画像形成装置
【課題】分散制御システムを適用するとともに、複数の制御部の間で発生する制御誤差の影響を低減する画像形成装置を提供する。
【解決手段】本画像形成装置は、分散制御を実現するために、それぞれが内蔵クロック発振器によって駆動される第1制御部及び第2制御部を備える。また、第1制御部は、予め定められたクロック数に応じたパルス信号を自身の内蔵クロック発振器を用いて駆動するタイマを用いて生成し、第2制御部へ出力する。また、第2制御部は、第1制御部から出力されたパルス信号のパルス幅を、自身の内蔵クロック発振器を用いて駆動するタイマを用いて計測し、上記予め定められたクロック数に相当するパルス幅と、計測したパルス幅を用いて補正係数を算出する。さらに、第2制御部は、算出した補正係数を用いて、制御対象となる負荷を制御する。
【解決手段】本画像形成装置は、分散制御を実現するために、それぞれが内蔵クロック発振器によって駆動される第1制御部及び第2制御部を備える。また、第1制御部は、予め定められたクロック数に応じたパルス信号を自身の内蔵クロック発振器を用いて駆動するタイマを用いて生成し、第2制御部へ出力する。また、第2制御部は、第1制御部から出力されたパルス信号のパルス幅を、自身の内蔵クロック発振器を用いて駆動するタイマを用いて計測し、上記予め定められたクロック数に相当するパルス幅と、計測したパルス幅を用いて補正係数を算出する。さらに、第2制御部は、算出した補正係数を用いて、制御対象となる負荷を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、階層構造を有する複数のCPU群を有する分散制御システムによって実現された画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を採用する画像形成装置のプリンタデバイス制御では、1つのCPUによる集中制御が行われている。しかし、制御主体の一点集中によるCPU負荷の増大によって、より高性能なCPUが必要となる。さらに、プリンタデバイスの制御負荷の増大に伴い、通信ケーブル(通信束線)をCPU基板から離れた制御負荷ドライバユニットまで引き回す必要があり、長大な通信ケーブルが多数必要となっていた。このような問題を解決するために、電子写真システムを構成する各制御モジュールを個々のサブCPUに分割する制御形態が注目されている。
【0003】
例えば、特許文献1では車両における機能モジュールを階層的に配置し、分散制御を行うことを提案しており、特許文献2では、同様の階層的な制御構造をロボット・自動化機器に適用することを提案している。また、これらの複数のサブCPU同士は全体をシステムとして動作させるための通信手段を有している。さらに、特許文献2では、機能モジュール間の通信を行うための制御ネットワークが階層毎に別々の通信ネットワークを構築している。このように負荷を分散することでより安定した制御ネットワークを構築することが提案されている。
【0004】
上記提案のような制御ネットワークを画像形成装置に適用するためには、負荷を分散させることによって生じるコストアップを最小限に抑えることが必要となる。特に、1台の画像形成装置に搭載する複数のCPU回路基板では、CPU回路基板上の部品点数を削減することによるコストダウン効果は大きい。これを実現するために、多くのCPUベンダからはクロック発振器をCPUに内蔵した製品が出されており、これを利用したシステムも発売されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−071819号公報
【特許文献2】特開2006−171960号公報
【特許文献3】特開2000−078891号公報
【特許文献4】特開2001−119996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、内蔵クロック発振器には以下のような課題がある。例えば、内蔵クロック発振器は、一般的なクロック発振器に対して精度が悪く、さらに同一種類のCPUの内蔵クロック発振器であっても個体差が生じてしまう。その結果、複数のCPUが個別にステッピングモータなどのアクチュエータを制御する場合、内蔵クロック発振器の誤差により、紙搬送を制御するステッピングモータ間の速度に誤差が生じ、紙の引っ張り合いや撓みなどが生じてしまう。また、所定時間を計測する場合においても、それぞれのCPUで時間計測結果が異なってしまう可能性がある。その結果、紙づまりや色ズレ等の原因となる。したがって、分散制御を実現する画像形成装置では、各CPU間での速度差や時間制御に誤差のないシステムが必須となる。
【0007】
そこで、特許文献3には、モータ励磁信号シーケンスに関するデータをメモリに記憶し、制御対象モータに対してメモリのデータを励磁信号として出力するモータ制御装置が提案されている。また、特許文献4には、起動パルス速度と運動パルス速度との間の減速時間から線形演算式の解又は線形演算式から演算方法を選別し、次回の加減速処理移行時間である加減速中のパルス速度を演算する分散制御システムのモータ加減速制御方法が提案されている。しかし、何れもCPU単独での制御方法であり、複数のCPUにおけるモータ制御間の誤差が考慮されておらず、例えば、紙搬送を制御するステッピングモータ間の速度に誤差が生じ、紙の引っ張り合いや撓みなどの問題が生じてしまう。
【0008】
本発明は、上述の問題に鑑みて成されたものであり、分散制御システムを適用するとともに、複数の制御部の間で発生する制御誤差の影響を低減する画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、例えば、画像形成装置として実現できる。画像形成装置は、第1内蔵クロック発振器によって駆動される第1制御部と、第2内蔵クロック発振器によって駆動される第2制御部と、を備え、第1制御部は、第1内蔵クロック発振器によって駆動するタイマを用いて、予め定められたクロック数に応じたパルス信号を生成し、生成したパルス信号を第2制御部に送信する信号送信手段を備え、第2制御部は、信号送信手段によって送信されるパルス信号を受信する信号受信手段と、第2内蔵クロック発振器によって駆動するタイマを用いて、信号受信手段によって受信したパルス信号のパルス幅を計測する計測手段と、予め定められたクロック数に相当するパルス幅と、計測手段によって計測されたパルス幅とを用いて補正係数を算出する算出手段と、算出された補正係数を用いて負荷を制御する制御手段と
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、例えば、分散制御システムを適用するとともに、複数の制御部の間で発生する制御誤差の影響を低減する画像形成装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態に係る画像形成装置1000の概観を示す図である。
【図2】本実施形態に係る画像形成部300の構成例を示す断面図である。
【図3】本実施形態に係るマスタCPU、サブマスタCPU及びスレーブCPUの関連を模式的に示す図である。
【図4】本実施形態に係る画像形成装置1000の制御基板の一例を示す図である。
【図5】本実施形態に係る搬送モジュールA280の構成例を示す図である。
【図6】本実施形態に係る搬送モジュールB281の構成例を示す図である。
【図7】本実施形態に係るサブマスタCPUとスレーブCPUとの接続例を示す図である。
【図8】本実施形態に係るコンペアマッチ出力の一例を示す図である。
【図9】本実施形態に係るコンペアマッチ出力の制御手順を示すフローチャートである。
【図10】本実施形態に係るインプットキャプチャ入力の一例を示す図である。
【図11】本実施形態に係るインプットキャプチャ入力の制御手順を示すフローチャートである。
【図12】本実施形態に係る上位層CPUのクロック補正処理の制御手順を示すフローチャートである。
【図13】本実施形態に係る下位層CPUのクロック補正処理の制御手順を示すフローチャートである。
【図14】本実施形態に係るコンペアマッチ出力の一例を示す図である。
【図15】本実施形における各CPUの動作概略
【発明を実施するための形態】
【0012】
<本実施形態>
<画像形成装置の構成>
以下では、図1乃至図15を参照して、本発明の実施形態について説明する。まず、図1を参照して、本実施形態に係る画像形成装置1000の構成について説明する。画像形成装置1000は、自動原稿搬送装置100、画像読取部200、画像形成部300、及び操作部10を備える。図1に示すように、画像読取部200は、画像形成部300の上に載置されている。さらに、画像読取部200上には、自動原稿搬送装置(DF)100が載置されている。また、本画像形成装置1000は、複数の制御部(CPU)を用いて分散制御を実現する。各CPUの構成については、図3を用いて後述する。
【0013】
自動原稿搬送装置100は、原稿を自動的に原稿台ガラス上に搬送する。画像読取部200は、自動原稿搬送装置100から搬送された原稿を読み取って画像データを出力する。画像形成部300は、自動原稿搬送装置100から出力された画像データやネットワークを介して接続された外部装置から入力された画像データに従って記録材(記録紙)に画像を形成する。操作部10は、ユーザが各種操作を行うためのGUI(グラフィカル・ユーザ・インタフェース)を有する。さらに、操作部10は、タッチパネル等の表示部を有し、ユーザに対して情報を提示することもできる。
【0014】
<画像形成部>
次に、図2を参照して、画像形成部300の詳細について説明する。なお、本実施形態の画像形成部300は電子写真方式を採用している。また、図2の参照番号の末尾に示すアルファベットY、M、C、Kは、それぞれイエロー、マゼンダ、シアン、ブラックのトナーに対応した各エンジンを示す。以下では、全てのトナーに対応するエンジンを示す場合は末尾のアルファベットY、M、C、Kを省略して参照番号を記載し、個別に示す場合は参照番号の末尾にアルファベットY、M、C、Kを付記して記載する。
【0015】
像担持体としてフルカラー静電画像を形成するための感光ドラム(以下、単に「感光体」と称する。)225は、モータで矢印Aの方向に回転可能に設けられる。感光体225の周囲には、一次帯電装置221、露光装置218、現像装置223、転写装置220、クリーナ装置222、除電装置271が配置されている。
【0016】
現像装置223Kはモノクロ現像のための現像装置であり、感光体225K上の潜像をKのトナーで現像する。また現像装置223Y、M、Cはフルカラー現像のための現像装置であり、現像装置223Y、M、Cは、感光体225Y、M、C上の潜像をそれぞれY、M、Cのトナーで現像する。感光体225上に現像された各色のトナー像は、転写装置220によって中間転写体である転写ベルト226に一括で多重転写されて、4色のトナー像が重ね合わされる。
【0017】
転写ベルト226は、ローラ227、228、229に張架されている。ローラ227は、駆動源に結合されて転写ベルト226を駆動する駆動ローラとして機能し、ローラ228は転写ベルト226の張力を調節するテンションローラとして機能する。また、ローラ229は、2次転写装置231としての転写ローラのバックアップローラとして機能する。転写ローラ脱着ユニット250は、2次転写装置231を転写ベルト226に接着させるか、又は離脱させるための駆動ユニットである。2次転写装置231を通過した後の転写ベルト226の下部にはクリーナブレード232が設けられており、転写ベルト226上の残留トナーがブレードで掻き落とされる。
【0018】
カセット240、241及び手差し給紙部253に格納された記録材(記録紙)は、レジストローラ255、給紙ローラ対235及び縦パスローラ対236、237によってニップ部、つまり2次転写装置231と転写ベルト226との当接部に給送される。なお、その際2次転写装置231は、転写ローラ脱着ユニット250によって転写ベルト226に当接されている。転写ベルト226上に形成されたトナー像は、このニップ部で記録材上に転写される。その後、トナー像が転写された記録材は、定着装置234でトナー像が熱定着されて装置外へ排出される。
【0019】
カセット240、241及び手差し給紙部253は、それぞれ記録材の有無を検知するためのシートなし検知センサ243、244、245を備える。また、カセット240、241及び手差し給紙部253は、それぞれ記録材のピックアップ不良を検知するための給紙センサ247、248、249を備える。
【0020】
