説明

画像形成装置

【課題】搬送路に沿う用紙の搬送を阻害することなく簡単な構成で、用紙カセット及びその近辺で発生する用紙の後端叩き音を低減させて静音化を図ることができる画像形成装置を提供すること。
【解決手段】装置本体1aに対して着脱可能であって、内部に積層して収容された用紙を1枚ずつ送り出す給紙カセット7を備えたレーザビームプリンタ(画像形成装置)1において、前記給紙カセット7の用紙搬送方向下流側に空間Sを設け、該空間Sに吸音部材37を装填する。又、前記給紙カセット7の空間Sの上面開口部を蓋で覆う。更に、前記蓋にスリットを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置本体に対して着脱可能な給紙カセットを備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタ、ファクシミリ装置等の画像形成装置には、装置本体に対して着脱可能な給紙カセットが備えられているが、この給紙カセットは、内部に積層して収容された用紙を画像形成部に向けて1枚ずつ送り出すものである。
【0003】
ところで、画像形成装置においては、給紙カセットから送り出された用紙が装置本体内の搬送路に沿って搬送される際に発生する搬送音を低減させるための検討が従来から種々なされている。中でも、給紙カセットからレジストレーションに至る搬送路では様々な異音が発生している。
【0004】
更に、近年では画像形成装置の小型化が図られている関係上、給紙カセットからレジストレーションに至る搬送路の曲率が大きくなっている。このため、給紙カセットから搬送される用紙の後端叩き音が目立ってきており、これに対する対策として例えば特許文献1には、マイラー板と弾性体から成る異音防止部材を搬送路の途中に設け、該異音防止部材によって用紙の振動を抑えて異音を低減させるという提案がなされている。
【特許文献1】実開平2−004834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記特許文献1に提案されている構成では、マイラー板を含む異音防止部材が搬送路の途中に設けられているため、この異音防止部材が用紙のジャムを招く可能性が高く、ジャムした用紙をユーザーが取り除く際にマイラー板が剥れたり、変形する等の弊害が発生する可能性がある。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、搬送路に沿う用紙の搬送を阻害することなく簡単な構成で、用紙カセット及びその近辺で発生する用紙の後端叩き音を低減させて静音化を図ることができる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、装置本体に対して着脱可能であって、内部に積層して収容された用紙を1枚ずつ送り出す給紙カセットを備えた画像形成装置において、前記給紙カセットの用紙搬送方向下流側に空間を設け、該空間に吸音部材を装填したことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記給紙カセットの空間の上面開口部を蓋で覆ったことを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記蓋にスリットを形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、給紙カセット及びその近辺で発生する用紙の後端叩き音は、給紙カセットの用紙搬送方向下流側の空間に装填された吸音部材によって吸収されて低減される。そして、吸音部材は用紙の搬送路ではなく給紙カセットに設けられるため、搬送路に沿う用紙の搬送が阻害されることがなく、当該画像形成装置の静音化が簡単な構成で実現される。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、給紙カセットの空間の上面開口部を蓋で覆ったため、空間に装填された吸音部材が蓋で隠されて外部に露出することがなく、給紙カセットの見栄えが吸音部材によって害されることがない。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、吸音部材が装填された空間の上面開口部を蓋で覆った場合であっても、用紙の後端叩き音の振動は、蓋に形成されたスリットを通過して吸音部材に直接当たるため、用紙の後端叩き音が吸音部材によって効果的に吸収されて低減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は本発明に係る画像形成装置の一形態としてのレーザビームプリンタの斜視図、図2は同レーザビームプリンタの側断面図である。
