画像表示装置およびプロジェクタ
【課題】 小型のプロジェクタを提供する。
【解決手段】 光源10からの光を変調する色変調ライトバルブ60Gと、色変調ライトバルブ60Gからの光を変調する輝度変調ライトバルブ100と、色変調ライトバルブ60Gと輝度変調ライトバルブ100との間に配され、色変調ライトバルブ60Gの光学像を輝度変調ライトバルブ100の受光面に結像するリレーレンズ系90と、リレーレンズ系90を構成する複数のレンズの間に配置された反射光学素子94,96と、を備える。
【解決手段】 光源10からの光を変調する色変調ライトバルブ60Gと、色変調ライトバルブ60Gからの光を変調する輝度変調ライトバルブ100と、色変調ライトバルブ60Gと輝度変調ライトバルブ100との間に配され、色変調ライトバルブ60Gの光学像を輝度変調ライトバルブ100の受光面に結像するリレーレンズ系90と、リレーレンズ系90を構成する複数のレンズの間に配置された反射光学素子94,96と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置およびプロジェクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、LCD(Liquid Crystal Display)、EL(Electro-luminescence)ディスプレイ、プラズマディスプレイ、CRT(Cathode Ray Tube)、プロジェクタ等の電子ディスプレイ装置における画質改善は目覚しく、解像度、色域については人間の視覚特性にほぼ匹敵する性能を有する装置が実現されつつある。しかし、輝度ダイナミックレンジについてみると、その再現範囲は1〜102[nit]程度の範囲であり、また階調数は8ビットが一般的である。一方、人間の視覚は、一度に知覚し得る輝度ダイナミックレンジの範囲が10−2〜104[nit]程度あり、また輝度弁別能力は0.2[nit]でこれを階調数に換算すると12ビット相当といわれている。このような視覚特性を通じて現在のディスプレイ装置の表示画像を見ると、輝度ダイナミックレンジの狭さが目立ち、加えてシャドウ部やハイライト部の階調が不足しているため、表示画像のリアリティや迫力に対して物足りなさを感じることになる。
【0003】
映画やゲーム等で使用されるCG(Computer Graphics)では、人間の視覚に近い輝度ダイナミックレンジや階調特性を有する画像データ(以下、HDR(High Dynamic Range)画像データという。)を用いて、描写のリアリティを追求する動きが主流になりつつある。しかし、それを表示するディスプレイ装置の性能が不足しているために、CGコンテンツが本来有する表現力を充分に発揮できないという課題がある。
【0004】
さらに、次世代OS(Operating System)においては、16ビット色空間の採用が予定されており、現在の8ビット色空間と比較してダイナミックレンジや階調数が飛躍的に増大する。そのため、16ビット色空間を生かすことができる高ダイナミックレンジ・高階調の電子ディスプレイ装置実現への要求が高まると予想される。
【0005】
ディスプレイ装置の中でも、液晶プロジェクタや、DLP(Digital Light Processing、TI社の登録商標)プロジェクタといった投射型表示装置は、大画面表示が可能であり、表示画像のリアリティや迫力を再現する上で効果的なディスプレイ装置である。この分野では上記の課題を解決するために、以下に述べる提案がなされている。
【0006】
高ダイナミックレンジのディスプレイ装置としては、例えば、特許文献1に開示されている技術があり、光源と、光の全波長領域の輝度を変調する第2光変調素子と、光の波長領域のうちRGB3原色の各波長領域についてその波長領域の輝度を変調する第1光変調素子とを備え、光源からの光を第2光変調素子で変調して所望の輝度分布を形成し、その光学像を第1光変調素子の表示面に結像して色変調し、2次変調した光を投射するというものである。第2光変調素子及び第1光変調素子の各画素は、HDR表示データから決定される第1制御値及び第2制御値に基づいてそれぞれ別個に制御される。光変調素子としては、透過率が独立に制御可能な画素構造またはセグメント構造を有し、二次元的な透過率分布を制御し得る透過型変調素子が用いられる。その代表例としては、液晶ライトバルブがあげられる。また、透過型変調素子の代わりに反射型変調素子を用いてもよく、その代表例としては、DMD(Digital Micromirror Device)素子があげられる。
【0007】
いま、暗表示の透過率が0.2%、明表示の透過率が60%の光変調素子を使用する場合を考える。光変調素子単体では、輝度ダイナミックレンジは、60/0.2=300となる。上記ディスプレイ装置は、輝度ダイナミックレンジが300の光変調素子を光学的に直列に配置することに相当するので、300×300=90000の輝度ダイナミックレンジを実現することができる。また、階調数についてもこれと同等の考えが成り立ち、8ビット階調の光変調素子を光学的に直列に配置することにより、8ビットを超える階調数を得ることができる。
【特許文献1】特開2001−100689号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献1記載の発明においては、光学収差が大きい照明光学系用の光学素子を用いて第1変調素子で形成した光学像を第2変調素子に伝達しているために所望の光強度分布を有する照明光を第1光変調素子上に正確に伝達することが困難であるという問題があった。
【0009】
そこで、本願発明者らは、図17に示すプロジェクタを開発している。図17に示すプロジェクタは、表示画像データに基づき光源10からの光を変調して画像を表示するものであって、光源10からの光の光伝搬特性を制御する複数の第1光変調素子60R,60G,60Bと、各第1光変調素子からの光を合成する光合成手段80と、光合成手段によって合成された合成光の光伝搬特性を制御する第2光変調素子100と、前記第1光変調素子60R,60G,60B上に形成された光学像を前記第2光変調素子100上に伝達するリレーレンズ系90とを有するものである。
【0010】
このような構成であれば、複数の第1光変調素子60R,60G,60B上に形成された光学像を、結像性能が高いリレーレンズ系90によって第2光変調素子100上に伝達することが可能である。これにより合成光伝達時の光学収差の低減が可能となる。つまり、光合成手段80からの合成光を第2光変調素子100へと比較的高い精度で伝達することができるので、従来に比して前記合成光の第2光変調素子100への結像精度を向上できるという効果が得られる。
【0011】
