説明

画像表示制御装置および画像表示制御方法

【課題】画像が変化する映像をユーザにとって見やすく心地よい状態で提示することができる画像表示制御装置および画像表示制御方法を提供する。
【解決手段】映像を画像表示手段Dに表示させる装置であって、映像が保存された映像データ保存手段21と、映像のデータを画像表示手段Dに提供する制御手段10とからなり、制御手段10は、映像を見る視聴者の精神テンポに基づいて、映像を画像表示手段Dに表示させる表示時間を算出する表示時間算出手段11と、表示時間の間、映像を画像表示手段Dに表示させる画像提供手段12とを備えている。精神テンポに基づいて制御手段10の表示時間算出手段11が映像を表示する表示時間を算出するので、視聴者に対して心地よい映像を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示制御装置および画像表示制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アニメーションやスライドショー等の画像が変化する映像は、動画であれば画像作成者側で予め決定した速度で映像が動き、また、静止画が順次切り換わるスライドショー等では画像作成者側で予め決定したタイミングで画像が切り換わるようになっている。
【0003】
しかし、映像を見る人の好みや映像を見る目的によっては、画像作成者側で予め決定した速度・タイミングよりも、映像の動く速度や映像が切り替わるタイミングが速いあるいは遅い方が好ましい場合がある。
【0004】
そこで、従来から、映像の動く速度や映像が切り替わるタイミングを、映像を見る人が調整できるようにした技術が開発されている(例えば、特許文献1、2)。
【0005】
特許文献1には、複数の画像を、画像毎に自動的にディスプレイに表示する場合に、携帯電話の十字キー等を操作することによりユーザから提供される、画像と画像との表示時間間隔の変更要求を受付け、この変更要求に従って、画像の表示中に表示時間間隔をダイナミックに変更できるようにした表示制御装置が開示されている。そして、表示されている画像の表示時間間隔をダイナミックに変更できるので、ユーザは、アルバム等に大量に保存された情報を順序良く効率的に閲覧できる旨の記載がある。
また、特許文献2には、診断に利用される断層画像を表示する画像表示装置に、機械式の可変調節つまみを用いた技術が開示されている。そして、可変調節つまみを操作することによって、読影者が、ディスプレイに次々表示される断層画像を見ながら、適当な表示速度で表示できる旨の記載がある。
【0006】
また、映像を見る人が映像の動く速度や映像が切り替わるタイミングを調整できるようにした技術は、一部で実用化されている(非特許文献1、2)。
非特許文献1には、実写映像またはアニメーションを表示する場合において、映像の動きの速さを調節するための手段を提供し、画像表示を行っているときに、好みの速度で画像が表示されるように、ユーザが自由に速度を調節してできるようにしたソフトウェアが紹介されている。
また、非特許文献2には、静止画を順次提示する場合において、画面の切り替えタイミングをキー操作などにより、ユーザが直接指示することができるソフトウェアが紹介されている。
【0007】
しかるに、上記従来技術は、ユーザが自分の好みの速度で画像が動いたり切り替わったりするように調整できるのであるが、いずれも画像が表示されている状態において自分でキー等を操作しなければならない。しかも、コンテンツ(映像)が変わればユーザが好む速度も変わるので、コンテンツが変わるたびに表示速度を再度調整しなければならず、表示速度の調整が面倒である。
【0008】
【特許文献1】特開2002−165787号
【特許文献2】特開2004−317604号
【非特許文献1】Microsoft Windows Vista オフィシャルマニュアル下、エド・ポッド他、日経BPソフトプレス、2007年9月
【非特許文献2】ひと目でわかるMicrosoft Office PowerPoint 2007、堀池裕美、日経BPソフトプレス、2007年1月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記事情に鑑み、アニメーションやスライドショー等の画像が変化する映像をユーザにとって見やすく心地よい状態で提示することができる画像表示制御装置および画像表示制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明の画像表示制御装置は、映像を画像表示手段に表示させる装置であって、前記映像が保存された映像データ保存手段と、前記映像のデータを前記画像表示手段に提供する制御手段とからなり、該制御手段は、映像を見る視聴者の精神テンポに基づいて、前記映像を前記画像表示手段に表示させる表示時間を算出する表示時間算出手段と、前記表示時間の間、前記映像を前記画像表示手段に表示させる画像提供手段とを備えていることを特徴とする。