【0015】
先ず、レーザビームプリンタ1の基本構成を図1及び図2に基づいて説明すると、該レーザビームプリンタ1は、箱状の装置本体1aを備えており、図1に示すように、該装置本体1aの上面の中央部には傾斜した凹状の排紙トレイ32が設けられており、その横には操作表示部34が配置されている。又、装置本体1aの前面(図1の手前側が前方)上部には開閉可能な手差しトレイ8(図2には開いている状態が示されている)が設けられ、装置本体1aの下部には手前側に引き出すことができる矩形箱状の給紙カセット7が設けられている。
【0016】
次に、レーザビームプリンタ1の内部構造を図2に基づいて説明する。
【0017】
レーザビームプリンタ1は、装置本体1a内に設けられた搬送路Lに沿って用紙を搬送しながら、不図示の端末等から送信される画像データに基づいて用紙に画像を形成するもであって、前記搬送路Lは、装置本体1a内を前方から後方(図2において右方から左方)に略水平に延びる水平部L1と、該水平部L1の端部から略垂直に立ち上がる垂直部L2とで側面視略L字状に構成されている。
【0018】
又、レーザビームプリンタ1は、装置本体1aの下部に設けられた給紙部2と、該給紙部2の上方の装置本体1a内の略中央部に設けられた画像形成部3と、該画像形成部3の後方に配された定着部4と、該定着部4の上方の装置本体1aの上面に設けられた凹状の排紙部5と、前記搬送路Lの水平部L1と前記給紙カセット7との間に設けられたスイッチバック部6を備えている。
【0019】
上記給紙部2は、用紙を収納するとともに、その用紙を前記画像形成部3に向けて給送するものであって、前記給紙カセット7と前記手差しトレイ8を含んで構成されている。
【0020】
ここで、給紙カセット7は、上面が開放された矩形箱状を成すものであって、その内部に積層して収容された不図示の用紙を1枚ずつ送り出す機能を果たし、これが図2に示すように装置本体1a内に装着されている状態では、図示のように搬送路Lの水平部L1の下方に位置している。
【0021】
この給紙カセット7は、内底面に対して接離するリフト板9と、該リフト板9の接離動作に連動して昇降する昇降板10と、前記リフト板9の前端(用紙の送出方向下流端)近傍に取り付けられて該リフト板9を図2の矢印方向に回動させるリフト駆動軸11と、前記昇降板10の後端(用紙の送出方向上流端)近傍を回動可能に軸支する軸12を備えている。
【0022】
又、給紙部2には、給紙カセット7内の用紙を1枚ずつ取り出すピックアップローラ13と、取り出された用紙を搬送路Lの水平部L1へと送り出すフィードローラ14とリタードローラ15、複数の給紙ローラ16,17,18、送り出された用紙を一時待機させた後に所定のタイミングで画像形成部3へと供給するレジストローラ19の他、手差しトレイ8に載置された用紙を取り出すピックアップローラ20が設けられている。
【0023】
前記画像形成部3は、給紙部2から供給された用紙に画像を形成するものであって、搬送路Lの水平部L1の前後方向略中央部に回転可能に配された像担持体としての感光ドラム21と、その周囲に配置された一次帯電器22、現像装置23、転写ローラ24及びクリーニング装置25と、これらの上方に配置されたレーザスキャナユニット(LSU)26、トナーホッパー27等を備えている。
【0024】
又、前記定着部4は、画像形成部3において用紙に転写されたトナー像を当該用紙に定着させるためのものであって、互いに圧接されて回転する加熱ローラ28と加圧ローラ29を備えている。
【0025】
更に、前記排紙部5は、定着部4においてトナー像が定着された用紙を装置本体1a外へと排出するためのものであって、搬送路Lの垂直部L2の途中に設けられた複数の搬送ローラ30と垂直部L2の末端に設けられた排紙ローラ31及び装置本体1a外へと排出される用紙を積載するための前記排紙トレイ32を備えている。
【0026】
又、前記スイッチバック部6は、用紙の両面に画像を形成する場合に使用されるものであって、搬送路Lの垂直部L1の下方に配された別の搬送路L’とその適所に設けられた複数の搬送ローラ33を備えている。
【0027】
次に、以上の構成を有するレーザビームプリンタ1の画像形成動作について説明する。
【0028】
