説明

画像形成装置

【課題】トナー像の転写を良好に実施できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】像担持体(18)を有しており、その駆動によって像担持体上の潜像をトナーで現像し、トナー像を形成する画像形成部(16)と、駆動及び従動の各ローラ間に掛け回され、記録材を下方から上方に向けて縦搬送し、その搬送面に記録材を載置して像担持体と転写ローラ(31)との間を走行しており、トナー像を記録材に直接的に転写する転写ベルト(50)とを具備し、駆動ローラ(52)は、転写ベルトの走行方向で見てトナー像の転写位置の上流側に配置されるとともに、転写ベルトのゆるみ側とのゆるみ側接点(S1)がトナー像の転写位置よりも像担持体寄りに設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写ベルトを用いて画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の画像形成装置では電子写真方式が用いられており、帯電器が像担持体、例えば感光体ドラムを予め帯電し、露光器が感光体ドラムの表面に光を照射すると、この感光体ドラムの表面には静電潜像が形成される。また、現像器はトナーを担持しており、現像バイアス電圧を印加すると、予め電荷を帯びたトナーは静電潜像に付着し、トナー像が形成される。
【0003】
そして、このトナー像を転写ベルト上の記録材に、或いは中間転写ベルトを介して記録材に転写して定着させる。
ここで、転写ベルト等の走行を駆動ローラの駆動力で行う技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。これにより、転写ベルト等には、駆動ローラから従動ローラに向かうゆるみ側と、従動ローラから駆動ローラに向かう張り側とが生ずる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−171075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の技術では、トナー像の転写不良を招くという問題がある。当該技術の駆動ローラは、トナー像の転写位置の下流側に配置されているからである。より詳しくは、この場合のベルトは、その張り側がトナー像の転写位置に近接されるのに対し、そのゆるみ側がトナー像の転写位置から離間しており、ベルトの表面と感光体ドラムとの接触範囲(巻きつき量)が少なくなるのである。
【0006】
そして、この問題は、転写ベルトが、記録材を水平方向ではなく、下方から上方に縦搬送する構造である場合には顕著になる。上記ゆるみ側が、ベルトの重力の影響を受けて、トナー像の転写位置からさらに下方に向けて離間するため、上記張り側の表面と像担持体の表面との接触範囲がより少なくなり得るからである。
【0007】
また、この問題の解決にあたり、ベルトの表面を擦って清掃するクリーニングユニットを備えている場合には、この表面の損傷がトナー像の転写不良を招くことから、当該損傷を回避する点にも留意する必要がある。
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消し、トナー像の転写を良好に実施できる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための第1の発明は、像担持体を有しており、その駆動によって像担持体上の潜像をトナーで現像し、トナー像を形成する画像形成部と、駆動及び従動の各ローラ間に掛け回され、記録材を下方から上方に向けて縦搬送し、その搬送面に記録材を載置して像担持体と転写ローラとの間を走行しており、トナー像を記録材に直接的に転写する転写ベルトとを具備し、駆動ローラは、転写ベルトの走行方向で見てトナー像の転写位置の上流側に配置されるとともに、転写ベルトのゆるみ側とのゆるみ側接点がトナー像の転写位置よりも像担持体寄りに設けられる。
【0009】
第1の発明によれば、転写ベルトは、記録材を下方から上方に縦搬送するベルトであり、駆動ローラと従動ローラとの間にて傾斜して掛け回され、像担持体と転写ローラとの間を走行しており、像担持体上に形成されたトナー像が記録材に転写される。
