説明

画像検査装置

【課題】対象物に印字される文字の品質率が低下することにより生じる無駄はねを低減しながらも、検査の質が低下することを回避できる画像検査装置を提供する。
【解決手段】画像検査装置1は、新たな辞書を辞書記憶部11に追加で登録する追加登録部16を備えている。追加登録部16は、判定部14で良品印字と判定された場合において、品質率が判定閾値よりも高く設定されている規定値を下回ったときに、撮像画像から抽出した文字部分の画像をこの文字に対応付けて辞書を作成する。追加登録部16は、作成した辞書を辞書記憶部11に追加で登録する。画像検査装置1は、追加された辞書を照合部13で用いるようにすれば、たとえ文字の品質率が徐々に低下しても、品質率が判定閾値以下となって判定部14が不良印字と判断することを回避できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物を撮像装置で撮像して得られる撮像画像を用いて対象物に印字されている文字を検査する画像検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の画像検査装置として、対象物に印字される文字、数字、記号と当該文字の画像とを対応付けた辞書が予め登録されており、この辞書を用いて対象物に印字されている文字を検査するものが知られている。この画像検査装置は、たとえば印字機により包装容器に印字された製造年月日や製造番号などが、人に認識可能な程度の品質で印字されているか否かの検査に用いられる。以下では、文字、数字、記号をまとめて「文字」という。
【0003】
この画像検査装置では、撮像画像中の文字の画像と当該文字に対応する辞書内の画像とを照合することで、対象物に印字された文字の品質を表す品質率を求める。画像検査装置は、求めた品質率が予め設定されている判定閾値よりも高ければ良品印字と判定し、判定閾値以下であれば不良印字と判定する。
【0004】
しかし、上記構成の画像検査装置では、印字機の経年劣化などの影響で、対象物に印字される文字に欠けなどが生じて、印字される文字の品質率が低下することがある。このような場合、人が認識する分には何ら問題がないにもかかわらず、対象物に印字された文字の画像と辞書内の画像との間にずれが生じて不良印字と判定されることがある。その結果、良品が不良品と誤って判断される無駄はねを生じることになる。
【0005】
これに対して、品質率が判定閾値以下と判定されたときに、ユーザ(オペレータ)の判断を仰ぎ、判断結果に従って判定閾値以下と判定された文字の特徴量を辞書に追加する画像検査装置(印刷検査装置)が考えられている(たとえば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−172029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1記載の画像検査装置では、品質率が判定閾値以下と判定されて初めて辞書が追加されるので、品質率が徐々に低下する場合でも、品質率が判定閾値以下となった時点で急に辞書が追加されることになる。したがって、品質率が徐々に低下していく場合でも、使用中の辞書に比べて品質率が大幅に低下した状態の画像を用いて辞書が作成され、辞書の追加の前後において良品印字・不良印字の判定結果が大きく変わることになる。その結果、辞書の追加後には、人が認識するのも困難な程に品質率が低下した文字であっても品質率が判定閾値より高くなり良品印字と判定され、検査の質が大幅に低下することがある。
【0008】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであって、対象物に印字される文字の品質率が低下することにより生じる無駄はねを低減しながらも、検査の質が低下することを回避できる画像検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために第1の発明では、対象物に印字される文字と当該文字の画像とを対応付けた辞書が予め登録されている辞書記憶部と、前記対象物を撮像装置で撮像して得られる撮像画像を用いて前記対象物に印字されている文字を検査する文字検査部とを備え、前記文字検査部は、前記撮像画像中の文字の画像と当該文字の前記辞書内の画像とを照合することで、両者が一致する度合いを表す品質率を求める照合部と、前記品質率が予め設定されている判定閾値よりも高ければ良品印字と判定し前記判定閾値以下であれば不良印字と判定する判定部と、前記判定部で良品印字と判定された場合において前記品質率が前記判定閾値よりも高く設定されている規定値を下回ったときに、前記撮像画像中の文字の画像を当該文字に対応付けて作成される新たな辞書を前記辞書記憶部に追加で登録する追加登録部とを有することを特徴とする。