説明

画像形成装置

【課題】キャリッジとその移動手段との着脱作業を容易に且つ確実に実施できるインクジェット方式の画像形成装置を提供する。
【解決手段】キャリッジと移動手段とを接合する接合部材がキャリッジと別体で設けられ、接合部材又はキャリッジの一方に、接合部材とキャリッジとを接続する際の案内となるガイド部と、接合部材とキャリッジとを位置決めするインク吐出方向位置決め部及びキャリッジ移動方向位置決め部と、キャリッジと接合部材とを一体的に保持するための保持部とが設けられ、接合部材又はキャリッジの他方に、ガイド部、インク吐出方向位置決め部、キャリッジ移動方向位置決め部及び保持部とが挿入されるガイド部孔、インク吐出方向位置決め部孔、キャリッジ移動方向位置決め部孔及び保持部孔が設けられ、インク吐出方向位置決め部、キャリッジ移動方向位置決め部と保持部とが協働して、キャリッジと接合部材とが一体的に保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク吐出ヘッドを搭載するキャリッジを主走査方向に往復移動させながら、記録媒体を副走査方向に漸次移動させて画像形成を行うインクジェット方式の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来公知の画像形成装置において、インクジェット方式により用紙などの記録媒体に画像を形成する構成を採用するものがよく知られている。インクジェット方式は、形成されるべき画像に対応したインクをインク吐出ヘッド乃至印字ヘッドから吐出することで画像形成を行う方式であり、このインク吐出ヘッドが搭載されるキャリッジが、記録媒体の搬送方向である副走査方向に直交する、記録媒体の幅方向の主走査方向に往復移動することで、副走査方向に間歇的に漸次搬送移動される記録媒体に画像を形成していく方式である。また、当該キャリッジは、例えば、記録媒体の主走査方向にプーリなどを介して張り渡された無端状のタイミングベルトなどの(キャリッジ)移動手段に接続乃至接合されており、この移動手段を記録媒体の主走査方向に動作させることで、当該移動手段に接合されているキャリッジを主走査方向に往復移動させる構成が広く用いられている。
【0003】
このようなインクジェット方式の画像形成装置において、例えばインク吐出ヘッド自身が故障したり、あるいは、インク吐出ヘッドからのインク吐出量を制御する基板などが故障したりするなどの不具合が発生した際には、インク吐出ヘッドをキャリッジごと交換することで対応するのが一般的である。あるいは、インク吐出ヘッドや基板だけを交換するにしても、一旦はキャリッジごと画像形成装置から取り外し、取り外された状態のキャリッジからインク吐出ヘッドや基板の交換を実施するのが一般的である。なお、移動手段自身が経時劣化などで交換を必要とする際にも、一旦は、キャリッジを移動手段から取り外してから、当該移動手段を交換しなければならない。
【0004】
このようなキャリッジを移動手段から取り外そうとする作業を実施する際には、当然ながら、キャリッジと移動手段との接合部あるいはその近傍に作業者がアクセスして、当該移動手段からキャリッジを取り外さなければならないが、このキャリッジと移動手段との接合部は、キャリッジの動作精度を保つために、キャリッジの動作支点又はヘッド面の近くに配置する必要があり、加えて、容易に接触してしまうことでキャリッジの位置精度が変動するのを防止するために、当該接合部は、キャリッジにアクセス可能である側(装置正面側)から見た背面側で、且つ、キャリッジの左右方向乃至移動方向における中央部に設けられている場合が殆どである。したがって、この種のキャリッジを移動手段から取り外そうとすると、どうしてもキャリッジ本体の背面側に作業者の手を入れる必要が生じるが、キャリッジの周辺には他の構成部品などが設けられているため、手が入りにくく、また、背面側に設けられている接合部は、キャリッジ本体自身が目隠しするかの如く作用するので、目視がほぼ不可能であり、視認性が悪いといった問題があった。この問題は、昨今非常によく用いられているインクを4色用いる所謂4ヘッド仕様のキャリッジの場合、言い換えれば、インク吐出ヘッドを4つ担持するキャリッジの場合には、キャリッジの移動方向、すなわち主走査方向におけるキャリッジの幅が大きくなることから顕著であった。
【0005】
また、キャリッジと移動手段との接合部へ手が入りにくく、且つ、当該接合部の視認性が悪いという問題は、一度取り外したキャリッジを再度取り付ける際にも問題となる。通常、キャリッジを画像形成装置に搭載させるために、移動手段とキャリッジとを接続する際には、作業者が移動手段を一方の手で持ち、当該移動手段に、他方の手で把持したキャリッジの接合部を押し込んでいくという作業を行う。しかしながら、この際に、接合部近傍へ手が入りにくければ、キャリッジを取り付けるのに適当な移動手段位置を作業者は持ち難く、且つ、視認性が悪ければ、接合の具合乃至程度は作業者の感覚に頼らざるを得ないため、キャリッジを適正位置で移動手段に保持させようとするには相当の困難性と作業者の熟練度とを必要とする。仮に、キャリッジが不適切に移動手段に取り付けられてしまうと、例えば、キャリッジが主走査方向に移動する際にガタツキが生じてしまうなどの問題を引き起こしてしまい、キャリッジ動作時にガタツキが生じていると、インクの記録媒体に対する着弾位置がぶれてしまうことによる色ずれが発生したり、主走査方向に一直線であるべき画像が波打ってしまうなど、良好な形成画像を得ることができなくなってしまう。
【0006】
そこで、インク吐出ヘッドが故障するなどして、従来から用いられていたキャリッジを取り外したり、あるいは、交換しなければならない場合、本来的には、キャリッジを交換するだけの作業であるにも関わらず(すなわち、キャリッジが簡単に着脱できるのであれば、キャリッジの予備品を製造者側のサービスマンがあるいはユーザーが持っていれば直ぐに対応可能であるにも関わらず)、キャリッジと移動手段との着脱作業性が非常に悪いことに起因して、ユーザーは、画像形成装置全体を一旦製造者に引き取ってもらい、製造者側の工場や作業室などでキャリッジを交換するという非常に煩わしい作業乃至手順を実施していた。また、画像形成装置が一旦は製造者に引き取られてしまうので、ユーザーは、少なくとも1日は画像形成が行えなくなるという不都合を強いられていた。
