説明

画像表示装置、立体画像表示装置及び立体画像表示システム

【課題】 画素電極の大きさや形状による画像の表示精度の制限を可及的に排除し、クロストークの発生による不具合を回避することができる画像表示装置を提供する。
【解決手段】 本発明に係る画像表示装置は、電界強度に応じて屈折率が変化する電気光学効果を有する光変調素子25と、光変調素子25の表面に設けられた複数の制御ポイント26と、複数の制御ポイント26に印加する電圧を制御して、所定の画像パターンを有する電界変位面を形成して光変調素子25に記録するように構成されている電界制御部22とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置、計算された干渉縞(計算機ホログラム)を用いて立体画像を表示する立体画像表示装置及び立体画像表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光変調素子に電圧を印加することによって当該光変調素子内に形成した画像を表示する画像表示装置が知られている。例えば、かかる画像表示装置として、液晶ディスプレイ(LCD)等が挙げられる。
【0003】
ここで、光変調素子とは、電気光学効果を有する素子である。また、電気光学効果とは、物質に電界を作用させることによって生じる現象であり、具体的には、物質に印加された電界強度に応じて当該物質の屈折率が変化する現象である。
【0004】
図18及び図19を参照して、従来の光変調素子を用いた画像表示装置について説明する。従来の光変調素子を用いた画像表示装置として、図18に示す単純マトリクス方式の電極構造を有する画像表示装置や、図19に示すアクティブマトリクス方式の電極構造を有する画像表示装置が知られている。
【0005】
図18(a)に示すように、単純マトリクス方式の電極構造を有する画像表示装置では、薄膜化した光変調素子25の上面にX軸方向の電極23が設けられており、また、薄膜化した光変調素子25の下面にY軸方向の電極24が設けられている。
【0006】
ここで、かかるX軸方向の電極23とY軸方向の電極24との交差部分の各々が、図18(b)に示すように、単純マトリクス方式の電極構造を有する画像表示装置によって表示される画像を構成する各画素に対応する画素電極23aとなる。
【0007】
一方、図19(a)に示すように、アクティブマトリクス方式の電極構造を有する画像表示装置では、光変調素子25の上面に複数の電極23が設けられており、また、光変調素子25の下面に電極24が設けられている。
【0008】
ここで、電極23は、図19(b)に示すように、アクティブマトリクス方式の電極構造を有する画像表示装置によって表示される画像を構成する各画素に対応する複数の画素電極23aを有しており、画素電極23aごとに、独立してON/OFFの制御が可能なトランジスタを準備する構成を採っている。また、電極24は、接地されている。
【0009】
従来の単純マトリクス方式及びアクティブマトリクス方式の電極構造を有する画像表示装置では、光変調素子25に記録する画像を構成する各画素の濃淡値等に基づいて、画素電極23aに印加する電圧値を制御するように構成されている。
【非特許文献1】福見 監修、「新編 光学材料ハンドブック」、60-67頁、リアライズ社、2000年発刊
【非特許文献2】奥山、「強誘電体薄膜を用いた電子デバイス」、電学論E、vol.121、No.10、537-541頁、2001年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来の単純マトリクス方式及びアクティブマトリクス方式の電極構造を有する画像表示装置では、各画素電極23a単位でしか印加する電圧値を変更することしかできないため、図20に示す矩形領域(画素)内において濃淡値が同一になり、かかる従来の画像表示装置によって表示可能な画像の精度は、かかる画素電極23aの大きさや形状による制限を受けるという問題点があった。
【0011】
すなわち、かかる従来の画像表示装置では、画素電極23aの微小化には限界があるため、表示する画像の量子化誤差が大きくなり、画像を十分な精度で表示することができないという問題点があった。
【0012】
また、かかる従来の画像表示装置では、隣接する画素(矩形領域)間で、各画素電極23aに印加される電圧の影響を受けるクロストークが生じるという問題点があった。
【0013】
そこで、本発明は、以上の点に鑑みてなされたもので、画素電極の大きさや形状による画像の表示精度の制限を可及的に排除し、クロストークの発生による不具合を回避することができる画像表示装置、立体画像表示装置及び立体画像表示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の特徴は、電界強度に応じて屈折率が変化する電気光学効果を有する光変調素子と、前記光変調素子の表面に設けられた複数の制御ポイントと、前記複数の制御ポイントに印加する電圧値を制御して、所定の画像パターンを有する電界変位面を前記光変調素子内に形成するように構成されている電界制御部とを具備する画像表示装置であることを要旨とする。
