説明

画像表示システム

【課題】ユーザがフィルタを介して、あるいは介さずに観察したとき、いずれの場合であっても、ユーザが認識可能な画像を表示しうる画像表示システムを得る。
【解決手段】第1の観察用メガネ30の第1のフィルタ31は、赤色周辺の波長を有する光を透過しない。そのため、第1の画像50をユーザが観察すると、第1の領域41が最も明るく見え、その次に第2の領域42が明るく見え、第3の領域43が最も暗く感じる。これは、第1の観察用メガネ30の第1のフィルタ31により赤色周辺の波長が削られることにより、第1から第3の領域41、42、43の明度が変化して見えるためである。そして、第1から第3の領域41−43が発する光の明度が異なるため、第1から第3の領域41−43の明度が互いに異なって見える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタを介して観察したときとフィルタを介さずに観察したときとでユーザが認識する画像が異なる画像表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示システムには、フィルタを介して観察したときとフィルタを介さずに観察したときとで異なる画像を表示可能なものがある。1つの画素は、2組の3原色、計6色の蛍光体を備える。6色の蛍光体は、実質的に互いに排他的な分光分布特性を有し、これにより、2つのRGB3原色系が形成される。2つのRGB3原色系を形成するために、6色の蛍光体は狭帯域の光を発光する。左右の目に相当する2つのカメラで撮影した画像を、画像表示システムは各RGB3原色系を用いて各々表示する。そしてユーザは、各RGB3原色系を透過するフィルタを通した画像を左右の目で各々観察することにより、左右の目で各々異なる画像を認識する(特許文献1)。このようなフィルタとして、干渉フィルタが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−300658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ヒトの目は、光のスペクトルの違いを認識できないので、従来の構成では、ユーザがフィルタを使用しないで画像を観察すると、ユーザは右目用画像と左目用画像を弁別できず重畳された画像として知覚されてしまう。そのため、フィルタがなければユーザが画像を正確に認識できない。また、干渉フィルタは、一般的に高価であるとともに、視野角に依存性があり、視野角が大きくなると透過する波長がシフトする傾向がある。そのため、観察する角度によっては、ユーザが画像を正確に認識できないおそれがある。さらに、狭帯域の光で発光素子を発光させると、輝度を確保することが困難である。
【0005】
本発明はこれらの問題を鑑みてなされたものであり、ユーザがフィルタを介して、あるいは介さずに観察したとき、いずれの場合であっても、ユーザが認識可能な画像を表示しうる画像表示システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願第1の発明による画像表示システムは、互いに独立である複数の色を各々発光する複数の第1の発光素子と、第1の発光素子とは異なる色であって互いに独立である複数の色を各々発光する複数の第2の発光素子とから成る画素を複数備える表示部材と、第1及び第2の発光素子の発光輝度を制御する発光制御部と、第1及び第2の発光素子が発光する複数の色の光のいずれかを透過しない観察フィルタとを備え、発光制御部は、第1の発光素子が発した光による三刺激値が、第2の発光素子が発した光による三刺激値と等しくなるように第1及び第2の発光素子の発光輝度を制御することを特徴とする。
【0007】
表示部材は、表示する画像に応じて設けられる第1の領域及び第2の領域を有し、発光制御部は、第1の領域内に位置する第1及び第2の発光素子の発光輝度が互いに等しくなり、第2の領域内に位置する複数の第2の発光素子の発光輝度が互いに等しくなり、かつ第1の領域を構成する画素の1つにおいて、その画素に属する全ての発光素子の輝度の合計が、第2の領域を構成する画素の1つに属する全ての発光素子の輝度の合計と等しくなるように、第1及び第2の発光素子の発光輝度を制御する要に構成されればなお良い。
【0008】
表示部材は、表示する画像に応じて設けられる第3の領域をさらに有し、発光制御部は、第3の領域内に位置する複数の第1の発光素子の発光輝度が互いに等しくなるように、かつ第1及び第2の領域内に位置する複数の第1及び第2の発光素子の発光輝度と異なるように制御してもよい。
【0009】
複数の第1及び第2の発光素子は、発光する光を混色することにより複数色の光を生成可能であることが好ましい。
【0010】
