによる黒の階調画像(1,2・・・5,6)、1階調目から6階調目に向かって印加する熱エネルギが増加。
・印画速度:0.7msec/line,2.0msec/line,4.0msec/line
・保護層の熱転写エネルギ:低搬送速度時(2.0msec/line、4.0msec/line)におけるストローブパルス幅を調整し、各階調において高搬送速度時(0.7msec/line)の場合と同一の記録濃度特性を示すように調整した。
【0068】
熱転写受容シートA及びBについて印画時の搬送速度0.7,2.0,4.0msec/lineにおける熱転写受容シートAの厚さ変化を図6に示し、熱転写受容シートBの厚さ変化を図7に示す。なお横軸のゼロは印画処理を行わないエネルギゼロの部分を示す。
【0069】
ここで本発明における第3の熱エネルギe3について記述する。図6及び図7における2階調目が保護層を熱転写可能な最小の熱エネルギe0に相当する。保護層の熱転写が不可能から可能に変わる階調部(2階調目)を境として、低階調側を保護層の熱転写不能エネルギ領域、高階調側を保護層の熱転写可能エネルギ領域と定義した。図6及び図7に示すように、本発明における第3の熱エネルギe3は、2階調目を境として低階調側の熱エネルギ領域と定義する。なお、保護層の熱転写に使用した熱印加エネルギプロファイルは画像形成時のイエロー用のものを使用した。
<評価2>
【0070】
熱転写受容シートA及びBに対し各条件でマット画像を作成し印画物に対し目視で評価を実施した。評価結果を表3に示す。評価基準は以下のとおりである。
◎:銀塩写真と同等の絹目調が再現されており非常に良好
○:銀塩写真と同等の絹目調が再現されており良好
△:銀塩写真より劣る絹目であり不良。
×:銀塩写真とはかけ離れた絹目調、艶消し感が強すぎ不良。
・プリンタ:デジタルフォトプリンター(UP−DR150、ソニー株式会社製、解像度334dpi)
・熱転写シート:2UPC−R155(イエロー、マゼンタ、シアンの各染料インク層及び保護層を有する)
・印画画像:イエロー、マゼンタ、シアンによる黒ベタ画像
・印画速度:0.7msec/line,2.0msec/line,4.0msec/line
・保護層の熱転写エネルギ:低搬送速度時(2.0msec/line,4.0msec/line)におけるストローブパルス幅を調整し、各階調において高搬送速度時(0.7msec/line)の場合と同一の記録濃度特性を示すように調整した。
【0071】
実施例1:熱転写受容シートAに対し、0.7msec/lineで黒ベタ画像を熱転写後、4.0msec/lineで保護層の熱転写を行った。図8(A)に示すように、保護層の熱転写時の保護層の凹凸パターンとして異なる3つの熱エネルギ領域E1、E2、E3を持ち、該熱エネルギe1、e2、e3が熱転写受容シート上に保護層を熱転写可能な最小の熱エネルギe0に対し、下記の(3)式に示す関係である保護層の凹凸パターンを用いた。
第1の熱エネルギe1>第2の熱エネルギe2>e0>第3の熱エネルギe3・・・(3)式
【0072】
なお、図8(A)には、保護層の熱転写時の熱転写受容シートの幅方向の入力信号プロファイルを示し、図8(B)には、図8(A)に示す入力信号と対応する箇所における保護層の熱転写後の熱転写受容シートの断面図を示す。図8(A)における横軸の目盛り線は、1画素幅(76μm)を示す。図8(A)における縦軸は、相対的な入力信号の強度を示し、入力信号強度が高いほど保護層の熱転写時の熱エネルギが高いことになる。図8(B)における縦軸は、保護層の熱転写後の熱転写受容シートの凹凸の高さを示し、3次元表面粗度計(SE3400K、株式会社小坂研究所)を使用しデータ採取した。後述する図9乃至図12の縦軸及び横軸についても同様である。
【0073】