ここで、この転写ベルトの走行方向で見ると、駆動ローラはトナー像の転写位置の上流側に配置されており、駆動ローラから従動ローラに向かう転写ベルトのゆるみ側が像担持体に近接し、従動ローラから駆動ローラに向かう転写ベルトの張り側が像担持体から離れている。よって、転写ベルトの搬送面は像担持体の表面に巻きつき易くなる。
【0010】
また、この駆動ローラにおける転写ベルトの巻き掛け角度は、上記ゆるみ側接点から転写ベルトの張り側との張り側接点までにて規定されるが、本発明では、当該ゆるみ側接点がトナー像の転写位置よりも像担持体寄りに設けられるため、当該ゆるみ側接点がトナー像の転写位置よりも像担持体から離れている場合に比して、転写ベルトの搬送面の巻きつき量がより大きくなる。
【0011】
この結果、記録材の裏面側を像担持体に向けて強く押圧でき、トナー像の転写を良好に実施できる。
第2の発明は、第1の発明の構成において、トナー像の転写位置における像担持体の表面と転写ベルトの搬送面との巻きつき量が約1.0mm〜約5.0mmに設定されることを特徴とする。
【0012】
第2の発明によれば、第1の発明の作用に加えてさらに、搬送面の巻きつき量が約1.0mm〜約5.0mmに大きく設定されるので、像担持体から記録材への良好な転写性能を図りつつ、当該範囲内であれば記録材による像担持体への巻きつき等を防止でき、良好な分離性能も得られる。
第3の発明は、第1や第2の発明の構成において、ゆるみ側接点からトナー像の転写位置までの距離は、このトナー像の転写位置から、従動ローラが転写ベルトのゆるみ側に接する他のゆるみ側接点までの距離よりも短く設定されることを特徴とする。
【0013】
第3の発明によれば、第1や第2の発明の作用に加えてさらに、像担持体が従動ローラよりも駆動ローラに近接させており、転写ベルトの伸び量は、像担持体を従動ローラに近接させる場合に比して少なくて済み、この点も良好な転写性能の獲得に寄与する。また、転写ベルトの搬送面が像担持体の表面により確実に巻きつくことができる。
【0014】
第4の発明は、第1から第3の発明の構成において、像担持体の回転速度は、駆動ローラの回転速度よりも大きく設定され、これらの線速比が1.01〜1.03の範囲内で制御されていることを特徴とする。
第4の発明によれば、第1から第3の発明の作用に加えてさらに、像担持体の回転速度を転写ベルトの走行速度よりも上記範囲内にて大きく設定すれば、転写性能及び分離性能の双方を確実に満たす。
【0015】
第5の発明は、第1から第4の発明の構成において、転写ベルトは、潜像に付着するトナーとは逆極性の電圧を転写ローラに印加してトナー像を記録材に直接的に転写しており、搬送面に付着した残トナーを静電気力によって回収して搬送面を清掃するクリーニングローラを転写ベルトの張り側に備えたクリーニングユニットをさらに具備し、クリーニングローラは、その回転軸心が従動ローラにおける転写ベルトの巻き掛け角度から外れた位置に配置され、トレール方向で転写ベルトの転写面に当接するとともに、その回転速度が転写ベルトの走行速度に対して約1.0倍〜約1.2倍の速度に設定されることを特徴とする。
【0016】
第5の発明によれば、第1から第4の発明の作用に加えてさらに、転写ベルトは記録材を静電吸着搬送するベルトであり、潜像に付着するトナーとは逆極性の電圧を転写ローラに印加すると、トナー像が記録材に転写される。つまり、このトナーは像担持体から記録材に向けて積極的に移動し、搬送面にも強く付着し得るが、クリーニングユニットはその静電気力を用いて搬送面に付着した残トナーを回収しており、記録材の裏汚れを防止できる。
【0017】
ここで、単に搬送面を清掃すると、搬送面の損傷を招くが、本発明では、クリーニングローラを搬送面に直当てさせず、ずらして当接させており、また、クリーニングローラの表面が転写ベルトの走行方向に沿い、その搬送面を押さえ付けるトレール方向で搬送面に当接することから搬送面の損傷を防止でき、長寿命の転写ベルトになる。一方、クリーニングローラの回転速度は転写ベルトの走行速度よりも遅くならない速度に設定されるため、クリーニング性能を維持できる。
【0018】
しかも、静電吸着搬送する転写ベルトを用いれば、像担持体への巻きつきを容易に防止できるため、記録材の分離性が向上するし、また、次の定着に至るまで吸着させたまま搬送できることから、高速機等の性能安定化に寄与する。
