説明

画像形成装置

【課題】正帯電単層型電子写真感光体と接触帯電方式の帯電装置とを備えた画像形成装置であって、長寿命の正帯電単層型感光体と帯電ローラを備えた環境対応型画像形成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】正帯電単層型電子写真感光体と、前記感光体の表面を帯電するための接触帯電部材を有する帯電装置と、帯電された前記像担持体の表面を露光して、前記像担持体の表面に静電潜像を形成するための露光装置と、前記静電潜像をトナー像として現像するための現像装置と、前記トナー像を前記像担持体から被転写体へ転写するための転写装置とを備える画像形成装置であって、前記正帯電単層型電子写真感光体が導電性基体と感光層とを備えており、前記感光層が、電荷発生剤、電荷輸送剤、及び結着樹脂が同一層に含有される層であって、前記結着樹脂の降伏点歪みが9〜29%であること、並びに前記接触帯電部材が、厚み1mm〜3mmの導電層を有する帯電ローラであることを特徴とする、画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正帯電単層型電子写真感光体および接触帯電部材を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置の感光体としては、負帯電積層型感光体および正帯電単層型感光体が知られているが、後者の正帯電単層型感光体は厚膜化が比較的しやすいことから長寿命化に適した感光体であり、製造面からも、単層塗工であるため積層型に比べて容易かつ低コストである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、電子写真方式の画像形成装置において、環境配慮から、オゾンを大量に発生させるスコロトロン帯電方式(非接触方式)から接触帯電方式、例えば、ゴムローラを用いたローラ帯電が広まっている(例えば、特許文献2など参照)。感光体とロール間の微小空隙における放電によって帯電するローラ帯電はオゾン量の低減を可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−72511号公報
【特許文献2】特開平5−303259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
単層型感光体とローラ帯電を組み合わせれば、より環境対応型の電子写真設計が可能となると考えられるが、オゾン発生量の少ない接触帯電方式は主に負帯電積層型感光体を用いたシステムにて市場に広まっているものの、元々負帯電積層型感光体に比べてオゾン発生量の少ない正帯電単層型感光体を用いたシステムにおいては、従来からのスコロトロン帯電方式が未だ広く使用されている。
【0006】
しかし、昨今の環境意識の高まりにより、正帯電単層型感光体を用いたシステムにおいてもスコロトロン帯電方式で排出されるオゾン量は市場に受け入れられないものとなってきており、正帯電単層型感光体を用いたシステムにも接触帯電方式の採用が必要となっている。
【0007】
また、感光体の長寿命化は廃棄物の削減につながり、これも市場で広く望まれていることであるが、接触帯電方式を採用した場合、感光体膜削れの速度が促進され、寿命が半分以下になるという問題があった。さらに、感光体のみならず、接触帯電部材の寿命も大きな問題であった。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、長寿命の正帯電単層型感光体と帯電ローラを備えた環境対応型画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討した結果、下記構成を有する画像形成装置を用いることにより前記課題が解決することを見出し、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることによって本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明の一態様に係る画像形成装置は、正帯電単層型電子写真感光体と、前記感光体の表面を帯電するための接触帯電部材を有する帯電装置と、帯電された前記像担持体の表面を露光して、前記像担持体の表面に静電潜像を形成するための露光装置と、前記静電潜像をトナー像として現像するための現像装置と、前記トナー像を前記像担持体から被転写体へ転写するための転写装置とを備える画像形成装置であって、前記正帯電単層型電子写真感光体が導電性基体と感光層とを備えており、前記感光層が、電荷発生剤、電荷輸送剤、及び結着樹脂が同一層に含有される層であって、前記結着樹脂の降伏点歪みが9〜29%であること、並びに前記接触帯電部材が、厚み1mm〜3mmの導電層を有する帯電ローラであることを特徴とする。
【0011】
このような構成によれば、正帯電単層型電子写真感光体を用いるシステムにおいて接触帯電方式を採用することができ、長寿命の感光体および長寿命の帯電ローラを有する、かつてないほど長寿命の環境型画像形成装置を提供することが可能である。
【0012】
これは以下の理由によると考えられる。
【0013】
まず、本発明に係る感光体を用いることにより、耐磨耗性が向上し、感光体に負荷が大きくかかる接触帯電式システムにおいても、感光体の膜削れを抑制できる。
【0014】
そして、通常の帯電ローラは基本的に使用すればするほど、つまり通電時間が長いほど抵抗値が上昇してロール抵抗が限界値を超えた時点で寿命となるが、上記構成にすることにより、ローラの上限抵抗値まで長期にわたって多くの電流を流すことが可能となったためである。
【0015】
また、前記画像形成装置において、前記帯電ローラの初期電気抵抗値が10〜10Ωであることが好ましい。このような構成によれば、帯電ムラや感光体へのリーク(感光層の絶縁破壊)の発生なく安定した帯電が可能である。
【0016】
前記に加えて、前記画像形成装置において、前記導電層がイオン導電性ゴム層であることが好ましく、前記イオン導電性ゴムが、イオン導電剤を含有するエピクロルヒドリンゴムであることがさらに好ましい。このような構成によれば、帯電ローラの抵抗上昇をより抑えることができ、帯電ローラの長寿命をより確実にすることができる。
【0017】
さらに、前記画像形成装置において、前記正帯電単層型電子写真感光体の感光層と導電性基板の間に高抵抗層が設けられていることが好ましい。このような構成によれば、感光体が耐久により薄膜化した場合にでも、帯電ローラからのリークの発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、正帯電単層感光体と、オゾン発生量を低減できる帯電ローラとを備えた画像形成装置において、従来問題となっていた感光体の磨耗・膜削れなどを抑えて感光体の長寿命化を図りつつ、さらに帯電ローラの抵抗上昇を抑えることにより帯電ローラの長寿命化も図ることができる。すなわち、本発明の画像形成装置は低オゾンで優れた耐久性を達成した装置であり、環境対応性および産業利用性の観点からもきわめて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は本発明の実施形態に係る正帯電単層型電子写真感光体および帯電ローラを示す概略断面図である。
【図2】図2は本発明の実施形態に係る正帯電単層型電子写真感光体の構造を示す概略断面図である。
【図3】図3は本発明の実施形態に係る正帯電単層型電子写真感光体を備えた画像形成装置の構成を示す概略図である。