図18は、従来のリレーレンズ系の説明図である。しかしながら、上述したリレーレンズ系90は、(1)プロジェクタの十分な光束を確保するため、Fナンバーが2程度の明るさを必要とし、(2)透過型液晶ライトバルブの画素単位の光量分布を伝達するため、10μm程度の解像能力を必要とし、(3)液晶の視角依存性による画質劣化を回避するため、両側テレセントリック特性を必要とする、といった各種性能を満足する必要がある。ここで、第1光変調素子60R,60G,60Bおよび第2光変調素子100として画面サイズが1インチ程度の透過型液晶ライトバルブを使用した場合に、上記(1)〜(3)の性能を兼ね備えるリレーレンズ系90は、水平方向における長さが200mm以上の長いものになる。その結果、第1光変調素子と第2光変調素子との間の距離である共役長が300mm以上となって、プロジェクタが大型化するという問題がある。
【0012】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、小型化の可能な画像表示装置およびプロジェクタの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の画像表示装置は、表示画像データに基づき光源からの光を変調して画像を表示する装置であって、前記光源からの光を変調する第1光変調素子と、前記第1光変調素子からの光を変調する第2光変調素子と、前記第1光変調素子と前記第2光変調素子との間に配され、前記第1光変調素子の光学像を前記第2光変調素子の受光面に結像するリレーレンズ系と、前記リレーレンズ系を構成する複数のレンズの間に配置された少なくとも1個の反射光学素子と、を備えることを特徴とする。
特に、前記リレーレンズ系は、前記第1光変調素子から入射した光の進行方向を、前記反射光学素子により反転させて、前記第2光変調素子に出射することが望ましい。
このように、反射光学素子を採用して光路を折り曲げたリレーレンズ系の水平方向の長さは、反射光学素子を採用しない場合と比べて短くなる。したがって、画像表示装置を小型化することができる。
【0014】
また、前記リレーレンズ系は、両側テレセントリック性を有することが望ましい。
両側テレセントリック性を有することにより、画面の各領域における画像コントラストが略同一となり、良好な画像表示品質を有する画像表示装置を提供することができる。そして、両側テレセントリック性を有するリレーレンズ系は、多くのレンズで構成されるため、水平方向の長さが長くなる。したがって、反射光学素子を採用して光路を折り曲げることにより、画像表示装置を小型化することができる。
【0015】
また、前記反射光学素子は、前記リレーレンズ系を構成する複数のレンズのうち前記反射光学素子の前段レンズ群と前記反射光学素子の後段レンズ群とが、対称となる位置に配置されていることが望ましい。
この構成によれば、リレーレンズ系の光学設計が容易になる。
【0016】
また、前記反射光学素子は、反射型偏光子であることが望ましい。
反射型偏光子は、光束のうちの一部の偏光を透過し一部の偏光を反射するものであるから、各光変調素子の偏光板として機能させることができる。これにより、各光変調素子の偏光板を省略することができるので、コストを低減することができる。
【0017】
また、前記反射光学素子は、ワイヤグリッド型偏光フィルタであることが望ましい。
このワイヤグリッド型偏光フィルタは、構造が単純なので容易に製造することができる。また、無機素材で構成されるため、極めて耐熱性に優れるとともに、光吸収をほとんど生じない。そして、各光変調素子の偏光板を省略してワイヤグリッド型偏光フィルタを用いることにより、画像表示装置の耐熱性を向上させることができる。
なお、前記反射光学素子は、偏光ビームスプリッタであってもよい。
【0018】
また、前記反射光学素子は、反射プリズムのプリズム面に形成されていることが望ましい。
反射プリズムを採用することにより、リレーレンズ系の空気換算光路長が短くなる。したがって、リレーレンズ系の光学設計上の制約が少なくなる。
【0019】
一方、本発明のプロジェクタは、上述した画像表示装置と、投射手段と、を備えることを特徴とする。
この構成によれば、プロジェクタを小型化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態例を図面に基づいて説明する。
【0021】
[第1の実施形態]
図1および図2は、本実施形態の画像表示装置及びプロジェクタの一例であり、プロジェクタPJ1の主たる光学構成を示す図である。図1は側面図であり、図2(a)は図1のA−A線における平面断面図であり、図2(b)は図1のB−B線における平面断面図である。
図1および図2に示すように、プロジェクタPJ1は、光源10と、光源10から入射した光の輝度分布を均一化する均一照明系20と、均一照明系20から入射した光の波長領域のうちのRGB3原色の輝度をそれぞれ変調する色変調部25(第1変調手段としての3つの透過型液晶ライトバルブ60B,60G,60Rを含む)と、色変調部25から入射した光をリレーするリレーレンズ系90と、リレーレンズ系90から入射した光の全波長領域の輝度を変調する第2変調手段としての透過型液晶ライトバルブ100と、液晶ライトバルブ100から入射した光をスクリーン(不図示)に投射する投射レンズ110と、を含んで構成されている。
【0022】
[プロジェクタの全体構成]
光源10は、超高圧水銀ランプやキセノンランプ等からなるランプ11と、ランプ11からの射出光を反射・集光するリフレクタ12とを含んで構成されている。
【0023】
均一照明系20は、フライアイレンズ等からなる2つのレンズアレイ21,22と、偏光変換素子23と、集光レンズ24とを含んで構成されている。そして、光源10からの光の輝度分布を2つのレンズアレイ21,22により均一化し、均一化した光を偏光変換素子23により色変調部の入射可能偏光方向に偏光し、偏光した光を集光レンズ24により集光して色変調部25に射出する。なお、偏光変換素子23は、例えばPBS(偏光ビームスプリッタ)アレイおよび1/2波長板で構成されており、ランダム偏光を特定の直線偏光に変換するものである。
【0024】
色変調部25は、光分離手段としての2つのダイクロイックミラー30,35と、3つのミラー(反射ミラー36,45,46)と、5つのフィールドレンズ(レンズ41、リレーレンズ42、平行化レンズ50B,50G,50R)と、3つの液晶ライトバルブ60B,60G,60Rと、クロスダイクロイックプリズム80と、を含んで構成されている。
【0025】
ダイクロイックミラー30,35は、光源10からの光(白色光)を、赤色光(R光)、緑色光(G光)、青色光(B光)のRGB3原色光に分離(分光)するものである。ダイクロイックミラー30は、B光及びG光を反射し、R光を透過する性質のダイクロイック膜をガラス板等に形成したもので、光源10からの白色光に含まれるB光及びG光を反射し、R光を透過する。ダイクロイックミラー35は、G光を反射し、B光を透過する性質のダイクロイック膜をガラス板等に形成したもので、ダイクロイックミラー30を透過したG光及びB光のうち、G光を反射して平行化レンズ50Gに伝達し、B光を透過してレンズ41に伝達する。
