説明

画像物の複写防止方法及び画像形成装置

【課題】高度な技術が不要で、一般的なプリンターで実行でき、高価なステルスインクの消費量が少ない画像物の複写防止方法を提供する。
【解決手段】この画像物の複写防止方法は、画像物の前記文字領域の少なくとも一部と重なるように、文字領域の文字に対応した寸法の繰り返し模様からなるマスク領域をステルスインクで形成する。繰り返し模様は、文字領域の文字を構成するドットの寸法と同等の単位寸法である一松模様等の基本パターンである。少ない量のステルスインクでマスク領域を経済的に形成できる。これを複写すれば、マスクが文字領域の一部に重なって複写されるので、マスクされた部分の文字が読めなくなり、文章全体の意味がとれなくなるため、複写防止の効果を達成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文字が印刷された印刷物にステルスインクでマスク印刷を施すことによりその印刷物を複写、印刷した場合に印刷物を読みにくくし、印刷物の複写を牽制乃至防止する複写防止方法に係り、特にステルスインクの使用量が少なく経済的でありながら大きな効果が得られる画像物の複写防止方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
印刷物の持つ情報や価値を、偽造、不正コピー、漏洩等から守るためのセキュリティー技術は近年益々重要視されるようになっている。このような印刷物の複写防止のためのセキュリティー技術としては、例えばすき入れ、特殊インク、潜像模様、ホログラム、微細文字・模様等が知られている。すき入れは、電子的な「透かし」を用紙に入れる技術である。特殊インクとは、見る角度によって色が変わったり、特殊な光によって発光したりするインクである。潜像模様とは、見る角度によって色の変わる特殊インクと、見る角度を変えても色の変わらない通常のインクを組み合わせて印刷し、見る角度によって模様を出現させる技術である。ホログラムとは、レーザーで干渉縞をフィルムなどに照射することで像を記録する技術である。微細文字・模様とは、模様の一部を微細な文字にしたり、非常に細かい線で肖像画等を描く等の技術である。
【0003】
また、下記特許文献1には、印刷された用紙の所定位置に赤外線を吸収するIRインク等のステルスインクをストライプ状にべた印刷して複写防止領域を形成する技術が開示されている。ステルスインクが印刷された複写防止領域は目には見えないので、ユーザーは用紙の印刷された内容を視認することができるが、この印刷された用紙をモノクロ複写した場合には、複写防止領域はベタ状に黒くつぶれて出力されるので、複写防止領域の画像や文字は判読し辛くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−10721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したすき入れ、特殊インク、潜像模様、ホログラム、微細文字・模様等のセキュリティー技術は、精密・細密な高度な技術を必要とするものであり、一般的なプリンター等では再現することができず、多大なコストを要するという問題があった。
【0006】
また、上記特許文献1に開示された発明によれば、高価なステルスインクをストライプ状にべたで印刷するため、多量のステルスインクを消費し、費用が嵩むという問題があった。
【0007】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、精密・細密な高度な技術が不要であり、一般的なプリンター等で実行でき、さらに高価なステルスインクの消費量が従来よりも少なく経済的である画像物の複写防止方法及び装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載された画像物の複写防止方法は、文字領域が形成された画像物の複写を防止する複写防止方法において、
前記画像物の前記文字領域の少なくとも一部と重なるように、前記文字領域の文字に対応した寸法の繰り返し模様からなるマスク領域をステルスインクを用いて形成することを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載された画像物の複写防止方法は、請求項1記載の画像物の複写防止方法において、
前記マスク領域の前記繰り返し模様は、前記文字領域の文字の大きさと種類に対応して定められた単位寸法と基本パターンによって規定されることを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載された画像物の複写防止方法は、請求項2記載の画像物の複写防止方法において、
