説明

画像形成装置

【課題】転写処理に影響を与えることなく,薄い用紙を使用した場合にも用紙の分離性が良好な用紙担持ベルトを有する画像形成装置を提供すること。
【解決手段】本発明のカラープリンタ1は,中間転写ベルト11上にトナー像を形成する画像形成部と,用紙を搬送しつつ,トナー像を中間転写ベルト11から用紙に転写する2次転写部31と,2次転写部31によってトナー像の転写を受けた用紙を加圧および加熱する定着部41とを有する画像形成装置であって,2次転写部31は,無端ベルト状であって,用紙を担持して搬送する用紙担持ベルト32を有するものであり,用紙担持ベルト32のうち用紙を担持する面の表面粗さが,用紙の搬送方向に対する幅方向について少なくとも一方の端部で,中央部に比較して大きいものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,電子写真方式の画像形成装置に関する。さらに詳細には,トナー像を記録部材へ転写する転写部材として,無端ベルト状の用紙担持ベルトによって記録部材を担持して搬送しつつ転写するものを使用した画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より,プリンタ,コピー機等の画像形成装置として,トナーを用いて画像を形成する電子写真方式のものがある。このような装置では通常,トナー像は,まず像担持体上に形成され,その後に像担持体から用紙等の記録部材へ転写される。像担持体としては,例えば感光体や中間転写材等がある。そして,像担持体から用紙へトナー像を転写するための転写部材として,無端ベルト状の用紙担持ベルトを用いるものがある。すなわち,用紙担持ベルトに用紙を吸着させて搬送し,用紙が像担持体と対向する箇所で,用紙にトナー像を転写するのである。
【0003】
転写部材によってトナー像が転写された用紙は,トナーの定着処理のために定着部材へと送り出される。そのために,用紙担持ベルトを用いる画像形成装置では,転写処理の終了した用紙を速やかに用紙担持ベルトから分離することが必要である。しかし,従来より,特に薄い用紙を低温低湿環境下で使用した場合には,用紙の分離が難しいという問題点があった。
【0004】
これに対し,特許文献1には,用紙担持ベルトの幅方向に対する端部の領域と中央部の領域とで電気抵抗値に差を設けた画像形成装置が開示されている。本文献によれば,幅方向の端部における抵抗値を中央部の1/10〜1/2とすることにより,紙等が巻き付かず,紙分離が容易な装置となるとされている。またこの文献にはさらに,そのような用紙担持ベルトを製造する方法として,加熱処理を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−155987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら,前記した従来の画像形成装置では,用紙担持ベルトの抵抗値がベルトの箇所によって異なるものとなっているため,転写処理にその影響が及ぶおそれがある。例えば,抵抗値の差が転写バイアス値のムラとなって現れれば,画質不良の原因となるおそれがあるという問題点があった。
【0007】
本発明は,前記した従来の画像形成装置が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,転写処理に影響を与えることなく,薄い用紙を使用した場合にも用紙の分離性が良好な用紙担持ベルトを有する画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題の解決を目的としてなされた本発明の画像形成装置は,像担持体上にトナー像を形成するトナー像形成部と,記録部材を搬送しつつ,トナー像形成部によって形成されたトナー像を記録部材に転写する転写部と,転写部によってトナー像の転写を受けた記録部材を加圧および加熱することによってトナーを定着させて記録部材に画像を形成する定着部とを有する画像形成装置であって,転写部は,無端ベルト状であって,記録部材を担持して搬送する用紙担持ベルトを有するものであり,用紙担持ベルトのうち記録部材を担持する面の表面粗さが,記録部材の搬送方向に対する幅方向について少なくとも一方の端部で,中央部に比較して大きいものである。
【0009】
