説明

画像形成装置

【課題】電子写真方式の画像形成装置において、長期に亘って良好な画像形成を行うことができるようにする。
【解決手段】残留トナー帯電器18に印加するACバイアスを正規帯電極性側にオフセットすることにより、残留トナー帯電器18に対してトナーの正規帯電極性と逆極性のバイアスを間欠的に与え、感光体ドラム11上の転写残留トナーを残留トナー帯電器18に一時捕獲し、均一化した後、正規帯電極性側に帯電調整して徐々に吐き出すことにより、トナー保持器17が絶縁性であることに起因する、特にトナー保持器17を通過する画像の幅が狭いときの画像ゴーストの発生を抑える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、特に転写後の像担持体上の帯電電位を除去するための除電手段を持たない電子写真方式の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、転写プロセスの後に感光体上にトナーが残ると、当該残留トナーが感光体の感光特性を悪化させ、結果として、画像形成の品質劣化の要因となる。したがって、感光体上に残る転写残留トナーを、通常、クリーニングブレードなどのクリーニング機構で除去するようにしている。
【0003】
これに対して、画像形成装置の簡略化をねらって、クリーニングブレードなどのクリーニング機構を設けずに、現像部の現像バイアス電位の設定条件を最適化することにより、現像部と転写残留トナーの回収(クリーニング)とを同時に行う、いわゆるクリーナレス方式が知られている。
【0004】
このクリーナレス方式では、転写残留トナーを正規極性に帯電させる残留トナー帯電手段が用いられる。この残留トナー帯電手段としては、図8に示すように、導電性の固定ブラシ301を感光体ドラム11に接触させることにより、感光体ドラム11上の転写残留トナーを正規極性に帯電させる構成の残留トナー帯電器300が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかし、固定ブラシ301を用いた残留トナー帯電器300では、接触帯電器13による感光体ドラム11の帯電時に発生する放電生成物の除去が困難であるために、やはり画質劣化を引き起こすことがある。特に、直流電圧に交流電圧を重畳したDC+AC接触帯電方式では、感光体ドラム11に対して直接放電を行っているために、多量の放電生成物が感光体ドラム11の表面に付着する。そのため、高温高湿環境での画像の流れ(deletion)が問題になることが多い。
【0006】
また、転写残留トナーを正規極性に帯電させるために固定ブラシ301に印加する電圧によって感光体ドラム11も同時に帯電する。このときの固定ブラシ301による感光体ドラム11の帯電では、非常に帯電ムラが大きい。感光体ドラム11は接触帯電器13によって最終的に所望の電位に帯電される。その際に、固定ブラシ301による帯電ムラがあると、接触帯電器13による帯電にも帯電ムラが生じてしまうために、ハーフトーンなど画像に濃度ムラなどが生じ、良好な画像形成が行えない。
【0007】
このような固定ブラシ301による感光体ドラム11の帯電時の帯電ムラを無くすために、従来は、固定ブラシを2つ並べて配置する構成が採られていた(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
一方、感光体ドラム11上に残る転写残留トナーを、クリーニングブレードでかき落として除去するブレード方式では、クリーニングブレードの下流側において感光体ドラムに不織布を接触させ、この不織布で感光体ドラムの表面に付着した多量の放電生成物を除去する手法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0009】
【特許文献1】特開2001−215799号公報
【特許文献2】特開2002−099176号公報
【特許文献3】特開2002−258666号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献2記載の従来技術のように、固定ブラシを2つ並べて配置する構成を採ると、2つ目の固定ブラシを設置するための新たなスペースを確保する必要があるために、画像形成装置の小型化の妨げになるとともに、コストアップの一因となる。また、帯電ムラは、感光体ドラムに対してブラシの毛先部分が高圧力で点接触しているために電荷の注入現象が発生し、その部分の帯電電位が高くなってしまうことに起因して発生する。したがって、固定ブラシを2つ並べても、帯電ムラの発生原因を解消できる訳ではないために、固定ブラシによる帯電ムラを十分に無くすことはできない。
【0011】