【図4】図4は試験例1における感光体の膜削れ量を示すグラフである。
【図5】図5は試験例1における、表面電位と帯電ローラ抵抗の関係を示すグラフである。
【図6】図6は試験例1における、帯電ローラ抵抗と印字枚数の関係を示すグラフである。
【図7】図7は試験例1における、寿命までの平均帯電電流と寿命時の帯電ローラの抵抗値の関係を示すグラフである。
【図8】図8は試験例1における、印字枚数と感光体の帯電電流値との関係を示すグラフである。
【図9】図9は試験例1における、印字枚数と感光体の電荷量との関係を示すグラフである。
【図10】図10は試験例2における、感光体の膜削れ量と感光体に含有される結着樹脂の降伏点歪みの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施形態について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0021】
[画像形成装置]
本実施形態に係る画像形成装置は、正帯電単層型電子写真感光体と、前記感光体の表面を帯電するための接触帯電部材を有する帯電装置と、帯電された前記像担持体の表面を露光して、前記像担持体の表面に静電潜像を形成するための露光装置と、前記静電潜像をトナー像として現像するための現像装置と、前記トナー像を前記像担持体から被転写体へ転写するための転写装置とを備える画像形成装置であって、前記正帯電単層型電子写真感光体が導電性基体と感光層とを備えており、前記感光層が、電荷発生剤、電荷輸送剤、及び結着樹脂が同一層に含有される層であって、前記結着樹脂の降伏点歪みが9〜29%であること、並びに前記接触帯電部材が、厚み1mm〜3mmの導電層を有する帯電ローラであることを特徴とする。
【0022】
(帯電装置)
本実施形態において用いられる帯電装置は、前記感光体の表面を帯電するための接触帯電部材を有する。このような接触帯電部材として、厚み1〜3mmの導電層を有する接触方式の帯電ローラ(ゴムロール)を用いる。さらに、前記帯電ローラの外径は特に限定されないが、直径8〜14mm程度である。この帯電ローラが感光体ドラムに接触したまま、感光体ドラムの回転に従属して回転し、感光体ドラムの周面(表面)を帯電させる。
【0023】
より具体的な帯電ローラの構成としては、導電層の厚みおよび外径が前記範囲である限り、特に限定はされないが、例えば、回転可能に軸支された芯金と、その表面部(すなわち前記芯金の上)に形成された(イオン)導電層と、前記芯金に電圧を印加する電圧印加手段とを備えたもの等が挙げられる。このような帯電ローラを備えた帯電装置は、前記電圧印加手段によって、前記芯金に電圧を印加することによって、前記導電層を介して接触する感光体ドラムの表面を帯電させることができる。
【0024】
前記導電層の厚みは、上述したように1.0〜3.0mmである。導電層の厚みが1mm未満であると、帯電ローラの抵抗がすぐ限界値に達してしまうため、本発明の効果が得られない。一方、導電層の厚みが3.0mmを超えると、押圧力により変形したり、製造時の形状が安定しないなどの弊害があるためであるため好ましくない。
【0025】
本実施形態において、前記電圧印加手段は、初期(印字開始時)には帯電ローラの帯電電流値がおよそ20〜30μA程度となるように電圧を印加するが、印字枚数が増えるにつれて(感光体ドラムが削れていくにつれて)感光体の静電容量が大きくなるため、帯電ローラの抵抗が上限に達する頃(印字枚数およそ20万枚を超える頃)には、帯電ローラの帯電電流値はおよそ80〜100μA程度となっている。印字を何万枚と重ねて感光体が削れてしまうと、帯電ローラに多くの電流を流さないと感光体を帯電させることはできないが、従来の帯電ローラでは帯電ローラに80〜100μAもの大きな電流を通電すると早期に抵抗値が上昇してしまうため、このような電流値で長期間使用することができなかった。これに対し、本実施形態では帯電ローラに長期間多くの電流を流すことができるため、この点においてもきわめて有利である。
【0026】
通常、帯電ローラは抵抗値が10Ωを超えるとその表面電位が低下するため、抵抗値が約10Ωを超えた時点で該帯電ローラは寿命となる。これが帯電ローラの上限抵抗とされる。本実施形態では、その寿命となった時点の帯電ローラの帯電電流値が、印字開始前(印字0枚)の初期帯電電流値の3〜5倍の範囲となるまで、電圧を印加し続けることができる。
【0027】
このような帯電ローラを用いることにより、帯電ローラの寿命が大幅に伸び、かつ従来システムよりも多くの電流を長期間帯電ローラに流すことができるため、長寿命の画像形成装置を得ることができる。
【0028】
さらに、前記導電層はイオン導電性のゴムで構成されていることが好ましい。
【0029】
本実施形態において用いられ得る具体的なゴム材料としては、例えば、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム、ニトリルゴム(NBR)、CRゴム等が挙げられる。特に好ましく用いられるゴム材料としては、耐オゾン性、低温特性、導電均一性(場所による抵抗の差が少ない)の観点から、エピクロルヒドリンゴム、ニトリルゴム(NBR)等が挙げられる。
【0030】
本実施形態では、さらに前記ゴム材料にイオン導電剤を加えることによって、イオン導電性ゴムとして導電層に用いる。イオン導電剤としては、本発明が属する分野において用いられる公知のイオン導電剤を特に限定なく用いることができるが、具体的には、例えば、リチウムイオン、テトラブチルアンモニウムなどが挙げられる。ゴム材料にイオン導電剤を加える場合、その配合量は、ゴム材料100質量部に対して、通常1〜5質量部、好ましくは1〜3質量部である。
【0031】
さらに、導電層には、カーボンブラック、導電性(金属)フィラーなどを添加するとより効果を発揮する。
【0032】
なお、導電層はソリッドタイプであっても、発泡タイプであってもよいが、ソリッドタイプである方が帯電ムラを生じにくいため好ましく用いられる。
【0033】
導電層の表面には樹脂コートを施してもよい。そのような樹脂コートには、例えば、ウレタンやナイロンなどの樹脂を用いることができる。樹脂コートを表面に施す場合、その樹脂コートの厚みは、通常、10〜100μm程度である。ただし、導電層の表層に必ず樹脂コートを施す必要はなく、導電層はチューブまたは単層構造であって、その表層をイソシアネート処理などによって化学処理して使用することも可能である。
【0034】
また、前記電圧印加手段で印加する電圧は、直流電圧のみであることが好ましい。そうすることによって、後述の正帯電単層型電子写真感光体を用いても、感光層の摩耗量をより少なくすることができる。具体的には、交流電圧や直流電圧に交流電圧を重畳した重畳電圧を、帯電ローラに印加した場合より、前記帯電ローラに直流電圧のみを印加した場合のほうが、感光層の摩耗量を少なくすることができる。
【0035】
また、交流電圧を印加すると、帯電による像担持体の表面(周面)の電位を均一化することができる傾向があるが、上記画像形成装置では、非接触帯電方式ではなく、接触帯電方式の帯電装置を用いているので、直流電圧のみを印加しても、均一に帯電できると考えられる。よって、前記帯電ローラに直流電圧のみを印加することによって、好適な画像を形成することができ、さらに、感光層の摩耗量を低減させることができると考えられる。
【0036】
(感光体)
