説明

画像形成装置

【課題】 本発明は、装置本体の小型化が出来、コストアップせずに画像上の汚れの発生を無くすことが可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】 感光ドラム101と接しつつ回転する転写ローラ106と、感光ドラム101に担持されたトナー像を記録材2へ静電的に転写するために転写ローラ106に転写電圧を印加する転写電圧電源11と、記録材2上に転写されたトナー像を定着する定着装置107と、トナー像を定着した記録材2を裏返して感光ドラム101と転写ローラ106との間に再給送する再給送路301とを有し、該再給送路301の記録材2を搬送するための再給装ローラ201が転写ローラ106と対向して圧接していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば複写機やLBP(レーザビームプリンタ)などの電子写真方式あるいは静電記録方式の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセスを用いた複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置においては、画像形成部で記録材収納部から供給される記録材(例えば紙)の一面側(表面)にまず画像形成(印字)を行う。その後、記録材を裏返して、再び画像形成部に搬送して記録材の二面側(裏面)に画像形成を行い、記録材の両面に画像を形成する画像形成装置が知られている。
【0003】
この両面印刷に対応するために、画像形成装置に再給送路を備え、両面印刷モードを指定したときには、片面に画像形成された記録材を再給送路に送り出し、再度、画像形成部に送って裏面側に画像形成を行うようにしている。
【0004】
従来の画像形成装置では、再給送路内に設置されている搬送部材は、図3に示すように、2個の再給送ローラ202,203を対向させて圧接させたものである。そして、これらの搬送部材を一つもしくは複数個設置して記録材2を挟持搬送する構成である(例えば特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−115842号公報(図1、図6)
【特許文献2】特許第3053282号公報(図1、図8)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、再給送路内の搬送部材が図3や特許文献1、2のような構成の場合、画像形成装置内で搬送部材を設けるスペースが必要になる。また搬送部材を複数個設けると更にスペースが必要となり、装置本体が大型化してしまう。近年、市場では特に机上などに画像形成装置を設置して使用することが多くなってきており、小型、省スペース化が求められている。
【0007】
本発明の目的は、装置本体の小型化が出来、コストアップせずに画像上の汚れの発生を無くすことが可能な画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するための本発明に係る画像形成装置の代表的な構成は、画像情報に応じたトナー像を担持する像担持体と、前記像担持体と接しつつ回転する転写部材と、前記像担持体に担持されたトナー像を記録材へ静電的に転写するために前記転写部材に転写電圧を印加する転写電圧印加手段と、記録材上に転写されたトナー像を定着する定着手段と、トナー像を定着した記録材を裏返して前記像担持体と前記転写部材との間に再給送する再給送手段とを有し、前記再給送手段の記録材を搬送するための搬送部材が前記転写部材と対向して圧接していることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0009】
記録材の裏面側に転写、定着を行うために該記録材を像担持体と転写部材との間に再給送する再給送手段の搬送部材を、転写部材と対向して圧接することによって、搬送部材を減らすことが可能となり装置の小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る画像形成装置の概略構成を示す断面説明図である。
【図2】転写電圧印加手段の構成を示すブロック図である。
【図3】比較例の画像形成装置の概略構成を示す断面説明図である。
【図4】第1実施形態の転写電圧の制御を示す図である。
