説明

画像投影装置

【課題】画像投影装置の転倒時における画像投影の停止を最小限にすることで、利便性を向上させる。
【解決手段】画像を投影する画像投影装置であって、前記画像投影装置の転倒を検知する転倒検知手段と、前記画像投影装置の転倒方向を検知する転倒方向検知手段と、前記転倒検知手段が前記画像投影装置の転倒を検知し、かつ、前記転倒方向検知手段の検知した転倒方向が前記画像投影装置の投射光が観察者を向く方向でない場合に、前記画像投影装置の画像投影を継続し、前記転倒検知手段が前記画像投影装置の転倒を検知し、かつ、前記転倒方向検知手段の検知した転倒方向が前記画像投影装置の投射光が観察者を向く方向である場合に、前記画像投影装置の画像投影を停止する制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像投影装置の制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、超短焦点プロジェクタと呼ばれる画像投影装置が製品化されている。超短焦点プロジェクタは、投影画面サイズは従来通りであるが、投影面(スクリーン)までの距離を短くしたものである。投影面までの距離が短いため、以下の利点がある。
1.スペースを有効活用できる。
2.説明者に投射光が当たりにくいので、まぶしくないとともに、写り込みがおきない。
3.画像投影装置と観察者が離れるので、画像投影装置からの発熱や騒音に悩まされない。
【0003】
これらの利点をさらに有効にするためには、画像投影装置の形状を縦型にし、設置面積を小さくし、より壁ぎわに設置できるようにするとよい。
【0004】
しかし、画像投影装置を縦型にした場合、画像投影装置が倒れやすくなることが考えられる。倒れた場合、投射光が観察者の目に入りまぶしい。また、倒れたまま長時間放置されると、冷却機構が十分に働かず高温になり、内部の部品が壊れる恐れがある。そのため、画像投影装置が倒れたことを検知して、倒れた場合に投影を自動的に停止する技術が存在する。
【0005】
特許文献1には、会議などで気軽にテーブルの上に設置し、出席者全員の正面に画像を投影することによって、お互いの顔を見ながら議論が進めることができることを目的に、画像投影装置の設置面と略同一の面上、かつ、画像投影装置本体の周囲の複数方向に、複数の画像を投影する画像投影装置について開示されている。この画像投影装置は、転倒を検知する検知手段としての慣性センサを備え、画像投影装置の転倒を検知した時に光源の電源をOFFして出力を停止させる構成が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、従来の画像投影装置では転倒を検知した場合に強制的に投影を停止するものであったため、画像投影装置を元の姿勢に戻して投影しなおす際に、再び使用可能になるまでに時間がかかるという問題があった。これは、一般的な画像投影装置では、いったん投影を停止すると再度投影を開始するまでに一定の時間がかかるからである。
【0007】
本発明は上記の従来の問題点に鑑み提案されたものであり、その目的とするところは、画像投影装置の転倒時における画像投影の停止を最小限にすることで、利便性の高い画像投影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明にあっては、画像を投影する画像投影装置であって、前記画像投影装置の転倒を検知する転倒検知手段と、前記画像投影装置の転倒方向を検知する転倒方向検知手段と、前記転倒検知手段が前記画像投影装置の転倒を検知し、かつ、前記転倒方向検知手段の検知した転倒方向が前記画像投影装置の投射光が観察者を向く方向でない場合に、前記画像投影装置の画像投影を継続し、前記転倒検知手段が前記画像投影装置の転倒を検知し、かつ、前記転倒方向検知手段の検知した転倒方向が前記画像投影装置の投射光が観察者を向く方向である場合に、前記画像投影装置の画像投影を停止する制御手段とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の画像投影装置にあっては、画像投影装置の転倒時における画像投影の停止を最小限にすることで、投影再開に要する待ち時間をなくし、利便性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態にかかる画像投影装置の外観の例を示す図である。
