説明

画像形成装置

【課題】文字情報とともにフォントデータを含む印刷命令の印刷時間の短縮及びメモリの使用効率の向上が図られる画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置(10)は、印刷命令を解析するページ記述言語解析部(26)と、レジデントフォントデータを記憶する記憶部(20)と、ページ記述言語解析部(26)の解析結果に基づいて画像を形成する印刷部(16)とを備える。印刷部(16)は、印刷命令の型式が文字情報を描くのに用いられるべきダウンロードフォントデータを含む型式であるときに、ページ記述言語解析部(26)によって解析された印刷命令中のダウンロードフォントデータの有無若しくは状態、又は、印刷命令とは別の命令に基づいて、ダウンロードフォントデータに代えて、レジデントフォントデータを用いて文字情報を印刷する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子ドキュメントのファイル型式として、XPS(XML Paper Specification)が用いられている。XPSは、スプールファイル型式及びページ記述言語でもあり、XPSのファイル(以下、XPSファイルという)は、画像形成装置に対する印刷命令にもなり得る。
印刷命令としてのXPSファイルは、文字情報に対応してオープンタイプのフォントデータ(以下、ダウンロードフォントデータという)を含んでいる。画像形成装置は、XPSファイルを受信した場合、ダウンロードフォントデータを用いて画像を形成する。これにより、XPSファイルに基づいて、画像形成装置の機種等に依存することなく、同一の文書が再現される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−145999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ダウンロードフォントデータをメモリにキャッシュ(保存)し、ダウンロードフォントを用いて画像を形成する場合、データのメモリへのキャッシュに時間がかかり、印刷に時間がかかってしまう。また、ダウンロードフォントデータによってメモリが占有され、メモリの使用効率が低下してしまう。
一方、印刷命令としてのXPSファイルを受信するときに、通信トラブル等によって、ダウンロードフォントデータの喪失若しくは破損が生じる虞がある。このような場合、従来の画像形成装置は、エラー状態を発生させて印刷を中止していた。
【0005】
本発明は上述した事情に鑑みてなされ、その目的とするところは、文字情報とともにフォントデータを含む印刷命令の印刷時間の短縮及びメモリの使用効率の向上が図られる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様によれば、印刷命令を解析するページ記述言語解析部と、レジデントフォントデータを記憶する記憶部と、前記ページ記述言語解析部の解析結果に基づいて画像を形成する印刷部とを備え、前記印刷部は、前記印刷命令の型式が文字情報を描くのに用いられるべきダウンロードフォントデータを含む型式であるときに、前記ページ記述言語解析部によって解析された前記印刷命令中の前記ダウンロードフォントデータの有無若しくは状態、又は、前記印刷命令とは別の命令に基づいて、前記ダウンロードフォントデータに代えて、前記レジデントフォントデータを用いて前記文字情報を印刷することを特徴とする画像形成装置が提供される(請求項1)。
【0007】
請求項1の画像形成装置によれば、印刷部が、ダウンロードフォントデータに代えて、レジデントフォントデータを用いて印刷することによって、ダウンロードフォントデータのメモリへのキャッシュが省略されるので、印刷時間が短縮されるとともに、メモリの使用効率が向上する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、XPSファイルの印刷時間の短縮及びメモリの使用効率の向上が図られる画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態のプリンタの概略構成をホストとともに示すブロック図である。
【図2】図1のプリンタが実行する印刷手順を示す概略的なフローチャートである。
【図3】図1のプリンタが実行する他の印刷手順を示す概略的なフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態に係る画像形成装置として、プリンタ10について図面を参照して説明する。
図1は、プリンタ10の概略的な構成を示すブロック図である。プリンタ10は、パーソナルコンピュータ等のホスト12からの印刷命令を受けて、印刷物を作成する。ホスト12のOS(オペレーティングシステム)は、例えば、WINDOWS VISTA(登録商標)であり、ホスト12は、印刷命令としてXPS(XML Paper Specification)のファイル(以下、XPSファイルという)を作成可能である。
【0011】
