説明

画像形成装置

【課題】インク吐出量の偏りを低減する。
【解決手段】副走査方向に並ぶ複数のノズルからなるノズル列を有するインクジェット式の記録ヘッドと、主走査方向における記録ヘッドの一度の走査によって記録される画像データのうち、主走査方向の全てにおいて滴無しデータである空白領域を副走査方向の上端及び下端から検出する検出手段と、画像データから検出手段により検出された空白領域を除いた記録画像データの副走査方向のサイズに応じて、記録画像データの記録に用いるノズル群を、直前に記録された記録画像データの記録に用いたノズル群の位置から副走査方向に対して少なくとも1ノズル以上ずらして選択する選択手段と、選択手段により選択されたノズル群の位置に応じて、記録媒体を副走査方向に搬送する搬送手段と、記録画像データに基づいて、選択手段により選択されたノズル群内のノズルにインクを吐出させる吐出手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット方式の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からインクジェット方式の記録ヘッドを備えた画像形成装置は、比較的安価に構成できる事から、個人・業務用を問わず、様々なユーザに使用されている。この画像形成装置は、はがきの宛名印刷や、設計図面、伝票の印刷など、長時間の繰り返し印刷に使用されることも多い。そのため、印刷中に記録ヘッドの性能を長期間保つ事が重要視されている。
【0003】
また、インクジェット方式の画像形成装置は、記録ヘッドの性能が発揮できなくなれば記録ヘッドの交換作業が必要となる。交換作業によって印刷が中断される機会が増えることは、ユーザにとって好ましくない。インクジェット式の記録ヘッドの寿命は、ノズルのインク吐出回数に依存することから、インク吐出の多いノズルが特定のノズルに集中すると、それらのノズルは短期間で寿命を迎え、性能が発揮できなくなる。特定のノズルの寿命が短くなると、ひいては記録ヘッドの性能を落とすことを意味し、記録ヘッドの性能を充分な期間保つことができない。
【0004】
この問題に対し、記録ヘッドの長寿命化を実現しようとする技術が既に知られている。例えば、特許文献1(特開2005-81707号公報)には、ラインヘッド型記録ヘッドの長寿命化の目的で、専用の機構を用いて記録ヘッドを順次主走査方向へずらして異なるノズルの組み合わせで画像を記録する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来技術のインクジェット方式の画像形成装置におけるライン型記録ヘッドの性能を保つ技術では、記録ヘッドを主走査方向にずらせる範囲が、記録ヘッドのノズル列の主走査幅と、画像記録領域の主走査幅の差分に限定されていた。よって、記録する画像データの主走査方向先端側、後端側が、上記差分以上の空白(滴なし)データである場合、主走査方向先端側、後端側に画像記録中にインクを吐出することができないノズルが生じ、インク吐出量の偏りを充分に低減できない。
【0006】
この技術を、記録ヘッドを主走査方向に走査して画像を記録する画像形成装置に置き換えた場合、記録ヘッドを副走査方向にずらして画像記録を行うことを考える。この場合においても、記録ヘッドを副走査方向にずらせる範囲が、記録ヘッドのノズル列の副走査幅と、画像記録領域の副走査幅の差分に限定される。よって、記録する画像データの副走査方向先端側、後端側が差分以上の空白データである場合、副走査方向先端側、後端側に画像記録中にインクを吐出することができないノズルが生じ、インク吐出量の偏りを充分に低減することができないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、インク吐出量の偏りをより低減することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一観点における画像形成装置は、副走査方向に並ぶ複数のノズルからなるノズル列を有するインクジェット式の記録ヘッドと、主走査方向における前記記録ヘッドの一度の走査によって記録される画像データのうち、主走査方向の全てにおいて滴無しデータである空白領域を副走査方向の上端及び下端から検出する検出手段と、前記画像データから前記検出手段により検出された空白領域