説明

画像形成装置

【課題】インクリボン等を用いて記録紙への印刷を行う画像形成装置において、再印刷のためのエネルギーをかけることなく、シンプルな構成で、使用済みインクリボンに残存する印刷情報を認識できない状態にする。
【解決手段】画像形成装置は、インクを保持するインク保持手段に保持されたインクを記録紙に転写することで印刷を行う印刷手段と、印刷手段による印刷が行われた後のインク保持手段の巻き取りを行う巻き取り手段と、印刷手段と巻き取り手段の間に設けられ、印刷後のインク保持手段に対して部分的に糊を塗布する糊塗布手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、特に、使用済みのインクリボン等に残存する印字跡、印刷情報への対応について好ましく適用される技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、インクリボンに印画ヘッドを当接し、熱転写により印刷を行う熱転写型のプリンタは、種々の用途に用いられている。このような熱転写プリンタでは、使用済みのインクリボンに印刷時の残像が残っており、この残像を見る又は再度熱転写することで、容易に印刷情報を知ることが可能である。
【0003】
最近は、個人情報の保護が重視される傾向となっていることもあり、上述した熱転写プリンタにおいて問題となる場合が多い。例えば業務用として写真印刷を行うために店舗内に設置するような場合、プリンタの管理者がインクリボンの印刷情報を容易に得ることができてしまう。また、個人で使用する場合でも、使用済みインクリボンをゴミとして廃棄した際に、第三者が知り得てしまうおそれがある。このため、印刷に使用したインクリボンは、例えばはさみ等で細かく切り裂いて印刷情報を認識できない状態にしたり、廃棄時にマル秘扱いで廃棄業者に依頼する必要がある。
【0004】
例えば特許文献1では、使用済みインクフィルムに残存する印字跡を少ない電力により短時間で消去できるようにした印刷装置が開示されている。当該印刷装置は、使用済みインクフィルムに残存する印字跡の消去時に、使用済みインクフィルムを印刷時とは反対方向に巻き取りながら印字跡を読み取り、該印字跡の画像データに基づいて印字データを作成し、作成された印字データを記録紙に印字することで印字跡を消去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−114383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1で開示された印刷装置は、使用済みインクフィルムの残存する印字跡にさらなる印字を行うことで印字跡を消去しようとするものである。確かに少ない電力で実行しようとしているが、印字跡消去のための印字を行っている分だけエネルギーが余計にかかってしまい、また装置の構成もより複雑になってしまう。
【0007】
そこで、本発明は、インクリボン等を用いて記録紙への印刷を行う画像形成装置において、再印刷のためのエネルギーをかけることなく、シンプルな構成で、使用済みインクリボンに残存する印刷情報を認識できない状態にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の画像形成装置は、インクを保持するインク保持手段に保持されたインクを記録紙に転写することで印刷を行う印刷手段と、印刷手段による印刷が行われた後のインク保持手段の巻き取りを行う巻き取り手段と、印刷手段と巻き取り手段の間に設けられ、印刷後のインク保持手段に対して部分的に糊を塗布する糊塗布手段と、を有する。
【0009】
また、本発明の画像形成装置は、上記の画像形成装置において、糊塗布手段が、糊を収容する中空部と中空部に貫通する複数の孔が設けられた表面部とを有するローラ部材であるものであってもよい。
【0010】
また、本発明の画像形成装置は、上記の画像形成装置において、糊塗布手段が、印刷後のインク保持手段と接触する位置で固定されて設けられているものであってもよい。
【0011】
また、本発明の画像形成装置は、上記の画像形成装置において、糊塗布手段が、印刷後のインク保持手段に対する接触及び離間が可能な形で設けられているものであってもよい。
【0012】