一方、特許文献3記載の従来技術のように、不織布を使用したとしても、除去できる放電生成物には限界があるために、高温高湿環境での画像の流れを十分に解消できない。また、放電生成物の除去性能を上げるために、不織布の感光体ドラムに対する当接圧を非常に高く設定すると、フィルミング(filming)やスクラッチ(傷)が発生するために、やはり良好な画像形成が行えない(良好な画像が得られない)。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、長期に亘って良好な画像形成を行うことが可能な画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明に係る画像形成装置は、回転する像担持体と、前記像担持体を帯電する帯電手段と、前記帯電手段によって帯電された前記像担持体に静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を被転写体に転写する転写手段と、前記帯電手段の上流側、かつ、前記転写手段の下流側に設けられ、前記トナー像の転写後に前記像担持体上に残留する転写残留トナーを前記像担持体との接触面に保持する絶縁性のトナー保持手段と、前記帯電手段の上流側、かつ、前記トナー保持手段の下流側に設けられ、前記像担持体上のトナーを正規極性に帯電させる導電性を有する残留トナー帯電手段とを備え、前記残留トナー帯電手段に対してトナーの正規帯電極性と逆極性のバイアスを間欠的に与えることを特徴としている。
【0014】
上記構成の画像形成装置は、小型化を目的として、転写後の像担持体上の帯電電位を除去するための除電手段を持たない構成となっている。除電手段を持たないと、画像部の電位が転写後にも像担持体上に残る。このとき、トナー保持手段が絶縁性であることで、特に画像部の幅が狭い場合に、トナー保持手段と像担持体との間の微小な隙間に電界強調が生じ、画像部であったところに、トナー保持手段に保持されている転写残留トナーを像担持体に付着させる方向の電界が発生するために、トナー保持手段内の正規帯電極性のトナーが現像され、像担持体1周の後の同じ位置に画像が残る、いわゆる画像ゴーストが発生する。
【0015】
これに対して、残留トナー帯電手段に対してトナーの正規帯電極性と逆極性のバイアスを間欠的に与えることで、残留トナー帯電手段は像担持体上の転写残留トナーを間欠的に一時捕獲する。この一時捕獲されたトナーは、残留トナー帯電手段内で均一化され、正規帯電極性側に帯電調整され、徐々に吐き出される。このように、一時捕獲されたトナーが均一化され、正規帯電極性側に帯電調整されて徐々に吐き出されることで、画像ゴーストの発生が抑えられる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、トナー保持手段によって転写残留トナーを保持できるとともに、残留トナー帯電手段の作用によって画像ゴーストの発生を抑えることができるために、長期に亘って良好な画像形成を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明が適用される画像形成装置、例えばタンデム方式の画像形成装置の基本となる構成を模式的に示す概略構成図である。
【0019】
本適用例に係る画像形成装置は、例えばデジタル複写機における画像出力装置として用いられ、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ等を用いた画像読取装置によって原稿画像を読み取ることによって得られる画像データに基づいて、電子写真方式によって記録用紙にカラー画像を形成する。
【0020】
ただし、本発明は、デジタル複写機への適用に限られるものではなく、例えばパーソナルコンピュータなどの画像データ入力装置から入力されるカラー画像情報に基づいて画像処理を行い、電子写真方式によって記録用紙にカラー画像を形成する画像形成装置に適用することも可能である。
【0021】
図1に示すように、画像形成装置100は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色材ごとにトナー像を形成する画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kを備えている。なお、以降、各色材を区別して説明する必要がある場合、符号の後にY,M,C,Kの何れかを付して説明し、各色材を区別する必要がない場合は、Y,M,C,Kを付すのを省略するものとする。
【0022】
画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kは、バックアップロール21と例えば2個の張架ロール22A,22Bによって張架された無端状の中間転写ベルト23の進行方向に対して、Y,M,C,Kの色材の順番で直列に配列されている。中間転写ベルト23は、画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kの各像担持体としての感光体ドラム11Y,11M,11C,11Kと、これら感光体ドラム11Y,11M,11C,11Kの各々に対して圧接して配置された一次転写ロール12Y,12M,12C,12Kとの間を挿通している。
