説明

画像形成装置

【課題】ケーシングのカバーを開閉可能にする構造を確保しながら、当該カバーまたは当該カバー下側の構造物の形状についての設計の自由度を高める。
【解決手段】画像形成装置1のフロントカバー4が閉状態から開状態に変位する間に、フロントカバー4側に形成されたアーム5の先端部5Aの摺接部12が、ケーシング2側に形成されたカム部24上を摺動する構成とし、カム部24により摺接部12を押し上げ、フロントカバー4を上方に移動させる。フロントカバー4が、閉状態から開状態に変位する間に上方に移動するので、フロントカバー4およびその下側の給紙トレイ7のフロント板部7Aを、その外表面が外側に出っ張った形状に形成しても、フロントカバー4が閉状態から開状態へ変位する間にフロントカバー4がフロント板部7Aに接触することがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばコピー機、プリンタ、ファクシミリ、複合機等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、コピー機、プリンタ、ファクシミリ、複合機等の画像形成装置は、当該画像形成装置に設けられたスキャナにより読み取った画像データ、または当該画像形成装置に設けられた通信手段により受信した画像データに基づいて画像を形成し、この画像を用紙に印刷する機能等を実現するための画像形成機構を備えている。例えば、レーザー式の画像形成装置の場合、画像形成機構は、感光体ドラム、帯電装置、露光装置、現像装置、転写装置、定着装置、用紙搬送機構、トナーカートリッジ等から構成されている。
【0003】
一般に、画像形成装置は、その外殻を形成すると共に上記画像形成機構を収容するケーシングを備えている。ケーシングにおいて、画像形成装置の正面側の面には、開口部が設けられている。画像形成装置を取り扱う者は、ケーシング内に収容された画像形成機構に開口部を介して触れ、画像形成機構のメンテナンスを行うことができる。
【0004】
また、画像形成装置の正面側には、ケーシングの上記開口部を閉塞するカバーが設けられている。カバーはヒンジ等によりケーシングに連結されており、画像形成装置を取り扱う者が容易に開閉することができる。カバーは、通常使用時は閉じられており、画像形成機構のメンテナンスを行うとき等には開けられる。
【0005】
下記の特許文献1に記載された画像形成装置では、カバーは、その下部がケーシングに回動可能に支持され、そのケーシングに支持されたカバーの下部を軸心として揺動する構成となっている。そして、カバーは、垂直に立ち上がることによりケーシングの開口部を閉塞する閉状態となり、カバーの上部がケーシングから外側に張り出すように傾斜することにより、ケーシングの開口部を開放する開状態となる(特許文献1の図3、図6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−103870号公報
【特許文献2】特開2007−206201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に記載の画像形成装置において、カバーは、その外表面がほぼ平坦な薄い板状であり、カバーの外表面がケーシング正面側の外表面に対して外側に出っ張っていない。また、カバーの下側においてカバーと隣り合う構造物(給紙カセット)の外表面も、ケーシング正面側の外表面に対して外側に出っ張っていない。特許文献1に記載の画像形成装置は、このような構造を有するため、カバーを開閉する間に、カバーが、カバー下側の構造物に接触することがなく、カバーを支障なく開閉することができる。
【0008】
これに対し、画像形成装置の外観上のデザインを良くする等の要請から、例えば特許文献2に記載の画像形成装置のように、カバーを、その外表面がケーシング正面側の外表面から大きく外側に出っ張るような形状とする場合がある(特許文献2の図1参照)。また、特許文献2に記載の画像形成装置では、カバー下側の構造物(給紙トレイ)の外表面はケーシングの外表面に対して大きく外側に出っ張ってないが、外観デザイン上の要請等から、カバー下側の構造物の外表面を、ケーシング正面側の外表面から大きく外側に出っ張るような形状とする場合がある。このように、カバーの外表面またはカバー下側の構造物の外表面がケーシング正面側の外表面から大きく外側に出っ張っている形状とした場合、カバーを開閉する間に、カバーが、カバー下側の構造物に接触してしまい、カバーを開閉することができなくなることがある。