【0015】
かかる発明によれば、複数の制御ポイントに印加された電圧によってクロストークを利用して形成される電界変位面が、所定の画像パターンを表現するため、アナログな画像パターンを表示することができ、画素電極の大きさや形状による画像の表示精度の制限を排除して、十分な精度の画像を表示することができる。
【0016】
本発明の第2の特徴は、計算された干渉縞を用いて立体画像を表示する立体画像表示装置であって、電界強度に応じて屈折率が変化する電気光学効果を有する光変調素子と、前記光変調素子の表面に設けられた複数の制御ポイントと、前記複数の制御ポイントに印加する電圧値を制御して、前記干渉縞の画像パターンと等価な画像パターンを有する電界変位面を前記光変調素子内に形成するように構成されている電界制御部とを具備することを要旨とする。
【0017】
本発明の第2の特徴において、前記画像パターンが、少なくとも前記干渉縞の位相情報又は前記干渉縞の振幅情報のいずれかによって構成されていてもよい。
【0018】
本発明の第2の特徴において、前記制御ポイントが、前記光変調素子の表面の縦方向に配線された縦方向配線電極と横方向に配線された横方向配線電極との交差部分であるように構成されていてもよい。
【0019】
本発明の第2の特徴において、前記電界制御部が、前記干渉縞の画像パターンと前記複数の制御ポイントの各々に印加する電圧値とを関連付けて記憶しており、計算された前記干渉縞の画像パターンに関連付けられている前記電圧値を前記複数の制御ポイントの各々に印加するように構成されていてもよい。
【0020】
本発明の第2の特徴において、前記複数の制御ポイントが、前記光変調素子の表面に設けられた電極の突起形状部分であるように構成されていてもよい。
【0021】
本発明の第2の特徴において、前記光変調素子において前記電界強度と前記屈折率の変化との関係が非線形であるように構成されていてもよい。
【0022】
本発明の第2の特徴において、前記複数の制御ポイントが、複数の微小電極を有し、前記電界制御部が、前記微小電極の各々に印加する電圧値を制御するように構成されていてもよい。
【0023】
本発明の第3の特徴は、立体画像表示装置とサーバ装置とを具備し、立体画像を表示する立体画像表示システムであって、前記サーバ装置が、物体光と参照光とから生成される干渉縞を計算する干渉縞計算部と、干渉縞の画像パターンと複数の制御ポイントの各々に印加する電圧値とを関連付けて記憶する記憶部と、計算された前記干渉縞の画像パターンに関連付けられている複数の電圧値を前記立体画像表示装置に送信する送信部とを具備し、前記立体画像表示装置が、電界強度に応じて屈折率が変化する電気光学効果を有する光変調素子と、前記光変調素子の表面に設けられた複数の制御ポイントと、前記サーバ装置から受信した前記複数の電圧値を、前記複数の制御ポイントの各々に印加して、前記干渉縞の画像パターンと等価な画像パターンを有する電界変位面を前記光変調素子内に形成するように構成されている電界制御部とを具備することを要旨とする。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明によれば、クロストークを利用することにより、画素電極の大きさや形状による画像の表示精度の制限(量子化誤差)を可及的に排除することができる画像表示装置、立体画像表示装置及び立体画像表示システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(本発明の第1の実施形態に係る立体画像表示システムの構成)
図1は、本発明の第1の実施形態における立体画像表示システムの全体構成を示す図である。本実施形態に係る立体画像表示システムは、計算された干渉縞(計算機ホログラム)を用いて立体画像を表示する立体画像表示システムである。
【0026】
なお、本実施形態において、「画像」は、静止画像及び動画像(映像又はビデオ)の双方を含む概念であるものとする。
【0027】
図1に示すように、本実施形態に係る立体画像表示システムは、干渉縞計算装置1と、立体画像表示装置2と、参照光照射装置3とによって構成されている。
【0028】
干渉縞計算装置1は、コンピュータによって構成されており、3次元形状の物体(例えば、立方体の3Dデータ)に照射したレーザ光が反射して生成される物体光と参照光とから生成される干渉縞を計算するように構成されている。ここで、干渉縞とは、例えば、図2(a)及び(b)に示すように、輝度の変化が光の振幅情報に対応し、縞模様のパターンが光の位相情報に対応した濃淡画像である。