【0026】
リレーレンズ42はレンズ41近傍の光(光強度分布)を平行化レンズ50B近傍に伝達するもので、レンズ41はリレーレンズ42に光を効率よく入射させる機能を有する。レンズ41に入射したB光はその強度分布をほぼ保存された状態で、かつ光損失を殆ど伴うことなく空間的に離れた液晶ライトバルブ60Bに伝達される。
【0027】
平行化レンズ50B,50G,50Rは、対応する液晶ライトバルブ60B,60G,60Rに入射する各色光を略平行化して入射光の角度分布を狭め、液晶ライトバルブ60B,60G,60Rの表示特性を向上させる機能を有している。そして、ダイクロイックミラー30,35で分光されたRGB3原色の光は、上述したミラー(反射ミラー36,45,46)及びフィールドレンズ(レンズ41、リレーレンズ42、平行化レンズ50B,50G,50R)を介して、液晶ライトバルブ60B,60G,60Rに入射する。
【0028】
液晶ライトバルブ60B,60G,60Rは、画素電極及びこれを駆動するための薄膜トランジスタや薄膜ダイオード等のスイッチング素子がマトリクス状に形成されたガラス基板と、全面にわたって共通電極が形成されたガラス基板との間にTN型液晶を挟み込むとともに、外面に偏光板を配置したアクティブマトリクス型の液晶表示素子である。
【0029】
また、液晶ライトバルブ60B,60G,60Rは、電圧非印加状態で白/明(透過)状態、電圧印加状態で黒/暗(非透過)状態となるノーマリーホワイトモード、またはその逆のノーマリーブラックモードで駆動され、電極間に与えられた制御値(制御電圧)に応じて明暗間の階調がアナログ制御される。液晶ライトバルブ60Bは、入射されたB光を制御値に基づいて光変調し、光学像を内包した変調光を射出する。液晶ライトバルブ60Gは、入射されたG光を制御値に基づいて光変調し、光学像を内包した変調光を射出する。液晶ライトバルブ60Rは、入射されたR光を制御値に基づいて光変調し、光学像を内包した変調光を射出する。
【0030】
クロスダイクロイックプリズム80は、4つの直角プリズムが貼り合わされた構造からなり、その内部には、B光を反射する誘電体多層膜(B光反射ダイクロイック膜81)及びR光を反射する誘電体多層膜(R光反射ダイクロイック膜82)が断面X字状に形成されている。そして、液晶ライトバルブ60GからのG光を透過し、液晶ライトバルブ60RからのR光と液晶ライトバルブ60BからのB光とを折り曲げてこれらの3色の光を合成し、カラー画像を形成する。
【0031】
リレーレンズ系90は、クロスダイクロイックプリズム80で合成された液晶ライトバルブ60B,60G,60Rからの光学像(光強度分布)を、液晶ライトバルブ100の表示面上に伝達するものである。本実施形態のリレーレンズ系90は、クロスダイクロイックプリズム80からの出射光を上方に屈折させ、さらに水平方向に屈折させて、クロスダイクロイックプリズム80の上方に配置された液晶ライトバルブ100に対して、光学像を伝達するものである。リレーレンズ系90の構成および機能については、後で詳しく説明する。
【0032】
液晶ライトバルブ100は、前述した液晶ライトバルブ60B,60G,60Rと同等の構成からなり、入射した光の全波長領域の輝度を制御値に基づいて変調する。そして、最終的な光学像を内包した変調光を、ミラー109により90°屈折させて、投射レンズ110に射出する。
投射レンズ110は、液晶ライトバルブ100の表示面上に形成された光学像を、図示しないスクリーン上に投射してカラー画像を表示する。
【0033】
次に、プロジェクタPJ1の全体的な光伝達の流れを説明する。光源10からの白色光はダイクロイックミラー30,35により赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)の3原色光に分光されるとともに、平行化レンズ50B,50G,50Rを含むレンズ及びミラーを介して、液晶ライトバルブ60B,60G,60Rに入射される。その液晶ライトバルブ60B,60G,60Rは、後述するHDR画像データに基づいて生成された制御値によって駆動され、画素単位で光透過率を変化させうるようになっている。したがって、液晶ライトバルブ60B,60G,60Rに入射した各々の色光は、それぞれの波長領域に応じて色変調され、光学像を内包した変調光として射出される。
【0034】
液晶ライトバルブ60B,60G,60Rからの各変調光は、それぞれクロスダイクロイックプリズム80に入射し、そこで一つの光に合成され、リレーレンズ系90に入射する。リレーレンズ系90は、入射した合成光を上方に屈折させ、さらに水平方向に屈折させて、液晶ライトバルブ100に伝達する。液晶ライトバルブ100も同様に、後述するHDR画像データに基づいて生成された制御値によって駆動され、画素単位で光透過率を変化させうるようになっている。したがって、液晶ライトバルブ100に入射した合成光は、全波長域について輝度変調され、最終的な光学像を内包した変調光として投射レンズ110へ射出される。そして、投射レンズ110において、液晶ライトバルブ100からの最終的な合成光を図示しないスクリーン上に投射し所望の画像を表示する。
【0035】
このように、プロジェクタPJ1では、第1光変調素子としての液晶ライトバルブ60B,60G,60Rで光学像(画像)を形成した変調光を用いて、最終的な表示画像を第2光変調素子としての液晶ライトバルブ100で形成する形態を採用しており、直列に配置された2つのライトバルブを介して、2段階の画像形成過程によって光源10からの光を変調する。その結果、プロジェクタPJ1は、輝度ダイナミックレンジの拡大と階調数の増大を実現することができるようになっている。
【0036】
また、プロジェクタPJ1では、第1光変調素子としての液晶ライトバルブ60B,60G,60R及びクロスダイクロイックプリズム80の後段に、結像性能が優れたリレーレンズ系90を介して第2光変調素子としての液晶ライトバルブ100を配置したので、液晶ライトバルブ100を、ダイクロイックミラー30,35および液晶ライトバルブ60B,60G,60Rの前段に配置する従来の類似の光学系と比べて、伝達光の光学収差を低減し、結像(伝達)精度を向上することが可能となる。
【0037】
ここで、液晶ライトバルブ60B,60G,60R及び液晶ライトバルブ100は、いずれも透過光の強度を変調しその変調度合いに応じた光学像を内包する点で一致するが、後者の液晶ライトバルブ100が全波長域の光(白色光)を変調するのに対して、前者の液晶ライトバルブ60B,60G,60Rが光分離手段であるダイクロイックミラー30,35で分光された特定波長領域の光(R,G,Bなどの色光)を変調する点で異なっている。したがって、液晶ライトバルブ60B,60G,60Rで行われる光強度変調を色変調、液晶ライトバルブ100で行われる光強度変調を輝度変調と便宜的に呼称して区別する。また、同様の観点から、以下の説明では液晶ライトバルブ60B,60G,60Rを色変調ライトバルブ、液晶ライトバルブ100を輝度変調ライトバルブと呼称して区別する場合がある。
