画像形成装置
【課題】記録用紙の種類に応じて搬送形態を適正化することが可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】ロール状に巻回された記録用紙を回転させて記録用紙をその先端部から搬送路に送り出す給紙機構40と、搬送路の下流側に位置し、記録用紙を搬送する搬送機構50と、搬送機構50から見て記録用紙の搬送方向の前方に位置し、記録用紙に画像を記録する画像記録部30と、搬送期間内に給紙機構40および搬送機構50に搬送路内の記録用紙を引っ張らせる区間または弛ませる区間の少なくとも一方を持つ複数の制御モードを、予め定められた複数種の記録用紙に対応付けて備えた制御部100と、を有し、制御部100は、複数種の記録用紙から予め選択された記録用紙を示す記録情報が入力されると、記録情報に示された記録用紙に対応する制御モードで給紙機構40および搬送機構50を制御する。
【解決手段】ロール状に巻回された記録用紙を回転させて記録用紙をその先端部から搬送路に送り出す給紙機構40と、搬送路の下流側に位置し、記録用紙を搬送する搬送機構50と、搬送機構50から見て記録用紙の搬送方向の前方に位置し、記録用紙に画像を記録する画像記録部30と、搬送期間内に給紙機構40および搬送機構50に搬送路内の記録用紙を引っ張らせる区間または弛ませる区間の少なくとも一方を持つ複数の制御モードを、予め定められた複数種の記録用紙に対応付けて備えた制御部100と、を有し、制御部100は、複数種の記録用紙から予め選択された記録用紙を示す記録情報が入力されると、記録情報に示された記録用紙に対応する制御モードで給紙機構40および搬送機構50を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール状に巻回された記録用紙に画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置の中には、用紙サイズがA2以上の大判の記録用紙を用いるタイプがある。このタイプの画像形成装置では、一般的に、単票紙以外にロール状に巻回された記録用紙が利用される。以下、ロール紙から引き出された部分を用紙部と呼ぶ。ロール紙から用紙部の引き出しは、一般的に、搬送ローラによって行われている。大判のプリンタに用いられるロール紙は重量が重いため、用紙部を引き出す負荷は大きくなる。そのため、搬送ローラを駆動する搬送モータの駆動力のみでは、記録用紙が破断する可能性がある。そこで、ロール紙を回転させるためのロールモータを設け、搬送モータと共にロールモータを駆動させて、用紙部を引き出す技術が特許文献1、2に開示されている。
【0003】
特許文献1には、用紙搬送ローラと、ロールモータと、搬送モータと、ロール紙に生じるテンションを測定するテンション測定手段と、モータ制御部とを有する画像形成装置が開示されている。この画像形成装置において、モータ制御部は、テンション測定手段の測定結果に基づいてロールモータまたは搬送モータの少なくとも一方の駆動を制御する。その結果、テンション測定手段によって精度よく測定されたテンションに基づいて、各モータがフィードバック制御されロールの送り量を決定する。これにより、ロール紙に作用するテンションを適切に制御可能となり、ロール紙の巻径の変化によるテンションの変動を防ぐことができる。
【0004】
一方、特許文献2には、用紙搬送ローラと、搬送モータと、ロール紙の外周面に当接可能に配置されている繰り出しローラと、繰り出しローラを回転させる繰り出しロールモータと、制御部と、を有する画像形成装置が開示されている。この画像形成装置において、制御部は、印字時間および搬送時間を利用して繰り出しローラを回転させる。その結果、用紙搬送ローラによる紙送り動作が終了してから次の送り動作が開始するまでの間に、用紙搬送ローラによる紙送り動作に必要な紙送り量に対応する量だけロール紙を送り方向に回転させる。これにより、ロール紙は常に弛みを持つことになり、ロール紙の慣性負荷の影響を受けずに搬送精度を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−263044号公報
【特許文献2】特開2007−203564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された画像形成装置では、用紙部に常にテンションが与えられた状態(引っ張られた状態)で用紙搬送ローラにより記録用紙が搬送される。記録用紙には、例えば、記録面にインクの定着性を高めるための受容層が形成された光沢紙のように記録面が傷付きやすい種類が存在する。そのような記録用紙を搬送する場合、用紙部に常にテンションが与えられた搬送形態では、用紙部が搬送路内で摺擦して記録面に傷や擦れ跡等が発生する可能性が高くなる。
【0007】
それに対し、特許文献2に開示された画像形成装置では、用紙部にテンションが付与されない(弛んだ)状態で搬送されるので、用紙部が搬送路に摺擦するのを防止できる。そのため、上述した光沢紙のように記録面が傷付きやすい記録用紙の搬送に適している。しかし、この画像形成装置では、用紙部にテンションが付与されないので、用紙部が斜行(スキュー)した場合、斜行の補正が困難になる。したがって、特許文献2に開示された画像形成装置は、例えば、普通紙やコート紙等のように傷や擦れ跡が付きにくい記録用紙の搬送には適していない。
【0008】
そこで、本発明は、記録用紙の種類に応じて搬送形態を適正化することが可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の画像形成装置は、ロール状に巻回された記録用紙を回転させて前記記録用紙をその先端部から搬送路に送り出す給紙機構と、前記搬送路の下流側に位置し、前記搬送路に送り出された前記記録用紙を搬送する搬送機構と、前記搬送機構から見て前記記録用紙の搬送方向の前方に位置し、前記記録用紙に画像を記録する画像記録部と、前記搬送機構が前記記録用紙を前記搬送路から前記画像記録部まで搬送している搬送期間内に前記給紙機構および前記搬送機構に前記搬送路内の前記記録用紙を引っ張らせる区間または弛ませる区間の少なくとも一方を持つ複数の制御モードを、予め定められた複数種の記録用紙に対応付けて備えた制御部と、を有し、前記制御部は、前記複数種の記録用紙から予め選択された記録用紙を示す記録情報が入力されると、入力された記録情報に示された記録用紙に対応する制御モードで前記給紙機構および前記搬送機構を制御する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、記録用紙の種類に応じて搬送形態を適正化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の画像形成装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示す画像形成装置の断面図である。
【図3】図1に示す画像装置に設けられた給紙機構の一部の構成を示す斜視図である。
【図4】図1に示す画像装置に設けられた給紙機構の構成を示す断面図である。
【図5】図1に示す画像装置に設けられた搬送機構の構成を示す断面図である。
【図6】図1に示す画像形成装置の電気的な制御構成を示すブロック図である。
【図7】記録用紙の搬送速度及び弛み等の関係図である。
【図8】第1の制御モードにおける速度及び弛み量の関係を示すタイミングチャートである。
【図9】第2の制御モードにおける速度及び弛み量の関係を示すタイミングチャートである。
【図10】ロール紙が斜行状態のときの、搬送ローラの搬送力とバックテンションとの関係を示す図である。
【図11】ロール紙が斜行状態のときの、用紙部に作用する搬送力を示す図である。
【図12】予め定められた複数種の記録用紙と、制御モードとの対応関係を示す図である。
【図13】第1の実施形態の画像形成装置の動作手順を示すフローチャートである。
【図14】第2の実施形態の第2の制御モードにおける速度及び弛み量の関係を示すタイミングチャートである。
【図15】本発明の第3の実施形態の画像形成装置の電気的な制御部構成を示すブロック図である。
【図16】予め定められた複数種の記録用紙類と、制御モードとの対応関係を示す図である。
【図17】第3の実施形態の画像形成装置の動作手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の画像形成装置の一実施形態を示す斜視図である。図2は、図1に示す画像形成装置の断面図である。図3は、図1に示す画像形成装置に設けられた給紙機構の一部の構成を示す斜視図である。
【0013】