【0007】
しかしながら、このような不都合が生じていたのにも関わらず、今までのインクジェット方式の画像形成装置においてはそもそもキャリッジを移動手段、ひいては画像形成装置から着脱する頻度が少ないという理由で、キャリッジ着脱性を改善する試みは何らなされていないのが実情である。
【0008】
ここで、特許文献1には、キャリッジ駆動源からの振動が直接キャリッジに伝播するのを防止する目的で、キャリッジとタイミングベルトなどの移動手段との接合部をキャリッジとは別体で構成し、当該別体にされた接合部が振動吸収構造になっている構成が開示されている。このような構成であれば、キャリッジとは別体の接合部と移動手段との間の着脱作業性は改善される可能性があるが、その後の当該接合部をキャリッジに接続する作業のためには、やはり作業者は、手が入りがたいキャリッジ筐体背面側での作業を強いられ、且つ、視認性が悪いまま取付作業を行わなければならず、その結果、キャリッジの着脱作業性を改善するという課題を解消することまではできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記した従来の問題に鑑み、キャリッジの交換作業の際に、移動手段とキャリッジとを着脱する作業を容易に且つ確実に実施できるように改善されたインクジェット方式の画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明は、
記録媒体にインクを吐出するインク吐出ヘッドが搭載され、記録媒体の搬送方向である副走査方向とは直交する主走査方向に往復移動可能なキャリッジと、
前記キャリッジを前記主走査方向に往復移動させるために、駆動源からの駆動力を前記キャリッジに伝達する移動手段と、を備えて成る画像形成装置において、
前記キャリッジと別体で構成され、前記キャリッジと前記移動手段とを接合するための接合部材が設けられ、
前記接合部材又は前記キャリッジの一方には、当該接合部材と当該キャリッジとを接続する際の案内となるガイド部と、前記接合部材と前記キャリッジとを位置決めするインク吐出方向位置決め部及びキャリッジ移動方向位置決め部と、前記キャリッジと前記接合部材とを一体的に保持するための保持部とが設けられ、
前記接合部材又は前記キャリッジの他方には、前記ガイド部、前記インク吐出方向位置決め部、前記キャリッジ移動方向位置決め部及び前記保持部とがそれぞれ挿入されるガイド部孔、インク吐出方向位置決め部孔、キャリッジ移動方向位置決め部孔及び保持部孔が設けられ、
前記インク吐出方向位置決め部及び前記キャリッジ移動方向位置決め部と、前記保持部とが協働することで、前記キャリッジと前記接合部材とが一体的に保持されること、
を特徴とする画像形成装置を提案する。
【0011】
さらにまた、本発明において、前記ガイド部の先端部に爪部を設け、当該爪部が前記ガイド部孔に引っ掛かる引掛け部分として構成されていると好適である。
【0012】
さらにまた、本発明において、前記接合部材の本体部からキャリッジの移動方向にそれぞれ突出する耳部が設けられていると好適である。
【0013】
さらにまた、本発明において、前記保持部には、前記キャリッジと係合する爪形状部が前記キャリッジに対して下向きに設けられ、前記インク吐出方向位置決め部には、前記インク吐出方向位置決め部孔へのガイドとなる傾斜部であって、前記インク吐出方向位置決め部先端から上向きに傾斜する傾斜部が設けられていると好適である。
なお、本発明において、前記保持部孔と前記インク吐出方向位置決め部孔とが共通の孔部として設けられると共に、前記保持部には、前記キャリッジと係合する爪形状部が前記キャリッジに対して上向きに設けられ、前記インク吐出方向位置決め部には、前記共通の孔部へのガイドとなる傾斜部であって、前記インク吐出方向位置決め部先端から下向きに傾斜する傾斜部が設けられていてもよい。
【0014】
さらにまた、本発明において、前記キャリッジ移動方向位置決め部が円柱状のボス部として構成され、前記キャリッジ移動方向位置決め部孔が、当該ボス部が嵌挿される長孔であって、前記キャリッジに対して上下方向に延在する長孔として構成されると好適である。
なお、前記ボス部の先端部に、当該ボス部の外径に対して同心状のテーパ部分が形成されるように構成されるとなお好適である。
【0015】
さらにまた、本発明において、前記ガイド部が挿入される前記ガイド部孔と、当該ガイド部との間の間隙を埋めるためのスペーサ部材が前記ガイド部に設けられていると好適である。
なお、前記スペーサ部材が弾性部材であるとさらに好適である。
【0016】
さらにまた、本発明において、前記接合部材の最下端部に、ベルトクランプ部が配置されている方向に傾斜する本体傾斜部が設けられていると好適である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、キャリッジと移動手段とを接合するための接合部材が、キャリッジとは別体で設けられていることから、まずは、作業者は接合部材だけを移動手段に取り付けることができるため、当該接合部材を移動手段に取り付ける際に、キャリッジが作業者の視界を妨げることが無く、また、キャリッジ自身が接合部材を移動手段に取り付けるための作業者の取付作業を妨害することが無いので、作業者は接合部材と移動手段との接合を容易に且つ確実に行うことが可能になる。また、移動手段に取り付けられた接合部材とキャリッジとを接合する際には、接合部材又はキャリッジの一方には、当該接合部材と当該キャリッジとを接続する際の案内となるガイド部が設けられ、且つ、接合部材又はキャリッジの他方には、当該ガイド部が挿入されるガイド部孔が設けられているので、作業者は、一旦、当該ガイド部をガイド部孔に挿入するという、目視し難い状態であっても簡易な作業で、キャリッジと接合部材との仮位置決めが可能であり、さらに、接合部材又はキャリッジの一方には、接合部材とキャリッジとを位置決めするインク吐出方向位置決め部及びキャリッジ移動方向位置決め部が設けられ、且つ、接合部材又はキャリッジの他方には、当該インク吐出方向位置決め部及びキャリッジ移動方向位置決め部がそれぞれ挿入されるインク吐出方向位置決め部孔、キャリッジ移動方向位置決め部孔が設けられているので、これらのインク吐出方向位置決め部及びキャリッジ移動方向位置決め部と、インク吐出方向位置決め部孔及びキャリッジ移動方向位置決め部孔とを嵌め合わせるという、やはり目視し難い状態であっても簡易な作業で、一旦ガイド部とガイド部孔とで仮位置決めされたキャリッジを、作業者の感覚に頼ることなく正確に位置決めすることが可能となる。