ここで、画像形成部300による画像形成動作について説明する。画像形成が開始されると、カセット240、241及び手差し給紙部253に格納された記録材は、ピックアップローラ238、239、254により1枚毎に給紙ローラ対235に搬送される。記録材は、給紙ローラ対235によりレジストローラ255へと搬送されると、その直前のレジストセンサ256により記録材の通過が検知される。
【0021】
レジストセンサ256により記録材の通過が検知された時点で、本実施形態では所定の時間が経過した後に一端搬送動作を中断する。その結果、記録材は停止しているレジストローラ255に突き当たり搬送が停止されるが、その際記録材の進行方向端部が搬送経路に対して垂直になるように搬送位置が固定され、記録材の搬送方向が搬送経路に対してずれた状態の斜行が補正される。以下では、この処理を位置補正と称する。位置補正は、以降の記録材に対する画像形成方向の傾きを最小化するために必要となる。位置補正後、レジストローラ255を起動させることにより、記録材は、2次転写装置231へ供給される。なお、レジストローラ255は、駆動源に結合され、クラッチによって駆動が伝えられることで回転駆動を行う。
【0022】
次に、一次帯電装置221に電圧を印加して感光体225の表面を予定の帯電部電位で一様にマイナス帯電させる。続いて、帯電された感光体225上の画像部分が所定の露光部電位になるようにレーザスキャナ部からなる露光装置218で露光を行い潜像が形成される。露光装置218はプリンタ制御I/F215を介してコントローラ460より送られてくる画像データに基づいてレーザ光をオン、オフすることによって画像に対応した潜像を形成する。
【0023】
また、現像装置223の現像ローラには各色毎に予め設定された現像バイアスが印加されており、上記潜像は、現像ローラの位置を通過する際にトナーで現像され、トナー像として可視化される。トナー像は、転写装置220により転写ベルト226に転写され、さらに2次転写装置231で、給紙部より搬送された記録材に転写された後、レジスト後搬送パス268を通過し、定着搬送ベルト230を介して、定着装置234へと搬送される。
【0024】
定着装置234では、まずトナーの吸着力を補って画像乱れを防止するために、定着前帯電器251、252で帯電され、さらに定着ローラ233でトナー画像が熱定着される。その後、記録材は、排紙フラッパ257により排紙パス258側に搬送パスが切り替えられることにより、排紙ローラ270によってそのまま排紙トレイ242に排紙される。
【0025】
感光体225上に残留したトナーは、クリーナ装置222で除去、回収される。最後に、感光体225は、除電装置271で一様に0ボルト付近まで除電されて、次の画像形成サイクルに備える。
【0026】
画像形成装置1000によるカラーの画像形成開始タイミングは、Y、M、C、Kの同時転写であるため転写ベルト226上の任意の位置に画像形成を行うことが可能である。しかし、感光体225Y、M、C上のトナー像を転写する位置のずれ分をタイミング的にシフトさせながら画像形成開始タイミングを決定する必要がある。
【0027】
なお、画像形成部300においては、記録材を連続的にカセット240、241及び手差し給紙部253より給送させることが可能である。この場合、先行する記録材のシート長を考慮し、記録材が重なり合わないような最短の間隔でカセット240、241及び手差し給紙部253からの給紙を行う。上述したように、位置補正後に、レジストローラ255を起動させることにより、記録材は2次転写装置231へ供給されるが、2次転写装置231に到達すると、再びレジストローラ255が一時停止される。これは、後続の記録材に対して先行する記録材と同様に位置補正を行うためである。
【0028】
次に、記録材の裏面に画像を形成する場合の動作について詳細に説明する。記録材の裏面に画像を形成する際には、まず記録材の表面への画像形成が先行して実行される。表面のみの画像形成であれば、定着装置234でトナー像が熱定着された後に、そのまま排紙トレイ242に排紙される。一方、引き続き裏面の画像形成を行なう場合、センサ269で記録材が検知されると、排紙フラッパ257により裏面パス259側に搬送パスが切り替えられ、それに併せた反転ローラ260の回転駆動により記録材が両面反転パス261に搬送される。その後、記録材は、送り方向幅の分だけ両面反転パス261に搬送された後に反転ローラ260の逆回転駆動により進行方向が切り替えられ、表面に画像形成された画像面を下向きにして両面パス搬送ローラ262の駆動により両面パス263に搬送される。
【0029】
続いて、記録材は、両面パス263を再給紙ローラ264に向かって搬送されると、その直前の再給紙センサ265により通過が検知される。再給紙センサ265により記録材の通過が検知されると、本実施形態では所定の時間が経過した後に一端搬送動作を中断する。その結果、記録材は、停止している再給紙ローラ264に突き当たり搬送が一時停止されるが、その際記録材の進行方向端部が搬送経路に対して垂直になるように位置が固定され、記録材の搬送方向が再給紙パス内の搬送経路に対してずれる斜行が補正される。以下では、この処理を再位置補正と称する。
【0030】
再位置補正は、以降の記録材裏面に対する画像形成方向の傾きを最小化するために必要となる。再位置補正後、再給紙ローラ264を起動させることにより、記録材は、表裏が逆転した状態で再度給紙パス266上に搬送される。その後の画像形成動作については、上述した表面の画像形成動作と同じであるためここでは省略する。このように表裏両面に画像形成された記録材は、そのまま排紙フラッパ257より排紙パス258側に搬送パスが切り替えられることにより、排紙トレイ242に排紙される。
【0031】
なお、本画像形成部300においては、両面印刷時においても、記録材の連続給送が可能である。しかしながら、記録材への画像形成や形成されたトナー像の定着などを行うための装置は1系統しか有していないため、表面への印刷と裏面への印刷を同時に行うことはできない。したがって、両面印刷時においては、画像形成部300に対し、カセット240、241及び手差し給紙部253からの記録材と、裏面印刷のために反転させて画像形成部に再度給送された記録材とは交互に画像形成されることとなる。
【0032】
本画像形成部300は、図2に示す各制御負荷を、後述する搬送モジュールA280、搬送モジュールB281、作像モジュール282、定着モジュール283という4つの制御ブロックに分けて各々が自律的に制御されている。さらに、これらの4つの制御ブロックを統括して画像形成装置として機能させるためのマスタモジュール284を有する。以下では、各モジュールの制御構成について図3を用いて説明する。
【0033】
本実施形態において、マスタモジュール284に備えられるマスタCPU(マスタ制御部)1001は、プリンタ制御I/F215を介してコントローラ460より送られる指示及び画像データに基づいて画像形成装置1000の全体を制御する。また、画像形成を実行するための搬送モジュールA280、搬送モジュールB281、作像モジュール282、及び定着モジュール283は、各機能を制御するサブマスタCPU(サブマスタ制御部)601、901、701、801を備える。サブマスタCPU601、901、701、801はマスタCPU1001により制御される。さらに、各機能モジュールは、さらに、各機能を実行するための制御負荷を動作させるためのスレーブCPU(スレーブ制御部)602、603、604、605、902、903、702、703、704、705、706、802、803を備える。スレーブCPU602、603、604、605はサブマスタCPU601に、スレーブCPU902、903はサブマスタCPU901に、スレーブCPU702、703、704、705、706はサブマスタCPU701に、スレーブCPU802、803はサブマスタCPU801に制御される。
【0034】
図3に示すように、マスタCPU1001と複数のサブマスタCPU601、701、801、901は共通のネットワーク型通信バス(第1信号線)1002によってバス接続される。サブマスタCPU601、701、801、901同士の間もネットワーク型通信バス(第1信号線)1002によってバス接続される。なお、マスタCPU1001と複数のサブマスタCPU601、701、801、901はリング接続されるものでもよい。サブマスタCPU601は、さらに、高速シリアル通信バス(第2信号線)612、613、614、615を介して、複数のスレーブCPU602、603、604、605のそれぞれと1対1接続(ピアツーピア接続)されている。同様に、サブマスタCPU701は、高速シリアル通信バス(第2信号線)711、712、713、714、715を介して、それぞれスレーブCPU702、703、704、705、706と接続される。サブマスタCPU801は、高速シリアル通信バス(第2信号線)808、809を介して、それぞれスレーブCPU802、803と接続される。サブマスタCPU901は、高速シリアル通信バス(第2信号線)909、910を介して、それぞれスレーブCPU902、903と接続される。ここで、高速シリアル通信バスは、短距離高速通信に用いられる。
【0035】
本実施形態に係る画像形成装置1000において、タイミングに依存した応答性が必要とされる制御に関しては、各サブマスタCPUに統括された機能モジュール内で実現されるように機能分割されている。そのため、末端の制御負荷を駆動するための各スレーブCPUと各サブマスタCPUとの間の通信は、応答性のよい高速シリアル通信バスによって接続されている。つまり、上記第2信号線には、上記第1信号線よりもデータ転送のタイミング精度が高い信号線が用いられる。
【0036】
一方、サブマスタCPU601、701、801、901とマスタCPU1001との間では、精密な制御タイミングを必要としない、画像形成動作の大まかな処理の流れを統括するようなやり取りだけが行われる。例えば、マスタCPU1001はサブマスタCPUに、画像形成前処理開始、給紙開始、画像形成後処理開始といった指示を出す。また、マスタCPU1001はサブマスタCPUに、コントローラ460から指示されたモード(例えばモノクロモードや両面画像形成モードなど)に基づいた指示を画像形成開始の前に出す。サブマスタCPU601、701、801、901のそれぞれの間でも、精密なタイミング制御を必要としないやり取りだけが行われる。すなわち、画像形成装置の制御を、相互に精密なタイミング制御を必要としない制御単位に分け、それぞれのサブマスタCPUがそれぞれの制御単位を精密なタイミングで制御する。これにより、本画像形成装置1000では、通信トラフィックを最小限に抑え、低速で安価なネットワーク型通信バス1002で接続することを可能としている。なお、マスタCPU、サブマスタCPU、及びスレーブCPUについては、実装される制御基板が必ずしも一律である必要はなく、装置実装上の事情に合わせて可変的に配置させることが可能である。
【0037】
次に、図4を参照して、本実施形態における具体的なマスタCPU、サブマスタCPU、スレーブCPUの基板構成上の配置について説明する。本実施形態によれば、図4に示すように、様々な制御基板の構成を採用することができる。例えば、サブマスタCPU601とスレーブCPU602、603、604、605とは、同一の基板上に実装されている。また、サブマスタCPU701及びスレーブCPU702、703、704、又は、サブマスタCPU801及びスレーブCPU802、803のように、サブマスタCPUと個々のスレーブCPUが独立の基板として実装されてもよい。また、スレーブCPU705、706のように一部のスレーブCPUが同一の基板上に実装されてもよい。また、サブマスタCPU901及びスレーブCPU902のように、サブマスタCPUとスレーブCPUの一部だけが同一基板上に配置されてもよい。
【0038】
<各制御モジュールの構成>
次に、図5及び図6を参照して、各制御モジュールに関する機能と構成について詳細に説明する。図5に示す搬送モジュールA280は、カセット240、241及び手差し給紙部253に格納された記録材を停止したレジストローラ255のニップ部に突き当てるまでの給紙制御(給送機能)を司っている。搬送モジュールA280は、給紙制御を統括的に制御するサブマスタCPU601と、各制御負荷の駆動を行うスレーブCPU602、603、604、605とを含む。また、各スレーブCPUには、直接制御される制御負荷群が接続されている。
【0039】
