説明

画像形成装置

【課題】従来よりも容易に手差し用給紙口に被記録媒体を差し込むことができる画像形成装置を提供すること。
【解決手段】画像形成装置1は、被記録媒体に対して画像を形成する画像形成部7と、被記録媒体を給紙カセット11から画像形成部7へと搬送する際に利用される第一搬送経路3Aと、被記録媒体を手差し用給紙口21から画像形成部7へと搬送する際に利用される第二搬送経路5Aとを備える。手差し用給紙口21は、装置本体1Aの上面前方に形成され、この手差し用給紙口21から装置本体1Aの下方且つ後方に向かって斜めに延びる傾斜経路5Bが、第二搬送経路5Aの一部として形成されている。これにより、第二搬送経路5Aは、手差し用給紙口21に差し込まれた被記録媒体を自重で傾斜経路5B内へ落とし込み可能な構造となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、装置本体に内蔵される給紙カセットとは別に、手差し用の給紙口を備えたプリンタ装置は既に提案されている(例えば、特許文献1参照。)。このプリンタ装置の場合、手差し用の給紙口(特許文献1:図1中の符号(24)参照)は、プリンタ装置の正面(前面)で、各種操作スイッチ(特許文献1:図1中の符号(58)参照)が配設された操作パネルの下方に設けられている。
【0003】
このような手差し用給紙口を利用すれば、例えば、給紙カセットに入れてある被記録媒体(例えば一般的な記録用紙)とは異なる被記録媒体(例えば封筒)を使いたい場合に、利用者が所望の被記録媒体を手作業で手差し用給紙口からプリンタ装置に供給し、その被記録媒体に対する記録(画像形成)を実行させることができた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−240944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、手差し用の給紙口がプリンタ装置の正面に設けられていると、被記録媒体を略水平に保持して手差し用の給紙口へ挿し込むことになる。
しかし、腰の弱い被記録媒体(例えば、比較的薄い紙や軟質フィルム)などは、利用者が被記録媒体の一端側を手で持って他端側を手差し用の給紙口へ挿し込もうとしても、被記録媒体の他端が自重で垂れ下がってしまい、略水平に保持することができないことがある。
【0006】
そのため、被記録媒体の他端側を手差し用の給紙口へうまく挿し込むことができず、挿し込み作業に手間取ることがあった。また、被記録媒体の他端側を手差し用の給紙口に挿し込んだとしても、利用者が被記録媒体の一端側から手を離すと、被記録媒体が手差し用の給紙口から抜け落ちてしまうこともあった。
【0007】
さらに、プリンタ装置が比較的低い位置に設置された場合、利用者はプリンタ装置を比較的高い位置から斜めに見下ろすような状況になることがある。しかし、そのような高い位置から手を差し延べるだけでは、手差し用の給紙口に略水平に被記録媒体を挿し込む作業は困難なため、利用者が体勢を低くして挿し込み作業を行わざるを得なかった。
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、従来よりも容易に手差し用給紙口に被記録媒体を差し込むことができる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、本発明において採用した構成について説明する。
本発明の画像形成装置は、被記録媒体に対して画像を形成する画像形成手段と、給紙カセットに収納された被記録媒体を、前記給紙カセットから前記画像形成手段へと搬送する際に利用される第一搬送経路と、手差し用給紙口に差し込まれた被記録媒体を、前記手差し用給紙口から前記画像形成手段へと搬送する際に利用される第二搬送経路とを備え、前記第二搬送経路は、前記手差し用給紙口が装置本体の上面前方に形成されるとともに、前記手差し用給紙口から前記装置本体の下方且つ後方に向かって斜めに延びる傾斜経路が形成されることにより、前記手差し用給紙口に差し込まれた被記録媒体を自重で前記傾斜経路内へ落とし込み可能な構造とされていることを特徴とする。
【0010】
上記本発明の構成においては、画像形成装置各部の相対的な位置関係を簡潔に規定するため、前後上下の各方向を規定している。これらの各方向のうち、下方は、本発明の画像形成装置を水平面上に設置した場合に、重力が作用する方向(鉛直方向)と一致する方向を意味する。ただし、本発明の画像形成装置を実際に使用するに当たっては、本発明の画像形成装置を精密に水平面上に設置する必要はなく、本発明で規定する下方と鉛直方向は概ね一致していれば問題はない。