【図5】第2実施形態の転写電圧の制御を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づいて本発明に係る画像形成装置の一実施形態について説明する。
【実施例1】
【0012】
<画像形成装置の全体構成>
図1は本発明に係る画像形成装置の一例として構成されたレーザービームプリンタである。図1の画像形成装置1において、91は給送ローラである。92は転写前搬送ローラである。101は画像情報に応じたトナー像を担持する像担持体としての感光ドラムである。102は帯電部材としての帯電ローラである。103はレーザ露光装置である。104は現像スリーブ108及び現像ブレードならびに1成分磁性トナー等からなる現像装置である。
【0013】
105はクリーニングブレードである。106は感光ドラム101と接しつつ回転する転写部材となる転写ローラ106である。107は記録材2上(記録材上)に転写されたトナー像を定着する定着手段となる定着装置である。93は排出反転ローラである。301はトナー像を定着した記録材2を裏返して感光ドラム101と転写ローラ106との間に再給送する再給送手段を構成する再給送路である。201は再給送路301に設けられ、記録材2を搬送するための搬送部材となる再給送ローラである。再給送ローラ201は転写ローラ106と対向して圧接されており、再給送ローラ201と転写ローラ106とにより挟持されて記録材2が再給送される。
【0014】
<片面印字動作>
感光ドラム101は帯電ローラ102によって一様に負極性(マイナス)の電荷に帯電し、レーザ露光装置103からのレーザービームによって感光ドラム101に静電潜像が形成される。次に、現像装置104の中で負極性(マイナス)に帯電したトナーが感光ドラム101上の静電潜像に付着して可視像となる。記録材2は給送ローラ91により転写前搬送ローラ92に搬送された後、転写ローラ106の作用により感光ドラム101上のトナー像が記録材2に転写され、定着装置107でトナー像が定着される。
【0015】
定着装置107でトナー像が定着された記録材2は排出反転ローラ93によって排出トレイ3に排出される。クリーニングブレード105は感光ドラム101上に残ったトナーを除去する。以上の各ユニットの働きにより画像が形成される。
【0016】
<両面印字動作>
本実施形態では、記録材2の一面目を画像形成した後、二面目の画像形成も続けて行い、完全に両面の画像形成が終了し、排出されるまでは次の記録材2の画像形成動作は行われない。記録材2に一枚ずつ画像形成を行う制御となっている。
【0017】
記録材2の一面目側の印字手順は、定着装置107までの記録材2の動きは前述した片面印字動作と同じであるので省略する。
【0018】
排出反転ローラ93のところまできた記録材2は、定着装置107を抜けた後、記録材2の後端部が排出反転ローラ93に到達すると、該排出反転ローラ93が逆回転を始めて記録材2は再給送路301に送られる。再給送路301に送られた記録材2は再給送ローラ201と転写ローラ106とにより挟持搬送されて転写前搬送ローラ92まで送られる。
【0019】
記録材2が再給送路301に送られている間に、感光ドラム101上には前述したと同様にトナー像が作られる。記録材2は転写ローラ106と感光ドラム101とのニップ部に送られ、転写ローラ106の作用により感光ドラム101上のトナー像は記録材2の二面目側に転写され、定着装置107で定着される。定着装置107でトナー像が定着された記録材2は排出反転ローラ93によって排出トレイ3に排出される。
【0020】
<転写部の構成>
接触転写部材としての転写ローラ106は、感光ドラム101の表面に所定の押圧力、本実施形態では9.8N(1kgf)で接触している。そして、感光ドラム101に担持されたトナー像を記録材2へ静電的に転写するために転写電圧印加手段となる図2に示す転写高圧電源11から転写ローラ106に転写電圧を印加する。転写高圧電源11から印加される転写電圧により、感光ドラム101と転写ローラ106との間のニップ部で感光ドラム101の表面のトナー像を記録材2に転写する。本実施形態の転写ローラ106は図示しない駆動伝達ギアを介して感光ドラム101から駆動力が伝達される。
【0021】