前記単位寸法は、一個の前記文字を構成するドットの寸法であることを特徴としている。
【0011】
請求項4に記載された画像物の複写防止方法は、請求項3記載の画像物の複写防止方法において、
前記基本パターンは、市松模様と、複数の同一の三角形が各頂点で接触するうろこ模様と、複数の同一の円が所定の一定間隔で配置された水玉模様からなる基本パターン群から選択されることを特徴としている。
【0012】
請求項5に記載された画像形成装置は、
画像情報に基づいて印刷用紙に文字領域を含む画像を形成する第1の画像形成手段と、
印刷用紙における前記文字領域の位置を判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果に基づいて前記文字領域の少なくとも一部と重なるように前記文字領域の文字に対応した寸法の繰り返し模様からなるマスク領域をステルスインクを用いて形成する第2の画像形成手段と、
を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載された画像物の複写防止方法又は請求項5に記載された画像形成装置によれば、画像物の文字領域の少なくとも一部と重なるように、文字領域の文字に対応した寸法の繰り返し模様からなるマスク領域を比較的少ない量のステルスインクで経済的に形成できる。この画像物を複写すれば、文字を認識しにくくするパターンのマスクが文字領域の少なくとも一部に重ねられて複写されるので、マスクされた部分の文字が読み辛くなり、文章全体の意味がとれなくなるため、複写防止の効果を達成することができる。
【0014】
請求項2に記載された画像物の複写防止方法は、請求項1記載の画像物の複写防止方法において、文字領域の文字の大きさと種類に対応して定められた単位寸法と基本パターンによってマスク領域の繰り返し模様を規定したので、文字の線の太さに合わせた大きさの繰り返し模様によって効果的に文字を読み難くすることができる。
【0015】
請求項3に記載された画像物の複写防止方法は、請求項2記載の画像物の複写防止方法において、一個の文字が形成される矩形領域を複数に分割しているドットの寸法を単位寸法としたので、字の種類やポイント数に関わらず、文字の線の太さに合わせた大きさの繰り返し模様により、一層効果的に文字を読み難くすることができる。
【0016】
請求項4に記載された画像物の複写防止方法は、請求項3記載の画像物の複写防止方法において、文字をマスクする基本パターンとしては、市松模様と、うろこ模様と、水玉模様から自由に選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る複写防止方法によって処理した印刷物の複写結果を示す図である。
【図2】本発明の実施形態における文字と当該文字に対応したマスク領域の例(b〜f)を、比較例(a)と対比させて示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る複写防止処理機能を備えた画像形成装置の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本実施形態に係る複写防止方法を図1及び図2を参照して説明する。
本実施形態の複写防止方法は、画像物である印刷物を電子複写機等によって複写することを防止乃至抑止する方法に関するものである。ここで、本方法の対象となる印刷物とは、絵、写真、表図等を含むグラフィック領域と、文字を含む文字領域とが用紙に形成されてなる画像物であって、少なくとも一部に文字領域を含むことが条件とされる。本方法によれば、この文字領域の少なくとも一部にステルスインクによって所定パターンのマスクを印刷する。この印刷物を複写した場合には、このマスクが黒く現れて文章を部分的に読み難い状態とするので、これによって情報等を不正コピー、漏洩等から守ることができる。
【0019】
なお、ステルスインクとしては、一般的な複製用のコピー機の撮像素子と光源の赤外線に対応する特性を利用するため、本例では赤外線を吸収するIRインクを利用するが、その他のタイプのものであってもかまわない。
【0020】
なお、ここで、マスク領域とは、印刷物にステルスインクが印刷された領域を意味すると共に、ステルスインクでマスク領域が形成された印刷物を複写した場合に、得られる複写物の中で文字領域に重なって黒く現れる前記マスク領域の複写結果をも意味するものとする。なお、印刷物にステルスインクで印刷したマスク領域は、事実上透明であり、文字領域を視認する際に障害になるものではない。