スレーブCPU602は、カセット240に関連したピックアップローラ238を駆動させるための駆動源モータ606、シートなし検知センサ243、及び給紙センサ247を制御負荷とし、給紙パス266に記録材を引き渡すまでの制御を行う。スレーブCPU603は、カセット241に関連したピックアップローラ239を駆動させるための駆動源モータ607、シートなし検センサ244、給紙センサ248を制御負荷とし、給紙パス266に記録材を引き渡すまでの制御を行う。スレーブCPU604は、手差し給紙部253に関連したピックアップローラ254を駆動させるための駆動源モータ608、シートなし検センサ245、給紙センサ249を制御負荷とし、給紙パス266に記録材を引き渡すまでの制御を行う。スレーブCPU605は、給紙ローラ対235、236、237を駆動させるための駆動源モータ609、610、611、レジストセンサ256を制御負荷とする。また、スレーブCPU605は、これらの制御負荷を制御して、カセット240、241、手差し給紙部253から引き渡された記録材をレジストローラ255のニップ部に突き当てるまで搬送し、一時停止させるまでの制御を行う。なお、本実施形態では、サブマスタCPU601とスレーブCPU602、603、604,605は各々独立の高速シリアル通信バス612、613、614、615により1対1で対向接続されている。
【0040】
図6に示す搬送モジュールB281は、定着モジュール283により画像定着後の記録材を引き受け、画像形成部300の外部に排紙するまでの排紙制御(排出機能)、又は裏面印刷を行うために記録材の表裏を反転させて改めて搬送モジュールA280に引き渡すまでの裏面反転制御(反転機能)を司っている。搬送モジュールB281は、排紙制御及び裏面反転制御を統括的に制御するサブマスタCPU901と、各制御負荷を駆動するスレーブCPU902、903とを含む。また、各スレーブCPUには、直接制御される制御負荷群が接続されている。
【0041】
スレーブCPU902は、排紙フラッパ257を切り替えるためのソレノイド904、排紙ローラ270を駆動させるための駆動源モータ905、反転ローラ260を駆動させるための駆動源モータ906、センサ269を制御負荷とする。スレーブCPU902は、これらの制御負荷を制御し、定着後の搬送パスから記録材を機外に排出するか、又は両面反転パス261に引き渡すまでの制御を行う。スレーブCPU903は、両面パス搬送ローラ262を駆動させるための駆動源モータ907、再給紙ローラ264を駆動させるための駆動源モータ908、再給紙センサ265を制御負荷とする。スレーブCPU903は、これらの制御負荷を制御し、反転パスより引き渡された記録材を再度給紙パス266に引き渡すまでの制御を行う。なお、本実施形態では、サブマスタCPU901とスレーブCPU902、903は、各々独立の高速シリアル通信バス909、910により1対1で対向接続されている。
【0042】
本実施形態においては、上述した4つのサブモジュールの自律的な動作を組み合わせることによって記録材への画像形成制御を実現している。しかし、実際の画像形成動作は給紙段/用紙サイズの選択や、片面/両面印刷の指定、白黒印刷/カラー印刷の指定などの組み合わせに応じていくつかのパターンに分かれる。操作部10や、外部I/F465を介して操作者が予め設定を行うことにより、具体的な指示が入力されるが、その指示に基づいて操作者が所望する動作を実現する上では各モジュールを統合的に動作させるための全体制御が必要となる。本実施形態においては、マスタモジュール284におけるマスタCPU1001がサブマスタCPU601、701、801、901を統括的に制御する。ここで、マスタCPU1001による全体制御の大きな流れは、低速なネットワーク型通信バス1002を介したマスタCPU1001とサブマスタCPU601、701、801、901との間の通信によるコマンドのやり取りにより実現される。さらに、高速シリアル通信バスによるサブマスタCPU601、701、801、901とスレーブCPU602、603、604、605、702、703、704、705、706、802、803、902、903との間の対向通信によるコマンドのやり取りによって実現される。
【0043】
<クロック補正処理>
本実施形態における各CPUは、それぞれが個別の内部クロック発振器によって駆動される。なお、各内蔵クロック発振器は、同一のクロック信号の周波数で動作するものとする。しかし、同一の動作周波数で動作させようとした場合であっても、それぞれの内部クロック発振器の個体差によって誤差が生じてくる。その結果、複数のCPUが個別にステッピングモータなどのアクチュエータを制御する場合、内蔵クロック発振器の誤差により、紙搬送を制御するステッピングモータ間の速度に誤差が生じ、紙の引っ張り合いや撓みなどが生じてしまう。特に、本実施形態のように、複数のスレーブCPUでモータを回転させて1枚の用紙を搬送する場合、速度差による用紙の撓みや座屈が発生したり、用紙の引っ張り合いによるモータの脱調、さらには転写部における速度差がそのまま画像不良の原因となる。また、時間計測時においても内蔵クロック発振器のズレは制御周期や制御タイミングに直接影響するため、紙詰まりや画像不良の原因となってしまう。即ち、精度が悪くかつ個体差がある内蔵クロック発振器によるクロック信号の周波数による影響を低減し、上記不具合が発生しないように補正する必要がある。そこで、本実施形態では、各CPUを駆動するクロック信号の周波数の誤差による制御誤差を低減するために、クロック補正処理を実行する。
【0044】
<サブマスタCPUとスレーブCPUとの接続例>
まず、図7を参照して、サブマスタCPUとスレーブCPUとの接続について説明する。図7には、サブマスタCPU601とスレーブCPU602との接続の一例を示す。なお、以下では、サブマスタCPU(上位層制御部)とスレーブCPU(下位層制御部)との間で本発明を適用する例について説明する。しかし、本発明は、以下で説明する両制御部の制御が反対であってもよく、さらには、サブマスタCPU間、又は、スレーブCPU間においても適用することができる。即ち、本発明は、第1制御部と第2制御部との間で適用可能である。つまり、本発明は、複数の制御部の間で発生する制御誤差の影響を低減するものである。
【0045】
サブマスタCPU601は内蔵クロック発振器(第1内蔵クロック発振器)656に基づいて動作する。また、タイマ655とシリアル通信部654もまた内蔵クロック発振器656のクロックに基づいて動作している。シリアル通信部654は送信ピン650と受信ピン651を用いて外部と通信を行う。また、タイマ655は、コンペアマッチ出力ピン652とインプットキャプチャ入力ピン653を有する。タイマ655は、内蔵クロック発振器656のクロックをカウントするもので、サブマスタCPU601によってカウント値がリセットされる。
【0046】
スレーブCPU602は内蔵クロック発振器(第2内蔵クロック発振器)666に基づいて動作する。当該クロックはタイマ665とシリアル通信部664に供給される。シリアル通信部664は送信ピン660と受信ピン661を有し、これらはサブマスタCPU601の受信ピン651と送信ピン650にケーブルによって接続されている。また、タイマ665は、コンペアマッチ出力ピン662とインプットキャプチャ入力ピン663を有する。タイマ665は、内蔵クロック発振器666のクロックをカウントするもので、スレーブCPU602によってカウント値がリセットされる。したがって、本実施形態によれば、サブマスタCPU601のシリアル通信部654が開始通知手段として機能し、スレーブCPU602のシリアル通信部664が開始応答手段として機能する。
【0047】
また、タイマ665はコンペアマッチ出力ピン652とインプットキャプチャ入力ピン663を有する。インプットキャプチャ入力ピン663は、図7に示すように、サブマスタCPU601のコンペアマッチ出力ピン652とパルス信号を送信するための専用の信号線で接続されている。つまり、本実施形態によれば、サブマスタCPU601のコンペアマッチ出力ピン652が信号送信手段として機能し、スレーブCPU602のインプットキャプチャ入力ピン663が信号受信手段として機能する。
【0048】
<コンペアマッチ出力>
次に、図8及び図9を参照して、サブマスタCPU601のタイマ機能を用いたコンペアマッチ出力について説明する。コンペアマッチ出力とは、サブマスタCPU601がスレーブCPU602に対して、クロック補正処理を実行するための予め定められたクロック数に応じたパルス信号を生成し、上記専用の信号線を介して出力する動作を示す。図8は、タイマカウンタの模式図を示す。1500はタイマカウント値を示す。1502はコンペアマッチ出力ピン652に出力される信号を示し、立上がり、立下がりの両エッジでサブマスタCPU601に対して割り込み信号が発生する仕組みとなっている。タイマ機能を起動すると、タイマ655は、所定のカウント値T1(1501)までカウントアップを続け、カウント値T1(1501)に到達すると割り込み処理を開始する仕組みとなる。また、図8の1502は、タイマカウント値に対応するコンペアマッチ出力を示す。
【0049】
図9は、タイマカウント値が所定のカウント値T1に到達すると実行される割り込み処理の制御フローを示す。当該割り込み処理は、サブマスタCPU601によって統括的に制御される。
【0050】
割り込み処理が発生すると、S1601において、サブマスタCPU601は、タイマカウントをクリアし、S1602でコンペアマッチ出力ピン652にトグル出力を実施する。つまり、タイマカウント値がT1に到達する毎に、タイマカウント値がリセットされるとともに、コンペアマッチ出力が反転される。続いて、S1603において、サブマスタCPU601は、予め定められたクロック数に相当する所定出力回数Nのトグル出力を実施したか否かを判定し、出力した場合はS1605に出力終了フラグE1をオンに設定し処理を終了する。一方、所定回数Nの出力が終わっていなければそのまま処理を終了する。これにより、サブマスタCPU601は、予め定められたクロック数に応じたパルス信号を内蔵クロック発振器656によって駆動されるタイマ655を用いて生成し、上記専用の信号線を介してスレーブCPU602に出力する。
【0051】
このように、本実施形態ではタイマカウントと割り込みを使用して、図8に示すコンペアマッチ出力1502の出力を実現している。また、より出力精度を向上させるために、割り込み処理を使用せずCPUの高機能タイマを用いてコンペアマッチ出力ピンからトグル出力を実現してもよい。
【0052】
<インプットキャプチャ入力>
次に、図10及び図11を参照して、スレーブCPU602のタイマ機能を用いたインプットキャプチャ入力について説明する。インプットキャプチャ入力とは、上記コンペアマッチ出力において出力されたパルス信号をスレーブCPU602が上記専用の信号線を介して受信する動作を示す。図10は、タイマカウントの模式図を示す。1701はタイマカウント値を示す。1702はインプットキャプチャ入力ピン663に入力される信号であり、立上りエッジ及び立下りエッジでスレーブCPU602に対して割り込み信号が発生する仕組みとなっている。
【0053】
図7に示すように、インプットキャプチャ入力ピン663は対象となるサブマスタCPU601のコンペアマッチ出力ピン652と接続されている。図11は、インプットキャプチャ入力信号1702に立上りエッジ及び立下りエッジが発生すると実行される割り込み処理の制御フローを示す。当該割り込み処理は、スレーブCPU602によって統括的に制御される。
【0054】
割り込み処理が発生すると、S1801において、スレーブCPU602は、タイマ665のカウント値T2を読み出し、S1802にてタイマカウンタをクリアする。続いて、S1803において、スレーブCPU602は、インプットキャプチャ入力信号に所定回数Nのエッジが入力された否かを判定し、所定回数Nを超えていればS1804に進み、入力終了フラグE2をオンに設定して処理を終了する。一方、所定回数Nの入力が無ければそのまま処理を終了する。上述の処理により、スレーブCPU602は、サブマスタCPU601から出力されたパルス信号(コンペアマッチ出力)のパルス幅を、内蔵クロック発振器666によって駆動されるタイマ665により計測する。なお、上記パルス幅とは、内蔵クロック発振器により出力される複数のクロック信号の信号幅に相当する。
【0055】
このように、本実施形態ではタイマカウントと割り込みを使用して、図10に示すインプットキャプチャ入力信号1702のパルス幅を計測している。また、より計測精度を向上させるために、割り込み処理を使用せずCPUの高機能タイマを用いて自動的にパルス幅を計測してもよい。
【0056】
<補正手順>