【図2】画像投影装置の配置の例を示す図である。
【図3】第1の実施形態にかかる画像投影装置のハードウェア構成例を示す図である。
【図4】第1の実施形態にかかる画像投影装置の制御系の機能構成の例を示す図である。
【図5】第1の実施形態にかかる画像投影装置の処理例を示すフローチャートである。
【図6】加速度センサによる転倒の判断の例を示す図(その1)である。
【図7】加速度センサによる転倒の判断の例を示す図(その2)である。
【図8】第2の実施形態にかかる画像投影装置の外観の例を示す図である。
【図9】第2の実施形態にかかる画像投影装置のハードウェア構成例を示す図である。
【図10】第2の実施形態にかかる画像投影装置の制御系の機能構成の例を示す図である。
【図11】第2の実施形態にかかる画像投影装置の処理例を示すフローチャートである。
【図12】カメラユニットによる人物の位置の識別の例を示す図(その1)である。
【図13】カメラユニットによる人物の位置の識別の例を示す図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態につき説明する。なお、画像投影装置として縦型の超短焦点プロジェクタを例として説明するが、これに限らず、任意のプロジェクタを対象とすることができる。
【0012】
<基本的な考え方>
従来の画像投影装置では転倒を検知した場合に強制的に投影を停止するものであったのに対し、本発明では、転倒した結果、画像投影装置の投射光が観察者を向く方向であるか否かを投影を停止するか否かの判断に用いている。
【0013】
すなわち、画像投影装置が転倒した場合に、画像投影装置の投射光が観察者を向く方向でない場合には、投射光が人の目に入ることはなく、観察者をまぶしがらせることはないため、即座に画像投影を停止する必要はない。短時間であれば冷却機構の不具合による温度上昇も小さく、機器が壊れる恐れは少ない。画像投影を停止せずに継続させることで、転倒した画像投影装置を元の姿勢に戻すだけで画像投影を継続することができ、投影再開に要する待ち時間をなくし、利便性を高めることができる。
【0014】
反対に、画像投影装置の投射光が観察者を向く方向である場合には、投射光が人の目に入ることになり、観察者をまぶしがらせることになるため、即座に画像投影を停止するものとしている。
【0015】
また、画像投影装置が転倒した場合に、画像投影装置の投射光が観察者を向く方向でない場合であっても、長時間にわたって画像投影を継続することは、冷却機構の不具合による温度上昇も大きくなり、機器が壊れる恐れがあるため、転倒からの経過時間が処置時間を経過した後、または機器内部の温度が所定温度に達した場合に、画像投影を停止するようにしている。
【0016】
<第1の実施形態>
図1は第1の実施形態にかかる画像投影装置1の外観の例を示す図である。
【0017】
本実施形態の画像投影装置1は、装置上面の投射口2より光を出射し、スクリーン6に画像を投影する。画像投影装置1は、投影画面サイズは一般のプロジェクタと同様であるが、投影面までの距離が短いことを特徴としている。このような超短焦点を実現する技術として、例えば特開2007−316674公報に記載されている投射光学系がある。
【0018】
また、画像投影装置1は、縦型の形状であることも特徴としている。縦型にすることで設置スペースを小さくできるという利点がある。
【0019】
装置上面に配置された操作部3は、複数のボタンで構成されており、電源のON/OFFや各種設定の操作、入力信号の切り替えなどに使用することができる。
【0020】
装置側面には、接続端子4や通気口5が配置されている。接続端子4には、コンピュータやDVDプレーヤなどの各種映像機器からのケーブルを接続し、映像信号を入力することができる。また、通気口5では、内部のファンを用いて外気との間で吸排気する。これにより、筐体内のランプや光学系などの冷却を行う。
【0021】
図2は画像投影装置1の配置の例を示す図であり、会議室等を側面から見た図である。
【0022】
画像投影装置10は、比較のために示した通常の焦点距離のプロジェクタである。通常の焦点距離の場合、スクリーン6からある程度離れた位置(図ではテーブル8の中央付近)に設置する必要がある。これに対し、本実施形態の画像投影装置1は、焦点距離が短いので、スクリーン6の近傍(図では台9の上)に設置することができる。