を除いた記録画像データの副走査方向のサイズに応じて、前記記録画像データの記録に用いるノズル群を、直前に記録された記録画像データの記録に用いたノズル群の位置から副走査方向に対して少なくとも1ノズル以上ずらして選択する選択手段と、前記選択手段により選択されたノズル群の位置に応じて、記録媒体を副走査方向に搬送する搬送手段と、前記記録画像データに基づいて、前記選択手段により選択されたノズル群内のノズルにインクを吐出させる吐出手段と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、インク吐出量の偏りをより低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例におけるインクジェット方式の記録ヘッドを備えた画像形成装置の概略構成例を示す図。
【図2】画像形成に関する機構の構成の一例を示す図。
【図3】記録ヘッドの一例を示す図。
【図4】実施例における画像形成装置の制御に関する構成の一例を示すブロック図。
【図5】実施例における印刷処理の一例を示すフローチャート。
【図6】記録ヘッドと記録紙の相対位置(その1)を示す図。
【図7】記録ヘッドと記録紙の相対位置(その2)を示す図。
【図8】記録ヘッドのノズル番号の一例を示す図。
【図9】吐出ノズル選択処理の一例を示すフローチャート。
【図10】使用するノズルのパターンの一例を示す図。
【図11】使用するノズルの推移(その1)を示す図。
【図12】使用するノズルの推移(その2)を示す図。
【図13】従来技術における各ノズルのインク吐出量の一例を示す図。
【図14】実施例における各ノズルのインク吐出量の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照し、本発明の実施例について説明する。
【0012】
<構成>
(全体構成)
図1は、実施例におけるインクジェット方式の記録ヘッドを備えた画像形成装置100の概略構成例を示す図である。
【0013】
画像形成装置100は、カッター1、搬送ローラ2、空気吸引装置3、キャリッジ4、記録ヘッド5、ガイドロット6、プラテン7、キャリッジモータ8、紙送りモータ9、モータ制御部10、記録紙(記録媒体)11を含む。
【0014】
記録紙11は、ロール状に巻かれた紙の筒である。搬送ローラ2は、記録紙11を副走査方向に搬送する。副走査方向は、Y方向である。搬送ローラ2は、紙送りモータ9の駆動により回転する。紙送りモータ9は、モータ制御部10により制御される。
【0015】
プラテン7は、搬送ローラ2により搬送された記録紙11を支持する。空気吸引装置3は、プラテン7の下部に設けられ、プラテン7上に空けられた空気穴より空気を吸引する。これにより、記録紙11は、たわむことなくプラテン7上を搬送される。
【0016】
キャリッジ4は、記録紙11が一定量搬送されると、主走査方向に走査される。主走査方向は、X方向である。ガイドロット6は、キャリッジ4を支持する。キャリッジ4は、記録ヘッド5を支持する。キャリッジ4は、キャリッジモータ8により主走査方向に駆動する。キャリッジモータ8は、モータ制御部10により制御される。
【0017】
モータ制御部10は、キャリッジモータ8及び紙送りモータ9を制御する。キャリッジ4が主走査方向に走査すると同時に、記録ヘッド5に備えられた複数のノズルからインクが吐出され、記録紙11上に画像を形成する。この記録紙11の搬送と、キャリッジ4の走査を繰り返して画像形成を実現する。
【0018】
記録紙11へ画像形成するべきデータが無くなると、画像形成動作を終了する。記録紙11は、カッター1によって裁断され、後段の搬送ローラ2によって排出される。
【0019】
なお、図1に示すインクジェット方式以外に、A3やB5などの記録紙を紙送り機構に配置する一般的なインクジェット方式の画像形成装置にも、本発明は適用できることは言うまでもない。
【0020】
(画像形成に関する機構の構成)
図2は、画像形成に関する機構の構成の一例を示す図である。図2に示すように、キャリッジ4は、ガイドロッド6によって支持され、キャリッジ4が主走査方向(X方向)に移動する。キャリッジ4は、移動しながら複数の記録ヘッド5を用いて記録紙11に微少なインク滴を吐出することで、画像形成を行う。
【0021】
