説明

画像形成装置

【課題】モーターからタイミングローラーに至る間の動力伝達機構におけるバックラッシによる影響を効果的に低減して、記録シート間に生じる相対的な画像ずれを可能な限り抑制すること。
【解決手段】記録シートの先端を回転停止中のタイミングローラーのニップ部に衝合させた後、回転を開始し、前記記録シートをトナー像の転写位置に向って搬送する搬送装置を備えた画像形成装置において、上記モーターを起動しタイミングローラーを第1の回転速度で回転させて第1の記録シートを搬送し、搬送完了してモーターを停止した後、次に搬送する第2の記録シートを第1の回転速度とは異なる第2の回転速度で搬送する場合(ステップS2でNo)、第2の記録シートの搬送開始(ステップS4)前に、タイミングローラーを第2の回転速度または第1の回転速度よりも第2の回転速度に近い回転速度で空回転させる(ステップS11〜S13)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンターや複写機などの画像形成装置に関し、特に、タイミングローラーによる記録シートの搬送技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式で画像を形成する画像形成装置では、例えば、感光体ドラム上に形成されるトナー像を記録シートの正しい位置に転写するため、記録シートの先端を回転停止中のタイミングローラーのニップ部に衝合させて、一旦搬送を停止する。そして、感光体ドラムに形成されたトナー像(余白部分を含む)の先端と記録シートの先端とが転写位置で合うタイミングでタイミングローラーの回転を開始することによって記録シートを搬送し、当該トナー像を記録シートの正しい位置に転写するようにしている。
【0003】
タイミングローラーの回転動力源は、感光体ドラム等その他の回転駆動するモーターと共用されることが多い。タイミングローラーへは、動力伝達機構を介して前記モーターからの回転動力が伝達される。また、タイミングローラーの回転開始と回転停止の制御は、モーターを共用している関係上、前記動力伝達機構において、タイミングローラーの直前にクラッチを設け、当該クラッチのオン・オフ制御によりなされる。
【0004】
ところで、近年、単位時間当たりの画像形成枚数を向上させるため、システムスピードが向上している上、連続して搬送される記録シートの間隔(いわゆる、紙間)がより短くなってきており、クラッチのオン・オフ制御によってタイミングローラーの回転開始と回転停止の制御を行って、精度良く記録シートを当該タイミングローラーから繰出すことが困難になっている。
【0005】
そこで、感光体ドラム駆動用とタイミングローラー駆動用とでモーターを共通にしていた従来の機種において、感光体ドラム用とは別にタイミングローラー用のモーターを設け、上記動力伝達機構においてクラッチを取り除き、モーターのオン(起動)・オフ(停止)によって、タイミングローラーの回転開始と回転停止の制御を行うことが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−168976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記のような構成とした場合、一連の画像形成処理(以下、これを「ジョブ」と言う。)の次に、当該ジョブ(以下、「先行ジョブ」と言う。)とはシステムスピード(記録シートの搬送速度)の異なるジョブ(以下、「後続ジョブ」と言う。)を実行した場合、後続ジョブにおいて、1枚目と2枚目以降との間で記録シート上の画像形成位置に相対的なずれが生じてしまうことが判明した。
【0008】
本願の発明者が原因の究明に努めたところ、上記動力伝達機構におけるバックラッシにあることが分かった。モーターからタイミングローラーに至る動力伝達機構は、回転動力を伝えるため、歯車などの複数の部品が連結されてなる。連結部の各々は、回転方向のいわゆる遊び、すなわちバックラッシを有する。
このため、モーター停止後も前記各部品は、その慣性によってバックラッシの範囲で回転する。以下、モーターの停止後に部品各々の前記慣性によって回転する量を「惰性回転量」と言う。
【0009】
よって、モーターを再起動させた際、惰性回転量だけ余分に回転してから当該タイミングローラーの回転が開始される。すなわち、モーターの起動とタイミングローラーの回転開始との間に、前記惰性回転量の大きさに応じた分の時間差が生じる(以下、この時間差を「回転遅延時間」と言う。)。
惰性回転量は、モーターの回転速度が速い程(すなわち、記録シートの搬送速度が速い程)多くなり、回転速度が遅い程(すなわち、記録シートの搬送速度が遅い程)少なくなる。よって、回転遅延量は、搬送速度の速いジョブほど大きくなり搬送速度の遅いジョブほど小さくなる。
【0010】
このため、例えば、厚紙に画像形成する搬送速度の遅いジョブを終了した後、普通紙に画像形成する搬送速度の速い後続ジョブを開始した場合、後続ジョブの1枚目の記録シートにおける画像形成位置が、2枚目以降の記録シートにおける画像形成位置よりも、シート搬送方向上流側にずれてしまう。
このずれを解消するためには、各部品の寸法公差を厳しくして、連結部各々におけるバックラッシを少なくすることが考えられる。
【0011】
しかしながら、そうすると部品各々の歩留まりが低下すると共に、組立て代に余裕がなくなるため生産性が低下してしまう。また、歯車などにおけるバックラッシは、噛み合っている歯車同士の円滑な回転を実現するために必要不可欠なものであり、完全に無くすことはできない。
なお、上記の問題は、あるジョブが終了して一旦停止した後に、システムスピード(記録シートの搬送速度)の異なる別のジョブが続けて実行される場合に限らず、同一ジョブ内で記録シートの搬送速度が切り換えられる際にも生じる。
【0012】
本発明は、上記した課題に鑑み、動力伝達機構におけるバックラッシによる影響を効果的に低減して、上記画像ずれを可能な限り抑制し得る画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するため、本発明に係る画像形成装置は、記録シートの先端を回転停止中のタイミングローラーのニップ部に衝合させた後、回転を開始し、前記記録シートをトナー像の転写位置に向って搬送する搬送装置を備えた画像形成装置であって、前記搬送装置は、前記タイミングローラーに動力伝達機構を介して回転動力を伝達し、当該タイミングローラーを回転駆動するモーターと、前記モーターの回転を制御する制御手段と、を有し、前記制御手段は、前記モーターを起動し前記タイミングローラーを第1の回転速度で回転させて第1の記録シートを搬送し、搬送完了して前記モーターを停止した後、次に搬送する第2の記録シートを第1の回転速度とは異なる第2の回転速度で搬送する場合、当該第2の記録シートの搬送開始前に、前記タイミングローラーを第2の回転速度または第1の回転速度よりも第2の回転速度に近い回転速度で回転させた後停止させる空回転動作を実行することを特徴とする。
【0014】
また、前記第1の記録シートは、一の画像形成ジョブにおける最後の記録シートであり、前記第2の記録シートは、前記画像形成ジョブに後続する画像形成ジョブにおける最初の記録シートであることを特徴とする。
あるいは、前記第1の記録シートと前記第2の記録シートとは、一の画像形成ジョブにおいて連続する2枚の記録シートであることを特徴とする。
