説明

画像形成装置

【課題】低融点のトナーを用いた場合でも画質が低下しにくい画像形成装置を提供する。
【解決手段】現像位置と第1転写位置とをこの順で経る経路を、表面に画像を保持して移動する、現像位置より上流で静電潜像が形成される像保持体と、静電潜像を現像位置で、結晶性樹脂を5重量%以上含有した、40℃における損失弾性率が2×10Pa以上7×10Pa以下の範囲内に属している、所定極性の電荷を有するトナーを含む現像剤で現像して現像像を形成する現像部と、第1転写位置と所定の第2転写位置とを経る循環経路を移動する中間転写体と、第1転写位置で現像像を中間転写体に電気的作用で転写する第1転写部と、第1転写位置よりも下流側で、像保持体の表面からトナーを除去するクリーニング部と、第2転写位置で現像像を中間転写体から被転写体に転写する第2転写部と、中間転写体上のトナーに所定極性とは逆極性の電荷を付与する電荷付与部とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像像を最終的に被転写体に転写して画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタやコピー機を中心とする画像形成装置が広く普及しており、このような画像形成装置を構成する様々な要素に関する技術も広く普及している。画像形成装置の中でも電子写真方式を採用している画像形成装置では、像保持体ドラムをはじめとする像保持体の上に、静電潜像を形成し、この静電潜像にトナーを付着させて現像されたトナー像を形成することが行われている。このようにして形成された像保持体上のトナー像は、直接、記録媒体上に転写されるか、あるいは、転写ベルトなどを介して、最終的に記録媒体上に転写され、転写後、定着装置において加圧・加熱されてトナー像が記録媒体上に定着する。
【0003】
近年、画像形成装置の分野では、エコロジーの観点から定着処理の際にかかる消費電力の低減が強く求められており、低温度で融解して記録媒体に定着する低融点トナーを採用した画像形成装置が現れている(例えば、特許文献1〜4参照)。こうした低融点トナーを採用した画像形成装置では、消費電力が低減することに加え、加熱時間も少なくてすむので画像形成速度が高速化するという利点もある。
【特許文献1】特開平6−208319号公報
【特許文献2】特開2006−235028号公報
【特許文献3】特開2006−257574号公報
【特許文献4】特開2006−091081号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
低融点トナーは、消費電力の低減および高速な画像形成を可能にする優れた特性を備えているものの、低融点トナーを用いた画像形成にはいくつか画質上の問題点がある。
【0005】
その一つが、画像中における光沢ムラの発生である。トナー像が転写される記録媒体の温度は、記録媒体上の場所に応じて多少異なっていることが多く、低融点トナーのように低温度で融解するトナーでは、このような温度差によって記録媒体上でのトナーの融解の程度に差が出てしまいやすい。こうした光沢ムラは、とりわけカラー画像では目立ち、画質欠陥として認識される。特に、カラーの両面出力の場合には、定着の際の加熱処理の前後で記録媒体の温度が大きく異なることを反映して、トナー像が記録媒体の第1面に出力される時の記録媒体の温度と、トナー像が記録媒体の第2面に出力される時の記録媒体の温度とでは温度差が大きく、光沢ムラの発生が問題となる。
【0006】
もう1つの問題は、トナーの像保持体へのフィルミングの発生による画質欠陥の問題である。低融点トナーの多くは、低融点の樹脂を含有する結着樹脂(コア)を、無定形高分子樹脂を主成分とする表面層(シェル)によって覆ったコアシェル構造を備えている。未定着トナー像の定着処理の際には、この低融点トナーは、表面層が破壊されて結着樹脂が表面層外部に出て記録媒体上に定着する。このとき、低温度で表面層が破壊される必要があるため、低融点トナーには、強度が小さくかつつぶれやすいという性質がある。中間転写体を備えた画像形成装置では、トナー像の転写が行われた後に、中間転写体の上に、転写されずに残留したトナーが付着している。中間転写体を備えた画像形成装置には、中間転写体に圧接してトナー像の転写を行う転写部材が備えられており、中間転写体上に残留した低融点トナーは、転写部材から圧力を繰り返し受けることでつぶれ、トナ−フィルミングを起こすことが多い。また、中間転写体を備えた画像形成装置の中には、残留トナーを除去するクリーニング手段として中間転写体に圧接して残留トナーを掻き落とすクリーニングブレードを備えているものも多いが、このクリーニングブレードの圧接によって低融点トナーがつぶされてトナーフィルミングが起こることも多い。こうしたトナーフィルミングは、中間転写体表面の性状や特性を変化させ、形成された画像中に画質欠陥を生じさせる。
【0007】
以上のような光沢ムラやトナーフィルミングによる画質低下の問題のため、低融点トナーの優れた特性を生かしつつ良好な画像形成を行う上ではさらなる工夫が求められる。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、低融点のトナーを用いた場合でも画質が低下しにくい画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明の画像形成装置は、
所定の現像位置と所定の第1転写位置とをこの順で経る経路を、表面に画像を保持して移動する、該現像位置よりも該経路の上流で静電潜像が形成される像保持体と、
上記像保持体上の静電潜像を上記現像位置で、結晶性樹脂を5重量%以上含有した、40℃における損失弾性率が2×10Pa以上7×10Pa以下の範囲内に属している、所定極性の電荷を有するトナーを含む現像剤で現像して現像像を形成する現像部と、
上記第1転写位置と所定の第2転写位置とを経る循環経路を移動する中間転写体と、
上記第1転写位置で上記現像像を上記中間転写体に電気的作用で転写する第1転写部と、
上記像保持体の上記経路における上記第1転写位置よりも下流側で、該像保持体の表面からトナーを除去するクリーニング部と、
上記第2転写位置で上記現像像を上記中間転写体から被転写体に転写する第2転写部と、
上記第2転写位置を経て上記第1転写位置に向かう上記中間転写体上のトナーに、上記所定極性とは逆極性の電荷を付与する電荷付与部とを備えたことを特徴とする。
【0010】
記録媒体の温度は、記録媒体上の場所に応じて多少異なっていることが多く、このような温度差によって記録媒体上でのトナーの融解の程度に差が出てしまうことがある。トナーの損失弾性率が小さいほどトナーがより低い温度で融解するようになるが、40℃における損失弾性率が7×10[Pa]より大きい損失弾性率場合には、温度が低い記録媒体部分においてトナーの融解が遅れることがあり、形成された画像上に光沢のムラが発生する。また、40℃における損失弾性率が2×10[Pa]より小さい場合には、温度が高い記録媒体部分においてトナーの融解がすすみすぎて、やはり形成された画像上に光沢のムラが発生する。
【0011】
本発明の画像形成装置では、40℃における損失弾性率が、2×10[Pa]以上7×10[Pa]以下の範囲内に属しているトナーを採用することで、記録媒体の温度差の影響が画像に影響を与えないよう工夫されており、光沢ムラの発生が回避されている。
【0012】
本発明の画像形成装置によれば、中間転写体上の残留トナーは、電荷付与部によって上記の所定極性とは逆極性に揃えられ、第1転写部の電気的作用によって中間転写体から像保持体表面へ移行する。そして、像保持体表面へ移行した残留トナーは、上記のクリーニング部によってその表面から除去される。このクリーニング方式のように、残留トナーを所定極性とは逆極性に揃える過程を有するクリーニング方式では、トナーを帯電させることで除去を容易にでき、このクリーニング方式が効果的となる。一般に、結晶性樹脂には容易に電荷注入されやすいという性質があり、こうした結晶性樹脂を含有したトナーは摩擦帯電により生じた電荷は漏洩しやすい。本発明の画像形成装置では、結晶性樹脂の割合が重量パーセントで5%以上の、結晶性樹脂の割合がかなり高いトナーが採用されており、トナーの摩擦帯電による電荷漏洩が大きく、その結果帯電性が低下する傾向にある。このため、本発明の画像形成装置では、上記の残留トナーを所定極性とは逆極性に揃える過程を利用したクリーニング方式により充分な残留トナー除去が行われることとなり、またクリーニングブレードを用いたクリーニング方式のように中間転写体に対して強い圧接力を及ぼす必要がない。従って、40℃における損失弾性率が、2×10[Pa]以上7×10[Pa]以下の範囲内に属している、強度の小さいトナーを採用してもトナーフィルミングが発生しにくく、画質欠陥の発生が回避されている。また、クリーニングブレードを用いた場合よりも中間転写ベルトに対するダメージが少ないため、中間転写ベルトが長寿命化することになる。さらに、結晶性樹脂は、トナー用の結着樹脂としては融点が比較的低いものが多く、本発明の画像形成装置では、このような結晶性樹脂を多く含むことで、高いクリーニング性と良好な定着性との両方が実現されている。上記のような結晶性樹脂の一例としては、例えば、結晶性ポリエステル樹脂が挙げられる。
【0013】
また、上記の静電的な力を利用した中間転写体のクリーニング方式では、中間転写体のクリーニングのための残留トナーの回収機構を設けなくても、像保持体のクリーニング部によって残留トナーが除去されるため、小型化に適している。
【0014】
また、本発明の画像形成装置において、「上記電荷付与部が、上記中間転写体との間に電位差を生じる毛を有し、その毛を上記中間転写体上に残留した残留トナーに接触させることで該残留トナーに上記所定極性とは逆極性の電荷を付与するブラシである」という形態も好ましい形態である。
【0015】
このような形態によれば、残留トナーに対して簡単に電荷を付与することができる。
【0016】
また、本発明の画像形成装置において、「上記電荷付与部が、上記残留トナーに対し0.50[kV]以上3.00[kV]以下の電圧を作用させることで、上記残留トナーに上記所定極性とは逆極性の電荷を付与するものである」という形態も好ましい形態である。
【0017】
中間転写体に対して、大きな電圧が印加されると、電圧印加に伴う放電によって中間転写体表面の材料が酸化して変性するといった問題が生じ、中間転写体の磨耗が進む。本発明の画像形成装置では、残留トナーに上記所定極性とは逆極性の電荷を付与するための印加電圧を3.00[kV]以下の小さい電圧とすることで、中間転写体の磨耗が防止されている。一方、印加電圧が小さすぎると今度は残留トナーの除去が不充分となるが、本発明の画像形成装置では、0.50[kV]以上の電圧を印加することで、充分なクリーニング性が発揮される。まとめると、残留トナーに上記所定極性とは逆極性の電荷を付与するための印加電圧を、0.50[kV]以上3.00[kV]以下とすることで、本発明の画像形成装置では、高いクリ−ニング性と、中間転写体の磨耗防止との両方が実現されている。
【0018】
また、本発明の画像形成装置において、「上記トナーが、100以上130以下の形状係数を有するものである」という形態も好ましい形態である。
【0019】