本実施形態の画像形成装置1は、ロール状に巻回された記録用紙であるロール紙6aを記録媒体として用いる。図3に示すように、ロール紙6aには、巻きの中心に位置する紙管15にスプールシャフト5が貫通している。スプールシャフト5に取り付けられた基準側ロール紙ホルダ26の基準側装填部26aが紙管15の内壁に対して半径方向への弾性力によって食い込むことで紙管15は基準側ロール紙ホルダ26に固定される。さらに、ロール紙6aを挟み込むように基準側ロール紙ホルダ26の逆側から非基準側ロール紙ホルダ27をスプールシャフト5に通すことによって、紙管15は非基準側ロール紙ホルダ27に保持される。非基準側ロール紙ホルダ27には非基準側装填部27aが設けられ、非基準側装填部27aが紙管15の内壁に対して半径方向への弾性力によって食い込むことで紙管15は非基準側ロール紙ホルダ27に固定される。スプールシャフト5の両端部が画像形成装置1に回転可能に保持されることによって、ロール紙6aも回転可能に保持される(図1参照)。
【0014】
画像形成装置1に保持されたロール紙6aは、反時計回り(CCW)に回転させられることによって、外ガイド7と内ガイド8との間に形成された搬送路9に用紙部6bの先端部から送り出される(図2参照)。搬送路9の途中には、用紙検出センサ(不図示)が設けられている。その用紙検出センサが用紙部6bの先端部を検出すると、搬送路9の下流側に位置する搬送モータ24が、搬送ローラ10を反時計回りに回転させる。用紙部6bの先端部が搬送ローラ10とピンチローラ11との間に到達すると、用紙部6bは搬送ローラ10とピンチローラ11とで挟持され、搬送方向の前方に位置する画像記録部30まで搬送される。この際、キャリッジ3に搭載された用紙端部検出センサ13によって、用紙の幅や斜行量が検出される。
【0015】
画像記録部30は、用紙部6bに画像を記録する記録ヘッド2(図1参照)と、記録ヘッド2を搭載するキャリッジ3と、記録ヘッド2に対向するプラテン12とで構成されている。キャリッジ3は、画像形成装置1に互いに平行に配置されたキャリッジシャフト4(図1参照)とガイドレールに往復移動可能に支持されている。画像記録部30において、用紙部6bがプラテン12上に搬送されると、キャリッジ3が矢印D1方向(図1参照)に往復移動する。キャリッジ3の往復移動に伴って記録ヘッド2が1ライン分の画像を用紙部6bに記録する。その後、搬送ローラ10およびピンチローラ11が用紙部6bを搬送方向A(図2参照)に所定ピッチだけ搬送すると、キャリッジ3が再び往復移動して記録ヘッド2が次のラインの画像を記録する。この動作を繰り返して用紙部6b全体に画像が記録される。記録済みの用紙部6bは、画像形成装置1の外部にある排紙カバー14へ向けて搬送される。記録動作が終了すると、用紙部6bは搬送ローラ10およびピンチローラ11とにより所定の切断位置まで搬送される。その後、用紙部6bはカッタ29に切断される。切断された用紙部6bは、排紙カバー14から排紙バスケット(不図示)に収納される。
【0016】
次に、図4を参照して、ロール紙6aを回転させて用紙部6bの先端部から搬送路9に送り出す給紙機構40について説明する。図4は、給紙機構40の構成を示す断面図である。
【0017】
ロール紙6aを保持したスプールシャフト5は、基準側ロール紙ホルダ26の端部に設けられたロールギア17を介して、ロール入力ギア18と接続される。ロール入力ギア18は、ロールモータ19のギア19aと接続される。ロールモータ19は、ロール入力ギア18及びロールギア17を介して、ロール紙6aに駆動力を付与する。エンコーダフィルム20は、ロール入力ギア18に貼り付けられており、エンコーダフィルム20の回転動作をエンコーダセンサ21によって検出することで駆動制御が行われる。この駆動制御には、主に、無負荷、所定力による励磁、ロール紙逆転駆動がある。所定力による励磁は、いわゆるロールのバックテンションと呼ばれる制御であり、バックテンションを記録用紙に与えながら搬送することで、紙セット時の斜行補正や弛み取りを行う。バックテンションの負荷は、ロールモータ19に流れる電流を調整することでロールモータ19の発生トルクを制御して調整される。
【0018】
次に用紙部6bを搬送路9から画像記録部30まで搬送する搬送機構50について説明する。図5は搬送機構50の構成を示す断面図である。
【0019】
搬送ローラ10は、その端部に設けられた搬送ギア22を介して、搬送入力ギア23と接続される。搬送入力ギア23は、搬送モータ24のギア24aと接続される。搬送モータ24は、搬送入力ギア23及び搬送ギア22を介して、搬送ローラ10に搬送力を付与する。エンコーダフィルム28は、搬送入力ギア23に貼り付けられており、エンコーダフィルム28の回転動作をエンコーダセンサ25によって検出することで駆動制御が行われる。
【0020】
図6は図1に示す画像形成装置の電気的な制御構成を示すブロック図である。
【0021】
図6に示すブロック図において、制御部100は、ロールモータ19および搬送モータ24を制御するための構成要素であり、主制御部110と、ロールモータ制御部120と、搬送モータ制御部130とを有する。各制御部は、CPU(Central Processer Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を具備している。主制御部110は、ロールモータ19と搬送モータ24との相関駆動するため、ロールモータ制御部120と、搬送モータ制御部130との両方に指令を与える。ロールモータ制御部120は、第1の制御モードと第2の制御モードを有し、ロール紙6aの種類が示された記録情報に基づいて制御モードを切り替える。
【0022】
図7は、用紙部6bの搬送速度及び弛み等の関係を示す図である。図7において、テンションTpapは、搬送ローラ10とロール紙6aとの間(搬送路内)の用紙部6bにかかる張力である。搬送速度Vlfは、搬送ローラ10の搬送速度(円周上の速度)である。送り速度Vrollは、ロール紙6aの送り速度(円周上の速度)である。弛み量Spapは、搬送ローラ10とロール紙6aとの間(搬送路内)の用紙部6bの弛み量である。搬送速度Vpapは、用紙部6bの搬送速度である。搬送速度Vlf、送り速度Vroll、および搬送速度Vpapについては図中矢印の方向が正値となる。弛み量Spapについては、弛みが無い状態を0とし、弛んだ量を絶対値で表示する。以降に示す波形図の力関係においては、図7の方向を基準として説明する。
【0023】
次に、第1の制御モードと、第2の制御モードについて説明する。
【0024】
図8は、第1の制御モードにおける速度及び弛み量の関係を示すタイミングチャートである。図9は、第2の制御モードにおける速度及び弛み量の関係を示すタイミングチャートである。
【0025】
まず、第1の制御モードについて説明する。図8に示す上段のグラフにおいて、縦軸は搬送ローラ10の搬送速度Vlfを示し、横軸は時間Tを示す。図8の中段のグラフでは、縦軸はロール紙6aの送り速度Vrollを示し、横軸は時間Tを示す。図8の下段のグラフでは、縦軸は用紙部6bの弛み量Spapを示し、横軸は時間Tを示す。搬送ローラ10の搬送速度Vlfは、加速領域(Tb−Tc)、定速領域(Tc−Td)、減速領域(Td−Te)をもつ動作波形となる。本実施形態では、ロール紙6aは、搬送ローラ10が動作を開始する時間Tbの前の時間Taに送り方向に送り出される。弛み量Spapは、ロール紙6aの搬送速度と搬送ローラ10の搬送速度の差によって、ロール紙6aの送り動作の開始時間Taから搬送ローラ10の加速領域終了時間Tcの間に形成される。搬送ローラ10の加速領域(Tb−Tc)が終わり、定速領域(Tc−Td)および減速領域(Td−Te)に入ると、ロール紙6aは搬送ローラ10に追従する搬送速度(Vlf=Vroll)で動作する。そのため、弛み量Spapは一定に保たれる。弛み量Spapは、搬送ローラ10の紙送り動作に影響のない必要最低限の弛みがあればよい。搬送ローラ10の動作終了時間Te後にはロールモータ19を搬送方向とは逆に回転させ、用紙部6bの弛み量がSpap=0となる時間Tfまで弛み取りを行う。用紙部6bの弛み取りは、搬送ローラ10の動作停止時間Teから次のロール紙の動作開始時間Ta’までの間に完了する。以上の動作は、搬送ローラ10の間欠搬送が行われるたびに、毎回実施される。
【0026】
以上説明したように、第1の制御モードは、用紙部6bを搬送路9から画像記録部30まで搬送する搬送期間内に弛み量Spap>0となる区間を持つ。弛み量Spap>0となっている区間では、搬送ローラ10とロール紙6aの間の用紙部6bにかかるテンションはTpap=0となる。これにより、用紙部6bは弛んだ状態(テンションTpapが付与されていない状態)で搬送される。これにより、内ガイド8(図2参照)に用紙部6bが摺擦することによって発生する記録面の傷や擦れ跡等を抑制することが可能になり、安定した用紙搬送が可能である。
【0027】
