説明

画像形成装置

【課題】 可動部を移動させる方向によらず、可動部の移動に対する抵抗力が一定である保持構成だと、ユーザビリティを損ねる虞がある。
【解決手段】 可動部Kを所定の姿勢から第1方向に移動して姿勢を変更する際に保持部Hが可動部Kに与える抵抗力の方が、可動部Kを所定の姿勢から前記第2方向に移動して姿勢を変更する際に保持部Hが可動部Kに与える抵抗力よりも大きくなるよう、保持部Hが可動部Kを保持している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置本体に対する姿勢を変更可能な可動部を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置には、ユーザが装置を操作するためのボタンやタッチパネル等を備える操作部や、装置の状態等を表示するディスプレイ等の表示部が設けられている。近年は、輸送時や保管時の装置全体のサイズを小さく抑えつつ、これら操作部や表示部の操作性や視認性を確保することや、ユーザの使い勝手に合わせて操作性や視認性を調整可能にすることが求められている。そこで、角度及び高さを変えて装置本体に対する姿勢を変更可能に保持された可動部にこれら操作部や表示部を設ける構成が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、画像形成装置には、画像形成の為のカートリッジを交換したり、装置内で発生したジャム処理を行ったりする為に、装置本体に対して開閉可能で、装置本体に対して開いて装置内部を開放する開閉部材が設けられている。このような開閉部材も、ユーザが所定の位置まで開いて、その状態で保持されるよう、開閉部材が装置本体に対する姿勢を変更可能に保持する構成が提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
このような従来の保持構成について説明する。図10は保持構成の概略断面図である。51は可動部と一体的に連結され、装置本体に回動可能に支持される回動するアームである。アーム51には係合溝51bが設けられている。装置本体側に係合溝51bに嵌合可能な係合ピン52、係合ピン52を付勢する圧縮バネ53、圧縮バネ53の台座となるバネホルダ54が設けられている。Cは圧縮バネ53の伸縮方向を示している。アーム51を回動させ複数の係合溝51bの一つに選択的に係合ピン52を嵌合させ、圧縮バネ53で嵌合方向に付勢することで、アーム51及び可動部を所定の姿勢で保持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−163812
【特許文献2】実開昭59−167269
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、可動部に操作部が設けられている場合に、ユーザが操作部を操作する為に、操作部前面から後側に向かって操作部を押圧する際、その押圧力によって可動部が後側に移動してしまわないよう、可動部がしっかり保持される必要がある。このため、圧縮バネ53のバネ力を強くし、可動部の移動に対する抵抗力を上げ、可動部を保持する保持力を強くすることが考えられる。しかし、可動部を後側から前側へ移動させる際にも、この抵抗力(保持力)に抗して可動部を移動させなければならないので、必要以上に大きな操作力が必要となってしまい、ユーザビリティを損ねる虞がある。
【0007】
このように、可動部を移動させる方向によらず、可動部の移動に対する抵抗力が一定である保持構成だと、ユーザビリティを損ねる虞がある。
【0008】
そこで本発明は、上記課題に鑑みて、ユーザビリティが良好な可動部の保持構成を有する画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、装置本体に対する姿勢を変更可能な可動部と、前記可動部を装置本体に対する姿勢を変更可能に保持する保持部と、を有し、前記可動部が第1方向及び前記第1方向と反対の第2方向に移動することで、前記可動部の装置本体に対する姿勢が変更される画像形成装置であって、前記可動部を所定の姿勢から前記第1方向に移動して姿勢を変更する際に必要な力の方が、前記可動部を前記所定の姿勢から前記第2方向に移動して姿勢を変更する際に必要な力よりも大きくなるよう、前記保持部が前記可動部を保持していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
