画像形成装置
【課題】用紙の搬送経路2の分岐部に経路切り換え用のフリッパ7を上下揺動可能に設けた画像形成装置において、軽量なフリッパを自重で撓ませずに切換を行なう。
【解決手段】用紙の搬送経路を下方に切り換えるためにフリッパを上方に揺動させる際に、フリッパを下方に撓ませるフリッパの自重による力F1以上であって且つフリッパを上方に撓ませる方向に作用する力F2がフリッパに生じるように、ストッパ25によって規制された以降も力F2と反対方向に作用するソレノイド11の力F3で回動軸8を回動する。
【解決手段】用紙の搬送経路を下方に切り換えるためにフリッパを上方に揺動させる際に、フリッパを下方に撓ませるフリッパの自重による力F1以上であって且つフリッパを上方に撓ませる方向に作用する力F2がフリッパに生じるように、ストッパ25によって規制された以降も力F2と反対方向に作用するソレノイド11の力F3で回動軸8を回動する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙の搬送経路が上方と下方に分かれる分岐部に、用紙の搬送経路を上方又は下方に切り換えるフリッパが上下方向に揺動可能に設けられている画像形成装置に係り、特にフリッパが軽量構造であるにも係わらず自重で撓むことがなく、搬送経路の切換を問題なく行なえるようにした画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1、2は、用紙の搬送経路が分岐している部分に経路の切り換え手段を設け、用紙の搬送方向を切り換えることによって用紙の両面に印刷を施すことができる画像形成装置に関するものである。また、図6は、このように分岐した搬送経路の搬送方向を切り換え手段で切り換えて両面印刷を行なう画像形成装置として、本願発明者が先に案出したものである。図6に示すように、本願発明者の先の提案に係る当該画像形成装置は、複数の給紙トレイ1と、各給紙トレイ1から送り出された用紙を搬送する搬送経路2と、搬送されてきた用紙に画像を形成するインクジェットヘッド3と、画像形成された用紙を外に排出する排紙ローラ4と、排紙ローラ4で外に排出された用紙を積載する排紙トレイ5を有している。
【0003】
そして、搬送経路2は、図7に拡大して示すように、インクジェットヘッド3の下流において、排紙ローラ4に向かう上方の片面印刷用の搬送経路2aと、下方の両面印刷用の搬送経路2bとに分岐部6で分かれており、当該分岐部6には経路を切り換えるフリッパ7が水平な回動軸8を介して上下揺動可能に設けられている。
【0004】
インクジェットヘッド3で画像形成された用紙は画像面を下に向けた姿勢で分岐部6に送られ、図7に示すようにフリッパ7が相対的に下方の位置に設定れている場合は、用紙は上方の片面印刷用の搬送経路2aから排紙ローラ4に送られ、画像を下に向けた姿勢で排紙トレイ5に排出される。
【0005】
図8に示すようにフリッパ7が相対的に上方の位置に設定されている場合は、用紙は下方の両面印刷用の搬送経路2bから、画像面を下に向けた姿勢で図6に示す反転部9に送り込まれる。用紙は、反転部9で逆方向に送り出され、画像面を下にしてインクジェットヘッド3の上流の搬送経路2に戻り、画像形成されていない上面にインクジェットヘッド3で画像形成される。このようにして両面に画像が形成された用紙は、さらに搬送経路2で搬送され、図7に示すようにフリッパ7が下方の位置に設定された分岐部6で上方の搬送経路2aに入って図6に示す排紙トレイ5に排出される。
【0006】
図9は、フリッパ7及びその駆動機構を示す斜視図である。フリッパ7の水平な回動軸8は、筐体のフレーム等の側板間に上下方向の所定角度について揺動自在となるように軸支されている。この回動軸8の軸端部の近傍には、回動軸8と直交する水平な方向に駆動軸10を向けて駆動手段としてのソレノイド11が設置されている。そして、回動軸8の軸端部の周面には連結用の第1アーム部材12が取り付けられており、図7に示すようにフリッパ7が相対的に下方の位置にあって上方の搬送経路2aを開いている状態において、引き込み作動するソレノイド11の駆動軸10が第1アーム部材12に長孔を介して連結されている。また、第1アーム部材12とは反対側の軸端部の周面には第2アーム部材13が取り付けられており、図9に示すようにソレノイド11による引き込み方向と逆方向に回動軸8を回転させるように付勢手段としてのばね14が取り付けられている。
【0007】
従って、図7及び図9に示すように、ソレノイド11が作動していない状態では、ばね14の付勢力によってフリッパ7は相対的に下方の位置に設定されて上方の搬送経路2aを開いた状態となる。また、ソレノイド11が作動すると、ばね14の付勢力に抗して回動軸8が回動し、図8に示すようにフリッパ7は相対的に上方の位置に設定されて下方の搬送経路2bを開いた状態となる。
【特許文献1】特開平8−295445号公報
【特許文献1】特開2006−201658号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述した画像形成装置のように、近年の画像形成装置は、その画像形成原理を問わず、小型化のために装置内部で用紙を搬送する搬送経路が密集して配置される傾向にあり、また画像形成速度の高速化のために搬送経路を切り換える前記フリッパは、小型で瞬間的に作動する必要があることから、できる限り軽く小さくして慣性を小さくすることが求められている。具体的には、フリッパを樹脂成形により、できるだけ薄い肉厚で製作している。しかしながら、その弊害としてフリッパの強度が不足し、自重で反りや撓みが発生してしまい、搬送経路を塞いでしまうという不都合が発生することがあった。
【0009】
図10は、背景技術において説明した従来の画像形成装置のフリッパ7を用紙の搬送方向に平行な視線で見た図であり、図8に示すようにフリッパ7が相対的に上方の位置に設定された時に下方の搬送経路2bが開放されている理想的な状態を示すものである。
【0010】