第1の発光素子は、RGB各色の発光色を有する発光素子から成り、第2の発光素子は、CYM各色の発光色を有する発光素子から成ることが好ましい。
【0011】
観察フィルタは、R、G、B、C、Y、M各色のうち1色以上の光を透過しないことが好ましい。
【0012】
本願第2の発明による画像表示装置は、互いに独立である複数の色を各々発光する複数の第1の発光素子と、第1の発光素子とは異なる色であって互いに独立である複数の色を各々発光する複数の第2の発光素子とから成る画素を複数備える表示部材と、第1及び第2の発光素子の発光輝度を制御する発光制御部とを備え、発光制御部は、第1の発光素子が発した光による三刺激値が、第2の発光素子が発した光による三刺激値と等しくなるように第1及び第2の発光素子の発光輝度を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ユーザがフィルタを介して、あるいは介さずに観察したとき、いずれの場合であっても、ユーザが認識可能な画像を表示しうる画像表示システムを得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施形態による画像表示システムを模式的に示した図である。
【図2】画素を拡大して表示した図である。
【図3】第1の観察用メガネのフィルタが透過する光の波長を示した図である。
【図4】人間の目における等色関数を模式的に示した図である。
【図5】第1の画像を示した図である。
【図6】各領域に位置する画素が発光する光の波長を示した図である。
【図7】ユーザがフィルタを介さずに見たときの画面を示した図である。
【図8】画素が発光した光のうち、フィルタを通過した光の波長を示した図である。
【図9】フィルタを介して見たときの画面を示した図である。
【図10】文字情報を表示する画像を示した図である。
【図11】第2の実施形態による画像表示システムにおいて、第2の観察用メガネのフィルタが透過する光の波長を示した図である。
【図12】第2の画像を示した図である。
【図13】各領域に位置する画素が発光する光の波長を示した図である。
【図14】ユーザがフィルタを介さずに見たときの画面を示した図である。
【図15】画素が発光した光のうち、左目のフィルタを通過した光の波長を示した図である。
【図16】左目のフィルタを介して見たときの画面を示した図である。
【図17】画素が発光した光のうち、右目のフィルタを通過した光の波長を示した図である。
【図18】右目のフィルタを介して見たときの画面を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明における画像表示システムについて添付図面を参照して説明する。
【0016】
まず、第1の実施形態による第1の画像表示システム100の構成について説明する。
【0017】
図1から3を参照すると、第1の画像表示システム100は、画像生成装置10、ディスプレイ20、及び第1の観察用メガネ30から構成される。
【0018】
画像生成装置10とディスプレイ20はケーブルで接続され、画像生成装置10が作成した画像をディスプレイ20が表示する。ユーザ40は、第1の観察用メガネ30を介してディスプレイ20に表示される画像を観察する。
【0019】
ディスプレイ20は画面を有する。画面は、複数のピクセル21により構成され、1つのピクセル21は、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)、シアン色(C)、マゼンタ(色M)、及びイエロー色(Y)の光を透過する6種類のフィルタを1つずつ有する。これらのフィルタを透過する光の波長の外縁は、他のフィルタを透過する光の波長とわずかに重複する。
【0020】
これら6種類のフィルタは、図2に示すような特定の様式に従って1ピクセルの中に並べられる。以下、赤色に発色する画素をR画素、緑色に発色する画素をG画素、青色に発色する画素をB画素、シアン色に発色する画素をC画素、マゼンタ色に発色する画素をM画素、及びイエロー色に発色する画素をY画素と呼ぶ。
【0021】
画像生成装置10は、画像を生成するGPU11と、画像を一時的に記憶するVRAM(画像メモリ)12を備える。VRAM12は各画素に対応するメモリ領域を備え、各画素の輝度を各メモリ領域に記憶する。画像生成装置10が外部から画像を受信すると、GPU11は、VRAM12に画像を一時的に記憶させながら、受信した画像に応じて各画素の輝度を決定する。その後、ディスプレイ20に画像信号を出力する。
【0022】
第1の観察用メガネ30は、特定の波長の光を透過する第1のフィルタ31及び第2のフィルタ32を備える。第1のフィルタ31及び第2のフィルタ32は、観察角度依存性の少ない染色フィルタである。第1のフィルタ31は、図3に図示するような光透過特性を有する。図3は、第1のフィルタ31の光透過特性を模式的に示したものであり、説明のため簡略化している。Bは青色、Cはシアン色、Gは緑色、Yはイエロー色、Rは赤色を示す。