一般に、球形に近い形状のトナーの方が、トナー表面の帯電分布が一様となってトナーの極性が安定しやすく、静電的な力を利用するクリーニング方式には適している。本発明の画像形成装置では、100以上130以下の領域内の、球形に近い形状のトナーを採用することにより、高いクリーニング性が実現する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、低融点のトナーを用いた場合でも画質が低下しにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0022】
図1は、本発明の画像形成装置の一実施形態に相当するフルカラー画像形成装置の概略構成を示す図である。
【0023】
図1に示す画像形成装置1は、像保持体10および中間転写ベルト2を備えている。像保持体10は、電子写真方式用の積層型像保持体であり、画像形成時には図の矢印A方向に回転する。中間転写ベルト2は、支持ロール60a,60b,60c,60dに張架された無端状のベルト部材であり、画像形成時には、像保持体10に従動して図の矢印B方向に循環移動する。中間転写ベルト2は、弾性を有するベルト基材と、このベルト基材の表面を被覆し、導電剤を含有する保護層とを備えている。また、中間転写ベルト2を挟んで像保持体10と対向する位置に、1次転写ロール40aが配設されており、さらにその下方(図の下側)には、2次転写ロール40bが設けられている。これら1次転写ロール40a,2次転写ロール40bには、画像形成時にそれぞれ1次転写バイアス電圧印加部41a,2次転写バイアス電圧印加部41bからバイアス電圧が印加される。
【0024】
像保持体10の周囲には、現像ロータリー50、帯電器20、露光器32、クリーニング装置100が配設されている。帯電器20は、像保持体10に接触しながら像保持体10を帯電する接触型の帯電器である。現像ロータリー50は、ブラック(BK)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)の有色トナーをそれぞれ有する現像剤を収容した現像器51〜現像器54が周方向に沿って配置された回転式の複合現像器であり、現像ロータリー50の回転により、像保持体10に近接して現像を行う現像器を切り換えることができる。各有色トナーは負極に帯電する帯電特性を有するものであり、各有色トナーには、潤滑剤や転写助剤やクリーニング助剤といったトナー粒子よりも小さな外添剤粒子が添加されている。露光器32は、像保持体10の表面に向けてレーザ光を照射する役目を担い、クリーニング装置100は、像保持体10上に残留したトナーを除去する役目を担っている。
【0025】
また、この画像形成装置1には、中間転写ベルト2のクリーニングに携わる帯電ブラシ81が備えられている。帯電ブラシ81は、中間転写ベルト2に対して当接離間の切り換えが可能であり、当接時に、中間転写ベルト2上に残留したトナーをプラス帯電する。帯電ブラシ81の当接あるいは離間の制御は、CPU4によって行われており、このCPU4は、上述の1次転写バイアス電圧印加部41a,2次転写バイアス電圧印加部41bなど、画像形成装置の各部の制御も行う。
【0026】
次に、この画像形成装置1における画像形成の動作について説明する。
【0027】
この画像形成装置1では、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの4色の画像信号を有する、1つ以上の画像を表した画像情報の入力を受けて画像形成を行う。これらの画像信号が入力されると、像保持体10が回転を開始し、この回転する像保持体10の表面を、帯電器20が帯電する。そして、入力された4色の画像信号のうち、まずシアンの画像信号に応じたレーザ光が露光器32から像保持体10に向けて照射され、この照射によって像保持体10の表面に、電位が周囲より電位が高くなった静電潜像が形成される。また、現像ロータリー50の回転により、シアントナーを収納した現像器54が像保持体10に近接して、静電潜像をシアントナーを含む現像剤で現像する。この静電潜像の現像の際には、シアントナーを収納した現像器54が、不図示の現像バイアス印加部によりバイアス電圧の印加を受けて、その電位が、静電潜像の電位よりも低く像保持体10の電位よりは高い電位となる。このため、現像器54のシアントナーは、静電潜像とシアントナーを収納した現像器54との間の電位差により、現像器54を離れて静電潜像に付着し、像保持体10上にシアントナー像が形成される。ここで、このシアントナー像が、本発明にいう現像像の一例に相当する。また、以下に述べるように、マゼンタ,イエロー,ブラックの各色のトナー像も像保持体10上に形成されることとなるが、これら各色のトナー像もそれぞれ本発明にいう現像像の一例に相当する。
【0028】
次いで、形成されたシアントナー像は、1次転写ロール40aによって、像保持体10から中間転写ベルト2に1次転写される。この1次転写の際には、1次転写ロール40aの電位が、シアントナー像が位置する像保持体10上の電位よりも高い電位となるよう、1次転写ロール40aに対して1次転写バイアス電圧印加部41aが正極性のバイアス電圧の印加を行うことで、上記の1次転写が実現する。
【0029】
像保持体10の上には、1次転写されずに残った残留トナーが存在するが、この残留トナーは、クリーニング装置100によって像保持体10から除去される。このクリーニング装置100による残留トナーの除去については後述する。
【0030】
クリーニング装置100による残留トナーの除去が行われた後、再び、像保持体10の表面が、帯電器20により帯電され、現像ロータリー50の回転により、今度はマゼンタトナーを収納した現像器53が像保持体10に近接し、上述のシアントナー像の形成と同様にしてマゼンタトナー像が形成される。このマゼンタトナー像の形成は、中間転写ベルト2の上のシアントナー像が1次転写後に支持ロール60a,60b,60c,60dを通過して1次転写ロール40aの位置に戻ってきたときに、形成されたマゼンタトナー像がシアントナー像の上に重ねて1次転写されるように、タイミングを合わせて行われる。マゼンタトナー像がシアントナー像の上に重ねて1次転写された後、イエロートナー像,ブラックトナー像についても同様にして形成されて、マゼンタトナー像およびシアントナー像に重ね合わされる。この結果、中間転写ベルト2には、シアン,マゼンタ,イエロー,ブラックの各色のトナー像が1つに重なり合った多色のトナー像が形成される。
【0031】
続いて、この多色のトナー像は、2次転写ロール40bと支持ロール60cとで挟まれた位置において、トレイ6から給紙ロール61によって送り出されてきた用紙上に2次転写される。この2次転写の際には、2次転写ロール40bの電位が、多色のトナー像が位置する中間転写ベルト2上の電位よりも高い電位となるよう、2次転写ロール40bに対して2次転写バイアス電圧印加部41bがバイアス電圧の印加を行うことで、上記の2次転写が実現する。
【0032】
多色のトナー像の2次転写を受けた用紙は、図1において2次転写ロール40bの右方向に離れた位置に備えられている定着器62により、熱および圧力を加えられてトナー像の定着処理が施される。
【0033】
用紙の片面だけに画像形成を行う場合は、定着器62においてトナー像の定着が行われた後、図の右方向の矢印で示すようにそのまま右方向に排出される。用紙の両面に画像形成を行う場合は、定着器62において用紙の片面にトナー像の定着が行われた後、排出されずに後戻りして、定着器62のそばのレジロール対8aの間を通り左向きの矢印で示す経路を通って左方向に搬送される。そして、図では2次転写ロール40bの左側に図示されているレジロール対8bにおいて搬送方向を右向きに転じて再び2次転写ロール40bに向かう。ここで、用紙が最初に2次転写ロール40bで転写を受けてから再び2次転写ロール40bの位置に達するまでの間に、中間転写ベルト2上においては、上述した方式で新たな多色のトナー像の形成が行われている。そして、用紙が2回目に2次転写ロール40bに達した時に、その新たな多色のトナー像が、用紙が1回目に2次転写を受けた時とは反対側の面に2次転写される。2回目の2次転写後の用紙は、定着器62によりトナー像の定着処理が施されて右方向に排出される。
【0034】
以上が、この画像形成装置1における画像形成の動作についての説明である。
【0035】
一般に、トナーの損失弾性率が小さいほどトナーの融点は低く、トナー像が低温度で定着する。この画像形成装置1では、低温度で高い定着性を実現するため、40℃における損失弾性率が2×10[Pa]以上7×10[Pa]以下という、損失弾性率がきわめて小さいトナーが採用されている。こうした低融点トナーを採用することにより、この画像形成装置1では、定着処理の際にかかる消費電力の低減と、定着処理の際の加熱時間の短縮化との両方が実現されている。
【0036】
画像形成装置1で採用されている低融点トナーは、低融点の樹脂を含有する結着樹脂(コア)を、無定形高分子樹脂を主成分とする表面層(シェル)によって覆ったコアシェル構造を備えていてもよい。未定着トナー像の定着処理の際には、この低融点トナーは、表面層が破壊されて結着樹脂が表面層外部に出て用紙上に定着する。このとき、低温度で表面層が破壊される必要があるため、こうした低融点トナーには、強度が小さくつぶれやすいという性質がある。このため、転写後に像保持体10や中間転写ベルト2に残った残留トナーの除去が充分でないと、残留トナーは、1次転写ロール40a(中間転写ベルト2の場合は1次転写ロール40aと2次転写ロール40bの両方)から圧力を繰り返し受けてつぶされ、トナ−フィルミングが起こりやすい。また、こうした低融点トナーは、クリーニングする際に、クリーニングブレードのように強い圧接力をかけると、像保持体10や中間転写ベルト2上でトナーフィルミングが起こりやすく、強い圧接力をかけて残留トナーを擦り落とすクリーニング方式は好ましくない場合がある。
【0037】
この画像形成装置1では、こうしたトナーフィルミングの問題を回避するため、この画像形成装置1は、トナーとして、電荷注入されやすい性質を持つ結晶性樹脂を多く含む低融点トナーを採用し、クリーニング方式として、残留トナーを所定極性とは逆極性に揃える過程を利用したクリーニング方式を採用している。このため、強い圧接力を必要とすることなく充分なクリーニングが行われる。
【0038】
以下では、残留トナーを所定極性とは逆極性に揃える過程を利用したクリーニング方式について説明する。まず、像保持体10のクリーニングについて説明する。
【0039】
クリーニング装置100には、像保持体用ロールブラシ300とクリーニングブレード31が設けられており、像保持体用ブラシローラ300を取り囲み、像保持体10から除去された残留トナーを回収する筐体101も備えられている。このクリーニング装置100では、残留トナーの除去は主に像保持体用ロールブラシ300によって行われ、クリーニングブレード31は、残留トナーの除去後の像保持体10表面を平坦にするためのものである。このため、このクリーニングブレード31と像保持体10との当接力としては、それほど大きな力は必要とされず、残留トナーの除去のためにクリーニングブレードが用いられる場合に必要とされる当接力に比べ、十分小さい当接力となっている。
【0040】