ここで、XPSは、電子ドキュメントの型式であるとともに、スプールファイル型式でもあり、ページ記述言語(PDL:Page Definition Language)でもある。
XPSファイルは、ZIP型式で圧縮されたファイルであり、解凍された状態では、階層構造の複数のフォルダ、及び、各フォルダに含まれる複数のファイルによって構成されている。
【0012】
具体的には、XPSファイルは、FixedPageと称されるファイルをパーツデータとして含み、パーツデータに文字情報等が含まれている。文字情報には、文字のコードとともに、文字の描画に使用するフォントを指定するためのデータも含まれている。
また、XPSファイルは、XPS固有の設定として、文字の描画に使用されるべきフォントデータを、パーツデータとは別に含んでいる。フォントデータは、例えば、一組のTTF(トゥルータイプフォント)のデータである。なお、以下では、XPSファイルに含まれているフォントデータのことをダウンロードフォントデータともいう。
【0013】
プリンタ10は、XPS対応のプリンタであり、ホスト12から印刷命令として送られてくるXPSファイルを受信可能である。プリンタ10は、制御部14と、制御部14によって制御され、印刷を実行するビデオ部(印刷部)16とを有する。
制御部14は、例えば、CPU(中央演算処理装置)18、ROM(リードオンリーメモリ)20、RAM(ランダムアクセスメモリ)22、及び、NVRAM(不揮発性RAM)24によって構成される。そして、CPU18は、機能でみたときに、PDL解析部26及びフォント描画部28等を含む。
【0014】
CPU18のPDL解析部26は、プリンタ10が受信したXPSファイルを解析可能である。そして、この解析過程において、PDL解析部26は、XPSファイル内のパーツデータに含まれる文字情報を取得可能である。
【0015】
また、PDL解析部26は、XPSファイル内に、ダウンロードフォントデータが存在するか否か、そして、ダウンロードフォントデータが存在しているときには、当該ダウンロードフォントデータが壊れていないか、即ちダウンロードフォントデータが有効であるか否かを判定可能である。
【0016】
更に、PDL解析部26は、好ましい態様として、NVRAM24に予め記憶させられている使用フォント設定データを読み込み可能である。使用フォント設定データには、レジデントフォントデータとダウンロードフォントデータの間における、文字情報を描画するにあたっての優先順位が規定されている。つまり、使用フォント設定データは、印刷命令とは別にプリンタ10に対して予め与えられた命令である。
なお、レジデントフォントデータは、ROM20に保存されているフォントデータであって、プリンタ10に固有のデバイスフォントのデータである。
【0017】
従って、PDL解析部26は、ダウンロードフォントデータが存在するか否か、若しくは、存在するダウンロードフォントデータが有効であるか否か、又は、使用フォント設定データに基づいて、ダウンロードフォントデータ及びレジデントフォントデータのうちから、文字情報を描くのに使用するフォントデータを決定する。
【0018】
そして、PDL解析部26は、ダウンロードフォントデータを用いて文字情報を描くことを決定したときには、RAM22へのダウンロードフォントデータのキャッシュを開始させる。一方、PDL解析部26は、レジデントフォントデータを用いて文字情報を描くことを決定したときには、XPSファイル固有の設定にかかわらず、RAM22へのダウンロードフォントデータのキャッシュを中止させる。
【0019】
フォント描画部28は、PDL解析部26によって取得された文字情報を、PDL解析部26によって文字情報の描画に使用することが決定されたフォントデータを用いて、ビデオ部16にページ毎に画像を形成させる。
【0020】
かくして、プリンタ10においては、受信したXPSファイル内における、ダウンロードフォントデータの有無若しくは状態、又は、印刷命令とは別の命令に基づいて、文字情報の描画に、ダウンロードフォントデータ及びレジデントフォントデータのうち一方が用いられる。
【0021】
図2は、プリンタ10が実行する印刷の手順を示す概略的なフローチャートである。
まず、この印刷手順では、PDL解析部26によって、印刷命令のXPSファイルに含まれているべきダウンロードフォントデータが解析される(ステップS10)。そして、ステップS10の解析結果に基づいて、XPSファイル内にダウンロードフォントデータが存在し、且つ、当該ダウンロードフォントデータが有効であるかが判定される(ステップS12)。
【0022】
ステップS12の判定の結果、XPSファイル内にダウンロードフォントデータが存在し、且つ、当該ダウンロードフォントデータが有効である場合、PDL解析部26は、使用フォント設定データが、レジデントフォントを使用する設定であるか否かを判定する(ステップS14)。
【0023】