本実施形態において用いられる正帯電単層型電子写真感光体(以下、単に「感光体」や「単層型感光体」ともいう。)は、導電性基体と感光層とを備えており、前記感光層が、電荷発生剤、電荷輸送剤、及び結着樹脂が同一層に含有される層であって、前記結着樹脂の降伏点歪みが9〜29%(あるいは、感光体表層の降伏点歪みが5〜25%)であることを特徴とする。
【0037】
降伏点歪みが前記範囲にある樹脂を結着樹脂として用いると、感光層としての性能が低下する傾向があるものの、感光層の耐摩耗性が向上する。
【0038】
一方、接触帯電方式の帯電装置は、上述したように、感光体に接触して帯電することから、感光体への負荷が大きくなる傾向があるものの、感光体に接触して帯電するので、感光層を好適に帯電できるように調整することができると考えられる。このことから、感光体として、感度等が仮に多少低下した感光層を備えるものを用いた場合であっても、好適に帯電できる。
【0039】
また、降伏点歪みが前記範囲にある樹脂を結着樹脂として用いると、上述したように、感光層の耐摩耗性が向上するだけではなく、感光層とその下層、例えば、導電性基体等との結着性の低下が小さく、感光層の剥離の発生を充分に抑制できると考えられる。
【0040】
以上より、この感光体と上述したような帯電ローラを組み合わせることにより、好適な画像を長期間にわたって形成でき、きわめて高い耐久性を有する画像形成装置を得ることができる。
【0041】
ここで、降伏点歪みについて説明する。サンプル材料の両端を2個のチャックで固定し、一方のチャックを一定速度で移動させることでサンプルを伸張させ、応力を検出し、応力と歪みの関係を曲線で示した場合、歪みと応力は比例関係にあるが、歪みが大きくなるにつれて粘性成分による緩和が生じ、応力の極大値をとる。この点を降伏点とする。そして、降伏点歪みとは、降伏点におけるサンプルの歪みの程度をあらわす値である。この降伏点歪みは、本実施形態においては公知の方法によって測定され得、例えば、後述の実施例において示すような粘弾性測定装置などを用いて測定することができる。
【0042】
本実施形態において用いられる感光体は、前記構成を満たしていれば、すなわち、導電性基体と感光層とを備えており、前記感光層が、電荷発生剤、電荷輸送剤、及び結着樹脂が同一層に含有される層であって、前記結着樹脂の降伏点歪みが9〜29%(あるいは、感光体表層の降伏点歪みが5〜25%)である単層型電子写真感光体であれば、その他は特に限定されない。
【0043】
具体的には、例えば、図2に示すような、導電性基体12と感光層14とを備え、前記感光層14が、電荷発生剤、電荷輸送剤、及び結着樹脂が同一層に含有される層である単層型感光体10であればよく、感光層及び導電性基体以外の層をさらに備えていてもよい。
【0044】
例えば、図2(a)に示すように、前記導電性基体12上に前記感光層14を直接備えていてもよいし、図2(b)に示すように、前記導電性基体12と前記感光層14との間に中間層16を備えていてもよい。また、図2(a)や図2(b)に示すように、前記感光層14が最外層となって露出していてもよいし、図2(c)に示すように、前記感光層14上に保護層18を備えていてもよい。
【0045】
また、前記単層型感光体10としては、上述したように、特に限定されないが、図2(b)に示すような、前記導電性基体12と前記感光層14との間に中間層16を備え、その中間層16が、前記導電性基体12の抵抗値よりも高い抵抗値を有する高抵抗層であるものが好ましい。そうすることによって、感光体が耐久により薄膜化した場合に起こりうる帯電装置の帯電ローラからのリークの発生を抑制することができる。
【0046】
前記高抵抗層としては、前記導電性基体12の抵抗値よりも高い抵抗値を有し、前記リークの発生を抑制できるものであれば、特に限定されないが、例えば、アルマイト層、ヨウ化アルミニウム層、酸化スズ層、酸化インジウム層、及び酸化チタン層等が挙げられる。
【0047】
前記高抵抗層の層厚としては、前記高抵抗層の材質等によっても異なるが、例えば、1〜3μmであることが好ましい。
【0048】
以下に、本実施形態における正帯電単層型電子写真感光体の導電性基体および感光層について詳述する。
【0049】
[導電性基体]
前記導電性基体は、電子写真感光体の導電性基体として用いることができるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、導電性を有する材料で少なくとも表面部が構成されるもの等が挙げられる。すなわち、具体的には、例えば、導電性を有する材料からなるものであってもよいし、プラスチック材料等の表面を、導電性を有する材料で被覆されたものであってもよい。また、導電性を有する材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、錫、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドニウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、真鍮等が挙げられる。また、導電性を有する材料としては、前記導電性を有する材料を1種で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて、例えば、合金等として用いてもよい。また、前記導電性基体としては、上記の中でも、アルミニウム又はアルミニウム合金からなることが好ましい。そうすることによって、より好適な画像を形成することができる感光体を提供することができる。このことは、感光層から導電性基体への電荷の移動が良好であることによると考えられる。
【0050】
また、前記導電性基体の形状は、特に限定されない。具体的には、例えば、シート状であっても、ドラム状であってもよい。すなわち、適用する画像形成装置の構造に合わせて、シート状であっても、ドラム状であってもよく、特に限定されない。
【0051】
[感光層]
本実施形態で用いられる感光層は、単層型の電子写真感光体の感光層として用いることができるものであり、この感光層には、上述したように、電荷発生剤、電荷輸送剤、及び結着樹脂が含有されている。また、感光層の層構造としては、具体的には、例えば、上述したような、図2に示す感光層の構造等が挙げられる。
【0052】
また、前記感光層に含有される、電荷発生剤、電荷輸送剤、及び結着樹脂等は、特に限定されないが、例えば、以下に示すものを用いることができる。
【0053】
(電荷発生剤)
電荷発生剤としては、単層型の電子写真感光体の電荷発生剤として用いることができるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、下記式(1)又は式(2)で表されるX型フタロシアニン(x−H2Pc)、Y型オキソチタニルフタロシアニン(Y−TiOPc)、ペリレン顔料、ビスアゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、トリスアゾ顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、セレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、硫化カドミウム、アモルファスシリコン等の無機光導電材料の粉末、ピリリウム塩、アンサンスロン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料、キナクリドン系顔料等が挙げられる。
【0054】
【化1】