【0011】
また、上方は、上述した下方の反対方向を意味し、上面は、上述した上方から画像形成装置を平面視したときに見える範囲を意味する。この上面には手差し用給紙口が設けられているが、この手差し用給紙口は上面中央から外れた位置(すなわち、上面の一方の縁に偏った位置)に設けられている。そこで、この手差し用給紙口の位置に基づき、本発明においては、上面中央から見て手差し用給紙口がある方向を前方、その反対方向を後方と規定した。
【0012】
以上のような前提のもと、本発明の画像形成装置によれば、手差し用給紙口から装置本体の下方且つ後方に向かって斜めに延びる傾斜経路が形成されているので、手差し用給紙口に差し込まれた被記録媒体を、自重で傾斜経路内へ落とし込むことができる。
【0013】
したがって、装置前面側に形成された手差し用給紙口から略水平に被記録媒体を差し込む構造の画像形成装置に比べ、手差し用給紙口に差し込まれた被記録媒体が手差し用給紙口から脱落しにくくなり、スムーズに手差し作業を行うことができる。
【0014】
また、手差し用給紙口が装置本体の上面前方に形成されていることで、装置前面側に手差し用給紙口が形成された構造の画像形成装置よりも、手差し用給紙口へ上方からアプローチしやすくなる。したがって、手差し用給紙口を狙って被記録媒体を差し込む作業が容易で、画像形成装置を比較的低い位置に設置しても手差し作業を容易に実施することができる。
【0015】
ところで、本発明の画像形成装置は、前記装置本体の内部には第一ガイド部と第二ガイド部が設けられて、前記第一ガイド部と前記第二ガイド部との間に形成される間隙が前記傾斜経路となっており、しかも、前記画像形成手段は、少なくとも一部が前記装置本体に対して着脱可能なカートリッジに組み込まれた構造になっていて、前記カートリッジを前記装置本体に装着した際に前記カートリッジの外面部分が前記第一ガイド部となるものであると好ましい。
【0016】
このように構成された画像形成装置によれば、第一ガイド部がカートリッジの外面部分を利用して構成されているため、カートリッジとは別に専用のガイド部を設ける必要がなく、部品点数を削減することができる。
【0017】
また、カートリッジの交換時には第一ガイド部も交換されることになるので、画像形成装置を長期にわたって利用した場合でも、カートリッジの交換時期が来るたびに第一ガイド部も清浄なものに交換される。したがって、第一ガイド部の汚損に起因して被記録媒体が汚損してしまうのを回避することができる。
【0018】
また、本発明の画像形成装置は、前記装置本体の前面には開閉可能な前面カバーが設けられていて、前記前面カバーを開くことによって、前記装置本体に対する前記カートリッジの着脱を実施可能となっており、しかも、前記前面カバーを閉じた際に前記前面カバーの内面部分が前記第二ガイド部となるものであると好ましい。
【0019】
このように構成された画像形成装置によれば、第二ガイド部が前面カバーの内面部分を利用して構成されていて、前面カバーを開いた際には傾斜経路も開放された状態となるので、傾斜経路内で紙詰まり等が発生した際に紙の除去を行ったり、傾斜経路内の掃除を行ったりする作業を容易に実施することができる。なお、このような構成を前提とすれば、前方は、装置中央から見て前面カバーが配置された方向であると規定することもできる。
【0020】
また、本発明の画像形成装置は、前記第一搬送経路は、前記被記録媒体が前記給紙カセットから前記装置本体の前方へと搬送されてから、さらに前記装置本体の後方へと湾曲して前記画像形成手段に到達する経路となっていて、しかも、前記被記録媒体が前記画像形成手段に到達する手前の位置には、前記被記録媒体の先端を位置決めするために利用されるレジストローラが設けられており、前記第二搬送経路は、前記第一搬送経路と合流してから前記レジストローラに到達する経路となっていると好ましい。
【0021】
このように構成された画像形成装置によれば、第一搬送経路と第二搬送経路で、レジストローラを共用することができるので、各搬送経路毎にレジストローラを設けた場合に比べ、部品点数を削減でき、画像形成装置の製造コストを低減することができる。
【0022】