さらにまた、接合部材又はキャリッジの一方には、キャリッジと接合部材とを一体化するための保持部が設けられ、且つ、接合部材又はキャリッジの他方には、当該保持部が挿入・係合される保持部孔が設けられ、先に記述したインク吐出方向位置決め部孔に挿入されるインク吐出方向位置決め部及びキャリッジ移動方向位置決め部孔に挿入されるキャリッジ移動方向位置決め部と、当該保持部孔に挿入される保持部とが協働することで、キャリッジと接合部材とが一体的に保持されるように構成されているので、一旦ガイド部とガイド部孔とで仮位置決めされた後で、インク吐出方向位置決め部及びキャリッジ移動方向位置決め部と、インク吐出方向位置決め部孔及びキャリッジ移動方向位置決め部孔とを嵌め合わせることで正確な位置決めがなされたキャリッジと接続部材との最終的な接合を、やはり目視がし難い作業でも簡易な嵌め合わせ作業で確実に達成することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】インクジェット方式の画像形成装置の機構部を概略で示す平面図である。
【図2】従来のキャリッジをその背面側から眺めた平面図であり、主として移動手段としてのタイミングベルト及びこれに関連する構成部材と、当該移動手段に接合されるキャリッジとが抽出して描かれている。
【図3】従来のキャリッジが移動手段から着脱される状態を説明するための説明図であり、この図においては、キャリッジと移動手段とだけが抽出された斜視図として描かれている。
【図4】本発明による接合部材を説明するための、当該接合部材だけが移動手段に取り付けられた状態の斜視図である。
【図5】図4に示される接合部材の側面図である。
【図6】キャリッジと接合部材とが着脱される状態を説明するための斜視図である。
【図7】キャリッジが接合部材と接合された状態をキャリッジ内部から眺めた斜視図である。
【図8】インク吐出方向位置決め部孔と保持部孔とが共通の孔部として構成された場合における、インク吐出方向位置決め部及び保持部の構成を拡大した状態で説明するための概略断面図であり、a)は、キャリッジと接合部材とを接合する際の動作途中の状態を概略で示し、b)は、キャリッジと接合部材とが接合された状態を概略で示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に従って説明する。
図1は、本発明の実施形態にかかるインクジェット方式の画像形成装置の一例を示す機構部の概略平面図である。なお、本発明のインクジェット方式の画像形成装置は、後で説明するキャリッジと例えばタイミングベルトである移動手段との接合部材に関するもの以外は、従来からよく知られた画像形成装置であるため、画像形成装置としての説明は、機構部を概略で説明する。
【0020】
この画像形成装置は、シリアル型画像形成装置であり、左右のメイン側板1A、1Bに横架した案内部材である主ガイドロッド2と従ガイドロッド3とで、キャリッジ4を主走査方向に摺動自在に保持し、主走査モータ5によって駆動プーリ7と従動プーリ9との間に超過された(キャリッジ)移動手段としてのタイミングベルト8を介してキャリッジ4を主走査方向に移動走査する。このキャリッジ4においては、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の液滴乃至インクを吐出する画像形成手段としてのインク吐出ヘッド11と、このインク吐出ヘッド11にインク液を供給するヘッドタンクとを含むインク吐出ヘッドユニットを、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、インク吐出方向を下方に向けて装着している。
【0021】
一方、キャリッジ4の下側には、図示しない用紙などの記録媒体を副走査方向に搬送する搬送手段としての搬送ベルト21を配置している。この搬送ベルト21は、無端状のベルトであり、搬送ローラ22とテンションローラ23との間に掛け渡されていて、副走査モータ35により搬送ローラ22が回転駆動されることによって、タイミングベルト32及びタイミングプーリ33を介して副走査方向に周回移動される。
【0022】
さらに、キャリッジ4の主走査方向の一方側には搬送ベルト21の側方にインク吐出ヘッド11のヘッド維持回復を行う維持回復機構41が配置され、他方側には搬送ベルト21の側方にインク吐出ヘッド11から空吐出を行う空吐出受け42がそれぞれ配置されている。なお、維持回復機構41は、例えばインク吐出ヘッド11のノズル面(ノズルが形成された面)をキャッピングするキャップ部材、ノズル面を払拭するワイパ部材、画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出受けなどで構成されている。なお、図示はしないが、用紙などの記録媒体を搬送ベルト21に給紙する給紙手段や、画像形成手段としてのインク吐出ユニットから吐出された液体(インク)が付着して画像が形成された記録媒体を画像形成装置外に排紙する排紙手段なども、通常公知の如く備えている。
【0023】
このように構成される画像形成装置においては、図示しない給紙手段から給紙された記録媒体を搬送ベルト21で間歇的に搬送し、キャリッジ4を主走査方向に移動させながら画像信号に応じてインク吐出ユニットのインク吐出ヘッド11を駆動することにより、停止している記録媒体に液滴を吐出して1行分を記録し、記録媒体を所定量搬送後、次の行の記録を行う動作を繰り返して、記録媒体上に画像を形成し、画像形成完了後の記録媒体を排紙する。
【0024】
