説明

画像形成装置

【課題】感光体ドラムを主走査方向に沿って複数の領域に仮想的に分割し、トナーの供給量が少ない領域にトナーを強制的に供給する場合に、カウンター回路部の規模を大きくすることなく、トナーを強制的に供給する領域を決定する。
【解決手段】領域決定部は、感光体ドラムを主走査方向に領域R1〜R16に仮想的に分割し、主走査1ラインを構成する各画素の画素データに含まれる濃度値を利用して、領域R1〜R16のうち濃度値が一番小さい領域Rを決定することを、感光体ドラムに描画される主走査1ライン毎に実行する。カウンター回路部503は、領域決定部によって濃度値が一番小さい領域Rであると決定された回数を、領域R1〜R16のそれぞれについてカウントする。トナー強制供給部は、所定枚数が印刷される毎に、カウンター回路部503でカウントされた数値を参照し、領域R1〜R16のうちトナーを強制的に供給する領域Rを決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に備えられる感光体ドラムの劣化を防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、画像データを変調して生成された光ビームを感光体ドラムに照射して感光体ドラムに静電潜像を形成し、その静電潜像にトナーを供給してトナー画像を形成し、トナー画像を用紙に形成して出力する。このような画像形成装置において、トナーを研磨剤として利用し、トナーにより感光体ドラムの周面を研磨して感光体ドラムの周面をリフレッシュする技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−203620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
感光体ドラムに形成された静電潜像へのトナー供給において、感光体ドラムにはトナーが頻繁に供給される領域(例えば、用紙の中央に相当する領域)と、そうでない領域(例えば、用紙の左右端に相当する領域)とが混在する。トナーが供給されない状態又は供給量が少ない状態が継続すると、感光体ドラムにおいて、その領域の箇所が劣化する。
【0005】
一般に、感光体ドラム上に静電潜像を形成するために感光体ドラムが帯電される際には、帯電による放電により感光体ドラム上に放電生成物が付着し、また、酸化膜が形成される。この放電生成物及び酸化膜をトナーに含有する酸化チタン微粉末をクリーニングブレード等に付着させ、クリーニングブレードにより削り落とす等しているが、供給されるトナーが少ないと十分に削り落すことができない。そのため感光体ドラム上において、供給されるトナーが少ない領域は感光体表面が適正に帯電されない状態となる。
【0006】
そこで、感光体ドラムを主走査方向に沿って複数の領域に仮想的に分割し、予め定められた条件を満たせば(例えば、所定枚数の印刷毎)、画像を用紙に形成する動作を実行していないときに、トナーの供給量が少ない領域にトナーを強制的に供給すれば、上記劣化を抑制できる。
【0007】
トナーの供給量が少ない領域は、例えば以下の方式で決定できる。主走査1ラインを構成する各画素の画素データに含まれる濃度値を利用して、複数の領域のそれぞれについて濃度値を算出することを主走査1ライン毎に実行する。そして、複数の領域のそれぞれについて濃度値を加算する処理をカウンター回路部で実行し、所定枚数の印刷後、カウンター回路部でカウントされた値がしきい値より小さい領域を、トナーの供給量が少ない領域とする。
【0008】
しかし、この方式では、複数の領域のそれぞれについて濃度値を加算する処理をしている。このため、例えば1000枚印刷する毎にトナーを強制的に供給する領域を決定する場合、カウンター回路部でカウントされる値が大きくなるので、カウンター回路部の規模が大きくなる。
【0009】
本発明は、感光体ドラムを主走査方向に沿って複数の領域に仮想的に分割し、トナーの供給量が少ない領域にトナーを強制的に供給する場合に、カウンター回路部の規模を大きくすることなく、トナーを強制的に供給する領域を決定できる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明に係る画像形成装置は、画像を用紙に形成する画像形成装置であって、感光体ドラムと、前記画像を示す画像データを基にして生成された光ビームにより、回転する前記感光体ドラムに主走査1ラインを描画することを繰り返して、前記画像の静電潜像を形成する露光部と、前記静電潜像が形成された前記感光体ドラムにトナーを供給してトナー画像を形成する現像部と、前記感光体ドラムを主走査方向に複数の領域に仮想的に分割し、主走査1ラインを構成する各画素の画素データに含まれる濃度値を利用して、前記複数の領域のうちトナー濃度が一番小さい領域を決定することを、前記感光体ドラムに描画される主走査1ライン毎に実行する領域決定部と、前記領域決定部によって前記一番小さい領域であると決定された回数を、前記複数の領域のそれぞれについてカウントするカウンター回路部と、予め定められた条件が満たされた場合、前記カウンター回路部でカウントされた数値を参照し、前記複数の領域のうちトナーを強制的に供給する領域を決定し、前記画像形成装置が前記画像を用紙に形成する動作を実行していないときに、前記現像部を制御して前記決定された領域にトナーを供給するトナー強制供給部と、を備える。