また、本発明の画像形成装置は、上記の画像形成装置において、糊塗布手段が、印刷後のインク保持手段におけるインク使用領域と接触し、該インク保持手段におけるインク未使用領域から離間するものであってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、インクリボン等を用いて記録紙への印刷を行う画像形成装置において、再印刷のためのエネルギーをかけることなく、シンプルな構成で、使用済みインクリボンに残存する印刷情報を認識できない状態にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態(第1)に係る熱転写プリンタの構成を示した模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係る熱転写プリンタが備える糊塗布ドラムの構成を示した拡大図である。
【図3】本発明の実施形態(第1)に係る糊塗布処理を説明するための図である。
【図4】本発明の実施形態(第2)に係る熱転写プリンタの構成を示した模式図である。
【図5】本発明の実施形態(第2)に係る熱転写プリンタの構成を示したブロック図である。
【図6】本発明の実施形態(第2)に係る糊塗布処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態は、印刷後に使用済みとなったインクリボンに対して糊塗布用のドラムを固定して接触させ、常に糊を塗布するものである。すなわち、実際に使用した部分のみならず、実際に使用していない部分についても、使用済みインクリボンとして糊を塗布する。
【0017】
図1は、本実施形態に係る熱転写プリンタの構成を示した模式図である。本実施形態の熱転写プリンタ10は、インクを保持するインクリボン18を、記録紙であるラベル5に熱転写して印刷を行う画像形成装置である。インクリボン18は、未使用のインクリボン18が巻回されたインクリボン供給ロール11と使用済みのインクリボン18の巻き取りを行う巻き取りロール17とによって張架されている。
【0018】
インクリボン供給ロール11から巻き取りロール17への経路途中には、プラテンロール12及びサーマルヘッド13が配置されており、インクリボン18はプラテンロール12とサーマルヘッド13との間を圧接状態で通過する。サーマルヘッド13はインクリボン18に対して熱を加える手段であり、プラテンロール12は加熱されたインクリボン18とラベル5に圧力を加える手段である。このように、サーマルヘッド13での加熱、プラテンロール12での加圧によりラベル5への印刷を行う。
【0019】
プラテンロール12及びサーマルヘッド13から巻き取りロール17への経路途中には、使用済みのインクリボン18に対して糊を塗布する糊塗布ドラム16が配置されている。糊塗布ドラム16と糊を収容する糊タンク14とは、糊を供給するための供給パイプ15で連結されている。
【0020】
本実施形態では、供給パイプ15は所定の長さとなっており、糊塗布ドラム16は、プラテンロール12及びサーマルヘッド13のニップ部と巻き取りロール17とにより張架された使用済みのインクリボン18と圧接するように固定されて配置される。つまり、糊塗布ドラム16の表面は使用済みのインクリボン18と常に接触しており、使用済みのインクリボン18は巻き取りロール17により巻き取られる前段階で常に糊が塗布される。
【0021】
図2は、本実施形態に係る熱転写プリンタが備える糊塗布ドラムの構成を示した拡大図である。本実施形態において、糊塗布ドラム16は、図2に示すように、使用済みのインクリボン18と接触する全周の表面に複数の小さな孔が設けられている。孔の大きさは、糊が塗布された後に巻回されたインクリボンを再度剥がしたとき、インク跡から印刷内容が判別できなくなる程度の大きさであれば、任意の直径としてよい。また、本実施形態では孔の形を円形として示しているが、これに限られず、三角形、四角形、星型といった多角形の形状やアメーバ状の自由曲線を含む形状であってもよい。
【0022】
また、糊塗布ドラム16は、糊タンク14から供給パイプ15を介して供給された糊を収容する中空部を有している。全周の表面に設けられた複数の孔は中空部まで貫通しており、供給パイプ15を介して供給された糊の量が中空部の容積以上となったとき、中空部から各孔に糊が押し出されるようになっている。
【0023】
本実施形態における使用済みインクリボンの処理について述べる。まず、未使用のインクリボン18は、巻き取りローラ17による巻き取りで、インクリボン供給ローラ11からプラテンロール12及びサーマルヘッド13のニップ部に向けて走行する。そして、プラテンロール12及びサーマルヘッド13のニップ部においてラベルへの印刷が行われる。インクリボン18は、印刷後も巻き取りローラ17により継続して巻き取られる。
【0024】