像保持体用ロールブラシ300は、像保持体10の幅方向に延在した回転軸から放射状に延びた毛(ブラシ繊維)301を有しており、この毛301は、回転軸の回りを回転しながら像保持体10表面と接触する。この毛301に用いる繊維としては、ナイロン、アクリル、ポリオレフィン、ポリエステル等の樹脂繊維が挙げられ、ベルトロン(カネボウ社製)、SA−7(東レ社製)、UUナイロン(ユニチカ社製)等の市販品を使用することができる。また、この毛301は導電性のものである。この毛301に導電性を付与する方法としては、繊維に導電性粉末やイオン導電材を配合する方法、繊維の内部又は外部に導電層を形成する方法等が挙げられる。
【0041】
像保持体用ロールブラシ300の毛301の電位は、トナー回収電圧印加部302からの電圧印加により、像保持体10の電位よりも高い電位となっている。像保持体10上の残留トナーは負極性であり、このため、毛301に残留トナーが接触すると、像保持体10上の残留トナーは像保持体10を離れて毛301に付着する。毛301に付着した残留トナーは、回転する毛301が不図示の払い落とし部材にぶつかることによって毛301から離れて筐体101内に落下する。この画像形成装置1では、残留トナーを毛301に付着させるための電圧として100V以上400V以下の電圧が採用されており、この電圧は、残留トナー回収のために印加される電圧としては、かなり小さい電圧である。なお、本発明の画像形成装置では、像保持体用ロールブラシ300の代わりに、電圧を印加した導電性の円筒体を像保持体10に近づけて残留トナーを電気的に円筒体表面に付着させる方式も採用可能である。
【0042】
以上が、像保持体10のクリーニングについて説明である。
【0043】
次に、中間転写ベルトのクリーニングについて説明する。
【0044】
ベルト用ロールブラシ81は、無端状の中間転写ベルト2の幅方向に延在した回転軸から放射状に延びた毛(ブラシ繊維)811を有しており、図の両矢印C方向に移動することができる。この毛811としては、上記の像保持体用ロールブラシ300の毛301と同様のものを採用することができる。2次転写が行われて用紙が排出された後には、中間転写ベルト2の表面上に、2次転写バイアス電圧印加部41bによるバイアス電圧の印加を受けて正極性となった残留トナーと、負極性のままの残留トナーとが存在している。用紙が排出されると、CPU4の制御によりベルト用ロールブラシ81が中間転写ベルト2と当接する。ベルト用ロールブラシ81の毛811の電位は、トナー帯電電圧印加部82からの電圧印加により、中間転写ベルト2の電位よりも高い電位となっており、毛811に中間転写ベルト2上に残留したトナーが接触することでトナーの極性が正極性に揃えられる。この画像形成装置1では、トナーの極性を正極性に揃えるための電圧として、0.5kV以上3.0kV以下の電圧が採用されており、この電圧は、残留トナーの極性を揃えるために印加される電圧としては、かなり小さい電圧である。なお、本発明の画像形成装置では、ベルト用ロールブラシ81に代えて、電圧を印加した導電性の円筒体を残留トナーに接触させることにより残留トナーの極性を揃える方式も採用可能である。
【0045】
正極性に帯電した残留トナーは、1次転写ロール40aの位置で、1次転写バイアス電圧印加部41aによる前述の正極性のバイアスを受けて、今度は中間転写ベルト20から像保持体10へ移行する。中間転写ベルト2のクリーニングが行われる際には、CPU4の指示により、今度は像保持体用ロールブラシ300の毛301の電位が像保持体10の電位よりも低くなるよう、トナー回収電圧印加部302から毛301に対して電圧の印加が行われる。このため、像保持体10へ移行した正極性の残留トナーは、像保持体10の電位よりも電位が低い毛301に付着し、上述した像保持体10のクリーニングと同様に、筐体101内に回収される。
【0046】
以上が、中間転写ベルト2のクリーニングについて説明である。
【0047】
この画像形成装置1で採用されているトナーは、結晶性樹脂の割合が重量パーセントで5%以上の、結晶性樹脂の割合がかなり高いトナーであり、トナーの帯電性は高くない。このため、画像形成装置1では、上述した、残留トナーを所定極性とは逆極性に揃える過程を利用したクリーニング方式により充分な残留トナー除去が行われることとなり、また、像保持体10や中間転写ベルト2に対して強い圧接力を及ぼす必要もない。従って、40℃における損失弾性率が7×10[Pa]以下という、強度の小さいトナーを採用してもトナーフィルミングが発生しにくく、トナーフィルミングによる画質欠陥の発生が回避されている。また、像保持体10や中間転写ベルト2に対するダメージが少なくてすむため、像保持体10や中間転写ベルト2の長寿命化も実現されている。さらに、結晶性樹脂は、トナー用の結着樹脂としては融点が比較的低いものが多く、画像形成装置1では、このような結晶性樹脂を多く含むことで、高いクリーニング性と良好な定着性との両方が実現されている。上記のような結晶性樹脂の一例としては、例えば、結晶性ポリエステル樹脂が挙げられる。
【0048】
また、この画像形成装置1で採用されている低融点トナーの、40℃における損失弾性率は、2×10[Pa]以上7×10[Pa]以下という狭い範囲内に属している。
【0049】
用紙の温度は、用紙上の場所に応じて多少異なっていることが多く、このような温度差によって用紙上でトナーの融解の程度に差が出てしまうことがある。トナーの損失弾性率が小さいほどトナーがより低い温度で融解するようになるが、40℃における損失弾性率が7×10[Pa]より大きい場合には、温度が低い用紙部分においてトナーの融解が遅れることがあり、形成された画像上に光沢のムラが発生する。また、40℃における損失弾性率が2×10[Pa]より小さい場合には、温度が高い用紙部分においてトナーの融解がすすみすぎて、やはり形成された画像上に光沢のムラが発生する。
【0050】
こうした光沢ムラは、とりわけカラー画像では目立ち、画質欠陥として認識される。特に、カラーの両面出力の場合には、定着の際の加熱処理の前後で用紙の温度が大きく異なることを反映して、トナー像が用紙の第1面に出力された時の用紙の温度と、トナー像が用紙の第2面に出力された時の用紙の温度とでは、温度差が大きく、光沢ムラの発生が大きな問題となる。
【0051】
そこで、この画像形成装置1では、40℃における損失弾性率が、2×10[Pa]以上7×10[Pa]以下の範囲内に属している低融点トナーを採用することで、用紙の温度差の影響が画像に影響を与えないよう工夫されており、光沢ムラの発生が回避されている。
【0052】
また、この画像形成装置1では、帯電量の低くなりやすいトナーを採用しているため、残留トナー回収のためにトナー回収電圧印加部302によって印加される電圧が400[V]以下という、かなり小さな電圧であり、また、残留トナーの極性を揃えるためにトナー帯電電圧印加部82によって印加される電圧が3.00[kV]以下という、かなり小さな電圧であるにもかかわらず、充分な残留トナー除去が行われる。
【0053】
1次転写後に像保持体上の残留したトナーに対して印加される電圧が大きすぎると、像保持体上の残留トナーが残留トナーの帯電極性とは逆の極性に帯電してしまい、クリーニング性が低下する。一方、印加電圧が小さすぎると今度は残留トナーの除去が不充分となる。この画像形成装置1では、100[V]以上400[V]以下の電圧を残留トナーに印加することで、残留トナーの帯電極性とは逆の極性に帯電してしまうことを防止しながら、充分なクリーニング性が発揮される。
【0054】
また、中間転写ベルトに対して、大きな電圧が印加されると、電圧印加に伴う放電によって像保持体表面や中間転写ベルト表面の材料が酸化して変性するといった問題が生じ、中間転写ベルトの磨耗が進む。この画像形成装置1では、残留トナーを正極性に揃えるための印加電圧を3.00[kV]以下の小さい電圧とすることで、中間転写体の磨耗が防止されている。一方、印加電圧があまりに小さすぎると今度は残留トナーの除去が不充分となるが、この画像形成装置1では、0.50[kV]以上の電圧を印加することで、充分なクリーニング性が発揮される。従って、この画像形成装置1では、高いクリ−ニング性と、中間転写ベルト2の磨耗防止との両方が実現することとなる。
【0055】
また、この低融点トナーの形状係数の平均値は、100以上130以下の領域内に属し、球形に近い形状のトナーとなっている。
【0056】
一般に、球形に近い形状のトナーの方が、トナー表面の帯電分布が一様となってトナーの極性が安定しやすく、静電的な力を利用するクリーニング方式には適している。そこで、この画像形成装置1では、100以上130以下の領域内の、球形に近い形状のトナーを採用することにより、クリーニング性の向上が図られている。
【0057】
以下では、この画像形成装置1で採用されているトナーの製造方法、およびそのトナーを有する二成分現像剤の製造方法について説明する。

−結晶性樹脂−
ここで、「結晶性ポリエステル樹脂」とは、示差走査結量測定(DSC)において、階
段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピークを有するものを指す。なお、ここで、静電
荷現像用トナーに用いられる『結晶性』とは、示差走査熱量測定(DSC)において、D
SC曲線が明確な吸熱ピークを有することを指し、具体的には、昇温速度10℃/min
で測定した際の吸熱ピークが発生し、その後前記DSC曲線のベースラインに戻ることを
意味する。
【0058】
結晶性樹脂としては、具体的には、適度な融点を有し炭素数6以上のアルキル基を有す
る脂肪族系の結晶性ポリエステル樹脂がより好ましい。炭素数6以上のアルキル基を有す
るポリエステル樹脂は、多価カルボン酸または多価アルコールに炭素数6以上のアルキル
基を有する重合性単量体を用いることで得ることができ、例えば、ドデセニルコハク酸な
どを用いることができるが、これに限るものではない。
本実施の形態において用いる樹脂の製造に用いる多価カルボン酸類としては、例えば、
テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、1,5−ナフタルレンジカルボン酸、2
,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸等の芳香族ジカルボン酸、p−オキシ安息香
酸、p−(ヒドロキシエトキシ)安息香酸等の芳香族オキシカルボン酸、コハク酸、アル
キルコハク酸、アルケニルコハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン
ジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸
、シトラコン酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ダイマー酸、トリマ
ー酸、水添ダイマー酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキセンジカルボン酸
等の不飽和脂肪族及び脂環族ジカルボン酸等を、また多価カルボン酸としては他にトリメ
リット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等の三価以上の多価カルボン酸等を用いること
ができる。
【0059】
樹脂の製造に用いる多価アルコール類としては脂肪族多価アルコール類、脂環族多価ア