【0021】
図1は、ステルスインクのマスク領域Mを文字領域Lの一部に重ねて形成した印刷物を複写して得られる複写物を示す図である。この例においては、印刷物の全領域が文字領域Lであり、複写物に現れるマスク領域Mは複写された文字領域Lの一部を隠しているにすぎないが、隠されている部分の文字が読み取れないことから、隠されていない部分があっても、文章全体としての意味は理解することができない。このように、必要とされるセキュリティーの度合いにもよるが、文字領域Lの全体をマスクせずに、部分的にマスクするだけでも複写防止の効果は挙げることができ、高価なステルスインクの使用量を抑えつつ、必要な複写防止効果を達成することができる。
【0022】
なお、図1中に示すように、形成するマスク領域Mは、例えば150dpi程度の解像度のライン形インクジェットヘッド1bを用い、印刷用紙の最大幅に対して10%から50%の幅で形成する。この際、例えばA4縦の印刷用紙に対して縦方向に連続する複数本のストライプ状に形成してもよいし、A4横の印刷用紙に対して横方向に連続する複数本のストライプ状に形成してもよい。要するに、なるべく小さいインクジェットヘッドを用い、なるべく少ないIRインクで印刷用紙の文字領域Lの判読を困難にして、最大の複写防止効果が挙げられるようにすることが肝要である。
【0023】
図1に示すように、前記マスク領域Mはステルスインクをベタに印刷したものではなく、印刷部分と非印刷部分の規則的な配置による繰り返し模様で構成されている。すなわち、この実施形態においてマスク領域Mを構成するステルスインクの規則的な繰り返し模様は、多数の同一の正方形を四隅が接触するように並べた市松模様を基本パターンとしている。このように、文字領域Lの全面をステルスインクでベタ状に覆わず、マスクされた文字領域Lが繰り返し模様の隙間から部分的に見えていても、文字領域Lを構成する各文字の見え方が不完全であるために文字としての認識ができなくなり、高価なステルスインクの使用量を抑えつつ、必要な複写防止効果を達成することができる。
【0024】
図2は、実施形態における文字(例として「衰」とする)と当該文字に対応したマスク領域Mの例(b〜f)を、比較例(a)と対比させて示す図である。この図の各分図(a〜f)において、(イ)はマスク対象である各種字体の文字「衰」を示し、(ロ)はマスク領域Mである粗密の程度が異なる各種市松模様を示し、(ハ)は市松模様でマスクされた文字の見え方を示している。この図2に示すように、市松模様の正方形の辺長の違い、すなわち市松模様の正方形の大小により、市松模様で覆われた文字の見え方には差異が生じる。
【0025】
図2の(a)は従来のベタ状のマスクであり、文字「衰」はベタ状のマスクで全面的に隠されているが、実際には文字の黒とマスクの黒の微妙な違いにより、ベースとなる黒いマスクに重なった黒い文字が浮き上がって視認され、文字として判別できてしまう。ところが、図2(b)〜(f)に示す実施形態のように、黒い正方形と正方形の白い抜け部分とからなる市松模様を文字に重ねると、白い抜け部分から文字が部分的に見えているにも関わらず、文字としての形状が識別し難くなり、文字として判別することができなくなってしまう。
【0026】
図2(b)〜(f)に示す実施形態では、同図(b)、(d)、(f)の各(イ)に示す文字「衰」は、同図(c)、(e)の各(イ)に示す文字「衰」よりも文字の線が太い。
線が比較的太い文字に関する同図(b)、(d)、(f)においては、各(ロ)に示す市松模様は正方形の辺長が異なるため、その結果、各(ハ)に示すように文字の見え方も微妙に変化する。具体的には、同図(b)、(d)、(f)のいずれにおいても、各(ハ)に示すように文字は識別しにくくなっているが、同図(b)に比べれば、同図(d)、(f)では市松模様は正方形の辺長が文字の線の太さに近づいているので、文字はより識別しにくい傾向にある。
【0027】
線が比較的細い文字に関する同図(c)、(e)においては、各(ロ)に示す市松模様は正方形の辺長が異なるため、その結果、各(ハ)に示すように文字の見え方も微妙に異なるが、同図(c)、(e)のいずれにおいても、市松模様の正方形の辺長は文字の線の太さに近いので、各(ハ)に示すように文字は識別しにくくなっている。
【0028】
図2に一例として示したように、本実施形態では、市松模様の正方形の辺長を文字の大きさ(文字を構成する線の太さ)に対応して適当に定めることにより、市松模様で覆われた文字を文字としてより認識しにくい状態とすることができる。
