画像形成装置
【課題】分配タンクにダンパ機構を備える場合の問題に鑑み、装置の大型化を防止することができる構成を備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】液滴を吐出する複数のノズルを有するヘッドユニット1006を複数並置した記録ヘッド1005に対して、液体タンク1010から供給される液体を分配タンク1008を介して加圧送液する構成を備え、該分配タンク1008には圧力変動を吸収するダンパ機構1023が設けられている画像形成装置1000において、前記分配タンク1008における前記ノズルの並び方向一方端に分配タンク1008内の圧力変動に応じて摺動可能なピストン2000を用いたダンパ機構が連結されていることを特徴とする。
【解決手段】液滴を吐出する複数のノズルを有するヘッドユニット1006を複数並置した記録ヘッド1005に対して、液体タンク1010から供給される液体を分配タンク1008を介して加圧送液する構成を備え、該分配タンク1008には圧力変動を吸収するダンパ機構1023が設けられている画像形成装置1000において、前記分配タンク1008における前記ノズルの並び方向一方端に分配タンク1008内の圧力変動に応じて摺動可能なピストン2000を用いたダンパ機構が連結されていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、さらに詳しくは、インクジェット記録装置に用いられるダンパ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置さらにはプロッタなどの各種画像形成装置の一つとして用いられるインクジェット記録装置においては、搬送される用紙の全幅に対応させてノズル列を配置したライン型ヘッドを装備して、ヘッドが移動するシリアル型画像形成装置と違って、主走査方向でヘッドが移動しない状態を維持されて液滴を吐出することにより画像形成を行うライン型画像形成装置、いわゆる、ラインプリンタが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
ラインプリンタにおいては、特許文献1にも開示されているように、複数のヘッドが並べられた記録ヘッドと、インクを収容するメインタンクと、メインタンクから供給されるインクを収容し、記録ヘッドに供給する可撓性部材(例えば可撓性フィルム)で形成された密閉式サブタンクを含む脱気インクを扱えるインク供給系と、記録ヘッドの複数のヘッドにインクを分配して供給する(分岐する)供給部材としての分配部材(以下、分配タンクともいう)と、ディストリビュータタンクに溜まった気泡をインク供給経路から排出するための手段を備えたものがある。
【0004】
上述した複数のヘッドが直結されている分配タンクは、インクの初期充填時のエアー抜きあるいは滞留したエアーの排気のために上部にエアー排出機構が設けられており、内部天面がエアーを抜きやすくするために傾斜面とされている。
【0005】
一方、分配タンクの壁部には、外部振動や機械振動あるいは脈動時に生じる圧力の調整を行うために膜状に形成された可撓性部材を用いてダンパ機構とする構成が知られている(例えば、特許文献1〜3)。
【0006】
可撓性部材は、分配タンクの空間形状に応じてインク貯留空間の一部を追うことができる形状が用いられ、特許文献1の場合には、内部天面が傾斜とされているのに応じて側面視形状が三角形状とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ダンパ機構における可撓性部材は、予め弾性体などの付勢部材により外方に向け膨出する状態を維持されており、インク吐出時の圧力を維持できるようにされている。
【0008】
しかし、可撓性部材および弾性体は、圧力変動が比較的早く伝搬されるように、ヘッドが並べられている方向と直角な方向に設けられている。このため、インクの貯留空間内に弾性体の配置スペースが必要となることや、振動抑制の為の吸収性を高めるために可撓性部材の面積を大きくする必要があることなどが原因して装置の大型化を招く虞があった。
【0009】
本発明の目的は、上記従来の画像形成装置における問題、特に、分配タンクにダンパ機構を備える場合の問題に鑑み、装置の大型化を防止することができる構成を備えた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するため、本発明は、液滴を吐出する複数のノズルを有するヘッドユニットを複数並置した記録ヘッドに対して、液体タンクから供給される液体を分配タンクを介して加圧送液する構成を備え、該分配タンクには圧力変動を吸収するダンパ機構が設けられている画像形成装置において、前記分配タンクにおける前記ノズルの並び方向一方端に前記ダンパ機構が連結されていることを特徴とする画像形成装置にある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、分配タンクの内部ではなく、分配タンクにおけるノズルの並び方向一方端にダンパ機構が設けられているので、分配タンク内にダンパ機構を設けた場合、分配タンク内のダンパ機構に用いられる可撓性部材の設置面積を小さくすることができる。これにより、分配タンクの大型化を防止することができ、特に、上記ノズル並び方向一方端に位置するダンパ機構の機能によっては、分配タンク内に特別なダンパ機構を設ける必要もなくなることにより、さらに分配タンクの小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一実施形態にかかる画像形成装置の構成を説明するための図である。
【図2】図1に示した画像形成装置の平面図である。
【図3】図1に示した画像形成装置に用いられるインク供給部の概略構成を説明するための模式図である。
【図4】図1に示した画像形成装置に用いられる分配タンクに関する従来例を説明するための図である。
【図5】図4に示した分配タンクに用いられる可撓性部材の構成を説明するための断面図である。
【図6】図5に示した可撓性部材を分配タンクに取り付けるための構成を説明するための図である。
【図7】図6に示した取り付け構造に用いられる分配タンク側の取り付け部の構成を説明するための図である。
【図8】図1に示した画像形成装置に用いられる分配タンクの構成を説明するための図である。
【図9】図8に示した分配タンクの各部材を説明するための図である。