本実施形態で用いた転写ローラ106は、芯金の表面に導電性のゴム材からなる弾性層を形成して構成されており、転写ローラ106の抵抗値は10Ω〜1010Ωに調整されている。転写ローラ106の直径は14mm、芯金の直径は6mm、ゴム材の厚みは4mm、ゴム材としては発泡タイプのNBR(nitril-butadiene rubber;ニトリルブタジエンゴムゴム)を用いている。本実施形態の転写ローラ106の抵抗値は23℃/50%R.H.(相対湿度)環境で1.0×10Ωとしている。
【0022】
<転写制御>
以下に図2を用いて感光ドラム101から記録材2にトナーを転写するときの制御について説明する。
【0023】
転写ローラ106では記録材2に対してトナーと逆極性の電圧を印加して、記録材2にトナーを転写させる。どのような環境においても転写できるように以下のような制御を行う。
【0024】
転写ローラ106は単体でも環境でも抵抗値が変わり、最適に転写ができる電圧が変わるが、その場合、ATVC(Active Transfer Voltage Control)制御を行い、最適な転写電圧を印加する。
【0025】
ATVCの制御方法は、転写電圧の印加制御を行う際、図2に示すように、非画像形成時において、制御装置(CPU)10からD/A(デジタル/アナログ)コンバータ12を介して転写高圧電源11が制御される。そして、転写高圧電源11に出力される転写出力値(デジタル値0〜255)によって転写ローラ106に電圧が印加される。なお、非画像形成時とは、レーザ露光装置103から感光ドラム101に画像露光して画像情報を書き込むまでの時間、もしくは記録材2相互間等である。
【0026】
このときに流れる電流を電流検知手段14で検知し、検知した電流値をA/D(アナログ/デジタル)コンバータ13を介して制御装置10にフィードバックし、転写ローラ106に流れる電流値を判断して一定の電流値I(2μA〜4μA)で定電流制御を行う。本実施形態においては3μAの定電流制御を行った。
【0027】
そして、この定電流制御時に転写ローラ106に生じた電圧Vを検出し、この電圧Vを基に適正な範囲で電圧を印加する。
【0028】
次に本発明の特徴的な構成である再給送路301内の搬送部材となる再給送ローラ201の構成について説明する。
【0029】
再給送ローラ201は、転写ローラ106に所定の押圧力、本実施形態においては2.94N(0.3kgf)で接触し、そのニップ部で記録材2を挟持搬送する。再給送ローラ201そのものの構成は、金属や樹脂などの芯軸の表面に樹脂材料、ゴム材料またはそれに近い材料を長手方向の一部、もしくは長手方向の全域に渡って被覆した構成である。
【0030】
再給送ローラ201は装置本体の構成により、駆動回転される場合、もしくは従動回転される場合がある。本実施形態では転写ローラ106は感光ドラム101との間で図示しない駆動伝達ギアを介して回転駆動され、再給送ローラ201は転写ローラ106に圧接して従動回転する構成としている。
【0031】
これは、再給送ローラ201を駆動回転しようとした場合、例えば感光ドラム101から駆動力を伝達しようとした場合、図1の矢線で示すように、感光ドラム101と再給送ローラ201との回転方向が同方向になるため駆動伝達ギアを1つ増やす必要がある。そのため本実施形態においては装置本体のスペースやコストの観点から転写ローラ106を駆動回転させ、再給送ローラ201を転写ローラ106に従動回転させる構成とした。
【0032】
尚、再給送ローラ201を駆動回転する構成であっても良い。このように感光ドラム101、転写ローラ106、再給送ローラ201の駆動伝達が連結している。このため、感光ドラム101、転写ローラ106、再給送ローラ201のうちの何れを回転させる場合も最短のギア連結となり、図3に示して後述する従来構成の比較例と比べても装置本体のスペースやコストの面で有利である。
【0033】
本実施形態で用いた再給送ローラ201は、SUS(Stainless;ステンレス)製の芯金を有する。その芯金の表面に絶縁性を有するEPDM(Ethylene Propylene Diene Terpolymer;エチレンプロピレンジエンゴム)のソリッドゴムを長手方向に設置する。本実施形態では給送される記録材2の中央部から左右に100mmの位置に幅20mmのものを2箇所設置した構成である。ゴムが被覆された部分の直径は14mmである。
【0034】