【0023】
通常の画像投影装置10の場合、テーブル8上に設置スペースを確保する必要がある。また、説明者はスクリーン6の前に立って説明するので、画像投影装置10からの投射光をまぶしく感じたり、投射光を体の一部でさえぎってしまって投影画像の一部が見えなかったりといった問題が発生する。また、会議などの参加者はテーブル8の周囲に座るので、画像投影装置10からの発熱や騒音が問題になる。
【0024】
画像投影装置1の場合、スクリーン6の近傍に設置するので、テーブル8上に設置スペースを用意する必要がない。また、説明者は画像投影装置1の前に立って説明できるので、投射光をまぶしく感じたり、投射光をさえぎったりすることがない。画像投影装置1は参加者からも離れているので、発熱や騒音に悩まされることもない。また、縦型であるため、設置スペースを小さくすることができる。画像投影装置1は更に背の高い縦型とすることもでき、設置スペースをより小さくすることができる。
【0025】
ただし、縦型のため、横型のプロジェクタに比べると転倒する可能性が高くなる。転倒方向としては、大きく分けてスクリーン6側の方向Aとそれとは逆にテーブル8側の方向Bが考えられる。
【0026】
投影中に方向Bに転倒した場合、参加者に投射光が当たる可能性がある。そのため、速やかに投影を中止することが望ましい。方向Aに転倒した場合は投射光が壁面に当たるため、投影を中止する必要はない。
【0027】
一般的に、プロジェクタは、一度投影を中止すると再度投影を開始するまでに時間がかかる。そのため、必要な場合以外は投影を継続する方が、ユーザの利便性を向上することができる。
【0028】
ただし、転倒したまま投影を継続していると、機器内が高温になり、部品が故障する可能性がある。機器の冷却機構は、機器が正常な稼働状態にあるという前提で設計されており、それ以外の状態では冷却機構が正常に動作しないからである。そのため、転倒した状態で投影を継続するにしても、転倒が一定時間以上続く場合は投影を中止した方がよいと考えられる。
【0029】
図3は第1の実施形態にかかる画像投影装置1のハードウェア構成例を示す図である。
【0030】
画像投影装置1は、ランプ104、照明光学系103、光変調器102、投射光学系101を備える。ランプ104から出た光は、照明光学系103のレンズやミラーを介して、光変調器102に照射される。光変調器102は液晶パネルやデジタルミラーデバイス(DMD:Digital Micro Mirror Device)により構成されるもので、外部から入力された映像信号を元に画像を形成することができる。光変調器102で変調された光は投射光学系101のレンズやミラーを介して、スクリーン6(図1、図2)に投影される。
【0031】
また、画像投影装置1は電源105を備え、ランプ104や光変調器102、ファン118などに電力を供給する。
【0032】
光変調器102、ランプ104、電源105には、それぞれの動作を制御する制御ユニット(106、107、108)が設けられ、それらはシステム制御ユニット109にて統括的に制御される。
【0033】
システム制御ユニット109は、CPU(Central Processing Unit)やメモリなどで構成され、各種入力情報を元に画像投影装置1全体の動作を制御するものである。
【0034】
外部からの映像信号は、外部インターフェイス115を介して画像投影装置1に入力される。映像信号は、映像信号処理ユニット114およびシステム制御ユニット109で処理した後、光変調器制御ユニット106に命令が送られ、光変調器102の動作に反映される。
【0035】
ユーザが画像投影装置1を操作する場合、操作パネル111もしくはリモコン113を使用する。操作パネル111での操作は直接にシステム制御ユニット109に通知される。また、リモコン113での操作はリモコン受信機112を介してシステム制御ユニット109に通知される。通知を受けたシステム制御ユニット109は、通知に対応した処理を実施する。
【0036】
また、ユーザは表示装置110を介して、画像投影装置1の状態を知ることができる。表示装置110は例えばLED(Light Emitting Diode)などで構成されている。表示装置110は、画像投影装置1の電源のON/OFFやエラー発生などに応じて、システム制御ユニット109からの通知を受け、LEDをON/OFFすることで、ユーザに機器状態を通知することができる。