第2発明の画像表示制御装置は、第1発明において、前記映像が、複数の画像からなり、前記映像データ保存手段は、前記映像を構成する前記複数の画像のデータを保存しており、前記複数の画像を前記画像表示手段に表示させる順序に関する表示順序情報が記録された表示順序保存手段と、前記複数の画像の表示時間に関する表示時間情報が記録された表示時間保存手段とを備えており、前記制御手段において、前記表示時間算出手段は、前記表示時間情報と前記視聴者の精神テンポとに基づいて、各画像が前記画像表示手段に表示される表示時間を、各画像についてそれぞれ算出するものであり、前記画像提供手段は、前記表示順序情報に基づいて、前記複数の画像のデータを、各画像について算出された前記表示時間の間、順次前記画像表示手段に表示させるものであることを特徴とする。
第3発明の画像表示制御装置は、第1または第2発明において、前記視聴者の精神テンポを測定する精神テンポ測定手段を備えており、該精神テンポ測定手段が測定した精神テンポに関する情報が、前記制御手段に入力されることを特徴とする。
第4発明の画像表示制御装置は、第3発明において、前記精神テンポ測定手段によって測定された前記精神テンポの情報と前記視聴者の情報とを関連づけた状態で記憶する精神テンポ保存手段を備えており、前記視聴者の情報を入力する使用者情報入力手段とを備えていることを特徴とする。
第5発明の画像表示制御方法は、映像を画像表示手段に表示する表示方法であって、映像を見る視聴者の精神テンポに基づいて、前記映像を前記画像表示手段に表示させる表示時間を算出し、該映像を、前記表示時間の間、前記画像表示手段に表示させることを特徴とする。
第6発明の画像表示制御方法は、第5発明において、前記映像が、複数の画像からなり、各画像の表示時間に関する表示時間情報と前記視聴者の精神テンポとに基づいて、各画像を前記画像表示手段に表示させる表示時間を算出し、前記複数の画像を前記画像表示手段に表示する順序に関する表示順序情報に基づいて、前記画像表示手段に表示する画像を選択し、該選択された画像を、該画像について算出された前記表示時間の間、前記画像表示手段に表示させることを特徴とする。
第7発明の画像表示制御方法は、第5または第6発明において、前記映像を前記画像表示手段に表示させる前に、前記視聴者の精神テンポを測定し、測定された精神テンポに基づいて表示時間を算出することを特徴とする。
第8発明の画像表示制御方法は、第7発明において、前記測定した精神テンポの情報と前記視聴者の情報とを関連づけた状態で保存しておき、前記視聴者の情報が入力されると、該視聴者の情報に基づいて、保存されている精神テンポを検索し、該検索された精神テンポに基づいて表示時間を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
第1発明によれば、精神テンポに基づいて制御手段の表示時間算出手段が映像を表示する表示時間を算出するので、視聴者に対して心地よい映像を提供することができる。
第2発明によれば、精神テンポに基づいて制御手段の表示時間算出手段が各画像の表示時間を算出するので、視聴者に対して心地よい映像を提供することができる。しかも、表示時間算出手段が、表示時間保存手段に保存されている表示時間情報と精神テンポに基づいて、画像毎に表示時間を自動的に調整するから、視聴者が画像毎に表示を調整しなくてもよくなる。
第3発明によれば、測定手段によって視聴者の精神テンポを直接測定し、その精神テンポを利用するので、映像を、より確実に視聴者に適した状態で提供することができる。
第4発明によれば、精神テンポの測定を何回も行わなくてもよいので、視聴者の負担を軽減することができる。
第5発明によれば、精神テンポに基づいて映像を表示する表示時間を算出するので、視聴者に対して心地よい映像を提供することができる。
第6発明によれば、精神テンポに基づいて画像の表示時間を決定するので、視聴者に対して心地よい映像を提供することができる。しかも、表示時間情報と精神テンポに基づいて、画像毎に表示時間を自動的に調整するから、視聴者が画像毎に表示を調整しなくてもよくなる。
第7発明によれば、直接測定された精神テンポに基づいて表示時間を決定するので、映像を、より確実に視聴者に適した状態で提供することができる。