ユーザビリティが良好な可動部の保持構成を有する画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)可動部が倒れた状態の画像形成装置の斜視図。(b)可動部が起こされた状態の画像形成装置の斜視図。
【図2】(a)可動部が倒れた状態の操作部付近の斜視図。(b)可動部が起こされた状態の操作部付近の斜視図。
【図3】可動部が保持された状態の可動部付近の断面図。
【図4】(a)可動部を倒す方向に回動する際の可動部付近の断面図。(b)可動部を起こす方向に回動する際の可動部付近の断面図。
【図5】(a)可動部の姿勢を保持している状態で係合ピンにかかる力を示す断面図。(b)可動部を倒す方向(A方向)に回動する際に係合ピンにかかる力を示す断面図。
【図6】可動部を回動させる際の可動部測定データ。
【図7】可動部が保持された状態の可動部付近の断面図。
【図8】(a)可動部を倒す方向に回動する際の可動部付近の断面図。(b)可動部を起こす方向に回動する際の可動部付近の断面図。
【図9】(a)可動部の姿勢を保持している状態で係合ピンにかかる力を示す断面図。(b)可動部を倒す方向(A方向)に回動する際に係合ピンにかかる力を示す断面図。
【図10】(a)従来構成における可動部が保持された状態の可動部付近の断面図。(b)従来構成における可動部を倒す方向に回動する際の可動部付近の断面図。(c)従来構成における可動部を起こす方向に回動する際の可動部付近の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
(画像形成装置)
まず、図1を用いて本実施形態の画像形成装置について説明する。図1は画像形成装置の斜視図である。(a)は可動部Kが倒れている状態、(b)は可動部Kが起こされている状態を示している。なお、可動部Kについては後述する。
【0013】
本実施形態の画像形成装置100は電子写真方式の画像形成装置である。画像形成装置100本体内には、不図示の感光ドラム、及び感光ドラムに作用するプロセス手段としての帯電器、スキャナユニット、現像器、転写ローラ、クリーナ、及び定着器が設けられている。
【0014】
記録材としてのシートへの画像形成は、感光ドラムを回転させながら、その表面を帯電器により帯電させ、帯電した感光ドラム表面をスキャナユニットで露光して潜像を形成し、現像器でその潜像をトナー像として可視化し、感光ドラム表面上にトナー像を形成する。次に、感光ドラム表面のトナー像を、転写ローラと感光ドラムの間の転写ニップ部に搬送されたシート上に転写し、そのシートを定着器へ搬送し定着ニップで加熱及び加圧することでシート上に定着画像を形成する。転写ニップ部でシートに転写されず感光ドラム表面に残ったトナーはクリーナによって清掃され感光ドラム表面から除去される。シート上に定着画像を形成されたシートは積載面21の上方から排出され、積載面21上に積載されていく。このようにシート上に画像を形成し積載面21上に排出することを画像形成動作と定義する。
【0015】
画像形成装置100の上面には、表示部としてのディスプレイの機能、及び、ユーザが触れることにより装置を操作するための操作部としての機能を有するタッチパネル10がアーム10に支持されて設けられている。タッチパネル10はユーザが触れる(押圧する)ことにより信号を出力する。この信号は画像形成動作を制御する為に画像形成装置100内に設けられた不図示の制御部へ送られ、この信号に基づき画像形成動作等の画像形成装置100の動作が制御される。
【0016】
(可動部Kの保持機構)
本実施形態の画像形成装置は、ユーザの使い勝手に合わせてタッチパネル10の操作性や視認性を自由に変えることができるよう、タッチパネル10及びアーム11を備える可動部Kはその角度や高さ(位置、姿勢)等を変更可能に画像形成装置本体100に保持されている。次に、このような可動部Kの保持機構について説明する。
【0017】
図2(a)は、可動部Kが倒れた状態の可動部K付近の斜視図、(b)は、可動部Kが起こされた状態の可動部K付近の斜視図である。なお図2では、簡単のため装置本体外装の一部を透けさせ装置外装の内部を記載している。
【0018】
可動部Kは、回転中心(回動軸)11cを中心に回転可能に装置本体100に支持されている。アーム11には、扇形状のディスク部11aが一体的に形成されている。そしてディスク部11aの円周方向(アーム11の回動軸11c周りの円周方向)には複数の係合溝部(凹部)11bが並んで配置されている。これらタッチパネル10、アーム11、及びアーム11と一体的に形成された部分が可動部Kである。