次に、図12を参照して、サブマスタCPU601におけるクロック補正処理の制御手順について説明する。ここでは、一例として、サブマスタCPU601とスレーブCPU602との間のクロック補正処理について説明する。クロック補正処理が開始されると、S1901において、サブマスタCPU601は、スレーブCPU602に対してクロック補正処理の開始通知を行う。ここで通知される内容を表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
CPU動作周波数はサブマスタCPU601の動作周波数であり、タイマ動作周波数はサブマスタCPU601有するタイマ機能の動作周波数である。このように、通知内容としてタイマ動作周波数の情報を設けた理由は、サブマスタCPU601の動作周波数と周辺回路であるタイマの動作周波数が異なるケースを想定しているためである。カウンタ分周期はタイマカウンタの1カウントアップする周波数を決定するための値である。また基準パルス幅はコンペアマッチ出力波形のトグル幅である。また、基準パルス幅は、内蔵クロック発振器から出力される、予め定められたクロック数に相当するクロック信号の信号幅である。本実施形態ではサブマスタCPU601の動作周波数と、タイマ動作周波数とが共に20MHz、カウンタ分周期が1/1φ(即ち、20MHz)、基準パルス幅が0xFF、測定回数を10回としている。
【0059】
S1902において、サブマスタCPU601は、スレーブCPU602からACKを受信したか否かを判定する。ACKを受信したら、S1903に進み、ACKの内容に基づいて、スレーブCPU602がクロック補正処理を開始可能か否かを判定する。ここで、スレーブCPU602からクロック補正処理の開始不可が通知された場合は、処理を終了する。
【0060】
一方、クロック補正処理の開始可能が通知された場合はS1904に進み、サブマスタCPU601は、コンペアマッチ出力ピン652にトグル出力を開始する。したがって、本実施形では、図14に示すように1周期が3.264msecのトグル波形がコンペアマッチ出力波形2100として出力される。続いて、S1905において、サブマスタCPU601は、出力終了フラグE1がオンに設定されているか否かを判定し、設定されていればS1906に進み、クロック補正処理の終了通知をスレーブCPU602に対して通知し、S1907でACKを待って処理を終了する。一方、S1905で出力終了フラグE1がオンに設定されていなければ、オンに設定されるまでS1905の判定を定期的に繰り返す。
【0061】
次に、図13を参照して、スレーブCPU602におけるクロック補正処理の制御手順について説明する。ここでは、図12のサブマスタCPU601の処理に対応するスレーブCPU602の処理について説明する。クロック補正処理の開始通知をサブマスタCPU601から受信すると、S2001において、スレーブCPU602は、クロック補正処理を開始することが可能な状態であるか否かを判定する。ここで、クロック補正処理の開始が不可能であればS2008に進み、スレーブCPU602は、サブマスタCPU601に対してクロック補正処理の開始不可通知を行い、処理を終了する。ここで、クロック補正処理の開始が不可能な状態とは、例えば、インプットキャプチャ入力波形計測用のタイマ資源を他の動作で使用している場合等である。
【0062】
一方、クロック補正処理の開始が可能であれば、S2002に進み、スレーブCPU602は、サブマスタCPU601に対してクロック補正処理の開始可能通知及びACKの送信を行いS2003に進む。S2003において、スレーブCPU602は、インプットキャプチャ入力を開始する。続いて、S2004において、スレーブCPU602は、入力終了フラグE2がオンに設定されているか否かを判定し、オフであればS2004の判定を定期的に繰り返す。一方、オンに設定されていれば、S2005に進み、スレーブCPU602は、補正係数αを算出をする。補正係数αの算出は以下のようになる。
【0063】
補正係数α = 基準パルス幅/カウント値T2
つまり、補正係数αは、サブマスタCPU601から出力されるパルス信号のパルス幅(即ち、予め定められたクロック数のクロック信号における信号幅に相当する。)を、スレーブCPU602で計測したパルス幅で除算することにより導出される。1計測につき補正係数αを求め、測定回数分の平均を取ることによって最終的な補正係数αが求まる。本実施形態では、
補正係数α = 0xFF00(65280dec)/カウント値T2
となる。したがって、例えば、カウント値T2が62016の場合は補正係数αは1.05となる。
【0064】
これはサブマスタCPU601の内蔵クロック発振器がスレーブCPU側の内蔵クロック発振器に対して105%の速度、即ち、スレーブCPU602はサブマスタCPU601よりも5%遅いことを意味している。つまり、スレーブCPU602の実質的な動作周波数は、
20MHz×0.95 = 19MHz
となる。
【0065】
したがって、スレーブCPU602は、モータ駆動の速度や時間計測においてタイマを使用する場合に、補正係数αを掛けた値を用いることによって内蔵クロック発振器の誤差による速度や制御誤差を補正することが可能となる。補正係数αを算出すると、S2006において、スレーブCPU602は、クロック補正処理の終了通知を待ち、受信するとS2008に進み、ACKをサブマスタCPU601に返し、処理を終了する。
【0066】
また、上記クロック補正処理を各サブマスタCPUとスレーブCPUとの間で実施することによって、スレーブCPUの内蔵クロック発振器のズレが制御元となるサブマスタCPUの内蔵クロック発振器に全て揃うことになる。したがって、各スレーブCPU間における紙搬送を制御するステッピングモータ間の速度誤差を補正することが可能となる。
【0067】
次に、図15を参照して、本実施形態における動作概略について説明する。S1904においてトグル出力が開始されるとサブマスタCPU601のタイマは、2200に示すように、カウントを開始する。当該カウントはカウント分周期が1/1φとなるため、サブマスタCPU601の動作クロック2207の1クロック毎に1カウントアップする。本実施形態では、サブマスタCPU601の動作周波数は20MHzであるため、1クロック50nsecとなる。カウント値2200が所定カウント値T1(2202)に到達すると(本実施形では0xFF00カウント、サブマスタCPU601に割り込みが発生し図9のフローチャートが実行され、トグル出力2203が出力される。
【0068】
スレーブCPU602は、トグル出力2203のエッジ2204を検知すると、図11に示す割り込み処理を開始する。ここで、トグル出力のエッジ2204以前は、S2003のタイマカウントがフリーランモードで動作されている。また、スレーブCPU602のカウントアップはスレーブCPU602動作周波数2208によって動作する。
【0069】
また、トグル出力2203のエッジ2209が発生すると、スレーブCPU602は、図11に示す割り込み処理を同様に実行する。これによって、期間2205、2206のカウント値T2の計測が実現する。カウント値T2の計測が終了すると、サブマスタCPU601から予め通知されている基準パルス幅(ここでは、0xFF00)を用いて、スレーブCPU602は、自身の動作周波数の補正係数αを算出する。
【0070】
<補正係数αの適用例>
次に、補正係数αの適用方法について説明する。ここでは、スレーブCPU602の補正係数αが1.05の場合を想定する。まず、モータの回転速度の制御に補正係数αを適用する方法ついて説明する。スレーブCPU602が最終的に回転させるモータの速度は以下で求まる。
【0071】
最終モータ速度 = 目標モータ速度×補正係数α
即ち、200mm/secで回転する指示がサブマスタCPU601から通知されると、スレーブCPU602は、210mm/secで回転するように制御することによって、サブマスタCPUが求める200mm/secと同じ速度となる。
【0072】
次に、タイマ等を用いて時間計測の制御に補正係数αを適用する方法について説明する。スレーブCPU602が最終的に計測する時間は以下で求まる。
【0073】
最終計時時間 = 目標時間×(1−(補正係数α−1))
即ち、100msecを計測する場合、スレーブCPU602は、実際には95msec計測することによってサブマスタCPU601が100msecの時間計測するのと同等の結果となる。
【0074】
以上説明したように、本実施形態に係る画像形成装置は、分散制御を実現するために、それぞれが内蔵クロック発振器によって駆動される第1制御部及び第2制御部を備える。また、第1制御部は、予め定められたクロック数に応じたパルス信号を自身の内蔵クロック発振器を用いて駆動するタイマを用いて生成し、第2制御部の出力する。また、第2制御部は、第1制御部から出力されたパルス信号のパルス幅を、自身の内蔵クロック発振器を用いて駆動するタイマを用いて計測し、上記予め定められたクロック数に相当するパルス幅と、計測したパルス幅を用いて補正係数を算出する。さらに、第2制御部は、算出した補正係数を用いて、制御対象となる負荷を制御する。これにより、本実施形態に係る画像形成装置は、複数の制御部により分散制御システムを実現するとともに、各制御部におけるクロック信号の周波数の個体差による制御誤差を容易な構成で低減することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、階層構造を有する複数のCPU群を有する分散制御システムによって実現された画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を採用する画像形成装置のプリンタデバイス制御では、1つのCPUによる集中制御が行われている。しかし、制御主体の一点集中によるCPU負荷の増大によって、より高性能なCPUが必要となる。さらに、プリンタデバイスの制御負荷の増大に伴い、通信ケーブル(通信束線)をCPU基板から離れた制御負荷ドライバユニットまで引き回す必要があり、長大な通信ケーブルが多数必要となっていた。このような問題を解決するために、電子写真システムを構成する各制御モジュールを個々のサブCPUに分割する制御形態が注目されている。
【0003】
例えば、特許文献1では車両における機能モジュールを階層的に配置し、分散制御を行うことを提案しており、特許文献2では、同様の階層的な制御構造をロボット・自動化機器に適用することを提案している。また、これらの複数のサブCPU同士は全体をシステムとして動作させるための通信手段を有している。さらに、特許文献2では、機能モジュール間の通信を行うための制御ネットワークが階層毎に別々の通信ネットワークを構築している。このように負荷を分散することでより安定した制御ネットワークを構築することが提案されている。
【0004】
上記提案のような制御ネットワークを画像形成装置に適用するためには、負荷を分散させることによって生じるコストアップを最小限に抑えることが必要となる。特に、1台の画像形成装置に搭載する複数のCPU回路基板では、CPU回路基板上の部品点数を削減することによるコストダウン効果は大きい。これを実現するために、多くのCPUベンダからはクロック発振器をCPUに内蔵した製品が出されており、これを利用したシステムも発売されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−071819号公報
【特許文献2】特開2006−171960号公報
【特許文献3】特開2000−078891号公報
【特許文献4】特開2001−119996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、内蔵クロック発振器には以下のような課題がある。例えば、内蔵クロック発振器は、一般的なクロック発振器に対して精度が悪く、さらに同一種類のCPUの内蔵クロック発振器であっても個体差が生じてしまう。その結果、複数のCPUが個別にステッピングモータなどのアクチュエータを制御する場合、内蔵クロック発振器の誤差により、紙搬送を制御するステッピングモータ間の速度に誤差が生じ、紙の引っ張り合いや撓みなどが生じてしまう。また、所定時間を計測する場合においても、それぞれのCPUで時間計測結果が異なってしまう可能性がある。その結果、紙づまりや色ズレ等の原因となる。したがって、分散制御を実現する画像形成装置では、各CPU間での速度差や時間制御に誤差のないシステムが必須となる。
【0007】
