説明

画像形成装置

【課題】分配部材内部の共通流路に液体を供給する液体供給径路における気泡の滞留を生じる。
【解決手段】分配タンク54は、タンクケース121内に複数のヘッド101にインクを分配する共通流路123が形成され、共通流路123の天面123aは傾斜面に形成されて、共通流路123の一端部側に共通流路123にインクを供給するインク供給口130からのインク供給経路131が設けられ、インク供給経路131は、共通流路123に向かって斜めに下方から上方に向かって立ち上がる形状に形成され、上方の位置の出口131aで共通流路123と連通している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関し、特に液滴を吐出する記録ヘッドを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置としてインクジェット記録装置などが知られている。この液体吐出記録方式の画像形成装置は、記録ヘッドからインク滴を、搬送される用紙(紙に限定するものではなく、OHPなどを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体あるいは記録媒体、記録紙、記録用紙などとも称される。)に対して吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用する。)を行なうものであり、記録ヘッドが主走査方向に移動しながら液滴を吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置と、記録ヘッドが移動しない状態で液滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型画像形成装置がある。
【0003】
なお、本願において、液体吐出方式の「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。また、「インク」とは、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料なども含まれる。
【0004】
特に、ライン型画像形成装置(以下、単に「インクジェット記録装置」ともいう。)において、複数のヘッドを並べて構成した記録ヘッドと、インクを収容するメインタンクと、メインタンクから供給されるインクを収容し、記録ヘッドに供給する可撓性部材(例えば可撓性フィルム)で形成された密閉式サブタンクを含む脱気インクを扱えるインク供給系と、記録ヘッドの複数のヘッドにインクを分配して供給する(分岐する)供給部材としての分配部材(ディストリビュータタンクともいう。)と、ディストリビュータタンクに溜まった気泡をインク供給経路から排出するための手段を備えるものが知られている。
【0005】
ここで、記録ヘッドの吐出ノズルは非常に微細(例えばφ24μm)であり、吐出インク内の溶存酸素量が高いと、酸素が徐々にたまり、インクの吐出不良を発生する可能性がある。そこで、この分配部材を含むインク供給経路内のインク中に気泡が混在すると、この気泡の混在したインクがヘッドに分配されてしまったり、インク内の溶存酸素量が高くなってしまい、ヘッドから所定量のインクが噴出さなかったり、所定の滴吐出特性が得られなくなる。このため、分配部材に供給されたインク中に混在する気泡の排出、除去を行う必要がある。
【0006】
従来、例えば、インク分配器に、分配器内の気泡を収集する空間部に向けて気泡を導く複数の気泡流れ規制泡路を設け、かつ各気泡流れ規制泡路により収集された気泡により形成されるインクの液面を検出する各フロートスイッチを設けるものが知られている(特許文献1)。
【0007】
また、印字装置側のインク循環経路とマニホールドとの間にバッファタンクを設け、一旦バッファタンクに貯留したインクをマニホールドに供給するようにしたものがある(特許文献2)。
【0008】
さらに、メインタンクからサブタンクへの液体供給流路に液体に混入した気泡を捕獲する気泡捕獲部を有し、この気泡捕獲部には一部が伸縮部材で形成された液体流路部とアクチュエータ及び開閉弁を設け、液体流路部は液体流入側が液体流出側より高い水頭位置に設けて、液体供給流路に流れる液体に混入した気泡を捕獲し、アクチュエータで液体流路部を押圧して収縮させて開閉弁を開いて捕獲した気泡を排出するようにしたものがある(特許文献3)。