【0015】
また、前記制御手段は、前記空回転における前記モーターの停止から前記第2の記録シートの搬送を開始させるための前記モーターの起動までの時間と、当該第2の記録シート以降に連続する記録シートに対し、前記衝合と搬送を繰り返す際の前記モーターの停止から起動までの時間とが等しくなるように前記モーターを制御することを特徴とする。
さらに、前記搬送装置は、前記第2の回転速度による記録シートの搬送が標準に設定されており、前記制御手段は、第1の画像形成ジョブにおける最後の記録シートが、前記第1の回転速度で搬送された場合、当該第1の画像形成ジョブの終了に際し、前記タイミングローラーを第2の回転速度で空回転させると共に、前記第1の画像形成ジョブに続く第2の画像形成ジョブにおける最初の記録シートが第2の回転速度で搬送される場合には、当該最初の記録シートの搬送開始前の再度の空回転を実行しないことを特徴とする。
【0016】
上記の目的を達成するため、本発明に係る画像形成装置は、記録シートの先端を回転停止中のタイミングローラーのニップ部に衝合させた後、回転を開始し、当該タイミングローラーを第1の回転速度または当該第1の回転速度とは異なる第2の回転速度で回転させて前記記録シートをトナー像の転写位置に向って搬送する搬送装置を備えた画像形成装置であって、前記搬送装置は、前記タイミングローラーに動力伝達機構を介して回転動力を伝達し、当該タイミングローラーを回転駆動するモーターと、前記モーターの回転を制御する制御手段と、を有し、前記搬送装置は、第2の回転速度による記録シートの搬送が標準に設定されており、前記制御手段は、一の画像形成ジョブにおける最後の記録シートが、前記第1の回転速度で搬送された場合、当該一の画像形成ジョブの終了に際し、前記タイミングローラーを第2の回転速度で回転させた後停止させる空回転動作を実行することを特徴とする。
【0017】
また、前記第2の回転速度は、記録シートとして普通紙が搬送される場合であり、前記第1の回転速度は、記録シートとして普通紙よりも厚みが大きい厚紙が搬送される場合であって、前記第2の回転速度よりも前記第1の回転速度の方が遅いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
上記の構成からなる画像形成装置によれば、タイミングローラーを第1の回転速度で回転させて第1の記録シートを搬送し、搬送完了して前記モーターを停止した後、次に搬送する第2の記録シートを第1の回転速度とは異なる第2の回転速度で搬送する場合、当該第2の記録シートの搬送開始前に、前記タイミングローラーが第2の回転速度または第1の回転速度よりも第2の回転速度に近い回転速度で空回転される。
【0019】
これにより、第2の記録シートの搬送のためのモーター起動時における動力伝達機構の各連結部における状態(惰性回転量等)を、第2の記録シートの次の記録シート以降の搬送のためのモーター起動時における動力伝達機構の各連結部における状態(惰性回転量等)に、空回転しない場合よりも近づけることができる。このため、第2の記録シートの搬送開始の際の回転遅延時間を、第2の記録シートの次の記録シート以降の搬送開始の際の回転遅延時間に、空回転しない場合よりも近づけることができ、その結果、第2の記録シートと第2の記録シートの次の記録シートとの間の画像の相対的な位置ずれを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施の形態に係るタンデム型プリンターの概略構成を示す図である。
【図2】タイミングローラーおよびその駆動機構の概略構成を示す斜視図である。
【図3】モーター、動力伝達機構、およびタイミングローラーの端部部分の拡大斜視図である。
【図4】上記動力伝達機構におけるはすば歯車同士による連結部を示す図である。
【図5】上記動力伝達機構におけるピン結合による連結部を示す図である。
【図6】(a),(b),(c)は、上記動力伝達機構における平歯車とシャフトによる連結部を示す図であり、(d),(e)は、平歯車同士による連結部を示す図である。
【図7】記録シート間に相対的な画像の位置ずれが生じる理由を説明するための図である。
【図8】上記プリンターの制御部の概略構成の一部を示すブロック図である。
【図9】上記制御部のモーター駆動部のCPUにおいて実行されるプログラムのフローチャートである。
【図10】上記制御部における2つのCPU間でのやりとりを表したシーケンス図である。
【図11】上記モーター駆動部の制御により実現されるモーターの駆動態様の具体例について説明するための図である。
【図12】上記制御部のモーター駆動部のCPUにおいて実行される変形例に係るプログラムのフローチャートの一部である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る画像形成装置の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
<画像形成装置の全体構成>
図1は、実施の形態に係るタンデム型プリンター10(以下、単に「プリンター10」と言う。)の概略構成を示す図である。なお、ここでは、プリンターを例に取り上げているが、本発明は複写機やファクシミリ等の画像形成装置にも適用できる。
【0022】
図1に示すように、プリンター10は、筐体12内部に水平に架設され、矢印Aの方向に走行する転写ベルト14、転写ベルト14の走行方向に列設された4つの作像ユニット16C,16M,16Y,16K、各作像ユニットに対応して設けられた1次転写ローラー18C,18M,18Y,18K、および2次転写ユニット20を含み、各作像ユニット16C,16M,16Y,16Kによって形成された各色成分のトナー像を、一旦転写ベルト14に重ね合わせて転写した後、記録シートSに転写してカラー画像を形成する、いわゆる中間転写方式の画像形成装置である。
【0023】
作像ユニット16C,16M,16Y,16Kの各々は、像担持体である感光体ドラム22C,22M,22Y,22Kを中心としてその周囲に配された帯電ユニット24C,24M,24Y,24K、現像ユニット26C,26M,26Y,26Kを有している。作像ユニット16C,…,16Kの下方には、露光ユニット28が配されており、各感光体ドラム22C,…,22Kに向けて、光変調されたレーザー光LBが出射される。矢印Bの方向に回転される感光体ドラム22C,…,22Kの表面は、帯電ユニット24C,…,24Kによって一様に帯電された後、前記レーザー光LBによって露光されて、その表面に静電潜像が形成され、当該静電潜像は現像ユニット26C,26M,26Y,26Kによってトナー像に現像される。なお、各現像ユニット26C,…,26Kは、レーザー光の光変調色成分に対応して、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)のトナーを現像剤として感光体ドラム22C,…,22Kに供給する。
【0024】
各感光体ドラム22C,…,22Kに形成されたトナー像は、1次転写ローラー18C,…,18Kと感光体ドラム22C,…,22Kとの間に発生する電界の作用を受けて、走行する転写ベルト14上に順次転写される。
一方、記録シート搬送装置29(以下、単に「搬送装置29」と言う。)の第1給紙カセット30と第2給紙カセット32のいずれかから、所望種類、所望サイズの記録シートSが給紙される。