【0037】
また、画像投影装置1は、加速度センサ116、温度センサ117といった各種センサを備える。
【0038】
加速度センサ116は画像投影装置1の傾きを測定することができる。測定した傾き情報はシステム制御ユニット109に通知され、投写画像の台形歪み補正に使用することができる。また、傾き角度が大きい場合は、画像投影装置1が倒れていると考えられ、転倒検知に利用することもできる。複数軸の加速度を測定可能な加速度センサを用いることで、どの方向に転倒しているか検知することもできる。
【0039】
温度センサ117は画像投影装置1内の温度を測定することができる。測定した温度情報はシステム制御ユニット109に通知され、画像投影装置1内を適切な温度状態にするため、ファン118の回転数を変更したり、温度が高すぎる場合はシステム異常として投影を中止したりするなどの制御を行う。
【0040】
ファン118は、画像投影装置1内部と外部の空気の吸気・排気に使用する。また、筐体内の空気の流れを制御し、高温の部品に空気を当てて、適切な温度になるよう冷却を行う。
【0041】
図4は第1の実施形態にかかる画像投影装置1の制御系の機能構成の例を示す図である。
【0042】
制御系は、投影制御部121と光変調器制御部122とランプ制御部123と表示制御部124と映像入力部125と傾き検知部126とを備えている。
【0043】
投影制御部121は、映像入力部125からの映像情報を元に画像の投影を制御する。また、投影制御部121は、傾き検知部126からの傾き情報を元に、投影画像の台形歪み補正を行う。
【0044】
光変調器制御部122は、投影制御部121から通知された画像データを元に、光変調器102(図3)の動作を制御する。
【0045】
ランプ制御部123は、投影制御部121からの通知に基づき、ランプ104(図3)の光量やON/OFFを制御する。
【0046】
表示制御部124は、投影制御部121から通知された情報に基づき、表示装置110(図3)のLEDのON/OFFなどを制御する。
【0047】
映像入力部125は、外部の映像機器からの映像信号を処理する。
【0048】
傾き検知部126は、加速度センサ116(図3)の測定値を元に機器の傾き角度および傾き方向を定期的に検知し、検知した情報を投影制御部121に通知する。
【0049】
図5は第1の実施形態にかかる画像投影装置1の処理例を示すフローチャートである。
【0050】
画像投影装置1の電源投入もしくは処理再開により処理を開始すると、投影制御部121は、傾き検知部126からの傾き角度情報に基づき、機器が転倒しているかどうかチェックする(ステップS11)。例えば、傾き角度が一定値以上になった場合、機器が転倒したと判断する。
【0051】
図6は加速度センサ116による転倒の判断の例を示す図である。図6に示すように、例えば画像投影装置1に対し加速度センサ116を45度傾けて垂直に配置した状態とする。加速度センサ116は、X軸方向の加速度g、Y軸方向の加速度gを測定できる。このとき、傾斜角度θ(+X軸から+Y軸方向へ重力がなす角度)は、加速度値g、gを使って、次式で計算できる。
【0052】
θ = tan−1(g/g
画像投影装置1が、図6に示すように水平(θ=45度)に設置されている場合の加速度センサ116の計測値を(g,g)=(0.707,0.707)とすると、画像投影装置1が方向A(スクリーン方向)に転倒して図7(a)に示すような状態(θ=135度)になった場合は(g,g)=(−0.707,0.707)になり、方向B(スクリーンと逆方向)に転倒して図7(b)に示すような状態(θ=315度)になった場合は(g,g)=(0.707,−0.707)になる。
【0053】
このようにg、gの値を計測することで、画像投影装置1の傾き角度および傾き方向を検知することができる。
【0054】
図5に戻り、機器が転倒していないと判断した場合(ステップS11のNO)、特に何もせず、一定時間経過後に再び機器が転倒しているかチェックする(ステップS11)。
【0055】