そこで、特許文献3には、モータ励磁信号シーケンスに関するデータをメモリに記憶し、制御対象モータに対してメモリのデータを励磁信号として出力するモータ制御装置が提案されている。また、特許文献4には、起動パルス速度と運動パルス速度との間の減速時間から線形演算式の解又は線形演算式から演算方法を選別し、次回の加減速処理移行時間である加減速中のパルス速度を演算する分散制御システムのモータ加減速制御方法が提案されている。しかし、何れもCPU単独での制御方法であり、複数のCPUにおけるモータ制御間の誤差が考慮されておらず、例えば、紙搬送を制御するステッピングモータ間の速度に誤差が生じ、紙の引っ張り合いや撓みなどの問題が生じてしまう。
【0008】
本発明は、上述の問題に鑑みて成されたものであり、分散制御システムを適用するとともに、複数の制御部の間で発生する制御誤差の影響を低減する画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、例えば、画像形成装置として実現できる。画像形成装置は、第1内蔵クロック発振器によって駆動される第1制御部と、第2内蔵クロック発振器によって駆動される第2制御部と、を備え、第1制御部は、第1内蔵クロック発振器によって駆動するタイマを用いて、予め定められたクロック数に応じたパルス信号を生成し、生成したパルス信号を第2制御部に送信する信号送信手段を備え、第2制御部は、信号送信手段によって送信されるパルス信号を受信する信号受信手段と、第2内蔵クロック発振器によって駆動するタイマを用いて、信号受信手段によって受信したパルス信号のパルス幅を計測する計測手段と、予め定められたクロック数に相当するパルス幅と、計測手段によって計測されたパルス幅とを用いて補正係数を算出する算出手段と、算出された補正係数を用いて負荷を制御する制御手段と
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、例えば、分散制御システムを適用するとともに、複数の制御部の間で発生する制御誤差の影響を低減する画像形成装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態に係る画像形成装置1000の概観を示す図である。
【図2】本実施形態に係る画像形成部300の構成例を示す断面図である。
【図3】本実施形態に係るマスタCPU、サブマスタCPU及びスレーブCPUの関連を模式的に示す図である。
【図4】本実施形態に係る画像形成装置1000の制御基板の一例を示す図である。
【図5】本実施形態に係る搬送モジュールA280の構成例を示す図である。
【図6】本実施形態に係る搬送モジュールB281の構成例を示す図である。
【図7】本実施形態に係るサブマスタCPUとスレーブCPUとの接続例を示す図である。
【図8】本実施形態に係るコンペアマッチ出力の一例を示す図である。
【図9】本実施形態に係るコンペアマッチ出力の制御手順を示すフローチャートである。
【図10】本実施形態に係るインプットキャプチャ入力の一例を示す図である。
【図11】本実施形態に係るインプットキャプチャ入力の制御手順を示すフローチャートである。
【図12】本実施形態に係る上位層CPUのクロック補正処理の制御手順を示すフローチャートである。
【図13】本実施形態に係る下位層CPUのクロック補正処理の制御手順を示すフローチャートである。
【図14】本実施形態に係るコンペアマッチ出力の一例を示す図である。
【図15】本実施形における各CPUの動作概略
【発明を実施するための形態】
【0012】
<本実施形態>
<画像形成装置の構成>
以下では、図1乃至図15を参照して、本発明の実施形態について説明する。まず、図1を参照して、本実施形態に係る画像形成装置1000の構成について説明する。画像形成装置1000は、自動原稿搬送装置100、画像読取部200、画像形成部300、及び操作部10を備える。図1に示すように、画像読取部200は、画像形成部300の上に載置されている。さらに、画像読取部200上には、自動原稿搬送装置(DF)100が載置されている。また、本画像形成装置1000は、複数の制御部(CPU)を用いて分散制御を実現する。各CPUの構成については、図3を用いて後述する。
【0013】
自動原稿搬送装置100は、原稿を自動的に原稿台ガラス上に搬送する。画像読取部200は、自動原稿搬送装置100から搬送された原稿を読み取って画像データを出力する。画像形成部300は、自動原稿搬送装置100から出力された画像データやネットワークを介して接続された外部装置から入力された画像データに従って記録材(記録紙)に画像を形成する。操作部10は、ユーザが各種操作を行うためのGUI(グラフィカル・ユーザ・インタフェース)を有する。さらに、操作部10は、タッチパネル等の表示部を有し、ユーザに対して情報を提示することもできる。
【0014】
<画像形成部>
次に、図2を参照して、画像形成部300の詳細について説明する。なお、本実施形態の画像形成部300は電子写真方式を採用している。また、図2の参照番号の末尾に示すアルファベットY、M、C、Kは、それぞれイエロー、マゼンダ、シアン、ブラックのトナーに対応した各エンジンを示す。以下では、全てのトナーに対応するエンジンを示す場合は末尾のアルファベットY、M、C、Kを省略して参照番号を記載し、個別に示す場合は参照番号の末尾にアルファベットY、M、C、Kを付記して記載する。
【0015】
像担持体としてフルカラー静電画像を形成するための感光ドラム(以下、単に「感光体」と称する。)225は、モータで矢印Aの方向に回転可能に設けられる。感光体225の周囲には、一次帯電装置221、露光装置218、現像装置223、転写装置220、クリーナ装置222、除電装置271が配置されている。
【0016】
現像装置223Kはモノクロ現像のための現像装置であり、感光体225K上の潜像をKのトナーで現像する。また現像装置223Y、M、Cはフルカラー現像のための現像装置であり、現像装置223Y、M、Cは、感光体225Y、M、C上の潜像をそれぞれY、M、Cのトナーで現像する。感光体225上に現像された各色のトナー像は、転写装置220によって中間転写体である転写ベルト226に一括で多重転写されて、4色のトナー像が重ね合わされる。
【0017】
転写ベルト226は、ローラ227、228、229に張架されている。ローラ227は、駆動源に結合されて転写ベルト226を駆動する駆動ローラとして機能し、ローラ228は転写ベルト226の張力を調節するテンションローラとして機能する。また、ローラ229は、2次転写装置231としての転写ローラのバックアップローラとして機能する。転写ローラ脱着ユニット250は、2次転写装置231を転写ベルト226に接着させるか、又は離脱させるための駆動ユニットである。2次転写装置231を通過した後の転写ベルト226の下部にはクリーナブレード232が設けられており、転写ベルト226上の残留トナーがブレードで掻き落とされる。
【0018】
カセット240、241及び手差し給紙部253に格納された記録材(記録紙)は、レジストローラ255、給紙ローラ対235及び縦パスローラ対236、237によってニップ部、つまり2次転写装置231と転写ベルト226との当接部に給送される。なお、その際2次転写装置231は、転写ローラ脱着ユニット250によって転写ベルト226に当接されている。転写ベルト226上に形成されたトナー像は、このニップ部で記録材上に転写される。その後、トナー像が転写された記録材は、定着装置234でトナー像が熱定着されて装置外へ排出される。
【0019】
カセット240、241及び手差し給紙部253は、それぞれ記録材の有無を検知するためのシートなし検知センサ243、244、245を備える。また、カセット240、241及び手差し給紙部253は、それぞれ記録材のピックアップ不良を検知するための給紙センサ247、248、249を備える。
【0020】
ここで、画像形成部300による画像形成動作について説明する。画像形成が開始されると、カセット240、241及び手差し給紙部253に格納された記録材は、ピックアップローラ238、239、254により1枚毎に給紙ローラ対235に搬送される。記録材は、給紙ローラ対235によりレジストローラ255へと搬送されると、その直前のレジストセンサ256により記録材の通過が検知される。
【0021】
レジストセンサ256により記録材の通過が検知された時点で、本実施形態では所定の時間が経過した後に一端搬送動作を中断する。その結果、記録材は停止しているレジストローラ255に突き当たり搬送が停止されるが、その際記録材の進行方向端部が搬送経路に対して垂直になるように搬送位置が固定され、記録材の搬送方向が搬送経路に対してずれた状態の斜行が補正される。以下では、この処理を位置補正と称する。位置補正は、以降の記録材に対する画像形成方向の傾きを最小化するために必要となる。位置補正後、レジストローラ255を起動させることにより、記録材は、2次転写装置231へ供給される。なお、レジストローラ255は、駆動源に結合され、クラッチによって駆動が伝えられることで回転駆動を行う。
【0022】
次に、一次帯電装置221に電圧を印加して感光体225の表面を予定の帯電部電位で一様にマイナス帯電させる。続いて、帯電された感光体225上の画像部分が所定の露光部電位になるようにレーザスキャナ部からなる露光装置218で露光を行い潜像が形成される。露光装置218はプリンタ制御I/F215を介してコントローラ460より送られてくる画像データに基づいてレーザ光をオン、オフすることによって画像に対応した潜像を形成する。
【0023】
また、現像装置223の現像ローラには各色毎に予め設定された現像バイアスが印加されており、上記潜像は、現像ローラの位置を通過する際にトナーで現像され、トナー像として可視化される。トナー像は、転写装置220により転写ベルト226に転写され、さらに2次転写装置231で、給紙部より搬送された記録材に転写された後、レジスト後搬送パス268を通過し、定着搬送ベルト230を介して、定着装置234へと搬送される。
【0024】
定着装置234では、まずトナーの吸着力を補って画像乱れを防止するために、定着前帯電器251、252で帯電され、さらに定着ローラ233でトナー画像が熱定着される。その後、記録材は、排紙フラッパ257により排紙パス258側に搬送パスが切り替えられることにより、排紙ローラ270によってそのまま排紙トレイ242に排紙される。
【0025】
感光体225上に残留したトナーは、クリーナ装置222で除去、回収される。最後に、感光体225は、除電装置271で一様に0ボルト付近まで除電されて、次の画像形成サイクルに備える。
【0026】
画像形成装置1000によるカラーの画像形成開始タイミングは、Y、M、C、Kの同時転写であるため転写ベルト226上の任意の位置に画像形成を行うことが可能である。しかし、感光体225Y、M、C上のトナー像を転写する位置のずれ分をタイミング的にシフトさせながら画像形成開始タイミングを決定する必要がある。
【0027】
なお、画像形成部300においては、記録材を連続的にカセット240、241及び手差し給紙部253より給送させることが可能である。この場合、先行する記録材のシート長を考慮し、記録材が重なり合わないような最短の間隔でカセット240、241及び手差し給紙部253からの給紙を行う。上述したように、位置補正後に、レジストローラ255を起動させることにより、記録材は2次転写装置231へ供給されるが、2次転写装置231に到達すると、再びレジストローラ255が一時停止される。これは、後続の記録材に対して先行する記録材と同様に位置補正を行うためである。
【0028】
次に、記録材の裏面に画像を形成する場合の動作について詳細に説明する。記録材の裏面に画像を形成する際には、まず記録材の表面への画像形成が先行して実行される。表面のみの画像形成であれば、定着装置234でトナー像が熱定着された後に、そのまま排紙トレイ242に排紙される。一方、引き続き裏面の画像形成を行なう場合、センサ269で記録材が検知されると、排紙フラッパ257により裏面パス259側に搬送パスが切り替えられ、それに併せた反転ローラ260の回転駆動により記録材が両面反転パス261に搬送される。その後、記録材は、送り方向幅の分だけ両面反転パス261に搬送された後に反転ローラ260の逆回転駆動により進行方向が切り替えられ、表面に画像形成された画像面を下向きにして両面パス搬送ローラ262の駆動により両面パス263に搬送される。
【0029】
続いて、記録材は、両面パス263を再給紙ローラ264に向かって搬送されると、その直前の再給紙センサ265により通過が検知される。再給紙センサ265により記録材の通過が検知されると、本実施形態では所定の時間が経過した後に一端搬送動作を中断する。その結果、記録材は、停止している再給紙ローラ264に突き当たり搬送が一時停止されるが、その際記録材の進行方向端部が搬送経路に対して垂直になるように位置が固定され、記録材の搬送方向が再給紙パス内の搬送経路に対してずれる斜行が補正される。以下では、この処理を再位置補正と称する。