ルコール類、芳香族多価アルコール類等を例示できる。脂肪族多価アルコール類としては
、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,3−ブ
タンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサン
ジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、
ジメチロールヘプタン、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ポリエチ
レングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ε−カプ
ロラクトン等のラクトン類を開環重合して得られるラクトン系ポリエステルポリオール等
の脂肪族ジオール類、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペ
ンタエルスリトール等のトリオール及びテトラオール類等を例示できる。
【0060】
脂環族多価アルコール類としては1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘ
キサンジメタノール、スピログリコール、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノー
ルAのエチレンオキサイド付加物及びプロピレンオキサイド付加物、トリシクロデカンジ
オール、トリシクロデカンジメタノール、ダイマージオール、水添ダイマージオール等を
例示できる。
【0061】
芳香族多価アルコール類としてはパラキシレングリコール、メタキシレングリコール、
オルトキシレングリコール、1,4−フェニレングリコール、1,4−フェニレングリコ
ールのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキ
サイド付加物及びプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0062】
樹脂末端の極性基を封鎖し、トナー帯電特性の環境安定性を改善する目的において単官
能単量体がポリエステル樹脂に導入される場合がある。単官能単量体としては、安息香酸
、クロロ安息香酸、ブロモ安息香酸、パラヒドロキシ安息香酸、スルホ安息香酸モノアン
モニウム塩、スルホ安息香酸モノナトリウム塩、シクロヘキシルアミノカルボニル安息香
酸、n−ドデシルアミノカルボニル安息香酸、ターシャルブチル安息香酸、ナフタレンカ
ルボン酸、4−メチル安息香酸、3−メチル安息香酸、サリチル酸、チオサリチル酸、フ
ェニル酢酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、オクタンカルボン酸、ラウリル酸、
ステアリル酸、及びこれらの低級アルキルエステル、等のモノカルボン酸類、あるいは脂
肪族アルコール、芳香族アルコール、脂環族アルコール等のモノアルコールを用いること
ができる。
【0063】
結晶性樹脂の製造方法としては、特に制限はなく、酸成分とアルコール成分とを反応さ
せる一般的なポリエステル重合法で製造することができ、例えば、直接重縮合、エステル
交換法等が挙げられ、モノマーの種類によって使い分けて製造する。
【0064】
結晶性樹脂の製造は、重合温度180〜230℃の間で行うことができ、必要に応じて
反応系内を減圧にし、縮合時に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる。モノ
マーが反応温度下で溶解又は相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶
解させても良い。重縮合反応においては、溶解補助溶剤を留去しながら行う。共重合反応
において相溶性の悪いモノマーが存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪いモノマーと、
そのモノマーと重縮合予定の酸又はアルコールとを縮合させておいてから主成分と共に重
縮合させると良い。
【0065】
結晶性樹脂の製造時に使用可能な触媒としては、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金
属化合物;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属化合物;亜鉛、マンガン、ア
ンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属化合物;亜リン酸化合物
、リン酸化合物、及びアミン化合物等が挙げられ、具体的には、以下の化合物が挙げられ
る。
【0066】
例えば、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸リチウム、炭酸リチウム、酢酸カルシ
ウム、ステアリン酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ナフ
テン酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸マンガン、ナフテン酸マンガン、チタンテトラエトキシド、
チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロキシド、チタンテトラブトキシド、三
酸化アンチモン、トリフェニルアンチモン、トリブチルアンチモン、ギ酸スズ、シュウ酸
スズ、テトラフェニルスズ、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズオキシド、ジフェ
ニルスズオキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、ナフテン酸ジルコニウム、炭酸ジル
コニール、酢酸ジルコニール、ステアリン酸ジルコニール、オクチル酸ジルコニール、酸
化ゲルマニウム、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−t−ブチルフェニル)ホ
スファイト、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、トリエチルアミン、トリフェ
ニルアミン等の化合物が挙げられる。このような触媒の添加量は、原材料の総量に対して
0.01〜1.00重量%とすることが好ましい。
【0067】
結晶性樹脂の融点としては、好ましくは50〜100℃であり、より好ましくは60〜
100℃である。前記融点が50℃より低いとトナーの保存性や、定着後のトナー画像の
保存性が問題となる場合がある一方、100℃より高いと従来のトナーに比べて十分な低温定着が得られない場合がある。

また、結晶性の樹脂には、複数の融解ピークを示す場合があるが、本発明においては、
最大のピークをもって融点とする。
【0068】
更に、本発明の樹脂融点の測定には、例えばパーキンエルマー社製のDSC−7を用い
ることができる。この装置の検出部の温度補正はインジウムと亜鉛との融点を用い樹脂の
ガラス転移点の測定も同様に測定することができる。
【0069】
本実施の形態のトナーに使用される結晶性樹脂は、テトラヒドロフラン(THF)可溶
分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法による分子量測定で、重量平
均分子量(Mw)が8,000〜35,000であり、好ましくが10,000〜25,
000である。重量平均分子量が8,000未満では、非結晶性樹脂や離型剤との相溶が
進行し、可塑を発生させる場合がある。また、35,000を超えるとトナー溶融時の粘
度が上昇し、定着性や画像光沢性を損なうことがある。ここで、樹脂の分子量は、THF
可溶物を、東ソー製GPC・HLC−9120、東ソー製カラム「TSKgel Sup
erHM−M」(15cm)を使用し、THF溶媒で測定し、単分散ポリスチレン標準試
料により作成した分子量校正曲線を使用して分子量を算出したものである。後述する非結
晶性ポリエステル樹脂の測定でも同様に測定した。
【0070】
本実施の形態のトナーは、結晶性樹脂のASTM D3418−8に準拠して測定され
る融点(mp)が50〜100℃が好ましく用いられる。融点が50℃未満では、トナー
の熱保安性が低下し、100℃を超えるとトナー定着時の画像光沢度が低下する。
【0071】
結晶性樹脂の酸価(樹脂1gを中和するに必要なKOHのmg数)を5〜50mgKO
H/gに制御する。該酸価が5mgKOH/g未満では、結晶性樹脂粒子同士が凝集体を
形成し、離型剤との構造体の形成が困難となるばかりでなく、結晶性樹脂粒子がトナー中
に独立に存在、或いは大きく成長しトナー表面に露出することがあり、トナーの流動性、
帯電性の観点から好ましくない。また、該酸価が50mgKOH/gを超えるとトナー中
への内包が困難となる場合がある。
−非結晶ポリエステル樹脂−
非晶性ポリエステル樹脂としては、上記触媒を用い主として上述した多価カルボン酸類
と多価アルコール類との縮重合により得られるものである。
【0072】
非結晶性樹脂は、上記多価アルコールと多価カルボン酸を常法に従って縮合反応させる
ことによって製造することができる。例えば、上記多価アルコールと多価カルボン酸、必
要に応じて触媒を入れ、温度計、撹拌器、流下式コンデンサを備えた反応容器に配合し、
不活性ガス(窒素ガス等)の存在下、150〜250℃で加熱し、副生する低分子化合物
を連続的に反応系外に除去し、所定の酸価に達した時点で反応を停止させ、冷却し、目的
とする反応物を取得することによって製造することができる。
【0073】
本実施の形態に用いられる非結晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、ASTM
D3418−8に準拠して求めた場合に50℃以上であることが必須であり、さらには5
5℃以上、またさらには60℃以上、65℃未満であることが好ましい。ガラス転移温度
が50℃未満の場合には、取扱い中あるいは保存中に凝集する傾向がみられ、保存安定性
に問題を生ずる場合がある。また、65℃以上の場合は、定着性を低下させる場合があり
、好ましくない。
【0074】
また、本実施の形態に用いられる非結晶性樹脂の軟化点は、60〜90℃の範囲である
ことが好ましい。樹脂の軟化温度を60℃未満に抑えたトナーにおいては、取扱い中ある
いは保存中に凝集する傾向がみられ、特に長時間の保存において、流動性が大きく悪化す
る場合がある。軟化点が90℃を超える場合には定着性に支障をきたす場合がある。また
定着ロールを高温に加熱する必要が生じるために、定着ロールの材質、ならびに複写され
る基材の材質が制限される。
【0075】
本発明トナーに使用される非晶性ポリエステル樹脂は、テトラヒドロフラン(THF)
可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法による分子量測定で、重
量平均分子量(Mw)が20,000〜50,000であり、好ましくは25,000〜
50,000である。重量平均分子量が25,000未満では、トナーの熱保管性が低下
するばかりでなく、定着された画像の強度が低下する。また、50,000を超えると定