機器が転倒していると判断した場合(ステップS11のYES)、傾き検知部126からのX軸、Y軸それぞれの加速度情報により、機器がスクリーン方向(方向A)と、スクリーンと逆方向(方向B)のどちらに転倒しているのか判断する(ステップS12)。
【0056】
スクリーン方向に転倒していると判断した場合(ステップS12のYES)、直前に転倒していると判断してから一定時間経過したかどうか判断する(ステップS13)。スクリーン方向に転倒している場合、投射光が観察者の目に入ることはないため、すぐに投影を中止する必要はない。ただし、機器の冷却を考えると投影し続けることは危険なため、一定時間経過したかどうか判断する。
【0057】
一定時間経過していないと判断した場合(ステップS13のNO)、機器が転倒しているかのチェック(ステップS11)に戻る。再び転倒のチェックに戻るのは、ユーザが倒れた機器を元の状態に戻すことが期待されるためである。
【0058】
機器がスクリーンと逆方向に転倒していると判断した場合(ステップS12のNO)、もしくは、スクリーン方向に転倒していても一定時間経過した場合(ステップS13のYES)、投影を中止する(ステップS14)。すなわち、投影制御部121は、光変調器制御部122、ランプ制御部123、表示制御部124に投影中止を通知する。通知を受けた光変調器制御部122は、投影画像がOFFされるように光変調器102を動かす。また、ランプ制御部123はランプ104をOFFする。表示制御部124は表示装置110のLEDをON/OFFし、ユーザに転倒により投影が中止されたことを通知する。
【0059】
なお、上述した例では、スクリーン方向に転倒した場合に、転倒からの経過時間で投影の継続/中止を判断しているが、温度センサ117を用いて、機器内の温度が一定値以上になったかどうかをチェックし、投影の継続/中止を判断(温度が一定値以上にならない場合は投影の継続、一定値以上になった場合は投影の中止と判断)してもよい。
【0060】
<第2の実施形態>
図8は第2の実施形態にかかる画像投影装置1の外観の例を示す図である。
【0061】
本実施形態の画像投影装置1はカメラ7を備える。カメラ7はスクリーン6と逆方向に配置されており、スクリーン6と逆方向を撮影可能とする。また、加速度センサ116以外にジャイロセンサ120を備える。ジャイロセンサ120は、鉛直方向を軸とした角速度ωを計測できるものとする。これにより、画像投影装置1のスクリーン方向の傾きだけでなく、画像投影装置1が鉛直方向にどの程度回転したかも把握することができる。他の構成は図1に示したものと同様である。
【0062】
図9は第2の実施形態にかかる画像投影装置1のハードウェア構成例を示す図である。
【0063】
本実施形態の画像投影装置1はカメラユニット119とジャイロセンサ120が追加されている。カメラユニット119は、カメラ7に相当する機構部および回路部を備え、撮影した画像を解析し、人物を識別できるものとする。ジャイロセンサ120は、画像投影装置1の鉛直方向の角速度を計測し、画像投影装置1の回転角度を検出できるものとする。他の構成は図3に示したものと同様である。
【0064】
図10は第2の実施形態にかかる画像投影装置1の制御系の機能構成の例を示す図である。
【0065】
本実施形態の画像投影装置1は人物検知部127と角度検知部128が追加されている。人物検知部127は、画像投影中、カメラ7を使用して定期的に撮影を実施する。また、カメラ7で撮影した画像を解析し、人物を識別する。識別した情報から、人物の画像投影装置1に対する位置情報を取得する。角度検知部128は、画像投影中、ジャイロセンサ120を使用して定期的に画像投影装置1が回転していないか計測する。回転した場合、何度回転したか計測する。他の構成は図4に示したものと同様である。
【0066】
図11は第2の実施形態にかかる画像投影装置1の処理例を示すフローチャートである。
【0067】
画像投影装置1の電源投入もしくは処理再開により処理を開始すると、人物検知部127は、カメラ7で撮影した情報を元に人物の位置を識別する(ステップS21)。
【0068】
図12はカメラユニット119による人物の位置の識別の例を示す図であり、カメラ7で撮影した画像の例を示している。ここでは、テーブルに3人の人物が座っており、スクリーンに向かって右手側(方向D)に2人(人物11、12)、中央に1人(人物13)、という配置であるとする。左手側(方向C)には誰もいないものとする。