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、前記文字検査部は、前記辞書記憶部に前記辞書が複数登録されている場合に、前記判定部で不良印字との判定が既定回数連続すると、前記照合部で使用する辞書を前記辞書記憶部内に登録されている複数の前記辞書の間で切り替えるための切替処理に移行する第1切替部を有することを特徴とする。
【0011】
第3の発明は、第1の発明において、前記文字検査部は、前記辞書記憶部に前記辞書が複数登録されている場合に、前記不良印字と判定され、且つ前回の前記判定部での判定に用いた前記品質率から今回の前記判定部での判定に用いた前記品質率の変化量が既定量以下であれば、前記照合部で使用する辞書を前記辞書記憶部内に登録されている複数の前記辞書の間で切り替えるための切替処理に移行する第2切替部を有することを特徴とする。
【0012】
第4の発明は、第1の発明において、前記文字検査部は、前記辞書記憶部に前記辞書が複数登録されている場合に、前記照合部での照合回数をカウントするカウント部と、前記カウント部のカウント数に応じて前記照合部で使用する辞書を前記辞書記憶部に登録されている複数の前記辞書の中で切り替える第3切替部とを有することを特徴とする。
【0013】
第5の発明は、第1ないし第4のいずれかの発明において、前記文字検査部は、前記追加登録部により前記辞書が追加で登録された場合に、当該辞書が登録される前から前記照合部で使用していた前記辞書を第1の辞書とし、前記追加登録部により追加で登録された前記辞書を第2の辞書とし、前記第1の辞書と前記第2の辞書とのそれぞれを前記照合部に使用して前記品質率を求め、結果を出力する試用部を有することを特徴とする。
【0014】
第6の発明は、第1ないし第4のいずれかの発明において、前記文字検査部は、前記追加登録部により前記辞書が追加で登録された場合に、当該辞書が登録される前から前記照合部で使用していた前記辞書を第1の辞書とし、前記追加登録部により追加で登録された前記辞書を第2の辞書とし、前記第1の辞書の画像から前記第2の辞書の画像に変化する途中の状態の画像を文字に対応付けて作成される前記辞書を第3の辞書として前記辞書記憶部に登録することを特徴とする。
【0015】
第7の発明は、第6の発明において、前記文字検査部は、前記第1の辞書と前記第2の辞書と前記第3の辞書とのそれぞれを前記照合部に使用して前記品質率を求め、結果を出力する試用部を有することを特徴とする。
【0016】
第8の発明は、第1ないし第7のいずれかの発明において、前記文字検査部は、前記辞書記憶部に前記辞書が複数登録されている場合に、前記照合部で使用する前記辞書を前記辞書記憶部に登録されている複数の前記辞書の間で切り替えても前記品質率が改善されなければ、異常の発生を報知する異常報知部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
この構成によれば、対象物に印字される文字の品質率が低下することにより生じる無駄はねを低減しながらも、検査の質が低下することを回避できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態1の構成を示す概略ブロック図である。
【図2】同上の動作説明に用いる説明図である。
【図3】同上の動作を示すフローチャートである。
【図4】同上の動作を示すフローチャートである。
【図5】同上の他の動作を示すフローチャートである。
【図6】実施形態2の動作を示すフローチャートである。
