画像形成装置
【課題】小スペース、低コストで設定トルクの変更を行うことのできる画像形成装置を提供する。
【解決手段】分離ローラ123に、分離ローラ123に設定トルク以上の回転トルクが作用すると分離ローラ123の追従回転を許容し、設定トルク以下の回転トルクが作用すると追従回転を阻止すると共に、分離ローラ123の回転速度の増減に伴って設定トルクが増減するオイルダンパー130を接続する。そして、制御部は、入力部から入力されたシートの情報に応じて分離ローラ123の回転速度を増減し、オイルダンパー130の設定トルクを変更する。
【解決手段】分離ローラ123に、分離ローラ123に設定トルク以上の回転トルクが作用すると分離ローラ123の追従回転を許容し、設定トルク以下の回転トルクが作用すると追従回転を阻止すると共に、分離ローラ123の回転速度の増減に伴って設定トルクが増減するオイルダンパー130を接続する。そして、制御部は、入力部から入力されたシートの情報に応じて分離ローラ123の回転速度を増減し、オイルダンパー130の設定トルクを変更する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、特に画像形成部にシートを1枚ずつ分離して給送するためのシート分離部の構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のプリンタ、複写機、ファクシミリ等の画像形成装置は、シート給送装置により給送されたシートに対して画像を形成するようにしている。ここで、シートを給送する際、シートが2枚以上送り出されるシートの重送が発生する場合がある。そこで、このようなシートの重送を防ぐため、従来はシートを1枚ずつ分離して給送するためのシート分離部を備えている。このようなシート分離部としては、給送ローラと、給送ローラと圧接すると共にトルクリミッタを内蔵した分離ローラ、あるいはリタードローラとにより構成されたものがある。
【0003】
ところで、従来のシート分離部において、重送を防止するためには重送されるシート間の摩擦力とトルクリミッタの設定トルクの関係が重要であるが、種類によりシートの摩擦係数は異なるため、最適な設定トルクはシートの種類(厚み)により異なる。そこで、従来は、トルクリミッタの設定トルクをシートの厚みにより変更するため、設定トルクの異なる複数のトルクリミッタを設け、その接続先を変更するものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−2992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このような従来のシート分離部を備えた画像形成装置では、設定トルクの違うトルクリミッタを複数必要とし、またその接続先を変更する切り替え手段も必要であるため、部品点数が多くなってコストアップに繋がる。さらに、複数のトルクリミッタや切り替え手段の設置のためのスペースを必要とし、装置の大型化にも繋がる。
【0006】
そこで、本発明は、このような現状に鑑みてなされたものであり、小スペース、低コストで設定トルクの変更を行うことのできる画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、シートを搬送する搬送ローラ及び前記搬送ローラに圧接し、かつ前記搬送ローラに対して追従回転可能な分離ローラとにより形成されたシート分離部を備えた画像形成装置において、前記分離ローラに接続され、前記分離ローラに設定トルク以上の回転トルクが作用すると前記分離ローラの追従回転を許容し、設定トルク以下の回転トルクが作用すると追従回転を阻止すると共に、前記分離ローラの回転速度の増減に伴って前記設定トルクが増減するトルク付加部と、シート情報を入力する入力部と、前記入力部から入力されたシート情報に応じて前記分離ローラの回転速度を増減し、前記トルク付加部の前記設定トルクを変更する制御部と、を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、分離ローラに分離ローラの回転速度の増減に伴って設定トルクが増減するトルク付加部を設けることにより、小スペース、低コストで設定トルクの変更を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置の一例であるフルカラーレーザプリンタの全体構成図。
【図2】上記フルカラーレーザプリンタに設けられたシート給送装置の構成を説明する図。
【図3】上記シート給送装置の分離ローラによるシートの分離作用を説明する図。
【図4】上記シート給送装置の制御ブロック図。
【図5】(a)は、上記分離ローラに設けられたオイルダンパーの回転速度と設定トルクの関係を示す図、(b)はシートの種類に対する給紙トルクの関係を示す図。
【図6】上記シート給送装置の他の構成を説明する図。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る画像形成装置に設けられたシート給送装置の構成を示す図。
【図8】上記シート給送装置の他の構成を説明する図。
【図9】本発明の第3の実施の形態に係る画像形成装置に設けられたシート給送装置の構成を示す図。
【図10】上記シート給送装置の各シート位置おける回転速度と設定トルクの関係を示す図。
【図11】上記シート給送装置の他の構成を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置の一例であるフルカラーレーザプリンタの全体構成図である。図1において、100はフルカラーレーザプリンタ、100Aはフルカラーレーザプリンタ本体(以下、プリンタ本体という)である。この装置本体であるプリンタ本体101Aには、シートに画像を形成する画像形成部100B、シートを給送するシート給送装置120等が設けられている。
【0011】
画像形成部100Bは、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの4色のトナー画像を形成するプロセスカートリッジ103a〜103dを備えている。なお、このプロセスカートリッジ103a〜103dは、像担持体である感光体ドラム101a〜101d等を備え、プリンタ本体101Aに着脱可能に装着されている。
【0012】
また、画像形成部100Bは、プロセスカートリッジ103a〜103dの鉛直下方に配置され、画像情報に基づいてレーザービームを照射し、感光体ドラム101a〜101d上に静電潜像を形成するスキャナユニット109を備えている。ここで、各プロセスカートリッジ103a〜103dは、静電潜像にトナーを付着させてトナー像として顕像化する現像ユニット104a〜104dと、クリーナユニット105a〜105dによって構成されている。そして、現像ユニット104a〜104dは、現像ローラ106a〜106dと、現像剤塗布ローラ107a〜107d及びトナー容器を有している。クリーナユニット105a〜105dは、感光体ドラム101a〜101dと、感光体ドラム表面を均一に帯電する帯電ローラ102a〜102dと、ドラムクリーニングブレード108a〜108dと、廃トナー容器とを有している。
【0013】
