説明

画像形成装置

【課題】高画質な画像を用紙上に形成可能な湿式電子写真方式の画像形成装置を得る。
【解決手段】用紙50上に画像を形成する画像形成装置102は、トナー画像60を担持する像担持体10Aと、トナー画像60のトナー粒子に対して像担持体10Aから用紙50上に移動させる力を付与する転写部材20Aと、転写部材20Aよりも上流側で用紙50の端部52を保持し、転写部材20Aよりも下流側において用紙50の端部52を開放する咥え爪12とを備え、転写部材20Aによる上記力の作用する領域は、咥え爪12が端部52を保持する部分よりも搬送方向下流側且つ咥え爪12が端部52を開放する部分よりも搬送方向上流側に含まれ、咥え爪12は、用紙50が像担持体10Aと転写部材20Aとの間において搬送される際に、上記力の作用する領域内における像担持体10Aの表面に沿って用紙50が搬送されるように用紙50を保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、特に、湿式電子写真方式を採用する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2010−170004号公報(特許文献1)および特開2000−169009号公報(特許文献2)には、湿式電子写真方式を採用する画像形成装置に関する発明が開示される。
【0003】
湿式電子写真方式を採用する画像形成装置においては、液体現像剤が用いられる。液体現像剤は、キャリア液と、このキャリア液中に分散されたトナー粒子と、から構成される。一方、乾式電子写真方式を採用する画像形成装置においては、トナー粒子がそのままの状態で用いられる。
【0004】
湿式電子写真方式を採用する画像形成装置は、乾式電子写真方式を採用する画像形成装置に比べて、より小さな粒径を有するトナー粒子を用いることができる。より小さな粒径を有するトナー粒子によって、画像の細かな部分まで表現される。湿式電子写真方式を採用する画像形成装置によれば、高画質な画像を記録媒体上に形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−170004号公報
【特許文献2】特開2000−169009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、湿式電子写真方式を採用する画像形成装置であって、より高画質な画像を記録媒体上に形成することが可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に基づく画像形成装置は、所定の搬送方向に沿って搬送される記録媒体上に画像を形成する画像形成装置あって、トナー画像を担持する像担持体と、上記記録媒体の搬送経路を挟んで上記像担持体の反対側に配置され、上記トナー画像を形成するトナー粒子に対して、上記像担持体から上記記録媒体上に移動させる力を付与する転写部材と、上記搬送方向の上記転写部材よりも上流側において上記記録媒体の端部を保持するとともに、上記像担持体と上記転写部材との間においては上記記録媒体の上記端部とともに移動し、上記搬送方向の上記転写部材よりも下流側において上記記録媒体の上記端部を開放する第1保持部材と、を備え、上記転写部材が上記トナー粒子に対して付与する上記力の作用する領域は、上記第1保持部材が上記記録媒体の上記端部を保持する部分よりも上記搬送方向の下流側に位置し、且つ、上記第1保持部材が上記記録媒体の上記端部を開放する部分よりも上記搬送方向の上流側に位置するように形成され、上記第1保持部材は、上記記録媒体が上記像担持体と上記転写部材との間において搬送される際に、上記力の作用する上記領域内における上記像担持体の表面に沿って上記記録媒体が搬送されるように上記記録媒体を保持する。
【0008】
好ましくは、本発明に基づく上記の画像形成装置は、上記記録媒体の上記端部を保持する第2保持部材を含み、上記記録媒体の上記搬送経路を挟んで上記像担持体の反対側に配置された記録媒体搬送体をさらに備え、上記像担持体および上記記録媒体搬送体は、各々の表面速度が同一となるように駆動され、上記記録媒体は、上記記録媒体の上記端部が上記第1保持部材および上記第2保持部材によって受け渡しされながら搬送される。
【0009】
好ましくは、上記像担持体の上記搬送方向における周長さは、上記記録媒体搬送体の上記搬送方向における周長さの整数倍である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、湿式電子写真方式を採用する画像形成装置であって、より高画質な画像を記録媒体上に形成することが可能な画像形成装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】湿式電子写真方式を採用する一般的な画像形成装置を模式的に示す図である。