また、本発明の画像形成装置は、前記画像形成手段によって画像が形成された被記録媒体を、前記画像形成手段から前記装置本体の上面へと搬送する際に利用される排出経路と、前記装置本体の上面に設けられ、前記排出経路を搬送されて前記装置本体の上面へと排出された被記録媒体が堆積する排紙トレイとを備え、前記装置本体の上面において、前記排紙トレイよりも前記装置本体の前方となる位置に、前記手差し用給紙口が設けられていると好ましい。
【0023】
このように構成された画像形成装置によれば、装置本体の上面に排紙トレイが配置されているので、装置本体の背面側に排紙トレイが突出しているものとは異なり、装置本体の形状をコンパクトにすることができ、画像形成装置の設置に必要なスペースを小さくすることができる。
【0024】
また、手差し用給紙口はもちろんのこと、排紙トレイに対しても上方からアプローチしやすくなるので、画像形成装置を比較的低い位置に設置しても手差し作業および排出された被記録媒体を回収する作業を容易に実施することができる。
【0025】
また、本発明の画像形成装置は、開閉可能な構造になっていて、閉じた際には前記手差し用給紙口を覆う蓋部を備えており、前記蓋部を開いた際には、前記手差し用給紙口に差し込まれる被記録媒体を前記蓋部によって支持することにより、前記傾斜経路の上方においても前記被記録媒体を傾斜させて保持する状態になるものであると好ましい。
【0026】
このように構成された画像形成装置によれば、手差し用給紙口を使用しない場合には蓋部を閉じておくことで、手差し用給紙口から異物が入ることや、画像形成手段等から発生する音が装置の外部へ漏れることを防止できる。
【0027】
また、手差し用給紙口の使用時には、蓋部を開放することにより、蓋部が被記録媒体を支持するサポーターとして機能するため、被記録媒体が蓋部に案内されてスムーズに傾斜経路へと入るので、蓋部による案内を行わない場合に比べ、被記録媒体の斜行が抑制される。
【0028】
また、本発明の画像形成装置は、前記排紙トレイに堆積した排出済みの被記録媒体、または前記排出経路から新たに排出される被記録媒体が、前記蓋部のある位置に到達した際、開かれた状態にある前記蓋部は、前記蓋部のある位置に到達した被記録媒体が、それ以上前記装置本体の前方へと押し出されるのを防止または抑制する障害物として機能するものであると好ましい。
【0029】
このように構成された画像形成装置によれば、長い寸法の被記録媒体や、排紙トレイに堆積した排出済みの被記録媒体が排出経路から新たに排出される被記録媒体によって装置の前方へと押し出された場合に、開かれた状態にある蓋部が障害物となって、被記録媒体がさらに装置の前方へと押し出されるのを防止または抑制するので、被記録媒体の脱落を防止または抑制できる。
【0030】
また、このような障害物に被記録媒体が乗り上げることで、被記録媒体がさらに画像形成装置の前方へと押し出されるのを防止または抑制している場合は、乗り上げた被記録媒体の端部を利用者がつかみやすくなるので、利用者が排紙トレイから被記録媒体を回収しやすいものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】画像形成装置の内部構造を左側面側から見た縦断面図。
【図2】(a)は手差し用給紙口から被記録媒体が供給されるときの状態を示す説明図、(b)は排紙トレイ上に被記録媒体が排出されるときの状態を示す説明図。
【図3】前面カバーを開放して現像カートリッジを取り出した状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に、本発明の実施形態について一例を挙げて説明する。
[画像形成装置の構造]
図1に示すように、本実施形態の画像形成装置1は、被記録媒体上に電子写真方式で画像を形成する装置で、第一給紙部3、第二給紙部5、画像形成部7、排紙部9などを備えている。
【0033】
これらのうち、第一給紙部3は、給紙カセット11に収納された被記録媒体を、給紙カセット11から画像形成部7へと搬送する際に利用される第一搬送経路3Aを備えている。この第一搬送経路3Aは、被記録媒体が給紙カセット11から装置本体1Aの前方へと搬送されてから、さらに装置本体1Aの後方へと湾曲して画像形成部7に到達する経路となっている。
【0034】
このような第一搬送経路3Aを構成するため、第一給紙部3には、ピックアップローラ13、分離ローラ15、分離パッド17、およびレジストローラ19などが配設されている。この第一給紙部3において、給紙カセット11内に収納された被記録媒体は、装置本体1A内において、ピックアップローラ13によって給紙カセット11内から引き出され、第一搬送経路3Aに沿って装置本体1Aの前方へと送り出される。