【0029】
立体画像表示装置2は、電界強度に応じて屈折率が変化する電気光学効果を有する光変調素子25を有し、干渉縞計算装置1によって計算された干渉縞に応じて、光変調素子25に加える電界強度を変化させることによって、当該干渉縞の画像パターンと等価な画像パターンを当該光変調素子25内に形成するように構成されている。
【0030】
図1に示すように、立体画像表示装置2は、ホログラム記録素子21と電界制御部22とによって構成されている。
【0031】
ホログラム記録素子21は、図3(a)に示すように、電界強度に応じて屈折率が変化する電気光学効果を有する光変調素子25と、当該光変調素子25の表面に設けられた複数の制御ポイント26とを具備する。
【0032】
具体的には、ホログラム記録素子21は、光変調素子25を微細な上面電極23及び下面電極24で挟み込んだ構成を採っている。
【0033】
本実施形態では、光変調素子25の上面のX軸方向(横方向)に配線された横方向配線電極と、光変調素子25の下面のY軸方向(縦方向)に配線された縦方向配線電極との交差部分を、電界制御部22によって印加する電圧値を制御するポイントである「制御ポイント26」とする。
【0034】
なお、本発明は、かかる制御ポイント26に限定されることなく、上面電極23及び下面電極24の構成に従って他の形態の制御ポイント26が用いられる場合にも適応可能である。
【0035】
また、本実施形態では、光変調素子25として、分極反転を利用して電界制御による屈折率変調が容易に実現可能な強誘電体素材であるPLZTやSBTやSBN等の素材が用いられる。
【0036】
なお、本実施形態で用いられる光変調素子25の特定領域における印加電圧(電位差)と屈折率との関係の一例を、図3(b)に示す。図3に示すように、本実施形態で用いられる光変調素子25は、特定領域において印加される電圧が大きくなると、当該特定領域の屈折率が大きくなるような特性を有している。
【0037】
電界制御部22は、干渉縞計算装置1から画像信号によって送信された干渉縞を表示するための情報(干渉縞の画像パターン)に基づいて、光変調素子25の表面の制御ポイント26に加える電界強度(電圧値)を変化させることによって、当該光変調素子25内部の屈折率を変化させ、当該光変調素子25内に当該干渉縞を形成するように構成されている。
【0038】
本実施形態では、電界制御部22は、上述の干渉縞の画像パターンと等価な画像パターンを有する電界変位面を光変調素子25内に形成するために、複数の上面電極23及び複数の下面電極24に印加する電圧値を制御するように構成されている。
【0039】
ここで、図4を参照して、電界制御部22によって形成される電界変位面について説明する。
【0040】
図4(a)に示すように、電界制御部22は、X軸方向の電極23に印加する電圧値及びY軸方向の電極24に印加する電圧値を変化させることによって、両者の交差部分である制御ポイント26に印加する電圧値を制御して、光変調素子25に記録する電界変位面を形成する。
【0041】
制御ポイント26a乃至26dによって形成された電界変位面の拡大図を、図4(b)に示す。
【0042】
図4(b)の例では、制御ポイント26aにおけるX軸方向の電極23とY軸方向の電極24との間の電位差は「0V」であり、制御ポイント26b乃至26dにおけるX軸方向の電極23とY軸方向の電極24との間の電位差は「5V」である。その結果、図4(b)に示す電界変位面が、制御ポイント26a乃至26dに印加された電圧によるクロストークによって光変調素子25内に形成される。
【0043】
なお、図4(c)は、図4(b)に示す電界変位面を形成する光変調素子25内のA-B断面における屈折率の分布を示すものである。なお、光変調素子25内部において電界強度が変化していない状態では、屈折率は一様である。
【0044】
制御ポイント26a乃至26dに印加された電圧によるクロストークによって光変調素子25内に形成された電界変位面が、干渉縞計算装置1から画像信号によって送信された干渉縞の画像パターンの各々に対応する。図4(d)に示すように、複数の電界変位面によって光変調素子25内に形成される干渉縞が構成される。
【0045】
なお、本実施形態において、上述の干渉縞の画像パターンは、干渉縞の位相情報、干渉縞の振幅情報、又は、干渉縞の位相情報と振幅情報との組み合わせによって構成されている。
【0046】
具体的には、電界制御部22は、図5に示すように、画像信号受信部22aと、記憶部22bと、決定部22cと、電圧印加部22dとを具備している。
【0047】
画像信号受信部22aは、有線回線又は無線回線を介して、干渉縞計算装置1から画像信号によって送信された干渉縞を表示するための情報(干渉縞の画像パターン)を受信するものである。
【0048】