【0011】
本発明では、感光体ドラムに形成された静電潜像にトナーを供給する場合に、主走査方向に沿って感光体ドラムに仮想的に設けられた複数の領域のうち、トナー濃度が一番低い領域を決定することを、感光体ドラムに描画される主走査1ライン毎に実行する。そして、トナー濃度が一番低い領域であると決定された回数を、複数の領域のそれぞれについてカウントする。この決定回数を用いてトナーを強制的に供給する領域を決定する。従って、本発明によれば、カウンター回路部の規模を大きくすることなく、トナーを強制的に供給する領域を決定できる。
【0012】
予め定められた条件とは、所定枚数が印刷される毎(例えば、1000枚印刷毎)や所定期間が経過する毎である。
【0013】
上記構成において、前記トナー強制供給部は、前記カウンター回路部でカウントされた前記複数の領域のそれぞれの前記決定回数を、予め定められたしきい値と比較し、前記決定回数が前記しきい値を超える領域を、トナーを強制的に供給する領域と決定する。
【0014】
この構成では、決定回数がしきい値を超える領域、すなわち、トナーが供給されない状態又は供給量が少ない状態が継続している領域には、トナーを強制的に供給する処理をする。一方、決定回数がしきい値を超えない領域、すなわち、トナーが供給されない状態又は供給量が少ない状態が継続していない領域には、トナーを強制的に供給する処理をしない。従って、トナーを強制的に供給する必要がある全ての領域にトナーを供給しつつ、トナーを強制的に供給する必要がない全ての領域にトナーを供給しないようにすることができる。
【0015】
上記構成において、前記トナー強制供給部は、前記カウンター回路部でカウントされた前記複数の領域のそれぞれの前記決定回数どうしを比較し、予め定められた上位第n番目(n:前記複数の領域の数より小さい整数)までの領域を、トナーを強制的に供給する領域と決定する。
【0016】
この構成によれば、予め定められた上位第n番目までの領域を、トナーを強制的に供給する領域と決定する。従って、トナーを強制的に供給する処理において、トナーを供給する領域の数を毎回の処理で同じにすることができる(言い換えれば、トナーの使用量を毎回の処理で同じにすることができる)。
【0017】
上記構成において、前記領域決定部では、前記複数の領域の数は予め定められた数の範囲の中から予め選択されており、前記カウンター回路部では、前記複数の領域のそれぞれに一つのカウンターが割り当てられており、前記カウンターの数は前記予め定められた数の範囲の最大値と同じ数である。
【0018】
この構成によれば、画像形成装置の機種(例えば、A3の用紙を印刷できる機種とA3の用紙を印刷できない機種)に応じて、複数の領域の数を変える場合に、カウンター回路部を共通化することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、感光体ドラムを主走査方向に沿って複数の領域に仮想的に分割し、トナーの供給量が少ない領域にトナーを強制的に供給する場合に、カウンター回路部の規模を大きくすることなく、トナーを強制的に供給する領域を決定できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の内部構造の概略を示す図である。
【図2】図1に示す画像形成装置の構成を示すブロック図である。
【図3】感光体ドラムに仮想的に設けられた16の領域を示す図である。
【図4】主走査1ラインのデータ構造の一例を示す図である。
【図5】各主走査1ラインにおいて、濃度値が一番小さい領域を説明する第1の説明図である。
【図6】同第2の説明図である。
【図7】同第3の説明図である。
【図8】本実施形態に係る画像形成装置において、トナーを強制的に供給する領域を決定する動作を説明するフローチャート(その1)である。
【図9】本実施形態に係る画像形成装置において、トナーを強制的に供給する領域を決定する動作を説明するフローチャート(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置1の内部構造の概略を示す図である。画像形成装置1は例えば、コピー、プリンター、スキャナー及びファクシミリの機能を有するデジタル複合機に適用することができる。画像形成装置1は装置本体100、原稿読取部200及び原稿給送部300を備える。