【0023】
(画像形成ユニット)
次に、画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kの構成につき、イエロートナー像を形成する画像形成ユニット10Yを代表して説明する。
【0024】
感光体ドラム11Yの周りには、一次転写ロール12Yに加えて、当該一次転写ロール12Yの反対側に接触帯電器13Yが、当該接触帯電器13Yの下流側、かつ、一次転写ロール12Yの上流側に露光装置14Yおよび現像装置15Yが、一次転写ロール12Yの下流側に除電器16Yがそれぞれ配置されている。
【0025】
接触帯電器13Yは、例えば半導電性ロールからなり、DC+AC接触帯電方式によって感光体ドラム11Yの表面を一様に帯電する。露光装置14Yは、接触帯電器13Yによって帯電された感光体ドラム11Yの表面に、イエロー画像に対応する静電潜像を形成する。
【0026】
現像装置15Yは、直流電圧に交流電圧を重畳した現像バイアスが印加される回転ロール151(図2を参照)を有し、露光装置14Yによって感光体ドラム11Yの表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する。具体的には、イエロー画像に対応する静電潜像は、回転ロール151に担持された例えば負極性に帯電されたトナーによって現像されることによりイエロートナー像となる。
【0027】
一次転写ロール12Yは、感光体ドラム11Yに対する圧接力と、当該転写ロール12Yに印加される正電位の転写バイアスによる静電吸引力とにより、感光体ドラム11Y上に形成されたイエロートナー像を中間転写ベルト23に転写(一次転写)する。
【0028】
なお、一次転写ロール12Yによる一次転写では、イエロートナー像は全て中間転写ベルト23に転写されず、その一部が転写残留イエロートナーとして感光体ドラム11Y上に残留する。そして、この転写残留イエロートナーについては、後述するトナー回収機構によって回収される。
【0029】
ここでは、画像形成ユニット10Yを代表してその構成について説明したが、画像形成ユニット10M,10C,10Kについても、画像形成ユニット10Yと同様の構成となっている。そして、画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kの相対的な位置の違いを考慮したタイミングで、画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kの各々において画像形成処理が行われ、中間転写ベルト23上に順次、Y,M,C,Kの各色材のトナー像が重ねられることによってフルカラートナー像が形成される。
【0030】
このフルカラートナー像を記録用紙Pに二次転写するために、二次転写ロール24がバックアップロール21に対して圧接した状態で設けられている。二次転写ロール24は、当該転写ロール24に印加される一次転写ロール12Yよりも高い正電位の転写バイアスによる静電吸引力により、所定のタイミングで二次転写位置Aへと搬送されてきた記録用紙Pに中間転写ベルト23上のフルカラートナー像を一括して転写する。
【0031】
フルカラートナー像が転写された記録用紙Pは、中間転写ベルト23から分離されて定着装置25へ搬送される。定着装置25は、熱と圧力によってフルカラートナー像を記録用紙Pに定着させる。記録用紙Pに転写されなかった中間転写ベルト23上の転写残留トナーは、中間転写ベルト用クリーナ26で回収される。
【0032】
次に、上記構成の画像形成装置における主要部材の仕様および主要な電気仕様を記す。
【0033】
感光体ドラム11 :直径約30.0mmの有機感光体
非画像部電位:−500V
画像部電位 :−100V
プロセス速度 :104mm/秒
現像方式 :乾式二成分現像方式
接触帯電器13 :DC+AC接触帯電方式
AC成分の周波数:614Hz
DC成分の電圧値:−520V
露光装置14 :レーザ波長=780nm
現像ロール151 :直径=16.0mm
回転速度=208mm/秒
現像バイアス:DC成分電圧値=−400V
AC成分電圧値=1.5KV(peak to peak)
周波数 =6KHz
一次転写ロール12:転写バイアス=+2000V
二次転写ロール24:転写バイアス=+1600V
【0034】
続いて、本発明の特徴とする、感光体ドラム11Y上の転写残留イエロートナーを回収する回収機構の具体的な実施の形態について説明する。
【0035】
[実施形態]
図2は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の要部構成を示す概略構成図であり、図中、図1と同等部分には同一符号を付して示している。ここでは、画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kの構成につき、イエロートナー像を形成する画像形成ユニット10Yを代表して説明するものとする。