【0019】
画像形成装置本体100側にはアーム11の溝部11bに係合可能な係合ピン(凸部)12、係合ピン12を回動軸11c方向に付勢する圧縮バネ13、係合ピン12及び圧縮バネ13を保持するバネホルダ14が設けられている。圧縮バネ13の復元力により係合ピン12は回動軸11c方向で溝部11bに係合するよう付勢されている。溝部11bに係合ピン12が係合した状態では、アーム11はその状態の姿勢で保持され、可動部Kもアーム11を介して所定の姿勢で保持されている。このように係合ピン12、圧縮バネ13及びバネホルダ14が、アーム11及び可動部Kの保持部Hとして機能する。
【0020】
次に、このような係合ピン12と係合溝部11bによる可動部Kの保持機構について説明する。可動部Kの姿勢の変更は、可動部K又はアーム11に所定の荷重を与え、複数の溝部11bのうち係合ピン12が入る溝部11bを変更することにより行われる。これについて以下で詳しく説明する。
【0021】
図3は、可動部Kが所定の姿勢で保持されている状態の可動部Kの保持機構を回動軸11cに直交する方向からみた断面図である。図4(a)は可動部Kを所定の姿勢から倒す方向(A方向:第1方向)に回動して途中の状態の可動部Kの保持機構を回動軸11cに直交する方向からみた断面図、(b)は可動部Kを所定の姿勢から起こす方向(B方向:第2方向)に回動している状態の可動部Kの保持機構を回動軸11cに直交する方向からみた断面図である。
【0022】
図3に示すように、係合ピン12は、圧縮バネ13よりC方向に付勢され、規制面S1、規制面S2に当接した状態で係合溝部11bに嵌合している。圧縮バネ13の作用によって係合ピン12が規制面S1、S2に突き当てられ、移動することを規制されることで、係合ピン12が係合溝部11bに嵌合した状態で保持される。
【0023】
係合ピン12は装置本体100に設けられた不図示のガイドによってC方向に直交する方向に移動を規制されており、基本的にはC方向とその逆方向にのみに移動可能である。ただし、係合ピン12がC方向へ引っ掛かりなくスムーズに移動できるように係合ピン12と不図示のガイドとの間には、C方向に直交する方向に関してある程度のガタが形成されている。
【0024】
このような構成となっているので、アーム11がA方向に動くと、係合ピン12は圧縮バネ13の付勢力に抗してC方向の反対方向に移動することで規制面S1を乗り越えて移動し、図4(a)に示す係合溝部11bとの嵌合(係合)が解除された状態となる。同様に、アーム11がB方向に動くと、係合ピン12は圧縮バネ13の付勢力に抗してC方向の反対方向に移動することで規制面S2を乗り越えて移動し、図4(b)に示す係合溝部11bとの嵌合(係合)が解除された状態となる。
【0025】
アーム11がA方向に移動する際に、係合溝部11bに対して係合ピン12が移動しようとする方向A´に対して規制面S1はα(°)(α≦90°)傾斜している。また、アーム11がB方向に移動する際に、係合溝部11bに対して係合ピン12が移動しようとする方向B´に対して規制面S2はβ(°)(α≦90°)傾斜している。
【0026】
図5(a)は係合溝部11bに嵌合している係合ピン12にかかる力を示す図である。この図に示すように、圧縮バネ13の付勢力により係合ピン12からアームの係合溝部11bにかかる力をFsとすると、Fsの接線方向及び垂直方向分力は、Fs1 = Fssinα、Fs2 = Fscosαと表せる。また、アームの係合溝部11bから係合ピン12にかかる反力はそれぞれ、Fp1 = Fssinα、Fp2 = Fscosαと表せる。
【0027】
図5(b)は可動部Kを倒す方向(A方向)に回動する際に係合ピン12にかかる力を示す図である。FAはユーザが可動部Kを倒す方向(A方向)に回動する際に係合ピン12にかかる力とすると、FAの接線方向及び垂直方向分力はそれぞれF1 = FA cosα、F2 = FA sinαと表せる。係合ピン12は係合溝部11bに対して、可動部Kを倒す方向(A方向)の規制面S1、及び起こす方向(B方向)の規制面S2の2箇所で接しており、それぞれの規制面S1、S2から係合ピン12に伝わる反力が釣り合っているとき係合ピン12の位置が保持される。つまり、この状態で可動部Kの姿勢が保持される。
【0028】