【0009】
また、分岐部材(分配部材)の一端部の真下から分岐部材内部の流路のインクを供給し、天面を斜めに形成して気泡が集まる最も高い部分を大気に開放する大気開放路を設けたものが知られている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−096208号公報
【特許文献2】特開2003−019811号公報
【特許文献3】特開2008−183746号公報
【特許文献4】特開2009−012452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したように、複数のヘッドのインクを分配する分配部材には気泡を排出できる手段を設けることができるが、分配部材内部の流路(これを「共通流路」という。)に対してインクを供給する供給径路で発生した気泡が滞留すると、分配部材に対するインク供給が阻害されてリフィル不足を生じるおそれがある。
【0012】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、分配部材内部の共通流路に液体を供給する液体供給径路における気泡の滞留を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明に係る画像形成装置は、
液滴を吐出するノズルを有する複数のヘッドと、
前記複数のヘッドに液体を分配して供給する共通流路を内部に有する分配部材と、
前記分配部材に前記液体を供給する液体収容手段と、を備え、
前記分配部材は、前記共通流路に液体を供給する液体供給経路を有し、前記液体供給経路は前記共通流路に対して斜め下方から上方に向かって形成され、上方の位置で前記共通流路と連通している
構成とした。
【0014】
ここで、前記共通流路には前記液体供給経路との接続部分に斜め下方に立ち下がる部分が形成されている構成とできる。
【0015】
本発明に係る画像形成装置は、
液滴を吐出するノズルを有する複数のヘッドと、
前記複数のヘッドに液体を分配して供給する共通流路を内部に有する分配部材と、
前記分配部材に前記液体を供給する液体収容手段と、を備え、
前記分配部材は、前記共通流路に液体を供給する液体供給経路を有し、前記液体供給経路は前記共通流路に対して上方に広がる形状に形成されて前記共通流路と連通している
構成とした。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る画像形成装置によれば、分配部材は、共通流路に液体を供給する液体供給経路を有し、液体供給経路は共通流路に対して斜め下方から上方に向かって形成され、上方の位置で共通流路と連通している構成としたので、液体供給径路内に侵入ないし発生した気泡は液体供給径路に沿って共通流路側に送られ、共通流路側の気泡排出径路を通じて排出され、分配部材内部の共通流路に液体を供給する液体供給径路における気泡の滞留を低減することができる。
【0017】
本発明に係る画像形成装置によれば、分配部材は、共通流路に液体を供給する液体供給経路を有し、液体供給経路は共通流路に対して上方に広がる形状に形成されて構成としたので、液体供給径路内に侵入ないし発生した気泡は液体供給径路の上内面に沿って共通流路側に送られ、共通流路側の気泡排出径路を通じて排出され、分配部材内部の共通流路に液体を供給する液体供給径路における気泡の滞留を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一例の全体構成を説明する正面概略説明図である。
【図2】同じく要部平面説明図である。
【図3】同装置のインク供給系の説明に供する説明図である。
【図4】ヘッドモジュールの側面説明図である。
【図5】図4のD−D線に沿う断面説明図である。
【図6】図4のヘッド部分の底面説明図である。
【図7】比較例の分配タンクの断面説明図である。
【図8】同分配タンクの作用説明に供する断面説明図である。
【図9】本発明の第1実施形態における分配タンクの断面説明図である。
【図10】同分配タンクの作用説明に供する断面説明図である。
【図11】同分配タンクのインク供給口の出口と共通流路の天面との位置関係の比較例の説明に供する断面説明図である。
【図12】同分配タンクの共通流路の入口部分の比較例の説明に供する断面説明図である。