【図2】湿式電子写真方式を採用する一般的な画像形成装置におけるニップ部分を拡大して示す図である。
【図3】一般的なオフセット印刷機などの画像形成装置を模式的に示す図である。
【図4】一般的なオフセット印刷機などに用いられている構成を、湿式電子写真方式を採用する一般的な画像形成装置に適用した構成を模式的に示す図である。
【図5】実施の形態における画像形成装置を模式的に示す図である。
【図6】実施の形態における画像形成装置のニップ部分を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[比較例]
本発明に基づいた実施の形態について説明する前に、以下、図面を参照しながら本発明に関する比較例について説明する。比較例の説明において、同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0013】
(画像形成装置100)
図1および図2を参照して、まず、湿式電子写真方式を採用する一般的な画像形成装置100について説明する。図1は、画像形成装置100を模式的に示す図である。図2は、画像形成装置100におけるニップ部分を拡大して示す図である。
【0014】
図1に示すように、画像形成装置100は、トナー画像60を担持する像担持体10と、用紙50(記録媒体)の搬送経路を挟んで像担持体10の反対側に配置された転写部材20と、を備える。
【0015】
像担持体10は、矢印AR10方向に回転する。転写部材20は、矢印AR20方向に回転する。像担持体10と転写部材20との間に、用紙50の搬送経路が構成される。用紙50は、像担持体10と転写部材20との間において、所定の搬送方向(矢印AR50方向)に沿って搬送経路上を搬送される。
【0016】
像担持体10に担持されたトナー画像60を用紙50に向かって移動(転写)させるために、転写部材20によって転写電界が形成される。転写電界によって、トナー画像60を形成するトナー粒子に対して電気的な力が付与される。この電気的な力は、トナー粒子を像担持体10から用紙50に移動させようとする方向に作用する。トナー粒子が用紙50上に移動することによって、用紙50上において所定の画像が形成される。
【0017】
図2を参照して、画像形成装置100においては、用紙50が、像担持体10および転写部材20の間において、像担持体10および転写部材20の各々の接線方向に沿うように搬送される。転写部材20によって形成される転写電界は、ニップ部分N(トナー画像60と用紙50とが密着する部分)だけでなく、ニップ部分Nの上流側の領域R1、およびニップ部分Nの下流側の領域R2にも作用する。すなわち、転写部材20によって形成される転写電界は、ニップ部分Nだけでなく、所定の幅を有する領域RRに作用する。
【0018】
ニップ部分Nの上流側(領域R1)においては、ニップ部分Nとは異なり、トナー画像60を形成するトナー粒子は、像担持体10に拘束されていない。ニップ部分Nの上流側においては、空間E1に形成される転写電界の作用によって、トナー粒子が像担持体10の表面上においてわずかに移動することがある。
【0019】
この場合、トナー粒子が像担持体10の表面上においてわずかに移動した後に、このトナー粒子が、ニップ部分Nにおいて用紙50上に転写される。トナー粒子が用紙50上に転写される前に像担持体10上において移動することによって、高画質な画像を用紙50上に形成することは困難となる。
【0020】
一方、ニップ部分Nの下流側(領域R2)において、用紙50上に転写されたトナー粒子は、空間E2に形成される転写電界の作用によって、用紙50の表面上においてわずかに移動することがある。この場合、転写後のトナー粒子が用紙50上において移動することによって、高画質な画像を用紙50上に形成することは困難となる。
【0021】
図1および図2に示す画像形成装置100においては、転写の前後においてトナー粒子の乱れが発生する。結果として、画像形成装置100が高画質な画像を用紙50上に形成することは困難となる。
【0022】
(画像形成装置101)
図3を参照して、次に、画像形成装置101について説明する。図3は、画像形成装置101を模式的に示す図である。画像形成装置101は、いわゆる一般的なオフセット印刷機、またはいわゆる一般的なグラビア印刷機である。
【0023】