次に、図2を用いて移動手段8に接合されるキャリッジ4の主走査方向の移動動作を説明する。図2は、従来のキャリッジ4をその背面側から眺めた平面図であり、主として移動手段としてのタイミングベルト8及びこれに関連する構成部材と、当該移動手段8に接合されるキャリッジ4とが抽出して描かれている。なお、本明細書内で背面側とは、ユーザーがキャリッジ4にアクセスできる装置正面側に対して用いられる用語であり、図1においては、装置正面側が図中右方であり、装置背面側が図中左方である。図2において、キャリッジ4は、当該キャリッジ4のキャリッジ筐体4a背面側から突出し、且つ、当該キャリッジ筐体4aとは一体的に設けられたベルトクランプ部6で移動手段8と接合されている。また、ここに図示した移動手段8は、無端状ベルトとして構成されていて、主走査モータ5に接続される駆動プーリ7と従動プーリ9とに掛けまわされ、当該駆動プーリ7と従動プーリ9との2軸間を移動手段8が回転移動することで、主ガイドロッド2に沿って主走査方向に往復移動できるように構成されている。すなわち、駆動源としての主走査モータ5からの回転駆動力によって、駆動プーリ7と従動プーリ9とに掛けまわされた無端状の移動手段8が、当該駆動プーリ7と従動プーリ9との2軸間を回動することによって、キャリッジ4は、主走査方向に往復移動可能な構成となっている。なお、ここに図示した例では、無端状のタイミングベルト8を移動手段の一例として説明しているが、本願発明における移動手段は、これに限られることはなく、無端状であるか有端状であるかを問わず、キャリッジ4を主走査方向に往復移動させるために、駆動源からの駆動力を当該キャリッジ4に伝達するように構成されていればよい。
【0025】
また、キャリッジ4にはエンコーダセンサ10が設けられており、このエンコーダセンサ10が、キャリッジが往復動作する移動方向である主走査方向に対応する幅方向乃至左右方向にセットされたリニアエンコーダ50を検知することで、キャリッジ4の位置情報が得られるように構成されている。この構成により、キャリッジ4の位置情報をリニアに乃至直接的に獲得して、当該獲得された位置情報に基づいて、移動手段8によるキャリッジ4の往復移動動作の位置制御が実施される。
【0026】
次に、このように構成されるキャリッジ4の移動手段8に対する着脱について図3を用いて説明する。図3は、従来のキャリッジ4が移動手段8から着脱される状態を説明するための説明図であり、この図においては、キャリッジ4と移動手段8とだけが抽出された斜視図として描かれている。
【0027】
図3において、従来から知られているキャリッジ4には、ベルトクランプ部6がキャリッジ筐体4aと一体的に形成されており、当該ベルトクランプ部6は、画像形成装置の正面から見たキャリッジ背面側から突出するように、且つ、キャリッジ筐体4aの左右方向では中央部に配置されている。また、ベルトクランプ部6では、図3の右下のA部拡大図に示されるように、タイミングベルトなどの移動手段8を挟みつけて固定するための櫛歯状の歯形状部31A、31Bが、移動手段8が挿入される溝の上下に形成されている。このような構成のキャリッジ4のベルトクランプ部6と移動手段8とを着脱する作業を実施するために、移動手段8にアクセス可能である装置正面側から作業者が手を入れようとすると(図1も併せて参照)、移動手段8の後方、すなわちキャリッジ4のキャリッジ筐体4a背面側には、様々な構成部品が存在するため、キャリッジ4を移動手段8から取り外す際に、あるいは、キャリッジ4を移動手段8に取り付ける際に、ベルトクランプ部6自身はもとより、ベルトクランプ部6近傍の移動手段8でさえも作業者はつかみ難く、さらには、キャリッジ4自身が目隠しをするかのごとく障害となって、作業者はベルトクランプ部6を目視することが困難であることがわかる。
【0028】
そこで、本願発明の一実施形態では、図4〜7に示されるように、キャリッジ4と移動手段8とを接合するための接合部材13を、キャリッジ4とは別体で設け、さらに、接合部材13には、当該接合部材13と当該キャリッジ4とを接続する際の案内となるガイド部14と、接合部材13とキャリッジ4とを位置決めするインク吐出方向位置決め部16及びキャリッジ移動方向位置決め部17と、キャリッジ4と接合部材13とを一体化するための係合部としての保持部15とを設けると共に、キャリッジ4には、ガイド部14、インク吐出方向位置決め部16、キャリッジ移動方向位置決め部17及び保持部15とがそれぞれ挿入されるガイド部孔14’、インク吐出方向位置決め部孔16’、キャリッジ移動方向位置決め部孔17’及び保持部孔15’を設けた。また、ここに図示した例では、インク吐出方向位置決め部孔16’に挿入されるインク吐出方向位置決め部16及びキャリッジ移動方向位置決め部孔17’に挿入されるキャリッジ移動方向位置決め部17と、保持部孔15’に挿入・係合される保持部15とが協働することで、キャリッジ4と接合部材13とが一体的に保持されるように構成している。これを言い換えると、インク吐出方向位置決め部16と、キャリッジ移動方向位置決め部17とで、キャリッジ4と接合部材13との正確な位置決めを達成すると共に、インク吐出方向位置決め部16と、保持部15とがインク吐出方向位置決め部孔16’と保持部孔15’との間のキャリッジ4の壁面を挟み込むように、当該保持部15が保持部孔15’に挿入・係合されて、キャリッジ4と接合部材13とが一体化される。ここで、図4は、本発明による接合部材13を説明するための、当該接合部材13だけが移動手段8に取り付けられた状態の斜視図であり、図5は、当該接合部材13の側面図であり、図6は、キャリッジ4と接合部材13とが着脱される状態を説明するための斜視図であり、図7は、キャリッジ4が接合部材13と接合された状態をキャリッジ4内部から眺めた斜視図である。
【0029】
なお、本明細書に図示したインクジェット方式の画像形成装置の機構部においては、発明の理解を助けるために、画像形成装置本体に対して乃至その設置面に対して、インクが鉛直下方向に吐出されるようにキャリッジ4が配置されており、したがって、図示した例では、インク吐出方向は、画像形成装置あるいはキャリッジ4の上下方向に対応し、キャリッジ移動方向は、画像形成装置あるいはキャリッジ4の左右方向に対応している。しかしながら、本願発明は、これに限定されることはない。図示はしないが、本願発明は、画像形成装置の設置面に対してキャリッジ4が斜めに配置され、その結果、インク吐出方向が画像形成装置の鉛直下方向ではなく、その設置面に対してキャリッジ4の傾斜角度に応じて斜めに吐出する場合も含む概念である。したがって、本願発明においては、位置決め部16、17及び位置決め部孔16’、17’は、キャリッジ4からのインクが吐出されるインク吐出方向及びキャリッジが往復移動するキャリッジ移動方向の位置決めを行うような概念で構成されていることに注意されたい。