【0038】
そして、色変調ライトバルブ及び輝度変調ライトバルブに入力する制御値の内容については、後ほど詳述する。なお、本実施形態では、色変調ライトバルブは輝度変調ライトバルブよりも高い解像度を有し、よって、色変調ライトバルブが表示解像度(プロジェクタPJ1の表示画像を観測者が見たときに観測者が知覚する解像度をいう。)を決定する場合を想定している。勿論、表示解像度の関係はこれに限定されず、同じ解像度の色変調ライトバルブ及び輝度変調ライトバルブを採用することも可能であるし、また輝度変調ライトバルブが色変調ライトバルブよりも高い解像度を有し、輝度変調ライトバルブが表示解像度を決定する構成を採用することも可能である。
【0039】
[リレーレンズ系]
次に、リレーレンズ系の構成および機能につき、図を用いて詳しく説明する。
図3は、本実施形態のリレーレンズ系90の構成を示す側面図である。なお図3では、理解を容易にするため、3原色用の3個の色変調ライトバルブを1個の色変調ライトバルブ60で代表して描き、なおかつ色変調ライトバルブ60とリレーレンズ系90との間にあるクロスダイクロイックプリズムを省略して描いているが、光学的には図1および図2の構成と等価なものである。
【0040】
図3のリレーレンズ系90は、各色変調用の液晶ライトバルブ60B,60G,60Rの光学像を液晶ライトバルブ100の画素面に結像するものであって、開口絞り95に対してほぼ対称に配置された前段レンズ群92及び後段レンズ群98からなる等倍結像レンズである。前段レンズ群92及び後段レンズ群98は、複数の凸レンズ及び凹レンズを含んで構成され、両側テレセントリック性を有している。ただし、レンズの形状、大きさ、配置間隔及び枚数、テレセントリック性、倍率その他のレンズ特性は、要求される特性によって適宜変更され得るものであり、図3の例に限定されるものではない。リレーレンズ系90は、多数枚のレンズから構成されるので、収差補正がよく、各色変調用の液晶ライトバルブ60B,60G,60Rで形成される輝度分布を正確に液晶ライトバルブ100に伝達することができる。
【0041】
図4は、テレセントリック性の説明図であり、図4(a)は両側テレセントリック性を有するリレーレンズ系であり、図4(b)は有しないリレーレンズ系である。
図4(b)のリレーレンズ系190では、色変調ライトバルブ60から出射された光が、レンズ195を介して、輝度変調ライトバルブ100に伝達されている。この場合、色変調ライトバルブ60の各領域から所定の角度範囲に出射された光61のうち、一部の角度範囲に出射された光191のみが輝度変調ライトバルブ100に伝達されている。そして、色変調ライトバルブ60の各領域では、異なる角度範囲に出射された光が輝度変調ライトバルブ100に伝達されている。一方、輝度変調ライトバルブ100の各領域に対しては、異なる角度で光が入射するようになっている。ところで、一般に液晶ライトバルブは視角依存性を有するため、光の出入射角度によってコントラストが異なることになる。そして、液晶ライトバルブの各領域に対して異なる角度で出入射する光を利用すると、画面の各領域において表示画像のコントラストが区々となり、プロジェクタの画像表示品質が低下することになる。
【0042】
これに対して、図4(a)のリレーレンズ系90では、色変調ライトバルブ60から出射した光が、前段レンズ92、絞り95および後段レンズ98を介して、輝度変調ライトバルブ100に伝達されている。この場合、色変調ライトバルブ60から出射した光61のうち、中央部の光91のみが輝度変調ライトバルブ100に伝達されている。すなわち、リレーレンズ系90の光軸に対して略平行に色変調ライトバルブ60の各領域から出射した光91のみが利用されている。このように、液晶ライトバルブのどの領域からの出射光についても、同じ角度範囲の出射光を利用しうる性能が、出射側テレセントリック性である。また、液晶ライトバルブのどの領域に対しても、同じ角度範囲で光を入射させうる性能が、入射側テレセントリック性である。そして、リレーレンズ系90が両側テレセントリック性を有することにより、画面の各領域における画像コントラストが略同一となり、良好な画像表示品質を有するプロジェクタを提供することができる。
【0043】
図3に戻り、本実施形態のリレーレンズ系90では、複数のレンズの間に少なくとも1個の反射光学素子94,96が配設されて、光路が折り曲げられている。なお、光学設計の容易性の観点から、反射光学素子94,96より前方のレンズ群と後方のレンズ群とがほぼ対称となるように、反射光学素子94,96を配設することが望ましい。図3では、前段レンズ群92と後段レンズ群98とが対称に配置されるように、絞り95と前段レンズ群92との間に前段反射光学素子94が配設され、絞り95と後段レンズ群98との間に後段反射光学素子96が配設されている。
【0044】
その前段反射光学素子94は、リレーレンズ系90の入口から水平に入射した光を、上方に反射するように配設されている。また後段反射光学素子96は、前段反射光学素子により反射された光を、リレーレンズ系90の出口に向かって水平に反射するように配設されている。すなわちリレーレンズ系90は、色変調ライトバルブ60から入射した光の進行方向を、反射光学素子94,96により反転させて、輝度変調ライトバルブ100に出射するように構成されている。そのため、反射光学素子94,96を採用したリレーレンズ系90における水平方向の長さは、反射光学素子を採用しない場合の水平方向の長さに比べて、半分程度になっている。これにより、プロジェクタを小型化することができる。
【0045】
上述した各反射光学素子94,96として、反射ミラーを採用することができる。またミラー以外に、ワイヤグリッド型偏光フィルタや偏光ビームスプリッタ等の反射型偏光子を採用することも可能である。反射型偏光子は、光束のうちの一部の偏光を透過し、一部の偏光を反射するものである。特に、互いに直交する直線偏光のうちの一方を透過し、他方を反射するものを用いることができる。なお、前段反射光学素子94および後段反射光学素子96の両方に反射型偏光子を採用してもよく、一方に反射型偏光子を採用し他方に反射ミラーを採用してもよい。
【0046】
反射型偏光子として、具体的には、複屈折性を有する薄膜Aと複屈折性を有しない薄膜Bとを複数積層した多層構造フィルムを用いる。ここで、薄膜AのX方向の屈折率が、薄膜Bの屈折率と同じになるように構成する。この場合、X方向には各層間の屈折率差がないことから、多層構造フィルムに入射したX方向の直線偏光は、そのまま透過する。一方、多層構造フィルムに入射したY方向の直線偏光は、薄膜Aと薄膜Bとの界面で反射される。このとき、入射光の波長との関係で、薄膜Aと薄膜Bとの膜厚比を適当に設定しておく。
【0047】