画像形成装置101は、ブランケット胴1A〜1D、圧胴2A〜2D、用紙搬送胴3A〜3E、版胴4A〜4D、および、インク供給装置5A〜5D、を備える。圧胴2A〜2Dには、用紙50を搬送するための咥え爪2がそれぞれ設けられる。用紙搬送胴3A〜3Dには、用紙50を搬送するための咥え爪3がそれぞれ設けられる。
【0024】
インク供給装置5Aから版胴4Aに所定のインクが供給される。版胴4Aに供給されたインクは、ブランケット胴1Aに供給される。同様に、インク供給装置5B〜5Dから版胴4B〜4Dに所定のインクがそれぞれ供給される。版胴4B〜4Dに供給されたインクは、ブランケット胴1B〜1Dにそれぞれ供給される。
【0025】
用紙50に対して印刷が行なわれる際には、まず、用紙50の端部52が用紙搬送胴3Aの咥え爪3によって保持される。用紙50は、用紙搬送胴3Aの回転によって、用紙搬送胴3Aと圧胴2Aとの間に搬送される。用紙50の端部52は、用紙搬送胴3Aと圧胴2Aとの間において、用紙搬送胴3Aの咥え爪3から圧胴2Aの咥え爪2に渡される。
【0026】
用紙50は、圧胴2Aの回転によって圧胴2Aとブランケット胴1Aとの間に搬送される。ブランケット胴1A上に付着しているインクは、用紙50上に転写される。用紙50上には、所定の色の画像が形成される。
【0027】
用紙50は、圧胴2Aの回転によって圧胴2Aと用紙搬送胴3Bとの間に搬送される。用紙50の端部52は、圧胴2Aと用紙搬送胴3Bとの間において、圧胴2Aの咥え爪2から用紙搬送胴3Bの咥え爪3に渡される。
【0028】
上記と同様の動作が、用紙50に対してブランケット胴1B〜ブランケット胴1D、圧胴2B〜2D、および用紙搬送胴3C〜3Eの間において繰り返される。最終的に、用紙50が用紙搬送胴3Eの咥え爪3から開放され、用紙50が排出されることによって(矢印AR52参照)、用紙50に対する印刷が終了する。ブランケット胴1A〜1D上に付着したインクが用紙50上に転写されることによって、用紙50上に所定の画像が形成される。
【0029】
画像形成装置101においては、用紙50が、ブランケット胴1Aおよび圧胴2Aの間において、圧胴2Aに沿うように変形しつつ搬送される。用紙50は、用紙50の端部52が咥え爪2,3によって受け渡しされながら、搬送経路上を順次搬送される。画像形成装置101によれば、咥え爪2,3によって用紙50の位置ずれが抑制されているため、高画質な(見当精度の高い)画像を用紙50上に形成することができる。
【0030】
ここで、湿式電子写真方式を採用する一般的な画像形成装置100(図1参照)の改善を図るために、図3に示す画像形成装置101における構成を、画像形成装置100に適用したとする。図3を参照して上述したとおり、画像形成装置101における用紙50は、ブランケット胴1Aおよび圧胴2Aの間においては、圧胴2Aに沿うように変形しつつ搬送される。
【0031】
図4は、一般的なオフセット印刷機などである画像形成装置101(図3参照)における構成を、湿式電子写真方式を採用する一般的な画像形成装置100(図1参照)にそのまま適用した際に得られる態様を示す図である。
【0032】
用紙50は、像担持体10および転写部材20の間においては、転写部材20に沿うように変形しつつ搬送される。この態様においても、転写部材20によって形成される転写電界は、ニップ部分N(トナー画像60と用紙50とが密着する部分)だけでなく、ニップ部分Nの上流側の領域R1、およびニップ部分Nの下流側の領域R2にも作用する。すなわち、転写部材20によって形成される転写電界は、ニップ部分Nだけでなく、所定の幅を有する領域RRに作用する。
【0033】
ニップ部分Nの上流側(領域R1)においては、ニップ部分Nとは異なり、トナー画像60を形成するトナー粒子は、像担持体10に拘束されていない。ニップ部分Nの上流側においては、空間E1に形成される転写電界の作用によって、トナー粒子が像担持体10の表面上においてわずかに移動することがある。
【0034】
この場合、トナー粒子が像担持体10の表面上においてわずかに移動した後に、このトナー粒子が、ニップ部分Nにおいて用紙50上に転写される。トナー粒子が用紙50上に転写される前に像担持体10上において移動することによって、高画質な画像を用紙50上に形成することは困難となる。
【0035】
一方、ニップ部分Nの下流側(領域R2)において、用紙50上に転写されたトナー粒子は、空間E2に形成される転写電界の作用によって、用紙50の表面上においてわずかに移動することがある。この場合、転写後のトナー粒子が用紙50上において移動することによって、高画質な画像を用紙50上に形成することは困難となる。
【0036】