【0030】
本発明の一実施形態では、図4及び図5に示されるように、接合部材13は、キャリッジ4のインク吐出方向に対応する鉛直方向乃至上下方向に延在する平板形状に構成された本体部20と、当該本体部20から、キャリッジ動作方向に対応する左右方向に延在する耳部18、18を有する。なお、耳部18、18については後述する。この接合部材13の平板状の本体部20においては、その下端部近傍で移動手段8に対向する位置に、当該本体部20の一方の面からベルトクランプ部6が突出していて、このベルトクランプ部6が移動手段8に従来公知のように嵌め込まれる。そして、平板状本体部20の他方の面には、当該ベルトクランプ部6が形成される位置に略対向する位置にガイド部14が形成され、ここに図示したガイド部14の先端部には、下方に延在する引掛け部分乃至爪部分14aが設けられている。また、本体部20に形成されたガイド部14の上方には、順にキャリッジ移動方向位置決め部17、インク吐出方向位置決め部16、及び、保持部15が設けられている。キャリッジ移動方向位置決め部17は、円柱状のボス部として構成されており、その先端部には、ボス部の外径と同心状にテーパ部分乃至傾斜部分17aが設けられている。また、インク吐出方向位置決め部16は、キャリッジ4の移動方向に延在するブロック部分として構成されると共に、キャリッジ4と接合部材13とが一体化される際にキャリッジ4と接触する接触側端部から上方に傾斜する傾斜部分16aが設けられて構成されている。したがって、このインク吐出方向位置決め部16は、図5に示されるように、装置正面側から装置背面側に向いた方向では、断面が略台形の形状になるブロック部分として構成されている。さらにまた、保持部15の先端部にはインク吐出方向位置決め部16の方向に向けられた、すなわち図示した例では下方に向けられた(保持部)爪形状部分15aが設けられている。
【0031】
その一方で、図7に示されているように、キャリッジ4側には、ガイド部14、キャリッジ移動方向位置決め部17、インク吐出方向位置決め部16及び保持部15にそれぞれ対応する位置に、ガイド部孔14’、キャリッジ移動方向位置決め部孔17’、インク吐出方向位置決め部孔16’及び保持部孔15’が設けられていて、接合部材13とキャリッジ4とを一体化する際には、これらガイド部孔14’、キャリッジ移動方向位置決め部孔17’、インク吐出方向位置決め部孔16’及び保持部孔15’に、それぞれガイド部14、キャリッジ移動方向位置決め部17、インク吐出方向位置決め部16及び保持部15が挿入乃至嵌挿され、インク吐出方向位置決め部16とキャリッジ移動方向位置決め部17とで、接合部材13に対するキャリッジ4の位置決めが達成され、当該インク吐出方向位置決め部16及びキャリッジ移動方向位置決め部17と保持部15とが協働して、接合部材13とキャリッジ4とが一体的に保持されるようになっている。
【0032】
これらの関係をより詳細に説明すると、まず、キャリッジ4の取付時には、図4に示されるように、移動手段8に接合部材13だけを取り付けることになるが、この際には、接合部材13がキャリッジ4とは別体で設けられていることから、作業者は、当該接合部材13だけを移動手段8に取り付けることが可能であり、この接合部材13を移動手段8に取り付ける際には、未だキャリッジ4自身は存在していないので、作業者は、作業視界を妨げられることがなく、また、装置正面側には取付作業を妨害するような構成部品は殆ど存在しないので、容易に且つ適切に接合部材13を移動手段8に取り付けることが可能となる。
【0033】
次いで、作業者は、この移動手段8に取り付けられた接合部材13とキャリッジ4とを一体化することになるが、その際には、接合部材13に設けられたガイド部14をまずはガイド部孔14’に挿入する。この際には、ガイド部14に設けられた引掛け部分14aをガイド部孔14’の下側縁部に引っ掛けるように挿入する。その後、この引掛け部分14aを支点にするかの如く、キャリッジ4を接合部材13に対して回動させ、順次キャリッジ移動方向位置決め部17、インク吐出方向位置決め部16をそれぞれキャリッジ移動方向位置決め部孔17’、インク吐出方向位置決め部孔16’に挿入して、これらを嵌め合わせ、最後に、最上方にある保持部15の爪形状部分15aをキャリッジ4の保持部孔15’に嵌め込み係合させ、当該保持部15とインク吐出方向位置決め部16及びキャリッジ駆動方向位置決め部17とが協働することで、接合部材13とキャリッジ4とが一体化されるように構成されている。なお、保持部15は、図示したような比較的薄い板体から成る保持部本体の先端部に爪形状部15aの傾斜部が設けられるように構成されているので、保持部孔15’に保持部15を係合させる際には、キャリッジ4の壁面を保持部15の爪形状部15aは容易に乗り上げて保持部孔15’に嵌め込むことができるようになっている。
【0034】
このように構成されていれば、作業者は、ガイド部14に対して比較的大きく切り掛かれたガイド部孔14’に、一旦ガイド部14を挿入するという、目視し難い状態であっても非常に簡易な作業で、キャリッジ4と接合部材13との間の仮位置決めが可能であり、さらに、キャリッジ4と接合部材13とが仮位置決めされた状態で、インク吐出方向位置決め部16及びキャリッジ移動方向位置決め部17と、インク吐出方向位置決め部孔16’及びキャリッジ移動方向位置決め部孔17’とを嵌め合わせるという、やはり目視し難い状態であっても簡易な作業で、作業者の感覚に頼ることなく正確に位置決めすることが可能である。さらにまた、ここに図示した例では、先に記述したインク吐出方向位置決め部孔16’に挿入されるインク吐出方向位置決め部16及びキャリッジ移動方向位置決め部孔17’に挿入されるキャリッジ移動方向位置決め部17と、保持部孔15’に挿入されて係合される保持部15とが協働することで、キャリッジ4と接合部材13とが一体的に保持されるように構成されているので、一旦ガイド部14とガイド部孔14’とで仮位置決めされた後で、インク吐出方向位置決め部16及びキャリッジ駆動方向位置決め部17と、インク吐出方向位置決め部孔16’及びキャリッジ移動方向位置決め部孔17’とを嵌め合わせることで正確な位置決めがなされたキャリッジ4と接続部材13との最終的な接合を、やはり目視がし難い作業でも簡易な作業で達成することが可能になる。