【0030】
再位置補正は、以降の記録材裏面に対する画像形成方向の傾きを最小化するために必要となる。再位置補正後、再給紙ローラ264を起動させることにより、記録材は、表裏が逆転した状態で再度給紙パス266上に搬送される。その後の画像形成動作については、上述した表面の画像形成動作と同じであるためここでは省略する。このように表裏両面に画像形成された記録材は、そのまま排紙フラッパ257より排紙パス258側に搬送パスが切り替えられることにより、排紙トレイ242に排紙される。
【0031】
なお、本画像形成部300においては、両面印刷時においても、記録材の連続給送が可能である。しかしながら、記録材への画像形成や形成されたトナー像の定着などを行うための装置は1系統しか有していないため、表面への印刷と裏面への印刷を同時に行うことはできない。したがって、両面印刷時においては、画像形成部300に対し、カセット240、241及び手差し給紙部253からの記録材と、裏面印刷のために反転させて画像形成部に再度給送された記録材とは交互に画像形成されることとなる。
【0032】
本画像形成部300は、図2に示す各制御負荷を、後述する搬送モジュールA280、搬送モジュールB281、作像モジュール282、定着モジュール283という4つの制御ブロックに分けて各々が自律的に制御されている。さらに、これらの4つの制御ブロックを統括して画像形成装置として機能させるためのマスタモジュール284を有する。以下では、各モジュールの制御構成について図3を用いて説明する。
【0033】
本実施形態において、マスタモジュール284に備えられるマスタCPU(マスタ制御部)1001は、プリンタ制御I/F215を介してコントローラ460より送られる指示及び画像データに基づいて画像形成装置1000の全体を制御する。また、画像形成を実行するための搬送モジュールA280、搬送モジュールB281、作像モジュール282、及び定着モジュール283は、各機能を制御するサブマスタCPU(サブマスタ制御部)601、901、701、801を備える。サブマスタCPU601、901、701、801はマスタCPU1001により制御される。さらに、各機能モジュールは、さらに、各機能を実行するための制御負荷を動作させるためのスレーブCPU(スレーブ制御部)602、603、604、605、902、903、702、703、704、705、706、802、803を備える。スレーブCPU602、603、604、605はサブマスタCPU601に、スレーブCPU902、903はサブマスタCPU901に、スレーブCPU702、703、704、705、706はサブマスタCPU701に、スレーブCPU802、803はサブマスタCPU801に制御される。
【0034】
図3に示すように、マスタCPU1001と複数のサブマスタCPU601、701、801、901は共通のネットワーク型通信バス(第1信号線)1002によってバス接続される。サブマスタCPU601、701、801、901同士の間もネットワーク型通信バス(第1信号線)1002によってバス接続される。なお、マスタCPU1001と複数のサブマスタCPU601、701、801、901はリング接続されるものでもよい。サブマスタCPU601は、さらに、高速シリアル通信バス(第2信号線)612、613、614、615を介して、複数のスレーブCPU602、603、604、605のそれぞれと1対1接続(ピアツーピア接続)されている。同様に、サブマスタCPU701は、高速シリアル通信バス(第2信号線)711、712、713、714、715を介して、それぞれスレーブCPU702、703、704、705、706と接続される。サブマスタCPU801は、高速シリアル通信バス(第2信号線)808、809を介して、それぞれスレーブCPU802、803と接続される。サブマスタCPU901は、高速シリアル通信バス(第2信号線)909、910を介して、それぞれスレーブCPU902、903と接続される。ここで、高速シリアル通信バスは、短距離高速通信に用いられる。
【0035】
本実施形態に係る画像形成装置1000において、タイミングに依存した応答性が必要とされる制御に関しては、各サブマスタCPUに統括された機能モジュール内で実現されるように機能分割されている。そのため、末端の制御負荷を駆動するための各スレーブCPUと各サブマスタCPUとの間の通信は、応答性のよい高速シリアル通信バスによって接続されている。つまり、上記第2信号線には、上記第1信号線よりもデータ転送のタイミング精度が高い信号線が用いられる。
【0036】
一方、サブマスタCPU601、701、801、901とマスタCPU1001との間では、精密な制御タイミングを必要としない、画像形成動作の大まかな処理の流れを統括するようなやり取りだけが行われる。例えば、マスタCPU1001はサブマスタCPUに、画像形成前処理開始、給紙開始、画像形成後処理開始といった指示を出す。また、マスタCPU1001はサブマスタCPUに、コントローラ460から指示されたモード(例えばモノクロモードや両面画像形成モードなど)に基づいた指示を画像形成開始の前に出す。サブマスタCPU601、701、801、901のそれぞれの間でも、精密なタイミング制御を必要としないやり取りだけが行われる。すなわち、画像形成装置の制御を、相互に精密なタイミング制御を必要としない制御単位に分け、それぞれのサブマスタCPUがそれぞれの制御単位を精密なタイミングで制御する。これにより、本画像形成装置1000では、通信トラフィックを最小限に抑え、低速で安価なネットワーク型通信バス1002で接続することを可能としている。なお、マスタCPU、サブマスタCPU、及びスレーブCPUについては、実装される制御基板が必ずしも一律である必要はなく、装置実装上の事情に合わせて可変的に配置させることが可能である。
【0037】
次に、図4を参照して、本実施形態における具体的なマスタCPU、サブマスタCPU、スレーブCPUの基板構成上の配置について説明する。本実施形態によれば、図4に示すように、様々な制御基板の構成を採用することができる。例えば、サブマスタCPU601とスレーブCPU602、603、604、605とは、同一の基板上に実装されている。また、サブマスタCPU701及びスレーブCPU702、703、704、又は、サブマスタCPU801及びスレーブCPU802、803のように、サブマスタCPUと個々のスレーブCPUが独立の基板として実装されてもよい。また、スレーブCPU705、706のように一部のスレーブCPUが同一の基板上に実装されてもよい。また、サブマスタCPU901及びスレーブCPU902のように、サブマスタCPUとスレーブCPUの一部だけが同一基板上に配置されてもよい。
【0038】
<各制御モジュールの構成>
次に、図5及び図6を参照して、各制御モジュールに関する機能と構成について詳細に説明する。図5に示す搬送モジュールA280は、カセット240、241及び手差し給紙部253に格納された記録材を停止したレジストローラ255のニップ部に突き当てるまでの給紙制御(給送機能)を司っている。搬送モジュールA280は、給紙制御を統括的に制御するサブマスタCPU601と、各制御負荷の駆動を行うスレーブCPU602、603、604、605とを含む。また、各スレーブCPUには、直接制御される制御負荷群が接続されている。
【0039】
スレーブCPU602は、カセット240に関連したピックアップローラ238を駆動させるための駆動源モータ606、シートなし検知センサ243、及び給紙センサ247を制御負荷とし、給紙パス266に記録材を引き渡すまでの制御を行う。スレーブCPU603は、カセット241に関連したピックアップローラ239を駆動させるための駆動源モータ607、シートなし検センサ244、給紙センサ248を制御負荷とし、給紙パス266に記録材を引き渡すまでの制御を行う。スレーブCPU604は、手差し給紙部253に関連したピックアップローラ254を駆動させるための駆動源モータ608、シートなし検センサ245、給紙センサ249を制御負荷とし、給紙パス266に記録材を引き渡すまでの制御を行う。スレーブCPU605は、給紙ローラ対235、236、237を駆動させるための駆動源モータ609、610、611、レジストセンサ256を制御負荷とする。また、スレーブCPU605は、これらの制御負荷を制御して、カセット240、241、手差し給紙部253から引き渡された記録材をレジストローラ255のニップ部に突き当てるまで搬送し、一時停止させるまでの制御を行う。なお、本実施形態では、サブマスタCPU601とスレーブCPU602、603、604,605は各々独立の高速シリアル通信バス612、613、614、615により1対1で対向接続されている。
【0040】
図6に示す搬送モジュールB281は、定着モジュール283により画像定着後の記録材を引き受け、画像形成部300の外部に排紙するまでの排紙制御(排出機能)、又は裏面印刷を行うために記録材の表裏を反転させて改めて搬送モジュールA280に引き渡すまでの裏面反転制御(反転機能)を司っている。搬送モジュールB281は、排紙制御及び裏面反転制御を統括的に制御するサブマスタCPU901と、各制御負荷を駆動するスレーブCPU902、903とを含む。また、各スレーブCPUには、直接制御される制御負荷群が接続されている。
【0041】
スレーブCPU902は、排紙フラッパ257を切り替えるためのソレノイド904、排紙ローラ270を駆動させるための駆動源モータ905、反転ローラ260を駆動させるための駆動源モータ906、センサ269を制御負荷とする。スレーブCPU902は、これらの制御負荷を制御し、定着後の搬送パスから記録材を機外に排出するか、又は両面反転パス261に引き渡すまでの制御を行う。スレーブCPU903は、両面パス搬送ローラ262を駆動させるための駆動源モータ907、再給紙ローラ264を駆動させるための駆動源モータ908、再給紙センサ265を制御負荷とする。スレーブCPU903は、これらの制御負荷を制御し、反転パスより引き渡された記録材を再度給紙パス266に引き渡すまでの制御を行う。なお、本実施形態では、サブマスタCPU901とスレーブCPU902、903は、各々独立の高速シリアル通信バス909、910により1対1で対向接続されている。
【0042】
本実施形態においては、上述した4つのサブモジュールの自律的な動作を組み合わせることによって記録材への画像形成制御を実現している。しかし、実際の画像形成動作は給紙段/用紙サイズの選択や、片面/両面印刷の指定、白黒印刷/カラー印刷の指定などの組み合わせに応じていくつかのパターンに分かれる。操作部10や、外部I/F465を介して操作者が予め設定を行うことにより、具体的な指示が入力されるが、その指示に基づいて操作者が所望する動作を実現する上では各モジュールを統合的に動作させるための全体制御が必要となる。本実施形態においては、マスタモジュール284におけるマスタCPU1001がサブマスタCPU601、701、801、901を統括的に制御する。ここで、マスタCPU1001による全体制御の大きな流れは、低速なネットワーク型通信バス1002を介したマスタCPU1001とサブマスタCPU601、701、801、901との間の通信によるコマンドのやり取りにより実現される。さらに、高速シリアル通信バスによるサブマスタCPU601、701、801、901とスレーブCPU602、603、604、605、702、703、704、705、706、802、803、902、903との間の対向通信によるコマンドのやり取りによって実現される。
【0043】
<クロック補正処理>
本実施形態における各CPUは、それぞれが個別の内部クロック発振器によって駆動される。なお、各内蔵クロック発振器は、同一のクロック信号の周波数で動作するものとする。しかし、同一の動作周波数で動作させようとした場合であっても、それぞれの内部クロック発振器の個体差によって誤差が生じてくる。その結果、複数のCPUが個別にステッピングモータなどのアクチュエータを制御する場合、内蔵クロック発振器の誤差により、紙搬送を制御するステッピングモータ間の速度に誤差が生じ、紙の引っ張り合いや撓みなどが生じてしまう。特に、本実施形態のように、複数のスレーブCPUでモータを回転させて1枚の用紙を搬送する場合、速度差による用紙の撓みや座屈が発生したり、用紙の引っ張り合いによるモータの脱調、さらには転写部における速度差がそのまま画像不良の原因となる。また、時間計測時においても内蔵クロック発振器のズレは制御周期や制御タイミングに直接影響するため、紙詰まりや画像不良の原因となってしまう。即ち、精度が悪くかつ個体差がある内蔵クロック発振器によるクロック信号の周波数による影響を低減し、上記不具合が発生しないように補正する必要がある。そこで、本実施形態では、各CPUを駆動するクロック信号の周波数の誤差による制御誤差を低減するために、クロック補正処理を実行する。