【図10】分配タンクに設けられるダンパ機構の別例を説明するための図である。
【図11】図10に示した分配タンクの各部材を説明するための図である。
【図12】分配タンクに設けられるダンパ機構の他の例を説明するための図である。
【図13】図12に示した分配タンクの各部材を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づき本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、画像形成装置の一つであるインクジェット記録装置1000の構成を示す図である。
【0014】
図1に示す画像形成装置1000は、ノズルから液滴を吐出するヘッドが記録媒体のほぼ全幅にわたりライン構成をしたライン型画像形成装置であり、出納差を設けた水頭差方式画像形成装置と称される構成のものである。本発明では、この方式に限らず、シリアル型、ライン型にも適用可能であり、本実施例においては、主にライン型画像形成装置を例として記載する。
【0015】
画像形成装置1000は、装置本体1001、記録媒体Sを積載し給紙する給紙トレイ1002、印刷された記録媒体Sを排紙積載する排紙トレイ1003、記録媒体Sを給紙トレイ1002から排紙トレイ1003まで搬送する搬送部1004、この搬送中に記録媒体に液滴を吐出し印字するヘッド部、いわゆる、ヘッドモジュール1005、ヘッドモジュール1005に装備されているヘッド1006のノズルをクリーニングするクリーニング装置1007を備えて構成されている。
【0016】
装置本体1001は、図示しない前後側板およびステーで構成されており、給紙トレイ1002上に積載されている記録媒体Sは、分離ローラ1002B、給紙ローラ1002Aにより、1枚ずつ分離されて搬送部1004に向けて送られる。
【0017】
搬送部1004は、搬送駆動ローラ1004Aと搬送従動ローラ1004Bと無端ベルト1004Cとで構成され、無端ベルト1004Cは、搬送駆動ローラ1004Aと搬送従動ローラ1004B間に掛け渡されている。
無端ベルト1004Cの表面には複数の穴が形成され、無端ベルト1004Cの下部に配置されている吸引ファン1004Dにより、記録媒体Sが無端ベルト1004C上に吸い付けられたまま搬送される。
【0018】
また、搬送駆動ローラ1004Aおよび従動ローラ1004Bの上部には、それぞれ搬送ガイドローラ1004Eが、図示しないガイド部材により記録媒体Sの搬送路に対して接離できるようになっている。搬送駆動ローラ1004Aが図示しないモータにより回転することにより、搬送従動ローラ1004B及び、搬送ガイドローラ1004Eが従動回転し、記録媒体Sを搬送する。
【0019】
搬送部1004の上部には記録媒体に印字する液滴を吐出するヘッド部(ヘッドモジュール)1005が配置されている。
ヘッドモジュール1005は、記録媒体Sの通紙方向に移動自在であり、クリーニングの際にはクリーニング装置1007の上部までスライド移動する。
【0020】
ヘッドモジュール1005には、液滴を吐出するヘッド201〜205(図2参照)を装備したヘッドユニット1006が記録媒体Sのほぼ全幅にわたり構成されており、図2に示すように、各列ではヘッドユニット1006が5個並べられている(便宜上、図2において、符号201〜205で示す)、また、千鳥に4列配列とされている(便宜上、図2においてヘッドモジュールに対応する符号1005a〜1005dで示す)。
【0021】
図2において、ヘッド(201〜205)を有する各ヘッドモジュール1005a〜1005dのうちで、符号1005a、1005bで示すヘッドモジュールは、ブラック(K)とマゼンタ(M)のインクを対象とし、符号1005c、1005dで示すヘッドモジュールは、シアン(C)とイエロー(Y)のインクを対象とする設定とされ、千鳥配列されていることにより、150dpiの画像1ラインを形成するようになっている。
ヘッドの構成は、これらの例に限るものではなく、ヘッド部を2個並べ、各ヘッドに1色のインクをいれた構成とし、画像解像度をあげた構成とすることも可能である。
【0022】
図1に示すように、ヘッドモジュール1005の上部にはインクをそれぞれのヘッドに供給する分配タンク1008a〜1008dが、色毎に配列されている。
分配タンク1008a〜1008d上流側には、これらのうちの一つを示す図3において、サブタンク1009が配置され、サブタンク1009内のスプリング(図中、破線で示す部材)によりヘッドのメニスカスを保持するための負圧(−20〜−70mmAq)に保たれている。
【0023】
サブタンク1009は、パック式が用いられている。これは、可撓性のパックを使用することで、インクと大気を直接触れさせないようにして、インクの水分蒸発による粘度上昇を防ぎ、また、インク中の溶存酸素量を一定に保ちヘッド内に気泡が溜まるのを防ぐためである。サブタンク1009には、内部にフィルタ1009Aが配置されており、インク内のゴミがヘッドに流入してノズルのつまりなどを生じないようにされている。
【0024】
図2においてサブタンク1009の上流側にはインクを貯蔵するメインタンク1010が配置されている。図2においては、貯蔵する色が符号Y,C,M,Kにより示されており、いずれのメインタンク1010がチューブによる供給経路にてサブタンク1009に接続されている。
メインタンク1010は、加圧ポンプPによりカートリッジ内を加圧してインクを供給できるようになっており、装置の電源投入後、一斉に所定圧力で加圧される。
【0025】
図3において上述したサブタンク1009では、図示しない検知手段によりインク量が監視されており、インクが不足した場合には、必要に応じて電磁弁1020が開閉されて供給チューブ1019を介してメインタンク1010からインクを供給されるようになっている。
【0026】
図1において、搬送部1004の下流側には、記録媒体を排紙トレイ1003に排紙するローラを用いた搬送ガイド部1011が形成されている。
搬送ガイド部1011において搬送された記録媒体Sは排紙トレイ1003に排紙される。
排紙トレイ1003は、記録媒体Sの幅方向に規制する対のサイドフェンス1003Aと記録媒体Sの先端を規制するエンドフェンス1003Bで構成されている。
【0027】
搬送ガイド部1011の下部には、ヘッドのノズル面をクリーニングするクリーニング装置1007が設けられている。