第6の発明は、第5の発明の構成において、クリーニングローラは、転写ベルトの伸張率を約3%〜約5%に設定する張力をこの転写ベルトに付与していることを特徴とする。
【0019】
第6の発明によれば、第5の発明の作用に加えてさらに、クリーニングローラが転写ベルトに上記張力を付与すれば、クリーニング性能の向上を図れるし、また、転写ベルトの搬送面は像担持体の表面により一層巻き、転写性能の向上にも寄与する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、転写ベルトの搬送面の巻きつき量をより大きくし、また、クリーニングローラによる接触に改良を加えており、トナー像の転写を良好に実施できる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施例のプリンタの概略構成図である。
【図2】図1の転写ユニット周辺の説明図である。
【図3】図1の転写ユニットの説明図である。
【図4】図2の転写ローラ周辺の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1には、画像形成装置の一例であるモノクロ印刷用のプリンタ1の構造が概略的に示されている。図1に示された断面はプリンタ1の左側面からみたものである。このため、プリンタ1の前面は図1の右側に、背面は左側にそれぞれ位置する。
【0023】
図1に示されるように、プリンタ1の装置本体2の上方には排紙トレイ36が設けられ、この排紙トレイ36の近傍には、使用者の各種操作に供される複数の操作キーや、各種情報を表示する画面を配置したフロントカバー5が設けられている。
また、この装置本体2の下方には給紙カセット4が配置され、その収容部40には、枚葉の用紙(記録材)が積層された状態で収納されている。
【0024】
この図1でみて収容部40の右上方には給紙ローラ46が設けられており、用紙は、給紙カセット4の右上方に向けて送出され、この送出された用紙は、装置本体2の内部でプリンタ1の前面に沿って上方に向けて縦搬送される。
また、給紙カセット4は、プリンタ1の前面側、つまり、図1において右方向に向けて引き出し可能に構成されており、この引き出した状態にて、収容部40に新たな用紙を補充したり、用紙を別の種類の用紙に入れ替え可能となる。
【0025】
装置本体2の内部には、給紙カセット4からの用紙搬送方向でみて下流側に搬送ローラ10、レジストローラ14、画像形成部16及び転写ユニット30が順番に配置されている。
画像形成部16には1個の感光体ドラム(像担持体)18が設けられ、この感光体ドラム18は回転自在に設置され、ドラムモータによって図1の反時計回りに駆動する。なお、本実施例の感光体ドラム18は、その表面に非晶質シリコン系の層を有したa−Siドラムである。
【0026】
図1でみて感光体ドラム18の左方には露光部15が備えられており、この露光部15からは、レーザ光が感光体ドラム18に向けて照射される。そして、図1に示されるように、感光体ドラム18の周囲の適宜位置には、帯電器20、現像器24、転写ユニット30の転写ローラ31やクリーニングユニット25がそれぞれ設けられている。
【0027】
本実施例の帯電器20は、図1でみて感光体ドラム18の左斜め上方に位置し、感光体ドラム18に接する帯電ローラや、この帯電ローラの表面を研磨摺擦する摺擦ローラを有し、感光体ドラム18の表面を帯電させる。
現像器24は感光体ドラム18の左斜め下方に配置され、感光体ドラム18に対峙する現像ローラを有する。この現像ローラは現像モータによって図1の時計回りに駆動する。
【0028】
また、露光部15と給紙カセット4との間にはブラック用のトナーコンテナ23が配設されている。
ここで、本実施例の転写ユニット30は、後述のように静電気力で用紙を吸着搬送する弾性を有した転写ベルト50を有し(図2,3)、当該転写ベルト50は感光体ドラム18の斜め下方に配置され、ベルトモータによって図1〜3でみて時計回りに走行する。
【0029】
そして、転写ベルト50は、転写ローラ31を介して感光体ドラム18に対して右斜め下方から圧接可能に構成されている。これら転写ベルト50と感光体ドラム18とは、トナー像を用紙に転写するためのニップ部を形成する。なお、本実施例の転写ローラ31は、金属シャフト(直径8mm程度)上にEPDMの発泡ゴムを形成した直径14mm程度の大きさで構成され、転写ベルト50の裏面を感光体ドラム18に向けて押圧している。