再給送ローラ201から、転写ローラ106と感光ドラム101とのニップ部までの搬送経路上の離間距離は、LGLサイズ(215.9mm×355.6mm)の記録材2の長さよりも長い。そして、再給送ローラ201と転写ローラ106とのニップ部と、該転写ローラ106と感光ドラム101とのニップ部とを記録材2が同時に通過することがないように構成される。
【0035】
上記構成を用いて本実施形態の画像形成装置1を作成した。また、比較例として図3に示すような従来構成の画像形成装置21を作成した。
【0036】
図3に示す比較例の画像形成装置21は再給送ローラ202,203の構成、及びそれを含む再給送路301の構成が異なる以外は、図1に示す画像形成装置1の構成と略同じであるので重複する説明は省略する。
【0037】
比較例の再給送ローラ202,203は一対のローラ対が対向する構成になっており、再給送路301に再給送された記録材2は再給送ローラ202,203により挟持されて搬送される。比較例の再給送ローラ202,203には電圧を印加するような装置は設けられていない。再給送ローラ202,203はSUS製の芯金の表面にEPDMのソリッドゴムを長手方向に給送される記録材2の中央部から左右に100mmの位置に、幅20mmのものを2箇所設置した構成である。ゴムが被覆された部分の直径は14mmである。再給送ローラ203が駆動回転され、再給送ローラ202は再給送ローラ203に従動回転する。
【0038】
図1に示す本実施形態の画像形成装置1本体と、図3に示す比較例の画像形成装置21本体とを比較する。図1に示す本実施形態の画像形成装置1本体では転写ローラ106が、図3に示す比較例の再給送ローラ203の機能を兼ねるので、再給送ローラ203を省略することが出来る。これにより装置本体内でスペースが生まれ、図1の矢印a方向の幅で30mm程度狭めることが可能となった。また、転写ローラ106を駆動回転し、再給送ローラ201を該転写ローラ106に従動回転する構成とすることにより、駆動系のギアを付け加えることがなく更にスペースを確保することが可能となった。これにより部品点数を削減することが可能となり、装置本体を小型化することが出来る。
【0039】
次に図4を用いて記録材2が再給送ローラ201で再給送されているときの転写ローラ106に印加される転写電圧の制御について説明する。
【0040】
記録材2の一面目に印字され、二面目に印字するために再給送路301に再給送されてきた記録材2は、再給送ローラ201に送られてきたときには一面目の印字された面が転写ローラ106側になる。表面には当然印字されたトナーが定着されているが、転写ローラ106と接触するため印字されたトナーが転写ローラ106側に少量付着する。
【0041】
記録材2に印字されたトナーが転写ローラ106に付着しないようにするために転写高圧電源11によりトナーが帯電している極性と同極性の電圧を転写ローラ106に印加する。即ち、記録材2が再給送ローラ201と転写ローラ106との圧接部を通過している間は、該転写ローラ106にトナーの帯電極性と同極性の転写電圧を印加する。本実施形態においては、トナーは負(マイナス)に帯電しているため再給送ローラ201と転写ローラ106との圧接部に記録材2が存在するときには、転写ローラ106には−1kVの負の電圧を印加する制御となる。
【0042】
再給送路301の二面目側の面(図1の左側の面)には不図示のリブが存在し、記録材2は前記リブに接触しながら搬送される。本実施形態においては前記リブは導電性の鉄製でできており、リブはアースされている。一方、記録材2は絶縁体ではないため転写ローラ106に負の電圧を印加することにより、記録材2から転写ローラ106の方向に電界ができ、転写ローラ106の汚れ防止効果がある。また、再給送ローラを兼ねる転写ローラ106の清掃が可能になるため汚れを防止することが可能となる。
【0043】
図4は両面印字を1枚おこなうときの転写ローラ106に印加される電圧を時間でモニタしたグラフである。記録材2の一面目に感光ドラム101からトナーを転写している状態がC区間、再給送路301を通って、再給送ローラ201で搬送されている状態がF区間である。
【0044】