クリーニング装置1007には、各ヘッドモジュール(図2において符号1005a〜1005dで示す部材)の数(4個)に対応するクリーニング手段(図2において符号,1007a〜1007dで示す)が並置され、これら各クリーニング手段は、ヘッドモジュールと同様に記録媒体のほぼ全幅にわたりクリーニング手段が千鳥配列に構成されている。
クリーニング装置1007には、図1に示すように、その下部に上記各クリーニング手段の数に対応する吸引ポンプ1012が配置されて、ヘッドからのインクを吸引できるようになっている。
【0028】
クリーニング装置1007では、印刷終了後のヘッドを対象としてクリーニング作業が行われる。クリーニング作業に際して、液滴を吐出するヘッドをキャップしインクを吸引する場合、また、ヘッドのノズル面に付着したインクを図示しないワイパーブレードで清掃する場合には、印刷停止後、搬送部1004が搬送従動ローラ1004Bを支点にして反時計方向に回動されてヘッド部の移動スペースが確保される。
【0029】
また、図1においてクリーニング装置1007の上部に配置されている搬送ガイド部1011も支点部Lを基準に反時計方向に回動することでガイド機能が解除されると、ヘッドモジュール1005が図1中、矢印A方向に移動してクリーニング装置1007の上部に達するとその位置で停止された後、各ヘッドのクリーニング動作に移る。
【0030】
ここで、本実施例の特徴を理解しやすくするために、図4において、分配タンク1008とヘッドモジュール1005(図2参照)に設けられているヘッド201〜205(図2参照)との従来構成を説明すると次の通りである。
同図において、数個のヘッド(図では5個示されているが、1個でも良い)201〜205が、図示しない固定部材(ねじ、接着剤等)でヘッド連結部材1006cに固定されている。
【0031】
このヘッド201〜205は、個々にインク内の異物などを除去する目的で、図4(B)に示すように、フィルタ1021が設けられており、ヘッド201〜205とフィルタで1021とで、ヘッドモジュール1005が構成されている(以下、ヘッドはヘッドユニットと同義で用いる)。
【0032】
図4において、ヘッドモジュール1005の上部には分配タンク1008が分配タンク固定部材1022で固定されている。この分配タンク固定部材1022は、図の上下に押し付けるような板バネになっており、分配タンク1008はヘッド部1006に押し付けられることになる。
【0033】
分配タンク1008の内部は、図4(B)に示されているように分割されている。
このため、図4(C)に示すように、1つのヘッドで2色の色が使用できるようになっている。先述したが、この分配タンクとヘッドの構成は、これらの例に限るものではなく、分配タンクを分割せずに各1つのヘッドで1色のインクをいれた構成とし、ヘッドの数を増やして画像解像度を挙げた構成でもかまわない。
【0034】
ここで、(外部振動、機械振動)からの圧力調整のための分配タンク1008に設置した可撓性部材(ダンパ)1023は、図4(A)に示すように分配タンク1008の側面に設置されている。
【0035】
図5は、可撓性部材1023の構成を示す断面図であり、同図において可撓性部材1023は、分配タンク1008への溶着性向上、ガスバリア向上という観点から、PE(あるいはPP)、NY(あるいはEVOH、PET)を含む2層以上の構造とされ、図では、3層構造(PE/EVOH/NY、PP/シリカ/PET)が示されている。本実施例に用いられる記録ヘッドのノズルは極めて微細(φ24μm)のものが用いられるので、インク内の溶存酸素量が高いと酸素が徐々に溜まりインクの吐出不良が発生する虞も高まるので、インク供給経路に用いられる材料は、インク液中に空気が入り込まないガスバリア性の高い材料を用いられている。
【0036】
上述した分配タンク1008は、空の分配タンク1008に初期充填する際のエアー抜き、そしてその後、仮に分配タンク1008内の分割空間の中にエアーが溜まってきたときのエアー抜きの時に使用される。このため、分配タンク1008は、エアーを抜きやすくするために、図4(A)に示すように傾斜した上面とされ、その傾斜上面の最高位置に図示されない廃液タンクに連通する廃液チューブ1017が接続されている。
【0037】
図6は、可撓性部材1023と分配タンク1008との溶着のための構成を示す図である。同図において、分配タンクには、図7に示すように、分配タンク1008側の壁面に複数形成された、断面形状が三角形の溶着リブ(符号RBで示す)が形成されており、ここに3層構造のガスバリアフィルムを熱を加えながら押し当てる。熱により溶着リブとフィルムのPE(またはPP)層が溶け合い、溶着される。溶着の温度はPEで170度、PPで200度程度とされている。
【0038】
以上のような構成を対象として本実施例の特徴を説明する。
本実施例の特徴は、分配タンク1008における内部とは別の位置、つまり、分配タンク1008におけるノズルの並び方向一方端にダンパ機構を設けたことにある。以下、この構成について説明する。なお、図8以降の図において、図4に示した部材と同じ部材に関しては同符号により示すことを前置きしておく。
【0039】
図8は、ダンパ機構の一実施例を示す図であり、同図において、分配タンク1008は、図4に示した場合と違って天面が傾斜していない。この理由は後で説明する。
このため、分配タンク1008は、天面が傾斜していない点が図4に示した従来構造の場合と異なるものの、ノズルの並び方向と直角な方向の壁面には、従来構造と同様に可撓性部材1023を設けることもできる。
この場合、可撓性部材1023を設置する開口部(便宜上、符号10080で示す)は、分配タンク1008の天面が傾斜していないことにより矩形形状とされ、ノズルの並び方向での高さ方向の寸法が一様とされている。なお、部品の製造上の観点から角穴などの矩形穴を設けてフィルム等で塞ぐようにしたが、板等を設置して塞いでもよく、製造上問題ないのであれば、角穴は設けなくてもよい。
【0040】
一方、分配タンク1008におけるノズルの並び方向一方端には、分配タンク1008内に連通する空間内に配置されて分配タンク1008内の圧力変動により摺動可能なピストン2000が設けられている。
ピストン2000は、図9に示すように、分配タンク1008に連通する空間内面に接触するパッキン2001により封止された状態で摺動できるようになっている。
【0041】