【0022】
装置本体100の上に原稿読取部200が配置されており、原稿読取部200の上に原稿給送部300が配置されている。
【0023】
原稿給送部300は自動原稿送り装置として機能し、原稿載置部301に置かれた複数枚の原稿を連続的に原稿読取部200に送ることができる。
【0024】
原稿読取部200は露光ランプ等を搭載したキャリッジ、ガラス等の透明部材により構成された原稿台、CCD(Charge Coupled Device)センサー及び原稿読取スリット(いずれも不図示)を備える。CCDセンサーは読み取った原稿を画像データとして出力する。
【0025】
装置本体100は用紙貯留部101、画像形成部103及び定着部105を備える。用紙貯留部101は装置本体100の最下部に配置されており、用紙の束を貯留することができる二つの用紙カセット101a,101bを備える。
【0026】
用紙カセット101a,101bのうち、選択されたカセットに貯留された用紙の束において、最上位の用紙がピックアップローラー(不図示)の駆動により、装置本体100の用紙搬送路107へ向けて送出される。用紙は用紙搬送路107を通って、画像形成部103へ搬送される。
【0027】
用紙搬送路107は装置本体100の一方の側面(図1において右側の側面)に沿って下方から上方に向かって略垂直方向に延設され、上方で他方の側面(図1において左側の側面)に向かうように湾曲して、原稿読取部200の下方に沿って略水平方向に延びている。そして、その端部に排出トレイ131が設けられている。
【0028】
画像形成部103は搬送されてきた用紙にトナー画像を形成する。画像形成部103はトナー画像を転写ベルト113に転写する順番に従って配置された、イエロー画像形成部111Y、マゼンタ画像形成部111M、シアン画像形成部111C、ブラック画像形成部111BKを備える。これらのユニットは同様の構成を有しており、イエロー画像形成部111Yを例にして説明する。
【0029】
イエロー画像形成部111Yは感光体ドラム115及び露光部117を備える。感光体ドラム115の周りには帯電部119、現像部121及びクリーニング部123が配置されている。帯電部119は感光体ドラム115の周面を一様に帯電させる。露光部117は画像データ(原稿読取部200から出力された画像データ、パソコンから送信された画像データ、ファクシミリ受信の画像データ等)に対応して変調された光ビームを生成し、一様に帯電された感光体ドラム115の周面に照射する。これにより、感光体ドラム115の周面にはイエローの画像データに対応する静電潜像が形成される。この状態で感光体ドラム115の周面に現像部121からイエロートナーを供給することにより、周面にはイエローの画像データに対応するトナー画像が形成される。
【0030】
転写ベルト113は感光体ドラム115と1次転写ローラー125により挟まれた状態で反時計周りに動くことができる。イエローのトナー画像は感光体ドラム115から転写ベルト113に転写される。感光体ドラム115の周面に残っているイエロートナーはクリーニング部123によって除去される。以上がイエロー画像形成部111Yの説明である。
【0031】
イエロー画像形成部111Y、マゼンタ画像形成部111M、シアン画像形成部111C、ブラック画像形成部111BKの上方には、対応する色のトナーを収容したコンテナー、すなわち、イエロートナーコンテナー127Y、マゼンタトナーコンテナー127M、シアントナーコンテナー127C、ブラックトナーコンテナー127BKが配置されている。各色の現像部121には、対応するコンテナーからトナーが補給される。
【0032】
上述したように転写ベルト113にはイエローのトナー画像が転写され、このトナー画像に重ねてマゼンタのトナー画像が転写され、同様に、シアンのトナー画像、ブラックのトナー画像が重ねて転写される。これにより転写ベルト113にカラーのトナー画像が形成される。このように各色のパターンのトナー画像を転写ベルト113に重畳して転写することにより、転写ベルト113にカラーのトナー画像が形成される。カラーのトナー画像は2次転写ローラー129によって、先ほど説明した用紙貯留部101から搬送されてきた用紙に転写される。
【0033】
カラーのトナー画像が転写された用紙は、定着部105に送られる。定着部105は加熱ローラーと定着ローラーとを備える。これらのローラーによって、カラーのトナー画像が転写された用紙が挟まれる。これにより、カラーのトナー画像と用紙に熱と圧力が加えられて、カラーのトナー画像を用紙に定着させる。用紙は排紙トレイ131に排紙される。
