説明

画像形成装置

【課題】未使用状態に近い感光体ドラムの帯電特性の劣化状態を速やかに解消できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】感光体ドラム(18)の表面に帯電や露光を経て形成された潜像をトナーで現像してトナー像を形成する画像形成装置(1)であって、転写材を挟んで感光体ドラムの表面に対峙し、このトナー像を転写材に転写させる転写ローラ(13)と、この転写ローラに施されており、この転写ローラの感光体ドラムへの押圧力を高めて感光体ドラムの磨耗を促進させ、この感光体ドラムの未使用時点の表面性に起因した帯電特性の劣化状態を解消させるV字現象解消手段(66)とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光体ドラムのトナー像を中間転写体や用紙に出力する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の画像形成装置では電子写真方式が用いられており、帯電器が感光体ドラムを予め帯電し、露光部が感光体ドラムの表面に光を照射すると、この表面には静電潜像が形成される。また、現像器はトナーを担持しており、トナーが静電潜像に付着してトナー像を形成する。そして、このトナー像を用紙に、或いは中間転写体を介して用紙に転写して定着させる。
【0003】
ここで、用紙の厚みや種類によってトナー像の転写性が異なる。そのため、例えば、厚い用紙では転写圧力を下げたり、再生紙に対するモノクロ印刷では転写圧力を上げる如く、感光体ドラムと中間転写体との転写圧力を変更する技術が開示されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−261577号公報
【特許文献2】特開平11−15291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、初期ドラム、詳しくは、未使用状態に近い感光体ドラムでは帯電特性が劣化する。この現象は、感光体ドラムの表面電位を縦軸、印字枚数を横軸にとれば、帯電から所望の電圧を感光体ドラムに付与しているにも拘わらず、その表面電位がアルファベットの略V字の如くのカーブ形状で現れる(以下、V字現象と称する)。
【0006】
これは、感光体ドラムの表面は、その未使用状態では表面平滑性が高いために磨耗の進行が遅いので付着物が除去されにくい。そして、付着物があることによってさらに磨耗の進行の妨げになって感光体ドラムをさらに削れ難くするからである。
このように、感光体ドラムが未使用状態から脱するまでは表面電位が著しく低下するので、当該V字現象を鑑みた運転条件などの調整が必要になるが、上記従来の技術では、用紙の厚みや種類に応じて転写圧力を単に変更するだけであり、未使用状態に近い感光体ドラムの磨耗を積極的に促進させる点については格別な配慮がなされていない。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消し、未使用状態に近い感光体ドラムの帯電特性の劣化状態を速やかに解消できる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための第1の発明は、感光体ドラムの表面に帯電や露光を経て形成された潜像をトナーで現像してトナー像を形成する画像形成装置に適用される。
そして、転写材を挟んで感光体ドラムの表面に対峙し、このトナー像を転写材に転写させる転写ローラと、この転写ローラに施されており、この転写ローラの感光体ドラムへの押圧力を高めて感光体ドラムの磨耗を促進させ、この感光体ドラムの未使用時点の表面性に起因した帯電特性の劣化状態を解消させるV字現象解消手段とを具備する。
【0009】
第1の発明によれば、感光体ドラムの駆動によって感光体ドラムの表面には、その潜像をトナーで現像したトナー像が形成され、このトナー像が転写材に転写される。転写ローラは、感光体ドラムの表面に形成されたトナー像を転写材に転写する。
ここで、本発明は、未使用状態に近い感光体ドラムでは帯電特性が劣化するV字現象に着目したものである。