ピストン2000には、分配タンク1008内のインクの充填圧と平衡する圧力を作用させて圧力変動が生じていないときに所定位置に位置決めできるスプリングなどの弾性体2002が背圧部材として設けられている。
弾性体2002は、延長方向一端がピストン2000側に位置し、延長方向他端が分配タンク1008の端部を塞ぐことができる蓋2003の内面に位置して脱落を防止されている。蓋2003は、分配タンク1008の端部においてネジ止めあるいは溶着、接着さらにはスナップフィットなどにより一体化されるようになっている。
【0042】
以上のような構成においては、分配タンク1008内に可撓性部材1023を用いたダンパ機構を設けた場合、ノズル並び方向一方端に位置するピストン200の摺動動作によって分配タンク1008内の圧力変動を吸収できるので、既存の可撓性部材1023の設置面積を小さくすることができる。これが分配タンク1008内にダンパ機構を設けた場合の傾斜面としない理由である。これにより、上述した傾斜面とする必要がなくなるので分配タンク1008の嵩が大きくなることがない。
特に、分配タンク1008内に可撓性部材1023を用いたダンパ機構を設けないで済ませると、さらに分配タンク1008の小型化を図ることが可能となる。
この構成によれば、分配タンクの嵩が大型化するのを簡単な構成により回避することが可能となる。
【0043】
次にダンパ機構に関する別実施例について説明する。
図10乃至13に示す実施例は、分配タンクのノズル並び方向一方端に連通する空間において分配タンク1008の圧力変動に応じて膨張および収縮可能な可撓性部材を設けたことを特徴としている。
【0044】
図10に示す実施例では、分配タンク1008におけるノズル並び方向一方端に円錐形状の可撓性部材2005が取り付けられている。
可撓性部材2005は、上記端部から外側に向けて膨出する内部空間を有する膨縮可能な部材であり、使用される材質としては、可撓性部材1023に用いられる多層構造のもの、ゴムシート、アルミニウム、低密度あるいは高密度ポリエチレン、フッ素樹脂、塩化ビニール、PVA、ポリプロピレン、ナイロン、PET等からなるフィルムが用いられる。
【0045】
可撓性部材2005は、図11に示すように、円錐頭部が分配タンク1008のノズル並び方向一方端から外側に張り出し、基部が分配タンク1008に連通する空間側に位置しているので、その基部は、分配タンク1008のノズル並び方向一方端の端面と蓋2003の内面との間に配置されるパッキン2001と共に挟み込まれて封止される。
可撓性部材2005は、円錐頭部が分配タンク1008のノズル並び方向一方端から外側に張り出した状態で設けられているので、常時、分配タンク1008内からの圧力、つまりインクの充填圧を受ける。このため、図8,9に示した弾性体2002を用いないで済む。
【0046】
以上の実施例においては、分配タンク1008内の圧力変動は、分配タンク1008におけるノズル並び方向一方端に連結されている可撓性部材2005の膨張、収縮変形により吸収されることになる。
当然のことではあるが、分配タンク1008は、可撓性部材1023を設けた場合の設置面積を小さくできるので、その天面を傾斜させることがなく、図8に示した例と同様に、分配タンク1008の嵩が大型化するのを防止することができる。
【0047】
図12に示す構成では、図10に示した場合とは逆に、可撓性部材(便宜上、符号2005’で示す)が円錐頭部を分配タンク1008の内部に位置させている。
可撓性部材2005’の基部は、図13に示すように、分配タンク1008におけるノズル並び方向一方端の端面と蓋2003の内面とで挟み込まれて取り付けられる。
一方、可撓性部材2005’の内部には、分配タンク1008内での圧力変動が生じないときの膨張状態を維持するための付勢を行うスプリング等の弾性体(便宜上、図8に示した符号2002を用いる)が配置されている。
【0048】
以上の実施例においては、分配タンク1008内の圧力変動は、分配タンク1008におけるノズル並び方向一方端内部に進入した状態の円錐形状頭部を有する可撓性部材2005’の膨張、収縮変形により吸収されることになる。
当然のことではあるが、分配タンク1008は、その天面が傾斜しておらず、図8、10に示した例と同様に、分配タンク1008の嵩が大型化するのを防止することができる。
【符号の説明】
【0049】
1000 画像形成装置
1005 ヘッド部(ヘッドモジュール)
1006 ヘッド
1008 分配タンク
10080 可撓性部材取り付け用の穴
1009 サブタンク
1010 メインタンク
2000 ピストン
2001 パッキン
2002 弾性体
2003 蓋
2005,2005’ 可撓性部材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0050】
【特許文献1】特開2011−56689号公報
【特許文献2】特開2009−83378号公報
【特許文献3】特開2009−234151号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、さらに詳しくは、インクジェット記録装置に用いられるダンパ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置さらにはプロッタなどの各種画像形成装置の一つとして用いられるインクジェット記録装置においては、搬送される用紙の全幅に対応させてノズル列を配置したライン型ヘッドを装備して、ヘッドが移動するシリアル型画像形成装置と違って、主走査方向でヘッドが移動しない状態を維持されて液滴を吐出することにより画像形成を行うライン型画像形成装置、いわゆる、ラインプリンタが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
ラインプリンタにおいては、特許文献1にも開示されているように、複数のヘッドが並べられた記録ヘッドと、インクを収容するメインタンクと、メインタンクから供給されるインクを収容し、記録ヘッドに供給する可撓性部材(例えば可撓性フィルム)で形成された密閉式サブタンクを含む脱気インクを扱えるインク供給系と、記録ヘッドの複数のヘッドにインクを分配して供給する(分岐する)供給部材としての分配部材(以下、分配タンクともいう)と、ディストリビュータタンクに溜まった気泡をインク供給経路から排出するための手段を備えたものがある。
【0004】