実施例2:熱転写受容シートAに対し、0.7msec/lineで黒ベタ画像を熱転写後、4.0msec/lineで保護層の熱転写を行った。図9(A)に示すように、保護層の熱転写時の保護層の凹凸パターンとして第1の熱エネルギ領域E1、第2の熱エネルギ領域E2を持ち、これら異なる第1及び第2の熱エネルギ領域E1,E2の境界線において、シャープネス制御を行った。これにより、保護層の熱転写時の保護層の凹凸パターンとして熱転写受容シート上に保護層を熱転写可能な最小の熱エネルギe0より小さな第3の熱エネルギe3で保護層の熱転写を行う第3の熱エネルギ領域E3が形成される。なお、図9(A)には、保護層の熱転写時の熱転写受容シートの幅方向の入力信号プロファイルを示し、図9(B)には、対応する箇所における保護層の熱転写後の熱転写受容シートの断面図を示す。
【0074】
比較例1:熱転写受容シートAに対し、0.7msec/lineで黒ベタ画像を熱転写後、2.0msec/lineで保護層の熱転写を行った。図10(A)に示すように、保護層の熱転写時のパターンとして異なる3つの熱エネルギ領域E1、E2、E3を持ち、該熱エネルギe1,e2,e3が熱転写受容シート上に保護層を熱転写可能な最小の熱エネルギe0に対し上記の(3)式に示す関係である保護層の凹凸パターンを用いた。なお、図10(A)には、保護層の熱転写時の熱転写受容シート幅方向の入力信号プロファイルを示し、図10(B)には、対応する箇所における保護層の熱転写後の熱転写受容シートの断面図を示す。
【0075】
比較例2:熱転写受容シートAに対し、0.7msec/lineで黒ベタ画像を熱転写後、4.0msec/lineで保護層の熱転写を行った。図11(A)に示すように、保護層の熱転写時の保護層の凹凸パターンとして異なる2つの熱エネルギ領域E1,E2(第1の熱エネルギ領域E1、第2の熱エネルギ領域E2)を持つ保護層の凹凸パターンを用いた。なお、図11(A)には、保護層の熱転写時の熱転写受容シートの幅方向の入力信号プロファイルを示し、図11(B)には、対応する箇所における保護層の熱転写後の熱転写受容シートの断面図を示す。
【0076】
比較例3:熱転写受容シートBに対し、0.7msec/lineで黒ベタ画像を熱転写後、4.0msec/lineで保護層の熱転写を行った。図12(A)に示すように、保護層の熱転写時の保護層の凹凸パターンとして異なる3つの熱エネルギ領域E1,E2,E3を持ち、該熱エネルギe1,e2,e3が熱転写受容シート上に保護層を熱転写可能な最小の熱エネルギe0に対し、上記の(3)式に示す関係である保護層の凹凸パターンを用いた。なお、図12(A)には、保護層の熱転写時の熱転写受容シートの幅方向の入力信号プロファイルを示し、図12(B)には、対応する箇所における保護層の熱転写後の熱転写受容シートの断面図を示す。
【0077】
【表3】

【0078】
実施例1では、色材層の熱転写前後の熱転写受容シートの増加方向の厚さ変化量ΔHが、1.8μmであり、保護層の熱転写前後の熱転写受容シートの増加方向の厚さ変化量ΔLが、−3.9μmであった。また、実施例1では、色材層及び保護層の熱転写後の熱転写受容シートの凹凸の高さが、4.5μmであった。実施例1では、図8(B)に示すように、第3の熱エネルギ領域E3部分が熱転写受容シートの表面で最も凸になっており、高低差の大きな凹凸が形成された。したがって、実施例1によれば、銀塩写真と同等の絹目調が再現された非常に良好な結果を得ることができることが確認できた。
【0079】
実施例2では、色材層の熱転写前後の熱転写受容シートの増加方向の厚さ変化量ΔHが、1.2μmであり、保護層の熱転写前後の熱転写受容シートの増加方向の厚さ変化量ΔLが、−4.2μmであった。また、実施例2では、色材層及び保護層の熱転写後の熱転写受容シートの凹凸の高さが、3.6μmであった。実施例2のように、第1の熱エネルギ領域E1と第2の熱エネルギ領域E2との境界においてシャープネス制御を行った保護層の凹凸パターンであっても、図9(B)に示すように、第3の熱エネルギ領域E3部分が熱転写受容シートの表面で最も凸になっており、高低差の大きな凹凸が形成された。したがって、実施例2によれば、銀塩写真と同等の絹目調が再現された非常に良好な結果を得ることができることが確認できた。