【0035】
そして、ピックアップローラ13によって送り出された被記録媒体は、複数枚が重なったまま送り出されることがあるので、この重なりを解消するため、分離ローラ15および分離パッド17によって1枚ずつに分離される。分離ローラ15および分離パッド17を通過した被記録媒体は、第一搬送経路3Aに沿って装置本体1Aの後方へと湾曲してレジストローラ19へと搬送される。
【0036】
レジストローラ19は、被記録媒体の先端を位置決めするために利用されるローラで、被記録媒体が画像形成部7に到達する手前の位置に設けられている。被記録媒体がレジストローラ19に到達すると、被記録媒体がレジストローラ19に当接することで、被記録媒体上の印刷開始位置が最適化される。また、この位置決めに伴って、被記録媒体は搬送方向に対する傾きも矯正され、これにより、被記録媒体の斜行が防止される。そして、レジストローラ19が駆動されると、被記録媒体が第一搬送経路3Aに沿って画像形成部7へと搬送されることになる。
【0037】
一方、第二給紙部5は、手差し用給紙口21に差し込まれた被記録媒体を、手差し用給紙口21から画像形成部7へと搬送する際に利用される第二搬送経路5Aを備えている。
より詳しく説明すると、第二給紙部5において、手差し用給紙口21は装置本体1Aの上面前方に形成され、この手差し用給紙口21から装置本体1Aの下方且つ後方に向かって斜めに延びる傾斜経路5Bが形成されている。
【0038】
このような傾斜経路5Bが形成されることにより、第二給紙部5は、手差し用給紙口21に差し込まれた被記録媒体を自重で傾斜経路5B内へ落とし込み可能な構造となっている。
【0039】
そして、この傾斜経路5Bが、レジストローラ19よりも被記録媒体の搬送方向上流側で第一搬送経路3Aに合流することにより、手差し用給紙口21から画像形成部7に至る経路が形成されている。
【0040】
すなわち、第二搬送経路5Aは、第一搬送経路3Aと合流してからレジストローラ19に到達する経路となっていて、その合流点よりも被記録媒体の搬送方向下流側においては、同一の搬送経路が第一搬送経路3Aおよび第二搬送経路5Aとして共用されている。
【0041】
このような第二搬送経路5Aを構成するため、第二給紙部5には、蓋部23、第一ガイド部25、および第二ガイド部27などが設けられている。蓋部23は、開閉可能な構造になっていて、閉じた際には手差し用給紙口21を覆う状態になる。
【0042】
一方、蓋部23を開いた際には、蓋部23は、図2(a)に示すように、手差し用給紙口21に差し込まれる被記録媒体を背面から支持するサポーターとして機能し、これにより、傾斜経路5Bの上方においても被記録媒体を傾斜させて保持する状態になる。第一ガイド部25と第二ガイド部27は、両者間に間隙が形成される位置にあり、その間隙が上述の傾斜経路5Bとなっている。
【0043】
このような構造とされた第二給紙部5において、被記録媒体が手差し用給紙口21に差し込まれると、被記録媒体の先端をレジストローラ19に到達させることができる。したがって、第二給紙部5から被記録媒体を供給する際にも、被記録媒体をレジストローラ19に当接させることで、被記録媒体上の印刷開始位置を最適化でき、また、被記録媒体の搬送方向に対する傾きも矯正することができる。そして、その状態でレジストローラ19が駆動されると、被記録媒体は第二搬送経路5Aに沿って画像形成部7へと搬送されることになる。
【0044】
画像形成部7は、被記録媒体に対して画像を形成する部分であり、プロセスカートリッジ31、転写ローラ33、露光器35、および定着器37などを備えている。プロセスカートリッジ31は、ケース41の内部に、供給ローラ43、現像ローラ45、感光体47、帯電器49などを組み込んだ構造になっている。
【0045】
このプロセスカートリッジ31は、装置本体1Aに対して着脱可能な構造になっていて、プロセスカートリッジ31を装置本体1Aに装着した際には、ケース41の外面部分が、上述した第一ガイド部25として利用される。
【0046】
また、装置本体1Aの前面には、図3に示すように、開閉可能な前面カバー1Bが設けられていて、前面カバー1Bを開くことによって、装置本体1Aに対するプロセスカートリッジ31の着脱を実施可能となっている。しかも、前面カバー1Bを閉じた際には、前面カバー1Bの内面部分が第二ガイド部27として利用される。