記憶部22bは、上述の干渉縞の画像パターンと、複数の制御ポイントの各々に印加する電圧値とを関連付けて記憶するものである。
【0049】
例えば、記憶部22bは、図6に示すように、「画像パターン」の識別情報と、「制御ポイント#1乃至#4」における電位差とを関連付けるテーブルを記憶するように構成されている。
【0050】
ここで、「画像パターン」は、4つの制御ポイント#1乃至#4における電位差によって形成される電界変位面の画像パターンを示す。
【0051】
本実施形態では、電界変位面は、4つの制御ポイント#1乃至#4における電位差によって形成されるように構成されているが、本発明は、かかる場合に限定されるものではなく、2以上の任意数の制御ポイントにおける電位差によって形成される場合にも適応可能である。
【0052】
決定部22cは、各制御ポイント26に印加する電圧値を決定するものである。
【0053】
具体的には、決定部22cは、記憶部22bに記憶されているテーブル(図6参照)の中から、画像信号受信部22aによって受信された干渉縞の画像パターンに最も類似する「画像パターン」を選択して、選択した「画像パターン」に関連付けられている各制御ポイント26における電位差に基づいて、各制御ポイント26に印加する電圧値を決定するように構成されている。
【0054】
電圧印加部22dは、決定部22cによって決定された各制御ポイント26に印加する電圧値に基づいて、上面電極(X軸方向の電極)23及び下面電極(Y軸方向の電極)24に所定電圧を印加する。
【0055】
参照光照射装置3は、光変調素子25に向けて参照光Bを照射するように構成されており、ここで、参照光Bは、干渉縞計算装置1による干渉縞の計算に用いられた参照光と同じ波長及び同じ入射角度を有する。
【0056】
上述のように、光変調素子25に干渉縞が記録されている状態で、当該光変調素子25に向けて参照光Bを照射すると、当該光変調素子25に記録されている干渉縞によって物体光Aが発生する。その結果、干渉縞計算装置1による干渉縞の計算に用いられた3次元形状の物体から来る光と同じ物体光Aが観察者の眼に入ることによって、観察者は上述の3次元形状の物体を立体的に観察することができる。
【0057】
上述の本実施形態では、干渉縞計算装置1と立体画像表示装置2とが別個の装置として設けられているが、本発明は、これに限定されるものではなく、立体画像表示装置2が干渉縞計算装置1の機能を具備する構成についても適用可能である。
【0058】
(本発明の第1の実施形態に係る立体画像表示システムの動作)
図7を参照して、本発明の第1の実施形態に係る立体画像表示システムの動作について説明する。
【0059】
ステップS101において、立体画像表示装置2の電界制御部22は、干渉縞計算装置1によって計算された干渉縞を表示するための情報(干渉縞の画像パターン)を含む画像信号を受信する。
【0060】
ステップS102において、電界制御部22は、受信した画像信号に含まれる干渉縞の画像パターンを解析する。具体的には、電界制御部22は、受信した画像信号に含まれる干渉縞の画像パターンに最も類似する画像パターンを記憶部26内のテーブルから選択する。
【0061】
ステップS103において、電界制御部22は、記憶部26内のテーブルにおいて、選択した画像パターンに関連付けられている各制御ポイント26の電界強度(電位差)に基づいて、各制御ポイント26に印加する電圧値を決定する。
【0062】
ステップS104において、電界制御部22は、決定された各制御ポイント26に印加する電圧値に基づいて、上面電極23及び下面電極24に電圧を印加することによって、光変調素子25内の屈折率を変化させ、その結果、干渉縞の画像パターンと等価な画像パターンを有する電界変位面を当該光変調素子25内に形成することができる。
【0063】
なお、光変調素子25に上述の画像パターンが記録されている状態で、参照光照射装置3が、当該光変調素子25に対して、干渉縞計算装置1による干渉縞の計算に用いられた参照光と同じ波長及び同じ入射角度を有する参照光Bを照射すると、当該光変調素子25に記録されている当該画像パターンによって物体光Aが発生する。その結果、干渉縞計算装置1による干渉縞の計算に用いられた3次元形状の物体から来る光と同じ物体光Aが観察者の眼に入ることによって、観察者は上述の3次元形状の物体を立体的に観察することができる。
【0064】
(本発明の第1の実施形態に係る立体画像表示システムの作用・効果)
本発明の第1の実施形態に係る立体画像表示システムによれば、複数の上面電極23及び複数の下面電極24(すなわち、複数の制御ポイント26)に印加された電圧によってクロストークを利用して形成される電界変位面が、所定の画像パターンを表現するため、アナログな画像パターンを表示することができ、画素電極の大きさや形状による画像の表示精度の制限を排除して、十分な精度の画像を表示することができる。