従って、可動部Kの位置を倒す方向(A方向)に回動する際は、アームの溝部11bから係合ピン12にかかる力の係合ピン12の接線方向の分力Fp1 = Fssinαに比べて大きな力F1 = FA cosαを付与する。このようにすることで、図4(a)のように係合ピン12がアームの溝部11bの規制面S1を乗り上がり、係合ピン12が入る溝部11bを変えることができる。つまり、係合ピン12が入る溝部11bを変えて可動部Kの姿勢を変更するには以下の条件が必要となる。
【0029】
F1 = FA cosα > Fp1 = Fssinα
この式を整理すると、可動部Kの姿勢を変更するために必要な力は以下のように表せる。
【0030】
FA > Fstanα (α≦90°)… (1)
つまり、圧縮バネ13の付勢力Fsが同じであれば、係合溝部11bの規制面S1の角度αが大きいほど、大きな負荷を可動部Kにかけない限り可動部Kを姿勢変更できず、可動部Kの姿勢変更に必要な力が大きくなることを示している。換言すれば、規制面S1の角度αが大きいほど、可動部KをA方向に移動して姿勢を変更する際に、保持部Hが可動部Kに与える抵抗力が大きくなる。
【0031】
同様に、可動部Kを起こす方向(B方向)に回動する際に係合ピン12にかかる力をFBとすると、可動部Kの姿勢を起こす方向(B方向)に変更するためには上記と逆方向に以下の力が必要となる。
【0032】
FB > Fstanβ (β≦90°)… (2)
このとき、Fstanβより大きなちからFBをユーザが付与することにより、図4(b)のように係合ピン12がアーム11の係合溝部11bの規制面S2から乗り上がり、係合ピン12が入る溝部11bを変えることができる。
【0033】
なお、A方向に可動部を移動させる場合と同様に、圧縮バネ13の付勢力Fsが同じであれば、係合溝部11bの規制面S2の角度βが小さいほど、軽い負荷を可動部Kにかけるだけで可動部Kを姿勢変更できる。換言すれば、規制面S2の角度βが小さいほど、可動部KをB方向に移動して姿勢を変更する際に、保持部Hが可動部Kに与える抵抗力が小さくなり、可動部Kの姿勢変更に必要な力が小さくなることを示している。
【0034】
ここで本実施形態では、本体100の上部に大画面のタッチパネル10が設けられた可動部Kを搭載している。ここで、タッチパネル10は大画面であるので、可動部Kは重量があり、しっかりと保持するためには大きな保持力が必要になる。また、ユーザが画像形成装置100を制御する為にタッチパネル10に触れることにより、可動部Kには前側から後側に向かって(可動部Kを倒す方向)押圧力が作用する。このため、ユーザが画像形成装置100を制御する為にタッチパネル10に触れた際に、可動部Kの位置が動かないだけの充分な保持力によって可動部Kを保持する必要がある。
【0035】
そこで、可動部Kの保持力を上げるためには圧縮バネ13の付勢力を上げることが考えられる。このように、圧縮バネ13の付勢力を上げると、係合ピン12がアームの係合溝部11bに付与する力Fsが増加し、可動部K及びアーム11が回動する際に隣の係合溝部11bに移動させる際に必要な力が増加する。このため、可動部Kを起こす方向に移動させる際にも、この保持力に抗して可動部を移動させなければならないので、必要以上に大きな操作力が必要となってしまい、ユーザビリティを損ねる虞がある。
【0036】
しかし、図10(a)に示した従来の可動部の構成では、操作方向(回動方向)によらず係合溝部52の規制面S1、S2の角度は同じであり(α=β)、ユーザが可動部Kの設置角度を変更する際に必要な操作力も操作方向(回動方向)によらず同じである。つまり、Fstanα = Fstanβとなり、上記の式(1)及び式(2)の関係よりFA = FBであるため、可動部を起こすときも倒すときも同じ操作力が必要となる。そのため、大画面で重量のある可動部Kをパネルの操作時に動かないよう保持するために圧縮バネ13の付勢力を大きくすると、起こす方向の操作力が必要以上に大きくなりユーザビリティを損ねてしまう虞がある。
【0037】
そこで、本発明は、可動部Kの姿勢を調節する際の操作力が可動部の回動方向に応じて異なるようにしている。
【0038】
つまり、本実施形態では、可動部Kが移動する際に、係合溝部11bに対して係合ピン12が移動しようとする方向に対する規制面S1と規制面S2の角度α、βを異なる角度に設定することで可能にしている。具体的にはα>βとしている。このように設定することで、可動部K及びアーム11を倒す方向に回動する際に必要な操作力FAを、起こす方向に回動する際に必要な操作力FBよりも大きくしている。換言すれば、可動部Kを所定の姿勢からA方向に移動して姿勢を変更する際に保持部Hが可動部Kに与える抵抗力の方が、可動部Kを所定の姿勢からB方向に移動して姿勢を変更する際に保持部Hが可動部Kに与える抵抗力よりも大きくなるようにしている。