また、反射型偏光子として、ワイヤグリッド型偏光フィルタを採用することも可能である。ワイヤグリッド型偏光フィルタは、構造複屈折型偏光板の一種であり、透明基板上に形成された金属薄膜に、所定方向に延びる微細な溝が形成された構造を有している。この金属薄膜は、アルミニウムやタングステン等を用いて、蒸着法やスパッタ法によって形成することができる。また微細溝は、2光束干渉露光法や、電子線描画法、X線リソグラフィー法等と、エッチングとを組み合わせることによって形成することができる。そして、この微細溝のピッチは、反射すべき光の波長より短く形成されている。これにより、微細溝と平行方向の直線偏光を反射し、垂直方向の直線偏光を透過することができるようになっている。このワイヤグリッド型偏光フィルタは、構造が単純なので容易に製造することができる。また、無機素材で構成されるため、極めて耐熱性に優れるとともに、光吸収をほとんど生じない。
【0048】
図5は、偏光ビームスプリッタを採用したリレーレンズ系の側面図である。リレーレンズ系290の反射光学素子294,296として、反射型偏光子の一種である偏光ビームスプリッタを採用してもよい。この場合にも、他の反射型偏光子と同様の効果を得ることができる。
【0049】
ところで、色変調ライトバルブに採用される液晶パネルは、一対の基板により液晶層を挟持して構成されている。一対の基板の内側にはそれぞれ電極および配向膜が形成され、一対の基板の外側にはそれぞれ偏光板が配置されている。この偏光板は所定方向の直線偏光のみを透過させるものであり、各偏光板は透過軸を約90°交差させて配置されている。そして、一対の基板の電極により液晶層に電界を印加して、液晶分子の配向を変化させ、液晶パネルに入射した直線偏光の偏光方向を制御することにより、画像表示が行われるようになっている。
【0050】
上述した反射型偏光子はいずれも、直交する直線偏光のうちの一方を透過し、他方を反射するものである。そこで、リレーレンズ系の反射光学素子として反射型偏光子を採用すれば、その反射型偏光子を液晶パネルの偏光板として機能させることができる。具体的には、図3の前段反射光学素子94として採用された反射型偏光子は、色変調ライトバルブ60の出射側偏光板として機能させることが可能であり、後段反射光学素子96として採用された反射型偏光子は、輝度変調ライトバルブ100の入射側偏光板として機能させることが可能である。なお、各反射型偏光子の反射軸方向は、対応する偏光板の透過軸方向と一致させる。
【0051】
このように、リレーレンズ系90の反射型偏光子を液晶パネルの偏光板として機能させれば、液晶パネルの偏光板を省略することができるので、コストを低減することができる。なお、一般に液晶パネルの偏光板は、ポリビニルアルコール等の偏光基材に、ヨウ素等の偏光素子を吸着させて構成されている。このように有機材料からなる偏光板は、耐熱性が低いという問題がある。特にプロジェクタでは、画像の輝度を向上させるため、光源から強い光を照射する必要がある。そこで、偏光度が低い変光板を複数枚使用して、個々の偏光板の発熱を抑制することが行われている。これに対して、無機材料からなるワイヤグリッド型偏光フィルムは、耐熱性に優れている。したがって、リレーレンズ系の反射光学素子としてワイヤグリッド型偏光フィルムを採用すれば、プロジェクタの耐熱性を向上させることが可能になり、ひいては画像の輝度を向上させることができる。
【0052】
図6は、反射プリズムを採用したリレーレンズ系の側面図である。図6のリレーレンズ系390では、前段レンズ群92の出口から後段レンズ群98の入口にかけて、反射プリズム395が配設されている。この反射プリズムは、屈折率が1.0を超えるガラス等の媒質で構成されている。また、反射プリズム395における各レンズ群92,98との対向面とは反対側の下端部および上端部に、傾斜した反射面394,396が設けられている。そして、前段レンズ群92から反射プリズム395に入射した光は、反射面394により上方に反射され、さらに反射面396により水平方向に反射されて、反射プリズム395から後段レンズ群98に出射するようになっている。この反射面394,396は、上記と同様に、反射ミラーや反射型偏光子、ワイヤグリッド偏光フィルタ等で構成することが可能である。
【0053】
ところで、図18のように直線配置された従来のリレーレンズ系に比べて、図3や図5のように光路を折り曲げたリレーレンズ系では、前段レンズ群92と後段レンズ群98との間隔を広げる必要があり、リレーレンズ系の光学設計に制約が生じる傾向がある。これに対して、図6のように反射プリズム395を採用したリレーレンズ系390では、前段レンズ群92と後段レンズ群98との間に、屈折率が1.0を超える媒質を配置しているため、光学的長さである空気換算光路長が短くなる。したがって、図3や図5の場合よりリレーレンズ系の光学設計上の制約が少なくなる。
【0054】
図7は、リレーレンズ系に1個の反射光学素子を採用した場合のプロジェクタの平面図である。上述したリレーレンズ系ではいずれも、2個の反射光学素子を採用して、入射光の光路を上方に折り曲げ、さらに水平方向に折り曲げて、入射光と反対方向に出射させた。これに対して、図7に示すリレーレンズ系490のように、1個の反射光学素子495のみを採用し、入射光の光路を水平方向のみに折り曲げてもよい。この場合でも、反射光学素子を採用したリレーレンズ系490の水平方向の長さは、図18のように反射光学素子を採用しないリレーレンズ系の水平方向の長さに比べて、半分程度になっている。これにより、プロジェクタを小型化することができる。また図7のリレーレンズ系490は、図3のように2個の反射光学素子94,96を採用したリレーレンズ系90に比べて、光利用効率が高いという利点を有する。
【0055】
[液晶ライトバルブの変調の具体例]
次に、表示画像データに基づく色変調ライトバルブ及び輝度変調ライトバルブの変調の具体例について詳しく説明する。
プロジェクタPJ1(図1参照)では、映像信号から生成された色変調信号で色変調ライトバルブ(図1に示す液晶ライトバルブ60B,60G,60R)を、輝度変調信号で輝度変調ライトバルブ(図1に示す液晶ライトバルブ100)を駆動することにより、輝度ダイナミックレンジの拡大と階調数の増大を実現する。液晶ライトバルブの変調制御は、次に説明する表示制御装置によって行う。
【0056】
図8は、表示制御装置200のハードウエア構成を示すブロック図である。
表示制御装置200は、図8に示すように、制御プログラムに基づいて演算及びシステム全体を制御するCPU170と、所定領域にあらかじめCPU170の制御プログラム等を格納しているROM172と、ROM172等から読み出したデータやCPU170の演算過程で必要な演算結果を格納するためのRAM174と、外部装置に対してデータの入出力を媒介するI/F178とで構成されており、これらは、データを転送するための信号線であるバス179で相互にかつデータ授受可能に接続されている。
【0057】