【図13】本発明の第2実施形態における分配タンクの断面説明図である。
【図14】本発明の第3実施形態における分配タンクの断面説明図である。
【図15】本発明の第4実施形態における分配タンクの断面説明図である。
【図16】同分配タンクの作用説明に供する断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係る画像形成装置の一例について図1及び図2を参照して説明する。なお、図1は同画像形成装置の全体構成を説明する概略構成図、図2は同装置の模式的平面説明図である。
【0020】
この画像形成装置はライン型画像形成装置であり、装置本体1と、用紙Pを積載し給紙する給紙トレイ2と、印刷された用紙Pを排紙積載する排紙トレイ3と、用紙Pを給紙トレイ2から排紙トレイ3まで搬送する搬送ユニット4と、搬送ユニット4によって搬送される用紙Pに液滴を吐出し印字する記録ヘッドを構成するヘッドモジュール51を含む画像形成ユニット5と、印刷終了後又は所要のタイミングで画像形成ユニット5の各記録ヘッドの維持回復を行う維持回復機構であるヘッドクリーニング装置6と、ヘッドクリーニング装置6を開閉する搬送ガイド部7と、画像形成ユニット5のヘッドモジュール51にインクを供給するサブタンクで構成されるサブタンク部8と、サブタンク部8にインクを供給するメインタンク部9とを備えている。
【0021】
装置本体1は、図示しない前後側板及びステーなどで構成されており、給紙トレイ2上に積載されている用紙Pは、分離ローラ21及び給紙ローラ22によって1枚ずつ搬送ユニット4に給紙される。
【0022】
搬送ユニット4は、搬送駆動ローラ41Aと搬送従動ローラ41Bと、これらのローラ41A、41B間に掛け回された無端状の搬送ベルト43とを備えている。この搬送ベルト43の表面には複数の図示しない吸引孔が形成されており、搬送ベルト43の下部には用紙Pを吸引する吸引ファン44が配置されている。また、搬送駆動ローラ41A、搬送従動ローラ41B上部には、それぞれ搬送ガイドローラ42A、42Bが図示しないガイドに保持されて、自重にてベルト43に当接している。
【0023】
搬送ベルト43は、搬送駆動ローラ41Aが図示しないモータにより回転されることで周回移動し、用紙Pは搬送ベルト43上に吸引ファン44により吸い付けられ、搬送ベルト43の周回移動によって搬送される。なお、搬送従動ローラ41B、搬送ガイドローラ42A、42Bは搬送ベルト43に従動して回転する。また、搬送ベルト43の下側には空吐出で搬送ベルト43に付着した空吐出滴を除去する空吐出クリーニング装置45が配置されている。
【0024】
搬送ユニット4の上部には用紙Pに印字する液滴を吐出する複数のヘッドモジュール51で構成される画像形成ユニット5が矢示A方向(及び逆方向)に移動可能に配置されている。この画像形成ユニット5は、維持回復動作時(クリーニング時)にはクリーニング装置6上方まで移動され、画像形成時には図1の位置に戻される。
【0025】
画像形成ユニット5は、液滴を吐出する複数のヘッド101を一列に配列したヘッドモジュール(記録ヘッドユニット)51A、51B、51C、51Dが、用紙搬送方向に沿って並べてラインベース部材52に取付けられて配置され、ヘッドモジュール51には複数のヘッド101にインクを分配供給する分配部材(以下「分配タンク」という。)54が一体化されている。
【0026】
ここでは、ヘッドモジュール51A、51Bの2つのノズル列の一方でブラック(K)の液滴を、他方でマゼンタ(M)の液滴を吐出し、また、ヘッドモジュール51C、51Dの2つのノズル列の一方でシアン(C)の液滴を、他方でイエロー(Y)の液滴を吐出する。つまり、この画像形成ユニット5は、同じ色の液滴を吐出する2つのヘッドモジュール51が用紙搬送方向に並べて配置され、2つのヘッドモジュール51で用紙幅相当の1列分のノズル列が構成されている構成としている。
【0027】
そして、ヘッドモジュール51の上側にはインクをそれぞれのヘッド101に供給する分配タンク54がヘッドモジュール51ごとに配列されている。分配タンク54の上流側には各色のサブタンク81が配置されて供給チューブ82を介して接続されている。サブタンク81には上流側には、インクを貯蔵するメインタンク91(各色毎にブラックは「k」、マゼンタは「m」、シアンは「c」、イエローは「y」の符号を付記している。)が配置され、メインタンク91とサブタンク81とは供給チューブ92による供給経路にて接続されている。