【0009】
このため、カバーを開閉可能にする構造を確保しながら、カバーやその下側の構造物を外側に出っ張るような形状とすることは困難である。すなわち、カバーを開閉可能にする構造を確保するために、カバーの形状やその下側の構造物の形状が制限され、画像形成装置の外観デザイン上の設計が制約を受ける。
【0010】
なお、カバーの外表面またはカバー下側の構造物の外表面がケーシング正面側の外表面から大きく外側に出っ張っている形状とした場合でも、例えば、カバーとカバー下側の構造物とを両者間をある程度離して配置することで、カバーとカバー下側の構造物との接触を回避することが可能である。しかしながら、カバーとカバー下側の構造物との間を離すことで、画像形成装置の外観デザインが損なわれる場合があり、また、画像形成装置が大型化してしまう場合がある。
【0011】
本発明は例えば上述したような問題に鑑みなされたものであり、本発明の課題は、ケーシングのカバーを開閉可能にする構造を確保しながら、当該カバーまたは当該カバー下側の構造物の形状についての設計の自由度を高めることができる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の第1の画像形成装置は、開口部を有するケーシングと、前記ケーシングの開口部を閉塞するカバーと、一端側が前記カバーに固定され、他端側が前記カバーから伸長し、他端部が前記ケーシングに回動可能に支持されることにより、前記カバーと前記ケーシングとを連結すると共に、前記他端部が前記ケーシングに対して回動することにより、前記カバーを、前記ケーシングの開口部を閉塞する閉状態から、当該カバーが前記ケーシングから外側に張り出すように傾斜して前記ケーシングの開口部を開放する開状態へ変位可能にするアームと、前記カバーが前記閉状態から前記開状態へ変位する間に、前記アームの他端部を上方に移動させる移動手段とを備え、前記移動手段は、前記ケーシングおよび前記アームの他端部のうちの一方に形成された上下方向に長い穴部と、基端側が前記ケーシングおよび前記アームの他端部のうちの他方に固定され、先端側が前記穴部に挿入され、前記アームの他端部を前記ケーシングに回動可能にかつ上下方向移動可能に接続する軸部と、前記ケーシングに固定された第1の摺接部と、前記アームの他端部に固定され、前記第1の摺接部と接触する第2の摺接部とを備え、前記第1の摺接部または第2の摺接部には、前記カバーが前記閉状態から前記開状態へ変位する間における前記アームの他端部の回動に伴い前記第2の摺接部を押し上げるカム部が形成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の第1の画像形成装置では、カバーを閉位置から開位置へ変位させ、これに伴い、アームの他端部をケーシングに対して回動させると、第1の摺接部または第2の摺接部に形成されたカム部が、第2の摺接部を上方に押す。これにより、第2の摺接部が固定されたアームの他端部が上方に移動する。この結果、カバーが閉位置から開位置へ変位する過程においてカバーが持ち上がる。したがって、カバーやその下側の構造物が外側に出っ張るような形状であっても、カバーを開けるときに、カバーがその下側の構造物に接触することを防止することができる。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の第2の画像形成装置は、上述した本発明の第1の画像形成装置において、前記穴部は前記アームの他端部に形成され、前記軸部は前記ケーシングに固定され、前記第1の摺接部は、前後方向に伸長し、下端側が前記ケーシングに固定され、上端側が上方に伸長して前記第2の摺接部と接触する突条部であり、前記第2の摺接部は前記アームの他端部の下端側に形成され、前記カム部は、前記突条部の上端部に形成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明の第2の画像形成装置によれば、カバーを開けるときにカバー下側の構造物にカバーが接触することを、簡単な構造により防止することができる。