【0065】
(本発明の第2の実施形態に係る立体画像表示システム)
図8(a)及び(b)を参照して、本発明の第2の実施形態に係る立体画像表示システムについて説明する。
【0066】
本実施形態に係る立体画像表示システムは、複数の制御ポイント26が光変調素子25に設けられた電極における突起形状部分である点を除いて、上述の第1及び第2の実施形態に係る立体画像表示システムと同じ構成を具備するものである。
【0067】
図8(a)は、本実施形態に係るホログラム記録素子21の断面を横方向から見た図であり、図8(b)は、本実施形態に係るホログラム記録素子21を上方から見た図である。
【0068】
図8(a)に示すように、本実施形態に係るホログラム記録素子21において、下面電極24が突起形状を有している。かかる場合、下面電極24の突起形状部分が、電界制御部22によって印加する電圧値を制御する制御ポイント26に該当する。
【0069】
したがって、かかる下面電極24における突起形状部分の先端に電荷が多く溜まるため、上面電極23と下面電極24との間で大きな電位差を発生することができる。また、本実施形態に係る下面電極24を用いることによって、制御ポイント26の間隔を狭めることができ、ホログラム記録素子21の小型化を実現することができる。
【0070】
図8(b)に示すように、本実施形態に係るホログラム記録素子21において、下面電極24における突起形状部分は、光変調素子25の表面上に一様に分布するように構成されている。
【0071】
また、本実施形態に係るホログラム記録素子21において、下面電極24における突起形状部分は、印加電圧をアクティブに制御可能なトランジスタ等で構成されている。
【0072】
したがって、本実施形態に係る電界制御部22は、下面電極24において所定電圧を印加する突起形状部分を随時変更することによって、上述の第2の実施形態に係る立体画像表示システムのように、上面電極23又は下面電極24を移動させることなく、複数の電界変位面を合成することによって高精度な干渉縞の画像パターンと等価な画像パターンを光変調素子25内に形成することができる。
【0073】
(本発明の第3の実施形態に係る立体画像表示システム)
図9乃至図12を参照して、本発明の第3の実施形態に係る立体画像表示システムについて説明する。以下、本実施形態に係る立体画像表示システムについて、上述の第1乃至第3の実施形態に係る立体画像表示システムとの相違点を主として説明する。
【0074】
図9に示すように、本実施形態に係る立体画像表示システムは、サーバ装置100と、立体画像表示装置2とを具備する。本実施形態では、立体画像表示装置2が、パケット通信ネットワーク5を介してサーバ装置100との間で通信可能な携帯通信端末によって構成されている例について説明する。
【0075】
サーバ装置100は、図10に示すように、干渉縞計算部1aと、記憶部1bと、送信部1cとを具備している。
【0076】
干渉縞計算部1aは、物体光と参照光とから生成される干渉縞(計算機ホログラム)を計算するものである。
【0077】
記憶部1bは、干渉縞の画像パターンと複数の上面電極23及び下面電極24の各々、すなわち、制御ポイント26の各々に印加する電圧値とを関連付けて記憶するものである。例えば、記憶部1bは、図6に示すテーブルを記憶するように構成されている。
【0078】
送信部1cは、計算された干渉縞の画像パターンに関連付けられている複数の電圧値(各制御ポイント26に印加する電圧値)を立体画像表示装置2に送信するものである。
【0079】
立体画像表示装置2は、図11に示すように、通信部31と、ホログラム記録素子21と、電界制御部22と、光源32と、光反射板33とを具備している。
【0080】
通信部31は、サーバ装置100に対して、干渉縞の画像パターンに対応する各制御ポイント26に印加する電圧値を送信するように要求し、受信した複数の電圧値を電界制御部22に送信する。
【0081】
電界制御部22は、通信部31を介してサーバ装置から受信した干渉縞の画素パターンに対応する複数の電圧値の電圧を各制御ポイント26に印加することによって、ホログラム記録素子21の光変調素子25内に、電界変位面を形成して、複数の電界変位面からなる干渉縞を記録するように構成されている。
【0082】
なお、ホログラム記録素子21の構成は、上述の第1乃至第3の実施形態に係るホログラム記録素子21の構成と同様である。ここで、上面電極23は、透明電極によって構成されている。
【0083】
光反射板33は、光源32からの光を反射させることによって、参照光Bを生成するものである。ここで、参照光Bは、サーバ装置100の干渉縞計算部1aによる干渉縞の計算に用いられた参照光と同じ波長及び同じ入射角度を有する。なお、光源32は、携帯通信端末の液晶ディスプレイで用いられるバックライトであってもよいし、かかるバックライトと別個に設けられた光源であってもよい。