また、図1において、110は中間転写ベルトユニットであり、この中間転写ベルトユニット110は、中間転写ベルト110eと、中間転写ベルト110eの内側に配設された1次転写ローラ110a〜110dを備えている。なお、中間転写ベルト110eは、駆動ローラ110f、テンションローラ110gに張架されており、テンションローラ110gが矢印T方向に張力をかけている。また、1次転写ローラ110a〜110dは、各感光体ドラム101a〜101dに対向して配設されており、不図示のバイアス印加手段により転写バイアスを印加する構成となっている。そして、この1次転写ローラ110a〜110dによって中間転写ベルト110eに1次転写バイアスを印加することにより、感光体ドラム上の各色トナー像が順次中間転写ベルト110eに転写され、これにより中間転写ベルト上にはフルカラー画像が形成される。
【0014】
また、113は駆動ローラ110fと2次転写ローラ113aとにより構成され、順次中間転写ベルト110eに形成されたフルカラー画像をシートに転写する2次転写部である。115は、シート上に形成したトナー画像に熱及び圧力を加えてトナー像を定着させる定着部であり、内部に不図示のヒータを内蔵した定着ローラ115aと、定着ローラ115aに圧接する加圧ローラ115bとを有している。
【0015】
シート給送装置120は、プリンタ本体101Aに着脱自在に装着された給紙カセット200と、給紙カセット200に収納されたシートSを給送するシート給送部を構成するフィードローラ122等を有している。そして、給紙カセット200に収納されたシートSを給送する際は、シートSに圧接しているフィードローラ122を回転させてシートSを送り出すようにしている。なお、このように送り出されたシートSは、この後、フィードローラ122及びフィードローラ122に圧接する分離ローラ123により構成される分離部によって一枚ずつ分離された後、レジストローラ対114に搬送される。
【0016】
次に、このように構成されたフルカラーレーザプリンタ100の画像形成動作について説明する。不図示のパソコン等から画像信号がスキャナユニット109に入力されると、スキャナユニット109から、画像信号に対応したレーザ光が感光体ドラム上に照射される。このとき感光体ドラム101a〜101dは、帯電ローラ102a〜102dにより表面が予め所定の極性・電位に一様に帯電されており、スキャナユニット109からレーザ光が照射されることによって表面に静電潜像が形成される。この後、この静電潜像を現像ユニット104a〜104dにより現像し、可視化する。
【0017】
例えば、まず感光体ドラム101aに、原稿のイエロー成分色の画像信号によるレーザ光をスキャナユニット109から照射し、感光体ドラム上にイエローの静電潜像を形成する。そして、このイエローの静電潜像を、現像ユニット104aからのイエロートナーにより現像し、イエロートナー像として可視化する。この後、感光体ドラム101aの回転に伴ってトナー像が感光体ドラム101aと中間転写ベルト110eとが当接する1次転写部に到来する。そして、この1次転写部において、1次転写ローラ110aに印加した1次転写バイアスにより、感光体ドラム上のイエロートナー像が中間転写ベルト上に転写される。
【0018】
次に、中間転写ベルト110eのイエロートナー像を担持した部位が移動すると、このときまでに上記と同様な方法で感光体ドラム101b上に形成されたマゼンタトナー像がイエロートナー像上から中間転写ベルト110eに転写される。同様に、中間転写ベルト110eが移動するにつれて、それぞれ1次転写部においてシアントナー像、ブラックトナー像が、イエロートナー像、マゼンタトナー像上に重ね合わせて転写される。これにより、中間転写ベルト上にフルカラートナー画像が形成される。なお、トナー像転写後に、感光体ドラム表面に残ったトナーは、クリーナユニット105a〜105dによって除去される。
【0019】
また、このトナー画像形成動作に並行してシート収納部である給紙カセット200に収容されたシートSはフィードローラ122により送り出された後、分離ローラ123によって一枚ずつ分離され、分離されたシートSは、レジストローラ対114に搬送される。次に、レジストローラ対114に搬送されたシートは、レジストローラ対114によりタイミングを合わされた後、2次転写部113に搬送される。そして、2次転写部113において、2次転写ローラ113aに正極性のバイアスを印加することにより、搬送されたシートSに、中間転写ベルト110e上の4色のトナー像が2次転写される。なお、シートSへの2次転写の後、中間転写ベルト上に残ったトナーは、転写ベルトクリーニング装置111によって除去され、除去されたトナーは、不図示の廃トナー回収容器へと回収される。
【0020】
トナー像転写後のシートSは、定着部115に搬送され、定着ローラ115aと加圧ローラ115bとによって加熱、加圧されてその表面にフルカラーのトナー像が永久画像として定着される。次に、フルカラーのトナー像が永久画像として定着された後、シートSは排出ローラ対117によって排紙トレイ118上へ排出される。
【0021】
ところで、図2の(a)に示すように、シートを給送した後、シートを搬送する搬送ローラであるフィードローラ122に圧接し、シート分離部を形成する分離ローラ123の内部には、図2の(b)に示すようにオイルダンパー130が接続されている。
【0022】
そして、このオイルダンパー130の設定トルクは、フィードローラ122と分離ローラ123のニップに1枚のシートSが給送された際、シートSを介してフィードローラ122から受ける摩擦力よりも小さく設定されている。これにより、フィードローラ122と分離ローラ123のニップに1枚のシートSが給送された際、シートSを介してフィードローラ122から受ける摩擦力が設定トルクを上回り、分離ローラ123が従動回転する。
【0023】
また、オイルダンパー130の設定トルクは、給送されたシートSが2枚以上の場合は、シート同士の間に生じる摩擦力よりも大きくなるように設定されている。これにより、2枚のシートがニップに給送されると、図3に示すように後続シートSbが、先行シートSaから受ける摩擦力がオイルダンパー130の設定トルクを下回り、シートSbとシートSaとの間で滑りが発生する。この結果、分離ローラ123は回転せず、2枚目以降のシートSはフィードローラ122と分離ローラ123のニップでせき止められる。このように、分離ローラ123を用いた構成において、給送されたシートSが2枚以上の場合、オイルダンパー130がトルクリミッタとして作用することで、シートSの重送を防止している。
【0024】
つまり、分離ローラ123に設定トルク以上の回転トルクが作用すると、分離ローラ123に接続されるオイルダンパー130により、フィードローラ122に対して追従回転可能な分離ローラ123の追従回転が許容される。また、設定トルク以下の回転トルクが作用すると、オイルダンパー130により、分離ローラ123の追従回転が阻止される。このように、分離ローラ123の回転方向に負荷を与えるトルク付加部としてオイルダンパー130を用いることにより、シートSの重送を防止することができる。
【0025】
ところで、重送を防止するためには先行シートSaと後続シートSbの間の摩擦力と、オイルダンパー130の設定トルクとの関係が重要である。しかし、シートSの種類により摩擦係数は異なるため、最適な設定トルクはシートSの種類により異なる。一方、オイルダンパー130は、回転速度に応じてトルクが変化する特性を有している。そこで、本実施の形態では、このオイルダンパー130の特性を利用し、シートSの種類に応じてフィードローラ122の回転速度を増減して分離ローラ123の回転速度を増減することにより、オイルダンパー130の設定トルクを変化させるようにしている。
【0026】