【0016】
上記課題を解決するために、本発明の第3の画像形成装置は、上述した本発明の第1または第2の画像形成装置において、前記ケーシングは当該画像形成装置の外殻を形成し、前記開口部は当該画像形成装置の正面位置に形成されたフロント開口部であり、前記カバーは当該画像形成装置の前記フロント開口部を閉塞するフロントカバーであることを特徴とする。
【0017】
本発明の第3の画像形成装置によれば、画像形成装置の正面位置において、フロントカバー下側の構造物にフロントカバーが接触することを防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ケーシングのカバーを開閉可能にする構造を確保しながら、当該カバーまたは当該カバー下側の構造物の形状についての設計の自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態による画像形成装置を示す外観斜視図である。
【図2】フロントカバーが開いた状態の本発明の実施形態による画像形成装置を示す外観斜視図である。
【図3】本発明の実施形態による画像形成装置におけるフロントカバーおよびアームを示す外観斜視図である。
【図4】本発明の実施形態による画像形成装置におけるフロントカバーのアームの先端部を示す拡大図である。
【図5】本発明の実施形態による画像形成装置におけるカバー支持部とその周辺部分を示す説明図である。
【図6】本発明の実施形態による画像形成装置におけるカバー支持部を示す拡大図である。
【図7】本発明の実施形態による画像形成装置におけるフロントカバー開閉時にアームの先端部が回動する様子を示す説明図である。
【図8】本発明の実施形態による画像形成装置におけるフロントカバーが開閉する様子を示す説明図である。
【図9】比較例による画像形成装置おけるフロントカバーがその下側の構造物に接触している状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しながら説明する。図1および図2は本発明の実施形態による画像形成装置をそれぞれ示しており、図1はフロントカバーが閉じた状態を示し、図2はフロントカバーが開いた状態を示している。
【0021】
図1において、本発明の実施形態による画像形成装置1は、例えば、画像読取機能、通信機能、コピー機能、印刷機能、ファクシミリ機能等を備えたレーザー式の複合機である。画像形成装置1は、その外殻を形成する略箱状のケーシング2を備え、ケーシング2内の上部には、図2に示すように、感光体ドラム、帯電装置、露光装置、現像装置、転写装置、定着装置、用紙搬送機構、トナーカートリッジ等から構成された画像形成機構3が収容されている。
【0022】
図2に示すように、画像形成装置1の正面側の面にはフロント開口部2Aが設けられている。画像形成装置1を取り扱う者は、フロント開口部2Aから手を差し入れ、ケーシング2内に収容された画像形成機構3に触れ、画像形成機構3のメンテナンス(トナーカートリッジの交換、紙詰まりの解消、クリーニング、修理等)を行うことができる。
【0023】
また、画像形成装置1の正面側には、図1に示すように、ケーシング2のフロント開口部2Aを閉塞するフロントカバー4が設けられている。フロントカバー4は、図2に示すように、一対のアーム5を介してケーシング2に連結されており、画像形成装置1を取り扱う者が容易に開閉することができる。フロントカバー4は、通常使用時には、図1に示すように垂直に立ち上がり、フロント開口部2Aを閉塞している。以下、この状態を「閉状態」という。一方、画像形成機構3のメンテナンスを行うとき等には、フロントカバー4は、図2に示すようにその上部がケーシング2の正面から外側(手前側)に張り出すように傾斜してケーシング2のフロント開口部2Aを開放する。以下、この状態を「開状態」という。また、ケーシング2とフロントカバー4との間には、フロントカバー4が開状態のときに、フロントカバー4をその状態に維持するための一対の帯状部材6が設けられている。
【0024】