【0034】
図2は、図1に示す画像形成装置1の構成を示すブロック図である。画像形成装置1は装置本体100、原稿読取部200、原稿給送部300、操作部400、制御部500及び通信部600がバスによって相互に接続された構成を有する。装置本体100、原稿読取部200及び原稿給送部300に関しては、既に説明したので、説明を省略する。
【0035】
操作部400は操作キー部401と表示部403を備える。表示部403はタッチパネル機能を有しており、ソフトキーを含む画面が表示される。ユーザーは画面を見ながらソフトキーを操作することによって、コピー等の機能の実行に必要な設定等をする。
【0036】
操作キー部401にはハードキーからなる操作キーが設けられている。具体的にはスタートキー、テンキー、ストップキー、リセットキー、コピー、プリンター、スキャナー及びファクシミリを切り換えるための機能切換キー等が設けられている。
【0037】
スタートキーはコピー、ファクシミリ送信等の動作を開始させるキーである。テンキーはコピー部数、ファクシミリ番号等の数字を入力するキーである。ストップキーはコピー動作等を途中で中止させるキーである。リセットキーは設定された内容を初期設定状態に戻すキーである。
【0038】
機能切換キーはコピーキー及び送信キー等を備えており、コピー機能、送信機能等を相互に切り替えるキーである。コピーキーを操作すれば、コピーの初期画面が表示部403に表示される。送信キーを操作すれば、ファクシミリ送信及びメール送信の初期画面が表示部403に表示される。
【0039】
制御部500はCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及び画像メモリ等により構成される。CPUは画像形成装置1を動作させるために必要な制御を、装置本体100等の画像形成装置1の上記構成要素に対して実行する。ROMは画像形成装置1の動作の制御に必要なソフトウェアを記憶している。RAMはソフトウェアの実行時に発生するデータの一時的な記憶及びアプリケーションソフトの記憶等に利用される。画像メモリは画像データ(原稿読取部200から出力された画像データ、パソコンから送信された画像データ、ファクシミリ受信の画像データ等)を一時的に記憶する。
【0040】
制御部500は機能ブロックとして、領域決定部501、カウンター回路部503及びトナー強制供給部505を備える。これらのブロックの詳細は後で説明する。
【0041】
通信部600はファクシミリ通信部601及びネットワークI/F部603を備える。ファクシミリ通信部601は相手先ファクシミリとの電話回線の接続を制御するNCU(Network Control Unit)及びファクシミリ通信用の信号を変復調する変復調回路を備える。ファクシミリ通信部601は電話回線605に接続される。
【0042】
ネットワークI/F部603はLAN(Local Area Network)607に接続される。ネットワークI/F部603はLAN607に接続されたパソコン等の端末装置との間で通信を実行するための通信インターフェイス回路である。
【0043】
図3は、感光体ドラム115に仮想的に設けられた16の領域(複数の領域の一例)を示す図である。感光体ドラム115の回転方向Dが副走査方向となる。露光部(図2)は画像データを基にして生成した光ビームにより、回転方向Dに回転する感光体ドラム115に主走査1ラインを描画することを繰り返す。これにより、感光体ドラム115にはその画像データが示す画像の静電潜像が形成される。現像部121(図2)がその静電潜像にトナーを供給することにより、トナー画像が形成される。
【0044】
領域決定部501(図2)は、感光体ドラム115の周面を主走査方向に16の領域R1〜R16に仮想的に分割する。これらの領域を区別する必要がなければ領域Rと記載する。領域決定部501は主走査1ラインを構成する各画素の画素データに含まれる濃度値を利用して、16の領域R1〜R16のうちトナー濃度が一番小さい領域Rを決定することを、感光体ドラム115に描画される主走査1ライン毎に実行する。これについて詳細に説明する。
【0045】
図2に示すように領域決定部501は、濃度値演算部51及び濃度値記憶部53を備える。これらの機能を説明する。図4は、主走査1ラインのデータ構造の一例を示す図である。主走査1ラインは複数の画素により構成されるので、主走査1ラインのデータは複数の画素の画素データにより構成される。画素データは画素の濃度値のデータを含む。
【0046】
濃度値演算部51は主走査1ラインのデータを領域Rの数である16の分割データに等分割し、各分割データにおいて、分割データを構成する画素データに含まれる濃度値を加算する。これを各領域Rの濃度値(トナー濃度)として濃度値記憶部53に記憶させる。例えば、領域R1に対応する分割データを構成する画素データに含まれる濃度値を加算した値が、領域R1の濃度値(トナー濃度)となる。