図4は、シート給送装置120の制御ブロック図である。150は、装置本体100Aの所定位置に設けられた制御部であるCPUであり、151はシートSの種類を入力する入力部を構成する操作部、152はフィードローラ122を駆動する駆動部である駆動モータである。そして、CPU150は、操作部151からのシート情報(厚さ情報)に基づき駆動モータ152の回転速度を変更し、フィードローラ122の回転速度を変更する。なお、シートSの種類は、センサにより検知し、このセンサからシート情報をCPU150に入力するようにしても良い。
【0027】
ここで、シートSの種類に対する設定トルクは、図5の(a)に示すように重送が発生しやすい薄紙に関してはフィードローラ122の回転速度を速くし、フィードローラ122に対して追従回転する分離ローラ123の回転速度を速くして設定トルクを高くする。また、重送が発生しにくい厚紙に関しては、フィードローラ122の回転速度を遅することにより分離ローラ123の回転速度を遅くして設定トルクを低くする。この設定トルクは、シートの厚みに応じて連続的に設定しても良いし、ユーザー入力を設定し、ある紙厚みの範囲に応じて段階的に設定しても良い。
【0028】
このように、オイルダンパー130のトルクは回転速度が速くなるほど大きくなる。このため、シートSの種類に応じて、フィードローラ122の回転速度を変更して分離ローラ123の回転速度を変更するようにすれば、オイルダンパー130の設定トルクを、重送を防止することが可能な最適なトルクに設定することができる。
【0029】
以上説明したように、分離ローラ123に分離ローラ123の回転速度の増減に伴って設定トルクが増減するオイルダンパー130を設けることにより、小スペース、低コストで設定トルクの変更を行うことができる。
【0030】
なお、図5の(b)に示すようにシート給送に要する駆動モータ152のモータートルクはシート搬送に要するトルクとオイルダンパー130の負荷トルクが主に占める。シート搬送に要するトルクに関しては一般的に厚紙の方が高い負荷トルクとなる。また、オイルダンパー130の負荷トルクに関しては、既述したように厚紙では高く設定する必要はない。このため、トルクリミッタを使用した場合に較べて厚紙を給送するのに要する負荷トルクを下げることができ、これにより駆動モータ152にかかる最大負荷トルクを低減でき、駆動モータ152のコストダウンを図ることができる。
【0031】
なお、これまでの説明においては、分離ローラ123の内側にオイルダンパー130が接続されている場合について説明したが、図6に示すように、分離ローラ123の軸123aにオイルダンパー130を接続するようにしても良い。また、シートSの種類に応じてオイルダンパーの設定トルクを変更し、シートSの重送を改善する方法は、分離ローラを逆回転駆動する手段を設けたリタードローラ224を用いたシート給送装置にても適用可能である。
【0032】
次に、このようなリタードローラを用いた本発明の第2の実施の形態について説明する。図7は、本実施の形態に係る画像形成装置に設けられたシート給送装置の構成を示す図である。なお、図7において、既述した図2と同一符号は、同一又は相当部分を示している。
【0033】
図7の(a)及び(b)において、221は給紙ローラ(シート給送ローラ)、224はフィードローラ122に圧接するリタードローラである。なお、231は駆動モータ152により回転する駆動ギア、233はフィードローラ122の軸122aに固着された駆動伝達ギア、232はリタードローラ224の軸224aに固着された駆動伝達ギアである。そして、駆動ギア231を介して伝達される駆動部である駆動モータ152の駆動により、フィードローラ122はシート搬送方向(反時計回り)に、リタードローラ224はシート搬送方向と逆方向(反時計回り)に回転する。
【0034】
ここで、図7の(b)に示すようにリタードローラ224の内部にはオイルダンパー130が接続されている。そして、このオイルダンパー130により、シートが給紙ローラ221によってピックアップされ、フィードローラ122及びリタードローラ224のニップに送り込まれるまでは、リタードローラ224はフィードローラ122と連れ回りする。
【0035】
また、フィードローラ122とリタードローラ224のニップにシートSが給送された際、シートSが1枚の場合は、シートSを介してフィードローラ122から受ける摩擦力がオイルダンパー130の設定トルクを上回り、リタードローラ224は従動する。一方、給送されたシートSが2枚以上の場合は、シートSを介してフィードローラ122から受ける摩擦力がオイルダンパー130の設定トルクを下回るため、駆動伝達ギア232を介して駆動を受けているリタードローラ224はシート搬送方向とは逆に回転する。これにより、リタードローラ224は、2枚目以降のシートSをフィードローラ122及びリタードローラ224のニップから押し戻すようになっている。
【0036】
ここで、既述したようにオイルダンパー130のトルクは回転速度が速くなるほど大きくなる。このため、シートSの種類に応じてフィードローラ122の回転速度を変更するようにすれば、オイルダンパー130の設定トルクを、重送を防止することが可能な最適なトルクに設定することができる。このように、リタードローラ224へのトルク付加部としてオイルダンパー130を用いることで、シートSの重送を防止することができる。
【0037】
以上説明したように、本実施の形態においても既述した第1の実施の形態と同様に、シートの種類に応じてフィードローラ122の回転速度を変更することにより、オイルダンパー130の設定トルクを変更し、重送を防止することができる。
【0038】
なお、これまでの説明においては、リタードローラ224の内側にオイルダンパー130を接続した場合について説明したが、図8に示すように、リタードローラ224の軸224aにオイルダンパー130を接続するようにしても良い。また、これまでの説明においては、リタードローラ224とフィードローラ122を同一の駆動源(駆動モータ152)で駆動している。しかし、別駆動源であっても、リタードローラ224の速度がフィードローラ122の速度に連動していれば、同様の効果を得ることができる。
【0039】
なお、このようにリタードローラ224をフィードローラ122と別駆動するようにした場合、フィードローラ122を一定の速度に固定し、リタードローラ224の速度を変化させることによって、シート厚みに応じた重送性能を設定することが可能である。この場合、フィードローラ122の速度を一定とすることができるので、スループットに影響を与えることがない。
【0040】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。図9は、本実施の形態に係るシート給送装置の構成を示す図である。なお、図9において、既述した図2と同一符号は、同一又は相当部分を示している。
【0041】
図9において、点Aはフィードローラ122がシートSをピックアップする地点を示し、点Bはフィードローラ122と分離ローラ123のニップを示し、点Cはレジストローラ対114のニップを示している。
【0042】
ここで、A地点〜B地点手前の間に関して、フィードローラ122によりピックアップされたシートSが分離ローラ123に接触した時に、シート先端が折れてしまうという問題ある。その要因のひとつとして、分離ローラ123に接続されたオイルダンパー130の負荷トルクにより、分離ローラ123の回転速度が不安定になることが挙げられる。
【0043】