記録紙11は、プラテン7に支えられ、画像形成動作の開始時に副走査方向(Y方向)へと搬送される。記録紙11の搬送と、キャリッジ4の移動を繰り返し、画像形成動作を実現する。
【0022】
(記録ヘッド)
図3は、記録ヘッドの一例を示す図である。記録ヘッド5は、複数のノズル12を有する。ノズル12は、キャリッジ4の移動方向(主走査方向:X方向)に対して垂直な方向(副走査方向:Y方向)に並び、ノズル列を形成している。
【0023】
n1,n3,n5,・・・,n19で構成されるノズル列と、n2,n4,n6,・・・,n20で構成されるノズル列は、同色、もしくは異色のインクを吐出する事ができ、図2に示すように、キャリッジ4内に複数個配置された各記録ヘッド5の各ノズル12列からインクが吐出されることで、記録紙11上に画像を形成する。
【0024】
(制御に関する構成)
次に、画像形成装置100の制御に関する構成について説明する。図4は、実施例における画像形成装置100の制御に関する構成の一例を示す図である。画像形成装置100は、画像処理部101、CPU(Central Processing Unit)102、画像形成部103を有する。CPU102は、外部の情報処理装置内部にあってもよい。
【0025】
画像処理部101は、ヘッド構成に合わせた画像データの変換処理を行い、例えば、一つの基板上に実装されうる。画像形成部103は、記録ヘッド5に画像データを出力し、記録紙111の搬送、キャリッジ4の移動を制御し、例えば、一つの基板上に実装されうる。
【0026】
画像処理部101は、RAM(Random Access Memory)111、第1画像データ変換部112、第2画像データ変換部113、不吐領域検出部114、インターフェース115、吐出ノズル選択部116を含む。
【0027】
RAM111は、記憶手段であり、多値の画像データや、1スキャン分の画像単位に変換された画像データ等を記憶する。
【0028】
第1画像データ変換部112は、RAM111に記憶される多値の画像データを、小値の画像データに変換する。多値の画像データは、吐出する滴の種類に等しい階調数に変換される。インターフェース115は、CPU102や画像形成部103と通信を行なう。
【0029】
第2画像データ変換部113は、インターフェース115を介してCPU102により与えられた印刷モードに応じて、一度のヘッド走査(1スキャン)で出力する画像単位に小値の画像データを変換する。変換された画像データはRAM111に記憶される。
【0030】
不吐領域検出部114は、1スキャン分の画像単位に変換された画像データ中の、副走査方向先端側、および後端側の、主走査方向全領域における滴なしデータが格納されている範囲の検出を行う。この滴なしデータを空白領域という。不吐領域検出部114は、この検出結果によって画像形成を行うのに必要な連続ノズルの数を決定し、決定した連続ノズル数を吐出ノズル選択部116に出力する。
【0031】
吐出ノズル選択部116は、1スキャン分の画像データを記録するために使用する連続ノズル(ノズル群)を選択する。例えば、吐出ノズル選択部116は、画像データから空白領域を除いた記録画像データの副走査方向のサイズに応じて、記録画像データの記録に用いる連続ノズルを、直前に記録された記録画像データの記録に用いた連続ノズルの位置から副走査方向に対して少なくとも1ノズル以上ずらして選択する。これにより、各ノズルの吐出量の均一化を図ることができる。
【0032】
また、吐出ノズル選択部116は、直前の画像形成時に、主走査方向の全てにおいて不吐出のノズルがある場合、不吐出のノズルを少なくとも1ノズル以上含めて連続ノズルを選択するようにしてもよい。これにより、直前の画像形成時に使用しなかったノズルを含めることで、各ノズルの吐出量を均一化させることができる。
【0033】
また、吐出ノズル選択部116は、直前に画像形成した画像データに空白領域がない場合、空白領域がある画像データまで遡り、この画像データの画像形成時に不吐出だったノズルを少なくとも1ノズル以上含めて連続ノズルを選択するようにしてもよい。これにより、直前の画像形成に不吐出ノズルがない場合でも、その前に空白領域があった画像データまで遡ることで、吐出量を均一化させることができる。
【0034】