本実施形態の第1の制御モードでは、ロール紙6aの紙送り動作開始タイミングTaを搬送ローラ10の送り動作タイミングTbより早めることで用紙部6bに弛みを生じさせ、紙送り動作中(Tb−Te)にTpap=0としている。しかしながら、紙送り動作中(Tb−Te)にTpap=0とする制御方法であれば、他の制御方法を第1の制御モードとしてもよい。他の制御方法とは、例えばロール紙6aの送り速度Vrollを搬送ローラ10の搬送速度Vlfより早くする制御や、記録前に用紙部6bに弛みを生じさせ、その弛み量を常に持続させる制御等である。
【0028】
次に、第2の制御モードについて説明する。図9に示す3つのグラフの縦軸及び横軸はそれぞれ第1の制御モードを示す図8と同様である。搬送ローラ10の搬送速度Vlfは、第1の制御モードと同様に加速領域(Ta−Tc)、定速領域(Tc−Te)、減速領域(Te−Tf)を持つ動作波形となる。ロール紙6aは、第1の制御モードとは異なり、搬送ローラ10が動作する時間Taと同時期に搬送路9に送り出される。但し、ロール紙6aの加速度は一定ではなく、回転初期(Ta−Tb)では搬送ローラ10よりも加速度は小さい。そのため、回転初期(Ta−Tb)には搬送ローラ10の搬送速度Vlf>ロール紙6aの送り速度Vrollとなるため、弛み量Spapがゼロとなるばかりでなく、用紙部6bにかかるテンション(バックテンション)Tpap>0となる。その後(Tb−Tc)は、ロール紙6aの加速度は搬送ローラ10の加速度を上回る。そのため、搬送速度Vlf<送り速度Vrollとなるため、弛み量Spap>0となる。ロール紙6aの送り速度Vrollが定速領域(Td)に入った以降の動作は第1の制御モードと同様である。
【0029】
ここで、図10及び図11を参照して、用紙搬送において用紙部6bの斜行が補正されるメカニズムについて説明する。図10はロール紙が斜行状態のときの、搬送ローラの搬送力とバックテンションとの関係を示す図である。図11はロール紙が斜行状態のときの、用紙部に作用する搬送力を示す図である。用紙部6bがP2側に斜行し、バックテンションがかかる状態(Tpap>0)で搬送されると、用紙部6bのP1側端部が張り、P2側端部が弛む。そのため、バックテンションBは、P1側端部で強くなり、P2側端部で弱くなる。一方、搬送ローラ10及びピンチローラ11により用紙部6bに付与される搬送力Hは、斜行の有無に係わらず、P1側端部およびP2側端部とも、均等になる。したがって、搬送力HおよびバックテンションBの、用紙部6bの幅方向の分布は、図10に示すような分布となる。また、用紙部6bに対して実際に作用する有効搬送力Fは、搬送力HとバックテンションBとの差となる。したがって、有効搬送力Fは、図11に示すように、P2側端部で強くなり、P1側端部で弱くなる。そのため、用紙部6bは、P2側端部からP1側端部へ斜行が補正されることになる。つまり、用紙部6bの斜行補正は、バックテンションの大きさ、並びにP2側端部とP1側端部のバックテンションの差が大きいほど、また、搬送ローラ10からの搬送力Hが小さくなるほど、斜行補正の効果が大きいことになる。
【0030】
本実施形態の第2の制御モードは、搬送ローラ10の紙送り動作初期(Ta−Tb)に、弛み量Spapがゼロとなり、用紙部6bにバックテンションがかかる(Tpap>0)区間を持つ。これにより、用紙部6bが斜行した状態でも、記録動作を行いながら斜行を補正することが可能となる。
【0031】
本実施形態の第2の制御モードでは、ロール紙6aの加速度を変化させることで、一時的に用紙部6bに張りを生じさせ、紙送り動作初期(Ta−Tb)にTpap>0としている。しかしながら、紙送り動作初期(Ta−Tb)にTpap>0とする制御方法であれば、他の制御方法を第2の制御モードとしてもよい。他の制御方法とは、例えば搬送ローラ10の紙送りタイミングをロール紙6aの紙送りタイミングより早める制御や、搬送ローラ10の搬送速度Vlfを常にロール紙6aの送り速度Vrollより早める制御等である。
【0032】
次に、図12及び図13を参照して、本実施形態の画像形成装置の動作について説明する。図12は、予め定められた複数種の記録用紙と、上述した制御モードとの対応関係を示す図である。図13は、本実施形態の画像形成装置の動作手順を示すフローチャートである。
【0033】
第1の制御モードは、上述したように、記録面に傷や擦れ跡等が発生することを抑制できる。そのため、図12に示すように、光沢紙やプルーフ紙等の傷が発生し易い記録用紙に分類される用紙タイプAが第1の制御モードに対応付けられている。
【0034】
一方、第2の制御モードは、上述したように、用紙部6bが斜行した状態でも、記録動作を行いながら斜行を補正することが可能となる。そのため、普通紙やコート紙等の傷付きにくい記録用紙に分類される用紙タイプBが第2の制御モードに対応付けられている。
【0035】
図13に示すフローチャートにおいて、ロール紙6aの給紙に伴って(ステップS01)、ユーザーによって予め選択されたロール紙6aの種類が示された記録情報が主制御部110に入力される(ステップS02)。主制御部110は、入力された記録情報に基づいてロール紙6aの種類を判断する(ステップS03)。記録情報に示されたロール紙6aの種類が用紙タイプAの場合、主制御部110は、ロールモータ制御部120に第1の制御モードで用紙部6bを所定量(例えば、300mm)搬送させる。このとき、主制御部110は、用紙端部検出センサ13が検出した搬送前後での用紙部6bの端部位置に基づいて斜行量を検出する(ステップS04)。その後、主制御部110は、検出した斜行量が予め定められた許容値ob1を下回っているか否か判断する(ステップS5)。斜行量が許容値ob1を下回っている場合、主制御部110は、第1の制御モードで記録を行わせる(ステップS06)。その後、第1の制御モードでの記録が終了すると(ステップS08)、スタンバイ状態となる。斜行量が許容値ob1以上の場合、ユーザーに対しロール紙6aを再度セットし直す旨の警告を行う(ステップS07)。
【0036】
ステップS03において記録情報に示されたロール紙6aの種類が用紙タイプBの場合、主制御部110は、ロールモータ制御部120に第2の制御モードで用紙部6bを所定量(例えば、300mm)搬送させる。このとき、主制御部110は、ステップS04と同様に、斜行量を検出する(ステップS09)。その後、主制御部110は、検出した斜行量が予め定められた許容値ob2を下回っているか否か判断する(ステップS10)。斜行量が許容値ob2を下回っている場合、主制御部110は、第2の制御モードで記録を行わせる(ステップS11)。その後、第2の制御モードでの記録が終了すると(ステップS13)、スタンバイ状態となる。斜行量が許容値ob2以上の場合、ユーザーに対してロール紙6aを再度セットし直す旨の警告を行う(ステップS12)。
【0037】
本実施形態では、斜行量の許容値に関し、ob1<ob2の大小関係となっている。これは、第1の制御モードの場合、テンションを付与しないで用紙部6bを搬送するため、用紙部6bの斜行を補正することが困難になる。そのため、画像形成に影響を与えないように用紙部6bの斜行量の許容値は第2の制御モードに比べ厳しくなる(小さくなる)。
【0038】
本実施形態の画像形成装置によれば、記録用紙が光沢紙やプルーフ紙等の傷付き易い種類の場合、テンションを付与しないで(弛んだ状態で)記録用紙を搬送する第1の制御モードが選択される。そのため、記録面に傷や擦れ跡等が付くことを抑制できるようになる。一方、記録用紙が普通紙やコート紙等の傷付き難い種類の場合、テンションを付与して(引っ張った状態で)記録用紙を搬送する第2の制御モードが選択される。そのため、用紙部6bが斜行しにくくなり、ロール紙6aのセット動作が簡略化される。
【0039】
(第2の実施形態)
次に、本発明の画像形成装置の第2の実施形態について説明する。第1の実施形態と同じ構成要素に関しては、同一符号を用い、その説明は割愛する。本実施形態では、第2の制御モードの内容が第1の実施形態と異なる。
【0040】
図14を参照して、本実施形態の第2の制御モードについて説明する。図14は、本実施形態の第2の制御モードにおける速度及び弛み量の関係を示すタイミングチャートである。
【0041】