また、B地点手前〜C地点手前の間に関して、シートSがフィードローラ122と分離ローラ123のニップBに来たときには、シートSの重送を防止するために設定トルクを高くする必要がある。さらに、シートSがレジストローラ対114のニップCに来たとき、オイルダンパー130の設定トルクが高いと、シートSに大きなバックテンションがかかり、シートSの搬送距離がズレてしまう可能性がある。
【0044】
そこで、本実施の形態においては、シートSの搬送位置に応じてオイルダンパー130の設定トルクを変更することにより、紙先端折れの改善、重送の改善、シート搬送性の向上を図るようにしている。
【0045】
次に、シートSの搬送位置に応じたオイルダンパー130の設定トルクの変更について説明する。まず、A地点〜B地点手前の間に関しては、オイルダンパー130の負荷トルクにより、分離ローラ123の回転速度が不安定になることがないように、オイルダンパー130の設定トルクを下げるようにする。
【0046】
このため、本実施の形態においては、A地点〜B地点手前の間において、シートSが分離ローラ123に接触するまでは、すなわちシートSが分離ローラ123に接触する直前までフィードローラ122の回転速度を遅く(減速)している。これにより、オイルダンパー130の設定トルクが低くなり、この結果、分離ローラ123の回転速度が安定し、先端折れを改善することが可能となる。
【0047】
また、B地点手前〜C地点手前の間に関しては、すなわちシートSが分離ローラ123に接触してからフィードローラ122と分離ローラ123のニップBに達する前に、フィードローラ122の回転速度を速く(増速)している。これにより、オイルダンパー130の設定トルクが高くなり、この結果、重送を防止することが可能となる。さらに、ニップ通過後、シートSがニップCに到達する前にフィードローラ122の回転速度を遅くし、オイルダンパー130の設定トルクを低くする。これにより、シートSにかかるバックテンションを低減させ、シートSの搬送性能を向上させることができる。
【0048】
なお、図10は、このようなシートSの各搬送位置おける、回転速度と設定トルクの関係を示す図である。そして、図10に示すようにシートの搬送位置に応じてフィードローラ122の回転速度を変更することによって設定トルクを変更することにより、紙先端折れや重送の改善、シート搬送性の向上が可能となる。なお、このような設定トルクを変更するタイミングは、駆動モータ152のパルスをカウントする、あるいはタイマによる計時に基づいてCPUが決定する。
【0049】
また、フィードローラ122の回転速度の変更方法としては、図10に示すもの以外にも回転速度を徐々に速くしたり、徐々に遅くしたりしても良く、この場合でも同様の効果が得られる。さらに、シートSの搬送位置に応じてオイルダンパー130の設定トルクを変更し、先端折れの改善、重送の改善、シート搬送性の向上を図る方法は、図11に示すように、リタードローラ224を用いたシート給送装置にても適用可能である。
【0050】
そして、このようにリタードローラ224を用いたシート給送装置においても、図10に示すようにシートSの搬送位置によって、フィードローラ122の回転速度を変更し、オイルダンパー130の設定トルクを変化させるようにする。これにより、先端折れや重送の改善、シート搬送性の向上が可能となる。なお、既述したように、リタードローラ224とフィードローラ122を別駆動にしても、同様な効果が得られることはいうまでもない。また、シートの搬送位置により、フィードローラ122の回転速度を変更することで、設定トルクを最適化し、紙先端折れ、重送の改善や紙搬送性能の向上が実現可能となる。
【0051】
なお、これまではフルカラーレーザプリンタ100に設けられるシート給送装置について説明してきたが、本発明は、これに限らず、複写機、ファクシミリ等に設けられるシート給送装置にも適用することができるのは言うまでもない。また、これまではトルク付加部としてオイルダンパー130を例に挙げたが、本発明は、これに限らず、速度に比例して負荷トルクが大きくなる構成のものであれば、同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0052】
100…フルカラーレーザプリンタ、100A…フルカラーレーザプリンタ本体、100B…画像形成部、120…シート給送装置、122…フィードローラ、123…分離ローラ、130…オイルダンパー、150…CPU、151…操作部、152…駆動モータ、200…給紙カセット、221…給紙ローラ、224…リタードローラ、S…シート
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、特に画像形成部にシートを1枚ずつ分離して給送するためのシート分離部の構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のプリンタ、複写機、ファクシミリ等の画像形成装置は、シート給送装置により給送されたシートに対して画像を形成するようにしている。ここで、シートを給送する際、シートが2枚以上送り出されるシートの重送が発生する場合がある。そこで、このようなシートの重送を防ぐため、従来はシートを1枚ずつ分離して給送するためのシート分離部を備えている。このようなシート分離部としては、給送ローラと、給送ローラと圧接すると共にトルクリミッタを内蔵した分離ローラ、あるいはリタードローラとにより構成されたものがある。
【0003】
ところで、従来のシート分離部において、重送を防止するためには重送されるシート間の摩擦力とトルクリミッタの設定トルクの関係が重要であるが、種類によりシートの摩擦係数は異なるため、最適な設定トルクはシートの種類(厚み)により異なる。そこで、従来は、トルクリミッタの設定トルクをシートの厚みにより変更するため、設定トルクの異なる複数のトルクリミッタを設け、その接続先を変更するものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−2992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このような従来のシート分離部を備えた画像形成装置では、設定トルクの違うトルクリミッタを複数必要とし、またその接続先を変更する切り替え手段も必要であるため、部品点数が多くなってコストアップに繋がる。さらに、複数のトルクリミッタや切り替え手段の設置のためのスペースを必要とし、装置の大型化にも繋がる。
【0006】
そこで、本発明は、このような現状に鑑みてなされたものであり、小スペース、低コストで設定トルクの変更を行うことのできる画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、シートを搬送する搬送ローラ及び前記搬送ローラに圧接し、かつ前記搬送ローラに対して追従回転可能な分離ローラとにより形成されたシート分離部を備えた画像形成装置において、前記分離ローラに接続され、前記分離ローラに設定トルク以上の回転トルクが作用すると前記分離ローラの追従回転を許容し、設定トルク以下の回転トルクが作用すると追従回転を阻止すると共に、前記分離ローラの回転速度の増減に伴って前記設定トルクが増減するトルク付加部と、シート情報を入力する入力部と、前記入力部から入力されたシート情報に応じて前記分離ローラの回転速度を増減し、前記トルク付加部の前記設定トルクを変更する制御部と、を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、分離ローラに分離ローラの回転速度の増減に伴って設定トルクが増減するトルク付加部を設けることにより、小スペース、低コストで設定トルクの変更を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置の一例であるフルカラーレーザプリンタの全体構成図。