第8発明によれば、精神テンポの測定を何回も行わなくてもよいので、視聴者の負担を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明の画像表示制御装置は、複数の画像からなる映像を表示させる装置であって、各画像の表示時間を、映像を見る人の精神テンポに合わせて調整するようにしたことに特徴を有するものである。
【0013】
なお、本明細書において、画像には静止画像と動画の両方が含まれている。また、本明細書では、静止画像は1枚の画像を1単位として、動画は一定の時間の画像を1単位として、シーンと呼ぶ。また、映像には、一つのシーンだけからなるものも、複数のシーンが連続しているものも含まれている。
さらになお、本発明の画像表示制御装置は、例えば、モニタやディスプレイに対して画像データを送信してこれらの画面に画像を表示させる機能を有する装置、例えば、コンピュータやDVDプレーヤ等の機器が該当するが、これら機器を構成する回路等の部品も本発明の画像表示制御装置に該当する。
【0014】
まず、本発明の画像表示制御装置を説明する前に、精神テンポについて説明する。
日常生活の行動にはその人なりのテンポが推察され、話し方、歩き方などその人固有のテンポがある。このようなテンポを心理学では精神テンポと呼んでいる。かかる精神テンポは個人差が大きいものの、時間的差異の影響を受けずに一貫していることが知られている。代表的な精神テンポの指標は打叩(ダッピング)運動における一定当たりの打叩数である。
【0015】
以下に、本発明の画像表示制御装置1の一実施形態を説明する。
図1は本実施形態の画像表示制御装置1の概略ブロック図である。同図に示すように、本実施形態の画像表示制御装置1は、画像表示手段Dに映像情報を提供する制御手段10と、制御手段10が画像表示手段Dに提供する映像に関する情報を記録しておく保存部20と、画像表示手段Dに表示される映像を見る人(視聴者)に関する情報を入力する使用者情報入力手段30とを備えている。
なお、画像表示手段Dは、モニタやテレビ等を挙げることができるが、本実施形態の画像表示制御装置から提供される映像を表示できるものであれば、とくに限定されない。
【0016】
まず、保存部20から説明する。
図1に示すように、保存部20は、映像データ保存手段21と、表示順序保存手段22と表示時間保存手段23と、精神テンポ保存手段24とを備えている。
なお、この保存部20を構成する各保存手段には、画像表示制御装置1に内蔵されて、画像データの書き込みや読み出し、消去等が自由にできるハードディスク等を採用することができる。また、画像表示制御装置1に設けられた読取装置によって記憶されているデータを読み出すことができるもの、例えば、DVD等のメディアも映像データ保存手段21として採用することができる。
【0017】
精神テンポ保存手段24は、視聴者の精神テンポに関する情報(精神テンポ情報)が記録された手段である。例えば、個人の情報(例えば、例えばIDや名前等)と、その人の精神テンポ情報とが関連づけられて記録されている。
精神テンポ情報は、例えば、打叩(ダッピング)運動における一定当たりの打叩数や、点滅光の心地よい点滅周期、メトロノーム音(クリック音)の心地よいテンポなどのように、精神テンポを数値化した情報である。
【0018】
映像データ保存手段21は、映像を構成する複数のシーンが記録されている。例えば、学校等の紹介映像や映画等の一本の映像データを複数に分割した各画像データを、それぞれ1つのシーンとしてファイル名が付けられた状態で記録している。
なお、映像データ保存手段21に複数の映像のデータが保存されている場合には、各映像を構成する複数のシーンはそれぞれフォルダ等にまとめられて保存されている。
【0019】
表示順序保存手段22は、映像を構成する複数のシーンを画像示手段Dに表示させる順番に関する情報(表示順序情報)が記録されたものである。例えば、表示順序情報には、図3(C)に示すように、各シーンの番号と、各シーンのファイル名、そして各シーンを表示させる順番が関連づけられて記録されている。
【0020】
表示時間保存手段23は、各シーンを画像示手段Dに表示させ表示時間に関する情報(表示時間情報)が記録されたものである。例えば、表示時間情報には、図3に示すように、各シーンを画像表示手段Dに表示させる時間を算出するための関係式や数値と、各シーンの番号とが関連づけられて記録されている。
例えば、各シーンの関係式は、以下のようにして定めたものを採用することができる。図3(A)(1)のように、視聴者が快適と感じる表示時間が、視聴者の精神テンポに係わらずほぼ一定のシーンでは、関係式は一定値(数値)とすることができる。