【0055】
【化2】

【0056】
また、前記電荷発生剤は、所望の領域に吸収波長を有するように、前記各電荷発生剤を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。さらに、前記各電荷発生剤のうち、特に半導体レーザ等の光源を使用したレーザビームプリンタやファクシミリ等のデジタル光学系の画像形成装置には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体が必要となるため、例えば、無金属フタロシアニンやオキソチタニルフタロシアニン等のフタロシアニン系顔料が好適に用いられる。なお、上記フタロシアニン系顔料の結晶形については特に限定されず、種々のものが使用される。また、ハロゲンランプ等の白色の光源を使用した静電式複写機等のアナログ光学系の画像形成装置には、可視領域に感度を有する感光体が必要となるため、例えば、ペリレン顔料やビスアゾ顔料等が好適に用いられる。
【0057】
(電荷輸送剤)
電荷輸送剤としては、単層型の電子写真感光体の感光層に含まれる電荷輸送剤として用いることができるものであれば、特に限定されない。また、電荷輸送剤としては、一般的に、正孔輸送剤と電子輸送剤とが挙げられる。
【0058】
前記正孔輸送剤としては、単層型の電子写真感光体の感光層に含まれる正孔輸送剤として用いることができるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、ベンジジン誘導体、2,5−ジ(4−メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセン等のスチリル系化合物、ポリビニルカルバゾール等のカルバゾール系化合物、有機ポリシラン化合物、1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン等のピラゾリン系化合物、ヒドラゾン系化合物、トリフェニルアミン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、トリアゾール系化合物等の含窒素環式化合物、縮合多環式化合物等が挙げられる。この中でも、トリフェニルアミン系化合物が好ましく、下記式(3)〜(11)で表されるトリフェニルアミン系化合物がより好ましい。
【0059】
【化3】

【0060】
【化4】

【0061】
【化5】

【0062】
【化6】

【0063】
【化7】

【0064】
【化8】

【0065】
【化9】

【0066】
【化10】

【0067】
【化11】

【0068】
また、前記正孔輸送剤としては、前記例示した各正孔輸送剤を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
また、前記電子輸送剤としては、単層型の電子写真感光体の感光層に含まれる電子輸送剤として用いることができるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、ナフトキノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、アントラキノン誘導体、アゾキノン誘導体、ニトロアントアラキノン誘導体、ジニトロアントラキノン誘導体等のキノン誘導体、マロノニトリル誘導体、チオピラン誘導体、トリニトロチオキサントン誘導体、3,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン誘導体、ジニトロアントラセン誘導体、ジニトロアクリジン誘導体、テトラシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、ジニトロベンゼン、ジニトロアントラセン、ジニトロアクリジン、無水コハク酸、無水マレイン酸、ジブロモ無水マレイン酸等が挙げられる。この中でも、キノン誘導体が好ましく、下記式(12)〜(14)で表されるキノン誘導体がより好ましい。
【0070】
【化12】

【0071】
【化13】

【0072】
【化14】

【0073】
また、前記電子輸送剤としては、前記例示した各電子輸送剤を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
(結着樹脂)
結着樹脂としては、上述したように、降伏点歪みが9〜29%であり、単層型の電子写真感光体の結着樹脂として用いることができるものであれば、特に限定されない。降伏点歪みがこの範囲内である結着樹脂を用いれば、感光体の膜削れはより抑制される。降伏点歪みが9%未満であると感光体の膜は削れやすくなり、また29%を超えると付着物による画像の不具合などが生じる。なお、この結着樹脂の降伏点歪みが9〜29%の範囲であれば、感光体表層の降伏点歪みは5〜25%程度の範囲となると考えられる。よって、感光体表層の降伏点歪みがその範囲となるように感光体を調製することによっても前記効果を得ることができると考えられるが、結着樹脂の降伏点歪みを上記範囲に調節する方が簡易であるため好ましい。
【0075】
降伏点歪みが9〜29%である結着樹脂としては、降伏点歪みが前記範囲内であればどのような樹脂を用いてもよいが、例えば、降伏点歪みが前記範囲である、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂などの樹脂を用いることができ、好ましくは、正孔輸送剤や電子輸送剤との相溶性などの観点からポリカーボネート樹脂などを用いる。
【0076】
ポリカーボネート樹脂としては、例えば、下記式(15)〜(17)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0077】
【化15】