例えばパーソナルコンピュータ(パソコン)等の端末から当該レーザビームプリンタ1にプリント開始信号が送信されると、画像形成部3においては、感光ドラム21は不図示の駆動手段によって図2の矢印方向(時計方向)に回転駆動され、その表面が一次帯電器22によって所定の電位に一様に帯電される。そして、端末から送信された画像データに基づくレーザ光がレーザスキャナユニット26から出力されて感光ドラム21上に照射されると、該感光ドラム21上には静電潜像が形成される。そして、この感光ドラム21上の静電潜像は、現像装置23によって現像剤であるトナーを用いて現像されてトナー像として可視像化される。
【0029】
同時に給紙部5においては、例えば給紙カセット7内に収容された用紙は、ピックアップローラ13によって最上位のものから1枚ずつピックアップされ、フィードローラ14とリタードローラ15及び給紙ローラ16,17,18によって搬送路Lの水平部L1へと送り出され、レジストローラ19によって一時待機状態とされた後、感光ドラム21上のトナー像に同期する所定のタイミングで画像形成部3へと供給される。尚、給紙カセット7においては、リフト板9を内底面から離間する方向に回動させることによって、昇降板10をこれに積載された用紙の枚数に応じた所定の高さ位置まで上昇させ、該昇降板10に積載された用紙の最上位のものがピックアップローラ13によってピックアップされるようになっている。又、手差しトレイ8に積載された用紙に画像を形成する場合には、用紙は、ピックアップローラ20によって1枚ずつ取り出され、給紙ローラ16,18によって搬送路Lの水平部L1へと送り出される。
【0030】
画像形成部3においては、感光ドラム21と転写ローラ24との間の転写ニップへと供給された用紙は、転写ローラ24によって感光ドラム21に押し付けられながら搬送されることによって、その表面(転写面)に感光ドラム21上のトナー像が転写される。そして、トナー像が転写された用紙は、定着部4へと搬送され、この定着部4において加熱ローラ28と加圧ローラ29によって挟み込まれて搬送される過程で加熱及び加圧されてトナー像の定着を受ける。尚、用紙へのトナー像の転写後に感光ドラム21の表面に残留するトナー(転写残トナー)と電荷はクリーニング装置25によって除去される。
【0031】
而して、定着部4にて表面にトナー像が定着された用紙は、搬送ローラ30によって搬送路Lの垂直部L2を上方へと搬送され、排紙ローラ31によって装置本体1aの上部に設けられた排紙トレイ32に排出されて積載される。
【0032】
以上が用紙の片面に画像を形成する場合の一連の動作であるが、用紙の両面に画像を形成する場合には、定着部4にて片面にトナー像が定着された用紙を搬送ローラ30によって搬送路Lの垂直部L2へと送り込んだ後、搬送ローラ30を逆転させることによって用紙をスイッチバックさせて別の搬送路L’へと送り込む。そして、搬送路L’に設けられた複数の搬送ローラ33によって用紙を搬送路L’に沿って前方(図2の右方)へと搬送し、該用紙を給紙ローラ16,17,18によって搬送路Lの水平部L1に再び送り込めば、該用紙の表裏が逆転し、以後、前記と同様の動作によって感光ドラム21上のトナー像を用紙の表面(画像が形成されていない他方の面)に転写し、そのトナー像を定着部4において用紙に定着させれば、用紙の両面に画像が形成される。このようにして両面に画像が形成された用紙は、前記と同様に搬送ローラ30によって搬送路Lの垂直部L2を上方へと搬送され、排紙ローラ31によって排紙トレイ32に排出される。
【0033】
次に、本発明の要旨を図3〜図5に基づいて説明する。
【0034】
図3は給紙カセットを手前に引き出した状態を示すレーザビームプリンタの斜視図、図4は図3のA−A線拡大断面図、図5は手前に引き出した給紙カセットの空間部を蓋で覆った状態を示すレーザビームプリンタの斜視図である。
【0035】
図3に示すように、前記給紙カセット7内の手前側(用紙の搬送方向下流側)には、縦壁35と複数の縦リブ36によって、上方が開口する矩形ボックス状の複数(図示例では4つ)の空間Sが画成されて幅方向に並設されており、各空間Sにはスポンジ等の弾性体から成るブロック状の吸音材37がそれぞれ装填されている(図4参照)。
【0036】
そして、給紙カセット7の吸音材37が装填された各空間Sの上面開口部は、図5に示すように、幅方向に長い着脱可能なプレート状の蓋38によって覆われており、この蓋38の適所には横方向に長い複数のスリット38aが形成されている。ここで、図3に示すように、給紙カセット7の前記縦壁35の上端縁には4つのの係合溝35aが幅方向に適当な間隔で形成されており、これらの係合溝35aに蓋38の長手方向一端縁に一体に形成された4つの係合突起38b(図5参照)が係合することによって、各空間Sの上面開口部を覆う蓋38が給紙カセット7に固定される。