【図7】実施形態3の動作を示すフローチャートである。
【図8】同上の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施形態1)
本実施形態の画像検査装置は、印字機により対象物に印字された文字(文字、数字、記号を含む)を検査するものであって、対象物の画像を撮像する撮像装置としてのカメラに接続されている。カメラは、少なくとも印字された文字部分を撮像画像内に収めるように視野が設定されている。ここでは一例として搬送ライン上を搬送される包装容器に印字された製造年月日や製造番号を検査の対象として説明する。
【0020】
ここでは、カメラは濃淡値を画素値とする濃淡画像を撮像するものとするが、カラー画像を撮像するものであってもよい。また、印字機はインクジェットプリンタなどであってもよいし、文字を刻印するものであってもよい。
【0021】
画像検査装置1は、図1に示すように、カメラ2から撮像画像を入力するカメラインタフェース10と、辞書を記憶する辞書記憶部11と、撮像画像に画像処理を施す画像処理部12と、撮像画像中の文字の画像と辞書内の画像とを照合する照合部13とを備える。さらに、画像検査装置1は、照合部13での照合結果を用いて良品印字・不良印字の別を判定する判定部14と、判定部14の判定結果を出力する出力部15と、後述する追加登録部16および辞書切替部17とを備えている。ここで、照合部13と判定部14と追加登録部16と辞書切替部17とは、撮像画像を用いて対象物に印字されている文字を検査する文字検査部を構成する。
【0022】
辞書記憶部11は、対象物に印字される文字と当該文字の画像とを対応付けた辞書が予め登録されている。つまり、対象物に印字される各文字は、辞書記憶部11に登録された辞書により、それぞれの画像と一対一に対応付けられている。辞書内の画像は、各文字の外観を表した2値画像とする。
【0023】
画像処理部12は、2値化処理を行うことで撮像画像を2値画像に変換する。さらに、画像処理部12は、2値化後の撮像画像から印字機(図示せず)が印字した文字に対応する部分の画像を抽出し、且つ抽出した画像のサイズを辞書内の文字の画像と同サイズに変換する。
【0024】
画像検査装置1は、印字機にも接続されており、印字機が対象物に印字した文字を特定するための情報を印字機との間で共有する。ここで、文字を特定するための情報には、文字の内容、配置、大きさ、フォントなど、印字された文字を唯一特定するのに必要な様々な情報を含む。
【0025】
照合部13は、画像処理部12で抽出された文字に対応する部分の画像と、印字機が印字した文字に対応する辞書内の画像とを照合する。たとえば印字機が対象物に「0」、「1」の2文字を印字した場合、照合部13は図2に示すような画像の照合を行うことになる。つまり、照合部13は、図2(a)のように辞書において「0」、「1」に対応付けられた各画像と、図2(b)〜(d)のように撮像画像から抽出された「0」、「1」が印字された部分の各画像とをそれぞれ照合する。
【0026】
このとき、照合部13は、撮像画像から抽出された画像と辞書内の画像とをパターンマッチングにて比較し、対象物に印字された文字の品質を表す品質率を求める。具体的には、照合部13は、両画像を画素単位で比較し、撮像画像から抽出された画像と辞書内の画像との差分をとった際に不足する領域の画素数、および余る領域の画素数を求める。照合部13は、このようにして求めた画素数を印字領域(画像処理部12で抽出される領域)の画素数で除算し、100分率で表したものを品質率とする。したがって、文字の品質率は、両画像の類似度(相関値)に相当し、両画像が完全に一致する場合には100%となる。
【0027】
判定部14は、照合部13で求めた品質率を予め固定的に設定されている判定閾値と比較し、品質率が判定閾値よりも高ければ良品印字と判定し、判定閾値以下であれば不良印字と判定する。要するに、印字機の故障などにより文字の品質率が判定閾値以下まで低下すると、判定部14は、その対象物については文字の印字に失敗していると判断する。
【0028】