図14に示す3つのグラフの縦軸及び横軸は、それぞれ図8及び図9と同様である。搬送ローラ10の搬送速度Vlfは、第1の制御モード及び第1の実施形態の第2の制御モードと同様に加速領域(Ta−Tc)、定速領域(Tc−Te)、減速領域(Te−Tf)を持つ動作波形となる。本実施形態では、ロール紙6aの送り速度Vrollも、搬送ローラ10の搬送速度Vlfと同様に加速領域(Ta−Tc)、定速領域(Tc−Te)、減速領域(Te−Tf)を持つ動作波形となる。そのため、搬送ローラ10の搬送動作中(Ta−Tf)、弛み量Spapが常にゼロとなり、用紙部6bにバックテンションが常にかかった状態(Tpap>0)となる。これにより、常にテンションTpapが付与された状態で用紙部6bが搬送されるため、斜行補正の効果がより大きくなる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態の第2の制御モードでは、用紙部6bを搬送路9から画像記録部30まで搬送する搬送期間内で常に用紙部6bにテンションTpapを付与している。これにより、用紙部6bにかかるテンションTpapが第1の実施形態と同じでも、テンションを付与している時間が第1の実施形態よりも長くなる。そのため、第1の実施形態よりも斜行補正の効果が大きくなる。これにより、本実施形態では、第2の制御モードにおける用紙部6bの斜行量の許容値ob2は、第1の実施形態の値よりも緩く(大きく)することが可能となる。
【0043】
(第3の実施形態)
次に、本発明の画像形成装置の第3の実施形態について説明する。第1の実施形態及び第2の実施形態と同じ構成要素に関しては、同一符号を用い、その説明は割愛する。
【0044】
図15は、本実施形態の画像形成装置の電気的な制御構成を示すブロック図である。図16は、予め定められた複数種の記録用紙類と、制御モードとの対応関係を示す図である。図17は、本実施形態の画像形成装置の動作手順を示すフローチャートである。
【0045】
本実施形態では、ロールモータ制御部121は、第1の制御モード、第2の制御モード、及び第3の制御モードの3つの制御モードを有する。第3の制御モードの内容は、第2の実施形態の第2の制御モードと同一である。
【0046】
第1の制御モードは、第1の実施形態で述べたように記録面に傷や擦れ跡等が発生することを抑制できる。そのため、図16に示すように、光沢紙やプルーフ紙等の傷付きやすい記録用紙に分類される用紙タイプAが第1の制御モードに対応付けられている。
【0047】
第2の制御モードは、第1の実施形態で述べたように、用紙部6bが斜行した状態でも、記録動作を行いながら斜行を補正することが可能となる。また、用紙部6bが滑り、搬送精度に影響を与える(送り量が少なくなる)おそれを抑制することが可能である。そのため、紙厚が厚いコート紙等の搬送ローラ10とピンチローラ11との挟持力が弱く、搬送力Hが小さい(搬送ローラ10及びピンチローラ11に対して用紙部6bが滑り易い)記録用紙に分類される用紙タイプB1が、第2の制御モードに対応付けられている。
【0048】
第3の制御モードは、第2の実施形態で述べたように、用紙部6bが斜行した状態でも、記録動作を行いながら常に斜行を補正することが可能であるため、斜行補正の効果が大きくなる。そのため、図16に示すように、普通紙や紙厚が薄いコート紙等の搬送力Hが大きい(搬送ローラ10及びピンチローラ11に対して用紙部6bが滑り難い)記録用紙に分類される用紙タイプB2が第3の制御モードに対応付けられている。
【0049】
図17に示すフローチャートにおいて、ロール紙6aの給紙に伴って(ステップS31)、ユーザーによって予め選択されたロール紙6aの種類が示された記録情報が主制御部110に入力される(ステップS32)。主制御部110は、入力された記録情報に基づいてロール紙6aの種類を判断する(ステップS33)。記録情報に示されたロール紙6aの種類が上述した用紙タイプAの場合、主制御部110は、ロールモータ制御部120に第1の制御モードで用紙部6bを所定量(例えば、300mm)搬送させる。このとき、主制御部110は、用紙端部検出センサ13が検出した搬送前後での用紙部6bの端部位置に基づいて斜行量を検出する(ステップS34)。その後、主制御部110は、検出した斜行量が予め定められた許容値ob1を下回っているか否か判断する(ステップS35)。斜行量が許容値ob1を下回っている場合、主制御部110は、第1の制御モードで記録を行わせる印字を行わせる(ステップS36)。その後、第1の制御モードでの記録が終了すると(ステップS38)、スタンバイ状態となる。斜行量が許容値ob1以上の場合、ユーザーに対しロール紙6aを再度セットし直す旨の警告を行う(ステップS37)。
【0050】
ステップS33において記録情報に示されたロール紙6aの種類が、上述した用紙タイプB1の場合、主制御部110は、ロールモータ制御部120に第2の制御モードで用紙部6bを所定量(例えば、300mm)搬送させる。このとき、主制御部110は、ステップS34と同様に、斜行量を検出する(ステップS39)。その後、主制御部110は、検出した斜行量が予め定められた許容値ob2を下回っているか否か判断する(ステップS40)。斜行量が許容値ob2を下回っている場合、主制御部110は、第2の制御モードで記録を行わせる(ステップS41)。第2の制御モードでの記録が終了すると(ステップS43)、スタンバイ状態となる。斜行量が許容値ob2以上の場合、ユーザーに対してロール紙6aを再度セットし直す旨の警告を行う(ステップS42)。
【0051】
ステップS33において記録情報に示されたロール紙6aの種類が、上述した用紙タイプB2の場合、主制御部110は、ロールモータ制御部120に第3の制御モードで用紙部6bを所定量(例えば、300mm)搬送させる。このとき、主制御部100は、ステップS34、S39と同様に斜行量を検出する(ステップS44)。その後、主制御部110は、検出した斜行量が予め定められた許容値ob3を下回っているか否か判断する(ステップS45)。斜行量が許容値ob3を下回っている場合、主制御部110は、第3の制御モードで記録を行わせる(ステップS46)。第3の制御モードでの記録が終了すると(ステップS48)、スタンバイ状態となる。斜行量が許容値ob3以上の場合、ユーザーに対してロール紙6aを再度セットし直す旨の警告を行うる(ステップS47)。
【0052】
本実施形態では、用紙部6bの斜行量の許容値に関し、ob1<ob2<ob3の大小関係となっているが、ob1<ob2=ob3としてもよい。
【0053】
本実施形態の画像形成装置によれば、記録用紙が光沢紙やプルーフ紙等の傷付き易い種類の場合、テンションを付与しないで記録用紙を搬送する第1の制御モードが選択される。そのため、記録面に傷や擦れ跡等が付くことを抑制できるようになる。
【0054】
記録用紙が厚いコート紙等の滑り易く、搬送精度に影響を与える(送り量が少なくなる)おそれがある種類の場合、ロール紙にテンションを付与する区間と付与しない区間とを有して用紙を搬送する第2の制御モードが選択される。そのため、記録動作を行いながら斜行を補正し、且つ、用紙部6bの滑りを抑制し、搬送精度に及ぼす影響を小さくすることが可能となる。
【0055】
記録用紙が普通紙や薄いコート紙等の滑り難い種類の場合、ロール紙にテンションを常に付与して記録用紙を搬送する第3の制御モードが選択される。そのため、第2の制御モードに比べ斜行補正の効果をより大きくすることが可能となる。
【符号の説明】
【0056】
1 画像形成装置
9 搬送路
30 画像記録部
40 給紙機構
50 搬送機構
100 制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール状に巻回された記録用紙に画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置の中には、用紙サイズがA2以上の大判の記録用紙を用いるタイプがある。このタイプの画像形成装置では、一般的に、単票紙以外にロール状に巻回された記録用紙が利用される。以下、ロール紙から引き出された部分を用紙部と呼ぶ。ロール紙から用紙部の引き出しは、一般的に、搬送ローラによって行われている。大判のプリンタに用いられるロール紙は重量が重いため、用紙部を引き出す負荷は大きくなる。そのため、搬送ローラを駆動する搬送モータの駆動力のみでは、記録用紙が破断する可能性がある。そこで、ロール紙を回転させるためのロールモータを設け、搬送モータと共にロールモータを駆動させて、用紙部を引き出す技術が特許文献1、2に開示されている。
【0003】
特許文献1には、用紙搬送ローラと、ロールモータと、搬送モータと、ロール紙に生じるテンションを測定するテンション測定手段と、モータ制御部とを有する画像形成装置が開示されている。この画像形成装置において、モータ制御部は、テンション測定手段の測定結果に基づいてロールモータまたは搬送モータの少なくとも一方の駆動を制御する。その結果、テンション測定手段によって精度よく測定されたテンションに基づいて、各モータがフィードバック制御されロールの送り量を決定する。これにより、ロール紙に作用するテンションを適切に制御可能となり、ロール紙の巻径の変化によるテンションの変動を防ぐことができる。
【0004】