着性が悪化し、画像光沢も低下する。
【0076】
非結晶性ポリエステル樹脂の酸価を10〜50mgKOH/gが好ましい。該酸価が1
0mgKOH/g未満では、トナー製造時の凝集体の粒度成長が早くなるため、出来上が
るトナーの粒度分布が拡大するという不具合が生じる場合がある。また、該酸価が50m
gKOH/gを超えると、結晶性樹脂、離型剤との酸価の差が大きくなるため、結晶性樹
脂、離型剤との凝集だけが進む場合があり、定着性がトナー粒子間で変化してしまうとい
う不具合がある。非結晶性ポリエステル樹脂の酸価は、原料の多価カルボン酸と多価アル
コールの配合比と反応率により、ポリエステルの末端のカルボキシル基を制御することに
よって調整することができる。あるいは多価カルボン酸成分として無水トリメリット酸を
使用することによってポリエステルの主鎖中にカルボキシル基を有するものが得られる。
【0077】
本実施の形態のトナーは、結晶性樹脂と非結晶性樹脂の重量比率が5/95〜40/6
0であり、非晶性樹脂の割合が60%未満では、良好な定着特性は得られるものの、定着
像中の相分離構造が不均一となり、定着画像の強度、特に引っかき強度が低下し、傷がつ
きやすくなるといった問題を呈することがある。一方、95%を超える場合では、結晶性
樹脂由来のシャープメルト性が得られず、可塑が発生することがあり、良好な低温定着性
を確保しつつ、耐トナーブロッキング性、画像保存性を保つことができなくなる場合があ
る。
【0078】
結晶性樹脂及び非結晶性の樹脂粒子分散液の作成については、樹脂の酸価の調整やイオ
ン性界面活性剤などを用いて乳化分散することにより、調製することが可能である。
【0079】
また、その他の方法で作製した樹脂の場合は油性で水への溶解度の比較的低い溶剤に溶
解するものであれば樹脂をそれらの溶剤に解かして水中にイオン性の界面活性剤や高分子
電解質と共にホモジナイザーなどの分散機により水中に粒子分散し、その後加熱又は減圧
して溶剤を蒸散することにより、樹脂粒子分散液を作製することができる。また、樹脂に
界面活性剤を加え、ホモジナイザーなどの分散機により水中にて乳化分散する方法や転相
乳化法などにより、樹脂粒子分散液を調製してもよい。
【0080】
このようにして得られた樹脂粒子分散液の粒子径は、例えばレーザー回析式粒度分布測
定装置(LA−700堀場製作所製)で測定することができる。
−離型剤−
本実施の形態で用いられる離型剤としての離型剤の具体例としては、ポリエチレン、ポ
リプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類、加熱により軟化点を示すシリ
コーン類;オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミ
ド等の脂肪酸アミド類;カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、
木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス;ミツロウ等の動物系ワックス;モンタンワックス
、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィ
ッシャートロプシュワックス等の鉱物・石油ワックス、ステアリン酸ステアリル、ベヘン
酸ベヘニル等の高脂肪酸と高級アルコールとのエステルワックス類;ステアリン酸ブチル
、オレイン酸プロピル、モノステアリン酸グリセリド、ジステアリン酸グリセリド、ペン
タエリスリトールテトラベヘネート等の高級脂肪酸と単価又は多価低級アルコールとのエ
ステルワックス類;ジエチレングリコールモノステアレート、ジプロピレングリコールジ
ステアレート、ジステアリン酸ジグリセリド、テトラステアリン酸トリグリセリド等の高
級脂肪酸と多価アルコール多量体とからなるエステルワックス類;ソルビタンモノステア
レート等のソルビタン高級脂肪酸エステルワックス類;コレステリルステアレート等のコ
レステロール高級脂肪酸エステルワックス類などを挙げることができる。本実施の形態に
おいて、これらの離型剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、
本実施の形態においては、これらの中で融点が40℃〜120℃の物が用いられるが、最
近の省エネルギー対応としての低温定着性の要求に対応する為には、特に50℃〜100
℃の物が好ましく、より好ましくは50〜80℃の物が用いられる。
【0081】
これらの離型剤の添加量としては、トナー全量に対して、0.5〜30重量%の範囲で
あることが好ましく、より好ましくは1〜20重量%の範囲、さらに好ましくは5〜15
重量%の範囲である。添加量が0.5重量%未満であると離型剤添加の効果がなく、30
重量%を超えると、帯電性に影響が現れやすくなったり、現像器内部においてトナーが破
壊されやすくなり、離型剤のキャリアへのスペント化が生じ、帯電が低下しやすくなる等
の影響が現れる場合がある。
【0082】
離型剤分散液中のワックス粒子の体積平均粒径は、0.1〜0.5μmの範囲が好まし
いが、特に0.1〜0.3μmが好ましい。体積平均粒径が0.5μmを超えると、トナ
ー表面へ露出しやすくなりトナーの粉体流動性を悪化させたり像保持体や現像部材へのフィルミングがしやすくなったりする。また凝集工程で内包されない、合一工程で離型剤粒子が脱落してしまう問題が生じる。特にカラートナーを得る場合においては、離型剤粒子が大きいと乱反射によりOHP透過性が下がり、色再現性も低下する。なお、前記体積平均粒径は、例えば、上述したレーザー回折式粒度分布測定機などを用いて測定することができる。体積平均粒径が0.1μm以下では、トナーに充分な離型性を付与することが出来なくなり好ましくない。
【0083】
離型剤分散に於ける分散媒体は、水系が好ましく、水、純水、イオン交換水が用いられ
る。分散剤としては界面活性剤が用いられる。本発明のトナーに用いられるワックス分散
液の作製は、例えばボールミル、サンドミル、アトライター等のメディア式分散機、ナノ
マイザー、マイクロフルイダイザー、アルティマイザー、ゴーリン等の高圧型分散機、な
どの公知の分散方法を用いて、記述したような粒径、含有量を満たすことができるのであ
れば、いかなる方法・条件により作製されるものであってもよい。
−着色剤−
着色剤は、通常トナー中に効果的な量、例えばトナーの約1〜約15重量%、望ましく
は約3〜約10重量%存在する。本発明の製法で使用する、着色剤としては特に限定され
ず、公知の着色剤を使用することができ、目的に応じて適宜選択することができる。顔料
を1種単独で用いてもよいし、同系統の顔料を2種以上混合して用いてもよい。また異系
統の顔料を2種以上混合して用いてもよい。前記着色剤としては、具体的には、例えば、
ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック等の
カーボンブラック;ベンガラ、アニリンブラック、紺青、酸化チタン、磁性粉等の無機顔
料;ファストイエロー、モノアゾイエロー、ジスアゾイエロー、ピラゾロンレッド、キレ
ートレッド、ブリリアントカーミン(3B、6B等)、パラブラウン等のアゾ顔料;銅フ
タロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン顔料;フラバントロンイエロー
、ジブロモアントロンオレンジ、ペリレンレッド、キナクリドンレッド、ジオキサジンバ
イオレット等の縮合多環系顔料;等が挙げられる。
【0084】
また、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノ
リンイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、
ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、デュポンオイルレッド、リソールレッド、
ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリ
ンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、フ
タロシアニングリーン、マラカイトグリーンオキサレート、パラブラウンなどの種々の顔
料;アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン
系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジゴ系、チオインジゴ系、フタロ
シアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメ
タン系、チアゾール系、キサンテン系などの各種染料;などが挙げられる。これらの着色
剤に透明度を低下させない程度にカーボンブラック等の黒色顔料、染料を混合してもよい
。また、分散染料、油溶性染料等も挙げられる。
【0085】
着色剤分散に於ける分散媒体は、水系が好ましく、水、純水、イオン交換水が用いられ
る。分散剤としては界面活性剤が用いられる。本発明のトナーに用いられる着色剤分散液
の作製は、例えばボールミル、サンドミル、アトライター等のメディア式分散機、ナノマ
イザー、マイクロフルイダイザー、アルティマイザー、ゴーリン等の高圧型分散機、など
の公知の分散方法を用いて、記述したような粒径、含有量を満たすことができるのであれ
ば、いかなる方法・条件により作製されるものであってもよい。
<その他の成分>
本発明の静電荷現像用トナーに用いられ得るその他の成分としては、特に制限はなく、
目的に応じて適宜選択でき、例えば、無機粒子、有機粒子、帯電制御剤、離型剤等の公知
の各種添加剤等が挙げられる。
【0086】
上記無機粒子は、一般にトナーの流動性を向上させる目的で使用される。該無機粒子と
しては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシ
ウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、ケイ砂、クレー、雲母
、ケイ灰石、ケイソウ土、塩化セリウム、ベンガラ、酸化クロム、酸化セリウム、三酸化
アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等の粒子が
挙げられる。これらの中でも、シリカ粒子が好ましく、疎水化処理されたシリカ粒子が特
に好ましい。
【0087】
無機粒子の平均1次粒子径(数平均粒子径)としては、1〜1000nmの範囲が好ま
しく、その添加量(外添)としては、トナー100重量部に対して、0.01〜20重量
部の範囲が好ましい。
【0088】
有機粒子は、一般にクリーニング性や転写性、時には帯電性を向上させる目的で使用さ
れる。前記有機粒子としては、例えば、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリ
フッ化ビニリデン、ポリスチレン−アクリル共重合体等の粒子が挙げられる。
【0089】
帯電制御剤は、一般に帯電性を向上させる目的で使用される。帯電制御剤としては、例
えば、サリチル酸金属塩、含金属アゾ化合物、ニグロシンや4級アンモニウム塩等が挙げ
られる。
<トナーの特性>