ところが、実際には、従来の画像形成装置ではフリッパ7の強度が不十分であるために、図11及び図12中の破線にても示すように、フリッパ7が自重によって下方に撓んでしまい、開放すべき下方の搬送経路2bが閉止されてしまうという不都合が生じることがあった。フリッパ7の自重による撓みδは回動軸8の軸方向の中央において最大となり、その値はδ=(5WL4 )/(384EI)となる(Eはヤング率、Iは断面二次モーメント、Wは当分布荷重、Lは回動軸8を両端で軸支する側板の間隔、WLは自重である。)。
【0011】
以上のような課題を解決するために、フリッパをより強度の高い樹脂材料で構成したり、樹脂材料にガラスファイバーを混ぜることも考えられるが、コストアップになってしまうために現実的には採用することができない。
【0012】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、用紙の搬送経路が上方と下方に分かれる分岐部に、用紙の搬送経路を上方又は下方に切り換えるフリッパが上下方向に揺動可能に設けられている画像形成装置において、フリッパが軽量構造であるにも係わらず自重で撓むことがなく、搬送経路の切換を問題なく行なえるようすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載された画像形成装置は、
用紙の搬送経路が上方と下方に分かれる分岐部に、用紙の搬送経路を上方又は下方に切り換える可撓性のフリッパが回動軸を中心として上下方向に揺動可能となるように設けられた画像形成装置において、
用紙の前記搬送経路を下方に切り換えるために前記フリッパが上方に揺動する回転方向に前記回動軸を回転させる際に、前記フリッパを下方に撓ませる前記フリッパの自重による力F1以上であって且つ前記フリッパを上方に撓ませる方向に作用する力F2が前記フリッパに生じるように、前記力F2と反対方向に作用する力F3を前記回動軸に作用させるフリッパの駆動手段を設けたことを特徴としている。
【0014】
請求項2に記載された画像形成装置は、請求項1記載の画像形成装置において、
前記駆動手段が力F4で前記回動軸を回動させることにより前記フリッパを上方に揺動させて前記搬送経路を下方に切り換えた際に、前記回動軸を介して前記フリッパに前記力F3と逆方向の力F2が作用し、前記力F1による前記フリッパの下方への撓みが解消されて下方の前記搬送経路が用紙が通過できるように開放されることを特徴としている。
【0015】
請求項3に記載された画像形成装置は、
用紙の搬送経路が上方と下方に分かれる分岐部に、用紙の搬送経路を上方又は下方に切り換える可撓性のフリッパが回動軸を中心として上下方向に揺動可能となるように設けられた画像形成装置において、
上下方向に揺動することにより前記回動軸を回転させるように前記回動軸に取り付けられたアーム部材と、前記アーム部材に連動連結されて前記アーム部材を下方に引くことにより前記フリッパが上方に揺動する回転方向に前記回動軸を回転させて前記搬送経路を下方に切り換える駆動手段と、前記アーム部材に連結されて、前記駆動手段が作動しない場合に、前記アーム部材を上方に付勢することにより前記フリッパが下方に揺動する回転方向に前記回動軸を回転させて前記搬送経路を上方に切り換える付勢手段と、前記駆動手段が作動して前記フリッパが上方に揺動した場合に前記回動軸の回動を制限する支点部とを具備し、
用紙の前記搬送経路を下方に切り換えるために前記フリッパが上方に揺動する回転方向に前記回動軸を回転させる際に、前記フリッパを下方に撓ませる前記フリッパの自重による力F1以上であって且つ前記フリッパを上方に撓ませる方向に作用する力F2が前記フリッパに生じるように、前記駆動手段が、前記力F2と反対方向に作用する力F3を前記回動軸に作用させることを特徴としている。
【0016】
請求項4に記載された画像形成装置は、請求項3記載の画像形成装置において、
前記駆動手段が力F4で前記アーム部材を回動させることにより前記フリッパを上方に揺動させて前記搬送経路を下方に切り換えた際に、前記アーム部材又は前記フリッパが前記支点部に当接して移動を制限されることにより前記回動軸を介して前記フリッパに前記力F3と逆方向の力F2が作用し、前記力F1による前記フリッパの下方への撓みが解消されて下方の前記搬送経路が用紙が通過できるように開放されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載された画像形成装置によれば、用紙の搬送経路を下方に切り換えるためにフリッパを上方に揺動させた状態とすると、フリッパは自重による力F1によって下方に撓みが生じるはずであるが、フリッパを上方に揺動させるために回動軸に力F3を作用させると、力F3と反対の向きで力F1以上の大きさの力F2がフリッパに作用するので、フリッパが下方に撓むことはなく、又はフリッパは上方に撓んで、下方の搬送経路が塞がれる不都合は解消される。
【0018】
請求項2に記載された画像形成装置によれば、請求項1記載の画像形成装置の効果において、駆動手段が力F4で回動軸を回動させることにより、フリッパを上方に揺動させて搬送経路を下方に切り換えた際に、回動軸を介してフリッパに力F3と逆方向の上向きの力F2が作用するので、これによって力F1によるフリッパの下方への撓みが解消され、下方の搬送経路は用紙が通過できるように開放される。
【0019】
請求項3に記載された画像形成装置によれば、
用紙の搬送経路を下方に切り換えるためにフリッパを上方に揺動させた状態とすると、フリッパは自重による力F1によって下方に撓みが生じるはずであるが、フリッパを上方に揺動させるためにアーム部材を力F4で下方に引き込んで回動軸を回動させると、フリッパが上方に揺動して上方の位置に設定されるとともに、アーム部材又はフリッパが支点部に接触して移動が制限されるので、力F3の反力としてフリッパには力F3と反対方向の上向きの力F2が作用する。従ってフリッパが下方に撓むことはなく、又はフリッパは上方に撓んで、下方の搬送経路が塞がれる不都合は解消される。
【0020】