【0030】
また、用紙搬送方向でみて転写ユニット30の下流側には、定着部32、排出分岐部34及び排出ローラ35が順番に配置されている(図1)。
本実施例では、転写ユニット30と手差しトレイ3との間に、この転写ユニット30とともに装置本体2に対して引き出し可能な搬送ユニット48を備え、この搬送ユニット48からみて装置本体2の前面側には両面印刷搬送路38が形成されている。この両面印刷搬送路38は、排出分岐部34から装置本体2の前面側で分岐して下方に向けて延び、レジストローラ14の上流側に連結している。
【0031】
ここで、上述した転写ベルト50には、ゴム製のシート材の両端部分を重ね合わせて接合したエンドレス形状のベルトや、継ぎ目を有しないシームレスのベルトが用いられており、図2,3に示されるように、下方のレジストローラ14側に配置された駆動ローラ52とその上方の定着部32側に配置された従動ローラ54との間に平行掛けされ、傾斜した状態で時計回りに走行している。
【0032】
つまり、図2,3に示される如く、本実施例の転写ベルト50は、駆動ローラ52から従動ローラ54に向かうゆるみ側が感光体ドラム18に近接する。そして、図3に示された駆動ローラ52のゆるみ側接点S1及び従動ローラ54のゆるみ側接点(他のゆるみ側接点)S2が、トナー像の転写位置よりも感光体ドラム18寄りにそれぞれ設けられている。
【0033】
具体的には、当該トナー像の転写位置における感光体ドラム18の表面と転写ベルト50の搬送面との巻きつき量(図4にLで示す)が約1.0mm〜約5.0mmに設定されるように、図3のゆるみ側接点S1及びゆるみ側接点S2が、転写ベルト50と感光体ドラム18とのニップ部よりも感光体ドラム18寄りにそれぞれ設けられている。
【0034】
しかも、本実施例のゆるみ側接点S1から当該ニップ部までの距離は、ゆるみ側接点S2から当該ニップ部までの距離よりも短く設定されており、感光体ドラム18は、従動ローラ54よりも駆動ローラ52寄りに設けられている(図2,3)。
そして、この感光体ドラム18の回転速度は、駆動ローラ52の回転速度よりも約2〜3%程度大きく設定され、線速比で云えば1.01〜1.03の範囲内で制御されている。
【0035】
なお、上述したゴム製のシート材には例えばアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などを使用し、トナーの離型性を高めるべく、その表面にはフッ素系(例えばPTFE)のコーティングが施されている。
また、この転写ベルト50の摩擦帯電特性は、感光体ドラム18の静電潜像に付着するトナーの摩擦帯電特性に対して逆極性の関係を有している。
【0036】
そして、転写ローラ31と感光体ドラム18との間に、その静電潜像に付着するトナーと逆極性の電圧を印加する。つまり、仮に本実施例で使用するトナーがプラス帯電性のトナーである場合には、転写ローラ31に当該トナーとは逆極性の電圧を印加すると、感光体ドラム18上のプラス帯電性のトナーは感光体ドラム18から離れ、基本的には転写ベルト50上の用紙に向かう。
【0037】
ここで、この転写ベルト50の搬送面には、この感光体ドラム18から離れたプラス帯電性のトナーや、感光体ドラム18の表面電位の上昇などで生じたマイナス帯電性のトナーが残トナーとして付着することがある。また、このプラス帯電性のトナーには、転写ベルト50の周回走行によって次第にチャージアップされた同じくプラス帯電性の残トナーも存在し得る。
【0038】
そこで、図2のクリーニングユニット57が転写ベルト50の搬送面に残留した残トナーを除去している。
本実施例のクリーニングユニット57は、図3にも示されるように、クリーニングローラ58、ブレード59や高圧基板、及びクリーニング補助部60などから構成される。
【0039】
クリーニングローラ58は、従動ローラ54から駆動ローラ52に向かう張り側、詳しくは、転写ベルト50の走行方向で見て従動ローラ54の下流側近傍に配置され、用紙を載置する搬送面に付着した残トナーを静電気力によって回収して搬送面から除去する。