【0078】
【化16】

【0079】
【化17】

【0080】
式(17)中、「50」という数字は、共重合比50%で共重合されていることを示す。具体的には、式(17)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネート樹脂は、式(15)で表される繰り返し単位と式(16)で表される繰り返し単位とが、共重合比50%で共重合されている樹脂である。
【0081】
また、ポリカーボネート樹脂における繰り返し単位数は、特に限定されないが、降伏点歪みが9〜29%となるような繰り返し単位数であることが好ましい。
【0082】
また、前記ポリカーボネート樹脂を結着樹脂として用いる場合、その粘度平均分子量が50000〜80000であることが好ましく、55000〜75000であることがより好ましい。
【0083】
前記ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が低すぎると、前記ポリカーボネート樹脂の耐摩耗性を高めるという効果を充分に発揮できず、感光層が摩耗しやすくなる傾向がある。また、前記ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が高すぎると、溶剤に溶解しにくくなって、感光層を形成するための塗布液等を調製しにくくなる等、好適な感光層を形成することが困難になり、付着物による画像不具合が生じる傾向がある。
【0084】
また、前記結着樹脂としては、前記ポリカーボネート樹脂からなることが好ましいが、前記ポリカーボネート樹脂以外の樹脂を含有していてもよい。前記ポリカーボネート樹脂以外の樹脂としては、感光層の結着樹脂として用いられるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、スチレン系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、アクリル共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂や、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、その他架橋性の熱硬化性樹脂、さらにエポキシアクリレート樹脂、ウレタン−アクリレート共重合樹脂等の光硬化性樹脂等が挙げられる。
【0085】
(添加剤)
前記感光体には、電子写真特性に悪影響を与えない範囲で、前記電荷発生剤、前記電荷輸送剤、及び結着樹脂以外の各種添加剤を含有してもよい。前記添加剤としては、具体的には、例えば、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、1重項クエンチャー、紫外線吸収剤等の劣化防止剤、軟化剤、可塑剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、アクセプター、ドナー、界面活性剤、及びレベリング剤等が挙げられる。また、感光層の感度を向上させるために、例えばテルフェニル、ハロナフトキノン類、アセナフチレン等の公知の増感剤を電荷発生剤と併用してもよい。
【0086】
[単層型感光体の製造方法]
次に、単層型感光体の製造方法について説明する。
【0087】
前記単層型感光体は、前記電荷発生剤、前記電荷輸送剤、前記結着樹脂、及び必要に応じて各種添加剤等を溶剤に溶解又は分散させた塗布液を、塗布等によって、前記導電性基体上に塗布し、乾燥することによって、製造することができる。前記塗布方法としては、特に限定されないが、例えば、ディップコート法等が挙げられる。また、前記乾燥方法としては、例えば、80〜150℃で15〜120分間の条件で熱風乾燥する方法等が挙げられる。
【0088】
前記単層型感光体において、前記電荷発生剤、前記電荷輸送剤、及び前記結着樹脂の各含有量は、適宜選定され、特に限定されない。具体的には、例えば、前記電荷発生剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、0.1〜50質量部であることが好ましく、0.5〜30質量部であることがより好ましい。また、前記電子輸送剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、5〜100質量部であることが好ましく、10〜80質量部であることがより好ましい。また、前記正孔輸送剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、5〜500質量部であることが好ましく、25〜200質量部であることがより好ましい。さらに、正孔輸送剤と電子輸送剤との総量、すなわち、前記電荷輸送剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、20〜500質量部であることが好ましく、30〜200質量部であることがより好ましい。また、前記感光層に電子受容性化合物を含有させる場合は、前記電子受容性化合物の含有量が結着樹脂100質量部に対して0.1〜40質量部であることが好ましく、0.5〜20質量部であることがより好ましい。
【0089】
また、前記単層型感光体の感光層の厚さは、感光層として充分に作用することができれば、特に限定されない。具体的には、例えば、5〜100μmであることが好ましく、10〜50μmであることが好ましい。
【0090】
また、前記塗布液に含有される溶剤としては、前記各成分を溶解又は分散させることができれば、特に限定されない。具体的には、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類、n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族系炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらの溶剤は、前記例示した溶剤を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0091】
なお、感光層と導電性基板との間に、前記高抵抗層(中間層)を設ける場合の高抵抗層の作成方法としては、前記導電性基体上に前記高抵抗層を形成することができれば、特に限定されない。具体的には、例えば、導電性基体がアルミニウム素管で、高抵抗層がアルマイト層である場合、アルミニウム素管に陽極酸化処理を施す方法等が挙げられる。より具体的には、例えば、硫酸水溶液等を電解液として用いた陽極酸化処理等が挙げられる。その際、処理時間としては、例えば、0.5〜300分間程度であることが好ましい。また、電解液として硫酸水溶液を用いる場合、その濃度としては、例えば、0.1〜80質量%程度であることが好ましい。また、陽極酸化処理時の化成電圧としては、例えば、10〜200V程度であることが好ましい。
【0092】
(画像形成装置)
本実施形態の画像形成装置としては、電子写真方式の画像形成装置であって、前記正帯電単層型電子写真感光体と、前記接触帯電方式の帯電装置とを備えたものであれば、特に限定されない。実施形態具体的な一例としては、例えば、以下に具体的に説明するような複数色のトナーを用いるタンデム方式のカラー画像形成装置が挙げられる。
【0093】
なお、本実施形態に係る電子写真感光体を備えた画像形成装置は、各表面上にそれぞれ異なった各色のトナーによるトナー像を形成させるために、所定方向に並設された、複数の感光体と、各感光体に対向して配置され、表面にトナーを担持して搬送し、搬送されたトナーを、前記各感光体の表面にそれぞれ供給する、現像ローラを備えた複数の現像装置とを備える。
【0094】
図3は、本発明の実施形態に係る正帯電単層型電子写真感光体を備えた画像形成装置の構成を示す概略図である。ここでは、前記画像形成装置1としては、カラープリンタ1を例に挙げて説明する。
【0095】
このカラープリンタ1は、図3に示すように、箱型の機器本体1aを有している。この機器本体1a内には、用紙Pを給紙する給紙部2と、この給紙部2から給紙された用紙Pを搬送しながら当該用紙Pに画像データ等に基づくトナー像を転写する画像形成部3と、この画像形成部3で用紙P上に転写された未定着トナー像を用紙Pに定着する定着処理を施す定着部4とが設けられている。さらに、前記機器本体1aの上面には、前記定着部4で定着処理の施された用紙Pが排紙される排紙部5が設けられている。
【0096】
前記給紙部2は、給紙カセット121、ピックアップローラ122、給紙ローラ123,124,125、及びレジストローラ126を備えている。給紙カセット121は、機器本体1aから挿脱可能に設けられ、各サイズの用紙Pを貯留する。ピックアップローラ122は、給紙カセット121の図3に示す左上方位置に設けられ、給紙カセット121に貯留されている用紙Pを1枚ずつ取り出す。給紙ローラ123,124,125は、ピックアップローラ122によって取り出された用紙Pを用紙搬送路に送り出す。レジストローラ126は、給紙ローラ123,124,125によって用紙搬送路に送り出された用紙Pを一時待機させた後、所定のタイミングで画像形成部3に供給する。
【0097】
また、給紙部2は、機器本体1aの図3に示す左側面に取り付けられる不図示の手差しトレイとピックアップローラ127とをさらに備えている。このピックアップローラ127は、手差しトレイに載置された用紙Pを取り出す。ピックアップローラ127によって取り出された用紙Pは、給紙ローラ123,125によって用紙搬送路に送り出され、レジストローラ126によって、所定のタイミングで画像形成部3に供給される。