【0025】
第1給紙カセット30からは、第1ピックアップローラー34によって記録シートSが繰出され、繰出された記録シートSは、第1縦搬送ローラー38および第2縦搬送ローラー40によって、タイミングローラー42へと搬送される。第2給紙カセット32からは、第2ピックアップローラー36によって記録シートSが繰出され、第2縦搬送ローラー40によって、タイミングローラー42へと搬送される。
【0026】
搬送される記録シートSは、その先端が回転停止中のタイミングローラー42のニップ部に衝合される。衝合後も記録シートSは、タイミングローラー42よりも搬送方向下流側において当該記録シートSを挟持しているローラーによって、所定時間搬送される。その結果、記録シートSにループが形成される。これにより、記録シートSの搬送方向に対する斜め送り(スキュー)が補正される。
【0027】
そして、転写ベルト14上に転写されたトナー像(空白部分も含めて)と記録シートSの先端とが2次転写ユニット20による転写位置で合うタイミングで、タイミングローラー42用の後述のモーター64が起動されて当該タイミングローラー42の回転が開始され、タイミングローラー42によって、記録シートSが前記転写位置へと搬送される。
なお、タイミングローラー42に対し、搬送方向上流側直前に設けられたセンサー44は、搬送路を搬送されその検出位置を通過する記録シートSの搬送方向における先端および後端を検出するためのものである。上記したスキューの補正は、センサー44が記録シートSの先端を検出した時点から所定の時間、タイミングローラー42よりも搬送方向上流側において当該記録シートSを挟持しているローラーが回転されることよってなされる。
【0028】
2次転写ユニット20は、転写ベルト14上に重ね合わされたトナー像を、記録シートS上へ転写し、転写された記録シートS上のトナー像は、定着装置46によって定着される。定着の済んだ記録シートSは、排出ローラー48によって、排紙トレイ50へ排出される。
なお、本実施の形態では、第1給紙カセット30には厚紙が収納されており、第2給紙カセット32には普通紙が収納されている。普通紙は、例えば、坪量が64[g/m]〜90[g/m]の範囲の記録シートであり、厚紙は、坪量が普通紙よりも大きく、その厚みが普通紙よりも大きい記録シートである。また、記録シートSのタイミングローラー42による搬送速度は、厚紙を用いる場合は低搬送速度LSに、普通紙を用いる場合は低搬送速度LSよりも速い高搬送速度HSに設定される。タイミングローラー42による記録シートの搬送速度は、プリンター10のシステムスピードに他ならないため、以下、当該搬送速度とシステムスピードとを同義で用いる。よって、前記低搬送速度LSは低システムスピードLSと、前記高搬送速度HSは高システムスピードHSと言うことがある。
【0029】
プリンター10は、その上面の操作しやすい位置に、操作パネル52を備えている。操作パネル52は、液晶表示部の他、メニュー選択キー、カーソルキー、キャンセルキー等を備えており(いずれも不図示)、メニュー選択キーおよびカーソルキーの操作によって、液晶表示部に表示されるメニューを選択し、各種の設定を行うことができる。例えば、第1および第2給紙カセット30,32に収納する記録シートの種類やサイズを設定することができる。
【0030】
また、プリンター10は制御部54を有している。制御部54は、上記した各ユニットおよび各装置を統括的に制御して円滑なプリント動作を実現している。
<タイミングローラー>
図2は、タイミングローラー42およびその駆動機構の概略構成を示す斜視図である。
タイミングローラー42は、駆動ローラー56と従動ローラー58で構成される一対のローラー(ローラー対)からなる。駆動ローラー56は、アルミニウム製のパイプ材からなる芯金60に円筒状をしたゴム製のロール62を複数個、その長手方向に間隔をあけて嵌着したものである。従動ローラー58は、駆動ローラー56に対し、ばね等の弾性部材(不図示)によって径方向に押圧されていて、これにより駆動ローラー56と従動ローラー58間の当接部分にニップ部が形成されている。
【0031】
芯金60の一方の端部には、平歯車78が取着されている。
タイミングローラー42を構成する駆動ローラー56は、平歯車78を含む動力伝達機構66を介しモーター64の回転動力が伝達されて、回転駆動される。本例では、モーター64にはステッピングモーターが用いられる。
〔動力伝達機構〕
図3は、モーター64、動力伝達機構66、およびタイミングローラー42の端部部分の拡大斜視図である。
【0032】
モーター64の出力軸68には、はすば歯車70が取着されている。
はすば歯車70には、これよりも大きい径を有するはすば歯車72が歯合している。
はすば歯車72の中心に開設された軸孔(図3には現れていない)には、シャフト74が挿入されている。はすば歯車72の回転動力は、後述する連結ピン86によってシャフト74に伝達される。
【0033】
シャフト74の端部部分は、後述するように横断面が「D」字状になるように、その周面の一部がカットされている(このカットされたシャフト74端部部分を「Dカット部74A」と称することとする。)。
シャフト74のDカット部74Aには、同じく横断面が「D」字状をした軸孔を有する平歯車76が、当該軸孔にDカット部74が挿入される形で取り付けられている。
【0034】
そして、平歯車76には、駆動ローラー56の一端部部分に取着された平歯車78が歯合している。
上記の構成からなる動力伝達機構66において、モーター64が起動されて出力軸68が矢印Cの向きに回転すると、これに伴って、はすば歯車70も矢印Cの向きに回転する。はすば歯車70が矢印Cに向きに回転すると、これと歯合しているはすば歯車72は、矢印Eの向きに回転する。
【0035】
はすば歯車72の回転に伴って、シャフト74、ひいては平歯車76も矢印Eの向きに回転する。平歯車76が矢印Eの向きに回転すると、これと歯合している平歯車78は、矢印Fの向きに回転し、これに伴って駆動ローラー56も矢印Fの向きに回転する。そして、駆動ローラー56に当接している従動ローラー58は矢印Gの向きに回転する。
以上のような経路によって、モーター64の回転動力が伝達されてタイミングローラー42が回転駆動される。
【0036】
〔動力伝達機構における遊びによる動力伝達遅れ等〕
動力伝達機構66の動力伝達経路上の隣接する部材間(各連結部)において、回転方向のいわゆる遊びによる動力伝達の遅れについて、図4〜図6を参照しながら説明する。
(i)はすば歯車70−はすば歯車72
図4を参照しながら、この連結部における遊びについて説明する。この連結部において駆動側となるはすば歯車70が矢印Cの向きに回転している間、被動側となるはすば歯車72は、はすば歯車70からスラスト方向にも力を受ける。はすば歯車72は、後述するように、シャフト74にすきまばめの嵌め合いで嵌められているため、前記スラスト方向の力を受けて矢印Hの向きに移動する。この移動で、はすば歯車72がはすば歯車70から外れないようにシャフト74にはストッパーとしてEリング80が取り付けられており、駆動中におけるはすば歯車72の移動を制限している。よって、駆動中は、はすば歯車72の側面がEリング80に当接して両者間の軸心方向の間隙82は無くなっている。
【0037】