【0069】
人物検知部127は、カメラ7で撮影した画像から、人の顔のパターン(楕円形の輪郭に、目、鼻、口等のパーツが所定範囲に存在等)とマッチングを行うことで、人物を解析する。この場合、方向Dに人物11〜13が配置していることを知ることができる。
【0070】
図13は図12の場合に会議室の様子を上から見た図である。ここで、画像投影装置1が方向Dに転倒した場合(1"の状態の場合)、方向Dには人物がいるので、転倒を検知したら即座に消灯するのが望ましい。また、画像投影装置1が方向Cに転倒した場合(1'の状態の場合)、方向Cには人物はいないので、即座に消灯する必要はない。
【0071】
図11に戻り、投影制御部121は、傾き検知部126からの傾き角度情報に基づき、機器が転倒しているかどうかチェックする(ステップS22)。
【0072】
機器が転倒していないと判断した場合(ステップS22のNO)、特に何もせず、一定時間経過後に再び人物の位置の識別(ステップS21)を行う。
【0073】
機器が転倒していると判断した場合(ステップS22のYES)、角度検知部128からの回転角度情報と人物検知部127の人物の位置情報から、機器が人物のいない方向に転倒しているのか判断する(ステップS23)。
【0074】
人物のいない方向に転倒していると判断した場合(ステップS23のYES)、直前に転倒していると判断してから一定時間経過したかどうか判断する(ステップS24)。人物のいない方向に転倒している場合、投射光が観察者の目に入ることはないため、すぐに投影を中止する必要はない。ただし、機器の冷却を考えると投影し続けることは危険なため、一定時間経過したかどうか判断する。
【0075】
一定時間経過していないと判断した場合(ステップS24のNO)、機器が転倒しているかのチェック(ステップS22)に戻る。再び転倒のチェックに戻るのは、ユーザが倒れた機器を元の状態に戻すことが期待されるためである。
【0076】
人物のいる方向に転倒していると判断した場合(ステップS23のNO)、もしくは、人物のいない方向に転倒していても一定時間経過した場合(ステップS24のYES)、投影を中止する(ステップS25)。すなわち、投影制御部121は、光変調器制御部122、ランプ制御部123、表示制御部124に投影中止を通知する。通知を受けた光変調器制御部122は、投影画像がOFFされるように光変調器102を動かす。また、ランプ制御部123はランプ104をOFFする。表示制御部124は表示装置110のLEDをON/OFFし、ユーザに転倒により投影が中止されたことを通知する。
【0077】
なお、上述した例では、人物のいない方向に転倒した場合に、転倒からの経過時間で投影の継続/中止を判断しているが、温度センサ117を用いて、機器内の温度が一定値以上になったかどうかをチェックし、投影の継続/中止を判断(温度が一定値以上にならない場合は投影の継続、一定値以上になった場合は投影の中止と判断)してもよい。
【0078】
また、上述した例では、カメラ7を使用して、撮影した画像を解析し、画像投影装置1周辺の人物の位置を検知するようにしているが、これに代え、赤外線センサを用いて人物の位置を検出するようにしてもよい。
【0079】
<総括>
以上説明したように、本実施形態によれば、次のような利点がある。
(1)画像投影装置の転倒が投射光が人物を向く方向である場合に画像投影を停止し、投射光が人物を向く方向でない場合には画像投影を継続するので、画像投影の停止を最小限にすることができ、投影再開に要する待ち時間をなくして利便性を高めることができる。
(2)画像投影装置の転倒が投射光が人物を向く方向でない場合であっても、所定時間の経過または機器温度が所定温度に達することで画像投影を停止するので、冷却機構が正常に動作せずに機器が故障することを防ぐことができる。
(3)縦型の超短焦点プロジェクタに適用することが最も好ましいが、固定タイプでない画像投影装置であれば常に転倒する可能性があり、その意味で縦型の超短焦点プロジェクタに限らずに適用することができ、上記の利点を発揮することが期待される。
【0080】
以上、本発明の好適な実施の形態により本発明を説明した。ここでは特定の具体例を示して本発明を説明したが、特許請求の範囲に定義された本発明の広範な趣旨および範囲から逸脱することなく、これら具体例に様々な修正および変更を加えることができることは明らかである。すなわち、具体例の詳細および添付の図面により本発明が限定されるものと解釈してはならない。