また、吐出ノズル選択部116は、空白領域を有する画像データの前回の画像形成時に吐出を行った連続ノズルの副走査位置から所定数のノズル分ずらして連続ノズルを選択する処理を繰り返してもよい。これにより、使用するノズルを一定ノズル数分順次切り替えることで、吐出量をより均一化させることができる。以下では、1ノズル分ずつ切り替える例について説明するが、これに限られない。
【0035】
吐出ノズル決定部116は、決定した連続ノズル(ノズル群)で画像形成を行うための記録紙11の搬送量(紙送り量)を、CPU102に通知する。
【0036】
第2画像データ変換部113は、使用するノズルの副走査先頭位置に応じて、1スキャン分の変換された画像データを、再度画像変換処理を行う。
【0037】
CPU102は、ユーザなどにより設定された印刷モードを画像処理部101に通知したり、紙送り量を画像形成部103に通知したりする。
【0038】
画像形成部103は、インターフェース131を介して画像処理部101から画像データを受信し、RAM133に記録する。
【0039】
モータ制御部134(図1に示すモータ制御部10)は、CPU102により通知される紙送り量に応じて、紙送りモータ9を制御する。これにより、記録紙11は、副走査方向に送られる。
【0040】
記録ヘッド制御部132は、RAM133に記憶された画像データを、記録ヘッド5に転送し、インクを吐出させる。この画像データの転送と同期して、モータ制御部134は、キャリッジモータ8を制御する。これにより、記録ヘッド5を有するキャリッジ4は、主走査方向に移動する。
【0041】
記録ヘッド5は、記録ヘッド制御部132から転送される画像データに応じて、記録紙111上へとインクを吐出し、画像形成を行う。
【0042】
<動作>
次に、実施例における画像形成装置の動作について説明する。図5は、実施例における印刷処理の一例を示すフローチャートである。
【0043】
ステップS101で、CPU102は、画像形成部103及び画像処理部101に1ページ分の記録サイズを設定する。
【0044】
ステップS102で、CPU102は、画像処理部101に印刷モードを設定する。印刷モードは、印刷枚数、印刷色数、解像度等を含んだ設定群である。
【0045】
ステップS103で、画像処理部101(第1画像データ変換部112)は、印刷画像である多値の画像データに画像処理を行い、小値の画像データに変換する。
【0046】
ステップS104で、画像処理部101(第2画像データ変換部113)は、小値の画像データを、次回1スキャンで記録する画像単位に、画像変換処理を行う。
【0047】
ステップS105で、画像処理部101(不吐領域検出部114)は、次回1スキャン分に変換された画像データ中の、副走査方向先端側及び後端側の、主走査方向全領域が滴なしデータである空白領域を検出し、使用ノズル数nを決定する(図6,7参照)。
【0048】
ステップS106で、画像処理部101(吐出ノズル選択部116)は、次回の1スキャンでインク吐出に使用するノズルを選択し、選択されたノズルに応じた紙送り量をCPU102に通知する。
【0049】
ステップS107で、画像処理部101(第2画像データ変換部113)は、使用するノズル、記録ヘッド5の構成に応じた画像変換処理を行う。
【0050】
ステップS108で、画像形成部103(モータ制御部134)は、CPU102より通知された紙送り量に応じて紙送りモータ9を制御し、記録紙11を搬送させる。
【0051】
ステップS109で、画像処理部101は、変換処理後の画像データを1スキャン分、画像形成部103に転送する。画像形成部103は、画像データを記録ヘッド5に出力させ、キャリッジモータ8を制御してキャリッジ4を移動させ、1スキャン分の画像データを記録紙11上へ印刷する。
【0052】
ステップS110で、画像処理部101は、設定された記録サイズ分の印刷が終了していなければ、S103へ戻り、終了していれば画像形成を終了する。
【0053】
これにより、画像処理部101が、画像データに基づきインク吐出に使用するノズル数および、ノズル位置を決定すること、そして決定されたノズル位置に応じた紙送り量を求めることができる。画像形成部103は、画像処理部101により決められた紙送り量だけ紙送りを行う。
【0054】
(記録ヘッドと記録紙の相対位置)