【図2】上記フルカラーレーザプリンタに設けられたシート給送装置の構成を説明する図。
【図3】上記シート給送装置の分離ローラによるシートの分離作用を説明する図。
【図4】上記シート給送装置の制御ブロック図。
【図5】(a)は、上記分離ローラに設けられたオイルダンパーの回転速度と設定トルクの関係を示す図、(b)はシートの種類に対する給紙トルクの関係を示す図。
【図6】上記シート給送装置の他の構成を説明する図。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る画像形成装置に設けられたシート給送装置の構成を示す図。
【図8】上記シート給送装置の他の構成を説明する図。
【図9】本発明の第3の実施の形態に係る画像形成装置に設けられたシート給送装置の構成を示す図。
【図10】上記シート給送装置の各シート位置おける回転速度と設定トルクの関係を示す図。
【図11】上記シート給送装置の他の構成を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置の一例であるフルカラーレーザプリンタの全体構成図である。図1において、100はフルカラーレーザプリンタ、100Aはフルカラーレーザプリンタ本体(以下、プリンタ本体という)である。この装置本体であるプリンタ本体101Aには、シートに画像を形成する画像形成部100B、シートを給送するシート給送装置120等が設けられている。
【0011】
画像形成部100Bは、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの4色のトナー画像を形成するプロセスカートリッジ103a〜103dを備えている。なお、このプロセスカートリッジ103a〜103dは、像担持体である感光体ドラム101a〜101d等を備え、プリンタ本体101Aに着脱可能に装着されている。
【0012】
また、画像形成部100Bは、プロセスカートリッジ103a〜103dの鉛直下方に配置され、画像情報に基づいてレーザービームを照射し、感光体ドラム101a〜101d上に静電潜像を形成するスキャナユニット109を備えている。ここで、各プロセスカートリッジ103a〜103dは、静電潜像にトナーを付着させてトナー像として顕像化する現像ユニット104a〜104dと、クリーナユニット105a〜105dによって構成されている。そして、現像ユニット104a〜104dは、現像ローラ106a〜106dと、現像剤塗布ローラ107a〜107d及びトナー容器を有している。クリーナユニット105a〜105dは、感光体ドラム101a〜101dと、感光体ドラム表面を均一に帯電する帯電ローラ102a〜102dと、ドラムクリーニングブレード108a〜108dと、廃トナー容器とを有している。
【0013】
また、図1において、110は中間転写ベルトユニットであり、この中間転写ベルトユニット110は、中間転写ベルト110eと、中間転写ベルト110eの内側に配設された1次転写ローラ110a〜110dを備えている。なお、中間転写ベルト110eは、駆動ローラ110f、テンションローラ110gに張架されており、テンションローラ110gが矢印T方向に張力をかけている。また、1次転写ローラ110a〜110dは、各感光体ドラム101a〜101dに対向して配設されており、不図示のバイアス印加手段により転写バイアスを印加する構成となっている。そして、この1次転写ローラ110a〜110dによって中間転写ベルト110eに1次転写バイアスを印加することにより、感光体ドラム上の各色トナー像が順次中間転写ベルト110eに転写され、これにより中間転写ベルト上にはフルカラー画像が形成される。
【0014】
また、113は駆動ローラ110fと2次転写ローラ113aとにより構成され、順次中間転写ベルト110eに形成されたフルカラー画像をシートに転写する2次転写部である。115は、シート上に形成したトナー画像に熱及び圧力を加えてトナー像を定着させる定着部であり、内部に不図示のヒータを内蔵した定着ローラ115aと、定着ローラ115aに圧接する加圧ローラ115bとを有している。
【0015】
シート給送装置120は、プリンタ本体101Aに着脱自在に装着された給紙カセット200と、給紙カセット200に収納されたシートSを給送するシート給送部を構成するフィードローラ122等を有している。そして、給紙カセット200に収納されたシートSを給送する際は、シートSに圧接しているフィードローラ122を回転させてシートSを送り出すようにしている。なお、このように送り出されたシートSは、この後、フィードローラ122及びフィードローラ122に圧接する分離ローラ123により構成される分離部によって一枚ずつ分離された後、レジストローラ対114に搬送される。
【0016】
次に、このように構成されたフルカラーレーザプリンタ100の画像形成動作について説明する。不図示のパソコン等から画像信号がスキャナユニット109に入力されると、スキャナユニット109から、画像信号に対応したレーザ光が感光体ドラム上に照射される。このとき感光体ドラム101a〜101dは、帯電ローラ102a〜102dにより表面が予め所定の極性・電位に一様に帯電されており、スキャナユニット109からレーザ光が照射されることによって表面に静電潜像が形成される。この後、この静電潜像を現像ユニット104a〜104dにより現像し、可視化する。
【0017】
例えば、まず感光体ドラム101aに、原稿のイエロー成分色の画像信号によるレーザ光をスキャナユニット109から照射し、感光体ドラム上にイエローの静電潜像を形成する。そして、このイエローの静電潜像を、現像ユニット104aからのイエロートナーにより現像し、イエロートナー像として可視化する。この後、感光体ドラム101aの回転に伴ってトナー像が感光体ドラム101aと中間転写ベルト110eとが当接する1次転写部に到来する。そして、この1次転写部において、1次転写ローラ110aに印加した1次転写バイアスにより、感光体ドラム上のイエロートナー像が中間転写ベルト上に転写される。
【0018】
次に、中間転写ベルト110eのイエロートナー像を担持した部位が移動すると、このときまでに上記と同様な方法で感光体ドラム101b上に形成されたマゼンタトナー像がイエロートナー像上から中間転写ベルト110eに転写される。同様に、中間転写ベルト110eが移動するにつれて、それぞれ1次転写部においてシアントナー像、ブラックトナー像が、イエロートナー像、マゼンタトナー像上に重ね合わせて転写される。これにより、中間転写ベルト上にフルカラートナー画像が形成される。なお、トナー像転写後に、感光体ドラム表面に残ったトナーは、クリーナユニット105a〜105dによって除去される。
【0019】
また、このトナー画像形成動作に並行してシート収納部である給紙カセット200に収容されたシートSはフィードローラ122により送り出された後、分離ローラ123によって一枚ずつ分離され、分離されたシートSは、レジストローラ対114に搬送される。次に、レジストローラ対114に搬送されたシートは、レジストローラ対114によりタイミングを合わされた後、2次転写部113に搬送される。そして、2次転写部113において、2次転写ローラ113aに正極性のバイアスを印加することにより、搬送されたシートSに、中間転写ベルト110e上の4色のトナー像が2次転写される。なお、シートSへの2次転写の後、中間転写ベルト上に残ったトナーは、転写ベルトクリーニング装置111によって除去され、除去されたトナーは、不図示の廃トナー回収容器へと回収される。