したがって、一般的なオフセット印刷機などである画像形成装置101(図3参照)における構成を、湿式電子写真方式を採用する一般的な画像形成装置100(図1参照)にそのまま適用した際に得られる態様おいては、転写の前後においてトナー粒子の乱れが発生する。結果として、この態様では、高画質な画像を用紙50上に形成することは困難となる。
【0037】
[実施の形態]
本発明に基づいた実施の形態について、以下、図面を参照しながら説明する。実施の形態の説明において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。実施の形態の説明において、同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0038】
(画像形成装置102)
図5および図6を参照して、実施の形態における画像形成装置102について説明する。図5は、画像形成装置102を模式的に示す図である。図6は、画像形成装置102におけるニップ部分を拡大して示す図である。
【0039】
図5に示すように、湿式電子写真方式を採用する画像形成装置102は、トナー画像を担持する像担持体10A〜10Dと、転写部材20A〜20Dと、用紙搬送ローラー30A〜30Eと、感光体40A〜40Dと、現像装置42A〜42Dと、給紙装置70と、定着装置72と、排紙装置74と、を備える。現像装置42A〜42Dは、たとえばシアン、マゼンタ、イエロー、およびブラックの各色に対応している。シアン、マゼンタ、イエロー、およびブラックの配列順序は、適宜変更されることが可能である。
【0040】
用紙50の搬送経路を構成するために、像担持体10A〜10Dは、矢印AR10方向に回転する。転写部材20A〜20Dは、矢印AR20方向に回転する。用紙搬送ローラー30A〜30Eは、矢印AR30方向に回転する。感光体40A〜40Dは、矢印AR40方向に回転する。
【0041】
像担持体10A〜10Dには、用紙50を搬送するための咥え爪12(第1保持部材)がそれぞれ設けられる。咥え爪12は、用紙50の端部52を保持する。咥え爪12は、画像形成時に、用紙50の表面と像担持体10A〜10Dとが互いに位置ずれしないように、用紙50を搬送する。
【0042】
画像形成装置102が枚葉紙に対して画像形成する場合、像担持体10Aの用紙搬送方向の外周の長さは、外周のうち咥え爪12部分を除いた部分の長さが、使用を想定する中で最大サイズの枚葉紙の用紙搬送方向の長さよりも長くなるように設定するとよい。これによって、最大サイズの枚葉紙であっても全面に画像を形成することができる。
【0043】
用紙搬送ローラー30A〜30Eにも、用紙50を搬送するための咥え爪32(第2保持部材)がそれぞれ設けられる。咥え爪32は、用紙50の表面と用紙搬送ローラー30A〜30Eとが互いに位置ずれしないように、用紙50を搬送する。
【0044】
像担持体10A〜10Dの咥え爪12と用紙搬送ローラー30A〜30Eの咥え爪32とは、像担持体10A〜10Dと用紙搬送ローラー30A〜30Eとの当接位置で互いに対向するように回転方向における位置が設定される。当該構成により、像担持体10A〜10Dと用紙搬送ローラー30A〜30Eとがどれだけ回転しても、像担持体10A〜10Dと用紙搬送ローラー30A〜30Eとが上記当接位置にあるときには、像担持体10A〜10Dの咥え爪12は、常に、用紙搬送ローラー30A〜30Eの咥え爪32と当接する位置に配置されることとなる。
【0045】
像担持体10A〜10Dの咥え爪12および用紙搬送ローラー30A〜30Eの咥え爪32は、印刷用紙の幅が変わっても対応できるように、用紙搬送方向に対して垂直方向に複数並べて設けられるとよい。像担持体10A〜10Dの咥え爪12と用紙搬送ローラー30A〜30Eの咥え爪32とは、互いに干渉することのないように、用紙搬送方向に対して垂直方向の異なる位置に配置されるとよい。
【0046】
転写部材20Aは、用紙50(記録媒体)の搬送経路を挟んで像担持体10Aの反対側に配置される。同様に、転写部材20B〜20Dは、用紙50の搬送経路を挟んで、像担持体10B〜10Dの反対側にそれぞれ配置される。転写部材20A〜20Dは、固有の駆動モータを有しておらず、像担持体10A〜10Dの表面または用紙50の表面との摩擦によって回転駆動される。
【0047】
転写部材20A〜20Dの回転によって用紙50の移動速度と像担持体10A〜10Dの表面速度とに差が生じると、トナー像が擦れることによって乱れが生じてしまう恐れがある。上記構成によれば、トナー像が擦れることによって乱れが生じることは防止されることができる。なお、トナー像の乱れが生じない範囲であれば、転写部材20A〜20Dは、固有のモータを有し、このモータによって駆動されてもよい。