【0028】
搬送ユニット4の下流側には用紙Pを排紙トレイ3に排紙する搬送ガイド部7が設けられている。搬送ガイド部7にて案内されて搬送される用紙Pは排紙トレイ3に排紙される。排紙トレイ3は、用紙Pの幅方向を規制する対のサイドフェンス31と用紙Pの先端を規制するエンドフェンス32を備えている。
【0029】
維持回復機構(ヘッドクリーニング装置)6は、画像形成ユニット5の各ヘッドモジュール51に対応して、4列分のクリーニング手段61A〜61Dが配置され、1つのクリーニング手段61は、ヘッドモジュール51の各ヘッド101に対応してノズル面をキャッピングするキャップ部材62及びノズル面を払拭するワイピング部材(ワイパ部材)64などで構成されている。なお、各クリーニング手段61のキャップ部材62は各列毎に独立して上下動させることができる構成としている。さらに、クリーニング手段61の下方には、キャップ部材62でヘッド101のノズル面をキャッピングした状態でノズルからインクを吸引するための吸引手段である吸引ポンプ63A〜63Dが配置されている。
【0030】
また、この画像形成装置においては、印刷終了後、液滴を吐出するヘッドモジュール51の各ヘッドのノズル面をクリーニング手段61でキャッピングした状態でノズルからインクを吸引する場合、あるいは、ヘッドモジュール51の各ヘッドのノズル面に付着したインクをワイピング部材で清掃する場合は、図1にも示すように、印刷停止後、搬送ユニット4全体が搬送従動ローラ41Bを支点に矢印B方向に回動し、画像形成ユニット5との間の空間を画像形成時よりも大きくすることで、画像形成ユニット5の移動スペースを確保するようにしている。このとき、ヘッドクリーニング装置6上部に配置されている搬送ガイド部7の搬送ガイド板71も支点72にて矢印C方向上方に回動され、ヘッドクリーニング装置6の上方が開放される。
【0031】
そして、搬送ユニット4と搬送ガイド部7がそれぞれ解放(解除)された後に、画像形成ユニット5が用紙通紙方向(矢示A方向)に移動し、ヘッドクリーニング装置6上方で停止され、クリーニング手段61が上昇して各ヘッドモジュール51のクリーニング動作(維持回復動作)に移行する。
【0032】
次に、この画像形成装置のヘッドモジュールを含むインク供給系の詳細について図3を参照し手説明する。
サブタンク81とヘッドモジュール51の分配タンク54とは供給チューブ82を介して接続され、サブタンク81とヘッド101との水頭差(−20〜−70mmAq)によって、ヘッド101のノズルのメニスカスを保持するのに適切な負圧を発生させている。なお、供給チューブ82の径はここではφ6mmとしているが、この径は大きければ大きいほどよく、φ10mmとしても良い。供給チューブ81の径が小さいと抵抗(圧力損失)が増えるため、ヘッド101からインクを吐出し難くなり、画像に影響がでる可能性がある。
【0033】
このサブタンク81は、パック式のサブタンクで構成している。すなわち、サブタンク81はインクを収容する可とう性を有するパック83を密閉ケース84内に収納してなる。パック式サブタンクは、インクと大気を直接触れさせないようにして、インクの水分蒸発による粘度上昇を防ぎ、また、インク中の溶存酸素量を一定に保ち、ヘッド101内に気泡が溜まるのを防ぐことができる。
【0034】
このサブタンク81には、パック83とケース84との間を加圧する加圧ポンプ85が接続されている(チューブで連結されている)。放置後の印刷前に行うメンテナンス動作の時には、加圧ポンプ85でサブタンク81のケース84内を加圧して、インクをヘッド101に送り、ノズルからインクを吐出させてメンテナンスを行うことになる。なお、このメンテナンス動作は画像形成ユニット5がクリーニング装置6の上部に移動してから行われることになる。
【0035】
サブタンク81の上流側にはインクを貯蔵するメインタンク91が配置され、メインタンク91とサブタンク81とは供給チューブ92による供給経路にて接続され、供給径路内には電磁弁93が設けられ、この電磁弁93を開閉制御して、メインタンク91からサブタンク81へのインク供給を制御する。
【0036】