本発明の画像形成装置によれば,転写部において用紙を担持する用紙担持ベルトの表面粗さが,搬送方向に対する幅方向の場所によって異なるものとなっている。とくに,幅方向の一方の端部で,表面粗さが大きい。用紙担持ベルトの表面粗さが大きい箇所では,担持している用紙を分離しやすい。すなわち,本発明によれば,用紙は,その端部において,用紙担持ベルトから剥離されやすい。そして,この表面粗さの配置は,画像の転写処理には特段の影響を与えることはない。従って,転写処理に影響を与えることなく,薄い用紙を使用した場合にも用紙の分離性が良好な用紙担持ベルトを有する画像形成装置となっている。
【0010】
さらに本発明では,用紙担持ベルトのうち記録部材を担持する面の表面粗さが,中央部において最も小さく,幅方向の他方の端部において中央部より大きく,中央部から両側の端部へ向かって順に大きくなっているものであることが望ましい。
このようになっていれば,両側の端部において記録部材は最も剥がれやすい。
【0011】
あるいは本発明では,用紙担持ベルトのうち記録部材を担持する面の表面粗さが,幅方向の他方の端部において中央部より小さく,一方の端部から他方の端部へ向かって順に小さくなっているものであってもよい。
このようになっていれば,一方の端部において,用紙担持ベルトの表面粗さが最も大きい。従って,用紙は,その先端部のうち用紙担持ベルトの一方の端部に近い側に配置された角から,順に分離される。
【0012】
さらに本発明では,表面粗さのうち,最も大きい箇所の十点平均粗さRzが10μm以上30μm以下の範囲内であり,最も小さい箇所の十点平均粗さRzが5μm以下の範囲内であることが望ましい。
表面粗さの最も大きい箇所の十点平均粗さRzが小さすぎると,分離性の効果が小さくなる。表面粗さの最も大きい箇所の十点平均粗さRzが大きすぎると,画質に影響を与えるおそれがある。表面粗さの最も小さい箇所の十点平均粗さRzが大きすぎると,分離性の効果が小さくなる。
【0013】
さらに本発明では,用紙担持ベルトの表面をクリーニングするクリーニング部材を有し,クリーニング部材によるクリーニング力は,用紙担持ベルトのうち表面粗さが大きい箇所では強く,用紙担持ベルトのうち表面粗さが小さい箇所では表面粗さが大きい箇所より弱いものであることが望ましい。
このようにしておけば,表面粗さが異なっていても,クリーニングの効果を同等のものとすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の画像形成装置によれば,転写処理に影響を与えることなく,薄い用紙を使用した場合にも用紙の分離性が良好な用紙担持ベルトを有するものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本形態に係るカラープリンタを示す概略構成図である。
【図2】本形態に係る用紙担持ベルトの区分を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下,本発明を具体化した最良の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,いわゆるタンデム型のカラープリンタに本発明を適用したものである。
【0017】
本形態のカラープリンタ1は,その概略構成を図1に示すように,カラー画像の形成が可能ないわゆるタンデム型のカラープリンタである。各色の画像形成部10Y,10M,10C,10Kが,図中で中央あたりに中間転写ベルト11に沿って縦方向に並べられている。各色の画像形成部は,図中上から下へ,イエロー10Y,マゼンタ10M,シアン10C,ブラック10Kの順に配置されている。また,図中下部には,着脱可能な給紙カセット13が装着されている。図中上部には,中間転写ベルト11に残ったトナーを掻き取るためのベルトクリーナ15が設けられている。
【0018】
イエローの画像形成部10Yは,図1に示すように,感光体21を中心に,帯電部22,露光部23,現像部24,1次転写部25,クリーナ26を有している。図では,イエローの画像形成部10Yのみに符号を付して説明したが,他の色についても同様の構成となっている。さらに,中間転写ベルト11の図中で右方には,各色のトナーを貯留するホッパ28が備えられている。
【0019】
さらに,図1中で中間転写ベルト11の左下部に,2次転写部31が設けられている。本形態では,2次転写部31は,無端ベルト状の用紙担持ベルト32と,2次転写ローラ33とを有している。さらに,この用紙担持ベルト32を張架して回動させる複数の張架ローラ34,用紙担持ベルト32を挟んで張架ローラ34のうちの1つに対向する位置に取り付けられたベルトクリーナ35とを有している。
【0020】