一方、特許文献2には、用紙搬送ローラと、搬送モータと、ロール紙の外周面に当接可能に配置されている繰り出しローラと、繰り出しローラを回転させる繰り出しロールモータと、制御部と、を有する画像形成装置が開示されている。この画像形成装置において、制御部は、印字時間および搬送時間を利用して繰り出しローラを回転させる。その結果、用紙搬送ローラによる紙送り動作が終了してから次の送り動作が開始するまでの間に、用紙搬送ローラによる紙送り動作に必要な紙送り量に対応する量だけロール紙を送り方向に回転させる。これにより、ロール紙は常に弛みを持つことになり、ロール紙の慣性負荷の影響を受けずに搬送精度を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−263044号公報
【特許文献2】特開2007−203564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された画像形成装置では、用紙部に常にテンションが与えられた状態(引っ張られた状態)で用紙搬送ローラにより記録用紙が搬送される。記録用紙には、例えば、記録面にインクの定着性を高めるための受容層が形成された光沢紙のように記録面が傷付きやすい種類が存在する。そのような記録用紙を搬送する場合、用紙部に常にテンションが与えられた搬送形態では、用紙部が搬送路内で摺擦して記録面に傷や擦れ跡等が発生する可能性が高くなる。
【0007】
それに対し、特許文献2に開示された画像形成装置では、用紙部にテンションが付与されない(弛んだ)状態で搬送されるので、用紙部が搬送路に摺擦するのを防止できる。そのため、上述した光沢紙のように記録面が傷付きやすい記録用紙の搬送に適している。しかし、この画像形成装置では、用紙部にテンションが付与されないので、用紙部が斜行(スキュー)した場合、斜行の補正が困難になる。したがって、特許文献2に開示された画像形成装置は、例えば、普通紙やコート紙等のように傷や擦れ跡が付きにくい記録用紙の搬送には適していない。
【0008】
そこで、本発明は、記録用紙の種類に応じて搬送形態を適正化することが可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の画像形成装置は、ロール状に巻回された記録用紙を回転させて前記記録用紙をその先端部から搬送路に送り出す給紙機構と、前記搬送路の下流側に位置し、前記搬送路に送り出された前記記録用紙を搬送する搬送機構と、前記搬送機構から見て前記記録用紙の搬送方向の前方に位置し、前記記録用紙に画像を記録する画像記録部と、前記搬送機構が前記記録用紙を前記搬送路から前記画像記録部まで搬送している搬送期間内に前記給紙機構および前記搬送機構に前記搬送路内の前記記録用紙を引っ張らせる区間または弛ませる区間の少なくとも一方を持つ複数の制御モードを、予め定められた複数種の記録用紙に対応付けて備えた制御部と、を有し、前記制御部は、前記複数種の記録用紙から予め選択された記録用紙を示す記録情報が入力されると、入力された記録情報に示された記録用紙に対応する制御モードで前記給紙機構および前記搬送機構を制御する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、記録用紙の種類に応じて搬送形態を適正化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の画像形成装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示す画像形成装置の断面図である。
【図3】図1に示す画像装置に設けられた給紙機構の一部の構成を示す斜視図である。
【図4】図1に示す画像装置に設けられた給紙機構の構成を示す断面図である。
【図5】図1に示す画像装置に設けられた搬送機構の構成を示す断面図である。
【図6】図1に示す画像形成装置の電気的な制御構成を示すブロック図である。
【図7】記録用紙の搬送速度及び弛み等の関係図である。
【図8】第1の制御モードにおける速度及び弛み量の関係を示すタイミングチャートである。
【図9】第2の制御モードにおける速度及び弛み量の関係を示すタイミングチャートである。
【図10】ロール紙が斜行状態のときの、搬送ローラの搬送力とバックテンションとの関係を示す図である。
【図11】ロール紙が斜行状態のときの、用紙部に作用する搬送力を示す図である。
【図12】予め定められた複数種の記録用紙と、制御モードとの対応関係を示す図である。
【図13】第1の実施形態の画像形成装置の動作手順を示すフローチャートである。
【図14】第2の実施形態の第2の制御モードにおける速度及び弛み量の関係を示すタイミングチャートである。
【図15】本発明の第3の実施形態の画像形成装置の電気的な制御部構成を示すブロック図である。
【図16】予め定められた複数種の記録用紙類と、制御モードとの対応関係を示す図である。
【図17】第3の実施形態の画像形成装置の動作手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の画像形成装置の一実施形態を示す斜視図である。図2は、図1に示す画像形成装置の断面図である。図3は、図1に示す画像形成装置に設けられた給紙機構の一部の構成を示す斜視図である。
【0013】
本実施形態の画像形成装置1は、ロール状に巻回された記録用紙であるロール紙6aを記録媒体として用いる。図3に示すように、ロール紙6aには、巻きの中心に位置する紙管15にスプールシャフト5が貫通している。スプールシャフト5に取り付けられた基準側ロール紙ホルダ26の基準側装填部26aが紙管15の内壁に対して半径方向への弾性力によって食い込むことで紙管15は基準側ロール紙ホルダ26に固定される。さらに、ロール紙6aを挟み込むように基準側ロール紙ホルダ26の逆側から非基準側ロール紙ホルダ27をスプールシャフト5に通すことによって、紙管15は非基準側ロール紙ホルダ27に保持される。非基準側ロール紙ホルダ27には非基準側装填部27aが設けられ、非基準側装填部27aが紙管15の内壁に対して半径方向への弾性力によって食い込むことで紙管15は非基準側ロール紙ホルダ27に固定される。スプールシャフト5の両端部が画像形成装置1に回転可能に保持されることによって、ロール紙6aも回転可能に保持される(図1参照)。
【0014】
画像形成装置1に保持されたロール紙6aは、反時計回り(CCW)に回転させられることによって、外ガイド7と内ガイド8との間に形成された搬送路9に用紙部6bの先端部から送り出される(図2参照)。搬送路9の途中には、用紙検出センサ(不図示)が設けられている。その用紙検出センサが用紙部6bの先端部を検出すると、搬送路9の下流側に位置する搬送モータ24が、搬送ローラ10を反時計回りに回転させる。用紙部6bの先端部が搬送ローラ10とピンチローラ11との間に到達すると、用紙部6bは搬送ローラ10とピンチローラ11とで挟持され、搬送方向の前方に位置する画像記録部30まで搬送される。この際、キャリッジ3に搭載された用紙端部検出センサ13によって、用紙の幅や斜行量が検出される。
【0015】
画像記録部30は、用紙部6bに画像を記録する記録ヘッド2(図1参照)と、記録ヘッド2を搭載するキャリッジ3と、記録ヘッド2に対向するプラテン12とで構成されている。キャリッジ3は、画像形成装置1に互いに平行に配置されたキャリッジシャフト4(図1参照)とガイドレールに往復移動可能に支持されている。画像記録部30において、用紙部6bがプラテン12上に搬送されると、キャリッジ3が矢印D1方向(図1参照)に往復移動する。キャリッジ3の往復移動に伴って記録ヘッド2が1ライン分の画像を用紙部6bに記録する。その後、搬送ローラ10およびピンチローラ11が用紙部6bを搬送方向A(図2参照)に所定ピッチだけ搬送すると、キャリッジ3が再び往復移動して記録ヘッド2が次のラインの画像を記録する。この動作を繰り返して用紙部6b全体に画像が記録される。記録済みの用紙部6bは、画像形成装置1の外部にある排紙カバー14へ向けて搬送される。記録動作が終了すると、用紙部6bは搬送ローラ10およびピンチローラ11とにより所定の切断位置まで搬送される。その後、用紙部6bはカッタ29に切断される。切断された用紙部6bは、排紙カバー14から排紙バスケット(不図示)に収納される。
【0016】
次に、図4を参照して、ロール紙6aを回転させて用紙部6bの先端部から搬送路9に送り出す給紙機構40について説明する。図4は、給紙機構40の構成を示す断面図である。
【0017】