【0048】
用紙搬送ローラー30Aも、用紙50の搬送経路を挟んで像担持体10Aの反対側に配置される。用紙搬送ローラー30Aは、転写部材20Aよりも用紙50の搬送方向(矢印AR50方向)における上流側に位置している。
【0049】
同様に、用紙搬送ローラー30Bは、像担持体10Aおよび像担持体10Bの間に位置している。同様に、用紙搬送ローラー30Cは、像担持体10Bおよび像担持体10Cの間に位置している。用紙搬送ローラー30Dは、像担持体10Cおよび像担持体10Dの間に位置している。
【0050】
像担持体10A〜10Dおよび用紙搬送ローラー30A〜30Eは、各々の表面速度が同一となるように駆動される。像担持体10A〜10Dの用紙50の搬送方向における周長さは、用紙搬送ローラー30A〜30Eの同方向における周長さの整数倍となるように構成されるとよい。本実施の形態においては、像担持体10A〜10Dの回転方向の周長さが、用紙搬送ローラー30A〜30Eの回転方向の周長さの2倍となるように設定される。用紙搬送ローラー30A〜30Eの回転方向周長を小さくすることは、用紙搬送ローラー30A〜30Eを小さくすることであり、画像形成装置全体の大きさを小さくすることができる。
【0051】
転写部材20Aは、用紙50の搬送方向(矢印AR50方向)において、用紙搬送ローラー30Aよりも下流側に位置し、用紙搬送ローラー30Bよりも上流側に位置している。同様に、転写部材20Bは、用紙50の搬送方向(矢印AR50方向)において、用紙搬送ローラー30Bよりも下流側に位置し、用紙搬送ローラー30Cよりも上流側に位置している。
【0052】
転写部材20Cは、用紙50の搬送方向(矢印AR50方向)において、用紙搬送ローラー30Cよりも下流側に位置し、用紙搬送ローラー30Dよりも上流側に位置している。転写部材20Dは、用紙50の搬送方向(矢印AR50方向)において、用紙搬送ローラー30Dよりも下流側に位置し、用紙搬送ローラー30Eよりも上流側に位置している。
【0053】
現像装置42Aは、トナー粒子をキャリア液中に分散した液体現像剤を使って、トナー画像を感光体40Aの表面に形成する。具体的には、現像装置42Aは、感光体40A上に形成された静電潜像を液体現像剤を用いて現像し、静電潜像に対応したトナー画像を形成する。感光体40Aの表面上に形成されたトナー画像のトナー粒子は、図示しない電圧印加装置が形成する電界の作用によって、像担持体10Aの表面上にそれぞれ転写される。
【0054】
同様に、現像装置42B〜42Dによって感光体40B〜40Dの表面上にトナー画像がそれぞれ形成される。感光体40B〜40Dの表面上に形成されたトナー画像のトナー粒子は、図示しない電圧印加装置が形成する電界の作用によって、像担持体10B〜10Dの表面上にそれぞれ転写される。
【0055】
(画像形成装置102による印刷動作)
用紙50に対して印刷が行なわれる際には、まず、給紙機構(図示せず)を備えた給紙装置70から用紙50が供給される(矢印AR50参照)。用紙50の端部52は、用紙搬送ローラー30Aの咥え爪32によって保持される。用紙50は、用紙搬送ローラー30Aの回転によって、用紙搬送ローラー30Aと像担持体10Aとの間に搬送される。
【0056】
用紙50の端部52は、用紙搬送ローラー30Aと像担持体10Aとの間(用紙搬送ローラー30Aと像担持体10Aとが互いに当接する部分)において、用紙搬送ローラー30Aの咥え爪32から像担持体10Aの咥え爪12に渡される。換言すると、用紙50の端部52は、転写部材20Aよりも用紙50の搬送方向上流側において、像担持体10Aの咥え爪12に保持される。用紙50は、像担持体10Aの回転によって像担持体10Aと転写部材20Aとの間に搬送される。咥え爪12は、用紙50の端部52とともに移動する。
【0057】
像担持体10Aに担持されたトナー画像を用紙50に向かって移動させるために、転写部材20Aによって転写電界が形成される。転写電界によって、トナー画像を形成するトナー粒子に対して電気的な力が付与される。この電気的な力は、トナー粒子が像担持体10Aから用紙50に移動する力として作用する。トナー粒子が用紙50上に移動することによって、用紙50上において所定の画像が形成される。
【0058】
用紙50は、像担持体10Aの回転によって、像担持体10Aと用紙搬送ローラー30Bとの間に搬送される。用紙50の端部52は、像担持体10Aと用紙搬送ローラー30Bとの間において、像担持体10Aの咥え爪12から用紙搬送ローラー30Bの咥え爪32に渡される。換言すると、用紙50の端部52は、転写部材20Aよりも用紙50の搬送方向下流側において、像担持体10Aの咥え爪12から開放される。