【0035】
このような一体化を行う際には、キャリッジ4に接合部材13を容易に嵌め込んで一体化しやすくするための工夫をするとより好適である。例えば、図示されているように、キャリッジ移動方向位置決め部17は、キャリッジ4の移動方向の位置決めを担当するため、当該キャリッジ移動方向位置決め部17が嵌挿されるキャリッジ移動方向位置決め部孔17’のキャリッジの移動方向の幅は、キャリッジ移動方向位置決め部17とのガタツキが極力最小になるように、ボス部として構成されるキャリッジ移動方向位置決め部17の直径と略同一となるように構成する一方で、インク吐出方向の位置決めは、インク吐出方向位置決め部16とインク吐出方向位置決め部孔16’とが担当するため、インク吐出方向に延在する長孔形状に構成すると、ボス部17が挿入しやすくなるため好適である。また、キャリッジ移動方向位置決め部であるボス部17の先端に、当該ボス部の外径と同心状のテーパ部17aを設けると、テーパ部17aによりボス部17のキャリッジ移動方向位置決め孔17’への挿入が案内されるため、より挿入作業が容易になるので好適である。
【0036】
同様に、インク吐出方向位置決め部16とインク吐出方向位置決め部孔16’とに関しては、キャリッジ4におけるインク吐出方向位置決め部孔16’のインク吐出方向の幅は、インク吐出方向位置決め部16のインク吐出方向幅と略同一にする必要がある一方で、キャリッジ移動方向の位置決めはキャリッジ移動方向位置決め部17とキャリッジ移動方向位置決め部孔17’とが担当するので、キャリッジ4の移動方向に対するインク吐出方向位置決め部孔16’の幅は、インク吐出方向位置決め部16自身のキャリッジ移動方向の幅よりも大きくとることもできる。さらにまた、ここに図示した例では、キャリッジ4と接合部材13とが一体化される際にキャリッジ4と接触する接触側端部から上方に傾斜する傾斜部分16aを設けているので、ガイド部14に設けられた引掛け部分14aを支点とするかの如く、キャリッジ4を接合部材13に対して回動させて一体化する際に、当該傾斜部分16aは、インク吐出方向位置決め部16がインク吐出方向位置決め部孔16’に挿入される際のガイドとして役立ち、その結果、インク吐出方向位置決め部16のインク吐出方向位置決め部孔16’への挿入がより容易となるため好適である。
【0037】
さらにまた、ガイド部14とガイド部孔14’とは、接合部材13にキャリッジ4を取り付ける際の仮位置決めのために設けられているため、ガイド部孔14’をガイド部14に対してキャリッジ移動方向及びインク吐出方向に比較的余裕があるように、すなわち、ガイド部14の断面に対してガイド部孔14’の断面を大きく構成することもできる。このように構成すれば、目視し難い状況で、キャリッジ4を接合部材13に取り付ける際に、作業者は比較的容易にガイド部孔14’にガイド部14を挿入できるようになるため好適である。
【0038】
しかしながら、その一方で、ガイド部14は、接合部材13において移動手段8に対向する直近位置に配置されているため、移動手段8が動作する際の振動の影響を直接的に受ける構成部材でもある。したがって、キャリッジ4が接合部材13と一体化された後で、ガイド部14とガイド部孔14’との間、特にキャリッジ移動方向(主走査方向)に隙間があると、移動手段8が主走査方向に動作する際の振動がより直接的にキャリッジ4に伝播されてしまう恐れがある。そのため、ここに図示した例においては、ガイド部14の後端側をその引掛け部分14aも含めたスペーサ部材40で覆っている。このように構成しておけば、ガイド部14の先端部は、比較的大きな断面のガイド部孔14’に容易に挿入されやすいという効果に加えて、キャリッジ4を引掛け部14aを支点にするかの如く回動させて接合部材13と接合する際には、スペーサ部材40がガイド部14とガイド部孔14’との間のキャリッジ移動方向の隙間を埋めるため、隙間が開いていることによる振動伝播の問題を抑制することができるため好適である。
【0039】
なお、このスペーサ部材40をゴムなどの弾性部材で構成すれば、ガイド部14がガイド部孔14’に挿入される際に、弾性部材の弾性変形によって、より容易に挿入することが可能になると共に、移動手段8の回動動作の際における振動を弾性部材が吸収することができるようになるのでより好適である。そのため、図5に図示されているように、接合部材13のガイド部14における引掛け部14aがキャリッジ4と接触する部分、すなわち、引掛け部分14aが接合部材13に対向している部分までも弾性部材であるスペーサ部材40で覆った方が、弾性部材としてのスペーサ部材40がキャリッジ4と接触する接触面積を極力大きくとることができ、伝達される恐れのある振動をより吸収することが可能になるため、なお好適である。
【0040】
また、図示した例では、接合部材13の下方端部側から、ガイド部14、キャリッジ移動方向位置決め部17、インク吐出方向位置決め部16、保持部15が順次設けられているが、本願発明はこの配置順に限られない。例えば、キャリッジ移動方向位置決め部17の配置位置とインク吐出方向位置決め部16の配置位置とを入替えることも可能である。しかしながら、ベルトクランプ部6で接合される移動手段8が主走査方向に動作する際には、主走査方向に対して加速度が発生し、その加速度に対してベルトクランプ部6を支点とした回転モーメントが発生してしまう。この回転モーメントは、キャリッジの重量と支点からの距離(すなわちベルトクランプ部6からの距離)との関係で増大するため、回転モーメントによりキャリッジ4自身が傾こうとすることを極力防止するために、一旦回転モーメントが比較的小さなうちに係止部を設けて、当該係止部で回転モーメントを一度受けておくほうが好ましい。したがって、なるべくガイド部14とインク吐出方向位置決め部16との間に、キャリッジ移動方向位置決め部17を回転モーメントの係止部として配置するほうが好適である。また、保持部15を最上位に配置する必要は必ずしもないが、最上位に配置した方が、キャリッジ4と接続部材13とが確実に位置決めされた後での最終的な接合を保持部15で確実になすことが可能となり、さらには、先に記述した回転モーメントが最もかかる最上位位置での保持ができるようになるため好適である。