本実施の形態のトナーの体積平均粒子径は、1〜12μmが好ましく、3〜9μmがよ
り好ましく、3〜8μmがより好ましい。また、本実施の形態のトナーの数平均粒子径は
、1〜10μmが好ましく、2〜8μmがより好ましい。粒子径が小さすぎると製造性が
不安定になり、帯電性が不十分になり、現像性が低下することがあり、大きすぎると画像
の解像性が低下する。
[現像剤]
次に、本発明の静電潜像現像用現像剤(以下「現像剤」ともいう)について説明する。
【0090】
本発明の現像剤は、上記本発明のトナーを含有する以外は特に制限はなく、目的に応じ
て適宜の成分組成をとることができる。本発明の現像剤は、前記トナーを、単独で用いる
と一成分系の現像剤となり、また、トナーとキャリアとを組み合わせて用いると二成分系
の現像剤となる。
【0091】
キャリアとしては、特に制限はなく、それ自体公知のキャリアが挙げられ、例えば、特
開昭62−39879号公報、特開昭56−11461号公報等に記載された樹脂被覆キ
ャリア等の公知のキャリアが挙げられる。
【0092】
キャリアの具体例としては、以下の樹脂被覆キャリアが挙げられる。該キャリアの核体
粒子としては、通常の鉄粉、フェライト、マグネタイト造型物などが挙げられ、その体積
平均粒径は、30〜200μm程度の範囲である。
【0093】
また、樹脂被覆キャリアの被覆樹脂としては、例えば、スチレン、パラクロロスチレン
、α−メチルスチレン等のスチレン類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル
酸n−プロピル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メ
チル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキ
シル等のα−メチレン脂肪酸モノカルボン酸類;ジメチルアミノエチルメタクリレート等
の含窒素アクリル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル類;2
−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等のビニルピリジン類;ビニルメチルエーテル、
ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケ
トン、ビニルイソプロぺニルケトン等のビニルケトン類;エチレン、プロピレン等のオレ
フィン類;弗化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン等のビニ
ル系フッ素含有モノマー;などの単独重合体、又は2種類以上のモノマーからなる共重合
体、さらに、メチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン等を含むシリコーン樹脂類、
ビスフェノール、グリコール等を含有するポリエステル類、エポキシ樹脂、ポリウレタン
樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が
挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で用いてもよいし、あるいは2種以上併用しても
よい。被覆樹脂の被覆量としては、前記核体粒子100重量部に対して0.1〜10重量
部程度の範囲が好ましく、0.5〜3.0重量部の範囲がより好ましい。
【0094】
キャリアの製造には、加熱型ニーダー、加熱型ヘンシェルミキサー、UMミキサーなど
を使用することができ、前記被覆樹脂の量によっては、加熱型流動転動床、加熱型キルン
などを使用することができる。
【0095】
また、本発明の現像剤においては、トナーとキャリアとの混合比としては特に制限はな
く、目的に応じて適宜選択することができる。実施例
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」はすべて「質量部」を意味する。

(損失弾性率の測定方法)
本発明における損失弾性率の測定方法は角周波数が6.28rad/sec、歪量0.1%、40℃で測定したものである。
【0096】
損失弾性率は、正弦波振動法により測定した動的粘弾性から求めており、動的粘弾性の測定にはレオメトリックサイエンティフィック社製ARES測定装置を用いた。動的粘弾性の測定は、錠剤に成形したトナーを、8mm径のパラレルプレートにセットし、ノーマルフォースを0とした後に6.28rad/secの振動周波数で正弦波振動を与えて実施した。測定は30℃から開始し、50℃まで継続した。測定時間インターバルは30秒
、昇温は1℃/minとし、歪量を0.1%にし、複素弾性率及び正接損失を求めた。(トナーの形状係数)
形状係数は以下の式により求めた。
【0097】
形状係数=((最大径/2)×π)×100/投影面積
ここに、最大径とは、トナー粒子の平面上への投影像を2本の平行線ではさんだとき、その平行線の間隔が最大となる粒子の幅をいう。
【0098】
また、投影面積とは、トナー粒子の平面上への投影像の面積をいう。
【0099】
本発明では、この形状係数は、走査型電子顕微鏡により2000倍にトナー粒子を拡大した写真を撮影し、ついでこの写真に基づいて「SCANNING IMAGE ANALYZER」(日本電子社製)を使用して写真画像の解析を行うことにより測定した。
【0100】
この際、100個のトナー粒子を使用して本発明の形状係数を上記算出式にて測定したものである。
(粒度および粒度分布測定方法)
本発明における粒度および粒度分布測定について述べる。本発明において測定する粒子が2μm以上の場合、測定装置としてはコールターマルチサイザーII型(ベックマンーコールター社製)を用い、電解液はISOTON―II(ベックマンーコールター社製)を使用した。
【0101】
測定法としては分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの5%水溶液2ml中に測定試料を0.5〜50mg加える。これを前記電解液100〜150ml中に添加した。
【0102】
試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1分間分散処理を行い、前記コールターカウンターTA―II型により、アパーチャー径として100μmアパーチャーを用いて2〜60μmの粒子の粒度分布を測定して体積平均分布、個数平均分布を求めた。測定する粒子数は50000であった。
【0103】
また本発明におけるトナーの粒度は以下の方法により求めた。測定された粒度分布を分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、粒度の小さいほうから体積累積分布を描き、累積50%となる体積平均粒径をD50と定義する。本発明における体積平均粒径は該D50である。
【0104】
なおキャリアの平均粒径は電子顕微鏡(FE―SEM)による写真を撮影し、100個の粒子について個々の最大径、最少径を測定し、その和を2で割ったものを個々の粒子の粒径とした。キャリアの平均粒径は個々の個々の粒子の粒径の平均である。なお樹脂被覆を行う前のコアについての平均粒径も同様の方法で測定した。
【0105】
−結晶性樹脂1の調整−
三口フラスコにデカン酸ジメチル100質量部、1,9−ノナンジオール75.0質量部、ジブチルすずオキサイド0.08質量部を窒素雰囲気下で、180℃、8時間反応させる。反応中、生成された水は系外へ除去した。その後、徐々に減圧しながら、230℃まで温度をあげて、7時間反応させた後、冷却し、結晶性樹脂を得た。この結晶性樹脂の重量平均分子量は、17000であった。
−結晶性樹脂の調整2−
結晶性樹脂の調整1における230℃まで温度をあげて、7時間反応させた反応条件を230℃、5時間に変更した以外は、結晶性樹脂の調整1と同様に結晶性樹脂2の調整を作製した。この結晶性樹脂2の重量平均分子量は、14000であった。
−結晶性樹脂の調整3−
結晶性樹脂の調整1における230℃まで温度をあげて、7時間反応させた反応条件を210℃、4時間に変更した以外は、結晶性樹脂の調整1と同様に結晶性樹脂3の調整を作製した。この結晶性樹脂3の重量平均分子量は、10000であった。
−結晶性樹脂の調整4−
結晶性樹脂の調整1における230℃まで温度をあげて、7時間反応させた反応条件を240℃、7時間に変更した以外は、結晶性樹脂の調整1と同様に結晶性樹脂4の調整を作製した。この結晶性樹脂4の重量平均分子量は、19000であった。
−結晶性樹脂の調整5−
結晶性樹脂の調整1における230℃まで温度をあげて、7時間反応させた反応条件を250℃、8時間に変更した以外は、結晶性樹脂の調整1と同様に結晶性樹脂5の調整を作製した。この結晶性樹脂5の重量平均分子量は、25000であった。
【0106】
−非結晶性樹脂の作製−
三口フラスコにテレフタル酸ジメチル82質量部、イソフタル酸ジメチル82質量部、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物79質量部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物257質量部、ジブチルすずオキサイド0.23質量部を窒素雰囲気下で、180℃、3時間反応させる。反応中、生成された水は系外へ除去した。その後、徐々に減圧しながら、240℃まで温度をあげて、2時間反応させた後、冷却し、非結晶性樹脂を得た。この非結晶性樹脂の重量平均分子量は、16500であった。
【0107】
−結晶性/非結晶性混合樹脂分散液1の作製−
三口フラスコに、上記の結晶性樹脂を5質量部、上記の非晶性樹脂を95質量部、メチルエチルケトン50質量部、イソプロピルアルコール15質量部を加えて攪拌させながら、60℃に加熱して、樹脂を溶解させた後、10%アンモニア水溶液25質量部を加える。さらにイオン交換水400質量部を徐々に加えて、転相乳化を行った後、脱溶媒した後、固形分濃度を25%に調整し、結晶性/非結晶性混合樹脂分散液を得た。
−結晶性/非結晶性混合樹脂分散液2の作製−
結晶性樹脂1を結晶性樹脂2に変更する以外は結晶性/非結晶性混合樹脂分散液1の作製と同じ方法で結晶性/非結晶性混合樹脂分散液2を作製した。
−結晶性/非結晶性混合樹脂分散液3の作製−
結晶性樹脂1を結晶性樹脂3に変更する以外は結晶性/非結晶性混合樹脂分散液1の作製と同じ方法で結晶性/非結晶性混合樹脂分散液3を作製した。
−結晶性/非結晶性混合樹脂分散液4の作製−
結晶性樹脂1を結晶性樹脂4に変更する以外は結晶性/非結晶性混合樹脂分散液1の作製と同じ方法で結晶性/非結晶性混合樹脂分散液4を作製した。
−結晶性/非結晶性混合樹脂分散液5の作製−
結晶性樹脂1を結晶性樹脂5に変更する以外は結晶性/非結晶性混合樹脂分散液1の作製と同じ方法で結晶性/非結晶性混合樹脂分散液5を作製した。
【0108】
−離型剤分散液の調製−
・パラフィンワックス(日本精蝋(株)性:HNP9,融点77℃):60質量部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株):ネオゲンRK):4質量部
・イオン交換水:200質量部