また、図3(A)(2)のように、精神テンポの値が大きい人ほど短い表示時間を快適と感じるシーンであれば、精神テンポの値に比例して表示時間が短くなる関係式とすることができる。
【0021】
つぎに、使用者情報入力手段30を説明する。
使用者情報入力手段30は、画像表示手段Dに表示される映像を見る視聴者に関する情報、および、画像表示手段Dに表示する映像を選択する情報を入力するためのものである。この使用者情報入力手段30は、例えば、前記情報を人が入力するキーボード等や、前記情報を記録メディアから読み取る装置等を採用することができるが、とくに限定されない。
【0022】
つぎに、制御手段10を説明する。
図1に示すように、制御手段10は、表示時間算出手段11と画像提供手段12とを備えている。
【0023】
表示時間算出手段11は、各シーンをどの程度の時間、画像示手段Dに表示させるかを算出するものである。つまり、表示時間保存手段23に記憶されている各シーンの表示時間情報と、精神テンポ保存手段24に記録されている視聴者の精神テンポ情報とに基づいて、視聴者の精神テンポに適した映像となるように、各シーンの表示時間を算出するものである。
なお、表示時間算出手段11は、この表示時間と各シーンの番号とを対応させて保存したり出力したりする機能を有していることが好ましい。
【0024】
表示時間算出手段11において、各シーンにおける表示時間の算出は、以下のように行われる。
例えば、図3(B)に示すように、表示時間情報において、各シーンの関係式が精神テンポを入力するパラメータを有している場合(例えば、図3(B)のシーン2など)であれば、精神テンポを数値化した値をパラメータxに入力して各シーンの表示時間を算出する。
また、あるシーンにおいて、関係式が精神テンポを入力するパラメータxがない場合には(例えば、図3(B)のシーン1など)、関係式の代わりに記録されている数値を各シーンの表示時間とする。
【0025】
画像提供手段12は、画像示手段Dに各シーンを表示させるものである。つまり、画像提供手段12は、使用者情報入力手段30から入力される情報に基づいて、画像表示手段Dに表示させる映像を選択し、映像を構成する各シーンを、表示順序情報に記録されている順序で画像示手段Dに表示させるものである。
そして、この画像提供手段12は、前記表示時間算出手段11が算出した各シーンの表示時間を読み込んで、各シーンを、算出された表示時間の間だけ画像示手段Dに表示させる機能も有している。
【0026】
したがって、使用者情報入力手段30から、画像表示手段Dに表示される映像を見る視聴者に関する情報、および、画像表示手段Dに表示する映像を選択する情報が入力されると、映像の各シーンを、それぞれ表示時間算出手段11が算出した表示時間となるように、画像表示手段Dに表示させることができる。すると、各シーンの表示時間、つまり、映像の表示速度は、視聴者の精神テンポに基づいて調整されているので、視聴者に対して心地よい映像を提供することができる。
しかも、表示時間算出手段11が表示時間保存手段21に保存されている表示時間情報と精神テンポに基づいて各シーンの表示時間を自動的に調整するから、視聴者が各シーン毎に表示時間を調整しなくてもよくなり、視聴者にわずらわしさを感じさせることもない。
【0027】
つぎに、本実施形態の画像表示制御装置1による映像表示を説明する。
図2は、本実施形態の画像表示制御装置1による画像表示のフローチャートである。
図2に示すように、まず、視聴者は、使用者情報入力手段30から、自己の情報、例えばIDや名前等の使用者情報を入力する。合わせて、自分が見たい映像の選択や自分が見たい映像に関する情報(タイトル)の入力等を行う(S1)。
なお、映像は、画像表示制御装置1が備えているものに限らず、視聴者が所有するDVD等のメディアに記録されているものでもよい。
【0028】
上記情報が入力されると、制御手段10の表示時間算出手段11は、選択された映像の表示時間情報を表示時間保存手段23から取得する。合わせて、視聴者の精神テンポ情報を精神テンポ保存手段24から取得する。そして、両情報を取得した表示時間算出手段11は、表示時間情報の関係式に基づいて各シーンの表示時間を算出し、この表示時間を各シーンの番号と対応させて保存する(S2)。
【0029】
また、制御手段10の画像提供手段12は、表示順序保存手段22から表示順序情報を取得する。
なお、画像提供手段12は、表示順序情報を取得するとともに、表示時間算出手段11に保存されている表示時間と各シーンの番号とを対応させた情報を、表示時間算出手段11から取得してもよい。
【0030】
そして、視聴者から表示開始指令が入力されると、映像の表示が開始する(S3)。