ステップS14の判定の結果、使用フォント設定データがダウンロードフォントデータを使用する設定であれば、PDL解析部26は、XPSファイルに含まれるダウンロードフォントデータをRAM22にキャッシュさせる(ステップS16)。そして、PDL解析部26は、RAM22に保存されているダウンロードフォントデータを用いて、パーツデータに含まれる文字情報を描画するよう、フォント描画部28に指示する。この指示に基づいて、フォント描画部28は、ページ毎にビデオ部16に印刷を実行させ、これにより印刷物が得られ(ステップS18)、印刷が終了する。
【0024】
一方、ステップS12の判定の結果、XPSファイル内にダウンロードフォントデータが存在しないか、又は、存在するダウンロードフォントデータが有効ではない場合、PDL解析部26は、例外処理として、RAM22へのダウンロードフォントデータのキャッシュを中止させる(ステップS20)。
【0025】
そして、PDL解析部26は、ROM20に保存されているレジデントフォントを用いて、パーツデータに含まれる文字情報を描画するよう、フォント描画部28に指示する。この指示に基づいて、フォント描画部28は、ページ毎にビデオ部16に印刷を実行させ、これにより印刷物が得られ(ステップS22)、印刷が終了する。
【0026】
他方、ステップS14の判定の結果、使用フォント設定データがレジデントフォントデータを使用する設定であれば、ステップS20及びステップS22が実行され、レジデントフォントデータを用いて文字情報が描画される。
【0027】
上述した一実施形態のプリンタ10では、ビデオ部16が、ダウンロードフォントデータに代えて、レジデントフォントデータを用いて印刷することによって、ダウンロードフォントデータのRAM22へのキャッシュが省略されるので、印刷時間が短縮されるとともに、RAM22の使用効率が向上する。
【0028】
また、上述した一実施形態では、例外処理としてレジデントフォントデータを用いて印刷することで、プリンタ10が印刷物を作成することなくエラー状態で停止することが防止される。
【0029】
更に、上述した一実施形態では、好ましい態様として、ステップS12において、ダウンロードフォントデータが有効に存在していても、使用フォント設定データにも基づいてレジデントフォントデータを用いて印刷することによって、常に、印刷時間が短縮されるとともにRAM22の使用効率が向上する。
【0030】
本発明は、上述した一実施形態に限定されることはなく、種々の変形を加えた実施形態も含む。
例えば、上述した一実施形態では、使用フォント設定データにも基づいて使用するフォントデータが決定されていたけれども、ダウンロードフォントデータが存在し、且つ、有効か否かを判定した結果のみに基づいて、使用するフォントデータが決定されてもよい。
【0031】
あるいは、上述した一実施形態では、ダウンロードフォントデータが存在し、且つ、有効か否かを判定するステップS12の後に、レジデントフォントデータを使用する設定か否かを判定するステップS14が実行されていたけれども、図3に示すように、ステップS14をステップS10の前に行ってもよい。
この場合、レジデントフォントデータを使用する設定であれば、ステップS10及びステップS12を実行することなく、ステップS20及びS22が実行される。この場合、印刷時間のより一層の短縮が期待される。
【0032】
また、上述した一実施形態のプリンタ10は、印刷命令としてXPSファイルが用いられるシステムに好適であるが、印刷命令は、文字情報と共にフォントデータを含むものであれば、他の型式の命令であってもよい。
最後に、本発明が適用される画像形成装置は、白黒又はカラーのプリンタの他、プリンタ、ファックス及びスキャナの機能を有する複合機であってもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0033】
10 プリンタ(画像形成装置)
12 ホスト
14 制御部
16 ビデオ部(印刷部)
18 CPU
20 ROM(記憶部)
22 RAM
24 NVRAM
26 PDL解析部(ページ記述言語解析部)
28 フォント描画部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷命令を解析するページ記述言語解析部と、
レジデントフォントデータを記憶する記憶部と、
前記ページ記述言語解析部の解析結果に基づいて画像を形成する印刷部とを備え、
前記印刷部は、前記印刷命令の型式が文字情報を描くのに用いられるべきダウンロードフォントデータを含む型式であるときに、前記ページ記述言語解析部によって解析された前記印刷命令中の前記ダウンロードフォントデータの有無若しくは状態、又は、前記印刷命令とは別の命令に基づいて、前記ダウンロードフォントデータに代えて、前記レジデントフォントデータを用いて前記文字情報を印刷する
ことを特徴とする画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−143622(P2011−143622A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−6498(P2010−6498)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】