画像形成動作がスタートし、感光ドラム101上にトナーが現像される前段階である前回転時に、転写ローラ106上に付着している微小なトナーを感光ドラム101側に転移させる。その目的でATVC前にトナーと同極性の負電圧、本実施形態においては−1kVの転写クリーニング電圧を印加する(A区間)。その後、ATVC制御を行い転写出力電圧を決定し(B区間)、記録材2の一面目が感光ドラム101からトナーを転写されている状態(C区間)となる。C区間では記録材2にトナーを転写するために、本実施形態ではATVCで決定した+1.3kVの印加電圧を転写ローラ106に印加する。
【0045】
記録材2が転写ローラ106を通過した後に、該転写ローラ106に付着した微小なトナーを感光ドラム101に転移する目的で−1kVの転写クリーニング電圧を転写ローラ106に印加する(D区間)。E区間は記録材2が転写後に、定着装置107、排出反転ローラ93、再給送路301を通り再給送ローラ201にくる直前までの時間であり、このときは転写ローラ106に転写電圧は印加されない。
【0046】
F区間では記録材2が再給送ローラ201と転写ローラ106とにより挟持搬送されている区間であり、転写ローラ106に記録材2の一面目側のトナーが付着しないように−1kVの負の電圧を転写ローラ106に印加する。G区間は記録材2が再給送ローラ201を通過した後、転写ローラ106上の微小なトナーを感光ドラム101に転移する目的で−1kVの転写クリーニング電圧を転写ローラ106に印加する。
【0047】
H区間は記録材2の二面目に転写ローラ106でトナーを転写している区間であり、+1.3kVの転写電圧を転写ローラ106に印加する。その後、I区間で最後に転写ローラ106上の微小なトナーを感光ドラム101に転移する目的で−1kVの転写クリーニング電圧を転写ローラ106に印加して終了する。
【0048】
上記構成の画像形成装置1を用いて、5000枚の記録材2の両面に10000イメージの印字を行い、画像上に再給送ローラ201と転写ローラ106とのニップ部で画像汚れが発生するか否かの確認を行った。また、比較例として、図3に示すように、従来の再給送ローラ202,203を備えた画像形成装置21を用いて画像上に再給送ローラ202,203のニップ部で発生する画像汚れの確認を行った。
【0049】
<実験条件>
実験環境は23℃、50%R.H.(相対湿度)である。実験装置はHP(ヒューレット パッカード)社製のLaserjet 1020をプロセススピード160mm/sec、片面印字時にはA4サイズ紙で22ppm、両面印字時には10ppmで通紙できるように変更したプリンターを使用した。今回の実験では両面印字でプリントを行った。印字した記録材2はキヤノン株式会社製のCS−680、印字した画像パターンは記録材2の一面に文字を印刷したもので通紙枚数は5000枚である。以下の表1に実験結果を示す。
【0050】
【表1】

【0051】
上記表1に示すように、比較例の画像形成装置21では、1211枚以降の記録材2の画像上に再給送ローラ203に相当する画像位置に縦黒帯状の画像汚れが発生した。これは、表面を印字した紙が再給送ローラ203を通過するときに、該再給送ローラ203側に表面に印字されたトナーを少量ずつ付着させ、堆積したトナーが1211枚目に吐き出され、再給送ローラ203の縦黒帯状の汚れとなったものである。1211枚目以降も耐久終了まで画像汚れの発生は続いた。
【0052】
一方、図1に示す本実施形態の画像形成装置1では画像上に汚れの発生は全くなかった。これは記録材2の一面目の印字面側が転写ローラ106側になり、転写ローラ106に接触はしている。しかし、トナーと同極性の−1kVの負電圧を転写ローラ106に印加しているためトナーが転写ローラ106に付着することなく、画像上に吐き出されることがないためである。
【0053】
つまり図3に示す従来の画像形成装置21の構成では再給送ローラ203上のトナー除去清掃はできなかった。しかし、本実施形態においては再給送ローラを兼ねた転写ローラ106にトナーの帯電極性と同極性の電圧を印加する。これにより転写ローラ106に付着したトナーを感光ドラム101に戻すことが出来る。そして、転写ローラ106上のトナーの清掃を行い、きれいな状態を保つことができる。そして、その汚れを画像上に吐き出すことがなく高品質な画像を提供することが可能となった。
【0054】