【0047】
なお、以上のような構造とされた画像形成部7において被記録媒体に画像を形成する際には、帯電器49によって感光体47の表面を帯電させた上で、その感光体47の表面を露光器35で走査することにより、感光体47上に静電潜像が形成される。
【0048】
また、トナー収容室41A内のトナーが供給ローラ43によって現像ローラ45へと供給され、その現像ローラ45に担持されたトナーで、感光体47上の静電潜像が現像される。
【0049】
そして、感光体47と転写ローラ33との間に被記録媒体を挟み込みつつ、感光体47と転写ローラ33を回転させることにより、感光体47上に担持されたトナー像が被記録媒体上に転写される。トナー像が転写された被記録媒体は、定着器37へと搬送される。
【0050】
定着器37は、加熱ローラ51、および加圧ローラ53を備えている。加熱ローラ51には、ハロゲンランプ等の熱源が組み込まれ、加熱ローラ51と加圧ローラ53との間に挟み込まれた被記録媒体は、加熱ローラ51からの熱で加熱され、これにより、被記録媒体上に担持されたトナー像は被記録媒体上に定着する。そして、加熱ローラ51と加圧ローラ53の回転に伴って、被記録媒体は排紙部9へと送り出される。
【0051】
排紙部9は、画像形成部7において画像が形成された被記録媒体を、画像形成部7から装置本体1Aの上面へと搬送する際に利用される排出経路9Aを備えている。
このような排出経路9Aを構成するため、排紙部9には排紙ローラ55などが設けられ、定着器37から装置本体1Aの後方へと送り出された被記録媒体は、さらに排出経路9Aに沿って装置本体1Aの前方へと湾曲して排紙ローラ55へと到達する。
【0052】
そして、排紙ローラ55から装置本体1Aの前方に向かって排出される。装置本体1Aの上面には排紙トレイ57が設けられ、装置外へと排出された被記録媒体は、排紙トレイ57上に堆積する。
【0053】
上述した手差し用給紙口21および蓋部23は、装置本体1Aの上面において、排紙トレイ57よりも装置本体1Aの前方となる位置に設けられている。そのため、排紙トレイ57に堆積した排出済みの被記録媒体、または排出経路9Aから新たに排出される被記録媒体が、蓋部23のある位置に到達した際、開かれた状態にある蓋部23は、図2(b)に示すように、蓋部23のある位置に到達した被記録媒体が、それ以上装置本体1Aの前方へと押し出されるのを防止または抑制する障害物として機能する。
【0054】
[効果]
以上説明した通り、上記画像形成装置1によれば、手差し用給紙口21から装置本体1Aの下方且つ後方に向かって斜めに延びる傾斜経路5Bが形成されているので、手差し用給紙口21に差し込まれた被記録媒体を、自重で傾斜経路5B内へ落とし込むことができる。
【0055】
したがって、装置前面側に形成された手差し用給紙口から略水平に被記録媒体を差し込む構造の画像形成装置に比べ、手差し用給紙口21に差し込まれた被記録媒体が手差し用給紙口21から脱落しにくくなり、スムーズに手差し作業を行うことができる。
【0056】
また、手差し用給紙口21が装置本体1Aの上面前方に形成されていることで、装置前面側に手差し用給紙口が形成された構造の画像形成装置よりも、手差し用給紙口21へ上方からアプローチしやすくなる。したがって、手差し用給紙口21を狙って被記録媒体を差し込む作業が容易で、画像形成装置1を比較的低い位置に設置しても手差し作業を容易に実施することができる。
【0057】
また、上記画像形成装置1によれば、第一ガイド部25がプロセスカートリッジ31の外面部分を利用して構成されているため、プロセスカートリッジ31とは別に専用のガイド部を設ける必要がなく、部品点数を削減することができる。
【0058】
また、プロセスカートリッジ31の交換時には第一ガイド部25も交換されることになるので、画像形成装置1を長期にわたって利用した場合でも、プロセスカートリッジ31の交換時期が来るたびに第一ガイド部25も清浄なものに交換される。したがって、第一ガイド部25の汚損に起因して被記録媒体が汚損してしまうのを回避することができる。
【0059】
また、上記画像形成装置1によれば、第二ガイド部27が前面カバー1Bの内面部分を利用して構成されていて、前面カバー1Bを開いた際には傾斜経路5Bも開放された状態となるので、傾斜経路5B内で紙詰まり等が発生した際に紙の除去を行ったり、傾斜経路5B内の掃除を行ったりする作業を容易に実施することができる。