【0084】
次に、図12を参照して、本実施形態に係る立体画像表示システムの動作の一例について説明する。
【0085】
ステップS1001において、サーバ装置100の干渉縞計算部1aが、物体光と参照光とから生成される干渉縞(計算機ホログラム)を計算する。
【0086】
ステップS1002において、サーバ装置100の送信部1cが、記憶部1bを参照して、計算機ホログラムの各画像パターンに関連付けられている制御ポイント26の各々に印加する電圧値を抽出する。
【0087】
ステップS1003において、サーバ装置100の送信部1cが、抽出した制御ポイント26の各々に印加する電圧値(電界強度情報)を含む画像情報を、パケット通信ネットワーク5を介して、立体画像表示装置2に送信する。
【0088】
ステップS1004において、立体画像表示装置2の電界制御部22が、通信部31を介してサーバ装置から受信した画像情報に基づいて、所定のタイミングで上面電極23及び下面電極24に所定電圧を印加することによって、ホログラム記録素子21の光変調素子25内に、電界変位面を形成して、複数の電界変位面からなる干渉縞を記録する。
【0089】
ステップS1005において、光源32が、光反射板33を介して参照光Bをホログラム記録素子21の光変調素子25内に形成された干渉縞に照射することによって、立体画像を表示する。
【0090】
(本発明の第4の実施形態に係る立体画像表示システム)
図13及び図14を参照して、本発明の第4の実施形態に係る立体画像表示システムについて説明する。以下、本実施形態に係る立体画像表示システムについて、上述の第1乃至第3の実施形態に係る立体画像表示システムとの相違点を主として説明する。
【0091】
図13(a)に示すように、本実施形態に係るホログラム記録素子21は、電界強度に応じて屈折率が変化する電気光学効果を有する光変調素子25と、当該光変調素子25の表面に設けられた複数の制御ポイント26とを具備する。
【0092】
具体的には、ホログラム記録素子21は、光変調素子25の上面に複数の上面電極23が設けられており、また、光変調素子25の下面に下面電極24が設けられている。ここで、下面電極24は、接地されているものとする。
【0093】
本実施形態では、光変調素子25の上面に設けられた複数の上面電極23の各々を、電界制御部22によって印加する電圧値を制御するポイントである「制御ポイント26」とする。
【0094】
また、上面電極23の各々に印加する電圧値は、電界制御部22によって独立に制御される。
【0095】
なお、本実施形態における上面電極23は、従来技術に係るアクティブマトリクス方式の電極構造を有する画像表示装置における上面電極23と異なり、表示する画像を構成する各画素に対応していない。
【0096】
本実施形態では、図13(b)に示すように、光変調素子25において、印加される電界強度(電位差)と屈折率の変化との関係は、非線形である。すなわち、本実施形態に係る光変調素子25は、印加される電界強度が高くなるにつれて、屈折率が急激に変化する特性を有している。
【0097】
図14(a)に、印加される電界強度(電位差)と屈折率の変化との関係が線形である光変調素子を用いた場合の例を示し、図14(b)に、印加される電界強度(電位差)と屈折率の変化との関係が非線形である本実施形態に係る光変調素子を用いた場合の例を示す。
【0098】
図14(a)及び(b)において、「C」は、図13(a)のB方向から見たホログラム記録素子21の様子(屈折率の変化パターン)を示し、「D」は、図13(a)のA方向から見たホログラム記録素子21の断面図を示す。
【0099】
図14(a)及び(b)から分かるように、上面電極23と下面電極24との間に同じ電位差(例えば、5V)を与えた場合であっても、図14(a)に示すホログラム記録素子21と図14(b)に示すホログラム記録素子21とで光変調素子25内部における屈折率の変化が異なり(「D」における屈折率変化曲線を参照)、図13(a)のB方向から見た場合の屈折率の変化パターンも異なる。
【0100】
具体的には、図14(b)に示すホログラム記録素子21における屈折率の変化パターンは、図14(a)に示すホログラム記録素子21における屈折率の変化パターンよりも小さい。
【0101】
すなわち、本実施形態によれば、上面電極23と下面電極24との間に所定の電位差を与えた場合に、印加される電界強度(電位差)と屈折率の変化との関係が線形である光変調素子を用いたホログラム記録素子21における屈折率の変化パターンよりも小さい屈折率の変化パターンを生成することができるため、より細かな干渉縞の画像パターンを生成することができる。
【0102】