上述した複数のヘッドが直結されている分配タンクは、インクの初期充填時のエアー抜きあるいは滞留したエアーの排気のために上部にエアー排出機構が設けられており、内部天面がエアーを抜きやすくするために傾斜面とされている。
【0005】
一方、分配タンクの壁部には、外部振動や機械振動あるいは脈動時に生じる圧力の調整を行うために膜状に形成された可撓性部材を用いてダンパ機構とする構成が知られている(例えば、特許文献1〜3)。
【0006】
可撓性部材は、分配タンクの空間形状に応じてインク貯留空間の一部を追うことができる形状が用いられ、特許文献1の場合には、内部天面が傾斜とされているのに応じて側面視形状が三角形状とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ダンパ機構における可撓性部材は、予め弾性体などの付勢部材により外方に向け膨出する状態を維持されており、インク吐出時の圧力を維持できるようにされている。
【0008】
しかし、可撓性部材および弾性体は、圧力変動が比較的早く伝搬されるように、ヘッドが並べられている方向と直角な方向に設けられている。このため、インクの貯留空間内に弾性体の配置スペースが必要となることや、振動抑制の為の吸収性を高めるために可撓性部材の面積を大きくする必要があることなどが原因して装置の大型化を招く虞があった。
【0009】
本発明の目的は、上記従来の画像形成装置における問題、特に、分配タンクにダンパ機構を備える場合の問題に鑑み、装置の大型化を防止することができる構成を備えた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するため、本発明は、液滴を吐出する複数のノズルを有するヘッドユニットを複数並置した記録ヘッドに対して、液体タンクから供給される液体を分配タンクを介して加圧送液する構成を備え、該分配タンクには圧力変動を吸収するダンパ機構が設けられている画像形成装置において、前記分配タンクにおける前記ノズルの並び方向一方端に前記ダンパ機構が連結されていることを特徴とする画像形成装置にある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、分配タンクの内部ではなく、分配タンクにおけるノズルの並び方向一方端にダンパ機構が設けられているので、分配タンク内にダンパ機構を設けた場合、分配タンク内のダンパ機構に用いられる可撓性部材の設置面積を小さくすることができる。これにより、分配タンクの大型化を防止することができ、特に、上記ノズル並び方向一方端に位置するダンパ機構の機能によっては、分配タンク内に特別なダンパ機構を設ける必要もなくなることにより、さらに分配タンクの小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一実施形態にかかる画像形成装置の構成を説明するための図である。
【図2】図1に示した画像形成装置の平面図である。
【図3】図1に示した画像形成装置に用いられるインク供給部の概略構成を説明するための模式図である。
【図4】図1に示した画像形成装置に用いられる分配タンクに関する従来例を説明するための図である。
【図5】図4に示した分配タンクに用いられる可撓性部材の構成を説明するための断面図である。
【図6】図5に示した可撓性部材を分配タンクに取り付けるための構成を説明するための図である。
【図7】図6に示した取り付け構造に用いられる分配タンク側の取り付け部の構成を説明するための図である。
【図8】図1に示した画像形成装置に用いられる分配タンクの構成を説明するための図である。
【図9】図8に示した分配タンクの各部材を説明するための図である。
【図10】分配タンクに設けられるダンパ機構の別例を説明するための図である。
【図11】図10に示した分配タンクの各部材を説明するための図である。
【図12】分配タンクに設けられるダンパ機構の他の例を説明するための図である。
【図13】図12に示した分配タンクの各部材を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づき本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、画像形成装置の一つであるインクジェット記録装置1000の構成を示す図である。
【0014】
図1に示す画像形成装置1000は、ノズルから液滴を吐出するヘッドが記録媒体のほぼ全幅にわたりライン構成をしたライン型画像形成装置であり、出納差を設けた水頭差方式画像形成装置と称される構成のものである。本発明では、この方式に限らず、シリアル型、ライン型にも適用可能であり、本実施例においては、主にライン型画像形成装置を例として記載する。
【0015】
画像形成装置1000は、装置本体1001、記録媒体Sを積載し給紙する給紙トレイ1002、印刷された記録媒体Sを排紙積載する排紙トレイ1003、記録媒体Sを給紙トレイ1002から排紙トレイ1003まで搬送する搬送部1004、この搬送中に記録媒体に液滴を吐出し印字するヘッド部、いわゆる、ヘッドモジュール1005、ヘッドモジュール1005に装備されているヘッド1006のノズルをクリーニングするクリーニング装置1007を備えて構成されている。
【0016】
装置本体1001は、図示しない前後側板およびステーで構成されており、給紙トレイ1002上に積載されている記録媒体Sは、分離ローラ1002B、給紙ローラ1002Aにより、1枚ずつ分離されて搬送部1004に向けて送られる。
【0017】
搬送部1004は、搬送駆動ローラ1004Aと搬送従動ローラ1004Bと無端ベルト1004Cとで構成され、無端ベルト1004Cは、搬送駆動ローラ1004Aと搬送従動ローラ1004B間に掛け渡されている。
無端ベルト1004Cの表面には複数の穴が形成され、無端ベルト1004Cの下部に配置されている吸引ファン1004Dにより、記録媒体Sが無端ベルト1004C上に吸い付けられたまま搬送される。
【0018】
また、搬送駆動ローラ1004Aおよび従動ローラ1004Bの上部には、それぞれ搬送ガイドローラ1004Eが、図示しないガイド部材により記録媒体Sの搬送路に対して接離できるようになっている。搬送駆動ローラ1004Aが図示しないモータにより回転することにより、搬送従動ローラ1004B及び、搬送ガイドローラ1004Eが従動回転し、記録媒体Sを搬送する。
【0019】