【0010】
そして、本発明によれば、V字現象解消手段が転写ローラに施されており、この転写ローラが付与する感光体ドラムへの押圧力を高めて未使用状態に近い初期ドラムの磨耗を積極的に促進させる。これにより、この感光体ドラムの表面の磨耗が進行し、帯電特性の劣化状態を速やかに解消させる。この結果、未使用時点から速やかに耐刷されて表面電位の低下が無くなったドラム(以下、耐久ドラムと称す。)に近い状態になり、所望の表面電位を得ることができるし、しかも、簡易な構造で達成できる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明の構成において、V字現象解消手段は、感光体ドラムへの押圧力を、帯電特性が劣化する初期状態から帯電特性が回復する耐久状態に移行するに伴って減らし、画像形成を維持可能な最適な転写圧力で固定させることを特徴とする。
第2の発明によれば、第1の発明の作用に加えてさらに、転写ローラによる感光体ドラムへの押圧力は、初期ドラムの状態では高める一方、耐久ドラムの状態では減らされ、この耐久ドラムの磨耗の進行は遅くされている。よって、感光体ドラムの長寿命化を達成でき、良好な画像形成を長期間に亘って行える。
【0012】
第3の発明は、第2の発明の構成において、転写ローラの回転軸を回転自在に保持する保持部材をさらに備え、この保持部材は、初期状態で磨耗する初期摺動部と、耐久状態で回転軸を保持する耐久摺動部とを有していることを特徴とする。
第3の発明によれば、第2の発明の作用に加えてさらに、保持部材を2層、詳しくは、初期摺動部と耐久摺動部とで構成させ、前者の初期摺動部は初期ドラムの状態で磨耗するのに対し、後者の耐久摺動部は、初期摺動部が摩滅した後に、転写ローラを保持できる。よって、感光体ドラムへの押圧力を高めて磨耗を促進できるし、また、この目的を達成した後には、最適な転写圧力で固定可能になる。
【0013】
第4の発明は、第3の発明の構成において、耐久摺動部の材質は、初期摺動部に比して磨耗性の低い材料で構成されていることを特徴とする。
第4の発明によれば、第3の発明の作用に加えてさらに、耐久摺動部を初期摺動部に比して磨耗し難い材料で構成すれば、初期ドラムの状態から耐久ドラムの状態に移行した後には、耐久ドラムの磨耗の進行は確実に遅くなる。
【0014】
第5の発明は、第1から第4のいずれかの発明の構成において、感光体ドラムは、その表面に有機系の感光層を有した感光体ドラムであることを特徴とする。
第5の発明によれば、第1から第4の発明の作用に加えてさらに、有機系の感光層を有した感光体ドラムを組み合わせることで、有効な研磨作用を発揮することができる。また、有機系の感光層を有した感光体ドラムは安価で大量生産が容易である。しかし、その表面は極めて平滑であり、その表面平滑性が初期ドラムに大きな影響を及ぼす一方、特に削られ易く、その磨耗が耐久ドラムに大きな影響を及ぼす懸念があるが、上記V字現象解消手段を備えれば、この感光体ドラムの特性を長期間に亘って維持可能になり、特に顕著な効果を奏する。
【0015】
第6の発明は、第1から第5の発明のいずれかの構成において、感光体ドラムの表面に接触して帯電させる帯電器をさらに具備することを特徴とする。
第6の発明によれば、第1から第5の発明の作用に加えてさらに、接触帯電式の帯電器を使用した場合においてより効果的である。接触帯電式の帯電器は、コロナ放電式の帯電器による場合に比してオゾンや窒素酸化物が生じないため、画像品質の向上を図ることができるものの、初期ドラムの帯電特性が顕著に劣化する。しかし、上述したV字現象解消手段を備えれば、接触帯電式の帯電器を用いても所望の表面電位を得ることができ、画像形成時における帯電電流の補正も不要になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、転写ローラが付与する感光体ドラムへの押圧力を高めて感光体ドラムの磨耗を積極的に促進させており、未使用状態に近い感光体ドラムを耐久ドラムの状態へ速やかに移行できる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施例のプリンタの概略構成図である。