ロール紙6aを保持したスプールシャフト5は、基準側ロール紙ホルダ26の端部に設けられたロールギア17を介して、ロール入力ギア18と接続される。ロール入力ギア18は、ロールモータ19のギア19aと接続される。ロールモータ19は、ロール入力ギア18及びロールギア17を介して、ロール紙6aに駆動力を付与する。エンコーダフィルム20は、ロール入力ギア18に貼り付けられており、エンコーダフィルム20の回転動作をエンコーダセンサ21によって検出することで駆動制御が行われる。この駆動制御には、主に、無負荷、所定力による励磁、ロール紙逆転駆動がある。所定力による励磁は、いわゆるロールのバックテンションと呼ばれる制御であり、バックテンションを記録用紙に与えながら搬送することで、紙セット時の斜行補正や弛み取りを行う。バックテンションの負荷は、ロールモータ19に流れる電流を調整することでロールモータ19の発生トルクを制御して調整される。
【0018】
次に用紙部6bを搬送路9から画像記録部30まで搬送する搬送機構50について説明する。図5は搬送機構50の構成を示す断面図である。
【0019】
搬送ローラ10は、その端部に設けられた搬送ギア22を介して、搬送入力ギア23と接続される。搬送入力ギア23は、搬送モータ24のギア24aと接続される。搬送モータ24は、搬送入力ギア23及び搬送ギア22を介して、搬送ローラ10に搬送力を付与する。エンコーダフィルム28は、搬送入力ギア23に貼り付けられており、エンコーダフィルム28の回転動作をエンコーダセンサ25によって検出することで駆動制御が行われる。
【0020】
図6は図1に示す画像形成装置の電気的な制御構成を示すブロック図である。
【0021】
図6に示すブロック図において、制御部100は、ロールモータ19および搬送モータ24を制御するための構成要素であり、主制御部110と、ロールモータ制御部120と、搬送モータ制御部130とを有する。各制御部は、CPU(Central Processer Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を具備している。主制御部110は、ロールモータ19と搬送モータ24との相関駆動するため、ロールモータ制御部120と、搬送モータ制御部130との両方に指令を与える。ロールモータ制御部120は、第1の制御モードと第2の制御モードを有し、ロール紙6aの種類が示された記録情報に基づいて制御モードを切り替える。
【0022】
図7は、用紙部6bの搬送速度及び弛み等の関係を示す図である。図7において、テンションTpapは、搬送ローラ10とロール紙6aとの間(搬送路内)の用紙部6bにかかる張力である。搬送速度Vlfは、搬送ローラ10の搬送速度(円周上の速度)である。送り速度Vrollは、ロール紙6aの送り速度(円周上の速度)である。弛み量Spapは、搬送ローラ10とロール紙6aとの間(搬送路内)の用紙部6bの弛み量である。搬送速度Vpapは、用紙部6bの搬送速度である。搬送速度Vlf、送り速度Vroll、および搬送速度Vpapについては図中矢印の方向が正値となる。弛み量Spapについては、弛みが無い状態を0とし、弛んだ量を絶対値で表示する。以降に示す波形図の力関係においては、図7の方向を基準として説明する。
【0023】
次に、第1の制御モードと、第2の制御モードについて説明する。
【0024】
図8は、第1の制御モードにおける速度及び弛み量の関係を示すタイミングチャートである。図9は、第2の制御モードにおける速度及び弛み量の関係を示すタイミングチャートである。
【0025】
まず、第1の制御モードについて説明する。図8に示す上段のグラフにおいて、縦軸は搬送ローラ10の搬送速度Vlfを示し、横軸は時間Tを示す。図8の中段のグラフでは、縦軸はロール紙6aの送り速度Vrollを示し、横軸は時間Tを示す。図8の下段のグラフでは、縦軸は用紙部6bの弛み量Spapを示し、横軸は時間Tを示す。搬送ローラ10の搬送速度Vlfは、加速領域(Tb−Tc)、定速領域(Tc−Td)、減速領域(Td−Te)をもつ動作波形となる。本実施形態では、ロール紙6aは、搬送ローラ10が動作を開始する時間Tbの前の時間Taに送り方向に送り出される。弛み量Spapは、ロール紙6aの搬送速度と搬送ローラ10の搬送速度の差によって、ロール紙6aの送り動作の開始時間Taから搬送ローラ10の加速領域終了時間Tcの間に形成される。搬送ローラ10の加速領域(Tb−Tc)が終わり、定速領域(Tc−Td)および減速領域(Td−Te)に入ると、ロール紙6aは搬送ローラ10に追従する搬送速度(Vlf=Vroll)で動作する。そのため、弛み量Spapは一定に保たれる。弛み量Spapは、搬送ローラ10の紙送り動作に影響のない必要最低限の弛みがあればよい。搬送ローラ10の動作終了時間Te後にはロールモータ19を搬送方向とは逆に回転させ、用紙部6bの弛み量がSpap=0となる時間Tfまで弛み取りを行う。用紙部6bの弛み取りは、搬送ローラ10の動作停止時間Teから次のロール紙の動作開始時間Ta’までの間に完了する。以上の動作は、搬送ローラ10の間欠搬送が行われるたびに、毎回実施される。
【0026】
以上説明したように、第1の制御モードは、用紙部6bを搬送路9から画像記録部30まで搬送する搬送期間内に弛み量Spap>0となる区間を持つ。弛み量Spap>0となっている区間では、搬送ローラ10とロール紙6aの間の用紙部6bにかかるテンションはTpap=0となる。これにより、用紙部6bは弛んだ状態(テンションTpapが付与されていない状態)で搬送される。これにより、内ガイド8(図2参照)に用紙部6bが摺擦することによって発生する記録面の傷や擦れ跡等を抑制することが可能になり、安定した用紙搬送が可能である。
【0027】
本実施形態の第1の制御モードでは、ロール紙6aの紙送り動作開始タイミングTaを搬送ローラ10の送り動作タイミングTbより早めることで用紙部6bに弛みを生じさせ、紙送り動作中(Tb−Te)にTpap=0としている。しかしながら、紙送り動作中(Tb−Te)にTpap=0とする制御方法であれば、他の制御方法を第1の制御モードとしてもよい。他の制御方法とは、例えばロール紙6aの送り速度Vrollを搬送ローラ10の搬送速度Vlfより早くする制御や、記録前に用紙部6bに弛みを生じさせ、その弛み量を常に持続させる制御等である。
【0028】
次に、第2の制御モードについて説明する。図9に示す3つのグラフの縦軸及び横軸はそれぞれ第1の制御モードを示す図8と同様である。搬送ローラ10の搬送速度Vlfは、第1の制御モードと同様に加速領域(Ta−Tc)、定速領域(Tc−Te)、減速領域(Te−Tf)を持つ動作波形となる。ロール紙6aは、第1の制御モードとは異なり、搬送ローラ10が動作する時間Taと同時期に搬送路9に送り出される。但し、ロール紙6aの加速度は一定ではなく、回転初期(Ta−Tb)では搬送ローラ10よりも加速度は小さい。そのため、回転初期(Ta−Tb)には搬送ローラ10の搬送速度Vlf>ロール紙6aの送り速度Vrollとなるため、弛み量Spapがゼロとなるばかりでなく、用紙部6bにかかるテンション(バックテンション)Tpap>0となる。その後(Tb−Tc)は、ロール紙6aの加速度は搬送ローラ10の加速度を上回る。そのため、搬送速度Vlf<送り速度Vrollとなるため、弛み量Spap>0となる。ロール紙6aの送り速度Vrollが定速領域(Td)に入った以降の動作は第1の制御モードと同様である。
【0029】
ここで、図10及び図11を参照して、用紙搬送において用紙部6bの斜行が補正されるメカニズムについて説明する。図10はロール紙が斜行状態のときの、搬送ローラの搬送力とバックテンションとの関係を示す図である。図11はロール紙が斜行状態のときの、用紙部に作用する搬送力を示す図である。用紙部6bがP2側に斜行し、バックテンションがかかる状態(Tpap>0)で搬送されると、用紙部6bのP1側端部が張り、P2側端部が弛む。そのため、バックテンションBは、P1側端部で強くなり、P2側端部で弱くなる。一方、搬送ローラ10及びピンチローラ11により用紙部6bに付与される搬送力Hは、斜行の有無に係わらず、P1側端部およびP2側端部とも、均等になる。したがって、搬送力HおよびバックテンションBの、用紙部6bの幅方向の分布は、図10に示すような分布となる。また、用紙部6bに対して実際に作用する有効搬送力Fは、搬送力HとバックテンションBとの差となる。したがって、有効搬送力Fは、図11に示すように、P2側端部で強くなり、P1側端部で弱くなる。そのため、用紙部6bは、P2側端部からP1側端部へ斜行が補正されることになる。つまり、用紙部6bの斜行補正は、バックテンションの大きさ、並びにP2側端部とP1側端部のバックテンションの差が大きいほど、また、搬送ローラ10からの搬送力Hが小さくなるほど、斜行補正の効果が大きいことになる。
【0030】
本実施形態の第2の制御モードは、搬送ローラ10の紙送り動作初期(Ta−Tb)に、弛み量Spapがゼロとなり、用紙部6bにバックテンションがかかる(Tpap>0)区間を持つ。これにより、用紙部6bが斜行した状態でも、記録動作を行いながら斜行を補正することが可能となる。
【0031】