【0060】
また、上記画像形成装置1によれば、第一搬送経路3Aと第二搬送経路5Aで、レジストローラ19を共用することができるので、各搬送経路毎にレジストローラを設けた場合に比べ、部品点数を削減でき、画像形成装置1の製造コストを低減することができる。
【0061】
また、上記画像形成装置1によれば、装置本体1Aの上面に排紙トレイ57が配置されているので、装置本体の背面側に排紙トレイが突出しているものとは異なり、装置本体1Aの形状をコンパクトにすることができ、画像形成装置1の設置に必要なスペースを小さくすることができる。
【0062】
また、手差し用給紙口21はもちろんのこと、排紙トレイ57に対しても上方からアプローチしやすくなるので、画像形成装置1を比較的低い位置に設置しても手差し作業および排出された被記録媒体を回収する作業を容易に実施することができる。
【0063】
また、上記画像形成装置1によれば、手差し用給紙口21を使用しない場合には蓋部23を閉じておくことで、手差し用給紙口21から異物が入ることや、画像形成部7から発生する音が画像形成装置1の外部へ漏れることを防止できる。
【0064】
また、手差し用給紙口21の使用時には、蓋部23を開放することにより、蓋部23が被記録媒体を支持するサポーターとして機能するため、被記録媒体が蓋部23に案内されてスムーズに傾斜経路5Bへと入るので、蓋部23による案内を行わない場合に比べ、被記録媒体の斜行が抑制される。
【0065】
また、上記画像形成装置1によれば、長い寸法の被記録媒体や、排紙トレイに堆積した排出済みの被記録媒体が排出経路から新たに排出される被記録媒体によって画像形成装置1の前方へと押し出された場合に、開かれた状態にある蓋部23が障害物となる。したがって、被記録媒体がさらに画像形成装置1の前方へと押し出されるのを、蓋部23によって防止または抑制することができ、被記録媒体の脱落を防止または抑制できる。
【0066】
また、このような障害物に被記録媒体が乗り上げることで、被記録媒体がさらに画像形成装置1の前方へと押し出されるのを防止または抑制している場合は、乗り上げた被記録媒体の端部を利用者がつかみやすくなるので、利用者が排紙トレイ57から被記録媒体を回収しやすいものとなる。
【0067】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の具体的な一実施形態に限定されず、この他にも種々の形態で実施することができる。
【0068】
例えば、上記実施形態では、手差し用給紙口21を覆う蓋部23を備える例を示したが、このような蓋部23を設けるか否かは任意であり、例えば、より低価格の画像形成装置を構成したい場合には、蓋部を採用していない構成としてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、第一搬送経路3Aと第二搬送経路5Aを途中で合流させて、両方の搬送経路でレジストローラ19を共用していたが、第一搬送経路3Aと第二搬送経路5Aそれぞれ専用にレジストローラを設けた構成としてもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、前面カバー1Bの内面部分を第二ガイド部27として利用していたが、前面カバー1Bと第二ガイド部27を別々の部材として構成してもよい。
また、上記実施形態では、プロセスカートリッジ31の外面部分を第一ガイド部25として利用していたが、プロセスカートリッジ31と第一ガイド部25についても、別々の部材として構成してもよい。
【0071】
加えて、上記実施形態では、被記録媒体上に電子写真方式で画像を形成する画像形成装置1を例示したが、本発明は、他の記録方式(例えば、インクジェット方式)で画像を形成する画像形成装置において採用することもできる。
【符号の説明】
【0072】
1・・・画像形成装置、1A・・・装置本体、1B・・・前面カバー、3・・・第一給紙部、3A・・・第一搬送経路、5・・・第二給紙部、5A・・・第二搬送経路、5B・・・傾斜経路、7・・・画像形成部、9・・・排紙部、9A・・・排出経路、11・・・給紙カセット、13・・・ピックアップローラ、15・・・分離ローラ、17・・・分離パッド、19・・・レジストローラ、21・・・手差し用給紙口、23・・・蓋部、25・・・第一ガイド部、27・・・第二ガイド部、31・・・プロセスカートリッジ、33・・・転写ローラ、35・・・露光器、37・・・定着器、41・・・ケース、43・・・供給ローラ、45・・・現像ローラ、47・・・感光体、49・・・帯電器、51・・・加熱ローラ、53・・・加圧ローラ、55・・・排紙ローラ、57・・・排紙トレイ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体に対して画像を形成する画像形成手段と、
