説明

画像形成装置

【課題】 拍車による記録媒体からのインクの剥離、記録媒体へのインクの再転写を防止できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】 シート材を搬送する手段と搬送過程でシート材にインク滴を吐出してシート上に画像を形成する画像形成部を有する画像形成装置において、画像形成部に対し、シート材の搬送方向下流側にあってシート材の画像形成面に接触し、シート材の搬送に際しシート材の姿勢の拘束力を付与する拘束手段と、拘束手段のシート材接触部とインク成分との付着を防止する離型剤を該拘束手段に塗布する離型剤塗布手段と、を設ける。さらに、拘束手段のシート材接触に付着した付着物を拭き取ることが可能なクリーニング部材を設けてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、詳しくは、記録媒体上にインクを吐出し、記録を行うインクジェット記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来にある画像記録装置として、シート状画像記録部において画像記録媒体を間欠的に搬送し、各搬送停止毎に搬送方向に直角な方向に所定の幅でインク滴を吐出して画像を記録するインクジェット記録装置がある。
【0003】
図5は従来見られる画像形成装置の印字部の概略断面図である。図5において、記録媒体201は矢印K方向から給送され、副走査ローラ202とこれに対抗して押圧されるピンチローラ203の間で把持され、副走査ローラ202の回転によって下流方向のプラテン206側へ搬送される。
【0004】
プラテン206は副走査ローラ202によって搬送された記録媒体201をその上面206aで平面的に支持するように配置されている。主走査レール221はその軸方向を記録媒体201の搬送方向とは直角な方向とし、プラテン206の上方にあって上面206aと平行になるように配置される。
【0005】
キャリッジ222は、主走査レール221に挿通され、不図示の直線移動駆動機構と連結して紙面垂直方向、すなわち主走査方向に移動可能である。キャリッジ222は、その内部にインクジェット式記録ヘッド223を有し、そのインク吐出面をプラテン206の上面206aに対向するように構成され、キャリッジ222が主走査方向に移動する間、インク吐出面と記録媒体201との間隔は、記録媒体201がプラテン206に姿勢を矯正される限り、精度よく維持される。
【0006】
また、キャリッジ222は本体制御部から不図示のケーブルを介して電気信号を受け、記録ヘッドへ伝達し、インクを吐出させる。キャリッジ222の主走査移動中に吐出信号を受けると、プラテン206上の記録媒体201に記録ヘッドの吐出ノズル列に相当する幅の帯状の画像が形成される。
【0007】
排紙ローラ224はプラテン206に対して記録媒体201の搬送方向下流側にあって、その周面の最高部の高さとプラテン206の上面206aとの高さはほぼ同じに設定される。拍車状回転体(以下拍車と記す)211はその円周部に先端が鋭利に突出した複数の突起部を配列した回転体として構成され、排紙ローラ224の周面最上部に軽微に押圧されるように構成されている。
【0008】
プラテン206を通過した記録媒体201は排紙ローラ224と拍車211とで把持され、記録媒体201がプラテン206の上面206aから浮かないよう拘束するとともに、副走査ローラ202とピンチローラ203で付与される搬送力よりも弱い搬送力で記録媒体201を搬送する。拍車状回転体に関しては特許文献1に開示されている。
【0009】
従来、染料を溶融成分としたインクを使用する画像記録装置ではインクの染料分や溶剤分はともに比較的速く記録媒体201の内部へ浸透し、記録媒体201がプラテン206上でのインクを受容してから拍車211に到達するまでの間欠搬送までに所定の時間以上があれば、インクの大部分は記録媒体201の内部へ浸透しているので、記録媒体201の表面はほぼ乾燥し、記録媒体201のインク受容表面に拍車211の前記突起部が接触してもインクの剥離や接触痕を残すことはほとんどなかった。
【特許文献1】特開2004−106978号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近年、プリント出力の高速化がなされる中、記録媒体の搬送速度向上やヘッド主走査速度の向上によってプラテン上でインクが記録媒体で受容してから拍車に達するまでの時間は短縮され、記録媒体上でインクが乾かない内にインク受容表面が拍車に接触する場合が発生してきている。
【0011】
このような場合、インクは拍車によって記録媒体から剥離されるか、もしくは拍車の一端に付着したインクを拍車の1回転後に記録媒体に再転写させることがある。また、画像堅牢化のため、顔料を主成分とした顔料インクを使用する画像記録装置が開発されてきているが、顔料は記録媒体の内部にはほとんど浸透することはなく、記録媒体の表層のみに付着積層し、顔料が定着するまでは記録媒体の表層で粘着性の状態にあって表面の摺擦耐性は非常に弱く、さらに顔料が記録媒体表面上で乾燥定着するまでに要する時間は染料系インクに比して長い。
【0012】