また、ケーシング2内の下部には、用紙を収容するための給紙トレイ7が設けられている。給紙トレイ7は、箱状に形成され、その中に用紙を入れるときには、ケーシング2の正面から外側(手前側)に引き出すことができる。また、給紙トレイ7において、画像形成装置1の正面に当たる位置にはフロント板部7Aが設けられている。また、フロント板部7Aには図1に示すように把持部7Bが設けられ、画像形成装置1を取り扱う者は、把持部7Bを掴んで引っ張ることにより給紙トレイ7を引き出すことができる。
【0025】
ここで、フロントカバー4および給紙トレイ7のフロント板部7Aのそれぞれの外表面は、ケーシング2の正面側の外表面から大きく外側に出っ張っている。そして、フロントカバー4および給紙トレイ7のフロント板部7Aの出っ張った外表面は互いにほぼ同一平面となるように揃えられている。また、フロントカバー4とフロント板部7Aとは小さな隙間をもって上下方向に連続的に並ぶように配置されており、フロントカバー4の下端とフロント板部7Aの上端とは互いに上下方向に接近している。フロントカバー4とフロント板部7Aがこのように配置されているので、画像形成装置1を正面側から見たときの外観デザインが良い。
【0026】
図3はフロントカバー4および一対のアーム5を示している。図4は右側のアーム5の先端部を示し、図4(1)は右側のアーム5をその右側から見た図であり、図4(2)は右側のアーム5をその左側から見た図である。
【0027】
図3において、一対のアーム5は、フロントカバー4とケーシング2とを連結する部材であり、一方のアーム5はフロントカバー4の右側に設けられ、他方のアーム5はフロントカバー4の左側に設けられている。
【0028】
右側のアーム5は、その基端側がフロントカバー4の裏面側の右側縁部に固定されている。また、右側のアーム5の先端側は、フロントカバー4の後ろ方向に伸長した後、フロントカバー4の下方に伸長し、さらにその後、フロントカバー4の前方向に伸長している。これにより、右側のアーム5は全体的に見て略コ字状に形成されている。
【0029】
図4(1)に示すように、右側のアーム5の先端部5Aには穴部11が形成されている。穴部11はアーム5の先端部5Aを貫通する小判型の穴であり、前後方向(図4(1)中の左右方向)に比較して上下方向に長い形状を有している。穴部11の前後方向の径寸法は、後述する軸部22の径寸法よりもわずかに大きい。具体的には、穴部11の前後方向の径寸法と軸部22の径寸法との差は、アーム5の回動を許し、かつアーム5の前後方向の移動を許さない程度、例えば0.5mm〜2mm程度である。一方、穴部11の上下方向の径寸法は、後述する軸部22の径寸法よりも大幅に大きい。具体的には、穴部11の上下方向の径寸法は、フロントカバー4が閉状態から開状態へ変位する間における軸部22に対するアーム5の上下方向の移動距離を考慮して設定されており、例えば本実施形態においては、軸部22の径寸法の2倍程度に設定されている。
【0030】
また、右側のアーム5の先端部5Aの下端側、すなわち先端部5Aにおいて穴部11が形成された部分の下側には、摺接部12(第2の摺接部)が形成されている。摺接部12は後述するように突条部23(第1の摺接部)に形成されたカム部24に接触する(図7参照)。
【0031】
また、穴部11の周縁部および摺接部12は、図4(2)に示すように、全体的に板状に形成された先端部5Aの左側面から左方に突出している。また、先端部5Aの左側面には、当該左側面から左方に突出したリブ13が形成されている。この結果、穴部11の周縁部、摺接部12およびリブ13の厚さは、先端部5Aの他の部分の厚さよりも厚くなっている。
【0032】
一方、左側のアーム5は、その形状が右側のアーム5の形状と左右対称である点を除き、右側のアーム5と同一の構造を有している。
【0033】
図5は画像形成装置1におけるカバー支持部とその周辺部分を示しており、図6はカバー支持部を拡大して示している。図7はフロントカバー4の開閉時に右側のアーム5の先端部5Aが回動する様子を示し、図8はフロントカバー4が開閉する様子を示している。
【0034】
ケーシング2の右側枠部2Bおよび左側枠部2C(図2参照)には、図5に示すようにカバー支持部21がそれぞれ設けられている。各カバー支持部21は、給紙トレイ7がケーシング2に収められているときには、外部から見ることができないが、給紙トレイ7を図5に示すように引き出したときに、外部から見ることができる。
【0035】