請求項4に記載された画像形成装置によれば、請求項3記載の画像形成装置の効果において、駆動手段が力F4でアーム部材を動作させることにより、フリッパを上方に揺動させて搬送経路を下方に切り換えた際に、アーム部材又はフリッパが支点部に当接して移動を制限されることにより回動軸を介してフリッパに力F3と逆方向の上向きの力F2が作用するので、力F1によるフリッパの下方への撓みが解消され、下方の搬送経路は用紙が通過できるように開放される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施するために特許出願人が出願時点で最良と思う本発明の実施の形態を図1〜図5を参照して説明する。
図1は実施形態においてフリッパ7が下方位置に設定された状態を示す斜視図であり、図2は実施形態においてフリッパ7が上方位置に設定された状態を示す斜視図であり、図3は実施形態のフリッパ7付近を用紙の搬送方向と平行な視線で見た正面図であり、図4は実施形態においてフリッパ7が上方位置に設定された状態で各部に加わる力を示す側面図であり、図5は実施形態においてフリッパ7が上方位置に設定された状態を示す側面図である。
【0022】
本例の画像形成装置は、図6を参照して説明した背景技術における画像形成装置と基本構造が同一であり、フリッパ7と駆動機構及び駆動時の力学的作用が異なるので、当該相違点を中心として説明し、その他の部分は背景技術における図示及び説明を援用して図示と説明の繰り返しを避けるものとする。
【0023】
図1は、フリッパ7及びその駆動機構を示す斜視図である。フリッパ7の水平な回動軸8は、図1には示さない筐体のフレーム等の側板20,20(図3に示す)間に上下方向の所定角度について揺動自在となるように軸支されている。
【0024】
この回動軸8の一方の軸端部の近傍には、回動軸8と直交する鉛直上方に駆動軸10を向けて駆動手段としてのソレノイド11が設置されている。そして、回動軸8の軸端部の周面には、軸方向と直交する略水平方向に沿って第1アーム部材21が取り付けられており、鉛直下方に向けて引き込み作動するソレノイド11の駆動軸10が、この第1アーム部材21に連動連結されている。図1はフリッパ7が相対的に下方の位置にあって上方の搬送経路2aを開いている状態であるが、ソレノイド11はこの状態から駆動軸10を下方に移動させることによって第1アーム部材21を下方に揺動させ、回動軸8を回動させてフリッパ7を相対的に上方の位置に設定し、下方の搬送経路2bを開いた状態とすることができる。
【0025】
この第1アーム部材21には、図1に示すようにソレノイド11による引き込み方向と逆方向である鉛直上方に向けて第1アーム部材21を付勢する付勢手段としてのばね24が取り付けられている。ばね24は、ソレノイド11が作動しない時には、第1アーム部材21を上方に揺動させることにより、回動軸8を回動させてフリッパ7を相対的に下方の位置に設定し、上方の搬送経路2aを開いた状態とすることができる。
【0026】
また、第1アーム部材21とは反対側の軸端部の周面には、第1アーム部材21と平行に第2アーム部材22が取り付けられている。この第2アーム部材22の上方近傍には、図1には示さない筐体の側板22等のフレーム類に取り付けられた支点部としてのストッパ25が、下方に向けて設けられている。ストッパ25は、図1に示すようにフリッパ7が相対的に下方の位置に設定された状態では第2アーム部材22と離れているが、図2に示すようにフリッパ7が相対的に上方の位置に設定された状態では第2アーム部材22が下側から当接する。
【0027】
このように、ソレノイド11が作動していない状態では、ばね24の付勢力によってフリッパ7は図1のように相対的に下方の位置に設定されて上方の搬送経路2aが開いた状態となる。この時、フリッパ7は下方の位置に設定されているので、フリッパ7が自重で下方に撓む空間的余裕があったとしても、このようなフリッパ7の下方への変形によって上方の搬送経路2aがフリッパ7で塞がれてしまうことはありえず、用紙の通路は確保される。
【0028】
ソレノイド11が作動した場合を図2〜図5を参照して説明する。図2〜図4で示すように、ソレノイド11は、力F4でアーム部材21を下方に引き、ばね24の上方への付勢力に抗して第1アーム部材21を下方に揺動させ、第2アーム部材22がストッパ25に下方から突き当たるまで回動軸8を所定角度回動させる。この回動軸8の回動により、フリッパ7は図2及び図5に示すように相対的に上方の位置に設定されて下方の搬送経路2bが開いた状態となる。
【0029】
図3及び図4に示すように、第2アーム部材22がストッパ25に突き当たっても、ソレノイド11は力F4で第1アーム部材21を下方に引こうとするので、回動軸8の軸端部は力F3で下方に引かれる。ここで力F3と力F4の関係は、図4に示すように、てこの原理によりF4=(L1/L2)F3となる。そして、この回転軸8に加わる力F3の反力として、フリッパ7には力F3と同じ大きさで向きが逆である上向きの力F2が生じる。この力F2は、フリッパ7を下方に撓ませるフリッパ7の自重による力F1以上であって、且つフリッパ7を上方に撓ませる方向に作用する。すなわち、フリッパ7の自重による力F1と、ソレノイド11による力F3に起因してフリッパ7に作用する力F2は、互いに逆向きであるが、力F2の方が力F1よりも大きくなるように、ソレノイド11によって力F3が生じるように設定されている。このため、フリッパ7は上方に向けて撓み、そのため図3及び図5に示すように、下方の搬送経路2bは十分に開口し、用紙が通過する隙間は十分に確保される。
【0030】
本例では、フリッパ7の自重による力F1よりも、ソレノイド11による力F3に起因してフリッパ7に作用する力F2の方が大きくなるようにソレノイド11の力F4を設定しているが、力F1と力F2は同じでもよい。その場合は、フリッパ7を上方の位置に設定した時にはフリッパ7には上下両方向ともに撓みが生じず、下方の搬送経路2bは所期の間隔で開口し、用紙が通過する隙間は確保される。
【0031】
本例では、ソレノイド11が力F4で第1アーム部材21を引き下げてフリッパ7を上方の位置に設定した場合、第2アーム部材22が下からストッパ25に突き当たることによって回動軸8に下向きの力F3が加わり、これによってフリッパ7に上向きの力F2が生じるようにした。しかしながら、ストッパ25と、これに突き当たる専用の第2アーム部材22を設けなくとも、回動軸8の回動範囲を規制して同様の作用効果を得られるようにすることはできる。例えば、搬送経路2の上壁部の一部をフリッパ7の支点部として利用し、ソレノイド11が力F4で作動してフリッパ7が上方に揺動した時、フリッパ7の先端が搬送経路2の上壁に下方から突き当たって移動が規制され、その結果として回動軸8に下向きの力F3が加わり、フリッパ7に上向きの力F2が生じるように構成することも可能である。