【0080】
比較例1では、色材層の熱転写前後の熱転写受容シートの増加方向の厚さ変化量ΔHが、1.1μmであり、保護層の熱転写前後の熱転写受容シートの増加方向の厚さ変化量ΔLが、1.1μmであった。また、比較例1では、色材層及び保護層の熱転写後の熱転写受容シートの凹凸の高さが、1.0μmであった。比較例1では、実施例1及び実施例2と異なり、実施例1及び実施例2より保護層の熱転写時において熱転写受容シートを高速で搬送している。したがって、比較例1では、実施例1及び実施例2より保護層の熱転写時における熱転写受容シートに熱変形時間を十分確保することができず、中間層に加わる熱エネルギに差を設けることができない。このため、比較例1では、実施例1及び実施例2と比較して、図10(B)に示すように、保護層の熱転写後の凹凸の高低差が小さい。したがって、比較例1では、銀塩写真と同等の絹目調が再現された良好な結果が得られなかった。
【0081】
比較例2では、色材層の熱転写前後の熱転写受容シートの増加方向の厚さ変化量ΔHが、1.5μmであり、保護層の熱転写前後の熱転写受容シートの増加方向の厚さ変化量ΔLが、−4.4μmであった。また、比較例2では、色材層及び保護層の熱転写後の熱転写受容シートの凹凸の高さが、2.5μmであった。比較例2では、実施例1及び実施例2と異なり、図11(A)に示すように、熱転写受容シート上に保護層を熱転写可能な最小の熱エネルギe0より小さな第3の熱エネルギe3を有する第3の熱エネルギ領域E3を持たないため、図11(B)に示すように、凸の部分が実施例1及び実施例2と比較して小さく、保護層の熱転写後の凹凸の高低差が小さい。したがって、比較例2によれば、実施例1及び実施例2のように銀塩写真と同等の絹目調が再現された非常に良好な結果が得られなかった。しかしながら、比較例2によれば、銀塩写真と同等の絹目調が再現された良好な結果を得ることができることが確認できた。
【0082】
比較例3では、色材層の熱転写前後の熱転写受容シートの増加方向の厚さ変化量ΔHが、−2.0μmであり、保護層の熱転写前後の熱転写受容シートの増加方向の厚さ変化量ΔLが、−4.5μmであった。また、比較例3では、色材層及び保護層の熱転写後の熱転写受容シートの凹凸の高さが、1.9μmであった。比較例3では、実施例1及び実施例2と異なり、熱転写受容シートが中空粒子層を有していないため、色材層の熱転写時に厚さ方向に意図しないつぶれが発生する。このため、比較例3では、実施例1及び実施例2と異なり、保護層の熱転写時につぶれ量を多く取ることができず、実施例1及び実施例2と比較して、図12(B)に示すように、保護層の熱転写後の凹凸の高低差が小さい。したがって、比較例3では、銀塩写真と同等の絹目調が再現された良好な結果が得られなかった。
【0083】
以上より、熱転写受容シート2は、色材層の熱転写前後の熱転写受容シート2の増加方向の厚さ変化量ΔHが、0<ΔHとなる印画条件で色材層が熱転写受容シート2に熱転写されることにより、中空粒子が色材層の熱転写時の熱エネルギにより膨張することで、色材層の熱転写時に厚さ方向につぶれてしまう従来の熱転写受容シートよりも、保護層7fの熱転写時のつぶれ量を多く取ることができ、保護層7fの熱転写前後の熱転写受容シート2の増加方向の厚さ変化量ΔLが、ΔL<0となる印画条件で保護層7fが熱転写受容シート2に熱転写されることにより、熱転写受容シート2に高低差のある凹凸を形成することができ、銀塩写真並みの絹目調画像が実現可能となる。
【0084】