右側のカバー支持部21は、図6に示すように、ケーシング2の右側枠部2Bから前方に突出しており、比較的大きな面積を有する側板部21Aと、比較的小さな面積を有する底板部21Bとから大略構成されている。
【0036】
右側のカバー支持部21の側板部21Aには軸部22が設けられている。軸部22は、その基端側が側板部21の右面に固定され、先端側が側板部21Aから右方に伸長した短尺の円筒状または円柱状の部材である。当該軸部22には、図7(1)に示すように、右側のアーム5の先端部5Aに形成された穴部11が挿入される。これにより、右側のアーム5の先端部5Aがカバー支持部21(ケーシング2)に対して回動可能にかつ上下方向移動可能に接続される。
【0037】
また、右側のカバー支持部21の底板部21Bには突条部23(第1の摺接部)が設けられている。突条部23は、図6に示すように、前後方向に伸長し、下端側が底板部21Bの上面に固定され、上端側が上方に伸長している。また、突条部23は、図7(1)に示すように、右側のアーム5の先端部5Aに形成された摺接部12と上下方向において対向する位置に配置されている。
【0038】
また、突条部23の上端部にはカム部24が形成されている。本実施形態におけるカム部24は、概ね、その前側から後ろ側に向けて上向きに傾斜した形状を有している。具体的には、カム部24の前部はほぼ水平であり、中間部は下方に突出するようになだらかに湾曲しながらカム部24の前部側から後部側に向かって上向きに傾斜し、後部は再びほぼ水平となっている。このようなカム部24の形状は、フロントカバー4が閉状態から開状態へ変位する間における軸部22に対するアーム5の上下方向の移動を考慮して決められている。当該カム部24には、図7(1)ないし(3)に示すように、フロントカバー4が閉状態のとき、およびフロントカバー4が閉状態から開状態へ変位する過程において、右側のアーム5の先端部5Aに形成された摺接部12が接触する。
【0039】
一方、左側のカバー支持部21にも、軸部22、突条部23およびカム部24が形成されている。左側のカバー支持部21並びに左側のカバー支持部21に形成された軸部22、突条部23およびカム部24は、これらの形状が、右側のカバー支持部21並びに右側のカバー支持部21に形成された軸部22、突条部23およびカム部24の形状と左右対称である点を除き、右側のカバー支持部21並びに右側のカバー支持部21に形成された軸部22、突条部23およびカム部24と同じである。
【0040】
左右一対のアーム5の先端部5Aに形成された穴部11に、左右一対のカバー支持部21に設けられた軸部22がそれぞれ挿入されることにより、フロントカバー4はケーシング2に回動可能に支持されている。各アーム5の先端部5Aが軸部22周りを回転することにより、フロントカバー4がケーシング2に対して回動し、フロントカバー4が閉状態と開状態との間で変位する。
【0041】
さらに、フロントカバー4が閉状態から開状態へ変位する間に各アーム5の先端部5Aが軸部22周りを反時計回りに回転すると、図7(1)ないし(3)に示すように、各アーム5の先端部5Aに形成された摺接部12が突条部23に形成されたカム部24上を摺動する。これにより、摺接部12がカム部24により徐々に上方に押し上げられ、この結果、フロントカバー4および一対のアーム5が全体的に上方に押し上げられる。
【0042】
具体的に説明すると、まず、フロントカバー4が閉状態のときには、図7(1)に示すように、各アーム5の先端部5Aはその伸長方向が水平となるように倒れており、各アーム5の先端部5Aの摺接部12は、カム部24の前部の低いほぼ水平な部分に接触している。このとき、軸部22が穴部11内の上側に位置し、この結果、フロントカバー4および一対のアーム5は全体的に最も低い位置にある。
【0043】
次に、フロントカバー4が閉状態から開状態に向けて変位し始め、各アーム5が反時計回りに回転し、各アーム5の先端部5Aの伸長方向が水平に対して例えば10度ないし30度程度傾くと、図7(2)に示すように、各アーム5の先端部5Aの摺接部12が、カム部24の中間部の上向きに傾斜した部分に接触するようになる。これにより、摺接部12が押し上げられ、軸部22が穴部11内の下側に移動し、この結果、フロントカバー4および一対のアーム5が全体的に上昇する。
【0044】