より具体的には、図3にも示される如く、本実施例のクリーニングローラ58の回転軸心は従動ローラ54における転写ベルト50の巻き掛け角度から外れた位置に配置されている。
【0040】
このクリーニングローラ58は、金属製(例えばSUS430)で形成されており、転写ベルト50の幅方向に延びて回転可能に構成されている。また、クリーニングローラ58は、この転写ベルト50と同じか大きな速度(線速比:例えば1.0〜1.2)で図3の反時計回りに回転し、転写ベルト50の搬送面にトレール方向で当接する。より具体的には、本実施例のクリーニングローラ58は、転写ベルト50の伸張率を約3%〜約5%に設定する張力をこの転写ベルト50に付与している。
【0041】
ブレード59はウレタン製であり、転写ベルト50の幅方向に延び、その搬送面とは反対側にてクリーニングローラ58にカウンタ方向で当接する。
また、上述した従動ローラ54は接地され、これらクリーニングローラ58と従動ローラ54との間には、感光体ドラム18の静電潜像に付着するトナーと逆極性の電圧が高圧基板から印加されるので、転写ベルト50の搬送面からクリーニングローラ58に向かう電界が生じている。
【0042】
これにより、転写ベルト50の搬送面に付着したプラス帯電性のトナーは搬送面から回収され、クリーニングローラ58に付着する。このクリーニングローラ58に付着した残トナーはブレード59で掻き取られ、回収容器に集められる。
一方、クリーニング補助部60は、転写ベルト50の走行方向でみて駆動ローラ52の上流側近傍に配置されており、転写ベルト50の幅方向に延びて回転可能に構成される。
【0043】
このクリーニング補助部60は、その摩擦帯電特性が正規の帯電トナーとは逆極性(本実施例ではマイナス帯電性)の関係を有したブラシで構成される。そして、転写ベルト50と同じ速度(線速比:1.0)にて図3の時計回りに回転し、この転写ベルト50の搬送面にカウンタ方向で当接する。
これにより、搬送面に付着したマイナス帯電性のトナーは、クリーニングローラ58を通過しても、クリーニング補助部60で掻き乱されてプラス帯電性のトナーに総て整えられる。
【0044】
この整えられたプラス帯電性のトナーが付着したままの搬送面は、レジストローラ14の近傍にて用紙を載置し、感光体ドラム18に向かう。
次いで、転写ローラ31に上記トナーとは逆極性の電圧を印加すると、感光体ドラム18上のプラス帯電性のトナーは感光体ドラム18から離れて用紙に向かうが、転写ベルト50の搬送面に付着していたプラス帯電性のトナーは用紙の裏面に向かわず、この搬送面に付着し続ける。
【0045】
そして、クリーニングユニット57によれば、上記高圧基板によって搬送面からクリーニングローラ58に向かう電界が生じているため、この搬送面に付着し続けたプラス帯電性のトナーを搬送面から回収でき、その後の搬送面には残トナーが蓄積し難くなる。
なお、図2の参照符号55は支持台であり、この支持台55には転写ベルト50上のトナーを検知可能な濃度センサが設置されている。
【0046】
再び図1に戻り、上記プリンタ1が印刷を行う際は、給紙ローラ46によって給紙カセット4から用紙が1枚ずつ分離して送出される。送出された用紙は搬送ローラ10からレジストローラ14に到達する。このレジストローラ14は、用紙の斜め送りを矯正しつつ、画像形成部16で形成されるトナー像との画像転写タイミングを計りながら、用紙を所定の給紙タイミングにて転写ユニット30へと送出する。
【0047】
一方、図2の入力ポート91は、印刷の元になる画像データが外部から受信可能に構成されている。この画像データは、文字や符号、図形、記号、線図、模様等の各種の画像がデータ化されたものである。そして、このデータに基づき、コントローラ90ではレーザ光の照射などを制御する。
詳しくは、感光体ドラム18の表面を除電した後、帯電器20が感光体ドラム18の表面を帯電する。
【0048】
次いで、露光部15が感光体ドラム18の表面にレーザ光を照射すると、感光体ドラム18の表面には静電潜像が作られ、この静電潜像からブラック用のトナー像が形成される。
このトナー像は転写ベルト50で搬送される用紙に転写される。なお、感光体ドラム18の表面に残留したトナー等はクリーニングユニット25で除去され、また、転写ベルト50の搬送面に付着した残トナー等はクリーニングユニット57で除去される。