【0039】
これらの関係を前述の式を用いて説明すると、以下の関係が成り立つ。
Fstanα>Fstanβ
つまり、式(1)及び式(2)より FA>FB となり、可動部Kの回動方向によって操作力を変更することができる。
【0040】
本実施形態では7つの係合溝部11bのそれぞれの規制面S1の角度を α=50〜60°、規制面S2の角度をβ=35〜40°としており、可動部Kを倒す際に係合ピン12が乗り越える規制面S1の角度αを、可動部Kを起こす際に係合ピン12が乗り越える規制面S2の角度βよりも大きくなるように設定している。これにより、可動部Kを倒す方向(A方向)に回動する際には充分な保持力を備え、かつ起こす方向(B方向)に回動する際の操作力が必要以上に高くならない構成としている。
【0041】
図6は、圧縮バネ13のバネ圧を16Nとしたときの可動部Kの設置角度を変更する際の操作力測定結果である。グラフの横軸は可動部Kの設置角度、即ち装置本体100の上面に対して可動部Kのタッチパネル10の面が傾斜した角度を示し、0°では可動部Kは装置本体100に対して倒れている状態(タッチパネル10の面が水平)である。縦軸は可動部Kの姿勢を変更する際の操作力である。
【0042】
本実施形態における可動部Kの設置角度は、0°、15°、30°、45°、60°、75°、90°の7つの角度に設定が可能であり、それぞれの設置角度および操作方向における操作力を示している。これを見ると、可動部Kを倒す方向(A方向)に回動する際の操作力は、起こす方向(B方向)に回動する際の操作力に比べて約2N大きい値となっている。これにより、タッチパネル10を操作する際には可動部Kが倒れていかないようしっかりと保持し、起こす際にはスムーズに角度変更することが可能となる。
【0043】
また、本実施形態では、同一方向に回動する際の操作力を設置角度によらず一定となるように構成している。これは、可動部Kの自重により設置角度によって操作力が変動してしまうことのないよう、各設置角度における係合溝部11bの規制面S1、S2の角度α、βを異なる値に設定することで可能にしている。つまり、可動部Kの可動域内(設置角度0°〜90°の間)において可動部Kを倒す方向(A方向)に移動していく程、可動部Kは自重の影響を受ける姿勢となっている。この為、可動部Kを倒す方向(A方向)に回動する際に乗り上げる規制面S1の角度αは、設置角度が水平に近づくほど大きく設定している。逆に、可動部Kの可動域内において可動部Kを起こす方向(B方向)に移動していく程、可動部Kは自重の影響を受けにくい姿勢となっていく。この為、起こす方向(B方向)に回動する際に乗り上げる規制面S2の角度βは、設置角度が垂直に近づくほど大きく設定している。本実施形態における可動部Kの設置角度と係合溝部11bの規制部S1、S2の角度αおよびβの関係は以下のように設定している。
0°:β=35°
15°:α=60° 、β=35°
30°:α=60° 、β=35°
45°:α=60° 、β=37.5°
60°:α=57.5°、β=40°
75°:α=55° 、β=40°
90°:α=50° 、β=90°
このように可動部Kの自重を考慮して規制面S1、S2の角度α、βを設定することで、図6に示すように同一回動方向に位置変更する際に必要な操作力を一定に保つことができる。
【0044】
なお、可動部Kの設置角度90°においてβ=90°としているのは、操作パネルの視認性を考慮して可動部Kが90°より回動しない構成としているためである。つまり、係合ピン12の動く方向に対して斜面ではなく垂直な面で保持し、さらに係合溝部11bに対する係合ピン12の侵入量を増やすことで、係合ピン12が係合溝部11bから乗り上がらない、つまりそれ以上回動しない構成としている。
【0045】
以上説明したように、本実施形態では係合ピン12の係合溝部11bの移動を規制する規制面S1、S2の角度α、βを異ならせることで、可動部Kを所定の姿勢から倒す方向(A方向)に移動して姿勢を変更する際に保持部Hが可動部Kに与える抵抗力の方が、可動部Kを所定の姿勢から起こす方向(B方向)に移動して姿勢を変更する際に保持部Hが可動部Kに与える抵抗力よりも大きくなるようにした。つまり、本実施形態では、規制面S1、S2の角度を異ならせることで、可動部Kを移動させる方向に応じて、可動部Kを保持する保持力が異なるようにしたので、可動部Kの安定した保持とスムーズな設置角度(姿勢)変更を両立することができ、可動部Kの使い勝手が良くし、ユーザビリティを良好にすることができる。