【0023】
図3に示されるグラフにおいて、横軸は光の波長を示す。第1のフィルタ31は、赤色周辺の波長の光を透過せず、青色、シアン色、緑色、イエロー色周辺の波長の光を透過する特性を有する(図3参照)。第2のフィルタ32は、青色、シアン色、緑色、イエロー色、赤色周辺の波長の光を透過する特性を有する。ユーザ40が第1の観察用メガネ30を掛けると、第1のフィルタ31を透過した光がユーザ40の左目に入射し、第2のフィルタ32を透過した光がユーザ40の右目に入射する。
【0024】
人間の目は、図4に図示するような等色関数を有する。図4は、等色関数を模式的に示したものであり、説明のため簡略化している。
【0025】
図4に示されるグラフにおいて、横軸は光の波長を示す。横軸の下に記載した文字は、その波長の光が人間の目に入ったとき、人間が感じる色を表す。Bは青色、Cはシアン色、Gは緑色、Yはイエロー色、Rは赤色を示す。例えばBの波長のみを有する光が人間の目に入ったとき、人間は、青色を感じる。
【0026】
複数の波長を有する光が人間の目に入ったとき、人間が感じる色は、各波長における輝度を等色関数により変換して求められる三刺激値による。ディスプレイ20のように6種類の光を発光する場合、三刺激値X、Y、Zは、等色関数x(λ)、y(λ)及びz(λ)を用いて、以下の式により求められる。Xは赤色に対する刺激値、Yは緑色に対する刺激値、Zは青色に対する刺激値である。
X=∫[380:780]{r・Sr(λ)+g・Sg(λ)+b・Sb(λ)+c・Sc(λ)+m・Sm(λ)+y・Sy(λ)}・x(λ)dλ
Y=∫[380:780]{r・Sr(λ)+g・Sg(λ)+b・Sb(λ)+c・Sc(λ)+m・Sm(λ)+y・Sy(λ)}・y(λ)dλ
Z=∫[380:780]{r・Sr(λ)+g・Sg(λ)+b・Sb(λ)+c・Sc(λ)+m・Sm(λ)+y・Sy(λ)}・z(λ)dλ
ここで、rはR画素の発光輝度、gはG画素の発光輝度、bはB画素の発光輝度、cはC画素の発光輝度、mはM画素の発光輝度、yはY画素の発光輝度である。そして、Sr(λ)はR画素のフィルタを透過した光の分光分布、Sg(λ)はG画素のフィルタを透過した光の分光分布、Sb(λ)はB画素のフィルタを透過した光の分光分布、Sc(λ)はC画素のフィルタを透過した光の分光分布、Sm(λ)はM画素のフィルタを透過した光の分光分布、Sy(λ)はY画素のフィルタを透過した光の分光分布である。
【0027】
次に、外部から受信した第1の画像50を画像生成装置10が画像処理して、ディスプレイ20に表示する構成について図5から7を用いて説明する。
【0028】
第1の画像50は、各画素の輝度が各々異なる第1、第2、及び第3の領域41、42、43を有する。第1及び第3の領域41、43は、右目で所定の物体を観察したときの画像を表し、第1から第3の領域41−43は、左目で所定の物体を観察したときの画像を表す。
【0029】
GPU11は、各領域内に位置する1ピクセルが有する各画素の輝度分布を図6に示すような値に設定する。すなわち、第1の領域41では、B画素、G画素、及びR画素が輝度2.5で各々発光する。第2の領域42では、B画素、C画素、G画素、Y画素、及びR画素が輝度1で各々発光する。そして、第3の領域43では、B画素、G画素、及びR画素が輝度1.75で各々発光する。これらの輝度は、以下の3式のいずれをも満たすように決定される。
L1>L2
[X2,Y2,Z2]=[X3,Y3,Z3]
[r2,g2,b2,c2,m2,y2]≠[r3,g3,b3,c3,m3,y3]
ここで、Lnは第nの領域の明度、[rn,gn,bn,cn,mn,yn]は第nの領域のピクセルが有する各画素の輝度値、[Xn,Yn,Zn]は第nの領域のピクセルが有する各画素の輝度値により得られた三刺激値である。
【0030】
すなわち、第1の領域41の明度は第2の領域42の明度よりも高く、第2の領域42と第3の領域43の輝度値は互いに異なり、第2の領域42と第3の領域43の三刺激値は互いに等しい。
【0031】
そして、このようにして得られた第1の画像50をディスプレイ20に表示する。
【0032】
ユーザ40が第1の観察用メガネ30を掛けないで第1の画像50を観察する場合について図6及び7を用いて説明する。
【0033】
第1及び第3の領域41、43内に位置するB画素、G画素、R画素は、ユーザ40が黒色から白色光を認識するような輝度で各々発光する。しかし、第1の領域41における各画素の輝度から求められる第1の領域41の明度は、第3の領域43における各画素の輝度から求められる明度と異なるため、ユーザ40は、第1の領域41と第3の領域43との境界を認識する。