はすば歯車70の回転が停止されると、はすば歯車72は、惰性で回転を続ける。はすば歯車72は、両歯車間のバックラッシに相当する分の回転の後、はすば歯車70からスラスト方向の反力を受けて、矢印Hと反対の矢印Jの向きに移動する(このときの移動量を「惰性移動量」と称することとする。)。惰性移動量は、回転停止前のはすば歯車72の回転速度が速い程(慣性が大きいため)、多くなる。最大惰性移動量を制限するため、Eリング80とは反対側にもEリング84が設けられている。
【0038】
はすば歯車70の回転が再開されると、はすば歯車70が前記バックラッシに相当する分回転した後、はすば歯車72は回転を開始すると同時に、矢印Hの向きに移動し始める。そして、はすば歯車72がEリング80に当接した後、はすば歯車72は、減速比に応じた定常回転を開始する。
すなわち、はすば歯車70の回転が開始されると、はすば歯車72は惰性移動量分を矢印Hの向きに移動した後、定常回転し始める。したがって、はすば歯車70の回転開始から、はすば歯車72の定常回転開始までの間に惰性移動量に応じた分の時間差が生じる。この惰性移動量は、上記の通り、回転停止前の回転速度による。その結果、回転停止前の回転速度が速い程、前記時間差が長くなり、遅い程、前記時間差が短くなる。
【0039】
(ii)はすば歯車72−シャフト74
図5を参照しながら、この連結部における遊びについて説明する。この連結部においては、はすば歯車72が駆動側となり、シャフト74が被動側となる。
図5(a)に示すように、シャフト74には、径方向にピン孔74Bが開設されており、ピン孔74Bには、連結ピン86が遊挿されている。はすば歯車72の一側面には、径方向に長いピン溝72Aが形成されていて、連結ピン86のシャフト74から露出した部分がピン溝72Aに埋没している。ピン孔74Bの径と連結ピン86の径の間、および連結ピン86の径とピン溝72Aの幅の間には、それぞれ、当該連結部における組立て性を考慮して、その大きさに適当な差を設けている。
【0040】
上記の構成において、はすば歯車72が矢印Eの向きに回転すると、図5(b)に示すように、ピン溝72Aの内壁が連結ピン86の両端角に当接して、連結ピン86が同矢印Eの向きに回転する。連結ピン86が回転すると、連結ピン86の外周面がシャフト74のピン孔74Bの開口部周縁に当接し、これにより、シャフト74も矢印Eの向きに回転する。
【0041】
はすば歯車72の回転が停止されると、連結ピン86とシャフト74とは、惰性で回転を続ける。この惰性による回転量は、回転停止前の連結ピン86とシャフト74の回転速度が速い程(慣性が大きいため)、多くなる。最大に回転した状態は、図5(c)に示す通りである。
はすば歯車72の回転が再開されると、はすば歯車72が上記した惰性による回転量に応じた分回転した後、シャフト74に動力が伝達されるようになって、シャフト74が回転し始める。
【0042】
したがって、はすば歯車72の回転開始から、シャフト74の回転開始までの間に上記惰性による回転量に応じた分の時間差が生じる。この惰性による回転量は、上記の通り、回転停止前の回転速度による。その結果、回転停止前の回転速度が速い程、前記時間差が長くなり、遅い程、前記時間差が短くなる。
(iii)シャフト74−平歯車76
図6(a)〜図6(c)を参照しながら、この連結部における遊びについて説明する。この連結部においては、シャフト74が駆動側となり、平歯車76が被動側となる。
【0043】
上記した通り、図6(a)に示すように、平歯車76は横断面が「D」字状をした軸孔76Aを有し、シャフト74はDカット部74Aを有していて、Dカット部74Aが軸孔76Aに挿入されており、この部分で、平歯車76からシャフト74へ回転動力が伝達されるようになっている。
シャフト74が矢印Eの向きに回転すると、図6(b)に示すように、両者のDカット面の右端部同士が当接して、平歯車76に動力が伝達され、平歯車76も矢印Eの向きに回転する。
【0044】
シャフト74の回転が停止されると、平歯車76は惰性で回転を続ける。この惰性による回転量は、回転停止前の平歯車76の回転速度が速い程(慣性が大きいため)、多くなる。最大に回転した状態は、図6(c)に示す通りである。
シャフト74の回転が再開されると、シャフト74が上記した惰性による回転量に応じた分回転し、図6(b)に示すような状態になって初めて、平歯車76が回転し始める。
【0045】
したがって、シャフト74の回転開始から、平歯車76の回転開始までの間に上記惰性による回転量に応じた分の時間差が生じる。この惰性による回転量は、上記の通り、回転停止前の回転速度による。その結果、回転停止前の回転速度が速い程、前記時間差が長くなり、遅い程、前記時間差が短くなる。
(iv)平歯車76−平歯車78
図6(d)、図6(e)を参照しながら、この連結部における遊びについて説明する。この連結部では、平歯車76が駆動側になり、平歯車78が被動側になる。この連結部における遊びは、両平歯車間のバックラッシである。
【0046】
図6(d)に示すのは、平歯車76が回転し、これと歯合している平歯車78に動力が伝達されて、平歯車78が矢印Fの向きに回転している状態である。
平歯車76の回転が停止されると、平歯車78は惰性によりバックラッシの範囲で回転を続ける。この惰性による回転量は、回転停止前の平歯車78の回転速度が速い程(慣性が大きいため)、多くなる。最大に回転した状態は、図6(e)に示す通りである。
【0047】
平歯車76の回転が再開されると、平歯車76が上記した惰性による回転量に応じた分回転し、図6(d)に示すような状態になって初めて、平歯車78が回転し始める。
したがって、平歯車76の回転開始から、平歯車78の回転開始までの間に上記惰性による回転量に応じた分の時間差が生じる。この惰性による回転量は、上記の通り、回転停止前の回転速度による。その結果、回転停止前の回転速度が速い程、前記時間差が長くなり、遅い程、前記時間差が短くなる。
【0048】
以上、各連結部において駆動側の回転開始から被動側の回転開始までに生じる時間差について説明したが、動力伝達機構66全体においてモーター64の起動(回転開始)からタイミングローラー42の回転開始までは、各連結部で生じる上記時間差の累積分に相当する時間差が生じるものと考えられる。よって、回転停止前のモーターの回転速度(ひいては、タイミングローラーの回転速度)が速い程、その次のモーターの起動からタイミングローラーの回転開始までの時間差が長くなり、回転停止前のモーターの回転速度(ひいては、タイミングローラーの回転速度)が遅い程、その次のモーターの起動からタイミングローラーの回転開始までの時間差が短くなる。
【0049】
ここで、モーター64の起動からタイミングローラー42の回転開始までに時間差が生じることを「回転遅延」と言い、当該時間差を「回転遅延時間」と言うこととする。
〔画像の位置ずれ〕
タイミングローラーによる記録シートの搬送速度(タイミングローラーの回転速度)が切り替わると、上記回転遅延に起因して、切り替わり直後の記録シート上に形成されるトナー画像とその次以降の記録シート上に形成されるトナー画像との間に相対的なずれが生じる原因について、さらに詳しく説明する。
【0050】