【0046】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。ただし、第1実施形態の画像形成装置と同様で部分については説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0047】
第2実施形態の可動部Kの保持機構について説明する。図7は可動部Kが保持された状態の可動部K付近の断面図。図8(a)は可動部Kを倒す方向(A方向)に回動している状態の可動部K付近の断面図、(b)は可動部Kを起こす方向(B方向)に回動している状態の可動部K付近の断面図を示している。また、図9(a)は可動部Kの姿勢を保持している状態で係合ピン12にかかる力を示す断面図、(b)は可動部Kを倒す方向(A方向)に回動する際に係合ピン12にかかる力を示す断面図である。本実施形態における係合溝部11bは、係合ピン12の侵入方向に対して左右対称な半円形の形状を有し、嵌合した係合ピン12を動かないように規制する規制面S1、S2が形成されている。
【0048】
また、係合ピン12は、係合溝部11bの規制面S1、S2と当接する2つの当接面S3、S4が設けられており、係合ピン12が係合溝部11bと嵌合した状態で規制面S1に当接面S3が、規制面S2に当接面S4が接する。
【0049】
可動部Kを倒す方向(A方向)に移動する際に係合ピン12が係合溝部11bに対して移動する方向A´に対して当接面S3は角度γ(°)(γ≦90°)傾斜している。可動部Kを起こす方向(B方向)に移動する際に係合ピン12が係合溝部11bに対して移動する方向B´に対して当接面S4は角度δ(°)(δ≦90°)傾斜している。つまり、それぞれγ、δはアーム11の回動方向を基準とした角度である。また、係合ピン12は、係合ピン12の侵入方向を基準とした回転軸を中心に回転しないように、位相が固定されて構成されている。つまり、係合溝部11bに対して係合される2つの当接面S3、S4は常に同一であり、可動部Kの操作時に変わってしまうことはないようになっている。
【0050】
図9(a)では圧縮バネ13の付勢力により係合ピン12からアームの係合溝部11bにかかる力Fsを示しており、Fs1 = Fssinγ、Fs2 = FscosδはそれぞれFsの接線方向及び垂直方向分力である。また、Fp1 = Fssinγ、Fp2 = Fscosδはそれぞれアームの係合溝部11bから係合ピン12にかかる反力である。
【0051】
図9(b)ではユーザが可動部Kを倒す方向(A方向)に回動する際に係合ピン12にかかる力FAを示しており、F1 = FA cosγ、F2 = FA sinδはそれぞれFAの接線方向及び垂直方向分力である。係合ピン12は可動部Kを倒す方向(A方向)の当接面S3及び起こす方向(B方向)の当接面S4の2箇所で係合溝部11bに接しながら嵌合しており、それぞれの当接面S3、S4に伝わる反力が釣り合っているとき係合ピン12の位置が保持される。つまり、この状態で可動部K及びアーム11の姿勢が保持される。また、可動部Kの位置を倒す方向(A方向)に回動する際は、可動部K及び又はアーム11を押圧し、係合溝部11bから係合ピン12にかかる力の係合ピン12の接線方向の分力Fp1 = Fssinγに比べて大きな力F1 = FA cosγを付与する。こうすることで、図8(a)のように係合ピン12が係合溝部11bから乗り上がり、別の係合溝部11bに係合ピン12を嵌合させることができる。このように、係合ピン12が入る係合溝部11bを変える、つまり可動部Kの姿勢を変更するには以下の条件が必要となる。
【0052】
F1 = FA cosγ > Fp1 = Fssinγ
この式を整理すると、可動部Kの姿勢を変更するために必要な力は以下のように表せる。
【0053】
FA > Fstanγ … (3)
つまり、圧縮バネ13の付勢力Fsが同じであれば、係合ピン12の当接面S3の角度γが大きいほど可動部Kの保持力が強く、可動部Kの姿勢変更に必要な力が大きくなることを示している。
【0054】
同様に、可動部Kを起こす方向(B方向)に回動する際に係合ピン12にかかる力をFBとすると、可動部Kの姿勢を起こす方向(B方向)に変更するためには上記と逆方向に以下の力が必要となる。
【0055】
FB > Fstanδ … (4)