以上の成分を混合した溶液を120℃に加熱して、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、マントンゴーリン高圧ホモジナイザー(ゴーリン社)で分散処理し、体積平均粒径が250nmである離型剤を分散させてなる離型剤分散液を調製した。なお、この分散液の離型剤濃度が20質量%となるように水分量を調整した。
−着色剤分散液の調製−
・シアン顔料(銅フタロシアニンB15:3、大日精化社製):50質量部
・非イオン性界面活性剤ノニポール400(花王社製):5質量部
・イオン交換水:200質量部
以上の成分を混合溶解し、高圧衝撃式分散機アルティマイザー((株)スギノマシン製、HJP30006)を用いて約1時間分散し、水分量を調整して、着色剤粒子分散液を得た。
−トナー母粒子1の製造−
・上記の結晶性/非結晶性混合樹脂分散液1:720質量部
・上記の着色剤分散液:50質量部
・上記の離型剤分散液:70質量部
・カチオン界面活性剤・(花王(株)製:サニゾールB50):1.5質量部
以上の成分を丸型ステンレス製フラスコ中に収容し、0.1規定の硫酸を添加してpHを3.8に調整した後、凝集剤としてポリ塩化アルミニウムの濃度が10重量%の硝酸水溶液30質量部を添加した。
【0109】
その後にホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて30℃において分散した後、加熱用オイルバス中で40℃まで加熱した。得られたコア凝集粒子の体積平均粒径を測定すると、5.2μmであった。
【0110】
この凝集粒子分散液を40℃で30分間保持した後、このコア凝集粒子が形成された分散液中に、非結晶性樹脂分散液を緩やかに160質量部追加し1時間保持した。得られた付着樹脂凝集粒子の体積平均粒径は6.2μmであった。0.1規定の硝酸を添加してpHを7.0に調整した後、攪拌を継続しながら95℃まで加熱し、5時間保持した。
【0111】
その後、20℃/minの速度で20℃まで冷却し、これをろ過し、イオン交換水で洗浄した後、真空乾燥機を用いて乾燥させることによりトナー母粒子を得た。得られたトナー母粒子1の体積平均粒径は6.1μmであった。
−トナー母粒子2の製造−
トナー母粒子1の製造において結晶性/非結晶性混合樹脂分散液1を結晶性/非結晶性混合樹脂分散液2に変更した以外はトナー母粒子1の製造と同様の方法でトナー母粒子2を得た。得られたトナー母粒子2の体積平均粒径は6.3μmであった。
−トナー母粒子3の製造−
トナー母粒子1の製造において結晶性/非結晶性混合樹脂分散液1を結晶性/非結晶性混合樹脂分散液3に変更した以外はトナー母粒子1の製造と同様の方法でトナー母粒子3を得た。得られたトナー母粒子3の体積平均粒径は6.4μmであった。
−トナー母粒子4の製造−
トナー母粒子1の製造において結晶性/非結晶性混合樹脂分散液1を結晶性/非結晶性混合樹脂分散液4に変更した以外はトナー母粒子1の製造と同様の方法でトナー母粒子4を得た。得られたトナー母粒子4の体積平均粒径は5.9μmであった。
−トナー母粒子5の製造−
トナー母粒子1の製造において結晶性/非結晶性混合樹脂分散液1を結晶性/非結晶性混合樹脂分散液5に変更した以外はトナー母粒子1の製造と同様の方法でトナー母粒子5を得た。得られたトナー母粒子5の体積平均粒径は5.8μmであった。
−キャリヤの製造−
・フェライト粒子(体積平均粒径:50μm):100質量部
・トルエン:14質量部
・スチレン−メチルメタクリレート共重合体(成分比:スチレン/メチルメタクリレート=90/10、重量平均分子量Mw=80000):2質量部
・カーボンブラック(R330:キャボット社製):0.2質量部
まず、フェライト粒子を除く上記成分を10分間スターラーで撹拌させて、分散した被覆液を調製し、次に、この被覆液とフェライト粒子とを真空脱気型ニーダーに入れて、60℃において30分撹拌した後、さらに加温しながら減圧して脱気し、乾燥させることによりキャリヤを得た。
−現像剤の作製−
上記のトナー母粒子1〜5について、外添剤として市販のヒュームドシリカRX50(日本アエロジル製)をおのおののトナー母粒子100質量部に対して1.2質量部添加し、ヘンシェルミキサーで混合して静電荷像現像用トナー1〜5を得た。ついで、このトナー8質量部と上記キャリア100質量部とを混合して二成分現像剤を調整した。
【0112】
以上が、この画像形成装置1で採用されているトナーの製造方法、およびそのトナーを有する二成分現像剤の製造方法についての説明である。表1、表2、および表3に上記のトナー1〜5の結果として、40℃における損失弾性率、トナー中の結晶性樹脂の比率、トナーの形状係数を示す。
【0113】
以下では、図1で説明したクリーニング方式を採用し、画質の低下を回避するのに適した特性を備えたトナーを用いることにより、画質が低下しにくい良好な画像形成が行われることを具体的な実験データで検証する。
[実験1]
この実験では、良好な画像形成を行う上で最適なトナーの損失弾性率について検証する。この実験では、トナーの載り量が0.3g/mで画像(10cm×10cm)を作製し、その部分の画像を、温度28℃、湿度85%の高温高湿度下で1万枚出力し、さらに温度10℃、湿度15%の低温低湿度下で1万枚出力するという連続出力テストを行って、光沢ムラ、トナーフィルミングについて目視にて評価した。
【0114】
上記の連続出力テストを、下記の画像形成装置によって行った。
(実施例1−1)
上述した静電荷像現像用トナー1を用いて作製した現像剤を採用し、図1に示す画像形成装置1と同様の構成を有する画像形成装置にて上記の連続出力テストを行った。
(実施例1−2)
上述した静電荷像現像用トナー2を用いて作製した現像剤を採用し、図1に示す画像形成装置1と同様の構成を有する画像形成装置にて上記の連続出力テストを行った。
(実施例1−3)
上述した静電荷像現像用トナー4を用いて作製した現像剤を採用し、図1に示す画像形成装置1と同様の構成を有する画像形成装置にて上記の連続出力テストを行った。
(比較例1−1)
上述した静電荷像現像用トナー3を用いて作製した現像剤を採用し、図1に示す画像形成装置1と同様の構成を有する画像形成装置にて上記の連続出力テストを行った。
(比較例1−2)
上述した静電荷像現像用トナー5を用いて作製した現像剤を採用し、図1に示す画像形成装置1と同様の構成を有する画像形成装置にて上記の連続出力テストを行った。
【0115】
上記の実施例1−1〜実施例1−3、比較例1−1、比較例1−2それぞれについて、連続出力後の中間転写ベルト上のトナーフィルミングの有無のチェックと、上記の連続出力テスト終了時における画質においてトナーフィルミングの影響が現れているかどうかのチェックとを行った。チェック結果を以下のカテゴリーに分けて評価した。
○ : 中間転写ベルト上にトナーフィルミングが存在せず、画質も良好
△ : 中間転写ベルト上にトナーフィルミングが若干見られるが画質への影響は小さい
× : 中間転写ベルト上にトナーフィルミングが見られ、画質が劣化している
また、上記のトナーフィルミングのチェックとともに、上記の連続出力テスト終了時において、用紙の両面に出力された画像に光沢ムラが発生しているかをチェックした。この光沢ムラについては、以下のカテゴリーに分けて評価した。
○:濃度100%のパッチ部分を両面で比較しても、光沢ムラが目視で認識できない
×:濃度100%のパッチ部分を両面で比較すると、光沢ムラが目視で目視で認識できる
下記表1に、実施例1−1〜実施例1−3、比較例1−1、比較例1−2の結果を示す。
【0116】
【表1】

【0117】
表1からわかるように、40℃におけるトナーの損失弾性率が、1×10[Pa]という一番小さい値である比較例1−1、および40℃におけるトナーの損失弾性率が、9×10[Pa]という一番大きい値である比較例1−2では、光沢ムラが発生している(評価は×)。一方、40℃におけるトナーの損失弾性率が2×10[Pa]以上7×10[Pa]以下の範囲に属する実施例1−1〜実施例1−3では、光沢ムラが見られない(評価は○)。
【0118】
損失弾性率が小さすぎると、用紙上の温度が高い部分でのトナーの融解が他の部分より進みすぎて、形成された画像上に光沢のムラが発生する。また、損失弾性率が大きすぎると、今度は用紙上の温度が低い部分でのトナーの融解が遅れやすく、やはり形成された画像上に光沢のムラが発生する。特に、両面出力の場合には、定着の際の加熱処理の前後で記録媒体の温度が大きく異なるため、光沢ムラが発生しやすい。表4の結果はこのことを反映しており、実施例1−1〜実施例1−3のように、40℃における損失弾性率が2×10[Pa]以上7×10[Pa]以下の範囲内に属している低融点トナーを採用することで光沢ムラの発生が回避されるということがわかる。
[実験2]
この実験では、良好な画像形成を行う上で最適な、トナー中の結晶性樹脂の割合について検証する。
【0119】
この実験では、実験1で行われたのと同じ連続出力テストを、下記の画像形成装置によって行う。
(実施例2−1)
上述したトナーの製造方法の「結晶性/非結晶性混合樹脂分散液1の作製」の過程において結晶性樹脂1と非結晶性樹脂の質量部の比率を5:95から8:92に変更する以外は、トナー母粒子1と同様の方法でトナー母粒子を得、二成分現像剤を得た。図1に示す画像形成装置1と同様の画像形成装置と同様の構成を有する画像形成装置にて上記の連続出力テストを行った。
(比較例2−1)
上述したトナーの製造方法の「結晶性/非結晶性混合樹脂分散液1の作製」の過程において結晶性樹脂1と非結晶性樹脂の質量部の比率を5:95から1:99に変更する以外は、トナー母粒子1と同様の方法でトナー母粒子を得、ニ成分現像剤を得た。図1に示す画像形成装置1と同様の画像形成装置と同様の構成を有する画像形成装置にて上記の連続出力テストを行った。
【0120】
実施例2−1、および比較例2−1それぞれについて、実験1と同様の評価を行った。下記表2に、実施例2−1、および比較例2−1の結果を示す。
【0121】
【表2】

【0122】
結晶性樹脂の割合が1%の比較例2−1と、結晶性樹脂の割合が5%以上の実施例2−1および実施例1−1とを比較すると、比較例2−1では、中間転写ベルト上にトナーフィルミングが見られ、画質が劣化している(評価は×)のに対し、実施例2−1および実施例1−1では、中間転写ベルト上にトナーフィルミングが存在せず、画質も良好(評価は○)という結果が得られている。表2の結果から、比較例2−1のように結晶性樹脂の割合が低いと、トナー中に電荷の注入が充分でなくクリーニング性が低いということがわかり、実施例2−1および実施例1−1のように、結晶性樹脂の割合が5%以上のトナーを用いることで、クリーニング性が向上してトナーのフィルミング化が回避されるということがわかる。
[実験3]
この実験では、良好な画像形成を行う上で最適な、トナー形状係数について検証する。
【0123】
この実験では、実験1で行われたのと同じ連続出力テストを、下記の画像形成装置によって行う。
(実施例3−1)
上述したトナーの製造方法の「トナー母粒子1の製造」の過程において、付着樹脂凝集粒子に硝酸を添加してpHを6にし、加熱した後の保持時間を5時間から7時間に増加させることにより、トナー形状係数の平均値を108に調整したトナーを採用した以外は、図1に示す画像形成装置1と同様の画像形成装置と同様の構成を有する画像形成装置にて上記の連続出力テストを行った。
(実施例3−2)