図7は、横軸に時間を縦軸にタイミングローラーの回転速度(実線)を採ったグラフであり、これにタイミングローラーを駆動するモーターの動作線図(破線)を重ねたものである。当該動作線図における縦軸は、前記モーターの回転速度である。なお、タイミングローラーとモーターとで縦軸の回転速度の尺度は異なっている。また、図7は、上記のずれを説明するために概念的に作図したものであり、両回転速度共に正確なものではない。
【0051】
図7は、厚紙に画像形成するジョブの後に、普通紙に画像形成するジョブが続いた場合を示している。ここで、厚紙に画像形成する場合のタイミングローラーの回転速度(定常回転速度)をPL、普通紙に画像形成する場合のタイミングローラーの回転速度(定常回転速度)をPH(>PL)とする。
最後の厚紙のグラフにあるように、モーターの起動から回転遅延時間T1後にタイミングローラーの回転が開始されている。また、モーターの停止後も惰性によりタイミングローラーが時間D1の間、回転を続けている。
【0052】
厚紙のジョブの終了後に普通紙のジョブを実行すると、その1枚目の記録シートの際には、回転速度PLに応じ、モーターの起動から回転遅延時間T1後にタイミングローラーの回転が開始される。一方、モーターの停止後は、厚紙の場合よりも回転速度が速い分(PH>PL)、D1よりも長くタイミングローラーが回り続ける(時間D2)。
そして、普通紙の2枚目では、1枚目の回転速度PHに応じ、モーターの起動から回転遅延時間T2(>T1)後にタイミングローラーの回転が開始される。3枚目以降も、その直前の記録シート(普通紙)の回転速度PHに応じ、モーターの起動から回転遅延時間T2後にタイミングローラーの回転が開始される。
【0053】
記録シートをタイミングローラーからトナー像の転写位置へと搬送を開始するタイミングは、モーターの起動により計られる。よって、回転遅延時間が長い程、記録シートが前記転写位置に到達するのが遅くなるため、転写位置において、相対的にトナー画像が先行することとなる。その結果、記録シート上にトナー像は、搬送方向における先端寄りに形成されることとなる。
【0054】
ここで、普通紙の1枚目と2枚目を見ると、回転遅延時間が異なるため(T1<T2)、1枚目と2枚目とでは、普通紙上に形成される(転写される)トナー像は、2枚目の方が1枚目よりも当該普通紙の先端寄りに形成されることとなり、用紙間で画像の相対的なずれが生じる。なお、2枚目以降は、いずれも回転遅延時間が同じであるため(T2)記録シート間における画像の相対的なずれはほとんど生じない。
【0055】
図示は省略するが、上記の場合とは逆に、普通紙に画像形成するジョブの後に、厚紙に画像形成するジョブが続いた場合には、厚紙の2枚目以降の方が、厚紙の1枚目よりも当該厚紙の後端寄りに形成されることとなり、1枚目と2枚目以降とで画像の相対的なずれが生じる。
上記の問題に対処するため、本実施の形態では、タイミングローラーによる記録シートの搬送速度が切り換わる際には、切り換え後の最初の記録シートの搬送の開始前に、タイミングローラーを切り換え後の回転速度で一旦回転させた後に停止させる空回転動作を実行させることとした。
【0056】
図7の例で言うと、厚紙の最後と普通紙の1枚目の間に、回転速度PHでタイミングローラーを回転させた後に停止させる。こうすることにより、普通紙の1枚目における回転遅延時間はT2となるため、2枚目以降の回転遅延時間T2と揃うこととなり、上記した画像ずれを可能な限り抑制することができる。
<制御部>
上記空回転を含む制御を実行する制御部54について図8を参照しながら説明する。
【0057】
図8は、制御部54の概略構成を示すブロック図である。
本図に示すように、制御部54は、画像データ受信部102、画像データ書込み部104、画像メモリ106、レーザーダイオード駆動部108、モーター駆動部110、CPU112、およびROM114で構成される。
画像データ受信部102は、CPU112の指示により、パーソナルコンピュータなどの外部機器から受信した画像形成ジョブ中の画像データにエッジ強調などの各種の補正処理施を施した後、当該画像データを画像データ書込み部104に送信する。
【0058】
画像データ書込み部104は、CPU112の指示により、画像データ受信部102から送信される画像データを画像メモリ106に書き込む。
レーザーダイオード駆動部108は、CPU112の指示にしたがい、画像メモリ106から画像データを読み出し、当該データに基づいて、露光ユニット28においてC,M,Y,Kの各色毎に設けられたレーザーダイオード(不図示)を変調駆動する。
【0059】
モーター駆動部110は、モーター64の起動、停止、および回転速度の制御を行う。モーター駆動部110は、CPU116を有しており、CPU112の指示を受けて前記制御を実行する。モーター駆動部110は、また、タイミングローラー42で搬送した直近の記録シートの搬送速度(システムスピード)を記憶する設定速度記憶部118を有している。
<モーター回転制御>
次に、モーター駆動部110で実行されるモーター64の回転制御について、図9、図10を参照しながら説明する。
【0060】
図9は、モーター駆動部110のCPU116(図8)で実行されるモーター回転制御プログラムのフローチャートであり、図10は、当該プログラムの実行に際しCPU116とCPU112との間でなされるやりとりを表したシーケンス図である。当該シーケンス図のCPU116側においては、前記フローチャートにおいて対応するステップ番号を記載している。
【0061】
なお、本プログラムは、新たな画像形成ジョブが受け付けられると、CPU112の指示によって起動される。また、本プログラムの起動時において、設定速度記憶部118には、後の説明から理解できるように、直前に終了した画像形成ジョブにおける最終の記録シートの搬送速度が記憶されている。
CPU112は、画像データ受信部102の受信する画像形成ジョブにおいて、ページ毎に設定されているヘッダー情報を読み取り、読み取ったヘッダー情報から次に画像形成するページ(記録シート)のシステムスピード(搬送速度)を決定し、決定したシステムスピード(搬送速度)をCPU116に通知する(q1)。具体的には、ヘッダー情報には、そのページを印刷する記録シートが普通紙であるのか厚紙であるのかの情報が含まれている。そして、普通紙であれば、高システムスピードHS(高搬送速度HS)と決定し、厚紙であれば、低システムスピードLS(低搬送速度LS)と決定する。
【0062】
また、ヘッダー情報には、そのページ(記録シート)がその画像形成ジョブにおける最後のページ(最後の記録シート)である場合には、その旨の情報が含まれる。最後の記録シートである場合には、CPU112は、CPU116に対し、システムスピード(搬送速度)と共に、最後の記録シートである旨を通知する。
CPU116は、当該通知を受信すると(ステップS1でYes)、受信したシステムスピード(搬送速度)と設定速度記憶部118に設定されている搬送速度とを比較し(ステップS2)、同じであれば(ステップS2でYes)、CPU116は、CPU112からならされるモーター64の回転指示(q3)を待つ(ステップS3)。
【0063】
CPU112は、回転停止中のタイミングローラー42のニップ部にその先端が衝合されている記録シートの先端が、2次転写ユニット20の転写位置において、回転走行する転写ベルト14上に形成されたトナー像(余白部分を含む)の先端と合うタイミングで、CPU116に対しモーター64の回転指示を行い(q3)、当該指示を受けると(ステップS3でYes)、CPU116はモーター64を起動し(ステップS4)、設定速度記憶部118に記憶されている搬送速度に対応する回転速度でモーター64を回転させる。