【0098】
前記画像形成部3は、画像形成ユニット7と、この画像形成ユニット7によってその表面(接触面)にコンピュータ等から電送された画像データに基づくトナー像が1次転写される中間転写ベルト31と、この中間転写ベルト31上のトナー像を給紙カセット121から送り込まれた用紙Pに2次転写させるための2次転写ローラ32とを備えている。
【0099】
前記画像形成ユニット7は、上流側(図3では右側)から下流側に向けて順次配設されたブラック用ユニット7Kと、イエロー用ユニット7Yと、シアン用ユニット7Cと、マゼンタ用ユニット7Mとを備えている。各ユニット7K,7Y,7C及び7Mは、それぞれの中央位置に像担持体としての感光体ドラム37が矢符(時計回り)方向に回転可能に配置されている。そして、各感光体ドラム37の周囲には、帯電装置39、露光装置38、現像装置71、不図示のクリーニング装置及び除電手段としての除電器等が、回転方向上流側から順に各々配置されている。なお、前記感光体ドラム37としては、前記電子写真感光体を用いる。
【0100】
帯電装置39は、矢符方向に回転されている感光体ドラム37の周面を均一に帯電させる。なお、前記帯電装置39としては、上述したような接触帯電方式の帯電装置を用いる。
【0101】
露光装置38は、いわゆるレーザ走査ユニットであり、帯電装置39によって均一に帯電された感光体ドラム37の周面に、上位装置であるパーソナルコンピュータ(PC)から入力された画像データに基づくレーザ光を照射し、感光体ドラム37上に画像データに基づく静電潜像を形成する。現像装置71は、静電潜像が形成された感光体ドラム37の周面にトナーを供給することで、画像データに基づくトナー像を形成させる。そして、このトナー像が中間転写ベルト31に1次転写される。クリーニング装置は、中間転写ベルト31へのトナー像の1次転写が終了した後、感光体ドラム37の周面に残留しているトナーを清掃する。除電器は、1次転写が終了した後、感光体ドラム37の周面を除電する。クリーニング装置及び除電器によって清浄化処理された感光体ドラム37の周面は、新たな帯電処理のために帯電装置へ向かい、新たな帯電処理が行われる。
【0102】
中間転写ベルト31は、無端状のベルト状回転体であって、表面(接触面)側が各感光体ドラム37の周面にそれぞれ当接するように駆動ローラ33、従動ローラ34、バックアップローラ35、及び1次転写ローラ36等の複数のローラに架け渡されている。また、中間転写ベルト31は、各感光体ドラム37と対向配置された1次転写ローラ36によって感光体ドラム37に押圧された状態で、前記複数のローラによって無端回転するように構成されている。駆動ローラ33は、ステッピングモータ等の駆動源によって回転駆動し、中間転写ベルト31を無端回転させるための駆動力を与える。従動ローラ34、バックアップローラ35、及び1次転写ローラ36は、回転自在に設けられ、駆動ローラ33による中間転写ベルト31の無端回転に伴って従動回転する。これらのローラ34,35,36は、駆動ローラ33の主動回転に応じて中間転写ベルト31を介して従動回転するとともに、中間転写ベルト31を支持する。
【0103】
1次転写ローラ36は、1次転写バイアス(トナーの帯電極性とは逆極性)を中間転写ベルト31に印加する。そうすることによって、各感光体ドラム37上に形成されたトナー像は、各感光体ドラム37と1次転写ローラ36との間で、駆動ローラ33の駆動により矢符(反時計回り)方向に周回する中間転写ベルト31に重ね塗り状態で順次転写(1次転写)される。
【0104】
2次転写ローラ32は、トナー像と逆極性の2次転写バイアスを用紙Pに印加する。そうすることによって、中間転写ベルト31上に1次転写されたトナー像は、2次転写ローラ32とバックアップローラ35との間で用紙Pに転写され、これによって、用紙Pにカラーの転写画像(未定着トナー像)が転写される。
【0105】
前記定着部4は、画像形成部3で用紙Pに転写された転写画像に定着処理を施すものであり、通電発熱体により加熱される加熱ローラ41と、この加熱ローラ41に対向配置され、周面が加熱ローラ41の周面に押圧当接される加圧ローラ42とを備えている。
【0106】
そして、前記画像形成部3で2次転写ローラ32により用紙Pに転写された転写画像は、当該用紙Pが加熱ローラ41と加圧ローラ42との間を通過する際の加熱による定着処理で用紙Pに定着される。そして、定着処理の施された用紙Pは、排紙部5へ排紙されるようになっている。また、本実施形態のカラープリンタ1では、定着部4と排紙部5との間の適所に搬送ローラ6が配設されている。
【0107】
排紙部5は、カラープリンタ1の機器本体1aの頂部が凹没されることによって形成され、この凹没した凹部の底部に排紙された用紙Pを受ける排紙トレイ51が形成されている。
【0108】
前記画像形成装置1は、以上のような画像形成動作によって、用紙P上に好適な画像形成を行うことができる。そして、上記のようなタンデム方式の画像形成装置では、像担持体として前記感光体が備えられており、また帯電装置として前記帯電ローラが備えられているため、接触方式の帯電装置を備えていても感光層の摩耗量が少ない等の耐久性の高い画像形成装置が得られる。
【実施例】
【0109】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
【0110】
試験例1:
[実施例1]
京セラミタ株式会社製のFS−C5300DN(A4カラープリンタ)の感光体および帯電装置を以下のように改造して画像形成装置を得た。
(感光体)
正帯電単層感光体 直径:30mm、膜厚:30μm
電荷発生剤(上記式(1)で表される無金属フタロシアニン)5質量部、正孔輸送剤(HTM−3、前記化学式(5))50質量部、電子輸送剤(ETM−2、前記化学式(13))35質量部、上記式(15)に示した結着樹脂(粘度平均分子量75000、降伏点歪み29%)100質量部をテトラヒドロフラン800質量部とともにボールミルにて50時間混合分散し、感光体塗布液を調整した。ついでこの塗布液を導電性基板上にディップコート法にて塗布し、その後100℃で40分間熱風乾燥し、膜厚30μmの感光体(直径30mm)を得た。
(帯電装置)
帯電ローラ:
直径φ12mm、導電層の厚み:2mm
導電層:エピクロルヒドリンゴム(東海ゴム工業株式会社製)製、
イオン導電剤:含有
樹脂コート:ナイロン系樹脂(厚み約10μm)
【0111】
[実施例2]
帯電ローラの導電層の厚みを1mmに変更した以外は、実施例1と同様にして画像形成装置を得た。
【0112】
[実施例3]
帯電ローラの導電層の厚みを3mmに変更した以外は、実施例1と同様にして画像形成装置を得た。
【0113】
[比較例1]
京セラミタ株式会社製のFS−C5300DN(A4カラープリンター)の感光体および帯電装置を以下のように改造して画像形成装置を得た。
(感光体)
正帯電単層感光体 直径:30mm、膜厚:30μm
電荷発生剤(上記式(1)で表される無金属フタロシアニン)5質量部、正孔輸送剤(HTM−3、前記化学式(5))50質量部、電子輸送剤(ETM−2、前記化学式(13))35質量部、上記式(15)に示した結着樹脂(粘度平均分子量47000、降伏点歪み7.8%)100質量部をテトラヒドロフラン800質量部とともにボールミルにて50時間混合分散し、感光体塗布液を調整した。ついでこの塗布液を導電性基板上にディップコート法にて塗布し、その後100℃で40分間熱風乾燥し、膜厚30μmの感光体(直径30mm)を得た。
(帯電装置)
イオン導電層(エピクロルヒドリン層)の厚みを0.5mmとし、その他導電層(SBR
:スチレンブタジエンゴム層)(東海ゴム工業株式会社製)1.5mmを加えた以外は、実施例1と同様の帯電ローラを用いた。
【0114】
[評価]
上記の画像形成装置を用いて、以下の評価試験を行った。
【0115】
(感光体膜削れ量)
上記のカラープリンタにて、A4転写紙に印字率4%となる原稿を連続印字し、定期的に感光体の膜厚を測定することで印字枚数と感光体膜削れ量との関係を調べた。膜厚測定にはフィッシャーインストルメンツ製MMS3AM型を使用した。結果を図4に示す。なお、図中、削れ量許容限界とは、帯電電圧で感光層が絶縁破壊を起こす限界の膜厚のことをいう。
【0116】
比較例1の画像形成装置と比較して、実施例1の画像形成装置においては、印字枚数20万枚を超えても許容限界を超えることはなく、本発明の実施形態に係る画像形成装置はきわめて長寿命であったことがわかった。
【0117】
(上限抵抗値)
抵抗値を表1に示すような抵抗値に変えた以外は実施例1と同じ帯電ローラを用いて、帯電ローラと表面電位の関係を調査した。帯電ローラの抵抗値は、感光層を塗布しないアルミ管に帯電ローラを500gfで押圧し、170mm/sの周速で回転させた状態で、500Vの電圧を帯電ローラの軸に印加したときの電流値から換算した。電圧はTREK社製高圧電源 model 610Bにて印加し、また、電流値は横河メータ&インスツルメンツ製小型携帯電流計2051型を直列に接続して計測した。表面電位はTREK社製表面電位計 model 344にて測定した。このとき、帯電ローラに印加する電圧は1.3KVに固定した。
【0118】
結果を表1および図5に示す。
【0119】
【表1】