【図2】図1の画像形成ユニット周辺の断面図である。
【図3】図2の転写ローラの正面図である。
【図4】感光体ドラムの表面電位と印字枚数とに関する実験結果である。
【図5】感光体ドラムの膜削れ量と転写ローラの押圧力とに関する実験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1には、画像形成装置の一例であるカラー印刷可能なプリンタ1の構造が概略的に示されている。同図に示された断面はプリンタ1の左側面からみたものである。このため、プリンタ1の前面は同図中の右側に、背面は左側にそれぞれ位置する。
【0019】
同図に示されるように、プリンタ1の装置本体2の上方には排紙トレイ36が設けられ、このトレイ36の近傍には、使用者の各種操作に供される複数の操作キーや、各種情報を表示する画面を配置したフロントカバー5が設けられている。
また、この装置本体2の下方には給紙カセット4が配置され、その収容部40には、枚葉の用紙が積層された状態で収納されている。同図でみて収容部40の右上方には給紙ローラ46が設けられる。
【0020】
そして、用紙は、同図において給紙カセット4の右上方に向けて送出され、この送出された用紙は、装置本体2の内部でプリンタ1の前面に沿って上方に向けて搬送される。
また、給紙カセット4は、プリンタ1の前面側、つまり、図1において右方向に向けて引き出し可能に構成されており、この引き出した状態にて、収容部40に新たな用紙を補充したり、用紙を別の種類の用紙に入れ替え可能となる。
【0021】
装置本体2の内部には、給紙カセット4からの用紙搬送方向でみて下流側に搬送ローラ10、レジストローラ14、画像形成部16及び2次転写部30が順番に配置されている。
画像形成部16には4個の画像形成ユニット17が並設され、各ユニット17には感光体ドラム18がそれぞれ設けられている(図1,2)。この感光体ドラム18は回転自在に設置され、図示しない駆動モータによって図1,2の時計回りにそれぞれ駆動する。
【0022】
本実施例の感光体ドラム18は、例えばφ30mmの直径で形成され、その表面に有機系の感光層を有した単層OPCドラムである(OPC:Organic Photoconductor)。
また、この感光体ドラム18と給紙カセット4との間には露光部15が備えられており(図1)、この露光部15からは、レーザ光が各感光体ドラム18に向けてそれぞれ照射される。そして、これら図1,2に示されるように、各感光体ドラム18の周囲の適宜位置には、帯電器20、現像器24、中間転写ローラ(転写ローラ)13やクリーニング部50がそれぞれ設けられている。
【0023】
この帯電器20は、図2にも示される如く画像形成ユニット17の下部に位置し、感光体ドラム18に接する帯電ローラ21、及び帯電ローラ21の表面を研磨摺擦にて清掃するブラシを備えた摺擦ローラ22を有し、感光体ドラム18の表面を帯電させる。なお、帯電ローラ21は、例えばエピクロルヒドリンゴム製であり、例えばφ12mmの直径で形成されている。
【0024】
また、現像器24は画像形成ユニット17の左方に配置され、感光体ドラム18に対峙する現像ローラ25を有する。この現像ローラ25は図示しない駆動モータによって同図の反時計回りに駆動する。
なお、この図2の参照符号26はギャップ規制コロである。当該ギャップ規制コロ26は、現像ローラ25の両端に設けられており、感光体ドラム18に連れ回って現像ローラ25と感光体ドラム18とのギャップを設定する。
【0025】
画像形成部16はゴム製の中間転写ベルト(転写材)12を有し、当該中間転写ベルト12は各感光体ドラム18の上方に配置され、この転写ベルト12とトレイ36との間には4個のトナーコンテナ23が配設されている(図1)。これら各コンテナ23は、プリンタ1の背面側から前面側に向けて、マゼンタ用、シアン用、イエロー用、そして、ブラック用の順に配設され、このブラック用のコンテナの容量が最も大きく構成される。