本実施形態の第2の制御モードでは、ロール紙6aの加速度を変化させることで、一時的に用紙部6bに張りを生じさせ、紙送り動作初期(Ta−Tb)にTpap>0としている。しかしながら、紙送り動作初期(Ta−Tb)にTpap>0とする制御方法であれば、他の制御方法を第2の制御モードとしてもよい。他の制御方法とは、例えば搬送ローラ10の紙送りタイミングをロール紙6aの紙送りタイミングより早める制御や、搬送ローラ10の搬送速度Vlfを常にロール紙6aの送り速度Vrollより早める制御等である。
【0032】
次に、図12及び図13を参照して、本実施形態の画像形成装置の動作について説明する。図12は、予め定められた複数種の記録用紙と、上述した制御モードとの対応関係を示す図である。図13は、本実施形態の画像形成装置の動作手順を示すフローチャートである。
【0033】
第1の制御モードは、上述したように、記録面に傷や擦れ跡等が発生することを抑制できる。そのため、図12に示すように、光沢紙やプルーフ紙等の傷が発生し易い記録用紙に分類される用紙タイプAが第1の制御モードに対応付けられている。
【0034】
一方、第2の制御モードは、上述したように、用紙部6bが斜行した状態でも、記録動作を行いながら斜行を補正することが可能となる。そのため、普通紙やコート紙等の傷付きにくい記録用紙に分類される用紙タイプBが第2の制御モードに対応付けられている。
【0035】
図13に示すフローチャートにおいて、ロール紙6aの給紙に伴って(ステップS01)、ユーザーによって予め選択されたロール紙6aの種類が示された記録情報が主制御部110に入力される(ステップS02)。主制御部110は、入力された記録情報に基づいてロール紙6aの種類を判断する(ステップS03)。記録情報に示されたロール紙6aの種類が用紙タイプAの場合、主制御部110は、ロールモータ制御部120に第1の制御モードで用紙部6bを所定量(例えば、300mm)搬送させる。このとき、主制御部110は、用紙端部検出センサ13が検出した搬送前後での用紙部6bの端部位置に基づいて斜行量を検出する(ステップS04)。その後、主制御部110は、検出した斜行量が予め定められた許容値ob1を下回っているか否か判断する(ステップS5)。斜行量が許容値ob1を下回っている場合、主制御部110は、第1の制御モードで記録を行わせる(ステップS06)。その後、第1の制御モードでの記録が終了すると(ステップS08)、スタンバイ状態となる。斜行量が許容値ob1以上の場合、ユーザーに対しロール紙6aを再度セットし直す旨の警告を行う(ステップS07)。
【0036】
ステップS03において記録情報に示されたロール紙6aの種類が用紙タイプBの場合、主制御部110は、ロールモータ制御部120に第2の制御モードで用紙部6bを所定量(例えば、300mm)搬送させる。このとき、主制御部110は、ステップS04と同様に、斜行量を検出する(ステップS09)。その後、主制御部110は、検出した斜行量が予め定められた許容値ob2を下回っているか否か判断する(ステップS10)。斜行量が許容値ob2を下回っている場合、主制御部110は、第2の制御モードで記録を行わせる(ステップS11)。その後、第2の制御モードでの記録が終了すると(ステップS13)、スタンバイ状態となる。斜行量が許容値ob2以上の場合、ユーザーに対してロール紙6aを再度セットし直す旨の警告を行う(ステップS12)。
【0037】
本実施形態では、斜行量の許容値に関し、ob1<ob2の大小関係となっている。これは、第1の制御モードの場合、テンションを付与しないで用紙部6bを搬送するため、用紙部6bの斜行を補正することが困難になる。そのため、画像形成に影響を与えないように用紙部6bの斜行量の許容値は第2の制御モードに比べ厳しくなる(小さくなる)。
【0038】
本実施形態の画像形成装置によれば、記録用紙が光沢紙やプルーフ紙等の傷付き易い種類の場合、テンションを付与しないで(弛んだ状態で)記録用紙を搬送する第1の制御モードが選択される。そのため、記録面に傷や擦れ跡等が付くことを抑制できるようになる。一方、記録用紙が普通紙やコート紙等の傷付き難い種類の場合、テンションを付与して(引っ張った状態で)記録用紙を搬送する第2の制御モードが選択される。そのため、用紙部6bが斜行しにくくなり、ロール紙6aのセット動作が簡略化される。
【0039】
(第2の実施形態)
次に、本発明の画像形成装置の第2の実施形態について説明する。第1の実施形態と同じ構成要素に関しては、同一符号を用い、その説明は割愛する。本実施形態では、第2の制御モードの内容が第1の実施形態と異なる。
【0040】
図14を参照して、本実施形態の第2の制御モードについて説明する。図14は、本実施形態の第2の制御モードにおける速度及び弛み量の関係を示すタイミングチャートである。
【0041】
図14に示す3つのグラフの縦軸及び横軸は、それぞれ図8及び図9と同様である。搬送ローラ10の搬送速度Vlfは、第1の制御モード及び第1の実施形態の第2の制御モードと同様に加速領域(Ta−Tc)、定速領域(Tc−Te)、減速領域(Te−Tf)を持つ動作波形となる。本実施形態では、ロール紙6aの送り速度Vrollも、搬送ローラ10の搬送速度Vlfと同様に加速領域(Ta−Tc)、定速領域(Tc−Te)、減速領域(Te−Tf)を持つ動作波形となる。そのため、搬送ローラ10の搬送動作中(Ta−Tf)、弛み量Spapが常にゼロとなり、用紙部6bにバックテンションが常にかかった状態(Tpap>0)となる。これにより、常にテンションTpapが付与された状態で用紙部6bが搬送されるため、斜行補正の効果がより大きくなる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態の第2の制御モードでは、用紙部6bを搬送路9から画像記録部30まで搬送する搬送期間内で常に用紙部6bにテンションTpapを付与している。これにより、用紙部6bにかかるテンションTpapが第1の実施形態と同じでも、テンションを付与している時間が第1の実施形態よりも長くなる。そのため、第1の実施形態よりも斜行補正の効果が大きくなる。これにより、本実施形態では、第2の制御モードにおける用紙部6bの斜行量の許容値ob2は、第1の実施形態の値よりも緩く(大きく)することが可能となる。
【0043】
(第3の実施形態)
次に、本発明の画像形成装置の第3の実施形態について説明する。第1の実施形態及び第2の実施形態と同じ構成要素に関しては、同一符号を用い、その説明は割愛する。
【0044】
図15は、本実施形態の画像形成装置の電気的な制御構成を示すブロック図である。図16は、予め定められた複数種の記録用紙類と、制御モードとの対応関係を示す図である。図17は、本実施形態の画像形成装置の動作手順を示すフローチャートである。
【0045】
本実施形態では、ロールモータ制御部121は、第1の制御モード、第2の制御モード、及び第3の制御モードの3つの制御モードを有する。第3の制御モードの内容は、第2の実施形態の第2の制御モードと同一である。
【0046】
第1の制御モードは、第1の実施形態で述べたように記録面に傷や擦れ跡等が発生することを抑制できる。そのため、図16に示すように、光沢紙やプルーフ紙等の傷付きやすい記録用紙に分類される用紙タイプAが第1の制御モードに対応付けられている。
【0047】
第2の制御モードは、第1の実施形態で述べたように、用紙部6bが斜行した状態でも、記録動作を行いながら斜行を補正することが可能となる。また、用紙部6bが滑り、搬送精度に影響を与える(送り量が少なくなる)おそれを抑制することが可能である。そのため、紙厚が厚いコート紙等の搬送ローラ10とピンチローラ11との挟持力が弱く、搬送力Hが小さい(搬送ローラ10及びピンチローラ11に対して用紙部6bが滑り易い)記録用紙に分類される用紙タイプB1が、第2の制御モードに対応付けられている。
【0048】
第3の制御モードは、第2の実施形態で述べたように、用紙部6bが斜行した状態でも、記録動作を行いながら常に斜行を補正することが可能であるため、斜行補正の効果が大きくなる。そのため、図16に示すように、普通紙や紙厚が薄いコート紙等の搬送力Hが大きい(搬送ローラ10及びピンチローラ11に対して用紙部6bが滑り難い)記録用紙に分類される用紙タイプB2が第3の制御モードに対応付けられている。
【0049】