【0034】
第2の領域42は、B画素、G画素、R画素、C画素、及びY画素が同じ輝度で発光している。これらの輝度を等色関数により求められる三刺激値の値は、第3の領域43の輝度から求められる三刺激値と同じである。そのため、ユーザ40は、第2の領域42と第3の領域43は、同じ色を発光していると認識する。
【0035】
一方、図6のように各画素が発光すると、第1の領域41における各画素の輝度から求められる三刺激値の値は、第2の領域42における三刺激値と異なる。そのため、ユーザ40は、第1の領域41と第2の領域42との境界を認識する。
【0036】
ユーザ40が第1の観察用メガネ30を掛けて第1の画像50を観察する場合について説明する。第1の観察用メガネ30の第1のフィルタ31は、赤色周辺の波長を有する光を透過しない。そのため、第1の観察用メガネ30の第1のフィルタ31を透過した第1の画像50の周波数特性は、図6に示す周波数特性と比較して、赤色周辺の波長が欠けたものになる(図8参照)。
【0037】
これをユーザ40が観察すると、第1の領域41が最も明るく見え、その次に第2の領域42が明るく見え、第3の領域43が最も暗く感じる(図9参照)。これは、第1の観察用メガネ30の第1のフィルタ31により赤色周辺の波長が削られることにより、第1から第3の領域41、42、43の明度が変化して見えるためである。すなわち、第1の領域41は、青色及び緑色周辺の光による明度で発光しているように見え、第2の領域42は、青色、シアン色、緑色、イエロー色周辺の光による明度で発光しているように見え、第3の領域43は、青色及び緑色周辺の光による明度で発光しているように見える。そして、第1から第3の領域41−43が発する光の明度が異なるため、第1から第3の領域41−43の明度が互いに異なって見える。
【0038】
すなわち、ユーザ40は、右目で第1及び第3の領域41、43を認識し、左目で第1から第3の領域41−43を認識する。これにより、ユーザは第1の画像50を立体として認識することができる。
【0039】
本実施形態によれば、第1の観察用メガネ30を用いて観察したとき、あるいは用いずに観察したとき、いずれの場合であっても、ユーザが認識可能な画像を第1の画像表示システム100で表示できる。
【0040】
また、干渉を利用しないため、干渉フィルタよりも安価な染色フィルタを用いることが可能になるとともに、ユーザが認識する画像が観察角度に左右されない。
【0041】
なお、第1のフィルタ31及び第2のフィルタ32が、同じ特性を有しても良い。すなわち、これらは、赤色周辺の波長の光を透過せず、青色、シアン色、緑色、イエロー色周辺の波長の光を透過する特性を有する。このとき、ユーザは画像を立体的に認識することはできないが、第1の観察用メガネ30を使用しているユーザにのみ第2の領域を認識させることができる。例えば、第2の領域42が文字情報の形状を成すように第1の画像50を構成すれば、ユーザ40が第1の観察用メガネ30を掛けないときには認識できない文字情報を、第1の観察用メガネ30を掛けたときにのみ認識することができる(図10参照)。
【0042】
また、第1のフィルタ31が赤色周辺の光を透過しない構成について説明したが、赤色ではなく、他の色であっても良い。
【0043】
次に、第2の実施形態による第2の画像表示システムの構成について図11から17を用いて説明する。第1の実施形態と同様の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0044】
第2の観察用メガネ30は第3のフィルタ31及び第4のフィルタ32を備える。第3のフィルタ31は、赤色周辺の波長の光を透過せず、青色、シアン色、緑色、イエロー色周辺の波長の光を透過する特性を有する(図11参照)。第4のフィルタ32は、イエロー色周辺の波長の光を透過せず、青色、シアン色、緑色、赤色周辺の波長の光を透過する特性を有する(図11参照)。ユーザ40が第2の観察用メガネ30を掛けると、第3のフィルタ31を透過した光がユーザ40の左目に入射し、第4のフィルタ32を透過した光がユーザ40の右目に入射する。
【0045】
次に、外部から受信した第2の画像60を画像生成装置10が画像処理して、ディスプレイ20に表示する構成について説明する。
【0046】
第2の画像60は、各画素の輝度が各々異なる第4、第5、第6、及び第7の領域61、62、63、64を有する。第4、第6、及び第7の領域61、63、64は、右目で所定の物体を観察したときの画像を表し、第4、第5、及び第7の領域61、62、64は、左目で所定の物体を観察したときの画像を表す。
【0047】