なお、映像は、視聴者が使用者情報を入力して自分が見たい映像の選択すると、一定時間経過後に自動的に表示が開始するようにしてもよいのは、いうまでもない。
【0031】
映像表示中には、以下の処理が制御手段10において行われる。この処理を図3(B)、(C)および図4(A)に基づいて説明する
【0032】
まず、制御手段10の画像提供手段12は、表示順序保存手段22から取得した表示順序情報に基づいて、1番目に表示するシーン(シーン1)のデータ(Start.jpg)を映像データ保存手段21から取得する(S4)。
【0033】
また、画像提供手段12は、シーン1の表示時間を表示時間保存手段23から取得する(S5)。
なお、上述したように、画像提供手段12が既に表示時間と各シーンの番号と対応させた情報とを表示時間算出手段11から取得している場合には、この処理は不要となる。
【0034】
そして、画像提供手段12は、シーン1を表示時間の時間だけ画像表示手段Dに表示させる(S6)。このとき、シーン1は関係式が一定値(5秒)であるから、精神テンポに係わらず、表示時間も5秒となる。
よって、画像提供手段12は、シーン1を、表示時間のあいだ、つまり、5秒間画像表示手段Dに表示させる(図4(A))。
【0035】
シーン1を表示時間のあいだ表示すると、画像提供手段12は、表示順序情報に基づいて、全てのシーンの表示が終了したか否かを判断する。図3(C)に示すように、表示順序情報に次のシーン(シーン2)が存在する場合には、このシーン2について、データ(Moviefile.mpg)を映像データ保存手段21から取得し、表示時間を表示時間保存手段23から取得する(S4、S5)。
【0036】
そして、画像提供手段12は、シーン2のデータを算出された表示時間のあいだ画像表示手段Dに表示させる(S6)。
ここで、シーン2では、関係式に精神テンポを入力するパラメータxが含まれているので、表示時間は精神テンポの値に応じた時間になる。つまり、画像表示手段Dに表示されるシーン2は、精神テンポの値に応じて、その表示時間が変化する。
例えば、精神テンポの値が60の場合であれば表示時間は12秒になり、精神テンポの値が100の場合であれば表示時間は8秒になる(図4(A))。
なお、図4(A)の場合であれば、シーン2は動画であるから、表示時間の長さによって動画の動く速度も変化する。
【0037】
そして、画像提供手段12は、シーン2を表示時間の間表示すると、全てのシーンの表示が終了したか否かを判断した後、つぎのシーン3のデータおよび表示時間を取得し、算出された表示時間の間、画像表示手段Dに表示させる。
【0038】
上記処理が繰り返され、全てのシーンが表示されると、映像の表示が終了する。
【0039】
以上のごとく、本実施形態の画像表示制御装置1によれば、視聴者は、最初に使用者情報入力手段30から自己の情報等を入力するだけで、各シーンが自己の精神テンポの値に応じて修正された表示時間のあいだ画像表示手段Dに表示される。すると、各シーン毎に面倒な表示時間の調整を行わなくても、自分にとって快適な状態の映像を見ることができるのである。
【0040】
なお、図4(A)では、静止画と動画を含む場合を示したが、静止画(写真等)が順次切り替わるスライドショー等の場合でも、各シーンが表示される表示時間が精神テンポの値によって変化するようにすることができる(図4(B))。
【0041】
また、上記の例では、視聴者の精神テンポの値を事前に測定し、その精神テンポの値が精神テンポ保存手段24に保存されている場合を示したが、視聴者が自己の精神テンポの値を知っている場合には、映像を見るときに使用者情報入力手段30から自己の精神テンポの値を入力するようにしてもよい。この場合には、精神テンポ保存手段23を設けなくてもよい。
【0042】
さらに、視聴者の精神テンポは、映像を見るときに測定するようにしてもよい。つまり、本実施形態の画像表示制御装置1に、精神テンポ測定手段40を設けておいてもよい。
この場合、映像を見る直前の視聴者の精神テンポを、表示時間の算出に直接利用できるので、視聴者の現在の状態により適した映像を確実に提供することができる。
なお、精神テンポ測定手段40には、例えば、人が打叩(ダッピング)できるボタンなどを備え、この打叩(ダッピング)運動における一定当たりの打叩数をカウントする機器を使用できるが、精神テンポ測定手段は、精神テンポを測定し数値化できるものであればよくユーザが心地よいと感じる点滅光の周期やメトロノーム音(クリック音)のテンポを測定する機器でもよい。