図2(b)の例では、撮像画像から抽出された画像中の文字は、辞書内の画像(図2(a))中の文字に比べて、部分的に欠けている部分や痩せている部分があるものの、人が認識できない程ではない。この場合に、照合部13で求まる品質率は100%ではないものの判定閾値より高いため、判定部14は良品印字と判定する。一方、図2(d)の例では、撮像画像から抽出された画像中の文字は、辞書内の画像(図2(a))中の文字とは人が認識困難な程度にかけ離れている。この場合に、照合部13で求まる品質率は判定閾値以下となるため、判定部14は不良印字と判定する。
【0029】
出力部15は、ディスプレイへの表示や音の出力によって判定部14での判定結果を提示する。また、出力部15は、プログラマブルコントローラ(PLC)やパーソナルコンピュータ(PC)へ判定結果のデータを出力する構成とし、判定結果を他の制御に利用可能としてもよい。さらに、印字機との通信制御のデータを出力することができる構成でもよい。判定結果を提示するディスプレイ等は、画像検査装置1と一体であってもよいが、画像検査装置1とは別に設けられていてもよい。
【0030】
ところで、印字機の経年劣化などの影響で、対象物に印字される文字に欠けなどが生じて、印字される文字の品質率が徐々に低下することがある。たとえば図2(b)の状態から印字機の劣化がさらに進行し、撮像画像から抽出される画像が図2(c)の状態にまで劣化した場合を想定する。図2(c)の例では、撮像画像から抽出された画像中の文字は、辞書内の画像(図2(a))中の文字に比べて、欠けている部分や痩せている部分がある。この場合、対象物に印字された文字は人が認識できない程ではないものの、照合部13で求まる品質率が判定閾値以下であれば、判定部14は不良印字と判定する。このように、人が認識する分には何ら問題がないにもかかわらず、不良印字と判定されることがある。
【0031】
そこで、本実施形態の画像検査装置1は、新たな辞書を辞書記憶部11に追加で登録する追加登録部16を備えている。追加登録部16は、判定部14で良品印字と判定された場合において、品質率が判定閾値よりも高く設定されている規定値を下回ったときに、撮像画像から抽出した文字部分の画像をこの文字に対応付けて辞書を作成する。追加登録部16は、作成した辞書を辞書記憶部11に追加で登録する。規定値は、たとえば判定閾値が70%に設定されている場合、85%に設定される。
【0032】
ここでは、追加登録部16は、品質率が初めて規定値を下回ったときに辞書を1つ作成し、その後、品質率が規定値を下回ることがあっても新たに辞書を作成しないものとする。ただし、辞書の信頼性を確保するため、追加登録部16で作成される辞書は、品質率が規定値を複数回(たとえば10回)続けて下回ったときに、そのときの複数回分の画像の平均をとって作成されるものとしてもよい。
【0033】
以下、上記構成の画像検査装置1の動作について図3のフローチャートを参照して説明する。
【0034】
検査が開始すると、画像検査装置1は、カメラ2から撮像画像を取り込み(S1)、取り込んだ撮像画像から抽出された文字の画像と辞書の画像との照合を行い(S2)、印字の良否を判定する(S3)。画像検査装置1は、不良印字と判定すると(S3:No)、不良印字の報知を行い(S4)、検査を終了する。
【0035】
一方、画像検査装置1は、良品印字と判定すると(S3:Yes)、品質率が規定値(ここでは85%とする)以上か否かを判断する(S5)。品質率が規定値を下回ると(S5:No)、画像検査装置1は、今回撮像画像から抽出して照合を行った文字の画像を用いて作成される辞書を、辞書記憶部11に追加で登録し(S6)、良品印字の報知を行って(S7)検査を終了する。品質値が規定値以上であれば、画像検査装置1は、辞書の追加をすることなく、良品印字の報知を行い(S7)、検査を終了する。
【0036】
以上説明した構成により、図2の場合を例にすると画像検査装置1の動作は次のようになる。
【0037】