【0041】
さらにまた、接合部材13の本体部20の最下端部において、ベルトクランプ部6が配置されている方向に傾斜する本体傾斜部20aを設けることもできる。ガイド部孔14’にガイド部14を挿入する際に、この本体傾斜部20aを、キャリッジ4のキャリッジ筐体4aにおける、接合部材13が取り付けられる取付面に当接させることで、ガイド部14のガイド孔部14’への挿入深さの目安として用いることが可能であり、また、ガイド部14がガイド部孔14’に挿入された際に、一旦、当該本体傾斜部20aを取付面に当接させることで、その後の、キャリッジ4の接合部材13への回動一体化動作を安定して行うための一時係止位置として用いることもできる。
【0042】
ここで、図示した例では、接合部材13の本体部20には、キャリッジ移動方向に延在する耳部18、18がそれぞれ設けられている。そのため、作業者は、移動手段8に適切に取り付けられた接合部材13の耳部18、18のどちらかを一方の手で持った状態で、他方の手でキャリッジ4を持ちながら、ガイド部14をガイド部孔14’に挿入することが可能になり、ガイド部14のガイド孔部14’への挿入作業をさらに容易に行うことが可能である。また、ガイド部14とガイド部孔14’で一旦仮位置決めがなされると、今度は、両手の一部の指をそれぞれ当該耳部18、18に添えた状態で、キャリッジ4と接合部材13とを両手で把持して、例えば、親指でキャリッジ4の上部側を接合部材13の方に押し込むことで、インク吐出方向位置決め部16及びキャリッジ移動方向位置決め部17と、インク吐出方向位置決め部孔16’及びキャリッジ移動方向位置決め部孔17’とを嵌め合わせ、さらに、保持部15を保持部孔15’に係合させることで、キャリッジ4と接続部材13との最終的な接合をさらに容易に達成することが可能である。
【0043】
なお、キャリッジ4を接合部材13から取り外す際には、これまで説明してきた取り付け動作と逆の動作を行えばよい。すなわち、作業者は、接合部材13にアクセスした状態で、接合部材13における保持部15の爪部15aを指などを用いて、あるいは、キャリッジ4を接合部材13のガイド部14を支点とするかの如く、装置正面側乃至作業者側に回動させる力を加えることにより、保持部15のキャリッジ4の壁面からの係合をとき、さらにキャリッジ4を装置正面側乃至作業者側に回動させることで、インク吐出方向位置決め部16及びキャリッジ移動方向位置決め部17からキャリッジ4を取り外し、最後に、ガイド孔部14の引掛け部分14aをずらして取り外すことで、接合部材13からキャリッジ4を取り外せばよい。このように構成することで、キャリッジ4の取り付けだけでなく取り外しも容易に行うことが可能となる。また、保持部15を接合部材13の最上位に配置させていた方が、この取り外し動作の際に、言い換えれば、キャリッジ4をガイド部14の引掛け部分14aを支点とするかの如く、装置正面側乃至作業者側に回動させる際に、作業者が爪部15aに最も容易にアクセス可能となり、さらには、係合を解除しようとする力乃至回転モーメント力が最もかかる部位が保持部15と保持部孔15’とになって、係合をより容易に解除することが可能となるため、この観点からも保持部15を最上位に配置することは好ましい。
【0044】
さらに、インク吐出方向位置決め部材16の傾斜部16aは、取り外しの際にもガイドとして役立つため、傾斜部16aが設けられていると取り外しの際にもより容易な作業を実施できるようになるため好適である。さらには、耳部18、18が接合部材13の本体部20に設けられていれば、耳部18、18のいずれかを片方の手で把持しながら、もう一方の手でキャリッジ4の取り外し回動動作を実施できるため、耳部18、18は容易な取り外しの際にも役立ち好適である。
【0045】
これまで、本願発明の好適な実施形態を図4〜7を用いて説明してきたが、本願発明はこれに限られることはない。例えば、図示した例では、接合部材13側に、ガイド部14、インク吐出方向位置決め部16、キャリッジ移動方向位置決め部17及び保持部15が形成され、キャリッジ4側にガイド部孔14’、インク吐出方向位置決め部孔16’、キャリッジ移動方向位置決め部孔17’及び保持部孔15’が形成されているが、これを逆転させて、接合部材13側にガイド部孔14’、インク吐出方向位置決め部孔16’、キャリッジ移動方向位置決め部孔17’及び保持部孔15’を形成し、キャリッジ4側にガイド部14、インク吐出方向位置決め部16、キャリッジ移動方向位置決め部17及び保持部15を形成するようにしても良い。この場合には、キャリッジ4側のガイド部14を接合部材13側のガイド部孔14’に挿入して、当該ガイド部14に設けられた引掛け部分14aを支点にするかの如く、キャリッジ4を接合部材13に対して回動させることで、上述の通り、キャリッジ4と接合部材13とを一体化させて保持させることになる。すなわち、本願発明では、接合部材13又はキャリッジ4のどちらか一方に、当該接合部材13と当該キャリッジ4とを接続する際の案内となるガイド部14と、接合部材13とキャリッジ4とを位置決めするインク吐出方向位置決め部16及びキャリッジ移動方向位置決め部17と、キャリッジ4と接合部材13とを一体化するための保持部15とが設けられ、さらに、接合部材13又はキャリッジ4の他方には、ガイド部14、インク吐出方向位置決め部16、キャリッジ移動方向位置決め部17及び保持部15とがそれぞれ挿入されるガイド部孔14’、インク吐出方向位置決め部孔16’、キャリッジ移動方向位置決め部孔17’及び保持部孔15’が設けられていればよい。
【0046】