【符号の説明】
【0081】
1 画像投影装置
101 投射光学系
102 光変調器
103 照明光学系
104 ランプ
105 電源
106 光変調器制御ユニット
107 ランプ制御ユニット
108 電源制御ユニット
109 システム制御ユニット
110 表示装置
111 操作パネル
112 リモコン受信機
113 リモコン
114 映像信号処理ユニット
115 外部インターフェイス
116 加速度センサ
117 温度センサ
118 ファン
119 カメラユニット
120 ジャイロセンサ
121 投影制御部
122 光変調器制御部
123 ランプ制御部
124 表示制御部
125 映像入力部
126 傾き検知部
127 人物検知部
128 角度検知部
2 投射口
3 操作部
4 接続端子
5 通気口
6 スクリーン
7 カメラ
8 テーブル
9 台
10 画像投影装置
11〜13 人物
【先行技術文献】
【特許文献】
【0082】
【特許文献1】特開2008−009136号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を投影する画像投影装置であって、
前記画像投影装置の転倒を検知する転倒検知手段と、
前記画像投影装置の転倒方向を検知する転倒方向検知手段と、
前記転倒検知手段が前記画像投影装置の転倒を検知し、かつ、前記転倒方向検知手段の検知した転倒方向が前記画像投影装置の投射光が観察者を向く方向でない場合に、前記画像投影装置の画像投影を継続し、前記転倒検知手段が前記画像投影装置の転倒を検知し、かつ、前記転倒方向検知手段の検知した転倒方向が前記画像投影装置の投射光が観察者を向く方向である場合に、前記画像投影装置の画像投影を停止する制御手段と
を備えたことを特徴とする画像投影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像投影装置において、
前記転倒方向検知手段は、前記画像投影装置の転倒が投影方向か当該投影方向と逆方向かを検知し、
前記制御手段は、前記投影方向への転倒を前記画像投影装置の投射光が観察者を向く方向でない転倒として制御を行い、前記投影方向と逆方向への転倒を前記画像投影装置の投射光が観察者を向く方向の転倒として制御を行う
ことを特徴とする画像投影装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像投影装置において、
前記転倒方向検知手段は、前記画像投影装置の周辺に存在する人物の位置を検知する検知手段を有し、前記画像投影装置の転倒が前記検知手段の検知した人物の位置の方向か否かを検知し、
前記制御手段は、前記人物の位置の方向以外の方向への転倒を前記画像投影装置の投射光が観察者を向く方向でない転倒として制御を行い、前記人物の位置の方向への転倒を前記画像投影装置の投射光が観察者を向く方向の転倒として制御を行う
ことを特徴とする画像投影装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像投影装置において、
前記制御手段は、前記画像投影装置の投射光が観察者を向く方向でない転倒である場合に、転倒後の時間を計測し、転倒後の経過時間が所定値を越えた場合に前記画像投影装置の画像投影を停止する
ことを特徴とする画像投影装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の画像投影装置において、
更に前記画像投影装置内部の温度を計測する温度計測手段を備え、
前記制御手段は、前記画像投影装置の投射光が観察者を向く方向でない転倒である場合に、前記温度計測手段の検知温度が所定値を越えた場合に前記画像投影装置の画像投影を停止する
ことを特徴とする画像投影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−29605(P2013−29605A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164545(P2011−164545)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】