I/F178には、外部装置として、輝度変調ライトバルブ及び色変調ライトバルブを駆動するライトバルブ駆動装置180と、データやテーブル等をファイルとして格納する記憶装置182と、外部のネットワーク199に接続するための信号線とが接続されている。
【0058】
記憶装置182には、輝度変調ライトバルブ及び色変調ライトバルブを駆動するためのHDR表示データおよび制御値登録テーブルが記憶されている。
【0059】
HDR画像データは、従来のsRGB等の画像フォーマットでは実現できない高い輝度ダイナミックレンジを実現することが可能な画像データであり、画素の輝度レベルを示す画素値を画像の全画素について格納している。本実施形態では、HDR画像データとして、1つの画素についてRGB3原色ごとに輝度レベルを示す画素値を浮動小数点値として格納した形式を用いる。例えば、1つの画素の画素値として(1.2,5.4,2.3)という値が格納されている。また、格納する値としては、放射輝度(Radiance)や輝度(Luminance)等の物理的な輝度に関する値を格納しているのも特徴である。放射輝度に人間の視感特性をかけたものが輝度であるため、以後の説明では二つを区別せずに輝度と呼ぶ。
【0060】
なお、HDR画像データの生成方法の詳細については、例えば、「P.E.Debevec,J.Malik,"Recovering High Dynamic Range Radiance Maps from Photographs",Proceedings of ACM SIGGRAPH97 ,pp.367-378(1997)」に掲載されている。
【0061】
図9は、輝度変調ライトバルブに入力するための制御値を登録した制御値登録テーブル400のデータ構造の説明図である。制御値登録テーブル(ルックアップテーブル;LUT)400の各レコードは、輝度変調ライトバルブの制御値を登録したフィールドと、各制御値に対応する輝度変調ライトバルブの透過率を登録したフィールドとを含んで構成されている。
【0062】
図9の例では、第1段目のレコードには、制御値として「0」が、透過率として「0.003」がそれぞれ登録されている。これは、輝度変調ライトバルブに対して制御値「0」を入力すると、輝度変調ライトバルブの透過率が0.3%となることを示している。なお、図9には輝度変調ライトバルブの階調数が4ビット(0〜15値)である場合の例を示したが、実際には輝度変調ライトバルブの階調数に相当するレコードが登録される。例えば、階調数が8ビットである場合は、256個のレコードが登録される。
【0063】
図10は、色変調ライトバルブに入力するための制御値を登録した制御値登録テーブル420Rのデータ構造の説明図である。制御値登録テーブル(ルックアップテーブル;LUT)420Rの各レコードは、図2の色変調ライトバルブ60Rの制御値を登録したフィールドと、色変調ライトバルブ60Rの透過率を登録したフィールドとを含んで構成されている。
【0064】
図10の例では、第1段目のレコードには、制御値として「0」が、透過率として「0.004」がそれぞれ登録されている。これは、色変調ライトバルブに対して制御値「0」を入力すると、色変調ライトバルブの透過率が0.4%となることを示している。なお、図10には色変調ライトバルブの階調数が4ビット(0〜15値)である場合の例を示したが、実際には色変調ライトバルブの階調数に相当するレコードが登録される。例えば、階調数が8ビットである場合は、256個のレコードが登録される。
また、図2の色変調ライトバルブ60B,60Gに対応する制御値登録テーブルのデータ構造については特に図示しないが、図10の制御値登録テーブル420Rと同様のデータ構造を有している。ただし、同一の制御値に対して異なる透過率が登録されている場合もある。
【0065】
[表示制御方法]
次に、上述したHDR画像データから各ライトバルブの制御値を生成して、プロジェクタを駆動する方法について説明する。
いま、HDR画像データにおける画素pの輝度レベルをRp、プロジェクタ全体における画素pに対応する領域の光変調率をTp,輝度変調ライトバルブにおける画素pに対応する領域の透過率をT1、色変調ライトバルブにおける画素pに対応する領域の透過率をT2とすると、下式(1),(2)が成立する。
Rp = Tp×Rs (1)
Tp = T1×T2×G (2)
ただし、上式(1),(2)において、Rsは光源の輝度、Gはゲインであり、いずれも定数である。
例えば、画素pの輝度レベルRp(R,G,B)が(1.2,5.4,2.3)、光源の輝度Rs(R,G,B)が(10000,10000,10000)であるとすると、画素pの光変調率Tpは、(1.2,5.4,2.3)/(10000,10000,10000)=(0.00012,0.00054,0.00023)となる。
【0066】
図11は、制御値の生成方法のフローチャートである。
まず、ステップS100では、CPU170が記憶装置182からHDR画像データを読み出す。
【0067】
次いで、ステップS102に移行して、読み出したHDR画像データを解析し、画素値のヒストグラムや、輝度レベルの最大値、最小値及び平均値等を算出する。この解析結果は、暗めのシーンを明るくしたり、明るすぎるシーンを暗くしたり、中間部コントラストを協調するなどの自動画像補正に使用したり、トーンマッピングに使用したりするためである。
【0068】
次いで、ステップS104に移行して、ステップS102の解析結果に基づいて、HDR画像データの輝度レベルを、プロジェクタの輝度ダイナミックレンジにトーンマッピングする。
図12は、トーンマッピング処理の説明図である。HDR画像データを解析した結果、HDR画像データに含まれる輝度レベルの最小値がSminで、最大値がSmaxであるとする。また、プロジェクタの輝度ダイナミックレンジの最小値がDminで、最大値がDmaxであるとする。図12の例では、SminがDminよりも小さく、SmaxがDmaxよりも大きいので、このままでは、HDR画像データを適切に表示することができない。そこで、Smin〜SmaxのヒストグラムがDmin〜Dmaxのレンジに収まるように正規化する。
【0069】
なお、トーンマッピングの詳細については、例えば、「F.Drago, K.Myszkowski,T.Annen,N.Chiba,"Adaptive Logarithmic Mapping For Displaying High Contrast Scenes", Eurographics 2003,(2003)」に記載されている。
【0070】
次いで、図11のステップS106に移行して、色変調ライトバルブの解像度(画素数)に合わせてHDR画像をリサイズ(拡大または縮小)する。このとき、HDR画像のアスペクト比を保持したままHDR画像をリサイズする。リサイズ方法としては、例えば、平均値法、中間値法、ニアレストネイバー法(最近傍法)が挙げられる。
【0071】