【0049】
続いて、用紙は未定着トナー像を担持した状態で定着部32に向けて送られ、この定着部32にて加熱及び加圧され、トナー像が定着される。その後、定着部32から送出された用紙は排出ローラ35を介して排紙トレイ36に排出され、高さ方向に積層される。
この片面印刷に対し、両面印刷を行う場合には、定着部32から排出された用紙は、排出分岐部34でその搬送方向が切り替えられる。
【0050】
つまり、片面に印刷された用紙は装置本体2内に引き戻され、両面印刷搬送路38に搬送される。続いて、この用紙はレジストローラ14の上流側に向けて送出され、転写ユニット30に向けて再び送られる。これにより、用紙の未だ印刷がされていない面にトナー像が転写される。
以上のように、本実施例によれば、転写ベル50トは、用紙を下方から上方に縦搬送するベルトであり、駆動ローラ52と従動ローラ54との間にて傾斜して掛け回され、感光体ドラム18と転写ローラ31との間を走行しており、感光体ドラム18上に形成されたトナー像が用紙に転写される。
【0051】
ここで、この転写ベルト50の走行方向で見ると、駆動ローラ52はトナー像の転写位置の上流側に配置され、従動ローラ54はトナー像の転写位置の下流側に配置されており、駆動ローラ52から従動ローラ54に向かう転写ベルト50のゆるみ側が感光体ドラム18に近接し、従動ローラ54から駆動ローラ52に向かう転写ベルト50の張り側が感光体ドラム18から離れている。よって、転写ベルト50の搬送面は感光体ドラム18の表面に巻きつき易くなる。
【0052】
また、この駆動ローラ52における転写ベルト50の巻き掛け角度は、上記ゆるみ側接点S1から転写ベルト50の張り側との張り側接点までにて規定されるが、本実施例では、当該ゆるみ側接点S1がトナー像の転写位置よりも感光体ドラム18寄りに設けられるため、当該ゆるみ側接点S1がトナー像の転写位置よりも感光体ドラム18から離れている場合に比して、転写ベルト50の搬送面の巻きつき量がより大きくなる。
【0053】
この結果、用紙の裏面側を感光体ドラム18に向けて強く押圧でき、トナー像の転写を良好に実施できる。
また、転写ベルト50の搬送面の巻きつき量が約1.0mm〜約5.0mmに大きく設定されるので、感光体ドラム18から用紙への良好な転写性能を図りつつ、当該範囲内であれば用紙による感光体ドラム18への巻きつき等を防止でき、良好な分離性能も得られる。
【0054】
さらに、感光体ドラム18が従動ローラ54よりも駆動ローラ52に近接させており、転写ベルト50の伸び量は、感光体ドラム18を従動ローラ54に近接させる場合に比して少なくて済み、この点も良好な転写性能の獲得に寄与する。また、転写ベルト50の搬送面が感光体ドラム18の表面により確実に巻きつくことができる。
【0055】
さらにまた、感光体ドラム18の回転速度を転写ベルト50の走行速度よりも上記範囲内にて大きく設定すれば、転写性能及び分離性能の双方を確実に満たす。
また、転写ベルト50は用紙を静電吸着搬送するベルトであり、潜像に付着するトナーとは逆極性の電圧を転写ローラ31に印加すると、トナー像が用紙に転写される。つまり、このトナーは感光体ドラム18から用紙に向けて積極的に移動し、転写ベルト50の搬送面にも強く付着し得るが、クリーニングユニット57はその静電気力を用いて搬送面に付着した残トナーを回収しており、用紙の裏汚れを防止できる。
【0056】
ここで、単に転写ベルト50の搬送面を清掃すると、搬送面の損傷を招くが、本実施例では、クリーニングローラ58を搬送面に直当てさせず、ずらして当接させており、また、クリーニングローラ58の表面が転写ベルト50の走行方向に沿い、その搬送面を押さえ付けるトレール方向で搬送面に当接することから搬送面の損傷を防止でき、長寿命の転写ベルトになる。一方、クリーニングローラ58の回転速度は転写ベルト50の走行速度よりも遅くならない速度に設定されるため、クリーニング性能を維持できる。
【0057】
しかも、静電吸着搬送する転写ベルト50を用いれば、感光体ドラム18への巻きつきを容易に防止できるため、用紙の分離性が向上するし、また、次の定着に至るまで吸着させたまま搬送できることから、高速機等の性能安定化に寄与する。