搬送部1004の上部には記録媒体に印字する液滴を吐出するヘッド部(ヘッドモジュール)1005が配置されている。
ヘッドモジュール1005は、記録媒体Sの通紙方向に移動自在であり、クリーニングの際にはクリーニング装置1007の上部までスライド移動する。
【0020】
ヘッドモジュール1005には、液滴を吐出するヘッド201〜205(図2参照)を装備したヘッドユニット1006が記録媒体Sのほぼ全幅にわたり構成されており、図2に示すように、各列ではヘッドユニット1006が5個並べられている(便宜上、図2において、符号201〜205で示す)、また、千鳥に4列配列とされている(便宜上、図2においてヘッドモジュールに対応する符号1005a〜1005dで示す)。
【0021】
図2において、ヘッド(201〜205)を有する各ヘッドモジュール1005a〜1005dのうちで、符号1005a、1005bで示すヘッドモジュールは、ブラック(K)とマゼンタ(M)のインクを対象とし、符号1005c、1005dで示すヘッドモジュールは、シアン(C)とイエロー(Y)のインクを対象とする設定とされ、千鳥配列されていることにより、150dpiの画像1ラインを形成するようになっている。
ヘッドの構成は、これらの例に限るものではなく、ヘッド部を2個並べ、各ヘッドに1色のインクをいれた構成とし、画像解像度をあげた構成とすることも可能である。
【0022】
図1に示すように、ヘッドモジュール1005の上部にはインクをそれぞれのヘッドに供給する分配タンク1008a〜1008dが、色毎に配列されている。
分配タンク1008a〜1008d上流側には、これらのうちの一つを示す図3において、サブタンク1009が配置され、サブタンク1009内のスプリング(図中、破線で示す部材)によりヘッドのメニスカスを保持するための負圧(−20〜−70mmAq)に保たれている。
【0023】
サブタンク1009は、パック式が用いられている。これは、可撓性のパックを使用することで、インクと大気を直接触れさせないようにして、インクの水分蒸発による粘度上昇を防ぎ、また、インク中の溶存酸素量を一定に保ちヘッド内に気泡が溜まるのを防ぐためである。サブタンク1009には、内部にフィルタ1009Aが配置されており、インク内のゴミがヘッドに流入してノズルのつまりなどを生じないようにされている。
【0024】
図2においてサブタンク1009の上流側にはインクを貯蔵するメインタンク1010が配置されている。図2においては、貯蔵する色が符号Y,C,M,Kにより示されており、いずれのメインタンク1010がチューブによる供給経路にてサブタンク1009に接続されている。
メインタンク1010は、加圧ポンプPによりカートリッジ内を加圧してインクを供給できるようになっており、装置の電源投入後、一斉に所定圧力で加圧される。
【0025】
図3において上述したサブタンク1009では、図示しない検知手段によりインク量が監視されており、インクが不足した場合には、必要に応じて電磁弁1020が開閉されて供給チューブ1019を介してメインタンク1010からインクを供給されるようになっている。
【0026】
図1において、搬送部1004の下流側には、記録媒体を排紙トレイ1003に排紙するローラを用いた搬送ガイド部1011が形成されている。
搬送ガイド部1011において搬送された記録媒体Sは排紙トレイ1003に排紙される。
排紙トレイ1003は、記録媒体Sの幅方向に規制する対のサイドフェンス1003Aと記録媒体Sの先端を規制するエンドフェンス1003Bで構成されている。
【0027】
搬送ガイド部1011の下部には、ヘッドのノズル面をクリーニングするクリーニング装置1007が設けられている。
クリーニング装置1007には、各ヘッドモジュール(図2において符号1005a〜1005dで示す部材)の数(4個)に対応するクリーニング手段(図2において符号,1007a〜1007dで示す)が並置され、これら各クリーニング手段は、ヘッドモジュールと同様に記録媒体のほぼ全幅にわたりクリーニング手段が千鳥配列に構成されている。
クリーニング装置1007には、図1に示すように、その下部に上記各クリーニング手段の数に対応する吸引ポンプ1012が配置されて、ヘッドからのインクを吸引できるようになっている。
【0028】
クリーニング装置1007では、印刷終了後のヘッドを対象としてクリーニング作業が行われる。クリーニング作業に際して、液滴を吐出するヘッドをキャップしインクを吸引する場合、また、ヘッドのノズル面に付着したインクを図示しないワイパーブレードで清掃する場合には、印刷停止後、搬送部1004が搬送従動ローラ1004Bを支点にして反時計方向に回動されてヘッド部の移動スペースが確保される。
【0029】
また、図1においてクリーニング装置1007の上部に配置されている搬送ガイド部1011も支点部Lを基準に反時計方向に回動することでガイド機能が解除されると、ヘッドモジュール1005が図1中、矢印A方向に移動してクリーニング装置1007の上部に達するとその位置で停止された後、各ヘッドのクリーニング動作に移る。
【0030】
ここで、本実施例の特徴を理解しやすくするために、図4において、分配タンク1008とヘッドモジュール1005(図2参照)に設けられているヘッド201〜205(図2参照)との従来構成を説明すると次の通りである。
同図において、数個のヘッド(図では5個示されているが、1個でも良い)201〜205が、図示しない固定部材(ねじ、接着剤等)でヘッド連結部材1006cに固定されている。
【0031】
このヘッド201〜205は、個々にインク内の異物などを除去する目的で、図4(B)に示すように、フィルタ1021が設けられており、ヘッド201〜205とフィルタで1021とで、ヘッドモジュール1005が構成されている(以下、ヘッドはヘッドユニットと同義で用いる)。
【0032】
図4において、ヘッドモジュール1005の上部には分配タンク1008が分配タンク固定部材1022で固定されている。この分配タンク固定部材1022は、図の上下に押し付けるような板バネになっており、分配タンク1008はヘッド部1006に押し付けられることになる。
【0033】
分配タンク1008の内部は、図4(B)に示されているように分割されている。
このため、図4(C)に示すように、1つのヘッドで2色の色が使用できるようになっている。先述したが、この分配タンクとヘッドの構成は、これらの例に限るものではなく、分配タンクを分割せずに各1つのヘッドで1色のインクをいれた構成とし、ヘッドの数を増やして画像解像度を挙げた構成でもかまわない。