さらに,図1に示すように,2次転写部31の図中左方には定着部41が設けられている。また,中間転写ベルト11は,複数のローラに架け渡されている。そして,そのうちの1つであるベルトローラ43は,用紙担持ベルト32と中間転写ベルト11とを挟んで,2次転写ローラ33に対向している。そして,画像形成時には用紙は,図中で破線Pで示すように,給紙カセット13から引き出され,用紙担持ベルト32と中間転写ベルト11との間と,定着部41を通過して,機外へ排出される。
【0021】
次に,このカラープリンタ1によってカラー画像が形成される際の,各部の動作を簡単に説明する。各色の感光体21にはそれぞれ,タイミングを合わせてトナー像が形成される。すなわち,帯電部22によって一様に帯電され,続いて露光部23によって露光される。これにより,各色の感光体21の表面には,各色の画像データに基づいた静電潜像が形成される。次に,現像部24によって,その静電潜像にトナーが供給され,感光体21上にトナー像が形成される。
【0022】
画像形成時には,中間転写ベルト11は,図1中に矢印Xで示すように,図中時計回りに回転される。各色の感光体21上にタイミングを合わせてそれぞれ形成されたトナー像は,それぞれの1次転写部25によって中間転写ベルト11上に転写され,互いに重ね合わせられる。これによって,中間転写ベルト11にカラーのトナー像が形成される。なお,1次転写領域を通過した後も感光体21に残留しているトナーは,クリーナ26によって掻き取られる。
【0023】
一方,画像形成されるための記録部材である用紙は,図1中の下方の給紙カセット13から1枚ずつ引き出され,2次転写部31へ向かって搬送される。2次転写部31においては,用紙は,用紙担持ベルト32との間の静電吸着力によって用紙担持ベルト32の表面に吸着されて運ばれる。中間転写ベルト11上に重ね合わせられたトナー像は,2次転写ローラ33とベルトローラ43との間で,用紙に転写される。
【0024】
トナー像の転写を受けた用紙は,この用紙担持ベルト32に担持されてさらに搬送される。用紙担持ベルト32は,張架ローラ34に接触する箇所において,凸状の曲面となっている。用紙の先端部は,用紙自身のコシの強さによって,この凸状の箇所において用紙担持ベルト32から分離される。先端部が用紙担持ベルト32から剥がれた用紙は,後端部へ向かって順に分離しつつ搬送されて,定着部41に至る。定着部41によってトナーが用紙に定着され,用紙に画像が形成される。
【0025】
ここにおいて本形態では,用紙担持ベルト32として,その表面粗さが一様ではない部材を使用している。これは,ごく薄い用紙を使用した場合にも,上述のように静電吸着力によって用紙を吸着した状態から,用紙担持ベルト32の凸状部分における用紙自身のコシにのみよって,容易に用紙を剥離するためである。本願発明者は,用紙担持ベルト32と用紙との吸着力はこれらの接触面積に比例していることを見出した。さらに,用紙のうち用紙担持ベルト32に接触している面積の割合が小さい箇所では,剥離しやすいことをも見出した。以下では,見かけの接触面積中に真の接触面積が占める比率を,接触面積率という。
【0026】
そこで,本形態の用紙担持ベルト32は,幅方向(図1中で奥行き方向)における少なくとも一方の端部領域において,中心部領域に比較して,表面の表面粗さが大きいものとしている。つまり,最も表面粗さの大きい箇所は,幅方向にいずれかの端部領域であり,少なくとも中心部領域はそれより表面粗さが小さい。ここで,表面とは,外周側に配置される面であり,転写処理時に用紙に接触する面のことである。また,幅方向とは,用紙の進行方向に交わる方向であり,用紙担持ベルト32を駆動するローラ33や34の軸方向のことである。
【0027】
本形態の用紙担持ベルト32は,図2にA〜Gで示すように,幅方向(図2中では縦方向)に複数の領域に区分けされている。さらに,その区分け領域ごとに表面粗さが異なるものとなっている。具体的には,A〜Gの7領域のうち,領域Aの表面粗さが最も大きく,領域Bから領域Gへ向かって順に表面粗さが小さくなっていくものとしている。従って,領域Aでは,用紙と用紙担持ベルト32との接触面積率は小さく,領域Bから領域Gへ向かって順に大きいものとなっている。なお,周方向(図2中では横方向),すなわち用紙担持ベルト32の進行方向については,それぞれの領域ごとに一様な表面粗さのものとすればよい。
【0028】
このようになっているので,用紙のうち領域Aに配置された箇所は,他の領域に配置された箇所に比較して,用紙担持ベルト32との静電吸着力が小さい。すなわち,剥がれやすい。そして,領域Gへ向かって静電吸着力は次第に大きく,剥がれにくくなっている。そして本形態では,用紙担持ベルト32に担持される用紙は,その大きさに関わらず少なくとも2以上の領域に跨って担持される。そうなるように,領域A〜Gの区分けが決定されている。そのため,用紙の幅方向の箇所によって,用紙担持ベルト32との接触面積率が異なり,剥がれやすさが異なることとなる。