まず、図2(b)の状態では、品質率が判定閾値より高いことから良品印字と判定される。ここで、図2(b)の状態での品質率が規定値を下回ると、追加登録部16は図2(b)の各画像をそれぞれ文字「0」、「1」に対応付けて辞書を作成し、この辞書を辞書記憶部11に追加で登録する。追加登録部16により辞書が追加されると、辞書記憶部11には、今まで照合部13で用いていた辞書(以下、「第1の辞書」という)と、新たに追加された辞書(以下、「第2の辞書」という)との少なくとも2つの辞書が記憶されることになる。
【0038】
したがって、以降は、追加された第2の辞書を照合部13で用いるようにすれば、たとえ文字の品質率が徐々に低下して図2(c)の状態になったとしても、品質率が判定閾値以下となって判定部14が不良印字と判断することを回避できる。すなわち、第2の辞書中の「0」、「1」に対応する画像は、図2(b)の画像であるから、照合部13は図2(b)の画像と図2(c)の画像とを照合することになるため、第1の辞書を用いた場合に比べて品質率が高くなる。
【0039】
ところで、辞書記憶部11に複数の辞書が登録された状態で、照合部13で使用する辞書を決める方法としては幾つかのパターンが考えられるが、本実施形態では以下に説明する方法を採用するものとする。
【0040】
すなわち、画像検査装置1は、照合部13で使用する辞書を切り替える辞書切替部17を備えている。辞書切替部17は、辞書記憶部11に辞書が複数登録されている場合で、判定部14で不良印字と判定された場合に、辞書を切り替えるための切替処理に移行する。これにより、印字機の経年劣化などの影響で、印字される文字の品質率が徐々に低下し、不良印字の判定に至ったとしても、以降は照合部13で用いる辞書が新たに追加された第2の辞書に切り替わるため、無駄はねを低減できる。
【0041】
ただし、不良印字と1回判定されただけで切替処理を行うのは望ましくない。つまり、印字機の経年劣化などとは無関係にたとえば対象物に汚れがあったことが原因で1度だけ一時的に不良印字となった場合にまで辞書の切替を行うと、文字検査の信頼性が低下することになる。
【0042】
そこで本実施形態では、辞書切替部17は、判定部14で連続して不良印字と判定された回数をカウントするカウンタを有し、カウンタのカウント数が既定回数に達すると、辞書の切替処理に移行する第1切替部として機能する。要するに、辞書切替部17は、図4に示すように不良印字と判定された場合に(S3:No)、不良印字と判定された連続回数をカウントし(S8)、カウント数が既定回数に達すると(S9:Yes)、切替処理に移行する(S10)。カウンタは、切替処理後にリセットされる(S11)。
【0043】
さらに他の例として、辞書切替部17は、前回の判定部14での判定に用いた品質率から今回の判定部14での判定に用いた品質率の変化量が既定量以下であれば、辞書の切替処理に移行する第2切替部として機能するものであってもよい。この構成では、辞書切替部17は、判定部14での判定に用いた品質率を時系列で記憶し、品質率の変化を監視する。つまり辞書切替部17は、図5に示すように不良印字と判定された場合に(S3:No)、今回用いた品質率を前回用いた品質率と比較し(S12)、両品質率の差分(変化量)を既定量と比較する(S13)。辞書切替部17は、両品質率の変化量が既定量以下であれば(S13:Yes)、切替処理に移行する(S10)。
【0044】
このように、一時的に品質率が低下して不良印字となった場合だけでは辞書の切替を行わないようにすることで、文字検査の信頼性が低下することを回避できる。しかも、第2切替部のように品質率を時系列で記憶する構成では、品質率の変化から印字機の劣化の傾向などを調査することも可能になる。
【0045】
また、本実施形態では、辞書切替部17は勝手に辞書を切り替えるのではなく、辞書の切替処理としてはまず辞書を切り替える旨のガイダンスを行うことにより、ユーザの判断を仰ぐようにしている。たとえば、第1の辞書から第2の辞書に切り替える切替処理時には、辞書切替部17は、第2の辞書に切り替える旨をディスプレイなどに表示することでユーザに示し、且つユーザの承認を得ることで初めて辞書を切り替える。そのため、ユーザにとっては、切り替えるための辞書(第2の辞書)が既に登録されていることを知ることができ、また、知らない間に辞書が切り替わるということはなく自らの判断で辞書を切り替えることができる。
【0046】