【0032】
本例では、用紙の搬送経路2を上方と下方に分岐させ、用紙の搬送経路2をフリッパ7で上方又は下方に切り換える理由として画像形成装置における両面印刷を例示したが、フリッパ7による搬送経路の切り換えの目的はこれに限らない。例えば、本発明は、画像形成装置において排紙トレイが上下に複数段設けられ、排紙トレイを上下に任意に切り換える場合にも利用できる。また画像形成装置の排紙トレイに排出する場合と、画像形成装置に接続した後処理用のオプション機器に用紙を排出する場合とを切り換える場合にも、本発明は利用できる。
【0033】
本例では、用紙の搬送経路2を上方と下方に分岐させ、用紙の搬送経路2をフリッパ7で上方又は下方に切り換える装置を有する画像形成装置としてインクジェット記録装置を例示したが、画像形成装置としてはインクジェット記録装置に限らず、本発明は、孔版印刷装置や電子複写装置等、その他のあらゆる画像形成原理の画像形成装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は実施形態においてフリッパが下方位置に設定された状態を示す斜視図である。
【図2】図2は実施形態においてフリッパが上方位置に設定された状態を示す斜視図である。
【図3】図3は実施形態のフリッパ付近を用紙の搬送方向と平行な視線で見た正面図である。
【図4】図4は実施形態においてフリッパが上方位置に設定された状態で各部に加わる力を示す側面図である。
【図5】図5は実施形態においてフリッパが上方位置に設定された状態を示す側面図である。
【図6】図6は両面印刷が可能な従来の画像形成装置の一構造例を示す模式的な内部構造図である。
【図7】図7は従来の画像形成装置においてフリッパが下方位置に設定された状態を示す側面図である。
【図8】図8は従来の画像形成装置においてフリッパが上方位置に設定された状態を示す側面図である。
【図9】図9は従来の画像形成装置においてフリッパが下方位置に設定された状態を示す斜視図である。
【図10】図10は従来の画像形成装置のフリッパの理想的な状態を用紙の搬送方向と平行な視線で見た正面図である。
【図11】図11は従来の画像形成装置のフリッパの実際の状態を用紙の搬送方向と平行な視線で見た正面図である。
【図12】図12は従来の画像形成装置においてフリッパが上方位置に設定されて下方への撓みが発生した状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0035】
2…搬送経路
2a…上側の搬送経路
2b…下側の搬送経路
6…搬送経路の分岐部
7…フリッパ
8…フリッパの回動軸
10…ソレノイドの駆動軸
11…駆動手段としてのソレノイド
20…側板
21…第1アーム部材
22…第2アーム部材
24…付勢手段としてのばね
25…支点部としてのストッパ
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙の搬送経路が上方と下方に分かれる分岐部に、用紙の搬送経路を上方又は下方に切り換えるフリッパが上下方向に揺動可能に設けられている画像形成装置に係り、特にフリッパが軽量構造であるにも係わらず自重で撓むことがなく、搬送経路の切換を問題なく行なえるようにした画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1、2は、用紙の搬送経路が分岐している部分に経路の切り換え手段を設け、用紙の搬送方向を切り換えることによって用紙の両面に印刷を施すことができる画像形成装置に関するものである。また、図6は、このように分岐した搬送経路の搬送方向を切り換え手段で切り換えて両面印刷を行なう画像形成装置として、本願発明者が先に案出したものである。図6に示すように、本願発明者の先の提案に係る当該画像形成装置は、複数の給紙トレイ1と、各給紙トレイ1から送り出された用紙を搬送する搬送経路2と、搬送されてきた用紙に画像を形成するインクジェットヘッド3と、画像形成された用紙を外に排出する排紙ローラ4と、排紙ローラ4で外に排出された用紙を積載する排紙トレイ5を有している。
【0003】
そして、搬送経路2は、図7に拡大して示すように、インクジェットヘッド3の下流において、排紙ローラ4に向かう上方の片面印刷用の搬送経路2aと、下方の両面印刷用の搬送経路2bとに分岐部6で分かれており、当該分岐部6には経路を切り換えるフリッパ7が水平な回動軸8を介して上下揺動可能に設けられている。
【0004】
インクジェットヘッド3で画像形成された用紙は画像面を下に向けた姿勢で分岐部6に送られ、図7に示すようにフリッパ7が相対的に下方の位置に設定れている場合は、用紙は上方の片面印刷用の搬送経路2aから排紙ローラ4に送られ、画像を下に向けた姿勢で排紙トレイ5に排出される。
【0005】
図8に示すようにフリッパ7が相対的に上方の位置に設定されている場合は、用紙は下方の両面印刷用の搬送経路2bから、画像面を下に向けた姿勢で図6に示す反転部9に送り込まれる。用紙は、反転部9で逆方向に送り出され、画像面を下にしてインクジェットヘッド3の上流の搬送経路2に戻り、画像形成されていない上面にインクジェットヘッド3で画像形成される。このようにして両面に画像が形成された用紙は、さらに搬送経路2で搬送され、図7に示すようにフリッパ7が下方の位置に設定された分岐部6で上方の搬送経路2aに入って図6に示す排紙トレイ5に排出される。
【0006】