GPU11は、各領域内に位置する1ピクセルが有する各画素の輝度分布を図13に示すような値に設定する。すなわち、第4の領域61では、B画素及びG画素が輝度2.5で発光し、Y画素及びR画素が輝度1.25で発光する。第5の領域62では、B画素、C画素、G画素、及びY画素が輝度1で各々発光する。第6の領域63では、B画素、C画素、G画素、及びR画素が輝度1で各々発光する。そして、第7の領域64では、B画素、G画素、Y画素、及びR画素が輝度1で各々発光する。これらの画素の輝度は、以下の2式のいずれをも満たすように決定される。
L4>L5=L6=L7
[X5,Y5,Z5]=[X6,Y6,Z6]=[X7,Y7,Z7]
すなわち、第5、第6、及び第7の領域62、63、64の明度は互いに等しく、第4の領域61の明度はこれらの領域の明度よりも大きい。また、第5、第6、及び第7の領域62、63、64の三刺激値は互いに等しい。そして、このようにして得られた第2の画像60をディスプレイ20に表示する。
【0048】
ユーザ40が第2の観察用メガネ30を掛けないで第2の画像60を観察する場合について説明する。
【0049】
第5から7の領域62−64内に位置する各画素は、ユーザ40が黒色から白色光を認識するような輝度であって、各画素の輝度から求められる明度及び色が互いに等しくなるように各々発光する。第5から第7の領域62−64の明度及び色が互いに等しいため、ユーザ40は、第5の領域62と第6の領域63と第7の領域64との境界を認識することができない(図14参照)。
【0050】
一方、第4の領域61における各画素の輝度から求められる第4の領域61の明度は、第5から第7の領域62−64における各画素の輝度から求められる明度よりも大きいため、ユーザ40は、第4の領域61と第5から第7の領域62−64との境界を認識する(図14参照)。
【0051】
ユーザ40が第2の観察用メガネ30を掛けて第2の画像を観察する場合について図15から18を用いて説明する。
【0052】
まず第3のフィルタ31を透過する光、すなわちユーザ40の左目に入射する光について説明する。
【0053】
第3のフィルタ31は、赤色周辺の波長を有する光を透過しない。そのため、第3のフィルタを透過した第2の画像の周波数特性は、図13に示す周波数特性と比較して、赤色周辺の波長が欠けたものになる(図15参照)。
【0054】
これをユーザ40が観察すると、第4の領域61が最も明るく見え、その次に第5の領域62が明るく見え、第6及び第7の領域63、64が最も暗く感じる。なぜなら、第2の観察用メガネ30の第3のフィルタ31が赤色周辺の波長を削ることにより、第4から第7の領域61−64の明度が変化して見えるためである。すなわち、第4の領域61は、青色、緑色、及びイエロー色周辺の光による明度で発光しているように見え、第5の領域62は、青色、シアン色、緑色、イエロー色周辺の光による明度で発光しているように見え、第6の領域63は、青色、シアン色、及び緑周辺の光による明度で発光しているように見え、第7の領域64は、青色、緑色、及びイエロー色周辺の光による明度で発光しているように見える。そして、第4の領域61と、第5の領域62と、第6及び第7の領域63、64とが発する光の明度が各々異なるため、ユーザ40は、第4の領域61と、第5の領域62と、第6及び第7の領域63、64との境界を認識する(図16参照)。
【0055】
第4のフィルタ32を透過する光、すなわちユーザ40の右目に入射する光について説明する。
【0056】
第4のフィルタ32は、イエロー色周辺の波長を有する光を透過しない。そのため、第4のフィルタを透過した第2の画像の周波数特性は、図13に示す周波数特性と比較して、イエロー色周辺の波長が欠けたものになる(図17参照)。
【0057】
これをユーザ40が観察すると、第4の領域61が最も明るく見え、その次に第6の領域63が明るく見え、第5及び第7の領域62、64が最も暗く感じる。なぜなら、第2の観察用メガネ30の第4のフィルタ32がイエロー色周辺の波長を削ることにより、第4から第7の領域61、62、63、64の明度が変化して見えるためである。すなわち、第4の領域61は、青色、緑色、及び赤色周辺の光による明度で発光しているように見え、第5の領域62は、青色、シアン色、緑色周辺の光による明度で発光しているように見え、第6の領域63は、青色、シアン色、緑色、及び赤色周辺の光による明度で発光しているように見え、第7の領域64は、青色、緑色、及び赤色周辺の光による明度で発光しているように見える。そして、第4の領域61と、第6の領域63と、第5及び第7の領域62、64とが発する光の明度が各々異なるため、ユーザ40は、第4の領域61と、第6の領域63と、第5及び第7の領域62、64との境界を認識する(図18参照)。