【0026】
2次転写部30には2次転写ローラ31が備えられ、この転写ローラ31は転写ベルト12に対して斜め下方から圧接可能に構成されている。これら転写ベルト12と2次転写ローラ31とは、トナー像を用紙に転写するためのニップ部を形成する。
また、用紙搬送方向でみて2次転写部30の下流側には、定着部32、排出分岐部34及び排紙トレイ36が順番に配置されている。
【0027】
本実施例では、2次転写部30と手差しトレイ3との間に両面印刷搬送路38が形成されている。この両面印刷搬送路38は、排出分岐部34から装置本体2の前面側で分岐して下方に向けて延び、レジストローラ14の上流側に連結している。
ここで、本実施例のトナーには、微量の研磨剤(酸化チタン、シリカ、アルミナなど)が添加されている。上記のクリーニング部50は、図2に示されるように、感光体ドラム18の回転方向でみて中間転写ローラ13との転写位置の下流側にて、この感光体ドラム18に向けて開口したハウジング51を備えており、このハウジング51の適宜位置に、クリーニングブレード52やトナー回収部80を有している。
【0028】
具体的には、クリーニングブレード52は、ハウジング51の下端に固定される亜鉛鋼板の本体や、この本体に溶着されたポリウレタンゴム製のブレード部からなり、このブレード部のエッジが感光体ドラム18の回転軸線に沿って延びている。そして、当該エッジが感光体ドラム18の回転軸線よりも低い位置にてカウンタ方向で接し、感光体ドラム18の表面に付着した研磨剤を含む残留トナーや放電生成物などを掻き取っている。
【0029】
このクリーニングブレード52によって感光体ドラム18の表面から掻き取られた残留トナー等は、トナー回収部80から回収される。
詳しくは、トナー回収部80は、ハウジング51の底面近傍にスクリュー88を有する。このスクリュー88は、図2でみてクリーニングブレード52の右側に設置されており、感光体ドラム18の回転軸線方向に沿って延び、その先端が図示しない駆動モータに連結されている。そして、この駆動モータが駆動すると、ハウジング51内の残留トナー等は、スクリュー88を経由して回収容器に集められる。
【0030】
ところで、上記感光体ドラム18の表面は、その使用状態に応じて積極的な磨耗促進や磨耗抑制が図られる。
本実施例では、図2に示されるように、中間転写ローラ13が中間転写ベルト12を挟んで対応の感光体ドラム18に対峙している。なお、この中間転写ローラ13は例えば導電性発泡EPDM製である。
【0031】
詳しくは、1つの中間転写ローラ13を例に挙げて説明すると、この中間転写ローラ13の両端の中心には、感光体ドラム18の回転軸線に沿って延びたシャフト(回転軸)60がそれぞれ突出し(図3では中間転写ローラ13の片端を示している)、保持部材62に回転自在に支持されている。
より具体的には、本実施例の保持部材62は略U字状の断面を有した耐久摺動部64を備え、この略U字状部分が、図3でみて下方に向けて開口し、シャフト60の周壁に係合可能に構成されている。
【0032】
本実施例の耐久摺動部64は、樹脂(例えば導電性POM:導電性ポリオキシメチレン樹脂)で構成され、その外周部分であって上記開口とは反対側に位置する上端面65には、図3でみて上方に向けて延びた支持軸68が形成されている。
また、この支持軸68はコイル状の押しバネ70を挿通しており、この押しバネ70の下端が上端面65に、押しバネ70の上端が図示しないスペーサにそれぞれ接触している。
【0033】
ここで、本実施例の保持部材62は初期摺動部(V字現象解消手段)66を備えている。
詳しくは、この初期摺動部66は、略三日月状の断面を有する連続曲面で形成され、上述した略U字状部分の底面に沿って湾曲してシャフト60の回転軸線方向に沿って延びている。なお、本実施例の初期摺動部66は、耐久摺動部64よりも磨耗し易い材質、例えばポリカーボネート製(厚さ:約1mm)であり、上記略U字状部分の底面に貼り付けられて耐久摺動部64に一体形成される。
【0034】