【0059】
上記と同様の操作が、用紙50に対して像担持体10B〜10D、転写部材20B〜20D、および用紙搬送ローラー30C〜30Eの間において繰り返される。用紙50は、用紙50の端部52が咥え爪12および咥え爪32によって順次受け渡し(咥え替え)されながら搬送される。各色のトナー粒子が用紙50上に移動することによって、用紙50上において所定の画像が形成される。
【0060】
転写されずに像担持体10A〜10D上に残ったトナー粒子などは、像担持体10A〜10Dに対向して備えられたクリーニング装置(図示せず)により、像担持体10A〜10Dの表面から除去されるとよい。
【0061】
用紙50を介さずに像担持体10A〜10Dの表面と転写部材20A〜20Dの表面とが当接した場合には、転写部材20A〜20Dの表面上にトナーおよびキャリア液などが付着することがある。転写部材20A〜20Dの表面上に付着したトナーおよびキャリア液などは、転写部材20A〜20Dに対向して備えた他のクリーニング装置(図示せず)によって転写部材20A〜20D表面上から除去されるとよい。
【0062】
用紙50が用紙搬送ローラー30Eの咥え爪32から開放された後、用紙50は定着装置72内に搬送される。定着装置72は、加熱によってトナー粒子を溶融させる。定着装置72は、圧力をかけて融けたトナーを用紙50になじませる。用紙50の表面上に形成されたトナー画像は、定着装置72内において定着される。その後、用紙50は定着装置72内から排紙装置74へと搬送される(矢印AR52参照)。
【0063】
排紙装置74は、画像形成装置102が枚葉紙に対して画像形成した場合には、画像形成が完了した用紙50をそのまま排紙する。画像形成装置102が巻取り紙に対して画像形成した場合には、画像形成が完了した用紙50を裁断機(図示せず)によって裁断した後、排紙する。
【0064】
(作用・効果)
図6を参照して、画像形成装置102においては、転写部材20Aによって形成される転写電界は、上述の図2,図4の場合と同様に、ニップ部分N(トナー画像60と用紙50とが密着する部分)だけでなく、ニップ部分Nの上流側の領域R1、およびニップ部分Nの下流側の領域R2にも作用する。転写部材20Aによって形成される転写電界は、ニップ部分Nだけでなく、所定の幅を有する領域RRに作用する。
【0065】
転写部材20Aがトナー画像60を形成するトナー粒子に対して付与する力の作用するこの領域RRは、像担持体10Aの咥え爪12(図5参照)が用紙50の端部52を保持する部分よりも用紙50の搬送方向(矢印AR50参照)下流側に位置し、且つ、像担持体10Aの咥え爪12(図5参照)が用紙50の端部52を開放する部分よりも搬送方向(矢印AR50参照)上流側に位置するように形成される。
【0066】
画像形成装置102における咥え爪12(図5参照)は、用紙50が像担持体10Aと転写部材20Aとの間において搬送される際に、上記力の作用する領域RR内における像担持体10Aの表面に沿って用紙50が搬送されるように、用紙50を保持する。
【0067】
ニップ部分Nの上流側(領域R1)において、トナー画像60を形成するトナー粒子は、像担持体10Aに対して用紙50により拘束されている。ニップ部分Nの上流側において、トナー粒子が転写部材20Aからの転写電界の作用を受けたとしても、トナー粒子が像担持体10Aの表面上において移動することは抑制または防止されている。
【0068】
トナー粒子が像担持体10Aの表面上において移動することなく、このトナー粒子はニップ部分Nにおいて用紙50上に位置精度高く転写されることができる。転写前のトナー粒子が像担持体10A上において移動することがない(または移動することがほとんどない)ため、高画質な画像を用紙50上に形成することができる。
【0069】
一方、ニップ部分Nの下流側(領域R2)において、用紙50上に転写されたトナー粒子は像担持体10Aに対して用紙50により拘束されている。トナー粒子が転写部材20Aからの転写電界の作用を受けたとしても、用紙50上に転写されたトナー粒子が用紙50の表面上において移動することがない。転写後のトナー粒子が用紙50上において移動することがない(または移動することがほとんどない)ため、高画質な画像を用紙50上に形成することができる。
【0070】
これらの動作については、転写部材20Bと像担持体10Bとの間、転写部材20Cと像担持体10Cとの間、および、転写部材20Dと像担持体10Dとの間においても同様である。したがって、画像形成装置102においては、転写の前後においてトナー粒子の乱れが発生することはない(またはほとんどない)ため、高画質な画像を用紙50上に形成することが可能となる。