上述したトナーの製造方法の「トナー母粒子の製造」の過程において、付着樹脂凝集粒子に硝酸を添加して加熱した後の保持時間を2時間に減少させることにより、トナー形状係数の平均値を130に調整したトナーを採用した以外は、図1に示す画像形成装置1と同様の画像形成装置と同様の構成を有する画像形成装置にて上記の連続出力テストを行った。
(実施例3−3)
上述したトナーの製造方法の「トナー母粒子の製造」の過程において、付着樹脂凝集粒子に硝酸を添加して加熱した後の保持時間を1.5時間に減少させることにより、トナー形状係数の平均値を150に調整したトナーを採用した以外は、図1に示す画像形成装置1と同様の画像形成装置と同様の構成を有する画像形成装置にて上記の連続出力テストを行った。
【0124】
実施例3−1、実施例3−2および実施例3−3それぞれについて、実験1と同様の評価を行った。下記表3に、実施例3−1、実施例3−2および実施例3−3の結果を示す。
【0125】
【表3】

【0126】
トナー形状係数の平均値が150の実施例3−3と、トナー形状係数の平均値が130以下の実施例3−1および実施例3−2とを比較すると、実施例3−3では、中間転写ベルト上にトナーフィルミングが若干見られる(評価は△)のに対し、実施例3−1および実施例3−2では、中間転写ベルト上にトナーフィルミングが存在していない(評価は○)。トナーの形状が球形に近い(トナー形状係数が100に近い)ほど、トナー表面の帯電分布が一様となってトナーの極性が安定しやすく、静電的な力を利用したクリーニング方式には適している。表3の結果から、トナー形状係数の平均値が100以上130以下であると、充分なクリーニング性が発揮されるということがわかる。
[実験4]
以上の実験1〜実験3では、良好な画像形成を行う上で最適なトナーの特性を検証する実験であったが、この実験4では、最適なクリーニング方式の検証、および残留トナー回収のための最適な印加電圧についての検証を行う。
【0127】
この実験では、面密度が15[g/m]で長さ300mmのトナーの帯を像保持体上に形成して像保持体から中間転写ベルト上に転写した後、2次転写せずに中間転写ベルトのクリーニングを行う。クリーニング後、カラーの両面画像を出力する。また、このようなトナー帯除去後の画像出力に加え、実験1で行われたのと同じ連続出力テストも行う。
【0128】
上記のトナー帯除去後の画像出力、および連続出力テストを下記の画像形成装置によって行う。
(実施例4−1)
中間転写ベルト上の残留トナーを帯電するベルト用ロールブラシに対して0.25[kV]の電圧が印加される点を除けば、図1に示す画像形成装置1と同様の画像形成装置。
(実施例4−2)
中間転写ベルト上の残留トナーを帯電するベルト用ロールブラシに対して0.50[kV]の電圧が印加される、図1に示す画像形成装置1と同様の画像形成装置。
(実施例4−3)
中間転写ベルト上の残留トナーを帯電するベルト用ロールブラシに対して3.00[kV]の電圧が印加される、図1に示す画像形成装置1と同様の画像形成装置。
(実施例4−4)
中間転写ベルト上の残留トナーを帯電するベルト用ロールブラシに対して4.00[kV]の電圧が印加される点を除けば、図1に示す画像形成装置1と同様の画像形成装置。
(比較例4−1)
残留トナーの帯電は行わず、中間転写ベルトのクリーニング時に中間転写ベルトと圧接するクリーニングブレードにより中間転写ベルトのクリーニングを行う点を除けば、図1に示す画像形成装置1と同様の画像形成装置。
【0129】
実施例4−1〜実施例4−4、および比較例4−1それぞれについて、上述のトナー帯除去後の画像出力後のクリーニング性を、出力された画像に基づきチェックする。クリーニング性のチェック結果は、以下のカテゴリーに分けて評価する。
○ : 出力画像において画質欠陥は存在していない
× : 出力画像において、白スジや色スジといった画質欠陥が見られる
また、実施例4−1〜実施例4−4、および比較例4−1それぞれについて、実験1と同様に、連続出力テスト終了時のトナーフィルミングや光沢ムラについての評価を行い、さらに連続出力テスト後の中間転写ベルトの磨耗の程度をチェックする。磨耗の程度は、以下のカテゴリーに分けて評価する。
○ : 中間転写ベルト表面に目立った磨耗はなく、連続出力テスト終了時の画質も良好
× : 中間転写ベルト表面に磨耗が目立ち、連続出力テスト終了時の画質低下が発生
下記表4に、実施例4−1〜実施例4−4、および比較例4−1の結果を示す。
【0130】
【表4】

【0131】
表4からわかるように、ブレード方式により中間転写ベルトのクリーニングを行う比較例1と、ブラシ方式により残留トナーの帯電を行って静電的な力で中間転写ベルトのクリーニングを行う実施例4−1〜実施例4−4とを比較すると、トナーフィルミングについては、比較例1では、中間転写ベルト上にトナーフィルミングが見られ、画質が劣化している(評価は×)のに対し、実施例4−1〜実施例4−4では、評価の最も低い実施例4−1であっても、中間転写ベルト上にトナーフィルミングが若干見られるが画質への影響は小さい(評価は△)という結果が得られている。このことから、中間転写ベルトのクリーニング方式としては、クリーニングブレードのような強い圧接力を必要としない静電的な力で中間転写ベルトのクリーニングを行うクリーニング方式を採用することで、トナーフィルミングの発生が回避されることがわかる。さらに、クリーニング性については、比較例1では、出力画像において、白スジや色スジといった画質欠陥が見られる(評価は×)のに対し、実施例4−1〜実施例4−4では、出力画像において画質欠陥は存在していない(評価は○)。一般に低融点トナーはつぶれやすいために除去しにくく、クリーニングブレードを用いたクリーニング方式では、ブレードの隙間をすり抜けてしまう残留トナーもあり、こうした残留トナーは、画像中にスジ状の画質欠陥をもたらす。上記の比較例4−1の結果はこのことを反映しており、低融点トナーを用いた画像形成装置では、実施例4−1〜実施例4−4のように、残留トナーの帯電を行って静電的な力で中間転写ベルトのクリーニングを行う方式が望ましいということがわかる。
【0132】
実施例4−1〜実施例4−4の中で比較を行ってみると、ベルト用ロールブラシに対して印加される電圧が0.25[kV]と一番小さい実施例4−1では、トナーフィルミングの結果において、中間転写ベルト上にトナーフィルミングが若干見られるが画質への影響は小さい(評価は△)という結果であるのに対し、印加電圧が0.50[kV]以上の実施例4−2〜実施例4−4では、中間転写ベルト上にトナーフィルミングが存在せず、画質も良好(評価は○)という結果が得られている。このことから、ベルト用ロールブラシに対して印加される電圧が0.25[kV]では、充分に残留トナーが除去できずにフィルミング化してしまうことを反映しており、0.50[kV]以上の電圧が必要であることがわかる。一方、ベルト用ロールブラシに対して印加される電圧が4.00[kV]と一番大きい実施例4−4では、磨耗度の結果において、中間転写ベルト表面に磨耗が目立ち、連続出力テスト終了時の画質低下が発生(評価は×)している。一方、印加電圧が3.00[kV]以下の実施例4−1〜実施例4−3では、中間転写ベルト表面に目立った磨耗はなく、連続出力テスト終了時の画質も良好(評価は○)という結果が得られている。一般に、電圧が大きすぎると、ベルト用ロールブラシ周囲で放電が起こり、この影響で中間転写ベルト表面が酸化等により劣化することがある。上記の実施例4−4の結果はこのことを反映しており、磨耗度の観点からは、印加電圧が4.00[kV]では大きすぎることがわかる。以上の実施例4−1〜実施例4−4の中での、トナーフィルミングの結果および磨耗度の結果を考慮すると、印加電圧が0.50[kV]以上3.00[kV]以下であることが望ましいということがわかる。
【0133】
以上の実験1〜実験4の結果をまとめると、トナーの特性として、結晶性樹脂の割合が5%以上であって、40℃における損失弾性率が2×10[Pa]以上7×10[Pa]以下の範囲内にあるトナーを採用し、クリーニング方式としては、残留トナーを帯電させて除去する方式を採用することにより、トナーフィルミングの発生の回避と光沢ムラの回避とが両立することが結論される。さらに、トナーの形状係数が100以上130以下の領域内に属するトナーを採用し、残留トナーを帯電させるための印加電圧を0.50[kV]以上3.00[kV]以下とすることで高いクリーニング性が実現するということがわかる。
【0134】
以上説明してきた画像形成装置は、ロータリー方式のフルカラー画像形成装置であったが、本発明の画像形成装置は、中間転写ベルトを用いた、タンデム方式のフルカラー画像形成装置やモノクロの画像形成装置に応用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】本発明の画像形成装置の一実施形態に相当するフルカラー画像形成装置の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0136】
1…画像形成装置、
4…CPU、
10…像保持体、
2…中間転写ベルト、
20…帯電器、
300…像保持体用ロールブラシ、
301,811…毛、
302…トナー回収電圧印加部、
31…クリーニングブレード、
32…露光器、
40a…1次転写ロール、
40b…2次転写ロール、
41a…1次転写バイアス電圧印加部、
41b…2次転写バイアス電圧印加部、
50…現像ロータリー、
51,52,53,54…現像器、
60a,60b,60c,60d…支持ロール、
6…トレイ、
61…給紙ロール、
62…定着器、
81…ベルト用ロールブラシ、
82…トナー帯電電圧印加部、
100…クリーニング装置、
101…筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の現像位置と所定の第1転写位置とをこの順で経る経路を、表面に画像を保持して移動する、該現像位置よりも該経路の上流で静電潜像が形成される像保持体と、
前記像保持体上の静電潜像を前記現像位置で、結晶性樹脂を5重量%以上含有した、40℃における損失弾性率が2×10Pa以上7×10Pa以下の範囲内に属している、所定極性の電荷を有するトナーを含む現像剤で現像して現像像を形成する現像部と、
前記第1転写位置と所定の第2転写位置とを経る循環経路を移動する中間転写体と、
前記第1転写位置で前記現像像を前記中間転写体に電気的作用で転写する第1転写部と、
前記像保持体の前記経路における前記第1転写位置よりも下流側で、該像保持体の表面からトナーを除去するクリーニング部と、
前記第2転写位置で前記現像像を前記中間転写体から被転写体に転写する第2転写部と、
前記第2転写位置を経て前記第1転写位置に向かう前記中間転写体上のトナーに、前記所定極性とは逆極性の電荷を付与する電荷付与部とを備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【公開番号】特開2008−112085(P2008−112085A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−296189(P2006−296189)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】