上記のような顔料インクを使用する場合も記録媒体の上の顔料は拍車によって記録媒体から剥離されるか、もしくは拍車の一端に付着した顔料を拍車の1回転後に記録媒体に再転写させる。さらに、顔料は拍車の周面突起部に堆積し,この堆積顔料の粘着性により、またさらに新たな画像表面のインク層を記録媒体から剥離させることが繰り返されることが生じた。上記の場合、記録画像上に点状の跡が搬送方向に連なって付き、画像品質を極端に劣化させることになった。
【0013】
したがって、本発明の目的は、拍車による記録媒体からのインクの剥離、記録媒体へのインクの再転写を防止できる画像形成装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、シート材を搬送する手段と搬送過程でシート材にインク滴を吐出してシート上に画像を形成する画像形成部を有する画像形成装置において、画像形成部に対し、シート材の搬送方向下流側にあってシート材の画像形成面に接触し、シート材の搬送に際しシート材の姿勢の拘束力を付与する拘束手段と、該拘束手段のシート材接触部とインク成分との付着を防止する離型剤を該拘束手段に塗布する離型剤塗布手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上によれば、記録部の下流側に配置され、インク受容面に接触する拍車に代表される記録媒体の拘束手段は常に離型剤を塗布されるのでインクの付着と堆積を防止でき、記録媒体上でのインク層の剥離や該拘束手段からのインクの記録媒体への逆転写も防止でき、画像品質を維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は本発明の実施形態を示す概略斜視図である。図1において、シート材である記録媒体101は矢印K方向から給送され、副走査ローラ102とこれに対抗して押圧されるピンチローラ103、104、105の間で把持され、副走査ローラ102の回転によって下流方向のプラテン106、記録ヘッド123等を備えた画像形成部側へ搬送される。
【0017】
プラテン106は副走査ローラ102によって搬送された記録媒体101をその上面106aで平面的に支持するように配置されている。主走査レール121はその軸方向を記録媒体101の搬送方向とは直角な方向とし、プラテン106の上方にあって上面106aと平行になるように配置される。
【0018】
キャリッジ122は、主走査レール121に挿通され、不図示の直線移動駆動機構と連結して矢印L、R方向、すなわち主走査方向に移動可能である。キャリッジ122は、その内部にインクジェット式記録ヘッド123を有し、そのインク吐出面をプラテン106の上面106aに対向するように構成され、キャリッジ122が主走査方向に移動する間、インク吐出面と記録媒体101との間隔は、記録媒体101がプラテン106に姿勢を矯正される限り、精度よく維持される。
【0019】
また、キャリッジ122は本体制御部から不図示のケーブルを介して電気信号を受け、記録ヘッドへ伝達し、インクを吐出させる。キャリッジ122の主走査移動中に吐出信号を受けると、プラテン106上の記録媒体101に記録ヘッドの吐出ノズル列に相当する幅の帯状の画像が形成される。
【0020】
排紙ローラ124はプラテン106に対して記録媒体101の搬送方向下流側にあって、その周面の最高部の高さとプラテン106の上面106aとの高さはほぼ同じに設定される。好ましくは拍車111〜115である拘束手段はその円周部に先端が鋭利に突出した複数の突起部を配列した回転体として構成され、それぞれ弾性軸116〜120の周りを回転自在に支持され、各弾性軸の撓みの反力によって排紙ローラ124の周面最上部に軽微に押圧されるように構成されている。
【0021】
図2は拍車の軸方向からみた正面図である。図2において、顔料インクに対しては軸方向から見た各拍車のひとつの刃先角は刃先への顔料インクの付着程度に影響し、実験では比較的鋭角がよく、逆に鋭利過ぎると強度的な問題が発生するので、図示するように30°から35°前後で良い結果が得られた。
【0022】
図3は拍車内のひとつの刃先について板厚方向の断面形状を示す断面図である。図3に示すように、本実施例では板厚をハーフエッチングした110部を形成し、より鋭利にしている。これは鋭利な方がインクの付着性が最小に抑えられる実験結果による。
【0023】
プラテン106を通過した記録媒体101は排紙ローラ124と拍車111〜115とで把持され、記録媒体101がプラテン106の上面106aから浮かないよう拘束するとともに、副走査ローラ102とピンチローラ102、103、104で付与される搬送力よりも弱い搬送力で記録媒体101を搬送する。
【0024】
図4は離型剤塗布手段およびクリーニング部材を拍車に隣接して配置した状態を示す断面図である。図4において、好ましくはオイル塗布コロ131〜135である離型剤塗布手段はその周面は多孔質弾性体で構成され、粘着性物質を剥がしやすくする離型剤の例としてシリコンオイルを含侵している。オイル塗布コロ131〜135の材質は例えば、小津産業株式会社のルビセルなどが適している。拍車111〜115と排紙ローラ124とで記録媒体を把持しているときに、オイル塗布コロ131〜135の周面は拍車111〜115の周面の突起部に辛うじて接触する位置関係に配置され、各コロ軸136〜140によって回転自在に保持されている。