分配タンク54上部には図示しない廃液タンクに通じるエアー排出経路を形成するチューブ55と、排出経路55を開閉する電磁弁56が設けられている。分配タンク54に初期充填するときのエアー抜き、分配タンク54内にエアーが溜まってきたときのエアー抜きを行うときには、電磁弁56を開いてエアーを排出する。なお、エアーを抜きやすくするため分配タンク54の内部の共通流路の天面には傾斜が設けられている。
【0037】
次に、ヘッドモジュール51の詳細について図4ない図6を参照して説明する。なお、図4はヘッドモジュールの側面説明図、図5は図4のD−D線に沿う断面説明図、図6は図4のヘッド部分の底面説明図である。
ヘッド101は、図6に示すように、液滴を吐出する複数のノズル102を配列した2列のノズル列103、103を有し、各ノズル列103、103のノズル102から異なる色の液滴を吐出する。
【0038】
そして、複数のヘッド101は、図示しない固定部材(ねじ、接着剤等)でベース部材111に固定されている。複数のヘッド101は分配タンク54に分配タンク固定部材112で固定されている。この分配タンク固定部材112は図で上下に押し付けるような板バネで形成され、分配タンク54はヘッド101に押し付けられることになる。なお、ヘッド101と分配タンク54との間にはフィルタ105が介在されている。
【0039】
分配タンク54は、タンクケース121の内部にヘッド配列方向に沿う隔壁部122で区画された異なる色に対応する共通流路123、123が形成され、共通流路123の壁面の少なくとも一部が可撓性を有する可撓性部材124で形成されている。
【0040】
この可撓性部材124は、外部振動、機械振動、脈動からの圧力調整のためのダンパとして機能するものであり、例えば、アルミ、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、テフロン(登録商標)、サラン、塩化ビニル、PVA、ポリプロピレン、ナイロン、PET等で形成される。また、この可撓性部材124はガスバリア性の機能も有している。また、タンクケース121の材質は、接着の関係から可撓性部材124と同様の材料が好ましいが、金属材料などでもよい。また、分配タンク54はダンパ部がない構成であってもよい。
【0041】
なお、分配タンク54とヘッド101の構成は、上記の例に限るものではなく、例えば分配タンクを内部で分割せずに各1つのヘッドで1色のインクを吐出させる構成とし、ヘッドの数を増やして画像解像度を上記の構成の2倍にするような構成でもよい。
【0042】
ここで、本発明の作用効果を明らかにするために従前の分配タンクを比較例として説明する。図7は同比較例の分配タンクの概略断面説明図である。
この分配タンク500は、内部に形成された共通流路501にインクを供給するインク供給口(液体供給経路)502が設けられ、共通流路501の天面の最も高い部分に気泡排出口504が形成されている。
【0043】
インク供給口502は共通流路501の一端部(ヘッド配列方向における一端部)に対して略水平に配置されている。このようにインク供給口502を水平にすることで、空の分配タンク500にインクを供給するとき、スムーズにインクが供給されるので、気泡の発生も抑えられる。
【0044】
しかしながら、インク供給口502の上流側で気泡が発生したり、装置本体が傾いたりしていて、分配タンク500の先端部側(最下流側:図のE部側)が下がっていたりすると、供給経路(インク供給口502)にインクが留まってしまうことになる。
【0045】
この点について図8を参照して具体的に説明すると、上流で発生した気泡600がインク供給口502に侵入したとき、分配タンク500の先端部がインク供給口502側より下がっていたりすると、図8(a)→(b)→(c)に示すように、インク供給口502内に気泡が滞留してしまう。前述したように、供給経路(インク供給口502)は例えばφ6mm以上であり、この場合、気泡600が供給経路(インク供給口502)の壁面に付着してしまうと、加圧しても吸引しても気泡600は流れ難くなってしまう。この場合、供給経路を小径(例えばφ4mm)以下とすれば、加圧や吸引で気泡は流れやすくなるが、圧力損失が大きくなって滴吐出に影響が生じる。
【0046】
また、インク供給口502の出口と最も近いヘッド101との間の距離Fが短いと、共通流路501内に混入した気泡600がヘッド101にインク供給口部506から流れ込む可能性がある。気泡がヘッドに流れ込むと、インクの不吐出(ノズルダウン)が発生するおそれがある。