【0029】
マスク領域Mを構成する繰り返しパターンは、マスクする文字を判別しにくくするためには、文字領域Lの文字の大きさと種類に対応して定められた単位寸法と基本パターンによって規定されるようにすることが好ましい。ここで、単位寸法とは、繰り返し表れる基本パターンの単位図形の大きさを端的に示す寸法であり、基本パターンが前記市松模様であれば単位図形である正方形の辺長であり、複数の同一の三角形が各頂点で接触するうろこ模様が基本パターンであれば、単位図形である三角形の辺長であり、複数の同一の円が所定の一定間隔で配置された水玉模様が基本パターンであれば、単位図形である円の半径及び中心間隔である。
【0030】
そして、前記繰り返しパターンの単位寸法は、一個の文字を構成するドットの寸法と実質的に同等に設定することが好ましい。つまり、文字は、一文字が印刷される範囲としてある大きさの矩形の領域を有しており、この矩形領域は縦横に格子状に区画された複数個のドットで構成されている。そして、この複数のドットを選択的に印字することにより、矩形領域の中に任意の文字の形状を表わすのである。一般に文字の矩形領域の1辺の長さは、その文字の大きさを表す数値であるポイント数と呼ばれており、この矩形領域は縦横にn分割されることでn×n個のドットに細分化されている。この矩形領域のドットへの細分数(矩形領域がいくつのドットから構成されているか)は、文字の種類やフォントによって異なり、一般的に構造の複雑な文字ではnが大きく、構造が比較的簡単な文字ではnが小さい。英文字では、矩形領域が縦長の長方形であり、縦のn=7、横のn=5であり、矩形領域は5×7個のドットに細分化されている。
【0031】
このように、マスク領域Mを構成する繰り返しパターンの単位寸法を、一文字分の矩形領域を構成するドットの寸法、すなわち文字のポイント数を文字の種類で決まる分割数nで除した値とすれば、その文字を構成する線の太さが、マスクの繰り返しパターンの単位図形の大きさに近くなるため、パターンが文字を部分的に隠したり、パターンが、存在しない文字の一部に見えたりすることにより、当該文字が判別しにくくなる。
【0032】
次に、印刷物の文字領域L(又は印刷前の印刷用紙の文字領域Lとなる部分)に、以上説明したようなマスク領域Mをステルスインクで印刷する複写防止処理機能を備えた画像形成装置としてのインクジェットプリンターについて、図3の機能ブロック図を参照して説明する。
図3に示すように、このインクジェットプリンター10は、使用者の指示に従って各部に制御信号を送る操作部11と、印刷時に画像データの処理を行なう画像処理部12と、印刷時に印刷機構を駆動する機構部13から構成されている。操作部11は、使用者が指示を入力するための入力手段及び必要な情報の表示手段として、タッチパネル方式の操作パネル14を有している。また、操作部11には、操作パネル14から入力された指示に従い、後述する各部を制御するための制御信号を生成する主制御部15が設けられている。
【0033】
図3に示すように、画像処理部12には、印刷しようとする画像の元データ(生データ)を1フレームごとにビットマップ形式で格納するフレームメモリーである第1の画像メモリ部16(以下、第1画像メモリ部16と称する。)が設けられている。この第1画像メモリ部16にデータを供給する第1の供給源として、原稿から画像を読み取って画像データを出力する読取部としてのスキャナ17がある。スキャナ17から出力された画像データは、入力画像処理部18を経て第1画像メモリ部16に格納される。また、第1画像メモリ部16にデータを供給する第2の供給源として、図示しない外部のパーソナルコンピュータ(PC)等から画像データが入力されるI/F入力処理部19がある。I/F入力処理部19から入力された画像データは、ラスターイメージプロセシング(RIP)20を経て第1画像メモリ部16に格納される。I/F入力処理部19から入力された画像データがビットマップ形式のデータである場合は、そのまま第1画像メモリ部16に格納されるが、コマンドデータである場合には、ラスターイメージプロセシング(RIP)20でビットマップ画像に変換されて第1画像メモリ部16に格納される。
【0034】