図9は、フリッパ7及びその駆動機構を示す斜視図である。フリッパ7の水平な回動軸8は、筐体のフレーム等の側板間に上下方向の所定角度について揺動自在となるように軸支されている。この回動軸8の軸端部の近傍には、回動軸8と直交する水平な方向に駆動軸10を向けて駆動手段としてのソレノイド11が設置されている。そして、回動軸8の軸端部の周面には連結用の第1アーム部材12が取り付けられており、図7に示すようにフリッパ7が相対的に下方の位置にあって上方の搬送経路2aを開いている状態において、引き込み作動するソレノイド11の駆動軸10が第1アーム部材12に長孔を介して連結されている。また、第1アーム部材12とは反対側の軸端部の周面には第2アーム部材13が取り付けられており、図9に示すようにソレノイド11による引き込み方向と逆方向に回動軸8を回転させるように付勢手段としてのばね14が取り付けられている。
【0007】
従って、図7及び図9に示すように、ソレノイド11が作動していない状態では、ばね14の付勢力によってフリッパ7は相対的に下方の位置に設定されて上方の搬送経路2aを開いた状態となる。また、ソレノイド11が作動すると、ばね14の付勢力に抗して回動軸8が回動し、図8に示すようにフリッパ7は相対的に上方の位置に設定されて下方の搬送経路2bを開いた状態となる。
【特許文献1】特開平8−295445号公報
【特許文献1】特開2006−201658号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述した画像形成装置のように、近年の画像形成装置は、その画像形成原理を問わず、小型化のために装置内部で用紙を搬送する搬送経路が密集して配置される傾向にあり、また画像形成速度の高速化のために搬送経路を切り換える前記フリッパは、小型で瞬間的に作動する必要があることから、できる限り軽く小さくして慣性を小さくすることが求められている。具体的には、フリッパを樹脂成形により、できるだけ薄い肉厚で製作している。しかしながら、その弊害としてフリッパの強度が不足し、自重で反りや撓みが発生してしまい、搬送経路を塞いでしまうという不都合が発生することがあった。
【0009】
図10は、背景技術において説明した従来の画像形成装置のフリッパ7を用紙の搬送方向に平行な視線で見た図であり、図8に示すようにフリッパ7が相対的に上方の位置に設定された時に下方の搬送経路2bが開放されている理想的な状態を示すものである。
【0010】
ところが、実際には、従来の画像形成装置ではフリッパ7の強度が不十分であるために、図11及び図12中の破線にても示すように、フリッパ7が自重によって下方に撓んでしまい、開放すべき下方の搬送経路2bが閉止されてしまうという不都合が生じることがあった。フリッパ7の自重による撓みδは回動軸8の軸方向の中央において最大となり、その値はδ=(5WL4 )/(384EI)となる(Eはヤング率、Iは断面二次モーメント、Wは当分布荷重、Lは回動軸8を両端で軸支する側板の間隔、WLは自重である。)。
【0011】
以上のような課題を解決するために、フリッパをより強度の高い樹脂材料で構成したり、樹脂材料にガラスファイバーを混ぜることも考えられるが、コストアップになってしまうために現実的には採用することができない。
【0012】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、用紙の搬送経路が上方と下方に分かれる分岐部に、用紙の搬送経路を上方又は下方に切り換えるフリッパが上下方向に揺動可能に設けられている画像形成装置において、フリッパが軽量構造であるにも係わらず自重で撓むことがなく、搬送経路の切換を問題なく行なえるようすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載された画像形成装置は、
用紙の搬送経路が上方と下方に分かれる分岐部に、用紙の搬送経路を上方又は下方に切り換える可撓性のフリッパが回動軸を中心として上下方向に揺動可能となるように設けられた画像形成装置において、
用紙の前記搬送経路を下方に切り換えるために前記フリッパが上方に揺動する回転方向に前記回動軸を回転させる際に、前記フリッパを下方に撓ませる前記フリッパの自重による力F1以上であって且つ前記フリッパを上方に撓ませる方向に作用する力F2が前記フリッパに生じるように、前記力F2と反対方向に作用する力F3を前記回動軸に作用させるフリッパの駆動手段を設けたことを特徴としている。
【0014】
請求項2に記載された画像形成装置は、請求項1記載の画像形成装置において、
前記駆動手段が力F4で前記回動軸を回動させることにより前記フリッパを上方に揺動させて前記搬送経路を下方に切り換えた際に、前記回動軸を介して前記フリッパに前記力F3と逆方向の力F2が作用し、前記力F1による前記フリッパの下方への撓みが解消されて下方の前記搬送経路が用紙が通過できるように開放されることを特徴としている。
【0015】
請求項3に記載された画像形成装置は、
用紙の搬送経路が上方と下方に分かれる分岐部に、用紙の搬送経路を上方又は下方に切り換える可撓性のフリッパが回動軸を中心として上下方向に揺動可能となるように設けられた画像形成装置において、
上下方向に揺動することにより前記回動軸を回転させるように前記回動軸に取り付けられたアーム部材と、前記アーム部材に連動連結されて前記アーム部材を下方に引くことにより前記フリッパが上方に揺動する回転方向に前記回動軸を回転させて前記搬送経路を下方に切り換える駆動手段と、前記アーム部材に連結されて、前記駆動手段が作動しない場合に、前記アーム部材を上方に付勢することにより前記フリッパが下方に揺動する回転方向に前記回動軸を回転させて前記搬送経路を上方に切り換える付勢手段と、前記駆動手段が作動して前記フリッパが上方に揺動した場合に前記回動軸の回動を制限する支点部とを具備し、
用紙の前記搬送経路を下方に切り換えるために前記フリッパが上方に揺動する回転方向に前記回動軸を回転させる際に、前記フリッパを下方に撓ませる前記フリッパの自重による力F1以上であって且つ前記フリッパを上方に撓ませる方向に作用する力F2が前記フリッパに生じるように、前記駆動手段が、前記力F2と反対方向に作用する力F3を前記回動軸に作用させることを特徴としている。
【0016】
請求項4に記載された画像形成装置は、請求項3記載の画像形成装置において、