【0047】
次に、本発明の第1実施形態における分配タンクについて図9を参照して説明する。なお、図9は同分配タンクの断面説明図である。
分配タンク54は、タンクケース121内に複数のヘッド101にインクを分配する共通流路123が形成され、共通流路123の天面123aは傾斜面に形成されている。そして、共通流路123の一端部側(天面123aの上面123bがある側の端部)に共通流路123にインクを供給するインク供給口130からのインク供給経路131が設けられている。また、共通流路123の一端部側(天面123aの上面123b側)に気泡排出口132が設けられ、前述したように排出経路55に接続されている。
【0048】
ここで、インク供給経路131は、共通流路123に向かって斜め(角度θa)に下方から上方に向かって立ち上がる形状に形成され、上方の位置の出口131aで共通流路123と連通している。
【0049】
また、共通流路123にはインク供給経路131の出口131aから斜め(角度θb)で立ち下がる傾斜面を有する傾斜部133が形成されている。
【0050】
また、共通流路123には各ヘッド101にインクを供給するインク供給口部126が設けられている。
【0051】
このように構成した分配タンク54の作用について図10を参照して説明する。
図10(a)に示すように、インク供給経路131からインク300が供給されると、同図(b)に示すように共通流路123に供給される。このとき、インク供給経路131に流入するインク300に気泡301が混入していた場合、インク供給経路131が傾斜していることから、気泡301はその浮力によって上昇して図10(c)に示すように気泡排出口132へ排出される。なお、インク供給経路131の傾斜角度θaは3°以上90°未満であることが好ましい。
【0052】
この場合、インク供給経路131の出口131aを上部の気泡排出口132の近くに配置することで、よりいっそう気泡301は気泡排出口132から排出されやすくなる。ただし、図11に示すように、極端にインク供給経路131の出口131aを上部に配置する(天面上面123bより高さaだけ高い位置に出口131aの上端が位置するようなとき)と、分配タンク54の共通流路123の上部にエアーが溜まったとき(エアー溜り302が生じたとき)、出口131aの流路が狭くなってしまうため、流体抵抗が増大し、インクの不吐出を発生させてしまうおそれがある。そのため、インク供給経路131の出口131aは、共通流路123の天面123aの上面123bよりも下側に位置して形成している。
【0053】
また、インク供給経路131から共通流路123内にインクが供給されるとき、共通流路123の入口部分では下方に広がるような傾斜部133が形成されているので、供給されたインクは、この傾斜部133を緩やかに流れて気泡は発生しない。
【0054】
すなわち、図12に示すように、共通流路123のインク供給経路131の出口131aに通じる入口部分に傾斜部133がなく、鉛直下向きに立ち下がる形状であると、インクが落下したときに気泡301が発生してヘッド101に流入するおそれがある。
【0055】
なお、共通流路123の下方に広がる傾斜部133の角度は極力小さい方がよく、傾斜角度θbは60度以下に設定することが好ましい。
【0056】
このように、分配部材は、共通流路に液体を供給する液体供給経路を有し、液体供給経路は共通流路に対して斜め下方から上方に向かって形成され、上方の位置で共通流路と連通している構成とすることで、液体供給径路内に侵入ないし発生した気泡は液体供給径路に沿って共通流路側に送られ、共通流路側の気泡排出径路を通じて排出され、分配部材内部の共通流路に液体を供給する液体供給径路における気泡の滞留を低減することができる。
【0057】
次に、本発明に第2実施形態における分配タンクについて図13を参照して説明する。なお、図13は同分配タンクの断面説明図である。
ここでは、共通流路123のインク供給経路131の出口131a側の傾斜部133を曲面形状としている。これにより、より緩やかにインク300が流れて気泡の発生を抑制できる。
【0058】
次に、本発明に第3実施形態における分配タンクについて図14を参照して説明する。なお、図14は同分配タンクの断面説明図である。