糊塗布ドラム16は、インクリボン18と圧接しており、インクリボン18の走行に応じて回転しながら、接触しているインクリボン18に糊を塗布し続ける。インクリボン18は、糊の塗布が行われた後も巻き取りローラ17により継続して巻き取られ、巻き取りローラ17は、糊が塗布された使用済みのインクリボン18を巻き取って使用済みロールとする。
【0025】
なお、廃棄物処理方法が市町村により異なり、リボンをほどいて廃棄する必要がある場合のことも考慮し、糊タンク14、供給パイプ15、糊塗布ドラム16を複数セット設けて、粘着力の異なる糊を塗布できるように構成してもよい。このように構成することにより、接着力の強い糊を使用することで使用済みリボンをロールからほどけないようにする場合、弱い粘着力の糊を使用することで使用済みリボンをロールからほどけるようにする場合に対応することができる。
【0026】
図3は、本実施形態に係る糊塗布処理を説明するための図である。図3(a)が従来の使用済みインクリボンの処理(糊を塗布しない場合)を表し、図3(b)が本実施形態の使用済みインクリボンの処理(糊を塗布する場合)を表す。
【0027】
図3(a)に示すように、糊を塗布せずにそのまま巻き取りローラ17で使用済みのインクリボン18を巻き取った場合は、印刷内容が使用済みのインクリボン18にインク跡として残り、使用済みロールをほどいたときに印刷内容を読み取ることが可能である。この場合、廃棄後に第三者が印刷内容を取得できてしまい問題がある。
【0028】
一方、図3(b)に示すように、使用済みのインクリボン18に複数の小さな円形で糊を塗布しながら巻き取りローラ17で巻き取った場合、接着力の強い糊を用いたときは使用済みロールをはがすことができず、印刷内容を読み取ることはできない。また、接着力の弱い糊を用いたときでも、使用済みロールをほどく際に糊により円形にインクの残りが剥がれ、インク跡から印刷内容が読み取ることができない。いずれの場合でも廃棄後に第三者が印刷内容を判別することは不可能であり、個人情報保護の要請は満たしている。
【0029】
本実施形態によれば、使用済みのインクリボンに対して、糊塗布ドラムを用いて複数の小さな円形に糊を塗布するため、簡易な構成で、余分なエネルギーをかけることなく、使用済みインクリボンに残存する印刷情報を認識できない状態にすることが可能である。
【0030】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態は、印刷後に使用済みとなったインクリボンに対して、糊塗布用のドラムが接触/離間可能に設けられ、使用済みのインクリボンの領域に応じて糊を塗布するものである。すなわち、実際に使用していない部分については糊を塗布せず、実際に使用した部分のみに糊を塗布する。以下、第1実施形態と相違する構成について述べ、共通する構成については説明を省略する。
【0031】
図4は、本実施形態に係る熱転写プリンタの構成を示した模式図である。本実施形態では、インクリボンに圧接するように配置された糊塗布ドラム16は、インクリボン18に対して上下(接触する方向と離間する方向)に駆動となっている。つまり、印刷に使用された部分には接触して糊を塗布し、印刷に使用されなかった部分から離間して糊を塗布しない。糊塗布ドラム16の駆動は糊タンク24が行う。
【0032】
図5は、本実施形態に係る熱転写プリンタの構成を示したブロック図である。印刷データ送信装置100は例えばパソコン等の上位装置である。本実施形態の転写プリンタ200は、画像データを受信し印刷用データに変換してバッファリングするデータ受信/変換データバッファ部210、印刷ヘッドの動作を制御する印刷ヘッド制御部220、印刷ヘッド230、印刷された部分が糊塗布ドラムに到達するまでの時間を計算する時間差計算部240、糊塗布ドラムの駆動を制御する糊塗布ドラム制御部250、糊塗布ドラム260を備える。印刷ヘッド230は図4のサーマルヘッド13に対応し、糊塗布ドラム260は図4の糊塗布ドラム16に対応する。
【0033】
本実施形態における使用済みインクリボンの処理について、図4及び図5を参照して説明する。まず、未使用のインクリボン18は、巻き取りローラ17による巻き取りで、インクリボン供給ローラ11からプラテンロール12及びサーマルヘッド13のニップ部に向けて走行する。インクリボン18は、印刷内容の有無に関わらず走行する。
【0034】