前記駆動手段が力F4で前記アーム部材を回動させることにより前記フリッパを上方に揺動させて前記搬送経路を下方に切り換えた際に、前記アーム部材又は前記フリッパが前記支点部に当接して移動を制限されることにより前記回動軸を介して前記フリッパに前記力F3と逆方向の力F2が作用し、前記力F1による前記フリッパの下方への撓みが解消されて下方の前記搬送経路が用紙が通過できるように開放されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載された画像形成装置によれば、用紙の搬送経路を下方に切り換えるためにフリッパを上方に揺動させた状態とすると、フリッパは自重による力F1によって下方に撓みが生じるはずであるが、フリッパを上方に揺動させるために回動軸に力F3を作用させると、力F3と反対の向きで力F1以上の大きさの力F2がフリッパに作用するので、フリッパが下方に撓むことはなく、又はフリッパは上方に撓んで、下方の搬送経路が塞がれる不都合は解消される。
【0018】
請求項2に記載された画像形成装置によれば、請求項1記載の画像形成装置の効果において、駆動手段が力F4で回動軸を回動させることにより、フリッパを上方に揺動させて搬送経路を下方に切り換えた際に、回動軸を介してフリッパに力F3と逆方向の上向きの力F2が作用するので、これによって力F1によるフリッパの下方への撓みが解消され、下方の搬送経路は用紙が通過できるように開放される。
【0019】
請求項3に記載された画像形成装置によれば、
用紙の搬送経路を下方に切り換えるためにフリッパを上方に揺動させた状態とすると、フリッパは自重による力F1によって下方に撓みが生じるはずであるが、フリッパを上方に揺動させるためにアーム部材を力F4で下方に引き込んで回動軸を回動させると、フリッパが上方に揺動して上方の位置に設定されるとともに、アーム部材又はフリッパが支点部に接触して移動が制限されるので、力F3の反力としてフリッパには力F3と反対方向の上向きの力F2が作用する。従ってフリッパが下方に撓むことはなく、又はフリッパは上方に撓んで、下方の搬送経路が塞がれる不都合は解消される。
【0020】
請求項4に記載された画像形成装置によれば、請求項3記載の画像形成装置の効果において、駆動手段が力F4でアーム部材を動作させることにより、フリッパを上方に揺動させて搬送経路を下方に切り換えた際に、アーム部材又はフリッパが支点部に当接して移動を制限されることにより回動軸を介してフリッパに力F3と逆方向の上向きの力F2が作用するので、力F1によるフリッパの下方への撓みが解消され、下方の搬送経路は用紙が通過できるように開放される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施するために特許出願人が出願時点で最良と思う本発明の実施の形態を図1〜図5を参照して説明する。
図1は実施形態においてフリッパ7が下方位置に設定された状態を示す斜視図であり、図2は実施形態においてフリッパ7が上方位置に設定された状態を示す斜視図であり、図3は実施形態のフリッパ7付近を用紙の搬送方向と平行な視線で見た正面図であり、図4は実施形態においてフリッパ7が上方位置に設定された状態で各部に加わる力を示す側面図であり、図5は実施形態においてフリッパ7が上方位置に設定された状態を示す側面図である。
【0022】
本例の画像形成装置は、図6を参照して説明した背景技術における画像形成装置と基本構造が同一であり、フリッパ7と駆動機構及び駆動時の力学的作用が異なるので、当該相違点を中心として説明し、その他の部分は背景技術における図示及び説明を援用して図示と説明の繰り返しを避けるものとする。
【0023】
図1は、フリッパ7及びその駆動機構を示す斜視図である。フリッパ7の水平な回動軸8は、図1には示さない筐体のフレーム等の側板20,20(図3に示す)間に上下方向の所定角度について揺動自在となるように軸支されている。
【0024】
この回動軸8の一方の軸端部の近傍には、回動軸8と直交する鉛直上方に駆動軸10を向けて駆動手段としてのソレノイド11が設置されている。そして、回動軸8の軸端部の周面には、軸方向と直交する略水平方向に沿って第1アーム部材21が取り付けられており、鉛直下方に向けて引き込み作動するソレノイド11の駆動軸10が、この第1アーム部材21に連動連結されている。図1はフリッパ7が相対的に下方の位置にあって上方の搬送経路2aを開いている状態であるが、ソレノイド11はこの状態から駆動軸10を下方に移動させることによって第1アーム部材21を下方に揺動させ、回動軸8を回動させてフリッパ7を相対的に上方の位置に設定し、下方の搬送経路2bを開いた状態とすることができる。
【0025】
この第1アーム部材21には、図1に示すようにソレノイド11による引き込み方向と逆方向である鉛直上方に向けて第1アーム部材21を付勢する付勢手段としてのばね24が取り付けられている。ばね24は、ソレノイド11が作動しない時には、第1アーム部材21を上方に揺動させることにより、回動軸8を回動させてフリッパ7を相対的に下方の位置に設定し、上方の搬送経路2aを開いた状態とすることができる。
【0026】
また、第1アーム部材21とは反対側の軸端部の周面には、第1アーム部材21と平行に第2アーム部材22が取り付けられている。この第2アーム部材22の上方近傍には、図1には示さない筐体の側板22等のフレーム類に取り付けられた支点部としてのストッパ25が、下方に向けて設けられている。ストッパ25は、図1に示すようにフリッパ7が相対的に下方の位置に設定された状態では第2アーム部材22と離れているが、図2に示すようにフリッパ7が相対的に上方の位置に設定された状態では第2アーム部材22が下側から当接する。
【0027】
このように、ソレノイド11が作動していない状態では、ばね24の付勢力によってフリッパ7は図1のように相対的に下方の位置に設定されて上方の搬送経路2aが開いた状態となる。この時、フリッパ7は下方の位置に設定されているので、フリッパ7が自重で下方に撓む空間的余裕があったとしても、このようなフリッパ7の下方への変形によって上方の搬送経路2aがフリッパ7で塞がれてしまうことはありえず、用紙の通路は確保される。
【0028】