また、ユーザが心地よいと感じる映像の表示速度と精神テンポとの関係があらかじめわかっている映像がある場合には、かかる映像についてユーザが心地よいと感じる表示速度を測定し、その表示速度の値から精神テンポを推定して利用することも可能である。
【0043】
さらになお、精神テンポ測定手段40によって測定された精神テンポの値を、使用者情報入力手段30から入力された情報とともに保存部20の精神テンポ保存手段23に保存するようにしておけば、精神テンポの測定を何回も行わなくてもよいので、視聴者の負担を軽減することができる。
【0044】
さらになお、精神テンポ測定手段40を備えている場合、毎回精神テンポを測定するようにしてもよいのはいうまでもなく、かかる場合には精神テンポ保存手段23を設けなくてもよいのは、いうまでもない。
【0045】
上記の例では、映像が複数のシーンから構成されている場合を説明したが、映像は1つのシーンのみで構成されていてもよい。この場合には、精神テンポの値に応じて、映像を表示する表示時間が算出され、その表示時間で映像が終了するように映像の表示が調整される。
【0046】
そして、上記例では、各シーンの表示時間を時間で特定して調整する方法を説明したが、各シーンの表示時間は、フレームレート(単位時間あたりの表示フレーム数または表示コマ数)を変化させて調整することも可能である。
例えば、表示時間情報として、表示時間を算出するための関係式や数値として、単位時間あたりに表示するフレーム数やコマ数、または、一秒あたりに表示するフレーム数やコマ数とパラメータからなる関係式を記憶させておく。そして、かかる関係式や数値に基づいてフレームレートを調整し、各シーンの表示時間を調整するようにしてもよい。
なお、かかる場合には、各シーンは、1つのフレーム(またはコマ)や複数のフレーム(またはコマ)からなる構成されるのは、いうまでもない。
【0047】
また、フレームレートは変化させず、1シーンを構成するフレーム数を、精神テンポに応じて変化させて表示時間を制御することも可能である。
例えば、フレームレートが30フレーム/秒であって、あるシーンが30の画像を基本フレームとして有している場合、通常そのシーンは1秒間だけ表示されることになる。しかし、そのシーンのフレーム数を増やして120とすればそのシーンの表示時間は4秒となり、そのシーンの表示時間が長くなる。言い換えれば、シーンの表示速度を遅くすることができる。
逆に、そのシーンのフレーム数を減らして15とすれば、そのシーンの表示時間は0.5秒となり、そのシーンの表示時間が短くなる。言い換えれば、シーンの表示速度を速くすることができる。
【0048】
上記のごときフレーム数の調整には、以下の方法を採用することができる。
まず、シーンのフレーム数を減らす場合は、単純に、基本フレームを構成する30の画像から画像を間引いて画像表示手段Dに表示させればよい。
一方、シーンのフレーム数を増やす場合は、基本フレームからフレーム数を増やさなければならないが、例えば、同じ画像を複数回表示させれば、そのシーンのフレーム数を増やした場合と同等の効果を得ることができる。
また、シーンがアニメ−ション画像であれば、表示する画像を画像提供手段12において生成して、シーンのフレーム数が、表示時間算出手段11で算出されたフレーム数となるようにする方法も採用することができる。
例えば、映像データ保存手段21にはシーンの主要なコマのみを記憶させておき、途中のコマ(不足するコマ)を、補間データとして画像提供手段12にリアルタイムで生成させて、画像表示手段Dに表示させることも可能である。
また、物体が移動する画像であれば、物体の形状データと運動データとを映像データ保存手段21に保存しておき、途中のコマを、前記データを用いて画像提供手段12に生成、させて、画像表示手段Dに表示させることも可能である。
なお、シーンのフレーム数を増減する方法は、上記方法に限定されないのは、いうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本実施形態の画像表示制御装置は、観光地、公共施設(博物館、美術館、学校)、企業等に設置する情報案内端末、マルチメディア学習教材、ゲーム、ヒーリングビデオ、ヒーリングスライドショー、ユーザとの対話性を持たせた映画などにおいて使用されるアニメーションやスライドショー等の画像の表示を制御する装置に適している。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本実施形態の画像表示制御装置1の概略ブロック図である。
【図2】本実施形態の画像表示制御装置1による画像表示のフローチャートである。