【0044】
<サブマスタCPUとスレーブCPUとの接続例>
まず、図7を参照して、サブマスタCPUとスレーブCPUとの接続について説明する。図7には、サブマスタCPU601とスレーブCPU602との接続の一例を示す。なお、以下では、サブマスタCPU(上位層制御部)とスレーブCPU(下位層制御部)との間で本発明を適用する例について説明する。しかし、本発明は、以下で説明する両制御部の制御が反対であってもよく、さらには、サブマスタCPU間、又は、スレーブCPU間においても適用することができる。即ち、本発明は、第1制御部と第2制御部との間で適用可能である。つまり、本発明は、複数の制御部の間で発生する制御誤差の影響を低減するものである。
【0045】
サブマスタCPU601は内蔵クロック発振器(第1内蔵クロック発振器)656に基づいて動作する。また、タイマ655とシリアル通信部654もまた内蔵クロック発振器656のクロックに基づいて動作している。シリアル通信部654は送信ピン650と受信ピン651を用いて外部と通信を行う。また、タイマ655は、コンペアマッチ出力ピン652とインプットキャプチャ入力ピン653を有する。タイマ655は、内蔵クロック発振器656のクロックをカウントするもので、サブマスタCPU601によってカウント値がリセットされる。
【0046】
スレーブCPU602は内蔵クロック発振器(第2内蔵クロック発振器)666に基づいて動作する。当該クロックはタイマ665とシリアル通信部664に供給される。シリアル通信部664は送信ピン660と受信ピン661を有し、これらはサブマスタCPU601の受信ピン651と送信ピン650にケーブルによって接続されている。また、タイマ665は、コンペアマッチ出力ピン662とインプットキャプチャ入力ピン663を有する。タイマ665は、内蔵クロック発振器666のクロックをカウントするもので、スレーブCPU602によってカウント値がリセットされる。したがって、本実施形態によれば、サブマスタCPU601のシリアル通信部654が開始通知手段として機能し、スレーブCPU602のシリアル通信部664が開始応答手段として機能する。
【0047】
また、タイマ665はコンペアマッチ出力ピン652とインプットキャプチャ入力ピン663を有する。インプットキャプチャ入力ピン663は、図7に示すように、サブマスタCPU601のコンペアマッチ出力ピン652とパルス信号を送信するための専用の信号線で接続されている。つまり、本実施形態によれば、サブマスタCPU601のコンペアマッチ出力ピン652が信号送信手段として機能し、スレーブCPU602のインプットキャプチャ入力ピン663が信号受信手段として機能する。
【0048】
<コンペアマッチ出力>
次に、図8及び図9を参照して、サブマスタCPU601のタイマ機能を用いたコンペアマッチ出力について説明する。コンペアマッチ出力とは、サブマスタCPU601がスレーブCPU602に対して、クロック補正処理を実行するための予め定められたクロック数に応じたパルス信号を生成し、上記専用の信号線を介して出力する動作を示す。図8は、タイマカウンタの模式図を示す。1500はタイマカウント値を示す。1502はコンペアマッチ出力ピン652に出力される信号を示し、立上がり、立下がりの両エッジでサブマスタCPU601に対して割り込み信号が発生する仕組みとなっている。タイマ機能を起動すると、タイマ655は、所定のカウント値T1(1501)までカウントアップを続け、カウント値T1(1501)に到達すると割り込み処理を開始する仕組みとなる。また、図8の1502は、タイマカウント値に対応するコンペアマッチ出力を示す。
【0049】
図9は、タイマカウント値が所定のカウント値T1に到達すると実行される割り込み処理の制御フローを示す。当該割り込み処理は、サブマスタCPU601によって統括的に制御される。
【0050】
割り込み処理が発生すると、S1601において、サブマスタCPU601は、タイマカウントをクリアし、S1602でコンペアマッチ出力ピン652にトグル出力を実施する。つまり、タイマカウント値がT1に到達する毎に、タイマカウント値がリセットされるとともに、コンペアマッチ出力が反転される。続いて、S1603において、サブマスタCPU601は、予め定められたクロック数に相当する所定出力回数Nのトグル出力を実施したか否かを判定し、出力した場合はS1605に出力終了フラグE1をオンに設定し処理を終了する。一方、所定回数Nの出力が終わっていなければそのまま処理を終了する。これにより、サブマスタCPU601は、予め定められたクロック数に応じたパルス信号を内蔵クロック発振器656によって駆動されるタイマ655を用いて生成し、上記専用の信号線を介してスレーブCPU602に出力する。
【0051】
このように、本実施形態ではタイマカウントと割り込みを使用して、図8に示すコンペアマッチ出力1502の出力を実現している。また、より出力精度を向上させるために、割り込み処理を使用せずCPUの高機能タイマを用いてコンペアマッチ出力ピンからトグル出力を実現してもよい。
【0052】
<インプットキャプチャ入力>
次に、図10及び図11を参照して、スレーブCPU602のタイマ機能を用いたインプットキャプチャ入力について説明する。インプットキャプチャ入力とは、上記コンペアマッチ出力において出力されたパルス信号をスレーブCPU602が上記専用の信号線を介して受信する動作を示す。図10は、タイマカウントの模式図を示す。1701はタイマカウント値を示す。1702はインプットキャプチャ入力ピン663に入力される信号であり、立上りエッジ及び立下りエッジでスレーブCPU602に対して割り込み信号が発生する仕組みとなっている。
【0053】
図7に示すように、インプットキャプチャ入力ピン663は対象となるサブマスタCPU601のコンペアマッチ出力ピン652と接続されている。図11は、インプットキャプチャ入力信号1702に立上りエッジ及び立下りエッジが発生すると実行される割り込み処理の制御フローを示す。当該割り込み処理は、スレーブCPU602によって統括的に制御される。
【0054】
割り込み処理が発生すると、S1801において、スレーブCPU602は、タイマ665のカウント値T2を読み出し、S1802にてタイマカウンタをクリアする。続いて、S1803において、スレーブCPU602は、インプットキャプチャ入力信号に所定回数Nのエッジが入力された否かを判定し、所定回数Nを超えていればS1804に進み、入力終了フラグE2をオンに設定して処理を終了する。一方、所定回数Nの入力が無ければそのまま処理を終了する。上述の処理により、スレーブCPU602は、サブマスタCPU601から出力されたパルス信号(コンペアマッチ出力)のパルス幅を、内蔵クロック発振器666によって駆動されるタイマ665により計測する。なお、上記パルス幅とは、内蔵クロック発振器により出力される複数のクロック信号の信号幅に相当する。
【0055】
このように、本実施形態ではタイマカウントと割り込みを使用して、図10に示すインプットキャプチャ入力信号1702のパルス幅を計測している。また、より計測精度を向上させるために、割り込み処理を使用せずCPUの高機能タイマを用いて自動的にパルス幅を計測してもよい。
【0056】
<補正手順>
次に、図12を参照して、サブマスタCPU601におけるクロック補正処理の制御手順について説明する。ここでは、一例として、サブマスタCPU601とスレーブCPU602との間のクロック補正処理について説明する。クロック補正処理が開始されると、S1901において、サブマスタCPU601は、スレーブCPU602に対してクロック補正処理の開始通知を行う。ここで通知される内容を表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
CPU動作周波数はサブマスタCPU601の動作周波数であり、タイマ動作周波数はサブマスタCPU601有するタイマ機能の動作周波数である。このように、通知内容としてタイマ動作周波数の情報を設けた理由は、サブマスタCPU601の動作周波数と周辺回路であるタイマの動作周波数が異なるケースを想定しているためである。カウンタ分周期はタイマカウンタの1カウントアップする周波数を決定するための値である。また基準パルス幅はコンペアマッチ出力波形のトグル幅である。また、基準パルス幅は、内蔵クロック発振器から出力される、予め定められたクロック数に相当するクロック信号の信号幅である。本実施形態ではサブマスタCPU601の動作周波数と、タイマ動作周波数とが共に20MHz、カウンタ分周期が1/1φ(即ち、20MHz)、基準パルス幅が0xFF、測定回数を10回としている。
【0059】
S1902において、サブマスタCPU601は、スレーブCPU602からACKを受信したか否かを判定する。ACKを受信したら、S1903に進み、ACKの内容に基づいて、スレーブCPU602がクロック補正処理を開始可能か否かを判定する。ここで、スレーブCPU602からクロック補正処理の開始不可が通知された場合は、処理を終了する。
【0060】
一方、クロック補正処理の開始可能が通知された場合はS1904に進み、サブマスタCPU601は、コンペアマッチ出力ピン652にトグル出力を開始する。したがって、本実施形では、図14に示すように1周期が3.264msecのトグル波形がコンペアマッチ出力波形2100として出力される。続いて、S1905において、サブマスタCPU601は、出力終了フラグE1がオンに設定されているか否かを判定し、設定されていればS1906に進み、クロック補正処理の終了通知をスレーブCPU602に対して通知し、S1907でACKを待って処理を終了する。一方、S1905で出力終了フラグE1がオンに設定されていなければ、オンに設定されるまでS1905の判定を定期的に繰り返す。
【0061】
次に、図13を参照して、スレーブCPU602におけるクロック補正処理の制御手順について説明する。ここでは、図12のサブマスタCPU601の処理に対応するスレーブCPU602の処理について説明する。クロック補正処理の開始通知をサブマスタCPU601から受信すると、S2001において、スレーブCPU602は、クロック補正処理を開始することが可能な状態であるか否かを判定する。ここで、クロック補正処理の開始が不可能であればS2008に進み、スレーブCPU602は、サブマスタCPU601に対してクロック補正処理の開始不可通知を行い、処理を終了する。ここで、クロック補正処理の開始が不可能な状態とは、例えば、インプットキャプチャ入力波形計測用のタイマ資源を他の動作で使用している場合等である。
【0062】
一方、クロック補正処理の開始が可能であれば、S2002に進み、スレーブCPU602は、サブマスタCPU601に対してクロック補正処理の開始可能通知及びACKの送信を行いS2003に進む。S2003において、スレーブCPU602は、インプットキャプチャ入力を開始する。続いて、S2004において、スレーブCPU602は、入力終了フラグE2がオンに設定されているか否かを判定し、オフであればS2004の判定を定期的に繰り返す。一方、オンに設定されていれば、S2005に進み、スレーブCPU602は、補正係数αを算出をする。補正係数αの算出は以下のようになる。
【0063】
補正係数α = 基準パルス幅/カウント値T2
つまり、補正係数αは、サブマスタCPU601から出力されるパルス信号のパルス幅(即ち、予め定められたクロック数のクロック信号における信号幅に相当する。)を、スレーブCPU602で計測したパルス幅で除算することにより導出される。1計測につき補正係数αを求め、測定回数分の平均を取ることによって最終的な補正係数αが求まる。本実施形態では、
補正係数α = 0xFF00(65280dec)/カウント値T2
となる。したがって、例えば、カウント値T2が62016の場合は補正係数αは1.05となる。
【0064】
これはサブマスタCPU601の内蔵クロック発振器がスレーブCPU側の内蔵クロック発振器に対して105%の速度、即ち、スレーブCPU602はサブマスタCPU601よりも5%遅いことを意味している。つまり、スレーブCPU602の実質的な動作周波数は、
20MHz×0.95 = 19MHz
となる。
【0065】