ただし、この構成に限らず、辞書切替部17は切替処理として自動的に辞書を切り替えるように動作するものであってもよい。この場合、ユーザは辞書の切り替えを認証する必要がないため、ユーザの手間を省くことができる。
【0047】
以上説明した構成の画像検査装置1によれば、印字された文字の品質率が規定値を下回ったときに、追加登録部16により撮像画像から抽出した画像を用いて作成した辞書が辞書記憶部11に追加登録されることになる。したがって、以降は、追加された辞書(第2の辞書)を照合部13で用いるようにすれば、たとえ文字の品質率が徐々に低下しても、品質率が判定閾値以下となって判定部14が不良印字と判断することを回避できる。その結果、印字機の経年劣化などの影響で、印字される文字の品質率が徐々に低下することがあっても、印字された文字が認識できない程でなければ、良品印字と判定することができ、無駄はねを低減することができる。
【0048】
また、上記構成では、品質率が判定閾値以下まで低下しなくとも、品質率が判定閾値よりも高く設定された規定値を下回った時点で、辞書が追加登録されることになる。したがって、品質率が徐々に低下していく場合、使用中の辞書に比べて品質率が少し低下した状態の画像を用いて辞書が作成され、辞書の追加の前後において良品印字・不良印字の判定結果の変化を小さく抑えることができる。その結果、辞書の追加後でも、人が認識するのも困難な程に品質率が低下した文字については品質率が判定閾値より低くなり不良印字と判定することができ、検査の質が低下することを回避できる。
【0049】
(実施形態2)
本実施形態の画像検査装置1は、照合部13で使用する辞書を切り替える辞書切替部17の構成および機能が実施形態1の画像検査装置1とは相違する。
【0050】
本実施形態では、画像検査装置1は照合部13での文字の照合回数をカウントするカウント部(図示せず)を備えている。照合回数は文字ごとにカウントされ、カウント数は照合された文字数を表すものとする。辞書切替部17は、カウント部のカウント数に応じて照合部13で使用する辞書を辞書記憶部11に登録されている複数の辞書の中で順次切り替える第3切替部として機能する。
【0051】
ここで、追加登録部16は、予め辞書記憶部11に登録されていた第1の辞書に加えて、新たに第2の辞書、第3の辞書、第4の辞書を辞書記憶部11に登録するものとする。すなわち、本実施形態では判定閾値よりも高い範囲で規定値が段階的に複数設定されており、追加登録部16は品質率が各規定値を下回る度に新たな辞書を作成し、作成した辞書を辞書記憶部11に順次追加する。
【0052】
以下、上記構成の画像検査装置1の動作について図6のフローチャートを参照して説明する。図6のフローチャートは、図3の撮像画像から抽出された文字の画像と辞書の画像との照合(S2)と、印字の成否の判定(S3)との間に挿入される処理を表している。
【0053】
すなわち、画像検査装置1は、照合部13での照合(S2)を行う度に、照合回数をカウント部でカウントし(S20)、カウント数が既定数に到達すると(S21:Yes)、辞書の切り替えを行う(S22)。
【0054】
カウント数と使用する辞書との関係は、たとえば下記表1のように設定される。これにより、照合回数が増加するに従って、照合部13で使用する辞書が第1の辞書、第2の辞書、第3の辞書、第4の辞書の順に切り替わることになる。
【0055】
【表1】

【0056】
以上説明した構成によれば、印字済みの文字数に応じて照合部13で使用する辞書が順次切り替わることになるので、印字した文字数に応じて印字の品質が低下するような場合に、最適な辞書に自動的に切り替えることができる。
【0057】
また、画像検査装置1は、印字機との通信機能により印字回数や使用状況を印字機から取得し、その結果に基づいて辞書の追加や辞書の切替を制御するようにしてもよい。この場合、文字以外での印字機の使用状況などを加味することもできる。
【0058】
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
【0059】
(実施形態3)