【0120】
表1および図5より明らかなように、帯電ローラの抵抗値が10Ωを超えると表面電位が低下した。帯電ローラの抵抗は周、軸方向でばらつきがあり、10Ωを超えると抵抗のバラツキが表面電位のばらつきとなって現れ易くなるため、帯電ローラの抵抗の上限は10Ωであることがわかった。
【0121】
(印字枚数と帯電ローラ抵抗値)
上記のカラープリンタにて、A4転写紙に印字率4%となる原稿を連続印字し、定期的に帯電ローラの抵抗値を測定し、印字枚数と帯電ローラの抵抗値の上昇との関係を調べた。帯電ローラの抵抗測定方法は前述の通りである。結果を図6に示す。
【0122】
本評価試験においても、比較例1の画像形成装置では印字枚数10万枚を達成する前に帯電ローラ抵抗が上限抵抗に達したが、実施例1の画像形成装置では、印字枚数が20万枚を超えても帯電ローラ抵抗が上限に達さないほど長寿命であることがわかった。
【0123】
(帯電ローラの電流値と抵抗値)
実施例1〜3および比較例1の帯電ローラを直径30mmのアルミ管に押圧した状態で、170mm/sの周速で回転させる。TREK社製高圧電源 model 610Bにて帯電ローラの軸に一定の電流を流し、130時間後(200k枚相当)までの帯電ローラの抵抗値を測定した。帯電ローラの測定方法は前述の通りである。結果を表2および図7に示す。
【0124】
【表2】