また、保護層7fの熱転写時の保護層7fの凹凸パターンは、更に、保護層7fの熱転写時に印加される熱エネルギの違いにより形成される異なる3つの熱エネルギ領域E1、E2、E3を有し、これらの異なる3つの熱エネルギ領域E1、E2、E3の熱エネルギe1、e2、e3は、熱転写受容シート2上に保護層7fを熱転写可能な最小の熱エネルギe0に対し、下記の(3)式に示す関係を有することにより、単に、上述した色材層の熱転写前後の熱転写受容シート2の増加方向の厚さ変化量ΔHが、0<ΔHとなる印画条件で色材層が熱転写受容シート2に熱転写され、保護層7fの熱転写前後の熱転写受容シート2の増加方向の厚さ変化量ΔLが、ΔL<0となる印画条件で保護層7fが熱転写受容シート2に熱転写された場合より、熱転写受容シート2に高低差のある凹凸を形成することができ、更に好ましい銀塩写真並みの絹目調画像が実現可能となる。
第1の熱エネルギe1>第2の熱エネルギe2>e0>第3の熱エネルギe3・・・(3)式
【0085】
また、第1の熱エネルギ領域E1と第2の熱エネルギ領域E2との境界において、第3の熱エネルギ領域E3を形成することにより、単に、上述した(3)式の関係を有する異なる3つの熱エネルギ領域E1、E2、E3を有する場合より、熱転写受容シート2に高低差のある凹凸を形成することができ、更に好ましい銀塩写真並みの絹目調画像が実現可能となる。
【0086】
また、保護層7fの熱転写時に、熱転写受容シート2に、保護層7fの表面及び中間層2bの中空粒子のつぶれ方の差によって凹凸を形成することができ、銀塩写真並みの絹目調画像が実現可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明を適用した画像形成装置の構成を示す図である。
【図2】本発明を適用した画像形成装置に用いる熱転写受容シートの要部断面図である。
【図3】本発明を適用した画像形成装置に用いる熱転写シートの断面図である。
【図4】本発明を適用した画像形成装置のサーマルヘッドの正面図である。
【図5】本発明を適用した画像形成装置のブロック図である。
【図6】横軸に印画時の階調、縦軸に熱転写受容シートAの厚さ変化量をプロットした場合の挙動を示す図である。
【図7】横軸に印画時の階調、縦軸に熱転写受容シートBの厚さ変化量をプロットした場合の挙動を示す図である。
【図8】(A)には、実施例1における保護層の熱転写時の熱転写受容シートの幅方向の入力信号プロファイルを示し、(B)には、対応する箇所における保護層熱転写後の熱転写受容シートの断面図を示す図である。
【図9】(A)には、実施例2における保護層の熱転写時の熱転写受容シートの幅方向の入力信号プロファイルを示し、(B)には、対応する箇所における保護層熱転写後の熱転写受容シートの断面図を示す図である。
【図10】(A)には、比較例1における保護層の熱転写時の熱転写受容シートの幅方向の入力信号プロファイルを示し、(B)には、対応する箇所における保護層熱転写後の熱転写受容シートの断面図を示す図である。
【図11】(A)には、比較例2における保護層の熱転写時の熱転写受容シートの幅方向の入力信号プロファイルを示し、(B)には、対応する箇所における保護層熱転写後の熱転写受容シートの断面図を示す図である。
【図12】(A)には、比較例3における保護層の熱転写時の熱転写受容シートの幅方向の入力信号プロファイルを示し、(B)には、対応する箇所における保護層熱転写後の熱転写受容シートの断面図を示す図である。
【符号の説明】
【0088】
1 画像形成装置、2 熱転写受容シート、2a 支持体、2b 中間層、2c 色材受容層、2d バックコート層、3 搬送部、4 ガイドローラ、5 キャプスタン、6 ピンチローラ、7 熱転写シート、7a 基材、7b イエローの色材層、7c シアンの色材層、7d マゼンタの色材層、7e ブラックの色材層、7f 保護層、8 走行部、9 巻取リール、10 供給リール、11 サーマルヘッド、11a セラミック基板、11b グレース層、11c 発熱素子、11d 保護層、12 プラテンローラ、20 制御システム、21 システム制御部、22 画像入力部、23 メモリ、24 メモリ制御部、25 画像処理部、26 ヘッド制御部、27 制御部、28 操作・表示部、29 IF部、30 センサ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート上に色材層と保護層とが走行方向に並んで形成された熱転写シートを走行させる走行部と、