【0064】
これにより、タイミングローラー42による記録シートの搬送が開始される。
搬送される記録シートの当該搬送方向における後端がタイミングローラー42を通過したとみなされると(ステップS5でYes)、タイミングローラー42による当該記録シートの搬送が完了したとみなして、CPU116は、モーター64を停止する(ステップS6)。なお、ステップS5において、記録シートの後端がタイミングローラー42を通過したとみなされるのは、センサー44(図1)が記録シートの後端を検出した時から所定時間経過時である。当該所定時間は、当該後端が、センサー44の検出位置からタイミングローラー42のニップ部まで移動するのに要する時間である。当該移動時間は、センサー44の検出位置からタイミングローラー42のニップ部までの搬送経路上の距離と搬送速度とから算出でき、予めROM114(図8)に格納されている。
【0065】
CPU116は、CPU112からステップS1で「最後の記録シート」である旨の通知を受け取っていた場合(ステップS7でYes)には、当該プログラムを終了し、受け取っていない場合(ステップS7でNo)、CPU112から、次に画像形成するページ(記録シート)のシステムスピード(搬送速度)の通知を待つ(ステップS1)。
一方、ステップS2において、受信したシステムスピード(搬送速度)と設定速度記憶部118に設定されている搬送速度とが異なると判定した場合(ステップS2でNo)、CPU116は、設定速度記憶部118に記憶されている搬送速度を、今回受信した搬送速度に書き換える(ステップS8)と共に、CPU112に対し、上述した空回転の指示を要請する(ステップS9)。
【0066】
空回転の指示の要請を受けたCPU112は、第1給紙カセット30および第2給紙カセット32のいずれかから給紙される記録シートの先端がタイミングローラーのニップ部に到達する前に当該空回転が終了するようなタイミングで、CPU116に対し空回転指示(q2)を行う。CPU116は、CPU112から空回転指示(q2)を受けると(ステップS10でYes)、モーター64を起動し(ステップS11)、速度設定記憶部118に記憶されている搬送速度に対応する回転速度でモーター64を回転させる。モーター64の起動から所定時間Tkが経過すると(ステップS12でYes)、CPU116は、モーター64を停止する。所定時間Tkは、タイミングローラー42が速度設定記憶部118に記憶されている搬送速度に対応する速度で定常回転するのに必要最小限であることが好ましい。
【0067】
そして、ステップS3に進み、CPU116は、CPU112から、タイミングローラー42による記録シート搬送開始のためのモーター64の回転指示(q3)を待つ。
以降、上記した処理が最後の記録シートの搬送が終了するまで(ステップS7でYes)まで繰り返される。
<モーターの駆動態様の具体例>
以上の制御により実現されるモーター64の駆動態様の具体例について、図11を参照しながら説明する。
【0068】
図11(a)〜図11(d)は、いずれも、横軸に時間を縦軸にモーター64の回転速度(回転数)を採ったモーター64の動作線図である。なお、縦軸に記したRLは、厚紙に画像形成する場合にタイミングローラー42を前記回転速度PLで回転させる際の回転速度であり、RHは、普通紙に画像形成する場合にタイミングローラー42を前記回転速度PHで回転させる際の回転速度である。なお、RLとRHとは、言うまでも無くRH>RLの関係にある。
【0069】
以下、図11(a)〜図11(d)に示す具体例について、図9のフローチャートと対応をとりながら説明する。
図11(a)は、厚紙に画像形成するジョブ(以下、「厚紙ジョブ」と言う。)に、普通紙に画像形成する別個のジョブ(以下、「普通紙ジョブ」と言う。)が続いた場合を示している。
【0070】
厚紙ジョブの最後の記録シートの搬送が終了した時点において、速度設定記憶部118(図8)には、低搬送速度LSが記憶されている。普通紙ジョブの1枚目でCPU112からCPU116には、高搬送速度HS(高システムスピードHS)が通知される(ステップS1)。通知される搬送速度は、前回の(すなわち、厚紙ジョブの最後の記録シートの)搬送速度(速度設定部記憶部118に記憶されている搬送速度)とは異なるため(ステップS2でNo)、普通紙ジョブの1枚目の記録シートの搬送開始(ステップS4)前に、当該普通紙の搬送速度(高搬送速度HS)でタイミングローラーの空回転が実行される(ステップS11〜S13)。
【0071】
これにより、普通紙ジョブの1枚目における回転遅延時間はT2(図7)となる。普通紙ジョブの2枚目以降の搬送速度は変更されないため、2枚目以降における回転遅延時間もT2(図7)となる。その結果、普通紙ジョブの1枚目と2枚目以降との間において、記録シートに形成される(転写される)トナー像の記録シート搬送方向における相対的な位置ずれを可能な限り抑制することができる。
【0072】
このように、本実施の形態によれば、システムスピード(タイミングローラーによる記録シートの搬送速度)の異なる画像形成ジョブが連続した場合でも、後の画像形成ジョブにおいて1枚目と2枚目以降との間における画像の相対的な位置ずれを可能な限り抑制することができる。
図11(b)は、一の画像形成ジョブ中において、厚紙に画像を形成する場合と普通紙に画像を形成する場合とが混在するジョブ(以下、「混在ジョブ」と言う。)を示している。本例は、1枚目と2枚目が厚紙で、3枚目と4枚目が普通紙の場合である。
【0073】
2枚目の記録シート(厚紙)の搬送が終了した時点で、速度設定記憶部118(図8)には、低搬送速度LSが記憶されている。3枚目において、CPU112からCPU116には、高搬送速度HS(高システムスピードHS)が通知される(ステップS1)。通知される搬送速度は、前回の(すなわち、2枚目の厚紙の)搬送速度(速度設定部記憶部118に記憶されている搬送速度)とは異なるため(ステップS2でNo)、3枚目の普通紙の搬送開始(ステップS4)前に、当該普通紙の搬送速度(高搬送速度HS)でタイミングローラーの空回転が実行される(ステップS11〜S13)。
【0074】
これにより、3枚目における回転遅延時間はT2(図7)となる。4枚目の搬送速度は変更されないため、当該4枚目における回転遅延時間もT2(図7)となる。その結果、3枚目と4枚目以降との間において、記録シートに形成される(転写される)トナー像の記録シート搬送方向における相対的な位置ずれを可能な限り抑制することができる。
このように、本実施の形態によれば、混在ジョブにおいてシステムスピード(タイミングローラーによる記録シートの搬送速度)が切り替わった後の1枚目と2枚目以降との間における画像の相対的な位置ずれを可能な限り抑制することができる。
【0075】
図11(c)は、図11(a)のケースにおいて、空回転の際のモーター64の停止から1枚目の記録シート搬送のためのモーター64の起動までの時間Taと、1枚目以降の記録シートの搬送において、一の記録シートの搬送終了の際のモーター64の停止からその次の記録シートの搬送のためのモーター64の起動までの時間Tbとを等しくした例である。
【0076】