図3に示すように、画像処理部12は、画像データ中の文字領域Lとグラフィック領域の識別を行なう領域判定等に利用される第2の画像メモリ部21(以下、第2画像メモリ部21と称する。)と、必要に応じて第2画像メモリ部21を利用することにより出力画像データを生成して出力する出力画像処理部22と、出力画像処理部22からの出力画像データによって駆動される通常インク用のインクジェットヘッド1a(IJヘッド)を有している。スキャナ17で読み取られ、入力画像処理部18で処理されて第1画像メモリ部16に格納されたビットマップデータは、印刷時には第1画像メモリ部16から入力画像処理部18を経て、切替手段23から出力画像処理部22に供給される。ラインデータとして供給されるこのビットマップデータは、第2画像メモリ部21においてインクジェットヘッド1aのノズル配置に対応して適当に分割され、出力画像処理部22によって順次インクジェットヘッド1aに与えられる。外部のPCからI/F入力処理部19を経由して入力され、第1画像メモリ部16に格納されたビットマップデータは、印刷時には第1画像メモリ部16からラスターイメージプロセシング(RIP)20を通過し、切替手段23から出力画像処理部22に供給される。ラインデータとして供給されるこのビットマップデータは、第2画像メモリ部21においてインクジェットヘッド1aのノズル配置に対応して適当に分割され、出力画像処理部22によって順次インクジェットヘッド1aに与えられる。
【0035】
図3に示すように、画像処理部12は、第2の画像メモリ部21に格納された画像データから文字領域と判別された画像データを1ラインごとに一時記憶するラインメモリである第3の画像メモリ部25(以下、第3画像メモリ部25と称する。)と、第3画像メモリ部25に順次格納される画像データの文字の種類、文字サイズに基づき前述したマスク領域Mの画像データを生成して出力する抑制画像発生部24と、抑制画像発生部24から送られてくるマスク領域Mの画像データで駆動されるステルスインク用のインクジェットヘッド1b(IJヘッド)を有している。抑制画像発生部24は、第3画像メモリ部25の画像データの文字の種類、文字サイズを利用してマスク領域Mの1ライン毎の画像データを生成するとともに、第2画像メモリ21が有する画像データ中の文字領域Lと判定された部分のデータを利用し、印刷用紙に印刷された画像中の文字領域L又は印刷される前の印刷用紙の文字領域Lとなる部分に、マスク領域Mの画像データを用いてマスク領域Mが印刷されるように、ステルスインク用のインクジェットヘッド1bを駆動する。
【0036】
図3に示すように、画像処理部12は、ラインメモリである第3の画像メモリ部25(以下、第3画像メモリ部25と称する。)と、第3画像メモリ部25を利用することにより前述したマスク領域Mの画像データを生成して出力する抑制画像発生部24と、抑制画像発生部24から送られるマスク領域Mの画像データで駆動されるステルスインク用のインクジェットヘッド1b(IJヘッド)を有している。抑制画像発生部24は、第3画像メモリ部25のデータを利用してマスク領域Mの画像データを生成するとともに、第2画像メモリ21が有する画像データ中で文字領域Lと判定された部分のデータを利用し、印刷用紙に印刷された画像中の文字領域L又は印刷される前の印刷用紙の文字領域Lとなる部分に、マスク領域Mの画像データを用いてマスク領域Mが印刷されるように、ステルスインク用のインクジェットヘッド1bを駆動する。
【0037】
なお、図3には示していないが、ステルスインクによるマスク領域Mの印刷を画像の印刷前に行なう場合は、ステルスインク用のインクジェットヘッド1bは、インクジェットヘッド1aの手前の給紙装置側に配置し、ステルスインクによるマスク領域Mの印刷を画像の印刷後に行なう場合は、ステルスインク用のインクジェットヘッド1bは、インクジェットヘッド1aより後の排紙装置側に配置する。
【0038】
図3に示すように、機構部13は、主制御部15からの制御信号を受けて駆動信号を出力する機構制御部30と、機構制御部30からの駆動信号によって駆動される駆動部31を備えている。駆動部31は、印刷時等に印刷機構を駆動する駆動源であって、例えば印刷用紙の搬送ベルト等の搬送手段、給紙部、排紙部、印刷用紙の両面に印刷を行なうために機能する用紙搬送系統中の用紙反転手段、そしてスキャナ17の駆動部等を含んでいる。
【0039】
このインクジェットプリンター10によれば、例えばスキャナ17で原稿から画像データを読み取り、出力画像処理部22で制御されるインクジェットヘッド1aによって前記画像データに基づいて印刷用紙に画像を形成した後、画像データ中で文字領域Lと判定された部分に相当する印刷用紙上の一部に、抑制画像発生部24で制御されるインクジェットヘッド1bによって繰り返し模様からなるマスク領域Mをステルスインクによってブロック単位で印刷することができる。