次に、フロントカバー4が閉状態から開状態に向けてさらに変位し、各アーム5が反時計回りにさらに回転し、各アーム5の先端部5Aの伸長方向が水平に対して例えば40度ないし50度程度傾くと、図7(3)に示すように、各アーム5の先端部5Aの摺接部12が、カム部24の後部の高い部分に接触するようになる。これにより、摺接部12がさらに押し上げられ、軸部22が穴部11内の下側にさらに移動し、この結果、フロントカバー4および一対のアーム5が全体的にさらに上昇する。
【0045】
次に、フロントカバー4が開状態に達すると、図7(4)に示すように、各アーム5の先端部5Aの伸長方向が水平に対して90度程度となる。このとき、各アーム5の先端部5Aの摺接部12はカム部24から離間する。そして、各アーム5の先端部5Aが最も高い位置となり、この結果、フロントカバー4および一対のアーム5が全体的に最も高い位置となる。
【0046】
このように、フロントカバー4が閉状態から開状態へ変位する間に、フロントカバー4が一対のアーム5と共に上方に移動する。この結果、図8に示すように、フロントカバー4および給紙トレイ7のフロント板部7Aのそれぞれの外表面がケーシング2の正面側の外表面から大きく外側に出っ張っているのにもかかわらず、フロントカバー4は、当該フロントカバー4の下側において隣り合った給紙トレイ7のフロント板部7に接触することなく、閉状態から開状態へ変位することができる(もちろん開状態から閉状態にも同様に変位することができる)。
【0047】
ここで、図9に示す比較例による画像形成装置50では、フロントカバー52が閉状態から開状態に向かって変位する間にフロントカバー52およびアーム53が上方に移動しない。フロントカバー52の外表面およびその下側の給紙トレイ54のフロント板部の外表面がケーシング51の正面側の外表面から大きく外側に出っ張っているので、フロントカバー52が閉状態から開状態に向かって変位する間に、フロントカバー52がフロント板部54Aと接触し、フロントカバー52は開状態となることができない。これに対し、本発明の実施形態による画像形成装置1によれば、上述したように、このような不都合は生じない。
【0048】
以上、説明したとおり、本発明の実施形態による画像形成装置1によれば、フロントカバー4を開閉可能にする構造を確保しながら、フロントカバー4および給紙トレイ7のフロント板部7Aを、それらの外表面が外側に大きく出っ張った形状とすることができる。すなわち、フロントカバー4の良好なまたは便利な開閉機能を維持しながら、フロントカバー4およびフロントカバー4の下側の構造物の形状についての設計の自由度を高めることができ、画像形成装置1の外観デザインの向上を容易に図ることができる。
【0049】
また、本発明の実施形態による画像形成装置1によれば、フロントカバー4を上下方向に移動させることができるので、フロントカバー4のケーシング2に対する上下方向の位置を容易に調整することができる。
【0050】
なお、上述した実施形態では、カム部24の形状を、カム部24の前部がほぼ水平で、中間部が下方に突出するようになだらかに湾曲しながら上向きに傾斜し、後部が再びほぼ水平となる形状としたが、カム部24の形状はこれに限定されない。カム部24の形状は、フロントカバー4が閉状態から開状態へ変位する間にフロントカバー4をどれだけ上方に移動させるかといった点等を考慮して決定され、また、フロントカバー4をどれだけ上方に移動するかは、フロントカバー4の形状またはフロントカバー4の下側の構造物の形状等によって決定される。例えば、カム部24の中間部をカム部24の前部側から後部側に向かって上向きに直線状に傾斜する形状としてもよい。
【0051】
また、上述した実施形態では、アーム5側に穴部11を形成し、ケーシング2側に軸部22を形成する場合を例にあげたが、本発明はこれに限らず、ケーシング2側に穴部を形成し、アーム5側に軸部を形成してもよい。
【0052】
また、上述した実施形態では、ケーシング2側にカム部24を形成する場合を例にあげたが、本発明はこれに限らず、アーム5側にカム部を形成してもよい。
【0053】
また、上述した実施形態では、画像形成機構3のメンテナンスをするためのフロント開口部2Aを閉塞するためのフロントカバー4に本発明を適用する場合を例にあげたが、本発明はこれに限らない。ケーシング2に設けられた他の開口部を閉塞するカバーにも本発明を適用することができる。