【0020】
トナー像転写後のシートSは、定着部115に搬送され、定着ローラ115aと加圧ローラ115bとによって加熱、加圧されてその表面にフルカラーのトナー像が永久画像として定着される。次に、フルカラーのトナー像が永久画像として定着された後、シートSは排出ローラ対117によって排紙トレイ118上へ排出される。
【0021】
ところで、図2の(a)に示すように、シートを給送した後、シートを搬送する搬送ローラであるフィードローラ122に圧接し、シート分離部を形成する分離ローラ123の内部には、図2の(b)に示すようにオイルダンパー130が接続されている。
【0022】
そして、このオイルダンパー130の設定トルクは、フィードローラ122と分離ローラ123のニップに1枚のシートSが給送された際、シートSを介してフィードローラ122から受ける摩擦力よりも小さく設定されている。これにより、フィードローラ122と分離ローラ123のニップに1枚のシートSが給送された際、シートSを介してフィードローラ122から受ける摩擦力が設定トルクを上回り、分離ローラ123が従動回転する。
【0023】
また、オイルダンパー130の設定トルクは、給送されたシートSが2枚以上の場合は、シート同士の間に生じる摩擦力よりも大きくなるように設定されている。これにより、2枚のシートがニップに給送されると、図3に示すように後続シートSbが、先行シートSaから受ける摩擦力がオイルダンパー130の設定トルクを下回り、シートSbとシートSaとの間で滑りが発生する。この結果、分離ローラ123は回転せず、2枚目以降のシートSはフィードローラ122と分離ローラ123のニップでせき止められる。このように、分離ローラ123を用いた構成において、給送されたシートSが2枚以上の場合、オイルダンパー130がトルクリミッタとして作用することで、シートSの重送を防止している。
【0024】
つまり、分離ローラ123に設定トルク以上の回転トルクが作用すると、分離ローラ123に接続されるオイルダンパー130により、フィードローラ122に対して追従回転可能な分離ローラ123の追従回転が許容される。また、設定トルク以下の回転トルクが作用すると、オイルダンパー130により、分離ローラ123の追従回転が阻止される。このように、分離ローラ123の回転方向に負荷を与えるトルク付加部としてオイルダンパー130を用いることにより、シートSの重送を防止することができる。
【0025】
ところで、重送を防止するためには先行シートSaと後続シートSbの間の摩擦力と、オイルダンパー130の設定トルクとの関係が重要である。しかし、シートSの種類により摩擦係数は異なるため、最適な設定トルクはシートSの種類により異なる。一方、オイルダンパー130は、回転速度に応じてトルクが変化する特性を有している。そこで、本実施の形態では、このオイルダンパー130の特性を利用し、シートSの種類に応じてフィードローラ122の回転速度を増減して分離ローラ123の回転速度を増減することにより、オイルダンパー130の設定トルクを変化させるようにしている。
【0026】
図4は、シート給送装置120の制御ブロック図である。150は、装置本体100Aの所定位置に設けられた制御部であるCPUであり、151はシートSの種類を入力する入力部を構成する操作部、152はフィードローラ122を駆動する駆動部である駆動モータである。そして、CPU150は、操作部151からのシート情報(厚さ情報)に基づき駆動モータ152の回転速度を変更し、フィードローラ122の回転速度を変更する。なお、シートSの種類は、センサにより検知し、このセンサからシート情報をCPU150に入力するようにしても良い。
【0027】
ここで、シートSの種類に対する設定トルクは、図5の(a)に示すように重送が発生しやすい薄紙に関してはフィードローラ122の回転速度を速くし、フィードローラ122に対して追従回転する分離ローラ123の回転速度を速くして設定トルクを高くする。また、重送が発生しにくい厚紙に関しては、フィードローラ122の回転速度を遅することにより分離ローラ123の回転速度を遅くして設定トルクを低くする。この設定トルクは、シートの厚みに応じて連続的に設定しても良いし、ユーザー入力を設定し、ある紙厚みの範囲に応じて段階的に設定しても良い。
【0028】
このように、オイルダンパー130のトルクは回転速度が速くなるほど大きくなる。このため、シートSの種類に応じて、フィードローラ122の回転速度を変更して分離ローラ123の回転速度を変更するようにすれば、オイルダンパー130の設定トルクを、重送を防止することが可能な最適なトルクに設定することができる。
【0029】
以上説明したように、分離ローラ123に分離ローラ123の回転速度の増減に伴って設定トルクが増減するオイルダンパー130を設けることにより、小スペース、低コストで設定トルクの変更を行うことができる。
【0030】
なお、図5の(b)に示すようにシート給送に要する駆動モータ152のモータートルクはシート搬送に要するトルクとオイルダンパー130の負荷トルクが主に占める。シート搬送に要するトルクに関しては一般的に厚紙の方が高い負荷トルクとなる。また、オイルダンパー130の負荷トルクに関しては、既述したように厚紙では高く設定する必要はない。このため、トルクリミッタを使用した場合に較べて厚紙を給送するのに要する負荷トルクを下げることができ、これにより駆動モータ152にかかる最大負荷トルクを低減でき、駆動モータ152のコストダウンを図ることができる。
【0031】
なお、これまでの説明においては、分離ローラ123の内側にオイルダンパー130が接続されている場合について説明したが、図6に示すように、分離ローラ123の軸123aにオイルダンパー130を接続するようにしても良い。また、シートSの種類に応じてオイルダンパーの設定トルクを変更し、シートSの重送を改善する方法は、分離ローラを逆回転駆動する手段を設けたリタードローラ224を用いたシート給送装置にても適用可能である。
【0032】
次に、このようなリタードローラを用いた本発明の第2の実施の形態について説明する。図7は、本実施の形態に係る画像形成装置に設けられたシート給送装置の構成を示す図である。なお、図7において、既述した図2と同一符号は、同一又は相当部分を示している。
【0033】
図7の(a)及び(b)において、221は給紙ローラ(シート給送ローラ)、224はフィードローラ122に圧接するリタードローラである。なお、231は駆動モータ152により回転する駆動ギア、233はフィードローラ122の軸122aに固着された駆動伝達ギア、232はリタードローラ224の軸224aに固着された駆動伝達ギアである。そして、駆動ギア231を介して伝達される駆動部である駆動モータ152の駆動により、フィードローラ122はシート搬送方向(反時計回り)に、リタードローラ224はシート搬送方向と逆方向(反時計回り)に回転する。
【0034】
ここで、図7の(b)に示すようにリタードローラ224の内部にはオイルダンパー130が接続されている。そして、このオイルダンパー130により、シートが給紙ローラ221によってピックアップされ、フィードローラ122及びリタードローラ224のニップに送り込まれるまでは、リタードローラ224はフィードローラ122と連れ回りする。
【0035】