【0040】
又は、このインクジェットプリンター10によれば、例えばスキャナ17で原稿から画像データを読み取り、画像データ中の文字領域Lを抽出し、画像データ中の文字領域Lに相当する印刷用紙上の一部に、抑制画像発生部24で制御されるインクジェットヘッド1bにより、繰り返し模様からなるマスク領域Mをステルスインクを使ってブロック単位で印刷し、その後に、出力画像処理部22で制御されるインクジェットヘッド1aによって前記画像データに基づき印刷用紙に画像を形成することができる。
【0041】
このインクジェットプリンター10によれば、マスク領域Mを印刷するのが画像を印刷する前か後かに関わらず、いずれにしても、印刷用紙上の文字領域Lの少なくとも一部に重ねてステルスインクのマスク領域Mが印刷される。この状態では、マスク領域Mを通して文字領域Lを視認できるが、この印刷用紙を複写すれば、マスク領域Mが顕在化して黒く複写され、これと重なる複写された文字領域Lの一部は判読することができなくなる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態では、繰り返し模様からなるマスク領域Mを文字領域Lの一部にブロック単位で重ねてステルスインクで印刷するので、これを複写した場合には複写された文字領域Lは黒いマスク領域Mによって空間ノイズを与えられて判読不能となる。このような空間ノイズは、画像のベース濃度に基づいて画素の各ドットの白黒を判定するベースライン処理によって排除することは困難であり、ベタ状のマスクで覆い隠す場合等に比べて高い信頼性で複写防止乃至抑止の効果を得ることができる。また文字の大きさや字体等に合わせてマスクパターンの密度やサイズを最適化すれば、複写防止乃至抑止の効果はさらに向上し、信頼性は一層高まる。また、ベタでマスクを形成する場合に比べて高価なステルスインクの使用量が減るので消耗品のコストが低減する。さらにまた、複数のインクジェットヘッドのうち、一つをステルスインク用とし、文字に合わせた繰り返しパターンのマスク領域Mの制御データを制御部の記憶手段に与えるだけで、一般的なプリンター等を本実施形態のインクジェットプリンターとして使用することができ、装置としてのコストも安価に抑えることができる。
【符号の説明】
【0043】
1a…通常インク用のインクジェットヘッド
1b…ステルスインク用のインクジェットヘッド
22…出力画像処理部
24…抑制画像発生部
M…マスク領域
L…文字領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
文字領域が形成された画像物の複写を防止する複写防止方法において、
前記画像物の前記文字領域の少なくとも一部と重なるように、前記文字領域の文字に対応した寸法の繰り返し模様からなるマスク領域をステルスインクを用いて形成することを特徴とする画像物の複写防止方法。
【請求項2】
前記マスク領域の前記繰り返し模様は、前記文字領域の文字の大きさと種類に対応して定められた単位寸法と基本パターンによって規定されることを特徴とする請求項1記載の画像物の複写防止方法。
【請求項3】
前記単位寸法は、一個の前記文字を構成するドットの寸法であることを特徴とする請求項2記載の画像物の複写防止方法。
【請求項4】
前記基本パターンは、市松模様と、複数の同一の三角形が各頂点で接触するうろこ模様と、複数の同一の円が所定の一定間隔で配置された水玉模様からなる基本パターン群から選択されることを特徴とする請求項3記載の画像物の複写防止方法。
【請求項5】
画像情報に基づいて印刷用紙に文字領域を含む画像を形成する第1の画像形成手段と、
印刷用紙における前記文字領域の位置を判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果に基づいて前記文字領域の少なくとも一部と重なるように前記文字領域の文字に対応した寸法の繰り返し模様からなるマスク領域をステルスインクを用いて形成する第2の画像形成手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。


【図3】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−74507(P2013−74507A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212813(P2011−212813)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】