そして、中間転写ローラ13の両端のシャフト60を保持部材62でそれぞれ保持する。つまり、押しバネ70を縮ませた状態で装置本体2に組み入れ、次いで、シャフト60を上記略U字状部分に係合させると、押しバネ70の付勢力によって保持部材62は下方に向けて移動し、初期摺動部66がシャフト60の周壁に接触してシャフト60を下方に向けて押圧する。
【0035】
これにより、本実施例の中間転写ローラ31の周面は、中間転写ベルト12を挟んで感光体ドラム18の表面を強く押圧する。
この状態でプリンタ1を起動させ、感光体ドラム18や中間転写ローラ31が回転すると、これら感光体ドラム18と中間転写ローラ31との線速差も相俟って、感光体ドラム18の表面は、中間転写ローラ31からの大きな押圧力によって中間転写ベルト12に接触して磨耗する。
【0036】
一方、初期摺動部66はシャフト60の周壁との摩擦によって減り始める。これに伴い、保持部材62は押しバネ70の付勢力によって下方に向けて移動するが、この押しバネ70のバネ長が大きくなるため、その付勢力は小さくなり、中間転写ローラ31から感光体ドラム18への押圧力も小さくなる。
その後、初期摺動部66が例えば計30,000枚分の出力終了時点で磨滅すると、耐久摺動部64の略U字状部分の底面がシャフト60の周壁に接触して保持し続ける。
【0037】
再び図1に戻り、上記プリンタ1が印刷を行う際は、給紙ローラ46によって給紙カセット4から用紙が1枚ずつ分離して送出される。送出された用紙はレジストローラ14に到達する。このレジストローラ14は、用紙の斜め送りを矯正しつつ、画像形成部16で形成されるトナー像との画像転写タイミングを計りながら、用紙を所定の給紙タイミングにて2次転写部30へと送出する。
【0038】
一方、図示しないコントローラには、印刷の元になる画像データが外部から受信可能に構成されている。この画像データは、文字や符号、図形、記号、線図、模様等の各種の画像がデータ化されたものである。そして、このデータに基づき、このコントローラでは光の照射などを制御する。
詳しくは、各感光体ドラム18に対し、イレーサランプ19が点灯し(図2)、帯電器20が感光体ドラム18の表面をそれぞれ帯電する。
【0039】
次いで、露光部15が感光体ドラム18の表面にレーザ光をそれぞれ照射すると、各感光体ドラム18の表面には静電潜像が作られ、この静電潜像から各色のトナー像が形成される。
各トナー像は中間転写ベルト12に重ね合わされ(1次転写)、2次転写部30にて用紙に2次転写される。なお、感光体ドラム18の表面に残留したトナーはクリーニング部50で除去される。
【0040】
続いて、用紙は未定着トナー像を担持した状態で定着部32に向けて送られ、この定着部32にて加熱及び加圧され、トナー像が定着される。その後、定着部32から送出された用紙は排出ローラ35を介して排紙トレイ36に排出され、高さ方向に積層される。
この片面印刷に対し、両面印刷を行う場合には、定着部32から排出された用紙は、排出分岐部34でその搬送方向が切り替えられる。
【0041】
つまり、片面に印刷された用紙は装置本体2内に引き戻され、両面印刷搬送路38に搬送される。続いて、この用紙はレジストローラ14の上流側に向けて送出され、2次転写部30に向けて再び送られる。これにより、用紙の未だ印刷がされていない面にトナー像が転写される。
ところで、上述の初期摺動部66は連続曲面で形成されているが、必ずしもこの例に限定されるものでなく、例えば凹凸形状による部分的な曲面で構成し、シャフト60に接触して削れ易い突起部分を有していても良い。
【0042】
以上のように、本実施例によれば、感光体ドラム18の駆動によって感光体ドラム18の表面には、その潜像をトナーで現像したトナー像が形成され、このトナー像が中間転写ベルト12に転写される。
中間転写ローラ13は、感光体ドラム18の表面に形成されたトナー像を転写ベルト12に転写する。
【0043】
ここで、仮にシリコン化合物を添加し、少ない印字枚数で磨耗し易い性質を有した単層のOPCドラムを選択しても、従前の押圧力、つまり、感光体ドラム18に対する同じ大きさの押圧力のみでは、印字枚数が約20,000枚に達するまでは感光体ドラム18の表面は削れ難い。