このとき、図8(b)のように係合ピン12が係合溝部11bから乗り上がり、別の係合溝部11bに係合ピン12を嵌合させることができる。
【0056】
このように、本実施形態では、可動部Kを倒す方向(A方向)に移動する時に係合溝部11bの規制面S1を乗り越える係合ピン12の当接面S3の角度γを、可動部Kを起こす方向(B方向)に移動する時に係合溝部11bの規制面S2を乗り越える係合ピン12の当接面S4の角度δと異なる角度に設定することで、可動部Kの回動方向による操作力を変更することを可能にしている。
【0057】
つまり、当接面S3の角度γを当接面S4の角度δより大きく設定することで、可動部K及びアーム11を倒す方向に回動する際に必要な操作力FAを、起こす方向に回動する際に必要な操作力FBよりも大きくしている。これらの関係を前述の式を用いて説明すると、γ>δであるため、以下の関係が成り立つ。
Fstanγ>Fstanδ
つまり、式(3)及び式(4)より FA>FB となり、可動部Kの回動方向によって操作力を変更することができる。これにより、係合ピン12の2つの斜面角度を適切に設定することにより、操作パネルを操作する際にはしっかりと保持し、起こす際にはスムーズに角度変更することが可能となる。
【0058】
このように、本実施形態では、当接面S3、S4の角度γ、δを異ならせることで、可動部Kを所定の姿勢から倒す方向(A方向)に移動して姿勢を変更する際に保持部Hが可動部Kに与える抵抗力の方が、可動部Kを所定の姿勢から起こす方向(B方向)に移動して姿勢を変更する際に保持部Hが可動部Kに与える抵抗力よりも大きくなるようにした。つまり、当接面S3、S4の角度γ、δを異ならせることで、可動部Kを移動させる方向に応じて、可動部Kを保持する保持力が異なるようにした。このため、第1実施形態同様に、可動部Kの安定した保持とスムーズな設置角度(姿勢)変更を両立することができ、可動部Kの使い勝手が良くし、ユーザビリティを良好にすることができる。
【0059】
なお、上記2つの実施形態では、可動部Kは、表示部兼操作部であるタッチパネル10を備えていたが、表示部であるディスプレイや、ユーザが装置を操作するための操作部であるボタンやスイッチをこれら単体で備えたり、これらを組み合わせて備えるものであってもよい。また、メモリーカード等の外部メモリを装着する装着部を備えていてもよい。
【0060】
また、上記2つの実施形態では、可動部Kにはタッチパネル10を備えていたが、可動部Kは、装置本体100に対して開閉可能で、画像形成の為のカートリッジの交換やジャム処理をする為に画像形成装置100内を開放する開閉部材であってもよい。
【0061】
また、上記2つの実施形態では、アーム11に一体的に形成された扇形状のディスク部11aの円周方向に複数の係合溝部(凹部)11bを並んで配置し、装置本体100側の係合ピン(凸部)12を選択的に嵌合させる構成であった。しかし、装置本体100側に扇形状のディスク部11aを設け、その円周方向に複数の係合溝部11bを並んで配置し、アーム11に係合ピン12、圧縮バネ13及びバネホルダ14を設け、係合溝部11bに選択的に嵌合させる構成にも本発明を適用可能である。
【0062】
また、上記2つの実施形態では、可動部Kはアーム11を介して回動軸11c回りに回動しその姿勢を変更する構成であったが、可動部Kの移動はこのような回動に限られない。つまり、可動部Kが第1方向及び第1方向と反対の第2方向に移動することで、可動部Kの装置本体に対する姿勢が変更されるような構成であれば本発明を適用することが可能である。
【0063】
また、上記2つの実施形態では、単色の画像形成を行う画像形成装置100について説明したが、複数色の画像形成を行う画像形成装置であってもよい。また、電子写真方式の画像形成装置でなくとも、インクジェット方式やその他シート上に画像を形成するものであればよい。
【符号の説明】
【0064】
10 タッチパネル
11 アーム
11a アームのディスク部
11b アームの係合溝部
11c アームの回転中心
12 係合ピン
13 圧縮バネ
14 バネホルダ
21 積載面/積載トレイ
100 本体
A 可動部を倒すときに操作部及びアームが動く方向
B 可動部を起こすときに操作部及びアームが動く方向
C バネの付勢方向
S1 係合溝部の規制面
S2 係合溝部の規制面
S3 係合ピンの当接面
S4 係合ピンの当接面
α 係合溝部の規制面S1の角度
β 係合溝部の規制面S2の角度
γ 係合ピンの当接面S3の角度
δ 係合ピンの当接面S4の角度