図6は、記録ヘッドと記録紙の相対位置(その1)を示す図である。記録紙11に記録ヘッド5を用いて1走査分の画像データ21を記録(画像形成)する場合を考える。このとき、1走査分の画像データ21の記録領域の副走査方向(Y方向)のサイズ(以下、副走査サイズともいう)が、記録ヘッド5の全ノズルが存在する領域未満である場合、記録紙11に対する記録ヘッド5の相対位置は一意に決めることができない。
【0055】
図6に示した例では、記録ヘッド5の全ノズル数は26であるのに対し、画像データ21の記録領域の副走査サイズは、記録ヘッド5の23ノズル相当分である。よって、画像形成に使用するノズル数nrは、23である。この場合、記録紙11に対する記録ヘッド5の位置は、図6に示す(1)〜(4)のいずれかのパターンの位置で画像形成を行うことが可能である。
(1) 副走査方向上端3ノズルを不吐出ノズルにするパターン
(2) 副走査方向上端2ノズル、副走査方向下端1ノズルを不吐出ノズルにするパターン
(3) 副走査方向上端1ノズル、副走査方向下端2ノズルを不吐出ノズルにするパターン
(4) 副走査方向下端3ノズルを不吐出ノズルにするパターン
図7は、本実施例の特長である、インク不吐領域検出を行った場合の、記録ヘッドと記録紙の相対位置(その2)を示す図である。
【0056】
1走査分の画像データ21の記録領域における、副走査方向先端側の主走査方向全領域が滴なしデータである空白領域31と、副走査方向後端側の空白領域32とが検出される。ここで、空白領域31、32を記録領域から除外することで、記録紙11に対する記録ヘッド5の位置の候補を増やす事ができる。
【0057】
図7に示す例の場合、記録ヘッド5の全ノズル数は26であるのに対し、画像データ21の全記録領域から空白領域31、32を除外した領域の副走査サイズは18ノズル相当である。よって、インク不吐領域検出後の画像形成に使用するノズル数nは、18ノズルである。この場合、記録紙11に対する記録ヘッド5の位置は、(1)'〜(9)'の位置で画像形成を行う事が可能である。空白領域31、32を除外しない場合に比べて、5種類もノズル群のパターンが増えている。
【0058】
図7に示したインク不吐領域検出は、図5に示した処理のステップS105で行われ、滴なしの空白領域と使用ノズル数nが決まる。その後、ステップS106の吐出ノズル選択部116で使用するノズルの位置が決まる。そして、ステップS107の画像データ変換2の処理で、画像処理部101は、画像変換処理を行う。
【0059】
画像データ変換処理2は、1走査分の記録領域に記録する画像データ21中の、インク不吐領域(空白領域)を除いた画像データ(記録画像データ)を、ステップS106で決まったノズル位置のノズルに対して出力するように画像変換処理を行う。インク不吐領域の除去は、RAM133に格納されている1走査分の記録領域に記録する画像データ21の読み出し先アドレスを変更する事などで、画像データ読み出し時に空白領域を読み飛ばして実現する。
【0060】
(吐出ノズル選択処理)
次に、図5に示すステップS106の吐出ノズル選択の具体的な処理について説明する。図8は、記録ヘッド20のノズル番号の一例を示す図である。図9に示す処理では、図8に示す記録ヘッド20を用いて説明する。
【0061】
図9は、吐出ノズル選択処理の一例を示すフローチャートである。吐出ノズル選択は、次回の1スキャンで使用する記録ヘッド20のノズルを決定する処理である。
【0062】
ステップS201で、吐出ノズル選択部116は、不吐領域検出部114によって決定された、インク吐出に使用するノズル数nが、記録ヘッド20の全ノズル数N未満であるか否かを判定する。
【0063】
使用ノズル数nが全ノズル数N未満ではない時、すなわちn=Nの場合(ステップS201−NO)ステップS216に進む。使用ノズル数nが全ノズル数N未満である場合(ステップS201−YES)ステップS202に進む。
【0064】
ステップS202で、吐出ノズル選択部116は、次回の1スキャンが、1ページ記録の先頭の(最初の)スキャンであるか否かを判定する。先頭スキャンである場合(ステップ202−YES)ステップS203に進み、先頭スキャンでない場合(ステップS202−NO)ステップS206に進む。
【0065】