(本発明の第5の実施形態に係る立体画像表示システム)
図15乃至図17を参照して、本発明の第5の実施形態に係る立体画像表示システムについて説明する。以下、本実施形態に係る立体画像表示システムについて、上述の第1乃至第5の実施形態に係る立体画像表示システムとの相違点を主として説明する。
【0103】
本実施形態に係るホログラム記録素子21の構成は、上述の第5の実施形態におけるホログラム記録素子21の構成と同一である(図13(a)参照)。
【0104】
本実施形態では、図15(a)に示すように、制御ポイント26は、複数の微小電極26aを有するように構成されている。図15(a)の例では、微小電極26aは、円形状を有しているが、本発明はこれに限定されず、制御ポイント26が任意の形状の微小電極26aを有する場合にも適応可能である。
【0105】
また、電界制御部22は、微小電極26aの各々に印加する電圧値を制御するように構成されている。
【0106】
具体的には、電界制御部22は、図15(b)に示すように、ケーブル等の接続部26bによって微小電極26aの各々に接続されており、微小電極26aの各々に印加する電圧値を独立に制御することができる。
【0107】
また、図16に示すように、制御ポイント26が設けられている上面電極23(又は、下面電極24)は、上述の第2の実施形態の場合と同様に、所定方向(上面電極移動方向又は下面電極移動方向)に移動可能に構成されていてもよい。
【0108】
図17に、制御ポイント26を構成する微小電極26aの一部に電圧を印加する場合の電圧を印加する微小電極26aのパターン(a)乃至(c)を示す。図17では、白丸で表現されている微小電圧26aに電圧が印加されており、黒丸で表現されている微小電圧26aに電圧が印加されていないものとする。
【0109】
電圧が印加される微小電極26aのパターンが「パターン(a)」である場合、光変調素子25内部に形成される等電位面は「パターン(a)」となり、電圧が印加される微小電極26aのパターンが「パターン(b)」である場合、光変調素子25内部に形成される等電位面は「パターン(b)となり、電圧が印加される微小電極26aのパターンが「パターン(c)」である場合、光変調素子25内部に形成される等電位面は「パターン(c)」となる。
【0110】
上述のように、本実施形態によれば、電界制御部22が電圧を印加する微小電極26aのパターンを変更することによって、複数の等電位面のパターンを生成することができるため、より精度良く干渉縞の画像パターンを生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る立体画像表示システムの全体構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る立体画像表示システムにおける光変調素子に記録される計算機ホログラムの一例を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る立体画像表示システムにおける立体画像表示装置について説明するための図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る立体画像表示システムにおける電界制御部による制御方法を説明するための図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る立体画像表示システムにおける電界制御部の機能ブロック図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る立体画像表示システムにおける電界制御部の記憶部の記憶内容を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る立体画像表示システムの動作を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る立体画像表示システムにおけるホログラム記録素子を説明するための図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る立体画像表示システムの全体構成図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る立体画像表示システムにおけるサーバ装置の機能ブロック図である。
【図11】本発明の第3の実施形態に係る立体画像表示システムにおける立体画像表示装置を説明するための図である。
【図12】本発明の第3の実施形態に係る立体画像表示システムの動作を示すフローチャートである。
【図13】本発明の第4の実施形態に係る立体画像表示システムにおける立体画像表示装置を説明するための図である。
【図14】本発明の第4の実施形態に係る立体画像表示システムにおける立体画像表示装置を説明するための図である。