【0025】
記録媒体101の搬送に伴って拍車111〜115が回転すると、これに接触するオイル塗布コロ131〜135も従動回転して自ら含侵保持するオイルを拍車111〜115へ転移させる。
【0026】
前記シリコンオイルの粘度は、あまり低いと周りの構成部品への染み出しがあり、また、粘度が高いと拍車111〜115へは転移しづらくなるので、300csから10000csが適当という結果が得られている。ある程度粘度が高まると常温ではオイル塗布コロを構成する多孔質弾性体には含侵しにくくなるので含侵作業時にはオイルを加熱し、見かけ上粘度を下げて含侵する作業がなされる。
【0027】
本実施例では、さらに、記録媒体101が印字方向に移動するときの拍車111〜115の回転方向に対して、記録媒体101との接触部から回転方向下流側でクリーニング部材141〜145が拍車111〜115と接触するように配置している。
【0028】
クリーニング部材141〜145は回転中心軸146〜150を中心に回転自在に支持され、拍車111〜115に接触して従動回転可能である。クリーニング部材141〜145は不織布や多孔質弾性体から構成される。
【0029】
クリーニング部材141〜145は、耐久性を考慮すると、オイルを塗布した拍車の刃先に対してもインクが微小に付着する可能性は否定できないので、上記構成にすると、拍車111〜115に接触するときに各拍車の刃先をクリーニングでき、画質を維持する観点で耐久性を向上することができる。上記構成であると、拍車111〜115に対し、簡単な構成で離型剤としてのオイルを塗布やクリーニングが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態を示す概略斜視図である。
【図2】拍車の軸方向からみた正面図である。
【図3】拍車内のひとつの刃先について板厚方向の断面形状を示す断面図である。
【図4】離型剤塗布手段およびクリーニング部材を拍車に隣接して配置した状態を示す断面図である。
【図5】従来の画像記録装置の画像形成部の概略断面図である。
【符号の説明】
【0031】
123 記録ヘッド
111〜115 拍車
131〜135 オイル塗布コロ
141〜145 クリーニング部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材を搬送する手段と搬送過程でシート材にインク滴を吐出してシート上に画像を形成する画像形成部を有する画像形成装置において、
画像形成部に対し、シート材の搬送方向下流側にあってシート材の画像形成面に接触し、シート材の搬送に際しシート材の姿勢の拘束力を付与する拘束手段と、
該拘束手段のシート材接触部とインク成分との付着を防止する離型剤を該拘束手段に塗布する離型剤塗布手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記拘束手段はシート材の搬送に伴って回転する回転機能を有する回転体であり、前記離型剤塗布手段は概拘束手段の回転する周面の軌跡上の一部、もしくは全部に対して接触する位置にあって該接触位置にて離型剤の塗布を行うことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記離型剤塗布手段は前記回転する拘束手段の接触によって従動回転する機能を有することを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記離型剤塗布手段は液体状の離型剤を毛管現象によって保持しつつ、前記回転する拘束手段のシート材接触部を前記塗布手段に接触させることによって離型剤を前記拘束手段に転移させ、離型剤を塗布することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記離型剤塗布手段は多孔性弾性材でかつ液体離型剤を含侵可能な材料で構成されることを特徴とする請求項4記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記拘束手段は周面に複数の先鋭なる突起を有する拍車状の回転体であることを特徴とする請求範囲1乃至5のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記拘束手段のシート材接触に対して前記離型剤塗布手段とは別に独立的に接触し、該拘束手段のシート材接触に付着した付着物を拭き取ることが可能なクリーニング部材をさらに有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1つに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−159664(P2006−159664A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−355021(P2004−355021)
【出願日】平成16年12月8日(2004.12.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】