図17に示すフローチャートにおいて、ロール紙6aの給紙に伴って(ステップS31)、ユーザーによって予め選択されたロール紙6aの種類が示された記録情報が主制御部110に入力される(ステップS32)。主制御部110は、入力された記録情報に基づいてロール紙6aの種類を判断する(ステップS33)。記録情報に示されたロール紙6aの種類が上述した用紙タイプAの場合、主制御部110は、ロールモータ制御部120に第1の制御モードで用紙部6bを所定量(例えば、300mm)搬送させる。このとき、主制御部110は、用紙端部検出センサ13が検出した搬送前後での用紙部6bの端部位置に基づいて斜行量を検出する(ステップS34)。その後、主制御部110は、検出した斜行量が予め定められた許容値ob1を下回っているか否か判断する(ステップS35)。斜行量が許容値ob1を下回っている場合、主制御部110は、第1の制御モードで記録を行わせる印字を行わせる(ステップS36)。その後、第1の制御モードでの記録が終了すると(ステップS38)、スタンバイ状態となる。斜行量が許容値ob1以上の場合、ユーザーに対しロール紙6aを再度セットし直す旨の警告を行う(ステップS37)。
【0050】
ステップS33において記録情報に示されたロール紙6aの種類が、上述した用紙タイプB1の場合、主制御部110は、ロールモータ制御部120に第2の制御モードで用紙部6bを所定量(例えば、300mm)搬送させる。このとき、主制御部110は、ステップS34と同様に、斜行量を検出する(ステップS39)。その後、主制御部110は、検出した斜行量が予め定められた許容値ob2を下回っているか否か判断する(ステップS40)。斜行量が許容値ob2を下回っている場合、主制御部110は、第2の制御モードで記録を行わせる(ステップS41)。第2の制御モードでの記録が終了すると(ステップS43)、スタンバイ状態となる。斜行量が許容値ob2以上の場合、ユーザーに対してロール紙6aを再度セットし直す旨の警告を行う(ステップS42)。
【0051】
ステップS33において記録情報に示されたロール紙6aの種類が、上述した用紙タイプB2の場合、主制御部110は、ロールモータ制御部120に第3の制御モードで用紙部6bを所定量(例えば、300mm)搬送させる。このとき、主制御部100は、ステップS34、S39と同様に斜行量を検出する(ステップS44)。その後、主制御部110は、検出した斜行量が予め定められた許容値ob3を下回っているか否か判断する(ステップS45)。斜行量が許容値ob3を下回っている場合、主制御部110は、第3の制御モードで記録を行わせる(ステップS46)。第3の制御モードでの記録が終了すると(ステップS48)、スタンバイ状態となる。斜行量が許容値ob3以上の場合、ユーザーに対してロール紙6aを再度セットし直す旨の警告を行うる(ステップS47)。
【0052】
本実施形態では、用紙部6bの斜行量の許容値に関し、ob1<ob2<ob3の大小関係となっているが、ob1<ob2=ob3としてもよい。
【0053】
本実施形態の画像形成装置によれば、記録用紙が光沢紙やプルーフ紙等の傷付き易い種類の場合、テンションを付与しないで記録用紙を搬送する第1の制御モードが選択される。そのため、記録面に傷や擦れ跡等が付くことを抑制できるようになる。
【0054】
記録用紙が厚いコート紙等の滑り易く、搬送精度に影響を与える(送り量が少なくなる)おそれがある種類の場合、ロール紙にテンションを付与する区間と付与しない区間とを有して用紙を搬送する第2の制御モードが選択される。そのため、記録動作を行いながら斜行を補正し、且つ、用紙部6bの滑りを抑制し、搬送精度に及ぼす影響を小さくすることが可能となる。
【0055】
記録用紙が普通紙や薄いコート紙等の滑り難い種類の場合、ロール紙にテンションを常に付与して記録用紙を搬送する第3の制御モードが選択される。そのため、第2の制御モードに比べ斜行補正の効果をより大きくすることが可能となる。
【符号の説明】
【0056】
1 画像形成装置
9 搬送路
30 画像記録部
40 給紙機構
50 搬送機構
100 制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状に巻回された記録用紙を回転させて前記記録用紙をその先端部から搬送路に送り出す給紙機構と、
前記搬送路の下流側に位置し、前記搬送路に送り出された前記記録用紙を搬送する搬送機構と、
前記搬送機構から見て前記記録用紙の搬送方向の前方に位置し、前記記録用紙に画像を記録する画像記録部と、
前記搬送機構が前記記録用紙を前記搬送路から前記画像記録部まで搬送している搬送期間内に前記給紙機構および前記搬送機構に前記搬送路内の前記記録用紙を引っ張らせる区間または弛ませる区間の少なくとも一方を持つ複数の制御モードを、予め定められた複数種の記録用紙に対応付けて備えた制御部と、を有し、
前記制御部は、前記複数種の記録用紙から予め選択された記録用紙を示す記録情報が入力されると、入力された記録情報に示された記録用紙に対応する制御モードで前記給紙機構および前記搬送機構を制御する、画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部が、前記記録用紙を弛ませる区間を持つ第1の制御モードと、前記記録用紙を引っ張らせる区間を持つ第2の制御モードとを備えている、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第2の制御モードが、前記記録用紙を引っ張らせる区間および前記記録用紙を弛ませる区間を持つ制御モードである、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第2の制御モードが、前記搬送期間内で常に前記記録用紙を引っ張らせる制御モードである、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部が、前記記録用紙を弛ませる区間を持つ第1の制御モードと、前記記録用紙を引っ張らせる区間および前記記録用紙を弛ませる区間を持つ第2の制御モードと、前記搬送期間内で常に前記記録用紙を引っ張らせる第3の制御モードと、を備えている、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記複数種の記録用紙は、少なくとも、傷付きやすいタイプと、傷付きにくいタイプとに分類されている、請求項1から5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項1】
ロール状に巻回された記録用紙を回転させて前記記録用紙をその先端部から搬送路に送り出す給紙機構と、
前記搬送路の下流側に位置し、前記搬送路に送り出された前記記録用紙を搬送する搬送機構と、
前記搬送機構から見て前記記録用紙の搬送方向の前方に位置し、前記記録用紙に画像を記録する画像記録部と、
前記搬送機構が前記記録用紙を前記搬送路から前記画像記録部まで搬送している搬送期間内に前記給紙機構および前記搬送機構に前記搬送路内の前記記録用紙を引っ張らせる区間または弛ませる区間の少なくとも一方を持つ複数の制御モードを、予め定められた複数種の記録用紙に対応付けて備えた制御部と、を有し、
前記制御部は、前記複数種の記録用紙から予め選択された記録用紙を示す記録情報が入力されると、入力された記録情報に示された記録用紙に対応する制御モードで前記給紙機構および前記搬送機構を制御する、画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部が、前記記録用紙を弛ませる区間を持つ第1の制御モードと、前記記録用紙を引っ張らせる区間を持つ第2の制御モードとを備えている、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第2の制御モードが、前記記録用紙を引っ張らせる区間および前記記録用紙を弛ませる区間を持つ制御モードである、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第2の制御モードが、前記搬送期間内で常に前記記録用紙を引っ張らせる制御モードである、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部が、前記記録用紙を弛ませる区間を持つ第1の制御モードと、前記記録用紙を引っ張らせる区間および前記記録用紙を弛ませる区間を持つ第2の制御モードと、前記搬送期間内で常に前記記録用紙を引っ張らせる第3の制御モードと、を備えている、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記複数種の記録用紙は、少なくとも、傷付きやすいタイプと、傷付きにくいタイプとに分類されている、請求項1から5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−28100(P2013−28100A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166428(P2011−166428)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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