さらに、これまで図示した例では、インク吐出方向位置決め部孔16’と、保持部孔15’とが別個に設けられている場合を説明してきたが、この他にも、図8に示されるようにして、キャリッジ4と接合部材13とを位置決めしながら一体的に保持するようにすることもできる。ここで、図8は、インク吐出方向位置決め部孔16’と保持部孔15’とが共通の孔部80として構成された場合における、インク吐出方向位置決め部16及び保持部15の構成を拡大した状態で説明するための概略断面図であり、a)は、キャリッジ4と接合部材13とを接合する際の動作途中の状態を概略で示し、b)は、キャリッジ4と接合部材13とが接合された状態を概略で示す。ここに図示される実施例では、保持部15には、キャリッジ4と係合する爪形状部15aを当該キャリッジ4に対して上向きに設け、インク吐出方向位置決め部16には、当該インク吐出方向位置決め部の先端から下向きに傾斜する傾斜部16aを設けている。そして、これら上向きの爪形状部15aを有する保持部15と下向きの傾斜部16aを有するインク吐出方向位置決め部16とが共通の孔部80に嵌挿された際には、当該共通の孔部80の上下縁部をそれぞれ外方に付勢するように、インク吐出方向位置決め部16と保持部15との間隔が調整されており、その結果、インク吐出方向の位置決めがなされると共に、キャリッジ4と接合部材13とを一体化して保持する構成を採用している。この際にも、共通の孔部80にインク吐出方向位置決め部16が挿入される際には、下向きの傾斜部16aが案内として作用する。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、インクジェット方式の画像形成装置において好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0048】
4 キャリッジ
4a キャリッジ筐体
6 ベルトクランプ部
8 移動手段
13 接合部材
14 ガイド部
14’ ガイド部孔
15 保持部
15’ 保持部孔
16 インク吐出方向位置決め部
16’ インク吐出方向位置決め部孔
17 キャリッジ移動方向位置決め部
17’ キャリッジ移動方向位置決め部孔
【先行技術文献】
【特許文献】
【0049】
【特許文献1】特開平06−047978号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体にインクを吐出するインク吐出ヘッドが搭載され、記録媒体の搬送方向である副走査方向とは直交する主走査方向に往復移動可能なキャリッジと、
前記キャリッジを前記主走査方向に往復移動させるために、駆動源からの駆動力を前記キャリッジに伝達する移動手段と、を備えて成る画像形成装置において、
前記キャリッジと別体で構成され、前記キャリッジと前記移動手段とを接合するための接合部材が設けられ、
前記接合部材又は前記キャリッジの一方には、当該接合部材と当該キャリッジとを接続する際の案内となるガイド部と、前記接合部材と前記キャリッジとを位置決めするインク吐出方向位置決め部及びキャリッジ移動方向位置決め部と、前記キャリッジと前記接合部材とを一体的に保持するための保持部とが設けられ、
前記接合部材又は前記キャリッジの他方には、前記ガイド部、前記インク吐出方向位置決め部、前記キャリッジ移動方向位置決め部及び前記保持部とがそれぞれ挿入されるガイド部孔、インク吐出方向位置決め部孔、キャリッジ移動方向位置決め部孔及び保持部孔が設けられ、
前記インク吐出方向位置決め部及び前記キャリッジ移動方向位置決め部と、前記保持部とが協働することで、前記キャリッジと前記接合部材とが一体的に保持されること、
を特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記ガイド部の先端部に爪部を設け、当該爪部が前記ガイド部孔に引っ掛かる引掛け部分として構成されていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記接合部材の本体部からキャリッジの移動方向にそれぞれ突出する耳部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記保持部には、前記キャリッジと係合する爪形状部が前記キャリッジに対して下向きに設けられ、前記インク吐出方向位置決め部には、前記インク吐出方向位置決め部孔へのガイドとなる傾斜部であって、前記インク吐出方向位置決め部先端から上向きに傾斜する傾斜部が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記保持部孔と前記インク吐出方向位置決め部孔とが共通の孔部として設けられると共に、前記保持部には、前記キャリッジと係合する爪形状部が前記キャリッジに対して上向きに設けられ、前記インク吐出方向位置決め部には、前記共通の孔部へのガイドとなる傾斜部であって、前記インク吐出方向位置決め部先端から下向きに傾斜する傾斜部が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記キャリッジ移動方向位置決め部が円柱状のボス部として構成され、前記キャリッジ移動方向位置決め部孔が、当該ボス部が嵌挿される長孔であって、キャリッジに対して上下方向に延在する長孔として構成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記ボス部の外径に対して同心状のテーパ部分が、前記ボス部の先端部に形成されるように構成されることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記ガイド部が挿入される前記ガイド部孔と、当該ガイド部との間の間隙を埋めるためのスペーサ部材が前記ガイド部に設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記スペーサ部材が弾性部材であることを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記接合部材の最下端部に、ベルトクランプ部が配置されている方向に傾斜する本体傾斜部が設けられていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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