TaがTbよりも大幅に長い場合、空回転が終了して動力伝達機構の各連結部の動きが一旦止まった後でも、時間Taが経過する間に、例えば、筐体12内で生じる振動などが原因で、各連結部を構成する部材が回転してしまい、1枚目の記録シートの搬送のためのモーター64起動時における動力伝達機構の各連結部における状態が2枚目以降の記録シートの搬送のためのモーター64起動時における動力伝達機構の各連結部における状態と異なってしまう場合が生じる。
【0077】
しかし、上記のようにすることで、1枚目の記録シートの搬送のためのモーター64起動時における動力伝達機構の各連結部における状態(惰性回転量等)と2枚目以降の記録シートの搬送のためのモーター64起動時における動力伝達機構の各連結部における状態(惰性回転量等)とをできるだけ揃えられるため、1枚目の記録シートと2枚目以降の記録シートの場合とで回転遅延時間をより等しくすることができる。その結果、1枚目と2枚目以降との間の画像の相対的な位置ずれを一層抑制することが可能となる。
【0078】
なお、TaとTbとを等しくすることは、CPU112とCPU116が協同して、モーターの停止(ステップS13)およびモーターの起動(ステップS4)、並びにモーターの停止(ステップS6)およびモーターの起動(ステップS4)の各タイミングを図ることにより、モーターの停止(ステップS13)からモーターの起動(ステップS4)までの時間(Ta)とモーターの停止(ステップS6)からモーターの起動(ステップS4)までの時間(Tb)とを等しくすることで実現できる。
<変形例>
図11(d)に、変形例に係る回転制御を実行した際の動作線図を示す。
【0079】
本変形例は、記録シートとして普通紙を用いることが標準として設定されている場合、すなわち、高搬送速度HSが記録シートの搬送速度として標準に設定されている場合である。厚紙よりも普通紙の方が、使用頻度が高い場合にこの設定がなされる。
上記の設定の下、あるジョブにおける最終の記録シートが厚紙であった場合には、当該最終の記録シートの搬送完了後に、タイミングローラー42を回転速度PHで空回転させる。
【0080】
こうすることにより、厚紙を用いたジョブの次に、時間をおいて、普通紙を用いたジョブが実行される際に、あらためて空回転をすることが不要になるため、1枚目の記録シートのタイミングローラーからの搬送開始を早めることができ、もって、1枚目の記録シートに対する画像形成時間(FCOT/FPOT)を徒に長くすることがない。
上記の制御を実行するためのプログラムについて、図12に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0081】
図12は本変形例に係るプログラムのフローチャートの一部であり、図9に示すフローチャートのステップS7以降に実行されるステップを記したものである。すなわち、変形例に係るプログラムは、図9のステップS1〜S13および図12のステップS14〜S18からなる。
CPU116は、CPU112からステップS1で「最後の記録シート」である旨の通知を受け取っていた場合(ステップS7でYes)には、CPU116は、速度設定記憶部118に記憶されているのが高搬送速度HSか否かを確認する(ステップS14)。
【0082】
高搬送速度HSの場合は(ステップS14でYes)、当該プログラムを終了する。
一方、低搬送速度LSの場合は(ステップS14でNo)、設定速度記憶部118の設定速度を高搬送速度HSに書き換えた(ステップS15)後、高回転速度PHでタイミングローラー42を空回転させて(ステップS16,S17,S18)、当該プログラムを終了する。なお、ステップS16〜S18の処理は、図9におけるステップS11〜S13の処理と同様なので、その詳細な説明については省略する。
【0083】
そして、当該プログラム終了後の次のジョブが普通紙を用いるジョブの場合には、(前回のジョブの最終の記録シートが厚紙であったにもかかわらず)、当該次のジョブの最初の記録シート搬送開始前の再度の空回転は実行されないため(ステップS2でYes(図9))
当該最初の記録シートに対する画像形成時間(FCOT/FPOT)を徒に長くすることがないのである。
【0084】
なお、普通紙よりも厚紙の使用頻度が高い場合においては、上記とは反対に、記録シートとして厚紙が標準として設定される場合がある。この場合には、ステップS14(図12)で、速度設定記憶部118に記憶されているのが低搬送速度LSか否かを確認し、高搬送速度HSの場合は(ステップS14でNo)、設定速度記憶部118の設定速度を標準の低搬送速度LSに書き換えた(ステップS15)後、低回転速度PLでタイミングローラー42を空回転させて(ステップS16,S17,S18)、当該プログラムを終了することとなる。
【0085】
もっとも、記録シートとして厚紙が標準として設定されている場合であって、あるジョブにおける最終の記録シートが普通紙であった場合には、当該普通紙のジョブ終了後の低回転速度PLによる空回転は、必ずしも必要ではない。
普通紙に続いて厚紙に画像形成する場合には、定着装置46における定着温度を普通紙の場合よりも昇温させて高めにする。この昇温中に、低回転速度PLによる空回転が実行できるため、敢えて、前もって空回転をしておく必要性に乏しいからである。
【0086】
なお、上記の変形例におけるプログラムは、図9のステップS1〜S13および図12のステップS14〜S18からなっており、制御部54は、ステップS1〜S18を実行したが、これに限らず、制御部54は、図12に示すステップに相当するステップのみを実行するようにしても構わない
すなわち、記録シートとして普通紙を用いることが標準として設定されている場合、すなわち、高搬送速度HSが記録シートの搬送速度として標準に設定されている場合に、あるジョブにおける最終の記録シートが厚紙であった場合(最終の記録シートの搬送速度が低搬送速度LSであった場合)には、当該最終の記録シートの搬送完了後に、タイミングローラー42を回転速度PHで空回転させる(当該あるジョブの終了に際し、タイミングローラー42を回転速度PHで空回転させる)のである。
【0087】
このようにすることの利点等は、上記変形例の場合と同様である。
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は上記した形態に限らないことは勿論であり、例えば、以下のような形態とすることもできる。
(1)上記実施の形態では、給紙カセットを2段に設け、厚紙と普通紙とを記録シートとして用い、記録シートの搬送速度は2速としたが、これに限らず、給紙カセットを3段以上設け、また、記録シートの種類を増やして、記録シートの搬送速度を3速以上としても構わない。
【0088】
この場合でも、記録シートの搬送速度(タイミングローラーの回転速度)が切り換わる際は、切り換わり後の1枚目の記録シートのタイミングローラーによる搬送開始前に、当該タイミングローラーを切り換え後の回転速度で空回転することとする。この制御は、図9に示すフローチャートのプログラムにより実現できる。
(2)上記実施の形態では、記録シートの種類に応じて記録シートの搬送速度(システムスピード)を変更したが、これに限らず、モノクロ画像を形成する場合とカラー画像を形成する場合とで記録シートの搬送速度(システムスピード)を変更しても構わない。この場合、例えば、モノクロ画像を形成する場合よりもカラー画像を形成する場合の方が記録シートの搬送速度(システムスピード)を遅くする。