【0034】
ここで、(外部振動、機械振動)からの圧力調整のための分配タンク1008に設置した可撓性部材(ダンパ)1023は、図4(A)に示すように分配タンク1008の側面に設置されている。
【0035】
図5は、可撓性部材1023の構成を示す断面図であり、同図において可撓性部材1023は、分配タンク1008への溶着性向上、ガスバリア向上という観点から、PE(あるいはPP)、NY(あるいはEVOH、PET)を含む2層以上の構造とされ、図では、3層構造(PE/EVOH/NY、PP/シリカ/PET)が示されている。本実施例に用いられる記録ヘッドのノズルは極めて微細(φ24μm)のものが用いられるので、インク内の溶存酸素量が高いと酸素が徐々に溜まりインクの吐出不良が発生する虞も高まるので、インク供給経路に用いられる材料は、インク液中に空気が入り込まないガスバリア性の高い材料を用いられている。
【0036】
上述した分配タンク1008は、空の分配タンク1008に初期充填する際のエアー抜き、そしてその後、仮に分配タンク1008内の分割空間の中にエアーが溜まってきたときのエアー抜きの時に使用される。このため、分配タンク1008は、エアーを抜きやすくするために、図4(A)に示すように傾斜した上面とされ、その傾斜上面の最高位置に図示されない廃液タンクに連通する廃液チューブ1017が接続されている。
【0037】
図6は、可撓性部材1023と分配タンク1008との溶着のための構成を示す図である。同図において、分配タンクには、図7に示すように、分配タンク1008側の壁面に複数形成された、断面形状が三角形の溶着リブ(符号RBで示す)が形成されており、ここに3層構造のガスバリアフィルムを熱を加えながら押し当てる。熱により溶着リブとフィルムのPE(またはPP)層が溶け合い、溶着される。溶着の温度はPEで170度、PPで200度程度とされている。
【0038】
以上のような構成を対象として本実施例の特徴を説明する。
本実施例の特徴は、分配タンク1008における内部とは別の位置、つまり、分配タンク1008におけるノズルの並び方向一方端にダンパ機構を設けたことにある。以下、この構成について説明する。なお、図8以降の図において、図4に示した部材と同じ部材に関しては同符号により示すことを前置きしておく。
【0039】
図8は、ダンパ機構の一実施例を示す図であり、同図において、分配タンク1008は、図4に示した場合と違って天面が傾斜していない。この理由は後で説明する。
このため、分配タンク1008は、天面が傾斜していない点が図4に示した従来構造の場合と異なるものの、ノズルの並び方向と直角な方向の壁面には、従来構造と同様に可撓性部材1023を設けることもできる。
この場合、可撓性部材1023を設置する開口部(便宜上、符号10080で示す)は、分配タンク1008の天面が傾斜していないことにより矩形形状とされ、ノズルの並び方向での高さ方向の寸法が一様とされている。なお、部品の製造上の観点から角穴などの矩形穴を設けてフィルム等で塞ぐようにしたが、板等を設置して塞いでもよく、製造上問題ないのであれば、角穴は設けなくてもよい。
【0040】
一方、分配タンク1008におけるノズルの並び方向一方端には、分配タンク1008内に連通する空間内に配置されて分配タンク1008内の圧力変動により摺動可能なピストン2000が設けられている。
ピストン2000は、図9に示すように、分配タンク1008に連通する空間内面に接触するパッキン2001により封止された状態で摺動できるようになっている。
【0041】
ピストン2000には、分配タンク1008内のインクの充填圧と平衡する圧力を作用させて圧力変動が生じていないときに所定位置に位置決めできるスプリングなどの弾性体2002が背圧部材として設けられている。
弾性体2002は、延長方向一端がピストン2000側に位置し、延長方向他端が分配タンク1008の端部を塞ぐことができる蓋2003の内面に位置して脱落を防止されている。蓋2003は、分配タンク1008の端部においてネジ止めあるいは溶着、接着さらにはスナップフィットなどにより一体化されるようになっている。
【0042】
以上のような構成においては、分配タンク1008内に可撓性部材1023を用いたダンパ機構を設けた場合、ノズル並び方向一方端に位置するピストン200の摺動動作によって分配タンク1008内の圧力変動を吸収できるので、既存の可撓性部材1023の設置面積を小さくすることができる。これが分配タンク1008内にダンパ機構を設けた場合の傾斜面としない理由である。これにより、上述した傾斜面とする必要がなくなるので分配タンク1008の嵩が大きくなることがない。
特に、分配タンク1008内に可撓性部材1023を用いたダンパ機構を設けないで済ませると、さらに分配タンク1008の小型化を図ることが可能となる。
この構成によれば、分配タンクの嵩が大型化するのを簡単な構成により回避することが可能となる。
【0043】
次にダンパ機構に関する別実施例について説明する。
図10乃至13に示す実施例は、分配タンクのノズル並び方向一方端に連通する空間において分配タンク1008の圧力変動に応じて膨張および収縮可能な可撓性部材を設けたことを特徴としている。
【0044】
図10に示す実施例では、分配タンク1008におけるノズル並び方向一方端に円錐形状の可撓性部材2005が取り付けられている。
可撓性部材2005は、上記端部から外側に向けて膨出する内部空間を有する膨縮可能な部材であり、使用される材質としては、可撓性部材1023に用いられる多層構造のもの、ゴムシート、アルミニウム、低密度あるいは高密度ポリエチレン、フッ素樹脂、塩化ビニール、PVA、ポリプロピレン、ナイロン、PET等からなるフィルムが用いられる。
【0045】
可撓性部材2005は、図11に示すように、円錐頭部が分配タンク1008のノズル並び方向一方端から外側に張り出し、基部が分配タンク1008に連通する空間側に位置しているので、その基部は、分配タンク1008のノズル並び方向一方端の端面と蓋2003の内面との間に配置されるパッキン2001と共に挟み込まれて封止される。
可撓性部材2005は、円錐頭部が分配タンク1008のノズル並び方向一方端から外側に張り出した状態で設けられているので、常時、分配タンク1008内からの圧力、つまりインクの充填圧を受ける。このため、図8,9に示した弾性体2002を用いないで済む。