また、クリーニングローラ58が転写ベルト50に上記張力を付与すれば、クリーニング性能の向上を図れるし、また、転写ベルト50の搬送面は感光体ドラム18の表面により一層巻き、転写性能の向上にも寄与する。
【0058】
本発明は、上記実施例に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。
例えば、上述の実施例では、プラス帯電性のトナーを正規の帯電トナーとして説明したが、本発明はマイナス帯電のトナーを正規の帯電トナーする場合にも適用可能である。
【0059】
また、上記実施例では画像形成装置としてプリンタに具現化した例を示しているが、本発明の画像形成装置は、複合機、複写機やファクシミリ等にも当然に適用可能である。
そして、これらいずれの場合にも上記と同様に、トナー像の転写を良好に実施できるとの効果を奏する。
【符号の説明】
【0060】
1 プリンタ(画像形成装置)
16 画像形成部
18 感光体ドラム(像担持体)
30 転写ユニット
31 転写ローラ
50 転写ベルト
52 駆動ローラ
54 従動ローラ
57 クリーニングユニット
58 クリーニングローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体を有しており、その駆動によって前記像担持体上の潜像をトナーで現像し、トナー像を形成する画像形成部と、
駆動及び従動の各ローラ間に掛け回され、記録材を下方から上方に向けて縦搬送し、その搬送面に前記記録材を載置して前記像担持体と転写ローラとの間を走行しており、前記トナー像を前記記録材に直接的に転写する転写ベルトとを具備し、
前記駆動ローラは、前記転写ベルトの走行方向で見て前記トナー像の転写位置の上流側に配置されるとともに、前記転写ベルトのゆるみ側とのゆるみ側接点が前記トナー像の転写位置よりも前記像担持体寄りに設けられることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置であって、
前記トナー像の転写位置における前記像担持体の表面と前記転写ベルトの搬送面との巻きつき量が約1.0mm〜約5.0mmに設定されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像形成装置であって、
前記ゆるみ側接点から前記トナー像の転写位置までの距離は、このトナー像の転写位置から、前記従動ローラが前記転写ベルトのゆるみ側に接する他のゆるみ側接点までの距離よりも短く設定されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の画像形成装置であって、
前記像担持体の回転速度は、前記駆動ローラの回転速度よりも大きく設定され、これらの線速比が1.01〜1.03の範囲内で制御されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の画像形成装置であって、
前記転写ベルトは、前記潜像に付着するトナーとは逆極性の電圧を前記転写ローラに印加して前記トナー像を前記記録材に直接的に転写しており、
前記搬送面に付着した残トナーを静電気力によって回収して前記搬送面を清掃するクリーニングローラを前記転写ベルトの張り側に備えたクリーニングユニットをさらに具備し、
前記クリーニングローラは、その回転軸心が前記従動ローラにおける前記転写ベルトの巻き掛け角度から外れた位置に配置され、トレール方向で前記転写ベルトの転写面に当接するとともに、その回転速度が前記転写ベルトの走行速度に対して約1.0倍〜約1.2倍の速度に設定されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像形成装置であって、
前記クリーニングローラは、前記転写ベルトの伸張率を約3%〜約5%に設定する張力をこの転写ベルトに付与していることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−78471(P2012−78471A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222241(P2010−222241)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】