そして、初期ドラムでは帯電特性が劣化する。この現象は、図4の1点鎖線で示されるように、感光体ドラム18の表面電位を縦軸、印字枚数を横軸にとれば、帯電から所望の電圧を感光体ドラム18に付与しているにも拘わらず、その表面電位がアルファベットの略V字の如くのカーブ形状で現れる(V字現象)。
【0044】
なお、この感光体ドラム18の表面の感光層は低温環境の場合には帯電特性上電位がのりづらくなる傾向にあるため、この表面電位がさらに低下してカブリ等の画像劣化現象が生ずる。
また、同図の破線はコロナ放電式の帯電器による場合である。表面電位の低下傾向は感光体ドラム18に直接に接触する帯電器20と同様である。しかし、本実施例で示した帯電器20はコロナ放電式よりもV字現象が顕著に現れることが分かる。
【0045】
より具体的には、感光体ドラム18の想定される使用期間(耐久保証)の約1/10程度の期間が経過、例えば印字枚数が約10,000枚に達するまで、若しくは、この感光体ドラム18の表面が約1〜2μm(1μm=1×10−6m)ほど磨耗するまでは、その表面電位が低下し続けて最小値に達する。これが初期ドラムの特徴である。その後、この表面電位は上昇に転じてこの初期ドラムから耐久ドラムの状態に移行する。続いて、その表面電位がさらに上昇して例えば印字枚数が約50,000枚に達すると所望の値に回復する。
【0046】
そこで、本実施例では、V字現象解消手段が中間転写ローラ13に施されており、この中間転写ローラ13が感光体ドラム18への押圧力を高めて未使用状態に近い初期ドラムの磨耗を積極的に促進させる。これにより、この感光体ドラム18の表面の磨耗が進行し、帯電特性の劣化状態を速やかに解消させる。この結果、未使用時点から直ちに耐久ドラムに近い状態になり、所望の表面電位を得ることができるし、しかも、中間転写ローラ13の両端の押しバネ70を利用した簡易な構造で達成できる。
【0047】
この点について詳述すると、押しバネ70のバネ定数を押圧力不変の従前に比して強め、図5に示されるように、中間転写ローラ13による感光体ドラム18への押圧力を従前の値aよりも高い値bに設定すると、図4の実線で示される如く、印字枚数が約10,000枚に達するまでに感光体ドラム18の磨耗が進み、感光体ドラム18の表面電位が上昇に転ずる。次いで、約20,000枚に達するまでにはその表面電位がさらに上昇し、感光体ドラム18の表面電位の大きな低下を抑制できた。
【0048】
また、中間転写ローラ13による感光体ドラム18への押圧力は、初期ドラムの状態では高める一方、耐久ドラムの状態では減らされ、この耐久ドラムの磨耗の進行は遅くされている。よって、感光体ドラム18の長寿命化を達成できる。
詳しくは、保持部材62を初期摺動部66と耐久摺動部64との2層で構成させ、初期摺動部66は初期ドラムの状態で磨耗するのに対し、耐久摺動部64は、この初期摺動部66が摩滅した後に、中間転写ローラ13のシャフト60を保持できる。よって、感光体ドラム18への押圧力を高めて初期ドラムの磨耗を促進できるし、また、この目的を達成した後には、画像形成に関する最適な転写圧力(図5の値a)で固定可能になる。この結果、良好な画像形成を長期間に亘って行え、プリンタ1の信頼性が向上する。
【0049】
さらに、耐久摺動部64を初期摺動部66に比して磨耗し難い材料で構成すれば、初期ドラムの状態から耐久ドラムの状態に移行した後には、耐久ドラムの磨耗の進行は確実に遅くなる。
さらにまた、有機系の感光層を有したOPCドラム18は安価で大量生産が容易である。しかし、その表面は極めて平滑であり、その表面平滑性が初期ドラムに大きな影響を及ぼす一方、特に削られ易く、その磨耗が耐久ドラムに大きな影響を及ぼす懸念があるが、上記V字現象解消手段を備えれば、このOPCドラム18の特性を長期間に亘って維持可能になり、特に顕著な効果を奏する。
【0050】