ソレノイド11が作動した場合を図2〜図5を参照して説明する。図2〜図4で示すように、ソレノイド11は、力F4でアーム部材21を下方に引き、ばね24の上方への付勢力に抗して第1アーム部材21を下方に揺動させ、第2アーム部材22がストッパ25に下方から突き当たるまで回動軸8を所定角度回動させる。この回動軸8の回動により、フリッパ7は図2及び図5に示すように相対的に上方の位置に設定されて下方の搬送経路2bが開いた状態となる。
【0029】
図3及び図4に示すように、第2アーム部材22がストッパ25に突き当たっても、ソレノイド11は力F4で第1アーム部材21を下方に引こうとするので、回動軸8の軸端部は力F3で下方に引かれる。ここで力F3と力F4の関係は、図4に示すように、てこの原理によりF4=(L1/L2)F3となる。そして、この回転軸8に加わる力F3の反力として、フリッパ7には力F3と同じ大きさで向きが逆である上向きの力F2が生じる。この力F2は、フリッパ7を下方に撓ませるフリッパ7の自重による力F1以上であって、且つフリッパ7を上方に撓ませる方向に作用する。すなわち、フリッパ7の自重による力F1と、ソレノイド11による力F3に起因してフリッパ7に作用する力F2は、互いに逆向きであるが、力F2の方が力F1よりも大きくなるように、ソレノイド11によって力F3が生じるように設定されている。このため、フリッパ7は上方に向けて撓み、そのため図3及び図5に示すように、下方の搬送経路2bは十分に開口し、用紙が通過する隙間は十分に確保される。
【0030】
本例では、フリッパ7の自重による力F1よりも、ソレノイド11による力F3に起因してフリッパ7に作用する力F2の方が大きくなるようにソレノイド11の力F4を設定しているが、力F1と力F2は同じでもよい。その場合は、フリッパ7を上方の位置に設定した時にはフリッパ7には上下両方向ともに撓みが生じず、下方の搬送経路2bは所期の間隔で開口し、用紙が通過する隙間は確保される。
【0031】
本例では、ソレノイド11が力F4で第1アーム部材21を引き下げてフリッパ7を上方の位置に設定した場合、第2アーム部材22が下からストッパ25に突き当たることによって回動軸8に下向きの力F3が加わり、これによってフリッパ7に上向きの力F2が生じるようにした。しかしながら、ストッパ25と、これに突き当たる専用の第2アーム部材22を設けなくとも、回動軸8の回動範囲を規制して同様の作用効果を得られるようにすることはできる。例えば、搬送経路2の上壁部の一部をフリッパ7の支点部として利用し、ソレノイド11が力F4で作動してフリッパ7が上方に揺動した時、フリッパ7の先端が搬送経路2の上壁に下方から突き当たって移動が規制され、その結果として回動軸8に下向きの力F3が加わり、フリッパ7に上向きの力F2が生じるように構成することも可能である。
【0032】
本例では、用紙の搬送経路2を上方と下方に分岐させ、用紙の搬送経路2をフリッパ7で上方又は下方に切り換える理由として画像形成装置における両面印刷を例示したが、フリッパ7による搬送経路の切り換えの目的はこれに限らない。例えば、本発明は、画像形成装置において排紙トレイが上下に複数段設けられ、排紙トレイを上下に任意に切り換える場合にも利用できる。また画像形成装置の排紙トレイに排出する場合と、画像形成装置に接続した後処理用のオプション機器に用紙を排出する場合とを切り換える場合にも、本発明は利用できる。
【0033】
本例では、用紙の搬送経路2を上方と下方に分岐させ、用紙の搬送経路2をフリッパ7で上方又は下方に切り換える装置を有する画像形成装置としてインクジェット記録装置を例示したが、画像形成装置としてはインクジェット記録装置に限らず、本発明は、孔版印刷装置や電子複写装置等、その他のあらゆる画像形成原理の画像形成装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は実施形態においてフリッパが下方位置に設定された状態を示す斜視図である。
【図2】図2は実施形態においてフリッパが上方位置に設定された状態を示す斜視図である。
【図3】図3は実施形態のフリッパ付近を用紙の搬送方向と平行な視線で見た正面図である。
【図4】図4は実施形態においてフリッパが上方位置に設定された状態で各部に加わる力を示す側面図である。
【図5】図5は実施形態においてフリッパが上方位置に設定された状態を示す側面図である。
【図6】図6は両面印刷が可能な従来の画像形成装置の一構造例を示す模式的な内部構造図である。
【図7】図7は従来の画像形成装置においてフリッパが下方位置に設定された状態を示す側面図である。
【図8】図8は従来の画像形成装置においてフリッパが上方位置に設定された状態を示す側面図である。
【図9】図9は従来の画像形成装置においてフリッパが下方位置に設定された状態を示す斜視図である。
【図10】図10は従来の画像形成装置のフリッパの理想的な状態を用紙の搬送方向と平行な視線で見た正面図である。
【図11】図11は従来の画像形成装置のフリッパの実際の状態を用紙の搬送方向と平行な視線で見た正面図である。
【図12】図12は従来の画像形成装置においてフリッパが上方位置に設定されて下方への撓みが発生した状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0035】
2…搬送経路
2a…上側の搬送経路
2b…下側の搬送経路
6…搬送経路の分岐部
7…フリッパ
8…フリッパの回動軸
10…ソレノイドの駆動軸
11…駆動手段としてのソレノイド
20…側板
21…第1アーム部材
22…第2アーム部材
24…付勢手段としてのばね
25…支点部としてのストッパ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙の搬送経路が上方と下方に分かれる分岐部に、用紙の搬送経路を上方又は下方に切り換える可撓性のフリッパが回動軸を中心として上下方向に揺動可能となるように設けられた画像形成装置において、