【0029】
そして,上述のように接触面積率が配置されているので,用紙の先端のうち,用紙担持ベルト32の領域Aまたはそれに最も近い位置に搬送されている箇所が最も剥がれやすい。それは,用紙のうち領域Aの側に配置された端部ということになる。用紙担持ベルト32の表面粗さの配置がこのようになっているので,用紙の片方の端部が真っ先に剥離される。さらに,その端部に近い側からもう一方の端部へ向かって,順に剥がれやすさが小さくなる配置となっている。従って,片方の端部から剥がれ始め,他方の端部へ向かって順に剥がれていくこととなる。
【0030】
用紙担持ベルト32の表面粗さの配置は,上述のものに限らない。上述のものと逆に,領域Gの表面粗さが最も大きく,領域Aへ向かって順に小さくなるようにしてもよい。あるいは,両方の端部領域に相当する領域Aおよび領域Gの表面粗さがもっとも大きく,中央部領域である領域Dの表面粗さが最も小さくなるようにしてもよい。その場合は,領域Aから領域Dへ,領域Gから領域Dへ向かってそれぞれ順に表面粗さが小さくなっていくものとすればよい。
【0031】
もし,中央部が先に剥離した場合には,一旦部分的に剥離しても,両側の端部に引かれて再び吸着されてしまうことがある。そのため,中央部領域の表面粗さが大きく,両端領域がそれより小さいという配置はあまり好ましくない。両端領域の少なくとも一方に,最も表面粗さの大きい箇所を配置することが好ましい。そして,その端部から中心部領域へ向かって順に表面粗さが小さくなるように配置することが好ましい。なお,もう一方の端部領域については,中心部領域に比較して表面粗さの大きいものとしてもよい。あるいは,もう一方の端部領域の表面粗さは,中心部領域よりさらに小さいものとしてもよい。いずれの場合でも,中心部領域からもう一方の端部へ向かって,表面粗さが順に増加あるいは減少するように配置する。
【0032】
なお通常,装置ごとにその用紙の搬送経路は予め定めされている。そこで,装置における用紙の搬送経路が搬送方向について右端合わせで搬送される装置では,領域Gから領域Aへ向かって順に表面粗さが小さくなっていく左下がりのものとするとよい。左端合わせの装置では,表面粗さの配置を右下がりとすることが好ましい。このようにすることによってより確実に,一方の端部から順に剥がれやすいものとなる。
【0033】
また,領域の分け方についても,図2に示したものに限らない。この図では,軸方向の両端部に転写処理について有効範囲外となる範囲を残して,均等に7分割したものを示した。しかし,両端部を必ずしも残す必要はないし,均等に分割することも必須ではない。また,分割数は少なくとも2以上であればよいが,比較的細かく区分けすることが望ましい。例えば,分割数を5〜11領域の範囲内となるようにするとよい。また,搬送可能な最も小さいサイズの用紙を用いる場合でも,少なくとも2領域に跨って搬送されるようにしておくと良い。
【0034】
さらに,各領域の表面における表面粗さは,十点平均粗さRz値(JIS0601準拠)で以下の範囲内であることが望ましい。すなわち,表面粗さの最も大きい領域では,10μm以上30μm以下であることが望ましい。より望ましくは,15μm以上20μm以下である。表面粗さの最も小さい領域では,5μm以下であることが望ましい。より望ましくは,3μm以下である。なお,表面粗さがRz30μmを超えて大きい箇所があると,クリーニング不良が発生しやすく,用紙の裏面を汚すおそれがあるので好ましくない。
【0035】
なお,本形態の用紙担持ベルト32では,このように領域によって表面粗さの異なるものとしているが,その体積抵抗率は一律なものである。用紙担持ベルト32の体積抵抗率は,大きすぎると吸着率が強くなりすぎ,小さすぎると用紙を搬送できないおそれがある。そこで,本形態では,用紙担持ベルト32の体積抵抗率を,105Ω/cm以上1012Ω/cm以下としている。さらに望ましくは,107Ω/cm以上1010Ω/cm以下であるとよい。
【0036】
次に,このような本形態の用紙担持ベルト32を製造する方法を説明する。金型の内空間に用紙担持ベルト32の形状の空間を形成し,その中に材料を注入する方法で製造する場合には,金型の内面形状として,上記の表面粗さの条件を満たすようなものを形成しておく。またあるいは,引き抜き等によってまず無端ベルト状のものを製造し,その後に表面処理を行う場合には,例えば表層のコーティングに差を設けることができる。あるいは,部分的な研磨,粗し処理等を行うことによってもよい。