本実施形態では、記録材2が再給送ローラ201と転写ローラ106との圧接部を通過している間に転写ローラ106に印加する電圧としてトナーの帯電極性と同極性である−1kVを印加した。他に、同様の効果が得られればこの電圧の大きさに限定されるものではない。
【0055】
また、本実施形態では、再給送ローラ201の構成をSUS製の芯金の表面に絶縁性を有するEPDMソリッドゴムを長手方向に給送される記録材2の中央部から左右に100mmの位置に、幅20mmのものを2箇所設置した構成とした。他に、転写ローラ106と同じようにゴム被覆部を長手方向全面とし、導電タイプにしたものでも良い。
【実施例2】
【0056】
前記第1実施形態では、記録材2が再給送ローラ201で送られるときに、転写ローラ106にトナーと同極性の電圧を印加する構成とした。上記構成によれば常温から高温環境においては画像上に汚れが発生しなかったものの、低温環境においてはわずかに汚れが発生する場合があった。
【0057】
本実施形態では、記録材2が再給送ローラ201と転写ローラ106との圧接部を通過した後に、該転写ローラ106に転写クリーニング電圧として正(プラス)の電圧を印加した。その後に、更に負(マイナス)の電圧を印加し、該転写ローラ106に付着したトナーを感光ドラム101上に転移させて吐き出す制御を行う。それ以外の制御は前記第1実施形態と同様であるため詳細な説明は省略する。
【0058】
転写クリーニング電圧として転写ローラ106に正の電圧を印加することで正極性を持ったトナーも感光ドラム101上に転移させることが可能となる。
【0059】
正極性トナーは、現像装置104に設けられた現像ブレードに直接触れて負極性に摩擦帯電されたトナーの近傍のトナーが、電気的な極性を打ち消そうとして正極性に帯電するものである。
【0060】
正極性トナーは通常、トナーの中に微少量存在するが、例えば環境が低温低湿に変化すると、通常、負極性に帯電しているトナーの帯電量が大きくなるため、大きくなった負の電荷を打ち消そうとして正の電荷を持ったトナーの量も増加する。そこで、どのような環境においても、トナーの極性によらず転写ローラ106から吐き出させるようにする必要がある。
【0061】
図5は本実施形態において両面印字を1枚おこなうときの転写ローラ106に印加される電圧を時間でモニタしたグラフである。記録材2の一面目が感光ドラム101からトナーを転写されている状態がC区間、再給送路301を通って、再給送ローラ201で搬送されている状態がF区間である。
【0062】
画像形成動作がスタートし、感光ドラム101上にトナーが現像される前段階である前回転時に、転写ローラ106上に付着している微小なトナーを感光ドラム101側に転移させる。その目的でATVC前にトナーと同極性の負電圧、本実施形態においては−1kVの転写クリーニング電圧を転写ローラ106に印加する(A区間)。
【0063】
その後、ATVC制御を行い転写出力電圧を決定し(B区間)、記録材2の一面目が感光ドラム101からトナーを転写されている状態(C区間)となる。C区間では記録材2にトナーを転写するために、ATVCで決定した印加電圧として+1.3kVを転写ローラ106に印加する。記録材2が転写ローラ106を通過後に、微小なトナーを感光ドラム101に転移する目的で−1kVの転写クリーニング電圧を転写ローラ106に印加する(D区間)。
【0064】
E区間は記録材2が転写後に、定着装置107、排出反転ローラ93、再給送路301を通り再給送ローラ201にくる直前までの時間であり、このとき、転写ローラ106に転写電圧は印加されない。F区間は記録材2が再給送ローラ201と転写ローラ106とに挟持搬送されている区間であり、転写ローラ106に記録材2の一面目側のトナーが付着しないように−1kVの負の電圧を転写ローラ106に印加する。
【0065】
G区間では記録材2が再給送ローラ201を通過した後、転写ローラ106上に付着した微小な反転極性トナーを感光ドラム101に転移する目的で、正の電圧である+1.3kVの転写クリーニング電圧を転写ローラ106に印加する。H区間ではG区間とは逆極性である負の電圧である−1kVの転写クリーニング電圧を転写ローラ106に印加する。I区間は記録材2の二面目側に転写ローラ106でトナーを転写している区間であり、+1.3kVの転写電圧を転写ローラ106に印加する。その後、J区間で最後に転写ローラ106上の微小なトナーを感光ドラム101に転移する目的で−1kVの転写クリーニング電圧を転写ローラ106に印加して終了する。