【図15】本発明の第5の実施形態に係る立体画像表示システムにおける立体画像表示装置を説明するための図である。
【図16】本発明の第5の実施形態に係る立体画像表示システムにおける立体画像表示装置を説明するための図である。
【図17】本発明の第5の実施形態に係る立体画像表示システムにおける立体画像表示装置を説明するための図である。
【図18】従来の単純マトリクス方式の電極構造を有する画像表示装置を説明するための図である。
【図19】従来のアクティブマトリクス方式の電極構造を有する画像表示装置を説明するための図である。
【図20】従来の画像表示装置の問題点を説明するための図である。
【符号の説明】
【0112】
A…物体光
B…参照光
1…干渉縞計算装置
2…立体画像表示装置
21…ホログラム記録素子
22…電界制御部
22a…画像信号受信部
22b…記憶部
22c…決定部
22d…電圧印加部
23…上面電極
24…下面電極
25…光変調素子
26…制御ポイント
31…通信部
32…光源
33…光反射板
3…参照光照射装置
5…パケット通信ネットワーク
100…サーバ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電界強度に応じて屈折率が変化する電気光学効果を有する光変調素子と、
前記光変調素子の表面に設けられた複数の制御ポイントと、
前記複数の制御ポイントに印加する電圧値を制御して、所定の画像パターンを有する電界変位面を前記光変調素子内に形成するように構成された電界制御部とを具備することを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
計算された干渉縞を用いて立体画像を表示する立体画像表示装置であって、
電界強度に応じて屈折率が変化する電気光学効果を有する光変調素子と、
前記光変調素子の表面に設けられた複数の制御ポイントと、
前記複数の制御ポイントに印加する電圧値を制御して、前記干渉縞の画像パターンと等価な画像パターンを有する電界変位面を前記光変調素子内に形成するように構成された電界制御部とを具備することを特徴とする立体画像表示装置。
【請求項3】
前記画像パターンは、少なくとも前記干渉縞の位相情報又は前記干渉縞の振幅情報のいずれかによって構成されることを特徴とする請求項2に記載の立体画像表示装置。
【請求項4】
前記制御ポイントは、前記光変調素子の表面の縦方向に配線された縦方向配線電極と横方向に配線された横方向配線電極との交差部分であることを特徴とする請求項2に記載の立体画像表示装置。
【請求項5】
前記電界制御部は、前記干渉縞の画像パターンと前記複数の制御ポイントの各々に印加する電圧値とを関連付けて記憶しており、計算された前記干渉縞の画像パターンに関連付けられている前記電圧値を前記複数の制御ポイントの各々に印加することを特徴とする請求項2に記載の立体画像表示装置。
【請求項6】
前記複数の制御ポイントは、前記光変調素子の表面に設けられた電極における突起形状部分であることを特徴とする請求項2に記載の立体画像表示装置。
【請求項7】
前記光変調素子において前記電界強度と前記屈折率の変化との関係が非線形であることを特徴とする請求項2に記載の立体画像表示装置。
【請求項8】
前記複数の制御ポイントは、複数の微小電極を有し、
前記電界制御部は、前記微小電極の各々に印加する電圧値を制御することを特徴とする請求項2に記載の立体画像表示装置。
【請求項9】
立体画像表示装置とサーバ装置とを具備し、立体画像を表示する立体画像表示システムであって、
前記サーバ装置は、
物体光と参照光とから生成される干渉縞を計算する干渉縞計算部と、
干渉縞の画像パターンと複数の制御ポイントの各々に印加する電圧値とを関連付けて記憶する記憶部と、
計算された前記干渉縞の画像パターンに関連付けられている複数の電圧値を前記立体画像表示装置に送信する送信部とを具備し、
前記立体画像表示装置は、
電界強度に応じて屈折率が変化する電気光学効果を有する光変調素子と、
前記光変調素子の表面に設けられた複数の制御ポイントと、
前記サーバ装置から受信した前記複数の電圧値を、前記複数の制御ポイントの各々に印加して、前記干渉縞の画像パターンと等価な画像パターンを有する電界変位面を前記光変調素子内に形成するように構成されている電界制御部とを具備することを特徴とする立体画像表示システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2006−154131(P2006−154131A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−342965(P2004−342965)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】