また、フィードローラ122とリタードローラ224のニップにシートSが給送された際、シートSが1枚の場合は、シートSを介してフィードローラ122から受ける摩擦力がオイルダンパー130の設定トルクを上回り、リタードローラ224は従動する。一方、給送されたシートSが2枚以上の場合は、シートSを介してフィードローラ122から受ける摩擦力がオイルダンパー130の設定トルクを下回るため、駆動伝達ギア232を介して駆動を受けているリタードローラ224はシート搬送方向とは逆に回転する。これにより、リタードローラ224は、2枚目以降のシートSをフィードローラ122及びリタードローラ224のニップから押し戻すようになっている。
【0036】
ここで、既述したようにオイルダンパー130のトルクは回転速度が速くなるほど大きくなる。このため、シートSの種類に応じてフィードローラ122の回転速度を変更するようにすれば、オイルダンパー130の設定トルクを、重送を防止することが可能な最適なトルクに設定することができる。このように、リタードローラ224へのトルク付加部としてオイルダンパー130を用いることで、シートSの重送を防止することができる。
【0037】
以上説明したように、本実施の形態においても既述した第1の実施の形態と同様に、シートの種類に応じてフィードローラ122の回転速度を変更することにより、オイルダンパー130の設定トルクを変更し、重送を防止することができる。
【0038】
なお、これまでの説明においては、リタードローラ224の内側にオイルダンパー130を接続した場合について説明したが、図8に示すように、リタードローラ224の軸224aにオイルダンパー130を接続するようにしても良い。また、これまでの説明においては、リタードローラ224とフィードローラ122を同一の駆動源(駆動モータ152)で駆動している。しかし、別駆動源であっても、リタードローラ224の速度がフィードローラ122の速度に連動していれば、同様の効果を得ることができる。
【0039】
なお、このようにリタードローラ224をフィードローラ122と別駆動するようにした場合、フィードローラ122を一定の速度に固定し、リタードローラ224の速度を変化させることによって、シート厚みに応じた重送性能を設定することが可能である。この場合、フィードローラ122の速度を一定とすることができるので、スループットに影響を与えることがない。
【0040】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。図9は、本実施の形態に係るシート給送装置の構成を示す図である。なお、図9において、既述した図2と同一符号は、同一又は相当部分を示している。
【0041】
図9において、点Aはフィードローラ122がシートSをピックアップする地点を示し、点Bはフィードローラ122と分離ローラ123のニップを示し、点Cはレジストローラ対114のニップを示している。
【0042】
ここで、A地点〜B地点手前の間に関して、フィードローラ122によりピックアップされたシートSが分離ローラ123に接触した時に、シート先端が折れてしまうという問題ある。その要因のひとつとして、分離ローラ123に接続されたオイルダンパー130の負荷トルクにより、分離ローラ123の回転速度が不安定になることが挙げられる。
【0043】
また、B地点手前〜C地点手前の間に関して、シートSがフィードローラ122と分離ローラ123のニップBに来たときには、シートSの重送を防止するために設定トルクを高くする必要がある。さらに、シートSがレジストローラ対114のニップCに来たとき、オイルダンパー130の設定トルクが高いと、シートSに大きなバックテンションがかかり、シートSの搬送距離がズレてしまう可能性がある。
【0044】
そこで、本実施の形態においては、シートSの搬送位置に応じてオイルダンパー130の設定トルクを変更することにより、紙先端折れの改善、重送の改善、シート搬送性の向上を図るようにしている。
【0045】
次に、シートSの搬送位置に応じたオイルダンパー130の設定トルクの変更について説明する。まず、A地点〜B地点手前の間に関しては、オイルダンパー130の負荷トルクにより、分離ローラ123の回転速度が不安定になることがないように、オイルダンパー130の設定トルクを下げるようにする。
【0046】
このため、本実施の形態においては、A地点〜B地点手前の間において、シートSが分離ローラ123に接触するまでは、すなわちシートSが分離ローラ123に接触する直前までフィードローラ122の回転速度を遅く(減速)している。これにより、オイルダンパー130の設定トルクが低くなり、この結果、分離ローラ123の回転速度が安定し、先端折れを改善することが可能となる。
【0047】
また、B地点手前〜C地点手前の間に関しては、すなわちシートSが分離ローラ123に接触してからフィードローラ122と分離ローラ123のニップBに達する前に、フィードローラ122の回転速度を速く(増速)している。これにより、オイルダンパー130の設定トルクが高くなり、この結果、重送を防止することが可能となる。さらに、ニップ通過後、シートSがニップCに到達する前にフィードローラ122の回転速度を遅くし、オイルダンパー130の設定トルクを低くする。これにより、シートSにかかるバックテンションを低減させ、シートSの搬送性能を向上させることができる。
【0048】
なお、図10は、このようなシートSの各搬送位置おける、回転速度と設定トルクの関係を示す図である。そして、図10に示すようにシートの搬送位置に応じてフィードローラ122の回転速度を変更することによって設定トルクを変更することにより、紙先端折れや重送の改善、シート搬送性の向上が可能となる。なお、このような設定トルクを変更するタイミングは、駆動モータ152のパルスをカウントする、あるいはタイマによる計時に基づいてCPUが決定する。
【0049】
また、フィードローラ122の回転速度の変更方法としては、図10に示すもの以外にも回転速度を徐々に速くしたり、徐々に遅くしたりしても良く、この場合でも同様の効果が得られる。さらに、シートSの搬送位置に応じてオイルダンパー130の設定トルクを変更し、先端折れの改善、重送の改善、シート搬送性の向上を図る方法は、図11に示すように、リタードローラ224を用いたシート給送装置にても適用可能である。
【0050】
そして、このようにリタードローラ224を用いたシート給送装置においても、図10に示すようにシートSの搬送位置によって、フィードローラ122の回転速度を変更し、オイルダンパー130の設定トルクを変化させるようにする。これにより、先端折れや重送の改善、シート搬送性の向上が可能となる。なお、既述したように、リタードローラ224とフィードローラ122を別駆動にしても、同様な効果が得られることはいうまでもない。また、シートの搬送位置により、フィードローラ122の回転速度を変更することで、設定トルクを最適化し、紙先端折れ、重送の改善や紙搬送性能の向上が実現可能となる。
【0051】
なお、これまではフルカラーレーザプリンタ100に設けられるシート給送装置について説明してきたが、本発明は、これに限らず、複写機、ファクシミリ等に設けられるシート給送装置にも適用することができるのは言うまでもない。また、これまではトルク付加部としてオイルダンパー130を例に挙げたが、本発明は、これに限らず、速度に比例して負荷トルクが大きくなる構成のものであれば、同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0052】