少なくとも支持体上に色材を受容する色材受容層が形成された熱転写受容シートを搬送する搬送部と、
上記熱転写受容シートの色材受容層と上記熱転写シートの色材層及び保護層とを対向させた状態で熱エネルギを印加し、上記熱転写シートの色材層及び保護層を上記熱転写受容シートに順に熱転写するサーマルヘッドと、
上記サーマルヘッドの熱エネルギを制御する制御部とを備え、
上記制御部は、下記(1)式に示す上記色材層の熱転写前後の上記熱転写受容シートの増加方向の厚さ変化量ΔHが0<ΔHとなる印画条件で印画し、且つ下記(2)式に示す上記保護層の熱転写前後の上記熱転写受容シートの増加方向の厚さ変化量ΔLがΔL<0となる印画条件で印画する画像形成装置。
ΔH=(色材層の熱転写後の熱転写受容シートの厚さ)−(色材層の熱転写前の熱転写受容シートの厚さ)・・・(1)式
ΔL=(保護層の熱転写後の熱転写受容シートの厚さ)−(保護層の熱転写前の熱転写受容シートの厚さ)・・・(2)式
【請求項2】
上記制御部は、所定の凹凸パターンに応じて、上記保護層を上記熱転写受容シートに熱転写し、
上記保護層の熱転写時の凹凸パターンは、上記保護層の熱転写時に印加される熱エネルギの違いにより形成される異なる3つの熱エネルギ領域を有し、
上記異なる3つの熱エネルギ領域に印加する熱エネルギe1,e2,e3は、上記熱転写受容シート上に上記保護層を熱転写可能な最小の熱エネルギe0に対し、下記の(3)式に示す関係を有する請求項1に記載の画像形成装置。
第1の熱エネルギe1>第2の熱エネルギe2>e0>第3の熱エネルギe3・・・(3)式
【請求項3】
上記保護層の熱転写時の凹凸パターンは、上記第1の熱エネルギ領域と上記第2の熱エネルギ領域との境界において、上記第3の熱エネルギ領域を有する請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
上記熱転写受容シートは、上記支持体に上記中間層と上記色材受容層とが順次積層してなり、
上記中間層は、中空粒子を含有してなる請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
シート上に色材層と保護層とが走行方向に並んで形成された熱転写シートを走行させるステップと、
少なくとも支持体上に色材を受容する色材受容層が形成された熱転写受容シートを搬送するステップと、
上記熱転写受容シートの色材受容層と上記熱転写シートの色材層とを対向させた状態でサーマルヘッドによって熱エネルギを印加し、上記熱転写シートの色材層を上記熱転写シートの上記色材受容層に熱転写し画像を形成するステップと、
上記熱転写受容シートに形成された画像と上記熱転写シートの保護層とを対向させた状態で上記サーマルヘッドによって熱エネルギを印加し、上記熱転写シートの保護層を上記熱転写シートに形成された画像上に熱転写するステップとを有し、
下記(1)式に示す上記色材層の熱転写前後の上記熱転写受容シートの増加方向の厚さ変化量ΔHが0<ΔHとなる印画条件で印画し、且つ下記(2)式に示す上記保護層の熱転写前後の上記熱転写受容シートの増加方向の厚さ変化量ΔLがΔL<0となる印画条件で印画する画像形成方法。
ΔH=(色材層の熱転写後の熱転写受容シートの厚さ)−(色材層の熱転写前の熱転写受容シートの厚さ)・・・(1)式
ΔL=(保護層の熱転写後の熱転写受容シートの厚さ)−(保護層の熱転写前の熱転写受容シートの厚さ)・・・(2)式

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−58342(P2010−58342A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−225142(P2008−225142)
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】