ステップS203で、吐出ノズル選択部116は、前回記録した1ページの印刷モードと、今回の印刷モードが同じであるか否かを判定する。印刷モードが同じである場合(ステップS203−YES)ステップS205に進み、印刷モードが違う場合(ステップS203−NO)ステップS204に進む。
【0066】
ステップS204で、吐出ノズル選択部116は、カウンタ値CとフラグTを初期化する。初期化は、C=0,T=0とする処理である。
【0067】
ステップS205で、吐出ノズル選択部116は、カウンタ値Cを前回の記録終了時のカウンタ値に設定する。
【0068】
ステップS206で、吐出ノズル選択部116は、C>N−nであるか否かを判定する。C>N−nである場合(ステップS206−YES)ステップS207に進み、C>N−nでない場合(ステップS206−NO)ステップS208に進む。
【0069】
ステップS207で、吐出ノズル選択部116は、カウンタ値CをC=N−nにする。
【0070】
ステップS208で、吐出ノズル選択部116は、使用するノズル群を決定する。図8に示す記録ヘッド20のようにノズルの番号を定めた場合、C+1番〜C+n番のノズル群を、次回1スキャンの使用ノズルに決定する。
【0071】
ステップS209で、吐出ノズル選択部116は、カウンタ値Cが、全ノズル数N−使用ノズル数nと一致する(C=N−n)か否かを判定する。N−nは、未使用ノズル数である。一致する場合(ステップS209−YES)ステップS212に進み、一致しない場合(ステップS209−NO)ステップS210に進む。
【0072】
ステップS210で、吐出ノズル選択部116は、カウンタ値Cが0であるか否かの判定を行う。0である場合(ステップS210−YES)ステップS211に進み、0でない場合(ステップS210−NO)ステップS213に進む。
【0073】
ステップS211で、吐出ノズル選択部116は、フラグTをOFF(T=0)状態にする。
【0074】
ステップS212で、吐出ノズル選択部116は、フラグTをON(T=1)状態にする。
【0075】
ステップS213で、吐出ノズル選択部116は、フラグがON状態であるか否かの判定を行う。ONである場合(ステップS213−YES)ステップS215に進み、ONでない場合(ステップS213−NO)ステップS214に進む。
【0076】
ステップS214で、吐出ノズル選択部116は、カウンタ値Cに1を加算する。ステップS215で、吐出ノズル選択部116は、カウンタ値Cから1を減算する。ステップS214、215で、吐出ノズル選択部116は、紙送り量をCPU102に通知する。この場合、紙送り量は1〜Nノズルの幅に等しい量となる。
【0077】
ステップS216で、吐出ノズル選択部116は、次回の1スキャンで使用するノズルは全ノズルとなるため、使用ノズルは一意に決まり、図8に示す記録ヘッド20において、1〜N番のノズルが使用ノズルとして選択する。
【0078】
ステップS217で、吐出ノズル選択部116は、選択された使用ノズルに応じて、使用ノズルに応じて紙送り量を決め、CPU102に通知する。この場合、不吐ノズル検出前の使用ノズル数をnr、前回スキャンのカウンタ値をC´としたとき、nr+(C´−C)が紙送り量となる。
【0079】
以上の制御処理によって、使用するノズルが決定される。図9に示す処理では、前回スキャンでインク吐出を行っていないノズルを、少なくとも1ノズル以上使用するように、インク吐出をするノズルを選択することを可能とする。
【0080】
(使用するノズル例)
図10は、使用するノズルのパターンの一例を示す図である。図10に示す例は、インク不吐出(未使用)となるノズル数が最大5ノズル(N−n=5)生じる場合に、使用ノズルのパターンを示す。この場合、使用ノズル数nに応じて、記録ヘッド20の点線で示した先頭ノズル位置からnノズルを使用ノズルとする、(1)〜(6)の使用ノズルのパターンが存在する。
【0081】
図10に示す(1)パターンは、副走査方向下端5ノズルを使用しない例である。(2)パターンは、副走査方向上端1ノズル、下端4ノズルを使用しない例である。(3)パターンは、副走査方向上端2ノズル、下端3ノズル使用しない例である。(4)パターンは、副走査方向上端3ノズル、下端2ノズル使用しない例である。(5)パターンは、副走査方向上端4ノズル、下端1ノズル使用しない例である。(6)パターンは、副走査方向上端5ノズル使用しない例である。(1)〜(6)パターンが、不吐出ノズル数が5の時の全パターンである。