【図3】(A)は精神テンポとシーンを提示する時間との関係を示したグラフであり、(B)は表示時間情報の概略説明図であり、(C)は表示順序情報の概略説明図である。
【図4】複数のシーンからなる映像の表示例である。
【図5】他の実施形態の画像表示制御装置1の概略ブロック図である。
【符号の説明】
【0051】
1 画像表示制御装置
10 制御手段
11 表示時間算出手段
12 画像提供手段
21 映像データ保存手段
22 表示順序保存手段
23 表示時間保存手段
24 精神テンポ保存手段
30 使用者情報入力手段
40 精神テンポ測定手段
D 画像表示手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像を画像表示手段に表示させる装置であって、
前記映像が保存された映像データ保存手段と、
前記映像のデータを前記画像表示手段に提供する制御手段とからなり、
該制御手段は、
映像を見る視聴者の精神テンポに基づいて、前記映像を前記画像表示手段に表示させる表示時間を算出する表示時間算出手段と、
前記表示時間の間、前記映像を前記画像表示手段に表示させる画像提供手段とを備えている
ことを特徴とする画像表示制御装置。
【請求項2】
前記映像が、複数の画像からなり、
前記映像データ保存手段は、前記映像を構成する前記複数の画像のデータを保存しており、
前記複数の画像を前記画像表示手段に表示させる順序に関する表示順序情報が記録された表示順序保存手段と、
前記複数の画像の表示時間に関する表示時間情報が記録された表示時間保存手段とを備えており、
前記制御手段において、
前記表示時間算出手段は、前記表示時間情報と前記視聴者の精神テンポとに基づいて、各画像が前記画像表示手段に表示される表示時間を、各画像についてそれぞれ算出するものであり、
前記画像提供手段は、前記表示順序情報に基づいて、前記複数の画像のデータを、各画像について算出された前記表示時間の間、順次前記画像表示手段に表示させるものである
ことを特徴とする請求項1記載の画像表示制御装置。
【請求項3】
前記視聴者の精神テンポを測定する精神テンポ測定手段を備えており、
該精神テンポ測定手段が測定した精神テンポに関する情報が、前記制御手段に入力される
ことを特徴とする請求項1または2記載の画像表示制御装置。
【請求項4】
前記精神テンポ測定手段によって測定された前記精神テンポの情報と前記視聴者の情報とを関連づけた状態で記憶する精神テンポ保存手段を備えており、
前記視聴者の情報を入力する使用者情報入力手段とを備えている
ことを特徴とする請求項3記載の画像表示制御装置。
【請求項5】
映像を画像表示手段に表示する表示方法であって、
映像を見る視聴者の精神テンポに基づいて、前記映像を前記画像表示手段に表示させる表示時間を算出し、
該映像を、前記表示時間の間、前記画像表示手段に表示させる
ことを特徴とする画像表示制御方法。
【請求項6】
前記映像が、複数の画像からなり、
各画像の表示時間に関する表示時間情報と前記視聴者の精神テンポとに基づいて、各画像を前記画像表示手段に表示させる表示時間を算出し、
前記複数の画像を前記画像表示手段に表示する順序に関する表示順序情報に基づいて、前記画像表示手段に表示する画像を選択し、該選択された画像を、該画像について算出された前記表示時間の間、前記画像表示手段に表示させる
ことを特徴とする請求項5記載の画像表示制御方法。
【請求項7】
前記映像を前記画像表示手段に表示させる前に、前記視聴者の精神テンポを測定し、
測定された精神テンポに基づいて表示時間を算出する
ことを特徴とする請求項5または6記載の画像表示制御方法。
【請求項8】
前記測定した精神テンポの情報と前記視聴者の情報とを関連づけた状態で保存しておき、
前記視聴者の情報が入力されると、該視聴者の情報に基づいて、保存されている精神テンポを検索し、
該検索された精神テンポに基づいて表示時間を算出する
ことを特徴とする請求項7記載の画像表示制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−169357(P2009−169357A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−10431(P2008−10431)
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年度電気関係学会四国支部連合大会実行委員会、「平成19年度 電気関係学会四国支部連合大会」の講演論文が記録されたCD−ROM、発行日2007年9月15日
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【Fターム(参考)】