(3)上記実施の形態では、システムスピード(記録シートの搬送速度)が切り換わる際には、切換え後のシステムスピードによる記録シートの搬送開始の前に、切換え後のシステムスピードに対応する回転速度でタイミングローラー42を空回転させた。換言すると、モーター64を起動してタイミングローラー42を第1の回転速度で回転させ第1の記録シートの搬送が完了してモーター64を停止した後、次に搬送する第2の記録シートを第1の回転速度とは異なる第2の回転速度で搬送する場合、当該第2の記録シートの搬送開始前に、タイミングローラー42を第2の回転速度で空回転させることとした。
【0089】
しかしながら、空回転の際のタイミングローラー42の回転速度は、第2の回転速度に限らず、第1の回転速度よりも第2の回転速度に近い回転速度としても構わない。
このようにすることで、第2の記録シートの搬送のためのモーター64起動時における動力伝達機構66の各連結部における状態(惰性回転量等)を、第2の記録シートの次の記録シート以降の搬送のためのモーター64起動時における動力伝達機構66の各連結部における状態(惰性回転量等)に、空回転しない場合よりも近づけることができる。このため、第2の記録シートの搬送開始の際の回転遅延時間を、第2の記録シートの次の記録シート以降の搬送開始の際の回転遅延時間に、空回転しない場合よりも近づけることができる。その結果、第2の記録シートと第2の記録シートの次の記録シートとの間の画像の相対的な位置ずれを、空回転しない場合よりも少なくすることができる。
(4)上記実施の形態ではプリンターを例に説明したが、複写機の場合には、画像データ受信部(図8)は、画像読取装置(スキャナー)から画像形成ジョブを受信する。また、この場合の記録シートの種類は操作パネルを介して受け付けられ、受け付けられた記録シートの種類(例えば、厚紙や普通紙)に応じて、当該記録シートの搬送速度(システムスピード)が決定される。
【0090】
また、操作パネルを介してなされる、モノクロコピー指示とカラーコピー指示とに応じて記録シートの搬送速度(システムスピード)を決定することとしても構わない。
(5)上記実施の形態では、タイミングローラーの回転駆動源として、ステッピングモーターを用いたが、これに限らず、例えばDCモーターを用いても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明に係る画像形成装置は、複写機、プリンター、ファクシミリ、あるいはこれらの機能を有する複合機に好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0092】
10 タンデム型プリンター
29 記録シート搬送装置
42 タイミングローラー
64 モーター
66 動力伝達機構
112,116 CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録シートの先端を回転停止中のタイミングローラーのニップ部に衝合させた後、回転を開始し、前記記録シートをトナー像の転写位置に向って搬送する搬送装置を備えた画像形成装置であって、
前記搬送装置は、
前記タイミングローラーに動力伝達機構を介して回転動力を伝達し、当該タイミングローラーを回転駆動するモーターと、
前記モーターの回転を制御する制御手段と、
を有し、
前記制御手段は、前記モーターを起動し前記タイミングローラーを第1の回転速度で回転させて第1の記録シートを搬送し、搬送完了して前記モーターを停止した後、次に搬送する第2の記録シートを第1の回転速度とは異なる第2の回転速度で搬送する場合、当該第2の記録シートの搬送開始前に、前記タイミングローラーを第2の回転速度または第1の回転速度よりも第2の回転速度に近い回転速度で回転させた後停止させる空回転動作を実行することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第1の記録シートは、一の画像形成ジョブにおける最後の記録シートであり、前記第2の記録シートは、前記画像形成ジョブに後続する画像形成ジョブにおける最初の記録シートであることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1の記録シートと前記第2の記録シートとは、一の画像形成ジョブにおいて連続する2枚の記録シートであることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記空回転における前記モーターの停止から前記第2の記録シートの搬送を開始させるための前記モーターの起動までの時間と、当該第2の記録シート以降に連続する記録シートに対し、前記衝合と搬送を繰り返す際の前記モーターの停止から起動までの時間とが等しくなるように前記モーターを制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記搬送装置は、前記第2の回転速度による記録シートの搬送が標準に設定されており、
前記制御手段は、
第1の画像形成ジョブにおける最後の記録シートが、前記第1の回転速度で搬送された場合、
当該第1の画像形成ジョブの終了に際し、前記タイミングローラーを第2の回転速度で空回転させると共に、前記第1の画像形成ジョブに続く第2の画像形成ジョブにおける最初の記録シートが第2の回転速度で搬送される場合には、当該最初の記録シートの搬送開始前の再度の空回転を実行しないことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
記録シートの先端を回転停止中のタイミングローラーのニップ部に衝合させた後、回転を開始し、当該タイミングローラーを第1の回転速度または当該第1の回転速度とは異なる第2の回転速度で回転させて前記記録シートをトナー像の転写位置に向って搬送する搬送装置を備えた画像形成装置であって、
前記搬送装置は、
前記タイミングローラーに動力伝達機構を介して回転動力を伝達し、当該タイミングローラーを回転駆動するモーターと、
前記モーターの回転を制御する制御手段と、
を有し、
前記搬送装置は、第2の回転速度による記録シートの搬送が標準に設定されており、
前記制御手段は、
一の画像形成ジョブにおける最後の記録シートが、前記第1の回転速度で搬送された場合、
当該一の画像形成ジョブの終了に際し、前記タイミングローラーを第2の回転速度で回転させた後停止させる空回転動作を実行することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
前記第2の回転速度は、記録シートとして普通紙が搬送される場合であり、前記第1の回転速度は、記録シートとして普通紙よりも厚みが大きい厚紙が搬送される場合であって、前記第2の回転速度よりも前記第1の回転速度の方が遅いことを特徴とする請求項5または6に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−82513(P2013−82513A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221918(P2011−221918)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】