【0125】
表2および図7によって示されたように、肉厚0.5mmの帯電ローラの場合は平均電流値30μA以上通電するとすぐに上限抵抗(7.0logΩ)に達するが、肉厚1.0〜3.0mmであれば、平均電流値60μA以上通電しても上限抵抗に達さないことがわかった。平均電流値が高いほど多くの印字枚数を達成できるので、帯電ローラの導電層の厚みは1〜3mmが最適であることがわかった。
【0126】
(感光体の帯電電流および電荷量)
前述のカラープリンタにて、A4転写紙に印字率4%となる原稿を連続印字し、定期的に帯電ローラに流れる(=感光体に流れる)電流値を測定した。実験機の高圧基板と帯電ローラの間に直列に横河メータ&インスツルメンツ製小型携帯電流計2051型を直列に接続して、印字中いつでも帯電電流がモニタできる状態にて測定した。
【0127】
結果を表3(帯電電流)と表4(電荷量)、および図8(帯電電流)と図9(電荷量)に示す。なお、ここで電荷量は「帯電長226mm」感光体周速「170mm/s」の条件において算出した。
【0128】
【表3】

【0129】
【表4】

【0130】
表3〜4および図8〜9より、実施例1の画像形成装置では、印字枚数20万枚までの感光体の平均電流値が約45μAであった。すなわち、感光体の膜削れとともに電流値が増加するが、本発明に係る画像形成装置によれば、印字枚数が20万枚を超えてはじめて、平均電流値が45μAに達するため、非常に多くの電流を流せる(多大な印字枚数を達成できる)ことがわかった。
【0131】
試験例2(感光体の降伏点歪み):
[実施例4〜6、比較例2〜4]
(感光体の製造法)
電荷発生剤(上記式(1)で表される無金属フタロシアニン)5質量部、正孔輸送剤(HTM−3、前記化学式(5))50質量部、電子輸送剤(ETM−2、前記化学式(13))35質量部、以下の表2に示すそれぞれの結着樹脂100質量部をテトラヒドロフラン800質量部とともにボールミルにて50時間混合分散し、感光体塗布液を調整した。ついでこの塗布液を導電性基板上にディップコート法にて塗布し、その後100℃で40分間熱風乾燥し、膜厚30μmの感光体(直径30mm)を得た。含有する結着樹脂に応じてそれぞれ実施例4〜6および比較例2〜4の感光体とした。
【0132】
(評価)
それぞれの感光体表層および結着樹脂の降伏点歪みを、粘弾性測定装置(TA Instruments社製、「DMA−Q800」)を用いて、下記評価条件で測定した。
・初期荷重:1N
・測定温度:30℃
・歪み速度:0.5%/分(サンプリング間隔:毎2秒)
次に、京セラミタ製プリンタFS−1300Dに作製した前記感光体をそれぞれ装着し、5万枚の印字テストを行い、感光層の削れ量(μm)を評価した。また、画像評価により、付着物による不具合がないか評価した。
【0133】
以上の結果を表5にまとめ、また、感光体の膜削れ量と感光体に含有される結着樹脂の降伏点歪みの関係を図10に示す。
【0134】
【表5】

【0135】
[考察]
試験例1における図4および図6から明らかなように、本発明に係る実施例1の画像形成装置によれば、従来の画像形成装置(比較例1)と比べて、膨大な印字枚数を重ねても、感光体の膜削れ量も帯電ローラの抵抗値も許容限界値を超えることなく、感光体および帯電ローラのいずれにおいても非常に高い耐久性を示すことがわかる。さらに、図7では、本発明に係る実施例1〜3の画像形成装置であれば、長期間上限抵抗に達することなく、多くの電流を帯電ローラに流すことができることが示されている。
【0136】
このような長寿命の画像形成装置は従来には存在しなかったものであり、本発明に係る画像形成装置は、比較例1の画像形成装置(感光体の結着樹脂の降伏点歪みが本発明の範囲外であり、帯電ローラの導電層の厚みが1mm未満)と比べてはるかに優れた耐久性を有することが明確に示された。
【0137】
また、図10からは、降伏点歪みが9〜29%の範囲にある結着樹脂を含有する感光体(感光体表層の降伏点歪みは5〜25%の範囲)を用いることにより、感光体の膜削れがより抑制され、また付着物による画像の不具合も生じないことが明確となった。
【0138】
以上の結果より、本発明に係る画像形成装置であれば、感光体および帯電装置の両方がきわめて長寿命であって、低オゾンで環境にも対応できる優れた画像形成装置を得られることが明らかとなった。
【符号の説明】
【0139】
10 単層型感光体
12 導電性基体
14 感光層
16 中間層
18 保護層
19 導電層
20 樹脂コート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正帯電単層型電子写真感光体と、
前記感光体の表面を帯電するための接触帯電部材を有する帯電装置と、
帯電された前記像担持体の表面を露光して、前記像担持体の表面に静電潜像を形成するための露光装置と、
前記静電潜像をトナー像として現像するための現像装置と、
前記トナー像を前記像担持体から被転写体へ転写するための転写装置とを備える画像形成装置であって、
前記正帯電単層型電子写真感光体が導電性基体と感光層とを備えており、
前記感光層が、電荷発生剤、電荷輸送剤、及び結着樹脂が同一層に含有される層であって、前記結着樹脂の降伏点歪みが9〜29%であること、並びに
前記接触帯電部材が、厚み1mm〜3mmの導電層を有する帯電ローラであることを特徴とする、画像形成装置。
【請求項2】
前記帯電ローラの初期電気抵抗値が10〜10Ωである、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記導電層がイオン導電性ゴム層である、請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記導電層が、イオン導電剤を含有するエピクロルヒドリンゴムからなるイオン導電性ゴム層である、請求項1〜3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記正帯電単層型電子写真感光体の感光層と導電性基板の間に高抵抗層が設けられている、請求項1〜4のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−14142(P2012−14142A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289758(P2010−289758)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】