さらに、接触帯電式の帯電器20は、コロナ放電式の帯電器による場合に比してオゾンや窒素酸化物が生じないため、画像品質の向上を図ることができるものの、初期ドラムの帯電特性が顕著に劣化する。しかし、上述したV字現象解消手段を備えれば、接触帯電式の帯電器20を用いても所望の表面電位を得ることができ、上記カブリ等の画像劣化現象を防止するための画像形成時における帯電電流の補正も不要になる。
【0051】
本発明は、上記実施例に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。
例えば、上記実施例では、中間転写ベルトを採用したカラー印刷可能なプリンタ1で説明されている。しかし、本発明は、感光体ドラム18のトナー像を用紙に直接に転写する場合にも適用可能であり、本発明の転写材は用紙であっても良く、また、本発明はモノクロ印刷のみのプリンタにも適用できる。
【0052】
さらに、この実施例では、押しバネ70のバネ定数を従前よりも強めた例で説明しているものの、このバネ定数は従前と同様であっても良い。初期摺動部66をより磨耗し易い材質で構成すれば良いからである。
さらにまた、この実施例では画像形成装置としてプリンタに具現化した例を示しているが、本発明の画像形成装置は、複合機、複写機やファクシミリ等にも当然に適用可能である。
【0053】
そして、これらいずれの場合にも上記と同様に、未使用状態に近い感光体ドラムの帯電特性の劣化状態を速やかに解消できるとの効果を奏する。
【符号の説明】
【0054】
1 プリンタ(画像形成装置)
12 中間転写ベルト(転写材)
13 中間転写ローラ(転写ローラ)
18 感光体ドラム
20 帯電器
60 シャフト(回転軸)
62 保持部材
64 耐久摺動部
66 初期摺動部(V字現象解消手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体ドラムの表面に帯電や露光を経て形成された潜像をトナーで現像してトナー像を形成する画像形成装置であって、
転写材を挟んで前記ドラムの表面に対峙し、このトナー像を前記転写材に転写させる転写ローラと、
この転写ローラに施されており、この転写ローラの前記感光体ドラムへの押圧力を高めて当該感光体ドラムの磨耗を促進させ、この感光体ドラムの未使用時点の表面性に起因した帯電特性の劣化状態を解消させるV字現象解消手段と
を具備することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置であって、
前記V字現象解消手段は、前記感光体ドラムへの押圧力を、前記帯電特性が劣化する初期状態から前記帯電特性が回復する耐久状態に移行するに伴って減らし、画像形成を維持可能な最適な転写圧力で固定させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像形成装置であって、
前記転写ローラの回転軸を回転自在に保持する保持部材をさらに備え、
この保持部材は、前記初期状態で磨耗する初期摺動部と、前記耐久状態で前記回転軸を保持する耐久摺動部とを有していることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像形成装置であって、
前記耐久摺動部の材質は、前記初期摺動部に比して磨耗性の低い材料で構成されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の画像形成装置であって、
前記感光体ドラムは、その表面に有機系の感光層を有した感光体ドラムであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の画像形成装置であって、
前記感光体ドラムの表面に接触して帯電させる帯電器をさらに具備することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−112821(P2011−112821A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−268385(P2009−268385)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】