Fs 圧縮バネの付勢力により係合ピンからアームの係合溝部にかかる力
FA 可動部を倒す方向(A方向)に回動する際に係合ピンにかかる力
FB 可動部を起こす方向(B方向)に回動する際に係合ピンにかかる力
K 可動部
H 保持部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体に対する姿勢を変更可能な可動部と、
前記可動部を装置本体に対する姿勢を変更可能に保持する保持部と、
を有し、前記可動部が第1方向及び前記第1方向と反対の第2方向に移動することで、前記可動部の装置本体に対する姿勢が変更される画像形成装置であって、
前記可動部を所定の姿勢から前記第1方向に移動して姿勢を変更する際に前記保持部が前記可動部に与える抵抗力の方が、前記可動部を前記所定の姿勢から前記第2方向に移動して姿勢を変更する際に前記保持部が前記可動部に与える抵抗力よりも大きくなるよう、前記保持部が前記可動部を保持していることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記可動部は、押圧されると信号を出力する操作部を備え、
前記操作部が信号を出力するように押圧される方向は、前記可動部を前記第1方向に移動させる方向であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記可動部と前記保持部のうちの一方は、並んで配置された複数の凹部を備え、他方は前記凹部に嵌合可能な凸部を備え、前記凹部に前記凸部が嵌合した状態で前記可動部が所定の姿勢で保持されることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記凹部は、前記凸部と前記凹部との嵌合が解除されることを規制して前記凸部を保持する規制面を備え、
前記凸部が前記凹部に嵌合した状態から、前記可動部が移動して前記凸部が前記凹部に対して移動することにより、前記凸部が前記規制面を乗り越えて前記凹部との嵌合が解除され、他の前記凹部と嵌合可能となり、
前記規制面のうち、前記可動部が前記第1方向、前記第2方向に移動する際に前記凸部が乗り越える規制面を夫々第1規制面、第2規制面とし、前記凹部に対する前記凸部の移動方向に対する前記第1規制面、前記第2規制面の角度を夫々α、β(α、β≦90°)とすると、前記凸部が前記第2規制面よりも前記第1規制面を乗り越えにくくなるよう、α、βは、
α>β
を満たすことを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記凹部は、前記凸部と前記凹部との嵌合が解除されることを規制して前記凸部を保持する規制面を備え、前記凸部は前記規制面に当接する当接面を備え、
前記凸部が前記凹部に嵌合した状態から、前記可動部が移動して前記凸部が前記凹部に対して移動することにより、前記当接面が前記規制面を乗り越えて前記凹部との嵌合が解除され、他の前記凹部と嵌合可能となり、
前記当接面のうち、前記可動部が前記第1方向、前記第2方向に移動する際に、前記規制面に当接して該規制面を乗り越える当接面を夫々第1当接面、第2当接面とし、前記凹部に対する前記凸部の移動方向に対する前記第1当接面、前記第2当接面の角度を夫々γ、δ(γ、δ≦90°)とすると、前記凸部が前記第2規制面よりも前記第1規制面を乗り越えにくくなるよう、γ、δは、
γ>δ
を満たすことを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記可動部の可動域内において前記可動部を前記第1方向に移動していく程、前記可動部は自重の影響を受ける姿勢となっていき、前記可動部を前記第1方向に移動していく程、前記可動部を前記第1方向に移動して姿勢を変更する際に必要な力が大きくなるよう前記保持部が前記可動部を保持していることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記可動部の可動域内において前記可動部を前記第2方向に移動していく程、前記可動部は自重の影響を受けない姿勢となっていき、前記可動部を前記第2方向に移動していく程、前記可動部を前記第2方向に移動して姿勢を変更する際に必要な力が大きくなるよう前記保持部が前記可動部を保持していることを特徴とする請求項1又は6に記載の画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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