本実施形態の画像検査装置1は、追加登録部16により辞書が追加された場合に、辞書記憶部11に記憶されている各辞書をそれぞれ照合部13に使用して品質率を求め、結果を出力する試用部(図示せず)を有する点が実施形態1の画像検査装置1と相違する。
【0060】
試用部は、追加登録部16により辞書が登録される前から照合部13で使用していた辞書を第1の辞書とし、追加登録部16により新たに追加登録された辞書を第2の辞書とし、第1の辞書と第2の辞書とのそれぞれを用いて品質率を求める。さらに、試用部は、ディスプレイへの表示や音の出力によって結果を提示する。
【0061】
以下、上記構成の画像検査装置1の動作について図7のフローチャートを参照して説明する。図7のフローチャートは、図3の辞書を辞書記憶部11に追加登録する処理(S6)と、良品印字の報知(S7)との間に挿入される処理を表している。
【0062】
すなわち、画像検査装置1は、辞書を辞書記憶部11に追加で登録する(S6)度に、第1の辞書を用いた照合(S30)と、第2の辞書を用いた照合(S31)とを並行して行い、それぞれの照合結果を出力する(S32)。ここでは、画像検査装置1は求めた品質率を照合結果として出力するものとするが、これに限らず、判定部14での良品印字・不良印字の判定結果を出力するようにしてもよい。
【0063】
以上説明した構成によれば、ユーザは、照合部13で使用する辞書を切り替えるか否かの判断に、第1、第2の両方の辞書についての照合結果を判断材料として用いることができる。要するに、ユーザは、辞書を切り替えることにより無駄はねが低減すると判断できる場合には辞書の切替を行い、辞書を切り替えても無駄はねが低減しない場合には辞書の切替を行わないといった的確な判断が可能となる。
【0064】
また、画像検査装置1は、追加登録部16により辞書が追加登録された場合に、第1の辞書および第2の辞書に加えて、第1の辞書と第2の辞書とを用いて作成される第3の辞書を新たに辞書記憶部11に登録する構成としてもよい。第3の辞書は、第1の辞書の画像から第2の辞書の画像に変化する途中の状態の画像を文字に対応付けて作成されるものであって、第1の辞書と第2の辞書との中間的な辞書である。
【0065】
この場合、試用部は、第1の辞書および第2の辞書、さらに第3の辞書のそれぞれを用いて品質率を求め、照合結果を出力する。このように、中間的な第3の辞書を用いることで、第1の辞書と第2の辞書とのみを用いる場合に比べて、品質率の低下に合わせてより的確な辞書を用いた照合が可能になる。
【0066】
ところで、本実施形態の画像検査装置1は、第1の辞書から第3の辞書、第2の辞書へと順次辞書を切り替えたにもかかわらず、品質率が改善されない場合に、異常の発生を報知する異常報知部(図示せず)を有する。ここで、辞書切替部17は、第1の辞書を用いて照合を行った際に不良印字と判定されると第3の辞書に切り替え、第3の辞書を用いて照合を行った際に不良印字と判定されると第2の辞書に切り替えるように、段階的に辞書を切り替えるものとする。
【0067】
すなわち、図8のフローチャートに示すように、画像検査装置1は、撮像画像の取込後(S1)、第1の辞書による照合(S40)、判定を実行し(S41)、不良印字であれば(S41:No)、第3の辞書による照合(S42)に移行する。第3の辞書を用いても不良印字と判定されれば(S43:No)、画像検査装置1は、第2の辞書による照合(S44)、判定を実行し(S45)、不良印字であれば(S45:No)、異常を報知する(S46)。
【0068】
このように異常を報知する機能を有することにより、印字機の経年劣化が原因ではなく、たとえば印字機の故障などが原因で文字の品質率が低下した場合、使用する辞書を切り替えても品質率が改善しない旨をユーザに通知できる。
【0069】
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
【符号の説明】
【0070】
1 画像検査装置
11 辞書記憶部
13 照合部
14 判定部
16 追加登録部