用紙の前記搬送経路を下方に切り換えるために前記フリッパが上方に揺動する回転方向に前記回動軸を回転させる際に、前記フリッパを下方に撓ませる前記フリッパの自重による力F1以上であって且つ前記フリッパを上方に撓ませる方向に作用する力F2が前記フリッパに生じるように、前記力F2と反対方向に作用する力F3を前記回動軸に作用させるフリッパの駆動手段を設けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記駆動手段が力F4で前記回動軸を回動させることにより前記フリッパを上方に揺動させて前記搬送経路を下方に切り換えた際に、前記回動軸を介して前記フリッパに前記力F3と逆方向の力F2が作用し、前記力F1による前記フリッパの下方への撓みが解消されて下方の前記搬送経路が用紙が通過できるように開放されることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
用紙の搬送経路が上方と下方に分かれる分岐部に、用紙の搬送経路を上方又は下方に切り換える可撓性のフリッパが回動軸を中心として上下方向に揺動可能となるように設けられた画像形成装置において、
上下方向に揺動することにより前記回動軸を回転させるように前記回動軸に取り付けられたアーム部材と、前記アーム部材に連動連結されて前記アーム部材を下方に引くことにより前記フリッパが上方に揺動する回転方向に前記回動軸を回転させて前記搬送経路を下方に切り換える駆動手段と、前記アーム部材に連結されて、前記駆動手段が作動しない場合に、前記アーム部材を上方に付勢することにより前記フリッパが下方に揺動する回転方向に前記回動軸を回転させて前記搬送経路を上方に切り換える付勢手段と、前記駆動手段が作動して前記フリッパが上方に揺動した場合に前記回動軸の回動を制限する支点部とを具備し、
用紙の前記搬送経路を下方に切り換えるために前記フリッパが上方に揺動する回転方向に前記回動軸を回転させる際に、前記フリッパを下方に撓ませる前記フリッパの自重による力F1以上であって且つ前記フリッパを上方に撓ませる方向に作用する力F2が前記フリッパに生じるように、前記駆動手段が、前記力F2と反対方向に作用する力F3を前記回転軸に作用させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
前記駆動手段が力F4で前記アーム部材を回動させることにより前記フリッパを上方に揺動させて前記搬送経路を下方に切り換えた際に、前記アーム部材又は前記フリッパが前記支点部に当接して移動を制限されることにより前記回動軸を介して前記フリッパに前記力F3と逆方向の力F2が作用し、前記力F1による前記フリッパの下方への撓みが解消されて下方の前記搬送経路が用紙が通過できるように開放されることを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。
【請求項1】
用紙の搬送経路が上方と下方に分かれる分岐部に、用紙の搬送経路を上方又は下方に切り換える可撓性のフリッパが回動軸を中心として上下方向に揺動可能となるように設けられた画像形成装置において、
用紙の前記搬送経路を下方に切り換えるために前記フリッパが上方に揺動する回転方向に前記回動軸を回転させる際に、前記フリッパを下方に撓ませる前記フリッパの自重による力F1以上であって且つ前記フリッパを上方に撓ませる方向に作用する力F2が前記フリッパに生じるように、前記力F2と反対方向に作用する力F3を前記回動軸に作用させるフリッパの駆動手段を設けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記駆動手段が力F4で前記回動軸を回動させることにより前記フリッパを上方に揺動させて前記搬送経路を下方に切り換えた際に、前記回動軸を介して前記フリッパに前記力F3と逆方向の力F2が作用し、前記力F1による前記フリッパの下方への撓みが解消されて下方の前記搬送経路が用紙が通過できるように開放されることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
用紙の搬送経路が上方と下方に分かれる分岐部に、用紙の搬送経路を上方又は下方に切り換える可撓性のフリッパが回動軸を中心として上下方向に揺動可能となるように設けられた画像形成装置において、
上下方向に揺動することにより前記回動軸を回転させるように前記回動軸に取り付けられたアーム部材と、前記アーム部材に連動連結されて前記アーム部材を下方に引くことにより前記フリッパが上方に揺動する回転方向に前記回動軸を回転させて前記搬送経路を下方に切り換える駆動手段と、前記アーム部材に連結されて、前記駆動手段が作動しない場合に、前記アーム部材を上方に付勢することにより前記フリッパが下方に揺動する回転方向に前記回動軸を回転させて前記搬送経路を上方に切り換える付勢手段と、前記駆動手段が作動して前記フリッパが上方に揺動した場合に前記回動軸の回動を制限する支点部とを具備し、
用紙の前記搬送経路を下方に切り換えるために前記フリッパが上方に揺動する回転方向に前記回動軸を回転させる際に、前記フリッパを下方に撓ませる前記フリッパの自重による力F1以上であって且つ前記フリッパを上方に撓ませる方向に作用する力F2が前記フリッパに生じるように、前記駆動手段が、前記力F2と反対方向に作用する力F3を前記回転軸に作用させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
前記駆動手段が力F4で前記アーム部材を回動させることにより前記フリッパを上方に揺動させて前記搬送経路を下方に切り換えた際に、前記アーム部材又は前記フリッパが前記支点部に当接して移動を制限されることにより前記回動軸を介して前記フリッパに前記力F3と逆方向の力F2が作用し、前記力F1による前記フリッパの下方への撓みが解消されて下方の前記搬送経路が用紙が通過できるように開放されることを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−190859(P2009−190859A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−34703(P2008−34703)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】
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