【0066】
本実施形態の構成を用いて、前記第1実施形態と同じ条件で実験を行ったところ、本実施形態でも画像上の汚れは全く発生しなかった。更には環境を10℃、10%R.H.(相対湿度)とした以外は全て前記第1実施形態と同じ条件で実験を行ったが画像上の汚れは全く発生しなかった。
【0067】
これは、記録材2の一面目の印字面側が転写ローラ106側になり、転写ローラ106に接触はしている。しかし、トナーと同極性の負の電圧として−1kVを転写ローラ106に印加している(図5のF区間)ためトナーが転写ローラ106に付着することなく、画像上に吐き出されることがないためである。
【0068】
また、記録材2が再給送ローラ201を通過した後の図5のG区間において転写クリーニング電圧として+1.3kVの正の電圧を転写ローラ106に印加する。これにより、トナー中に微小に存在する反転極性トナーである正極性の帯電トナーも転写ローラ106から感光ドラム101に吐き出すことが可能となる。このため、どのような環境下でも前記第1実施形態よりも更に画像上の汚れが発生しなかった。
【0069】
特に10℃、10%R.H.(相対湿度)などの低温低湿環境下では反転極性トナーが通常環境よりも多く存在する。そこで、正の電圧の転写クリーニング電圧を転写ローラ106に印加することで反転極性トナーを感光ドラム101上に転移することができるため画像上の汚れが発生しない。
【0070】
つまり図3に示す従来の構成では再給送ローラ203上のトナー除去清掃はできなかった。しかし、本実施形態では、いかなる環境下においても再給送ローラを兼ねた転写ローラ106に正の電圧及び負の電圧を印加して転写ローラ106に付着した微小なトナーを感光ドラム101に戻す。これにより、転写ローラ106上のトナーの清掃を行い、きれいな状態を保つことができる。そして、その汚れを画像上に吐き出すことがなく高品質な画像を提供することが可能である。
【0071】
なお、本実施形態において再給送ローラ201を記録材2が通過した後に、転写ローラ106に印加する電圧を−1kVと+1.3kVとに設定したが、同様の効果が得られれば、この電圧の大きさは限定されるものではない。
【符号の説明】
【0072】
2 …記録材
11 …転写高圧電源(転写電圧印加手段)
101 …感光ドラム(像担持体)
106 …転写ローラ(転写部材)
107 …定着装置(定着手段)
201 …再給送ローラ(搬送部材)
301 …再給送路(再給送手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像情報に応じたトナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体と接しつつ回転する転写部材と、
前記像担持体に担持されたトナー像を記録材へ静電的に転写するために前記転写部材に転写電圧を印加する転写電圧印加手段と、
記録材上に転写されたトナー像を定着する定着手段と、
トナー像を定着した記録材を裏返して前記像担持体と前記転写部材との間に再給送する再給送手段と、
を有し、
前記再給送手段の記録材を搬送するための搬送部材が前記転写部材と対向して圧接していることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
記録材が前記搬送部材と前記転写部材との圧接部を通過している間は、前記転写部材にトナーの帯電極性と同極性の電圧を印加することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
記録材が前記搬送部材と前記転写部材との圧接部を通過した後は、前記転写部材に正または負の電圧を印加することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。

【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−220870(P2012−220870A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88997(P2011−88997)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】