給紙カセットに収納された被記録媒体を、前記給紙カセットから前記画像形成手段へと搬送する際に利用される第一搬送経路と、
手差し用給紙口に差し込まれた被記録媒体を、前記手差し用給紙口から前記画像形成手段へと搬送する際に利用される第二搬送経路と
を備え、
前記第二搬送経路は、前記手差し用給紙口が装置本体の上面前方に形成されるとともに、前記手差し用給紙口から前記装置本体の下方且つ後方に向かって斜めに延びる傾斜経路が形成されることにより、前記手差し用給紙口に差し込まれた被記録媒体を自重で前記傾斜経路内へ落とし込み可能な構造とされている
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記装置本体の内部には第一ガイド部と第二ガイド部が設けられて、前記第一ガイド部と前記第二ガイド部との間に形成される間隙が前記傾斜経路となっており、
しかも、前記画像形成手段は、少なくとも一部が前記装置本体に対して着脱可能なカートリッジに組み込まれた構造になっていて、前記カートリッジを前記装置本体に装着した際に前記カートリッジの外面部分が前記第一ガイド部となる
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記装置本体の前面には開閉可能な前面カバーが設けられていて、前記前面カバーを開くことによって、前記装置本体に対する前記カートリッジの着脱を実施可能となっており、しかも、前記前面カバーを閉じた際に前記前面カバーの内面部分が前記第二ガイド部となる
ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第一搬送経路は、前記被記録媒体が前記給紙カセットから前記装置本体の前方へと搬送されてから、さらに前記装置本体の後方へと湾曲して前記画像形成手段に到達する経路となっていて、しかも、前記被記録媒体が前記画像形成手段に到達する手前の位置には、前記被記録媒体の先端を位置決めするために利用されるレジストローラが設けられており、
前記第二搬送経路は、前記第一搬送経路と合流してから前記レジストローラに到達する経路となっている
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記画像形成手段によって画像が形成された被記録媒体を、前記画像形成手段から前記装置本体の上面へと搬送する際に利用される排出経路と、
前記装置本体の上面に設けられ、前記排出経路を搬送されて前記装置本体の上面へと排出された被記録媒体が堆積する排紙トレイと
を備え、
前記装置本体の上面において、前記排紙トレイよりも前記装置本体の前方となる位置に、前記手差し用給紙口が設けられている
ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
開閉可能な構造になっていて、閉じた際には前記手差し用給紙口を覆う蓋部を備えており、
前記蓋部を開いた際には、前記手差し用給紙口に差し込まれる被記録媒体を前記蓋部によって支持することにより、前記傾斜経路の上方においても前記被記録媒体を傾斜させて保持する状態になる
ことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記排紙トレイに堆積した排出済みの被記録媒体、または前記排出経路から新たに排出される被記録媒体が、前記蓋部のある位置に到達した際、開かれた状態にある前記蓋部は、前記蓋部のある位置に到達した被記録媒体が、それ以上前記装置本体の前方へと押し出されるのを防止または抑制する障害物として機能する
ことを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−7910(P2011−7910A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−149607(P2009−149607)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】