【0047】
領域決定部501は、領域R1〜R16のうち濃度値(トナー濃度)が一番小さい領域Rを決定することを、主走査1ライン毎に実行する。例えば、図5に示すように、第1ページの画像において、一番目の主走査1ラインでは、領域R1の濃度値が一番小さい場合を示している。図6に示すように、二番目の主走査1ラインでは、領域R16の濃度値が一番小さい場合を示している。各主走査1ラインにおいて、領域R1〜R16のうち濃度値が一番小さい領域RにフラグFが付けられている。
【0048】
カウンター回路部503は領域決定部501によって濃度値が一番小さい領域Rであると決定された回数を、領域R1〜R16のそれぞれについてカウントする。カウンター回路部503は16個のカウンター3を備えるASIC(Application Specific Integrated Circuit)により実現される。各領域Rにおいて濃度値が一番小さいと決定された回数は、各領域Rに割り当てられたカウンター3でカウントされる。例えば、領域R1において濃度値が一番小さいと決定された回数は、カウンター3−1でカウントされる。本実施形態では領域Rの数が16の場合で説明しているが、例えば、領域Rの数が14の場合は、領域R15に割り当てられたカウンター3−15及び領域R16に割り当てられたカウンター3−16は使用されない。
【0049】
図7は、第1ページの画像から第1000ページの画像において、各主走査1ラインでの濃度値が一番小さい領域Rを示す図である。各カウンター3は各領域RについてフラグFの個数をカウントする。すなわち、各カウンター3は各領域Rについて濃度値が一番小さい領域Rと決定された回数をカウントする。例えば、カウンター3−1は領域R1について濃度値が一番小さい領域Rと決定された回数をカウントする。図7では、領域R1についての決定回数がN1、領域R2についての決定回数がN2、領域R3についての決定回数がN3、領域R15についての決定回数がN15、領域R16についての決定回数がN16で示されている。
【0050】
トナー強制供給部505は画像形成装置1で1000枚の印刷がされる毎に(予め定められた条件が満たされた場合に)、カウンター回路部503でカウントされた数値(N1〜N16)を参照し、領域R1〜R16のうちトナーを強制的に供給する領域Rを決定する。
【0051】
予め定められた条件が満たされた場合とは、感光体ドラム115の周面をリフレッシュする場合であり、例えば、所定枚数の印刷毎に又は所定期間の経過毎にリフレッシュが実行される。
【0052】
トナーを強制的に供給する領域Rを決定する基準の一つとして、しきい値がある。すなわち、トナー強制供給部505は、カウンター回路部503でカウントされた領域R1〜R16のそれぞれの決定回数(N1〜N16)を、予め定められたしきい値と比較し、決定回数がしきい値を超える領域Rを、トナーを強制的に供給する領域Rと決定する。この態様によれば、決定回数がしきい値を超える領域R、すなわち、トナーが供給されない状態又は供給量が少ない状態が継続している領域Rには、トナーを強制的に供給する処理をする。一方、決定回数がしきい値を超えない領域R、すなわち、トナーが供給されない状態又は供給量が少ない状態が継続していない領域Rには、トナーを強制的に供給する処理をしない。従って、トナーを強制的に供給する必要がある全ての領域Rにトナーを供給しつつ、トナーを強制的に供給する必要がない全ての領域Rにトナーを供給しないようにすることができる。
【0053】
トナーを強制的に供給する領域Rを決定する基準の他の一つとして、決定回数の上位第n番目までの領域Rがある。すなわち、トナー強制供給部505は、カウンター回路部503でカウントされた領域R1〜R16のそれぞれの決定回数(N1〜N16)どうしを比較し、予め定められた上位第n番目(n:16より小さい整数)までの領域Rを、トナーを強制的に供給する領域Rと決定する。nが1であれば、決定回数が一番多い領域R、言い換えれば、濃度値が一番小さい領域Rと決定された回数が一番多い領域Rが、トナーを強制的に供給する領域Rと決定される。nが3であれば、決定回数が一番多い領域R、次に多い領域R、その次に多い領域Rが、トナーを強制的に供給する領域Rと決定される。nは領域R1〜R16の数である16の範囲内で、サービスマン等が操作部400を操作して設定することができる。
【0054】
この態様によれば、予め定められた上位第n番目までの領域Rを、トナーを強制的に供給する領域Rと決定する。従って、トナーを強制的に供給する処理において、トナーを供給する領域Rの数を毎回の処理で同じにすることができる(言い換えれば、トナーの使用量を毎回の処理で同じにすることができる)。