したがって、スレーブCPU602は、モータ駆動の速度や時間計測においてタイマを使用する場合に、補正係数αを掛けた値を用いることによって内蔵クロック発振器の誤差による速度や制御誤差を補正することが可能となる。補正係数αを算出すると、S2006において、スレーブCPU602は、クロック補正処理の終了通知を待ち、受信するとS2008に進み、ACKをサブマスタCPU601に返し、処理を終了する。
【0066】
また、上記クロック補正処理を各サブマスタCPUとスレーブCPUとの間で実施することによって、スレーブCPUの内蔵クロック発振器のズレが制御元となるサブマスタCPUの内蔵クロック発振器に全て揃うことになる。したがって、各スレーブCPU間における紙搬送を制御するステッピングモータ間の速度誤差を補正することが可能となる。
【0067】
次に、図15を参照して、本実施形態における動作概略について説明する。S1904においてトグル出力が開始されるとサブマスタCPU601のタイマは、2200に示すように、カウントを開始する。当該カウントはカウント分周期が1/1φとなるため、サブマスタCPU601の動作クロック2207の1クロック毎に1カウントアップする。本実施形態では、サブマスタCPU601の動作周波数は20MHzであるため、1クロック50nsecとなる。カウント値2200が所定カウント値T1(2202)に到達すると(本実施形では0xFF00カウント、サブマスタCPU601に割り込みが発生し図9のフローチャートが実行され、トグル出力2203が出力される。
【0068】
スレーブCPU602は、トグル出力2203のエッジ2204を検知すると、図11に示す割り込み処理を開始する。ここで、トグル出力のエッジ2204以前は、S2003のタイマカウントがフリーランモードで動作されている。また、スレーブCPU602のカウントアップはスレーブCPU602動作周波数2208によって動作する。
【0069】
また、トグル出力2203のエッジ2209が発生すると、スレーブCPU602は、図11に示す割り込み処理を同様に実行する。これによって、期間2205、2206のカウント値T2の計測が実現する。カウント値T2の計測が終了すると、サブマスタCPU601から予め通知されている基準パルス幅(ここでは、0xFF00)を用いて、スレーブCPU602は、自身の動作周波数の補正係数αを算出する。
【0070】
<補正係数αの適用例>
次に、補正係数αの適用方法について説明する。ここでは、スレーブCPU602の補正係数αが1.05の場合を想定する。まず、モータの回転速度の制御に補正係数αを適用する方法ついて説明する。スレーブCPU602が最終的に回転させるモータの速度は以下で求まる。
【0071】
最終モータ速度 = 目標モータ速度×補正係数α
即ち、200mm/secで回転する指示がサブマスタCPU601から通知されると、スレーブCPU602は、210mm/secで回転するように制御することによって、サブマスタCPUが求める200mm/secと同じ速度となる。
【0072】
次に、タイマ等を用いて時間計測の制御に補正係数αを適用する方法について説明する。スレーブCPU602が最終的に計測する時間は以下で求まる。
【0073】
最終計時時間 = 目標時間×(1−(補正係数α−1))
即ち、100msecを計測する場合、スレーブCPU602は、実際には95msec計測することによってサブマスタCPU601が100msecの時間計測するのと同等の結果となる。
【0074】
以上説明したように、本実施形態に係る画像形成装置は、分散制御を実現するために、それぞれが内蔵クロック発振器によって駆動される第1制御部及び第2制御部を備える。また、第1制御部は、予め定められたクロック数に応じたパルス信号を自身の内蔵クロック発振器を用いて駆動するタイマを用いて生成し、第2制御部の出力する。また、第2制御部は、第1制御部から出力されたパルス信号のパルス幅を、自身の内蔵クロック発振器を用いて駆動するタイマを用いて計測し、上記予め定められたクロック数に相当するパルス幅と、計測したパルス幅を用いて補正係数を算出する。さらに、第2制御部は、算出した補正係数を用いて、制御対象となる負荷を制御する。これにより、本実施形態に係る画像形成装置は、複数の制御部により分散制御システムを実現するとともに、各制御部におけるクロック信号の周波数の個体差による制御誤差を容易な構成で低減することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1内蔵クロック発振器によって駆動される第1制御部と、
第2内蔵クロック発振器によって駆動される第2制御部と、を備え、
前記第1制御部は、
前記第1内蔵クロック発振器によって駆動するタイマを用いて、予め定められたクロック数に応じたパルス信号を生成し、生成した前記パルス信号を前記第2制御部に送信する信号送信手段を備え、
前記第2制御部は、
前記信号送信手段によって送信される前記パルス信号を受信する信号受信手段と、
前記第2内蔵クロック発振器によって駆動するタイマを用いて、前記信号受信手段によって受信した前記パルス信号のパルス幅を計測する計測手段と、
前記予め定められたクロック数に相当するパルス幅と、前記計測手段によって計測されたパルス幅とを用いて補正係数を算出する算出手段と、
前記算出された補正係数を用いて負荷を制御する制御手段と
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第1制御部は、
前記第1内蔵クロック発振器及び前記第2内蔵クロック発振器から出力されるクロック信号の周波数の誤差による前記負荷の制御への影響を低減するクロック補正処理の開始を前記第2制御部に通知する開始通知手段をさらに備え、
前記第2制御部は、
前記開始通知を受信すると、前記クロック補正処理が開始可能か否かを示す情報を、前記第1制御部に応答する開始応答手段さらに備え、
前記信号送信手段は、
前記開始通知手段による開始通知に対する前記第2制御部からの応答が該第2制御部において前記クロック補正処理の開始が可能であることを示すと、生成した前記パルス信号を前記第2制御部に送信し、
前記信号受信手段は、
前記クロック補正処理が開始されると、前記信号送信手段によって送信される前記パルス信号を受信することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記開始応答手段は、
前記計測手段が用いる前記タイマが他の処理で用いられている場合は、前記クロック補正処理の開始が不可能であることを示す情報を、前記第1制御部に送信し、
前記計測手段が用いる前記タイマが他の処理で用いられていない場合は、前記クロック補正処理の開始が可能であることを示す情報を、前記第1制御部に送信することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記信号送信手段と、前記信号受信手段とは、専用の信号線で接続されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記算出手段は、前記予め定められたクロック数に相当するパルス幅を、前記計測手段によって計測されたパルス幅で除算することにより前記補正係数を算出することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記負荷は、記録材を搬送する搬送ローラを駆動するためのモータであり、
前記制御手段は、前記搬送ローラを目標モータ速度に制御する場合に、
最終モータ速度=目標モータ速度×前記補正係数
によって求まる前記最終モータ速度に前記搬送ローラの速度を制御することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記負荷は、所定の時間を計時する計時手段であり、
前記制御手段は、前記計時手段を用いて目標時間を計時する場合に、
最終計時時間=目標時間×(1−(前記補正係数−1))
によって求まる前記最終計時時間を前記計時手段を用いて計時することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記第1制御部は、上位層制御部であり、
前記第2制御部は、前記上位層制御部によって制御されるとともに、それぞれが異なる負荷を制御する下位層制御部であることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項1】
第1内蔵クロック発振器によって駆動される第1制御部と、
第2内蔵クロック発振器によって駆動される第2制御部と、を備え、
前記第1制御部は、
前記第1内蔵クロック発振器によって駆動するタイマを用いて、予め定められたクロック数に応じたパルス信号を生成し、生成した前記パルス信号を前記第2制御部に送信する信号送信手段を備え、
前記第2制御部は、
前記信号送信手段によって送信される前記パルス信号を受信する信号受信手段と、
前記第2内蔵クロック発振器によって駆動するタイマを用いて、前記信号受信手段によって受信した前記パルス信号のパルス幅を計測する計測手段と、
前記予め定められたクロック数に相当するパルス幅と、前記計測手段によって計測されたパルス幅とを用いて補正係数を算出する算出手段と、
前記算出された補正係数を用いて負荷を制御する制御手段と
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第1制御部は、
前記第1内蔵クロック発振器及び前記第2内蔵クロック発振器から出力されるクロック信号の周波数の誤差による前記負荷の制御への影響を低減するクロック補正処理の開始を前記第2制御部に通知する開始通知手段をさらに備え、
前記第2制御部は、
前記開始通知を受信すると、前記クロック補正処理が開始可能か否かを示す情報を、前記第1制御部に応答する開始応答手段さらに備え、
前記信号送信手段は、
前記開始通知手段による開始通知に対する前記第2制御部からの応答が該第2制御部において前記クロック補正処理の開始が可能であることを示すと、生成した前記パルス信号を前記第2制御部に送信し、
前記信号受信手段は、
前記クロック補正処理が開始されると、前記信号送信手段によって送信される前記パルス信号を受信することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記開始応答手段は、
前記計測手段が用いる前記タイマが他の処理で用いられている場合は、前記クロック補正処理の開始が不可能であることを示す情報を、前記第1制御部に送信し、
前記計測手段が用いる前記タイマが他の処理で用いられていない場合は、前記クロック補正処理の開始が可能であることを示す情報を、前記第1制御部に送信することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記信号送信手段と、前記信号受信手段とは、専用の信号線で接続されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記算出手段は、前記予め定められたクロック数に相当するパルス幅を、前記計測手段によって計測されたパルス幅で除算することにより前記補正係数を算出することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記負荷は、記録材を搬送する搬送ローラを駆動するためのモータであり、
前記制御手段は、前記搬送ローラを目標モータ速度に制御する場合に、
最終モータ速度=目標モータ速度×前記補正係数
によって求まる前記最終モータ速度に前記搬送ローラの速度を制御することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記負荷は、所定の時間を計時する計時手段であり、
前記制御手段は、前記計時手段を用いて目標時間を計時する場合に、
最終計時時間=目標時間×(1−(前記補正係数−1))
によって求まる前記最終計時時間を前記計時手段を用いて計時することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記第1制御部は、上位層制御部であり、
前記第2制御部は、前記上位層制御部によって制御されるとともに、それぞれが異なる負荷を制御する下位層制御部であることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−191553(P2011−191553A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58298(P2010−58298)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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