【0036】
図2において、感光体ドラム11Yの周りには、一次転写ロール12Y、接触帯電器13Y、露光装置14Yおよび現像装置15Yに加えて、接触帯電器13Yの上流側、かつ、一次転写ロール12Yの下流側にトナー保持器17Yが、さらに接触帯電器13Yの上流側、かつ、トナー保持器17Yの下流側に残留トナー帯電器18Yがそれぞれ配置されている。
【0037】
トナー保持器17Yは、感光体ドラム11Yに対して接触した状態で設けられ、一次転写ロール12Yによるイエロートナー像の中間転写ベルト23への転写後に、感光体ドラム11Y上に残留する転写残留イエロートナーを感光体ドラム11Yとの接触面に保持する。
【0038】
残留トナー帯電器18Yは、トナー保持器17Yの部位以降に感光体ドラム11Y上に存在する正規極性と逆極性のトナーを正規極性(正規帯電極性)に帯電する。このとき、正規極性のトナーに対してはさらに正規極性側への帯電が行われることになる。
【0039】
(トナー保持器)
ここで、トナー保持器17(17Y)の具体的な構成の一例について図3を用いて説明する。
【0040】
図3に示すように、トナー保持器17は、四角柱状の絶縁性を有する基体171上に、絶縁性を有するウレタンスポンジ172が貼り付けられ、その上に絶縁性の微細繊維からなる不織布173が貼り付けられた構成となっている。このトナー保持器17は、図2に示すように、不織布173が感光体ドラム12(12Y)に圧接した状態で設けられる固定式のトナー保持器となっている。ここに、不織布とは、文字通り「織らない布」であり、繊維同士を様々な方法で結合させたシートである。
【0041】
不織布としては、乾式不織布、スポンドバンド、湿式不織布などが知られている。本実施形態では、不織布173として乾式不織布を用いている。具体的には、繊維長が数cm程度の繊維を、カードやエアランダム機で薄いシートにし、必要に応じて何枚か重ねることによって乾式不織布を形成している。接合は、高圧細水流で繊維を絡めて行う(スパーンレス)。
【0042】
図4に示すように、トナー保持器17は、その長手方向の幅が、感光体ドラム11の回転軸Kの軸方向の画像形成幅Rよりも幅広になるように形成されている。
【0043】
トナー保持器17の基体171の両端からは、感光体ドラム11の回転軸Kの軸方向と同方向に、略四角柱形状のシャフト174が突出している。シャフト174は、基体171に対して固定された状態にある。シャフト174の両端部は、支持部175A,175Bの四角形状の孔に通されることによって当該支持部175A,175Bによって支持されている。
【0044】
シャフト174は、一方の端部に設けられたバネ176によって他方の端部側に押圧されている。シャフト174の他方の端部には、ソレノイド177の可動軸178が結合されている。この可動軸178は、感光体ドラム11の回転軸Kの軸方向(図中、矢印N方向)において進退(可動)する。
【0045】
このように、ソレノイド177の動作/非動作に応じて可動軸178が進退することにより、トナー保持器17の不織布173は、回転体ドラム11の表面上を回転軸Kの軸方向(図中、矢印M方向)において摺動する。このような摺動動作を行っても、不織布173は、感光体ドラム11に対してその画像形成幅Rの全域に亘って圧接された状態を維持することができる。
【0046】
なお、トナー保持器17の矢印M方向の駆動源としては、ソレノイド177に限られるものではなく、例えば、カムなどを用いて、矢印M方向における任意の位置に移動して固定可能な構成のものであっても良い。
【0047】
次に、トナー保持器17の作用について説明する。
【0048】
トナー保持器17は、不織布173が感光体ドラム11の表面に当接していることで、一次転写ロール12による一次転写によって中間転写ベルト23に転写されずに感光体ドラム11上に残った転写残留トナーを不織布173に一時的に保持することによって感光体ドラム11の表面から除去する。
【0049】
転写残留トナーのみならず、トナー保持器17は、接触帯電器13で感光体ドラム11を帯電する際に発生する放電生成物についても保持することによって感光体ドラム11上から除去する。この放電生成物については後述する。不織布173に転写残留トナーが保持されることで、この保持された転写残留トナーは、不織布173による放電生成物の除去能力を高める作用をなす。
【0050】
ところで、本実施形態に係る画像形成装置100は、以上の説明から明らかなように、装置の小型化を目的として、一時転写ローラ12による中間転写ベルト23への一時転写後に、感光体ドラム11上の帯電電位を除去(解消)するための除電手段を持たない構成となっている。
【0051】