次いで、ステップS108に移行して、リサイズ画像の各画素の輝度レベルRp及び光源10の輝度Rsに基づいて、上式(1)により、リサイズ画像の各画素につき光変調率Tpを算出する。
【0072】
次いで、ステップS110に移行して、色変調ライトバルブの各画素の透過率T2として、初期値(例えば、0.2)を仮決定する。
【0073】
次いで、ステップS112に移行して、色変調ライトバルブの各画素に対応する輝度変調ライトバルブの領域につき透過率T1’を算出する。具体的には、ステップS108で算出した光変調率Tp、ステップS110で仮決定した透過率T2、及びゲインGに基づいて、上式(2)により、当該領域の透過率T1’を算出する。ここで、色変調ライトバルブが3枚の液晶ライトバルブ60B,60G,60Rで構成されていることから、同一の領域につきRGB3原色ごとに透過率T1’を算出する。そして、輝度変調ライトバルブが1枚の液晶ライトバルブ100で構成されていることから、RGB3原色ごとに算出した透過率の平均値等をその領域の透過率T1’とする。
【0074】
次いで、ステップS114に移行して、輝度変調ライトバルブの各画素につき透過率T1を算出する。具体的には、ステップS112で算出した輝度変調ライトバルブの各領域の透過率T1’のうち、輝度変調ライトバルブの画素と重なり合う領域の透過率T1’の重み付け平均値を算出して、当該画素における透過率T1を求める。重み付けは、重なり合う画素の面積比により行う。
【0075】
次いで、ステップS116に移行して、輝度変調ライトバルブの各画素につき、算出した透過率T1に対応する制御値を、図9に示す制御値登録テーブル400から読み出す。制御値の読出しでは、算出した透過率T1に最も近似する透過率を制御値登録テーブル400の中から選出し、選出した透過率に対応する制御値を読み出す。この選出は、例えば、2分探索法を用いて行うことにより高速な検索を実現する。
【0076】
次いで、図11のステップS118に移行して、色変調ライトバルブの各画素につき透過率T2を算出する。具体的には、ステップS114で算出した輝度変調ライトバルブの各画素の透過率T1のうち、色変調ライトバルブの画素と光路上で重なり合う画素の透過率T1の重み付け平均値を算出する。重み付けは、重なり合う画素の面積比により行う。その上で、算出した透過率T1の平均値、ステップS108で算出した光変調率Tp及びゲインGに基づいて、上式(2)により、当該画素の透過率T2を算出する。
【0077】
次いで、ステップS120に移行して、色変調ライトバルブの各画素につき、算出した透過率T2に対応する制御値を、図10に示す制御値登録テーブル420R等から読み出す。制御値の読出しでは、算出した透過率T2に最も近似する透過率を制御値登録テーブル420R等の中から選出し、選出した透過率に対応する制御値を読み出す。この選出は、例えば、2分探索法を用いて行うことにより高速な検索を実現する。
【0078】
次いで、図11のステップS122に移行して、ステップS116,S120で決定した制御値をライトバルブ駆動装置に格納する。その後、ライトバルブ駆動装置が格納された制御値を各ライトバルブに出力してこれらを駆動する。
【0079】
[制御値の生成方法]
次に、色変調ライトバルブ(液晶ライトバルブ60B,60G,60R)及び輝度変調ライトバルブ(液晶ライトバルブ100)に入力する制御値の生成過程を、図11〜図16に基づいて説明する。
以下では、色変調ライトバルブ(液晶ライトバルブ60B,60G,60R)は、横18画素×縦12画素の解像度及び4ビットの階調数を有し、輝度変調ライトバルブ(液晶ライトバルブ100)は、横15画素×縦10画素の解像度及び4ビットの階調数を有する場合を例にとって説明を行う。また、色変調ライトバルブおよび輝度変調ライトバルブの図はいずれも光源10の側から見たものである。
【0080】
図13は、色変調ライトバルブの透過率T2を仮決定する過程の説明図である。
ステップS110(図11参照、以下同じ)では、色変調ライトバルブの各画素の透過率T2が仮決定される。色変調ライトバルブの左上4区画の画素をp21(左上)、p22(右上)、p23(左下)、p24(右下)とした場合、画素p21〜p24の透過率T2には、図13に示すように、初期値T20が与えられる。
【0081】
図14は、色変調ライトバルブの各画素に対応する輝度変調ライトバルブの領域について、透過率T1’を算出する過程の説明図である。
ステップS112では、色変調ライトバルブの各画素に対応する輝度変調ライトバルブの領域について透過率T1’が算出される。色変調ライトバルブの画素p21〜p24に着目した場合、これに対応する輝度変調ライトバルブの領域における透過率T11〜T14は、図14に示すように、画素p21〜p24の光変調率をTp1〜Tp4、ゲインGを「1」とすれば、下式(3)〜(6)により算出することができる。
T11 = Tp1/T20 (3)
T12 = Tp2/T20 (4)
T13 = Tp3/T20 (5)
T14 = Tp4/T20 (6)
【0082】
例えば、Tp1=0.00012、Tp2=0.05、Tp3=0.02、Tp4=0.01、T20=0.1である場合には、上式(3)〜(6)により、T11=0.0012、T12=0.5、T13=0.2、T14=0.1となる。
【0083】
図15は、輝度変調ライトバルブの各画素の透過率T1を決定する過程の説明図である。
ステップS114では、輝度変調ライトバルブの各画素の透過率T1が決定される。輝度変調ライトバルブと色変調ライトバルブとは、リレーレンズ系90によって互いに倒立結像する関係にあるので、色変調パネルの左上4区画の画素は輝度変調ライトバルブの右下部に結像される。そこで、図15(a)に示すように、輝度変調ライトバルブの右下4区画の画素をp11(右下)、p12(左下)、p13(右上)、p14(左上)とする。ここで、色変調ライトバルブと輝度変調ライトバルブとは解像度が異なることから、画素p11は画素p21〜画素p24(図14参照)と光路上で重なり合う。色変調ライトバルブの解像度が18×12で、輝度変調ライトバルブの解像度が15×10であるので、各ライトバルブの画素数の最小公倍数に基づいて、図15(b)に示すように画素p11は6×6の矩形領域に区分することができる。そして、画素p11が画素p21〜p24とそれぞれ重なり合う面積比は、25:5:5:1となる。したがって、画素p11の透過率T15は、下式(7)により算出することができる。
T15=(T11×25+T12×5+T13×5+T14×1)/36 (7)
【0084】
例えば、T11=0.0012、T12=0.5、T13=0.2、T14=0.002である場合は、上式(7)により、T15=0.1008となる。
図15(c)に示す画素p12〜p14の透過率T16〜T18についても、画素p11と同様に、面積比による重み付け平均値を算出することにより求めることができる。
【0085】