【0054】
また、上述した実施形態では、画像形成装置1の正面側に設けられたフロントカバー4に本発明を適用する場合を例にあげたが、本発明はこれに限らず、画像形成装置1の側面、背面、上面等に設けられた他のカバーにも適用することができる。
【0055】
また、上述した実施形態では、フロントカバー4の開閉時においてフロントカバー4がその下側の給紙トレイ7のフロント板部7Aと接触するのを回避する場合を例にあげたが、カバー下側に位置する、接触を回避すべき構造物は給紙トレイ7のフロント板部7A以外でもよい。
【0056】
また、上述した実施形態では、本発明を複合機に適用する場合を例にあげたが、本発明は、コピー機、プリンタ、ファクシミリ等、他の画像形成装置にも適用することができる。
【0057】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う画像形成装置もまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
1 画像形成装置
2 ケーシング
2A フロント開口部
4 フロントカバー
5 アーム
5A 先端部
11 穴部
12 摺接部(第2の摺接部)
21 カバー支持部
22 軸部
23 突条部(第1の摺接部)
24 カム部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有するケーシングと、
前記ケーシングの開口部を閉塞するカバーと、
一端側が前記カバーに固定され、他端側が前記カバーから伸長し、他端部が前記ケーシングに回動可能に支持されることにより、前記カバーと前記ケーシングとを連結すると共に、前記他端部が前記ケーシングに対して回動することにより、前記カバーを、前記ケーシングの開口部を閉塞する閉状態から、当該カバーが前記ケーシングから外側に張り出すように傾斜して前記ケーシングの開口部を開放する開状態へ変位可能にするアームと、
前記カバーが前記閉状態から前記開状態へ変位する間に、前記アームの他端部を上方に移動させる移動手段とを備え、
前記移動手段は、
前記ケーシングおよび前記アームの他端部のうちの一方に形成された上下方向に長い穴部と、
基端側が前記ケーシングおよび前記アームの他端部のうちの他方に固定され、先端側が前記穴部に挿入され、前記アームの他端部を前記ケーシングに回動可能にかつ上下方向移動可能に接続する軸部と、
前記ケーシングに固定された第1の摺接部と、
前記アームの他端部に固定され、前記第1の摺接部と接触する第2の摺接部とを備え、
前記第1の摺接部または第2の摺接部には、前記カバーが前記閉状態から前記開状態へ変位する間における前記アームの他端部の回動に伴い前記第2の摺接部を押し上げるカム部が形成されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記穴部は前記アームの他端部に形成され、
前記軸部は前記ケーシングに固定され、
前記第1の摺接部は、前後方向に伸長し、下端側が前記ケーシングに固定され、上端側が上方に伸長して前記第2の摺接部と接触する突条部であり、
前記第2の摺接部は前記アームの他端部の下端側に形成され、
前記カム部は、前記突条部の上端部に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記ケーシングは当該画像形成装置の外殻を形成し、前記開口部は当該画像形成装置の正面位置に形成されたフロント開口部であり、前記カバーは当該画像形成装置の前記フロント開口部を閉塞するフロントカバーであることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−118170(P2012−118170A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266139(P2010−266139)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリュ−ションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】