【0037】
本形態では,用紙担持ベルト32の表面粗さがこのように領域によって異なるものとなっているので,表面の汚れやすさもそれぞれ異なる。そこで,この用紙担持ベルト32のクリーニングを行うベルトクリーナ35のクリーニング力も,対向する領域によって異なるものとしている。すなわち,表面粗さが大きい領域をクリーニングするクリーニング部材は,表面粗さが小さい領域のクリーニング部材に比較して,クリーニング力が強いものとする。
【0038】
例えば,ベルトクリーナ35のクリーニング部材としてブレードや発泡ローラを用いる場合は,表面粗さの大きい領域に対向する箇所の押圧力を大きくすればよい。または,クリーニング部材の突出量を大きくするかまたは硬度の大きいものとしてもよい。また,クリーニング部材としてブラシ部材を用いる場合には,ブラシの植毛密度(面積あたりのブラシ毛の本数)を大きくしたり,ブラシ毛としてより硬いものを用いたり,あるいは食い込み量を大きくしたりすればよい。
【0039】
本願発明者は,実験によって本発明の効果を確認した。図2に示すように,有効範囲をA〜Gの7つの領域に分割し,それぞれの箇所の表面粗さRz(μm)を以下の表1に示すように設定した9種類の用紙担持ベルト32を製造した。そして,それぞれの用紙担持ベルト32をカラープリンタ1に装着し,薄手の用紙を用いて通紙試験を行った。試験では,温度10℃,湿度15%の低温低湿環境下において,A4サイズのOK中質コート紙(王子製紙製,坪量60.2g/m2)を,縦向き1000枚と横向き1000枚との合計2000枚を連続通紙した。
【0040】
分離性の評価基準は,以下の通りである。合計2000枚の通紙における紙詰まりの発生件数が,2枚以下であれば◎,3〜4枚であれば○,5〜9枚であれば△,10枚以上であれば×とした。また,画質の評価基準は以下の通りである。目視で画質不良が発見できるものが1枚もない場合に◎,一見しては分からないが詳細に観察すると濃度ムラがある場合に○,濃度ムラや白抜けがあることが一見して分かるものがある場合に×とした。
【0041】
この実験に用いた用紙担持ベルト32の表面粗さの配置は,下記の表1の通りであった。すなわち,各領域の表面粗さをその領域の区分け符号を用いて表すと,以下のようになっていた。
実施例1は,A>B>C>D>E>F>Gの右下がり
実施例2は,A>B>C>D<E<F<Gの中央下がり
実施例3は,A>B>C>D<E<F<Gの中央下がり
実施例4は,A>B>C>D<E<F<Gの中央下がり
実施例5は,A>B>C>D>E>F>Gの右下がり
であった。特に,実施例1と2は,表面粗さの最大値が15〜30μmの範囲内であり,最小値が5μmより小さい範囲となるようにしたものである。
【0042】
また,各比較例の表面粗さの配置は,以下の通りであった。
比較例1は,A≒B≒C≒D≒E≒F≒G
比較例2は,A≒B≒C≒D≒E≒F≒G
比較例3は,A≒B≒C≒D≒E≒F≒G
比較例4は,A<B<C<D>E>F>Gの中央上がり
であった。
【0043】
【表1】

【0044】
この実験の結果は,上記の表1の通りであった。実施例1〜5では,◎と○のみであり,いずれも分離性,画質ともに良好な結果であった。ただし,表面粗さの値によって,より好ましい範囲があることが確認できた。すなわち,表面粗さの最大値が15〜30μmの範囲内であり,最小値が5μmより小さい範囲となっている実施例1,2は,他の実施例に比較してもより良好な結果であった。
【0045】
他の実施例3〜5は,上記の最も好ましい表面粗さの値の範囲から外れているものであるが,分離性,画質のいずれにも問題はなかった。実施例3は,最大値が15μmより小さいため,分離性の確実性において実施例1,2ほど良好ではなかった。実施例4は,最小値が5μmより小さいため,やはり分離性の確実性において実施例1,2ほど良好ではなかった。実施例5は,最大値が30μmより大きいため,画質において実施例1,2ほど良好ではなかった。
【0046】
また,各比較例1〜4は,本発明の表面粗さの配置となっていないものである。比較例1〜3は,いずれも,用紙担持ベルト32の全体において表面粗さにほとんど差のないものである。全体に表面粗さの値が5μmより小さい比較例1では,分離性が不良であった。全体に表面粗さの値が15μm程度とした比較例2では,分離性が不良であった。全体に表面粗さの値が30μmより大きい比較例3では,分離性,画質ともに不良であった。また,中央部領域の表面粗さを大きく(中央上がり)とした比較例4では,分離性が不良であった。