このように、除電手段を持たないと、図5(A)に示すように、画像部の電位が一時転写後にも感光体ドラム11上に残る。このとき、トナー保持器17が絶縁性の部材から構成されていることで、特にトナー保持器17を通過する画像の幅が狭いと、図5(B)に示すように、トナー保持器17の不織布173と感光体ドラム11との間の微小な隙間に電界強調が生じる。
【0052】
このように、トナー保持器17の不織布173と感光体ドラム11との間の微小な隙間で電界強調が生じると、感光体ドラム11上の画像部であったところに、トナー保持器17に保持されている転写残留トナーに対して、感光体ドラム11に付着させる方向の電界が発生するために、トナー保持器17内の正規帯電極性(本実施形態では、負極性)のトナーが現像される。
【0053】
その結果、図6に示すように、感光体ドラム11の1周後(2周目)の同じ位置に画像が残る、いわゆる画像ゴーストが発生する。図6には、一例として、10×90mmのCin(input coverage)100%のパッチを10mmの間隔で形成したA3サイズの画像パターンを形成した場合を想定している。因みに、90mmは、感光体ドラム11の周の長さである。
【0054】
そこで、本実施形態に係る画像形成装置100においては、以下に説明する残留トナー帯電器18Yの作用により、画像ゴーストの発生を抑制することを特徴としている。
【0055】
(残留トナー帯電器)
図2において、トナー保持器17Yの下流側に位置する残留トナー帯電器18Yは、感光体ドラム11Yの表面に均一に当接した状態で設けられ、導電性の回転シャフト181を軸心として回転する適度な導電性を有する不織布ロール182を備えた回転式の残留トナー帯電器となっている。
【0056】
不織布ロール182には、例えば乾式不織布を用いている。また、不織布ロール182に用いる繊維は、例えば、絶縁性ナイロン−ポリエステル混綿繊維であり、ポリピロール樹脂をコーティングすることによって導電性が付与されている。
【0057】
不織布ロール182には、例えば図7に示すように、トナーの正規帯電極性側に例えば−300V程度オフセットされたAC(交流)バイアスが導電性の回転シャフト181を介して印加される。このACバイアスは、例えば800V(peak to peak)程度の振幅を持つことで、残留トナー帯電器18Yに対してトナーの正規帯電極性と逆極性のバイアスを間欠的に与えることになる。なお、ACバイアスのオフセット電圧および振幅の数値は一例に過ぎず、これに限られるものではない。
【0058】
次に、残留トナー帯電器18Yの作用について説明する。
【0059】
残留トナー帯電器18Yは、トナーの正規帯電極性(本実施形態では、負極性)と逆極性のバイアスが間欠的に与えることで、感光体ドラム11上の転写残留トナーを間欠的に一時捕獲する。この一時捕獲されたトナーは、残留トナー帯電器18Y内で均一化され、正規帯電極性側に帯電調整され、残留トナー帯電器18Yから徐々に吐き出される。このように、一時捕獲されたトナーが均一化され、正規帯電極性側に帯電調整されて徐々に吐き出されることで、画像ゴーストの発生が抑えられる。また、この帯電調整によって転写履歴が解消される。
【0060】
残留トナー帯電器18Yによって正規帯電極性側に帯電調整された転写残留トナーは、感光体ドラム11の回転に伴って接触帯電器13Yに送られる。接触帯電器13Yには、先述したように、−520Vの帯電バイアスが印加されている。これにより、正規極性に帯電された感光体ドラム11上の転写残留トナーには、接触帯電器13Yとの間に斥力が作用する。したがって、正規極性の転写残留トナーは、接触帯電器13Yに付着することなく、接触帯電器13Yを通過する。
【0061】
接触帯電器13Yを通過した正規極性の転写残留トナーは、感光体ドラム11の回転に伴って現像装置15の現像ロール151と対向する部位(現像部)に送られる。ここで、現像ロール151の現像バイアスの設定条件を最適化することにより、現像装置15によって現像が行われると同時に、正規極性の転写残留トナーの回収が行われる(クリーニング)。なお、現像ロール151は、転写残留トナーの回収効率を上げるために、感光体ドラム11Yの回転方向と逆方向に回転している。
【0062】
ところで、接触帯電器13Yで帯電する際に、放電生成物(具体的には、放電時に発生するオゾンや窒素酸化物などの発生物質やそれらの反応生成物)が発生する。特に、本実施形態のように、DC+AC接触帯電方式を採る接触帯電器13Yで帯電する場合には放電生成物が多く発生する。この放電生成物は、感光体ドラム11の表面に付着し、特に高温高湿下において、感光体ドラム11の表面の電気抵抗を低下させる。
【0063】