【0037】
而して、本実施の形態では、上述のように給紙カセット7の手前側(用紙の搬送方向下流側)に形成された複数の空間Sの各々に吸音材37を装填したため、前述の画像形成動作に際して給紙カセット7から用紙が送り出される際に該給紙カセット7及びその近辺で発生する用紙の後端叩き音は、吸音部材37によって効果的に吸収されて低減される。そして、吸音部材37は用紙の搬送路Lではなく給紙カセット7に設けられるため、搬送路Lに沿う用紙の搬送が阻害されることがなく、搬送路Lで用紙がジャムする等の不具合の発生が防がれ、当該レーザビームプリンタ1の静音化が簡単な構成で実現される。
【0038】
又、給紙カセット7の各空間Sの上面開口部を蓋38で覆ったため、各空間Sに装填された吸音部材37が蓋38で隠されて外部に露出することがなく、給紙カセット7の見栄えが吸音部材37によって害されることがない。そして、このように吸音部材37が装填された給紙カセット7の各空間Sの上面開口部を蓋38で覆った場合であっても、用紙の後端叩き音の振動は、蓋38に形成された複数のスリット38aを通過して吸音部材37に直接当たるため、用紙の後端叩き音が吸音部材37によって効果的に吸収されて低減される。
【0039】
尚、以上は本発明を特にレーザビームプリンタに適用した形態について説明したが、本発明は、プリンタの他、複写機やファクシミリ装置等の他の任意の画像形成装置に対しても同様に適用可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る画像形成装置(レーザビームプリンタ)の斜視図である。
【図2】本発明に係る画像形成装置(レーザビームプリンタ)の側断面図である。
【図3】本発明に係る画像形成装置(レーザビームプリンタ)の給紙カセットを手前に引き出した状態を示す斜視図である。
【図4】図3のA−A線拡大断面図である。
【図5】本発明に係る画像形成装置(レーザビームプリンタ)の手前に引き出した給紙カセットの空間部を蓋で覆った状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0041】
1 レーザビームプリンタ(画像形成装置)
1a 装置本体
2 給紙部
3 画像形成部
4 定着部
5 排紙部
6 スイッチバック部
7 給紙トレイ
8 手差しトレイ
9 リフト板
10 昇降板
11 リフト駆動軸
12 軸
13 ピックアップローラ
14 フィードローラ
15 リタードローラ
16〜18 給紙ローラ
19 レジストローラ
20 ピックアップローラ
21 感光ドラム
22 一次帯電器
23 現像装置
24 転写ローラ
25 クリーニング装置
26 レーザスキャナユニット(LSU)
27 トナーホッパー
28 加熱ローラ
29 加圧ローラ
30 搬送ローラ
31 排紙ローラ
32 排紙トレイ
33 搬送ローラ
34 操作表示部
35 縦壁
35a 縦壁の係合溝
36 縦リブ
37 吸音材
38 蓋
38a 蓋のスリット
38b 蓋の係合突起
L,L’ 搬送路
L1 搬送路の水平部
L2 搬送路の垂直部
S 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体に対して着脱可能であって、内部に積層して収容された用紙を1枚ずつ送り出す給紙カセットを備えた画像形成装置において、
前記給紙カセットの用紙搬送方向下流側に空間を設け、該空間に吸音部材を装填したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記給紙カセットの空間の上面開口部を蓋で覆ったことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記蓋にスリットを形成したことを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−320676(P2007−320676A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−149979(P2006−149979)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】