ここでは、インク供給経路131を分配タンク54の内部に向かって上方に広がるような形状としている。この場合、供給経路131に、僅かに水平部分が生じるが、その後は上昇形状になっているため、前記第1、第2実施形態と同様に発生した気泡は上昇し、下面は水平であるためこの部分で気泡は発生しないことになる。
【0059】
このように、分配部材は、共通流路に液体を供給する液体供給経路を有し、液体供給経路は共通流路に対して上方に広がる形状に形成されて構成とすることで、液体供給径路内に侵入ないし発生した気泡は液体供給径路の上内面に沿って共通流路側に送られ、共通流路側の気泡排出径路を通じて排出され、分配部材内部の共通流路に液体を供給する液体供給径路における気泡の滞留を低減することができる。
【0060】
次に、本発明に第4実施形態における分配タンクについて図15を参照して説明する。なお、図15は同分配タンクの断面説明図である。
ここでは、インク供給口130をヘッド101のノズル面よりも下方に位置させ、インク供給口130からのインク供給経路131が共通流路123に向かって斜め下方から上方に向かって傾斜し、かつ、上昇しながら上方に広がる形状としている。
【0061】
すなわち、ここではインク供給経路131は前記第1及び第3実施形態を組み合わせた形状としている。
【0062】
この分配タンク54にインクを供給するとき、図16(a)に示すように、インク供給経路131からインク300が供給されると、同図(b)に示すように共通流路123に供給される。このとき、インク供給経路131に流入するインク300に気泡301が混入していた場合、インク供給経路131が傾斜していることから、気泡301はその浮力によって上昇して同図(c)に示すように気泡排出口132へ排出される。
【0063】
そして、この構成にあっては、図16(c)に示すようにインク供給経路131の入口部分(傾斜が始まる部分)とヘッド101との間には十分な間隔G(例えば10mm以上)をとることができるので、ヘッド101に気泡が入り込むことも確実に防止できる。
【0064】
なお、上記実施形態ではライン型画像形成装置に適用した例で説明しているが、シリアル型画像形成装置で複数ヘッドを配列した構成の記録ヘッドを備える場合にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 装置本体
4 搬送ユニット(搬送部)
5 画像形成ユニット
6 クリーニング装置(維持回復機構)
7 搬送ガイド部
8 インクタンクユニット(サブタンクユニット)
9 メインタンク部
51 ヘッドモジュール(記録ヘッドユニット)
54 分配タンク(分配部材)
81 サブタンク
91 メインタンク(インクカートリッジ)
101 ヘッド
121 タンクケース
123 共通流路
130 インク供給口
131 インク供給経路
132 気泡排出口
133 傾斜部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出するノズルを有する複数のヘッドと、
前記複数のヘッドに液体を分配して供給する共通流路を内部に有する分配部材と、
前記分配部材に前記液体を供給する液体収容手段と、を備え、
前記分配部材は、前記共通流路に液体を供給する液体供給経路を有し、前記液体供給経路は前記共通流路に対して斜め下方から上方に向かって形成され、上方の位置で前記共通流路と連通している
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記共通流路には前記液体供給経路との接続部分に斜め下方に立ち下がる部分が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
液滴を吐出するノズルを有する複数のヘッドと、
前記複数のヘッドに液体を分配して供給する共通流路を内部に有する分配部材と、
前記分配部材に前記液体を供給する液体収容手段と、を備え、
前記分配部材は、前記共通流路に液体を供給する液体供給経路を有し、前記液体供給経路は前記共通流路に対して上方に広がる形状に形成されて前記共通流路と連通している
ことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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