感光体ドラム11の表面の電気抵抗が低下すると、静電潜像が乱れ、画像流れ(deletion)の発生原因となる。特に、本実施形態に係る画像形成装置のように、感光体ドラム11上の転写残留トナーを除去するための格別なクリーニング機構を持たずに、現像ロール151の現像バイアスの設定を最適化することで、現像装置15で現像と転写残留トナーの回収(クリーニング)とを同時に行う、いわゆるクリーナレスシステムでは、このような感光体ドラム11上の放電生成物をクリーニング機構で回収できないために、当該放電生成物による影響が大きい。
【0064】
ところが、本実施形態に係る画像形成装置では、一次転写ロール12の下流側に配置されたトナー保持器17の不織布173に付着して一時的に保持された転写残留トナーが、感光体ドラム11の回転に伴って放電生成物を良好に除去するために、クリーニングブレードなどの格別なクリーニング機構を持たなくても、放電生成物が付着することによる不具合、即ち画像流れを防止することができる。
【0065】
また、転写残留トナーが接触帯電器13に付着しないようにするために、当該転写残留トナーを正規極性に帯電調整する残留トナー帯電器18は、その印加電圧によって感光体ドラム11も帯電する。残留トナー帯電器18の不織布ロール182は、感光体ドラム11の表面に均一に当接しているために帯電ムラが少なく、よって接触帯電器13による帯電調整後の帯電ムラも少ない。
【0066】
したがって、ハーフトーンなどの画像に濃度ムラなどが生じないために、良好な画像形成を行うことができる。また、接触帯電器13による帯電ムラを解消するために、当該接触帯電器13の帯電性能を必要以上に上げる必要がない。つまり、接触帯電器13に印加する電圧を必要以上に高くする必要がないために、放電生成物の発生も抑えられる。
【0067】
上述したように、電子写真方式の画像形成装置100において、接触帯電器13の上流側、かつ、一次転写ロール12の下流側にトナー保持器17を配置し、当該トナー保持器17によって転写残留トナーを一次的に保持することにより、この保持された転写残留トナーが感光体ドラム11の回転に伴って放電生成物を良好に除去するために、放電生成物が付着することによる画像流れを防止することができる。
【0068】
また、接触帯電器13の上流側、かつ、トナー保持器17の下流側に残留トナー帯電器18を配置し、当該残留トナー帯電器18によって転写残留トナーを正規極性に帯電調整することにより、この正規極性に帯電された転写残留トナーは、接触帯電器13に付着することなく、現像装置15の現像ロール151と対向する部位に送られ、現像装置15で確実に回収される。
【0069】
さらに、残留トナー帯電器18は、その印加電圧によって感光体ドラム11をムラなく帯電調整するために、接触帯電器13による帯電後の帯電ムラも少なく、よってハーフトーンなどの画像に濃度ムラなどが生じないために、良好な画像形成を行うことができるとともに、接触帯電器13に印加する電圧を必要以上に高くすることなく、放電生成物の発生を抑えることができる。
【0070】
特に、本実施形態に係る画像形成装置100においては、残留トナー帯電器18に対してトナーの正規帯電極性(本実施形態では、負極性)と逆極性のバイアスを間欠的に与えるようにすることで、残留トナー帯電器18は、感光体ドラム11上の転写残留トナーを間欠的に一時捕獲し、均一化した後、正規帯電極性側に帯電調整して徐々に吐き出すように作用する。この残留トナー帯電器18の作用により、トナー保持器17が絶縁性であることに起因する、特にトナー保持器17を通過する画像の幅が狭いときの画像ゴーストの発生を抑えることができるために、長期に亘って良好な画像形成を行うことができる。
【0071】
しかも、トナー保持器17が絶縁性であることにより、導電性の部材からなる残留トナー帯電器18との間の距離を縮めても、トナー保持器17と残留トナー帯電器18との間で電気リークが生じることがないために、トナー保持器17と残留トナー帯電器18とを近接配置することができ、それに伴って画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kの小型化、ひいては画像形成装置全体の小型化を図ることができる。
【0072】
また、残留トナー帯電器18に対して正規帯電極性側にオフセットとしたACバイアスを与えることで、残留トナー帯電器18によって転写残留トナーを正規帯電極性側に過剰に帯電することによる不具合を解消できるという利点もある。
【0073】
すなわち、正規帯電極性と逆極性の転写残留トナーを正規帯電極性に確実に帯電させるために、例えば−700V程度の高い電圧のDCバイアスで転写残留トナーの帯電調整を行うと、当該トナーを正規帯電極性側に過剰に帯電する場合がある。すると、転写残留トナーの感光体ドラム11に対する付着力が非常に強くなるために、当該トナーを現像器15で回収できなくなったりする場合がある。
【0074】