【0082】
(パターンの推移)
図11は、使用するノズルの推移(その1)を示す図である。図11に示す例は、図9で示した処理に従って1ページ印刷を行う場合の使用ノズルのパターンの推移を示す。
【0083】
図11(A)は、スキャン数に伴う使用ノズルの推移を示す。図11に示す(1)〜(6)は、図10に示す(1)〜(6)パターンに対応する。記録紙の先端側40(図11(B)参照)及び後端側42(図11(C)参照)に示した(1)〜(6)も同様に図10に示す(1)〜(6)パターンに対応する。
【0084】
図11で示した例では、スキャン毎に同一の画像を印刷する場合などの、スキャンの度に未使用ノズル数が一定数である場合の例を示す。1スキャン分の記録幅41の記録を行うと、紙送り方向と逆の方向に1ノズル分、使用するノズル位置が切り替わる。これを繰り返し、使用ノズルが下端のノズルに達すると、次スキャンからは、紙送り方向に1ノズル分、使用するノズルが切り替わる。
【0085】
図11(C)に示す記録紙後端側42に示したように、1ページの画像記録が(3)パターンで終了し、次ページで同一の印刷モードが選択された場合、次ページの先頭スキャンは、例えば(2)パターンのノズル群を用いて印刷される。
【0086】
図12は、使用するノズルの推移(その2)を示す図である。図12に示す例は、図9に示した処理に従って1ページ印刷を行う場合の使用ノズルのパターンの推移を示す。
【0087】
図12(A)は、スキャン数に伴う使用ノズルの推移を示す。図12(A)に示すように、使用ノズル数nはスキャン毎に異なるから、使用ノズルを紙送り方向と逆の方向に1ノズル分、切り替えられない場合も存在する。その場合は、下端のノズルからnのノズルを使用し、次スキャンからは紙送り方向に1ノズル分、使用するノズルを切り替える。
【0088】
図12(B)に示すように、記録紙先端側50の1スキャン分の記録幅51の記録を(1)パターンで行うと、紙送り方向と逆の方向に、選択されたノズル群((2)パターン)に対応する分、使用するノズル位置が切り替わる。
【0089】
例えば、図12(C)に示す記録紙後端側52では、1ページの画像記録が(4)パターンで終了した場合、次ページで同一の印刷モードが選択された場合、次ページの先頭スキャンは、(5)パターンのノズル群を用いて印刷される。
【0090】
上記動作によって、スキャン毎に使用ノズルを1ノズルずつ切り替えることで、簡単なアルゴリズムで各ノズルのインク吐出量の偏りを分散させることができる。図10〜12では、未使用となるノズルが最大5ノズル生じる場合の例について示したが、本発明では未使用となるノズル数は限定せず、0〜Nの全ての場合に対応して、使用するノズルパターンを選択することができる。
【0091】
<各ノズルのインク吐出量>
図13は、従来技術における各ノズルのインク吐出量の一例を示す図である。図13(A)に示す記録ヘッド20を用いて、図13(A)に示す画像60を20回連続して記録を行った。図13(B)は、この場合の各ノズルのインク吐出量を表す。
【0092】
図13では、1走査分の画像記録領域が記録ヘッド20の全ノズル数Nと等しい副走査サイズである場合の例を示す。この場合、記録紙に対する記録ヘッド20の副走査方向における相対位置は常に一定であるため、インク吐出量の偏りが大きい(図13(B)参照)。
【0093】
図14は、実施例における各ノズルのインク吐出量の一例を示す図である。図14(A)に示す記録ヘッド20を用いて、図14(A)に示す画像60を20回連続して記録を行った。図14(B)は、この場合の各ノズルのインク吐出量を表す。
【0094】
図14では、図7で示したインク不吐領域検出に従って、上端2ラインと下端3ラインの空白領域が、画像記録領域から除外される。図9で説明した使用ノズルの選択処理に従って画像形成を行う場合、図10に示す(1)〜(6)に示したパターンを繰り返し選択し、画像形成を行う。前述した実施例を用いることで、図14(B)に示すインク吐出量の偏りが、図13に示すインク吐出量の偏りに比べて、大幅に低減していることがわかる。更に記録回数を増やせば、本実施例の効果がより顕著になることは明らかである。
【0095】