100…フルカラーレーザプリンタ、100A…フルカラーレーザプリンタ本体、100B…画像形成部、120…シート給送装置、122…フィードローラ、123…分離ローラ、130…オイルダンパー、150…CPU、151…操作部、152…駆動モータ、200…給紙カセット、221…給紙ローラ、224…リタードローラ、S…シート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを搬送する搬送ローラ及び前記搬送ローラに圧接し、かつ前記搬送ローラに対して追従回転可能な分離ローラとにより形成されたシート分離部を備えた画像形成装置において、
前記分離ローラに接続され、前記分離ローラに設定トルク以上の回転トルクが作用すると前記分離ローラの追従回転を許容し、設定トルク以下の回転トルクが作用すると追従回転を阻止すると共に、前記分離ローラの回転速度の増減に伴って前記設定トルクが増減するトルク付加部と、
シート情報を入力する入力部と、
前記入力部から入力されたシート情報に応じて前記分離ローラの回転速度を増減し、前記トルク付加部の前記設定トルクを変更する制御部と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記搬送ローラを回転させる駆動部を備え、
前記制御部は、前記入力部から入力されたシート情報に応じて前記駆動部を制御して前記搬送ローラの回転速度を増減させ、前記搬送ローラに対して追従回転する前記分離ローラの回転速度を増減させることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記分離ローラを回転させる駆動部を備え、
前記制御部は、前記入力部から入力されたシート情報に応じて前記駆動部を制御して前記分離ローラの回転速度を増減させることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記シート情報はシートの厚さ情報であり、前記制御部はシートが厚いほど前記分離ローラの回転速度を遅くして前記トルク付加部の前記設定トルクを低減させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記搬送ローラは、シート収納部に収納されているシートを送り出した後、前記分離ローラと共にシートを分離することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
シート収納部に収納されているシートを送り出すシート給送ローラを備え、
前記搬送ローラは、前記シート給送ローラにより送り出されたシートを前記分離ローラと共に分離することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記分離ローラの回転速度を、シートが前記分離ローラに接触する直前に減速させた後、シートが前記搬送ローラと前記分離ローラのニップに達する前に増速させ、ニップ通過後は減速させることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
シートを搬送する搬送ローラ及び前記搬送ローラに圧接し、かつ前記搬送ローラに対して追従回転可能な分離ローラとにより形成されたシート分離部を備えた画像形成装置において、
前記分離ローラに、前記分離ローラに設定トルク以上の回転トルクが作用すると前記分離ローラの前記搬送ローラに対する追従回転を許容し、設定トルク以下の回転トルクが作用すると前記搬送ローラに対する追従回転を阻止すると共に、前記分離ローラの回転速度の増減に伴って前記設定トルクが増減するトルク付加部を接続することを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
シートを搬送する搬送ローラ及び前記搬送ローラに圧接し、かつ前記搬送ローラに対して追従回転可能な分離ローラとにより形成されたシート分離部を備えた画像形成装置において、
前記分離ローラに接続され、前記分離ローラに設定トルク以上の回転トルクが作用すると前記分離ローラの追従回転を許容し、設定トルク以下の回転トルクが作用すると追従回転を阻止すると共に、前記分離ローラの回転速度の増減に伴って前記設定トルクが増減するトルク付加部と、
シート情報を入力する入力部と、
前記入力部から入力されたシート情報に応じて前記分離ローラの回転速度を増減し、前記トルク付加部の前記設定トルクを変更する制御部と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記搬送ローラを回転させる駆動部を備え、
前記制御部は、前記入力部から入力されたシート情報に応じて前記駆動部を制御して前記搬送ローラの回転速度を増減させ、前記搬送ローラに対して追従回転する前記分離ローラの回転速度を増減させることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記分離ローラを回転させる駆動部を備え、
前記制御部は、前記入力部から入力されたシート情報に応じて前記駆動部を制御して前記分離ローラの回転速度を増減させることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記シート情報はシートの厚さ情報であり、前記制御部はシートが厚いほど前記分離ローラの回転速度を遅くして前記トルク付加部の前記設定トルクを低減させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記搬送ローラは、シート収納部に収納されているシートを送り出した後、前記分離ローラと共にシートを分離することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
シート収納部に収納されているシートを送り出すシート給送ローラを備え、
前記搬送ローラは、前記シート給送ローラにより送り出されたシートを前記分離ローラと共に分離することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記分離ローラの回転速度を、シートが前記分離ローラに接触する直前に減速させた後、シートが前記搬送ローラと前記分離ローラのニップに達する前に増速させ、ニップ通過後は減速させることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
シートを搬送する搬送ローラ及び前記搬送ローラに圧接し、かつ前記搬送ローラに対して追従回転可能な分離ローラとにより形成されたシート分離部を備えた画像形成装置において、
前記分離ローラに、前記分離ローラに設定トルク以上の回転トルクが作用すると前記分離ローラの前記搬送ローラに対する追従回転を許容し、設定トルク以下の回転トルクが作用すると前記搬送ローラに対する追従回転を阻止すると共に、前記分離ローラの回転速度の増減に伴って前記設定トルクが増減するトルク付加部を接続することを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
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【図5】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−71904(P2012−71904A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215925(P2010−215925)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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