【0046】
以上の実施例においては、分配タンク1008内の圧力変動は、分配タンク1008におけるノズル並び方向一方端に連結されている可撓性部材2005の膨張、収縮変形により吸収されることになる。
当然のことではあるが、分配タンク1008は、可撓性部材1023を設けた場合の設置面積を小さくできるので、その天面を傾斜させることがなく、図8に示した例と同様に、分配タンク1008の嵩が大型化するのを防止することができる。
【0047】
図12に示す構成では、図10に示した場合とは逆に、可撓性部材(便宜上、符号2005’で示す)が円錐頭部を分配タンク1008の内部に位置させている。
可撓性部材2005’の基部は、図13に示すように、分配タンク1008におけるノズル並び方向一方端の端面と蓋2003の内面とで挟み込まれて取り付けられる。
一方、可撓性部材2005’の内部には、分配タンク1008内での圧力変動が生じないときの膨張状態を維持するための付勢を行うスプリング等の弾性体(便宜上、図8に示した符号2002を用いる)が配置されている。
【0048】
以上の実施例においては、分配タンク1008内の圧力変動は、分配タンク1008におけるノズル並び方向一方端内部に進入した状態の円錐形状頭部を有する可撓性部材2005’の膨張、収縮変形により吸収されることになる。
当然のことではあるが、分配タンク1008は、その天面が傾斜しておらず、図8、10に示した例と同様に、分配タンク1008の嵩が大型化するのを防止することができる。
【符号の説明】
【0049】
1000 画像形成装置
1005 ヘッド部(ヘッドモジュール)
1006 ヘッド
1008 分配タンク
10080 可撓性部材取り付け用の穴
1009 サブタンク
1010 メインタンク
2000 ピストン
2001 パッキン
2002 弾性体
2003 蓋
2005,2005’ 可撓性部材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0050】
【特許文献1】特開2011−56689号公報
【特許文献2】特開2009−83378号公報
【特許文献3】特開2009−234151号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出する複数のノズルを有するヘッドユニットを複数並置した記録ヘッドに対して、液体タンクから供給される液体を分配タンクを介して加圧送液する構成を備え、該分配タンクには圧力変動を吸収するダンパ機構が設けられている画像形成装置において、
前記分配タンクにおける前記ノズルの並び方向一方端に前記ダンパ機構が連結されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記ダンパ機構は、前記分配タンク内に連通する空間内に配置されて該分配タンク内の圧力変動により摺動可能なピストンと該ピストンを所定位置に保持する弾性体を備えていることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記ダンパ機構は、前記分配タンク内に連通する空間が該分配タンク内の圧力変動に応じて膨張および収縮可能な可撓性部材を配置されて構成されていることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記可撓性部材は、前記分配タンクにおける前記ノズルの並び方向一方端内部もしくは外部に円錐形状の頭部を位置させて設けられていることを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記可撓性部材は、前記円錐形状の頭部が前記分配タンクに連通する空間内に位置する場合、該可撓性部材の容積を前記圧力変動が生じていない時点での所定容積に維持する弾性体を備えていることを特徴とする請求項3または4記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記可撓性部材は、フィルムで形成されていることを特徴とする請求項3乃至5のうちの一つに記載の画像形成装置。
【請求項1】
液滴を吐出する複数のノズルを有するヘッドユニットを複数並置した記録ヘッドに対して、液体タンクから供給される液体を分配タンクを介して加圧送液する構成を備え、該分配タンクには圧力変動を吸収するダンパ機構が設けられている画像形成装置において、
前記分配タンクにおける前記ノズルの並び方向一方端に前記ダンパ機構が連結されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記ダンパ機構は、前記分配タンク内に連通する空間内に配置されて該分配タンク内の圧力変動により摺動可能なピストンと該ピストンを所定位置に保持する弾性体を備えていることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記ダンパ機構は、前記分配タンク内に連通する空間が該分配タンク内の圧力変動に応じて膨張および収縮可能な可撓性部材を配置されて構成されていることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記可撓性部材は、前記分配タンクにおける前記ノズルの並び方向一方端内部もしくは外部に円錐形状の頭部を位置させて設けられていることを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記可撓性部材は、前記円錐形状の頭部が前記分配タンクに連通する空間内に位置する場合、該可撓性部材の容積を前記圧力変動が生じていない時点での所定容積に維持する弾性体を備えていることを特徴とする請求項3または4記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記可撓性部材は、フィルムで形成されていることを特徴とする請求項3乃至5のうちの一つに記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−82140(P2013−82140A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224103(P2011−224103)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]