【0071】
さらに、画像形成装置102においては、像担持体10A〜10Dに設けられた咥え爪12および用紙搬送ローラー30A〜30Eに設けられた咥え爪32が、用紙50を位置ずれさせることなく受け渡しながら搬送する。画像形成装置102によれば、見当精度のよい高画質な画像を用紙50上に形成することが可能となる。
【0072】
以上、本発明に基づいた実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。たとえば、多色の現像剤が用いられる場合には、上述の実施の形態における画像形成装置102のように、使用する現像剤の種類の数に応じて、像担持体10A〜10Dなどが準備される。
【0073】
単色の現像剤のみが使用される画像形成装置にも、本発明を適用することができる。単色の場合の構成を採用する場合などには、用紙搬送ローラー(用紙搬送ローラー30A)などは必要に応じて用いられるとよい。
【0074】
また、上述の実施の形態では、転写部材20A〜20Dによって像担持体10A〜10D上のトナー画像を用紙50へと転写する方法を示したが、転写部材20A〜20Dの代わりにコロナチャージャーなどの電圧印加手段が用いられてもよい。
【0075】
したがって、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0076】
1A,1B,1C,1D ブランケット胴、2,3,12,32 咥え爪、2A,2B,2C,2D 圧胴、3A,3B,3C,3D,3E 用紙搬送胴、4A,4B,4C,4D 版胴、5A,5B,5C,5D インク供給装置、10,10A,10B,10C,10D 像担持体、20,20A,20B,20C,20D 転写部材、30A,30B,30C,30D,30E 用紙搬送ローラー、40A,40B,40C,40D 感光体、42A,42B,42C,42D 現像装置、50 用紙、52 端部、60 トナー画像、70 給紙装置、72 定着装置、74 排紙装置、100,101,102 画像形成装置、AR50,AR52 矢印、E1,E2 空間、N ニップ部分、R1,R2,RR 領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の搬送方向に沿って搬送される記録媒体上に画像を形成する画像形成装置あって、
トナー画像を担持する像担持体と、
前記記録媒体の搬送経路を挟んで前記像担持体の反対側に配置され、前記トナー画像を形成するトナー粒子に対して、前記像担持体から前記記録媒体上に移動させる力を付与する転写部材と、
前記搬送方向の前記転写部材よりも上流側において前記記録媒体の端部を保持するとともに、前記像担持体と前記転写部材との間においては前記記録媒体の前記端部とともに移動し、前記搬送方向の前記転写部材よりも下流側において前記記録媒体の前記端部を開放する第1保持部材と、を備え、
前記転写部材が前記トナー粒子に対して付与する前記力の作用する領域は、前記第1保持部材が前記記録媒体の前記端部を保持する部分よりも前記搬送方向の下流側に位置し、且つ、前記第1保持部材が前記記録媒体の前記端部を開放する部分よりも前記搬送方向の上流側に位置するように形成され、
前記第1保持部材は、前記記録媒体が前記像担持体と前記転写部材との間において搬送される際に、前記力の作用する前記領域内における前記像担持体の表面に沿って前記記録媒体が搬送されるように前記記録媒体を保持する、
画像形成装置。
【請求項2】
前記記録媒体の前記端部を保持する第2保持部材を含み、前記記録媒体の前記搬送経路を挟んで前記像担持体の反対側に配置された記録媒体搬送体をさらに備え、
前記像担持体および前記記録媒体搬送体は、各々の表面速度が同一となるように駆動され、
前記記録媒体は、前記記録媒体の前記端部が前記第1保持部材および前記第2保持部材によって受け渡しされながら搬送される、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記像担持体の前記搬送方向における周長さは、前記記録媒体搬送体の前記搬送方向における周長さの整数倍である、
請求項2に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−3365(P2013−3365A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134852(P2011−134852)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】