【0047】
従って,この実験の結果から,本形態のように,表面粗さの配置を片側下がりとしたり中央下がりとすることで,分離性および画質をともに良好なものとできることが確認された。さらに,表面粗さの最大値を15〜30μmの範囲内とし,最小値を5μmより小さい範囲とすることにより,さらに確実に良好な結果が得られることが確認できた。
【0048】
以上詳細に説明したように,本形態のカラープリンタ1によれば,用紙担持ベルト32の表面粗さに勾配が設けられている。従って,2次転写処理の終了した用紙は,その幅方向の端部から順に,用紙担持ベルト32から剥離される。従って,薄い用紙を使用しても,確実に剥離させることができる。また,一旦剥離して再び吸着されることもない。さらに,用紙担持ベルト32の体積抵抗率は,全体に一律ものとしている。その値は,従来より好ましい範囲とされている値とほぼ同等である。従って,転写処理に影響を与えることなく,薄い用紙を使用した場合にも用紙の分離性が良好な用紙担持ベルトを有する画像形成装置となっている。
【0049】
なお,本形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。
例えば,カラープリンタ1における画像形成部の配置や構成は,図示のものに限らない。またカラープリンタに限らず,用紙担持ベルトを用いて,用紙へのトナー像の転写を行うものであれば適用可能である。例えば,モノクロプリンタ,コピー機,FAX,それらの複合機等に適用できる。
【符号の説明】
【0050】
1 カラープリンタ
10Y,10M,10C,10K 画像形成部
11 中間転写ベルト
31 2次転写部
32 用紙担持ベルト
35 ベルトクリーナ
41 定着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体上にトナー像を形成するトナー像形成部と,記録部材を搬送しつつ,前記トナー像形成部によって形成されたトナー像を記録部材に転写する転写部と,前記転写部によってトナー像の転写を受けた記録部材を加圧および加熱することによってトナーを定着させて記録部材に画像を形成する定着部とを有する画像形成装置において,
前記転写部は,無端ベルト状であって,記録部材を担持して搬送する用紙担持ベルトを有するものであり,
前記用紙担持ベルトのうち記録部材を担持する面の表面粗さが,記録部材の搬送方向に対する幅方向について少なくとも一方の端部で,中央部に比較して大きいものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において,
前記用紙担持ベルトのうち記録部材を担持する面の表面粗さが,
前記中央部において最も小さく,前記幅方向の他方の端部において前記中央部より大きく,
前記中央部から両側の前記端部へ向かって順に大きくなっているものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像形成装置において,
前記用紙担持ベルトのうち記録部材を担持する面の表面粗さが,
前記幅方向の他方の端部において前記中央部より小さく,
前記一方の端部から前記他方の端部へ向かって順に小さくなっているものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1つに記載の画像形成装置において,
前記表面粗さのうち,
最も大きい箇所の十点平均粗さRzが10μm以上30μm以下の範囲内であり,
最も小さい箇所の十点平均粗さRzが5μm以下の範囲内であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1つに記載の画像形成装置において,
前記用紙担持ベルトの表面をクリーニングするクリーニング部材を有し,
前記クリーニング部材によるクリーニング力は,前記用紙担持ベルトのうち前記表面粗さが大きい箇所では強く,前記用紙担持ベルトのうち前記表面粗さが小さい箇所では前記表面粗さが大きい箇所より弱いものであることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−3061(P2012−3061A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138324(P2010−138324)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】