【0055】
トナー強制供給部505は、トナーを強制的に供給する領域Rを決定した後、画像形成装置1が画像を用紙に形成する動作を実行していないときに、現像部121を制御して、決定された領域Rにトナーを供給する。これにより、トナーが供給されていない領域Rやトナーの供給量が少ない領域Rの箇所で感光体ドラム115が劣化することを防止できる。
【0056】
次に、本実施形態に係る画像形成装置1において、トナーを強制的に供給する領域Rを決定する動作を説明する。図8及び図9はこれを説明するフローチャートである。この動作は、イエロー画像形成部111Y、マゼンタ画像形成部111M、シアン画像形成部111C、ブラック画像形成部111BKのそれぞれで実行される。
【0057】
制御部500は、画像形成装置1で印刷命令がされたか判断する(ステップS1)。印刷命令とは、用紙に画像を形成する命令であり、具体的には画像形成装置1のプリンター機能やコピー機能等を実行する命令である。制御部500が、印刷命令がされたと判断しない場合(ステップS1でNo)、ステップS1の処理が繰り返される。
【0058】
制御部500が、印刷命令がされたと判断した場合(ステップS1でYes)、以下に説明するステップS2〜ステップS9で、1番目の主走査1ラインについて、濃度値が一番小さい領域Rを決定する。
【0059】
濃度値演算部51は、1番目の主走査1ラインのデータを用いて、領域R1〜R16のそれぞれの濃度値を演算し、演算した濃度値を濃度値記憶部53に記憶させる(ステップS2)。領域決定部501は、領域R1〜R16を特定する番号n=1〜16のうち、n=1を設定する(ステップS3)。
【0060】
領域決定部501は1番目の領域Rである領域R1の濃度値V(R1)を、濃度値記憶部53から読み出す(ステップS4)。領域決定部501はこれまでに濃度値が一番小さい領域Rの濃度値と領域R1の濃度値V(R1)とを比較し、いずれの領域Rの濃度値が小さいか判定する(ステップS5)。領域決定部501はステップS5で判定された濃度値が小さい領域Rを、これまでに濃度値が一番小さい領域Rと決定する(ステップS6)。領域R1の前に領域Rは存在しないので、領域R1がこれまでに一番小さい濃度値の領域Rと決定される。
【0061】
領域決定部501は、n=16か否かを判断する(ステップS7)。すなわち、16番目の領域Rである領域R16についての濃度値の比較が終了したか判断する。n=1なので、領域決定部501はn=2(ステップS8)と設定して、ステップS4に戻る。
【0062】
領域決定部501は2番目の領域Rである領域R2の濃度値V(R2)を、濃度値記憶部53から読み出す(ステップS4)。領域決定部501はこれまでに濃度値が一番小さい領域Rの濃度値と2番目の領域R2の濃度値V(R2)とを比較し、いずれの領域Rの濃度値が小さいか判定する(ステップS5)。
【0063】
ここでは、領域R1の濃度値V(R1)と領域R2の濃度値V(R2)とを比較し、いずれの領域Rの濃度値が小さいか判定する。領域決定部501はステップS5で決定された濃度値が小さい領域Rを、これまでに濃度値が一番小さい領域Rと決定する(ステップS6)。濃度値V(R1)が濃度値V(R2)より小さい場合、領域R1がこれまでに一番小さい濃度値の領域Rと決定される。一方、濃度値V(R2)が濃度値V(R1)より小さい場合、領域R2がこれまでに一番小さい濃度値の領域Rと決定される。
【0064】
領域決定部501はn=16に到達するまで、ステップS4〜ステップ8の処理を繰り返す。領域決定部501が、n=16に到達したと判断すると(ステップS7でYes)、1番目の主走査1ラインにおいて、領域R1〜R16のうち濃度値が一番小さい領域Rを決定する(ステップS9)。図5に示す場合、1番目の主走査1ラインでは、領域R1の濃度値が一番小さい。領域R1に割り当てられたカウンター3−1は1をカウントし、残りのカウンター3は0のままである。
【0065】
領域決定部501は1ページの画像の印刷が終了したか判断する(ステップS10)。領域決定部501が、1ページの画像の印刷が終了したと判断しない場合(ステップS10でNo)、2番目の主走査1ラインについて、ステップS2〜S9の処理を実行する(ステップS11)。
【0066】
領域決定部501が、1ページの画像の印刷が終了したと判断した場合(ステップS10でYes)、このページが第1000ページ(所定枚数の一例)か否か判断する(ステップS12)。領域決定部501が、第1000ページと判断しない場合(ステップS12でNo)、ステップS1に戻る。
【0067】