これに対して、本実施形態に係る画像形成装置100のように、残留トナー帯電器18に対してトナーの正規帯電極性側に−300V程度オフセットされた800V(peak to peak)程度の振幅を持つACバイアス(図7を参照)を与えることで、ピークで−700Vのバイアス電圧で転写残留トナーが帯電されるものの、それは瞬間的なものであり、平均的なバイアス電圧は−300V程度となり、転写残留トナーに対する過剰帯電をなくすことができるために、当該トナーを現像器15で回収できることになる。
【0075】
因みに、本実施形態に係る技術、即ち残留トナー帯電器18の作用により、画像ゴーストの発生を抑制する技術を用いない場合には、例えばA4サイズのプリント枚数が1000枚程度でも画像ゴーストが発生するのに対して、当該技術を用いた場合には、少なくとも10000枚程度まで画像ゴーストが発生しないことが確認されている。
【0076】
なお、上記実施形態では、AC波形(正弦波波形)のバイアスを正規帯電極性側にオフセットすることにより、残留トナー帯電器18に対してトナーの正規帯電極性と逆極性のバイアスを間欠的に与えるとしたが、これは一例に過ぎず、例えばパルス波形のバイアスを正規帯電極性側にオフセットすることによっても、残留トナー帯電器18に対してトナーの正規帯電極性と逆極性のバイアスを間欠的に与えることができる。
【0077】
また、上記実施形態では、トナー保持器17を固定型のトナー保持器、残留トナー帯電器18を回転型の残留トナー帯電器とした場合を例に挙げて説明したが、これは一例に過ぎず、トナー保持器17を残留トナー帯電器18と同じ構成の回転型のトナー保持器としたり、残留トナー帯電器18をトナー保持器17と同じ構成の固定型の残留トナー帯電器としたりするなど、固定型と回転型、固定型と固定型、回転型と回転型などその組み合わせは任意に設定可能である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明が適用されるタンデム方式の画像形成装置の基本となる構成を模式的に示す概略構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の要部の構成を示す概略構成図である。
【図3】トナー保持器の具体的な構成の一例を示す側面図である。
【図4】トナー保持器を感光体ドラムに圧接した状態を上方から見た図である。
【図5】画像ゴーストの発生原因の説明図である。
【図6】画像の幅が狭い画像パターンの一例を示す図である。
【図7】残留トナー帯電器に与えるACバイアスの波形図である。
【図8】従来技術の課題の説明図である。
【符号の説明】
【0079】
10(10Y,10M,10C,10K)…画像形成ユニット、11(11Y,11M,11C,11K)…感光体ドラム、12(12Y,12M,12C,12K)…一次転写ロール、13(13Y,13M,13C,13K)…接触帯電器、14(14Y,14M,14C,14K)…露光装置、15(15Y,15M,15C,15K)…現像装置、17(17Y,17M,17C,17K)…トナー保持器、18(18Y,18M,18C,18K)…残留トナー帯電器、21…バックアップロール、23…中間転写ベルト、25…定着装置、100…画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する像担持体と、
前記像担持体を帯電する帯電手段と、
前記帯電手段によって帯電された前記像担持体に静電潜像を形成する露光手段と、
前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を被転写体に転写する転写手段と、
前記帯電手段の上流側、かつ、前記転写手段の下流側に設けられ、前記トナー像の転写後に前記像担持体上に残留する転写残留トナーを前記像担持体との接触面に保持する絶縁性のトナー保持手段と、
前記帯電手段の上流側、かつ、前記トナー保持手段の下流側に設けられ、前記像担持体上のトナーを正規極性に帯電させる導電性を有する残留トナー帯電手段とを備え、
前記残留トナー帯電手段に対してトナーの正規帯電極性と逆極性のバイアスを間欠的に与える
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記残留トナー帯電手段に対して前記正規帯電極性側にオフセットされ、間欠的に前記正規帯電極性と逆極性になる交流バイアスを印加する
ことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記トナー保持手段は、絶縁性の不織布を含む
ことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−192957(P2007−192957A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−9447(P2006−9447)
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】