以上、実施例によれば、記録紙への画像形成時に、1走査分の画像データ中の、副走査方向上端、下端部の主走査方向全領域が空白(滴なし)領域である領域を検出し、検出された領域を画像記録領域外とし、画像記録領域を副走査方向に狭める。また、前回の記録ヘッド走査による画像形成時のノズル位置から、副走査方向にずらした位置のノズルを用いて画像記録を行う。
【0096】
これにより、空白領域検出によって画像記録領域を副走査方向に狭めることで、使用するノズル位置をずらせる範囲が広がるので、ノズル間のインク吐出量の偏りを低減することができる。
【0097】
また、記録ヘッドと記録紙の副走査相対位置をずらす処理を、記録紙の副走査方向の紙送り量を調整する事で実現するので、記録ヘッドと記録紙の副走査相対位置をずらす専用の機構が不要となる。
【0098】
また、記録ヘッドの副走査方向のノズル領域が、主走査方向の1走査分の画像記録領域よりも大きくしてもよい。これにより、選択するノズル群の幅を広げることができる。
【0099】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、実施例以外にも種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0100】
4 キャリッジ
5 記録ヘッド
8 キャリッジモータ
9 紙送りモータ
10 モータ制御部
101 画像処理部
102 CPU
103 画像形成部
111 RAM
112 第1画像データ変換部
113 第2画像データ変換部
114 不吐領域検出部
115 インターフェース
116 吐出ノズル選択部
131 インターフェース
132 記録ヘッド制御部
133 RAM
134 モータ制御部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0101】
【特許文献1】特開2005−81707号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
副走査方向に並ぶ複数のノズルからなるノズル列を有するインクジェット式の記録ヘッドと、
主走査方向における前記記録ヘッドの一度の走査によって記録される画像データのうち、主走査方向の全てにおいて滴無しデータである空白領域を副走査方向の上端及び下端から検出する検出手段と、
前記画像データから前記検出手段により検出された空白領域を除いた記録画像データの副走査方向のサイズに応じて、前記記録画像データの記録に用いるノズル群を、直前に記録された記録画像データの記録に用いたノズル群の位置から副走査方向に対して少なくとも1ノズル以上ずらして選択する選択手段と、
前記選択手段により選択されたノズル群の位置に応じて、記録媒体を副走査方向に搬送する搬送手段と、
前記記録画像データに基づいて、前記選択手段により選択されたノズル群内のノズルにインクを吐出させる吐出手段と、
を備える画像形成装置。
【請求項2】
前記選択手段は、
直前の記録時に、主走査方向の全てにおいて不吐出のノズルがある場合、前記不吐出のノズルを少なくとも1ノズル以上含めて前記記録画像データの記録に用いるノズル群を選択する請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記選択手段は、
直前に記録した画像データに前記空白領域がない場合、前記空白領域がある画像データまで遡り、該画像データの記録時に不吐出だったノズルを少なくとも1ノズル以上含めて前記記録画像データの記録に用いるノズル群を選択する請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記選択手段は、
前記空白領域を有する画像データの前回の記録時に吐出を行ったノズル群の副走査位置から所定数のノズル分ずらして前記記録画像データの記録に用いるノズル群を選択する処理を繰り返す請求項1乃至3いずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記記録ヘッドの副走査方向のノズル領域が、主走査方向の1走査分の画像記録領域よりも大きい請求項1乃至4いずれか一項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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