熱転写プリンタ200は、印刷データ送信装置100から印刷データを受信し、データ受信/変換デーバッファ部210から印刷ヘッド制御部220へ印刷データが送られる。その後、印刷ヘッド制御部220から印刷ヘッド230に印刷データ及び制御データが送られ、印刷ヘッド230によりラベルに印刷が行われる。
【0035】
一方、データ受信/変換デーバッファ部210は、印刷データが印刷ヘッド制御部220に送られたことを時間差計算部240へ通知する。そして、時間差計算部240は、印刷データが印刷ヘッド230に送られたことを糊塗布ドラム制御部250へ通知する。糊塗布ドラム制御部250は、ラベルに印刷がある場合のみ糊塗布ドラム260をインクリボンに接触させるように駆動制御し、糊をインクリボンに塗布させる。
【0036】
実際は、図4に示すように、サーマルヘッド13(図5の印刷ヘッド230)の位置aから糊塗布ドラム16(図5の塗布ドラム260)の位置bまで距離があるため、その間をインクリボン18が走行する時間tを図5の時間差計算部240で計算し、インクリボン18における実際の印刷で使用された部分がちょうど糊塗布ドラム16の位置bに到達した時点で、糊塗布ドラム16がインクリボンの使用部分に接触して糊が塗布されるようにする。
【0037】
図6は、本実施形態に係る糊塗布処理を説明するための図である。上述したように糊塗布ドラムを駆動させることで、印刷動作が行われ、プラテンロール12及びサーマルヘッド13のニップ部を通過したインクリボン18について、実際に印刷されなかった未使用部分に糊を塗布せず、実際に印刷された使用部分にのみ糊を塗布するようにする。
【0038】
本実施形態によれば、印刷データに応じて糊塗布ドラムのインクリボンへの接触/離間を駆動し、印刷動作終了後のインクリボンにおける実際の使用部分にのみ複数の小さな円形に糊を塗布するため、第1実施形態での効果に加えて、糊の使用量削減、また市町村の規則によりリボンをほどいて捨てる必要がある場合のほどく作業の簡易化が実現できる。
【0039】
なお、上述する実施形態は、本発明の好適な実施形態であり、上記実施形態のみに本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を施した形態での実施が可能である。
【符号の説明】
【0040】
5 ラベル
10,20,200 熱転写プリンタ
11 インクリボン供給ロール
12 プラテンロール
13 サーマルヘッド
14,24 糊タンク
15 供給パイプ
16,260 糊塗布ドラム
17 巻き取りロール
18 インクリボン
100 印刷データ送信装置
210 データ受信/変換データバッファ部
220 印刷ヘッド制御部
230 印刷ヘッド
240 時間差計算部
250 糊塗布ドラム制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを保持するインク保持手段に保持されたインクを記録紙に転写することで印刷を行う印刷手段と、
前記印刷手段による印刷が行われた後の前記インク保持手段の巻き取りを行う巻き取り手段と、
前記印刷手段と前記巻き取り手段の間に設けられ、前記印刷後の前記インク保持手段に対して部分的に糊を塗布する糊塗布手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記糊塗布手段は、糊を収容する中空部と前記中空部に貫通する複数の孔が設けられた表面部とを有するローラ部材であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記糊塗布手段は、前記印刷後の前記インク保持手段と接触する位置で固定されて設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記糊塗布手段は、前記印刷後の前記インク保持手段に対する接触及び離間が可能な形で設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記糊塗布手段は、前記印刷後の前記インク保持手段におけるインク使用領域と接触し、該インク保持手段におけるインク未使用領域から離間することを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−212986(P2011−212986A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83767(P2010−83767)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(302069930)NECパーソナルプロダクツ株式会社 (738)
【Fターム(参考)】