【0058】
すなわち、ユーザ40は、第4、第6、及び第7の領域61、63、64を右目で認識し(図18参照)、第4、第5、及び第7の領域61、62、64を左目で認識する(図16参照)。従って、第2の観察用メガネ30を掛けることにより、ユーザ40は第2の画像60を立体として認識することができる。
【0059】
本実施形態によれば、第2の観察用メガネ30を用いて観察したとき、あるいは用いずに観察したとき、いずれの場合であっても、ユーザ40が認識可能な画像を第2の画像表示システムが表示可能であると共に、左右の目で異なる画像をユーザ40が認識可能である。
【0060】
なお、第3のフィルタ31又は第4のフィルタ32が赤色又はイエロー色周辺の光を透過しない構成について説明したが、これらの色に限定されず、他の色であっても良い。
【符号の説明】
【0061】
100 第1の画像表示システム
10 画像生成装置
11 GPU
12 VRAM
20 ディスプレイ
30 第1の観察用メガネ
31 第1のフィルタ
32 第2のフィルタ
40 ユーザ
41 第1の領域
42 第2の領域
43 第3の領域
50 第1の画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに独立である複数の色を各々発光する複数の第1の発光素子と、前記第1の発光素子とは異なる色であって互いに独立である複数の色を各々発光する複数の第2の発光素子とから成る画素を複数備える表示部材と、
前記第1及び第2の発光素子の発光輝度を制御する発光制御部と、
前記第1及び第2の発光素子が発光する複数の色の光のいずれかを透過しない観察フィルタとを備え、
前記発光制御部は、前記第1の発光素子が発した光による三刺激値が、前記第2の発光素子が発した光による三刺激値と等しくなるように前記第1及び第2の発光素子の発光輝度を制御する画像表示システム。
【請求項2】
前記表示部材は、表示する画像に応じて設けられる第1の領域及び第2の領域を有し、
前記発光制御部は、前記第1の領域内に位置する第1及び第2の発光素子の発光輝度が互いに等しくなり、前記第2の領域内に位置する複数の前記第2の発光素子の発光輝度が互いに等しくなり、かつ前記第1の領域を構成する画素の1つにおいて、その画素に属する全ての発光素子の輝度の合計が、前記第2の領域を構成する画素の1つに属する全ての発光素子の輝度の合計と等しくなるように、前記第1及び第2の発光素子の発光輝度を制御する請求項2に記載の画像表示システム。
【請求項3】
前記表示部材は、表示する画像に応じて設けられる第3の領域をさらに有し、
前記発光制御部は、前記第3の領域内に位置する複数の前記第1の発光素子の発光輝度が互いに等しくなるように、かつ前記第1及び第2の領域内に位置する複数の前記第1及び第2の発光素子の発光輝度と異なるように制御する請求項2に記載の画像表示システム。
【請求項4】
複数の前記第1及び第2の発光素子は、発光する光を混色することにより複数色の光を生成可能である請求項1に記載の画像表示システム。
【請求項5】
前記第1の発光素子は、RGB各色の発光色を有する発光素子から成り、前記第2の発光素子は、CYM各色の発光色を有する発光素子から成る請求項3に記載の画像表示システム。
【請求項6】
前記観察フィルタは、R、G、B、C、Y、M各色のうち1色以上の光を透過しない請求項5に記載の画像表示システム。
【請求項7】
互いに独立である複数の色を各々発光する複数の第1の発光素子と、前記第1の発光素子とは異なる色であって互いに独立である複数の色を各々発光する複数の第2の発光素子とから成る画素を複数備える表示部材と、
前記第1及び第2の発光素子の発光輝度を制御する発光制御部とを備え、
前記発光制御部は、前記第1の発光素子が発した光による三刺激値が、前記第2の発光素子が発した光による三刺激値と等しくなるように前記第1及び第2の発光素子の発光輝度を制御する画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【図17】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図14】
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【図16】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−59316(P2011−59316A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208136(P2009−208136)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】