17 辞書切替部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に印字される文字と当該文字の画像とを対応付けた辞書が予め登録されている辞書記憶部と、前記対象物を撮像装置で撮像して得られる撮像画像を用いて前記対象物に印字されている文字を検査する文字検査部とを備え、前記文字検査部は、前記撮像画像中の文字の画像と当該文字の前記辞書内の画像とを照合することで、両者が一致する度合いを表す品質率を求める照合部と、前記品質率が予め設定されている判定閾値よりも高ければ良品印字と判定し前記判定閾値以下であれば不良印字と判定する判定部と、前記判定部で良品印字と判定された場合において前記品質率が前記判定閾値よりも高く設定されている規定値を下回ったときに、前記撮像画像中の文字の画像を当該文字に対応付けて作成される新たな辞書を前記辞書記憶部に追加で登録する追加登録部とを有することを特徴とする画像検査装置。
【請求項2】
前記文字検査部は、前記辞書記憶部に前記辞書が複数登録されている場合に、前記判定部で不良印字との判定が既定回数連続すると、前記照合部で使用する辞書を前記辞書記憶部内に登録されている複数の前記辞書の間で切り替えるための切替処理に移行する第1切替部を有することを特徴とする請求項1記載の画像検査装置。
【請求項3】
前記文字検査部は、前記辞書記憶部に前記辞書が複数登録されている場合に、前記不良印字と判定され、且つ前回の前記判定部での判定に用いた前記品質率から今回の前記判定部での判定に用いた前記品質率の変化量が既定量以下であれば、前記照合部で使用する辞書を前記辞書記憶部内に登録されている複数の前記辞書の間で切り替えるための切替処理に移行する第2切替部を有することを特徴とする請求項1記載の画像検査装置。
【請求項4】
前記文字検査部は、前記辞書記憶部に前記辞書が複数登録されている場合に、前記照合部での照合回数をカウントするカウント部と、前記カウント部のカウント数に応じて前記照合部で使用する辞書を前記辞書記憶部に登録されている複数の前記辞書の中で切り替える第3切替部とを有することを特徴とする請求項1記載の画像検査装置。
【請求項5】
前記文字検査部は、前記追加登録部により前記辞書が追加で登録された場合に、当該辞書が登録される前から前記照合部で使用していた前記辞書を第1の辞書とし、前記追加登録部により追加で登録された前記辞書を第2の辞書とし、前記第1の辞書と前記第2の辞書とのそれぞれを前記照合部に使用して前記品質率を求め、結果を出力する試用部を有することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の画像検査装置。
【請求項6】
前記文字検査部は、前記追加登録部により前記辞書が追加で登録された場合に、当該辞書が登録される前から前記照合部で使用していた前記辞書を第1の辞書とし、前記追加登録部により追加で登録された前記辞書を第2の辞書とし、前記第1の辞書の画像から前記第2の辞書の画像に変化する途中の状態の画像を文字に対応付けて作成される前記辞書を第3の辞書として前記辞書記憶部に登録することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の画像検査装置。
【請求項7】
前記文字検査部は、前記第1の辞書と前記第2の辞書と前記第3の辞書とのそれぞれを前記照合部に使用して前記品質率を求め、結果を出力する試用部を有することを特徴とする請求項6記載の画像検査装置。
【請求項8】
前記文字検査部は、前記辞書記憶部に前記辞書が複数登録されている場合に、前記照合部で使用する前記辞書を前記辞書記憶部に登録されている複数の前記辞書の間で切り替えても前記品質率が改善されなければ、異常の発生を報知する異常報知部を有することを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の画像検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−165135(P2011−165135A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30385(P2010−30385)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】