領域決定部501が、第1000ページと判断した場合(ステップS12でYes)、トナー強制供給部505は16個のカウンター3が示す値を参照して、領域R1〜R16のうち、トナーを強制的に供給する領域Rを決定する(ステップS13)。
【0068】
本実施形態の主な効果を説明する。本実施形態では、感光体ドラム115に形成された静電潜像にトナーを供給する場合に、主走査方向に沿って感光体ドラム115に仮想的に設けられた領域R1〜R16のうち、濃度値(トナー濃度)が一番低い領域Rを決定することを、感光体ドラム115に描画される主走査1ライン毎に実行する。そして、濃度値(トナー濃度)が一番低い領域Rであると決定された回数を、領域R1〜R16のそれぞれについてカウントする。この決定回数を用いてトナーを強制的に供給する領域Rを決定する。従って、本実施形態によれば、カウンター回路部503の規模を大きくすることなく、トナーを強制的に供給する領域Rを決定できる。
【0069】
また、図7に示すように、本実施形態では領域Rの数が16の場合で説明しているが、例えば、領域Rの数が14の場合は、領域R15に割り当てられたカウンター3−15及び領域R16に割り当てられたカウンター3−16は使用されない。すなわち、領域決定部501において、複数の領域Rの数は予め定められた数の範囲の中から予め選択されている(例えば、領域Rの数が16や14の場合)。カウンター回路部503において、複数の領域Rのそれぞれに一つのカウンター3が割り当てられており、カウンター3の数は予め定められた数の範囲の最大値(16)と同じ数である。これにより、画像形成装置1の機種(例えば、A3の用紙を印刷できる機種とA3の用紙を印刷できない機種)に応じて、複数の領域Rの数を変える場合に、カウンター回路部503を共通化することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 画像形成装置
115 感光体ドラム
117 露光部
121 現像部
R 領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を用紙に形成する画像形成装置であって、
感光体ドラムと、
前記画像を示す画像データを基にして生成された光ビームにより、回転する前記感光体ドラムに主走査1ラインを描画することを繰り返して、前記画像の静電潜像を形成する露光部と、
前記静電潜像が形成された前記感光体ドラムにトナーを供給してトナー画像を形成する現像部と、
前記感光体ドラムを主走査方向に複数の領域に仮想的に分割し、主走査1ラインを構成する各画素の画素データに含まれる濃度値を利用して、前記複数の領域のうちトナー濃度が一番小さい領域を決定することを、前記感光体ドラムに描画される主走査1ライン毎に実行する領域決定部と、
前記領域決定部によって前記一番小さい領域であると決定された回数を、前記複数の領域のそれぞれについてカウントするカウンター回路部と、
予め定められた条件が満たされた場合、前記カウンター回路部でカウントされた数値を参照し、前記複数の領域のうちトナーを強制的に供給する領域を決定し、前記画像形成装置が前記画像を用紙に形成する動作を実行していないときに、前記現像部を制御して前記決定された領域にトナーを供給するトナー強制供給部と、を備える画像形成装置。
【請求項2】
前記トナー強制供給部は、前記カウンター回路部でカウントされた前記複数の領域のそれぞれの前記決定回数を、予め定められたしきい値と比較し、前記決定回数が前記しきい値を超える領域を、トナーを強制的に供給する領域と決定する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記トナー強制供給部は、前記カウンター回路部でカウントされた前記複数の領域のそれぞれの前記決定回数どうしを比較し、予め定められた上位第n番目(n:前記複数の領域の数より小さい整数)までの領域を、トナーを強制的に供給する領域と決定する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記領域決定部において、前記複数の領域の数は予め定められた数の範囲の中から予め選択されており、
前記カウンター回路部において、前記複数の領域のそれぞれに一つのカウンターが割り当てられており、前記カウンターの数は前記予め定められた数の範囲の最大値と同じ数である請求項1〜3のいずれか一項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−114122(P2013−114122A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261467(P2011−261467)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】