次いで、図11のステップS116では、輝度変調ライトバルブの画素ごとに、その画素について算出された透過率T1に対応する制御値が、図9に示す制御値登録テーブル400から読み出される。例えば、T15=0.1008であるので、制御値登録テーブル400を参照すると、0.09が最も近似した値となる。したがって、制御値登録テーブル400からは、画素p11の制御値として「8」が読み出される。
【0086】
図16は、色変調ライトバルブの各画素の透過率T2を決定する過程の説明図である。
ステップS118では、色変調ライトバルブの各画素の透過率T2が決定される。上述したように、色変調ライトバルブと輝度変調ライトバルブとは解像度が異なることから、図16(a)に示すように、画素p24は画素p11〜画素p14(図15参照)と光路上で重なり合う。また、色変調ライトバルブの解像度が18×12で、輝度変調ライトバルブの解像度が15×10であるので、輝度変調ライトバルブの画素数の最小公倍数に基づいて、図16(b)に示すように画素p24は5×5の矩形領域に区分することができる。そして、画素p24が画素p11〜p14とそれぞれ重なり合う面積比は、1:4:4:16となる。したがって、画素p24に対応する輝度変調ライトバルブの透過率T19は、画素p11〜p14の透過率の重み付け平均値として、下式(8)により算出することができる。
T19=(T15×1+T16×4+T17×4+T18×16)/25 (8)
そして、画素p24の透過率T24は、ゲインGを「1」として、下式(9)により算出することができる。
T24=Tp4/T19 (9)
【0087】
例えば、T15=0.09、T16=0.33、T17=0.15、T18=0.06、Tp4=0.01である場合は、上式(8),(9)により、T19=0.1188、T24=0.0842となる。
図16(c)に示す画素p21〜p23の透過率T21〜T23についても、画素p24と同様に、面積比による重み付け平均値を算出することにより求めることができる。
【0088】
次いで、図11のステップS120では、色変調ライトバルブの画素ごとに、その画素について算出された透過率T2に対応する制御値が、図10に示す制御値登録テーブル420R等から読み出される。例えば、液晶ライトバルブ60Rの画素p24についてT24=0.0842である場合、制御値登録テーブル420Rを参照すると、0.07が最も近似した値となる。したがって、制御値登録テーブル420Rからは、画素p24の制御値として「7」が読み出される。
【0089】
そして、ステップS122において、ステップS116,S120で決定された制御値をライトバルブ駆動装置に格納する。その後、ライトバルブ駆動装置が格納された制御値を各ライトバルブに入力して、光変調および輝度変調を行うことによりプロジェクタを駆動する。
【0090】
[その他の変形例]
上記実施形態では、3板式のプロジェクタを例にして説明したが、単板式のプロジェクタに本発明を適用することも可能である。この単板式のプロジェクタは、光源、均一照明系、第1光変調素子、リレーレンズ系、第2光変調素子および投射レンズを主として構成され、光源として白色光源を採用した場合には、第1光変調素子または第2光変調素子としての液晶ライトバルブにカラーフィルタが配設される。
【0091】
また、上記実施形態では、投射型表示装置を例にして説明したが、直視型表示装置に本発明を適用することも可能である。この直視型表示装置では、第2変調素子上で変調された画像光を直接見ることとなる。直視型表示装置は、明るい場所での鑑賞に適するという利点がある。
【0092】
また、上記実施形態では、色変調ライトバルブで色変調された光に対し、輝度変調ライトバルブにて輝度変調を行うように構成したが、これに限らず、輝度変調ライトバルブで輝度変調された光に対し、色変調ライトバルブにて色変調を行うように構成することもできる。また、輝度変調ライトバルブ及び色変調ライトバルブを用いて光の輝度を2段階に変調するように構成したが、これに限らず、輝度変調ライトバルブを2セット用いて光の輝度を2段階に変調するように構成することもできる。
【0093】
また、上記実施形態では、光源10として白色光を射出する単体の光源を用い、この白色光をRGBの3原色の光に分光するようにしているが、これに限らず、RGBの3原色にそれぞれ対応した、赤色の光を射出する光源、青色の光を射出する光源及び緑色の光を射出する光源の3つの光源を用い、白色光を分光する手段を取り除いた構成としても良い。
【0094】
また、上記実施形態では、液晶ライトバルブ60B,60G,60R、100としてアクティブマトリックス型の液晶表示素子を用いて構成したが、これに限らず、液晶ライトバルブ60B,60G,60R、100としてパッシブマトリックス型の液晶表示素子及びセグメント型の液晶表示素子を用いて構成することもできる。アクティブマトリックス型の液晶表示は、精密な階調表示ができるという利点があり、パッシブマトリックス型の液晶表示素子及びセグメント型の液晶表示素子は、安価に製造できるという利点を有する。
【0095】
また、上記実施形態では、輝度変調ライトバルブまたは色変調ライトバルブを透過型の光変調素子である液晶パネルによって構成したが、これに限らず、DMD(Digital Micromirror Device)等の反射型の光変調素子で構成することもできる。
【0096】
また、リレーレンズ系と輝度変調ライトバルブとの間に、光の偏光状態を補償する偏光補償光学系を配設してもよい。偏光補償光学系としては、偏光補償機能を有する誘電体膜や、レクチファイアを用いた構成を採用することができる。
【0097】
また、上記各実施の形態において、図11のフローチャートに示す処理を実行するにあたっては、ROM172にあらかじめ格納されている制御プログラムを実行する場合について説明したが、これに限らず、これらの手順を示したプログラムが記憶された記憶媒体から、そのプログラムをRAM174に読み込んで実行するようにしてもよい。
【0098】
ここで、記憶媒体とは、RAM、ROM等の半導体記憶媒体、FD、HD等の磁気記憶型記憶媒体、CD、CDV、LD、DVD等の光学的読取方式記憶媒体、MO等の磁気記憶型/光学的読取方式記憶媒体であって、電子的、磁気的、光学的等の読み取り方法のいかんにかかわらず、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体であれば、あらゆる記憶媒体を含むものである。
【0099】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明に係る画像表示装置(プロジェクタ)の側面図である。
【図2】本発明に係る画像表示装置(プロジェクタ)の平面断面図である。
【図3】実施形態のリレーレンズ系の構成を示す側面図である。
【図4】テレセントリック性の説明図である。
【図5】偏光ビームスプリッタを採用したリレーレンズ系の側面図である。
【図6】反射プリズムを採用したリレーレンズ系の側面図である。
【図7】リレーレンズ系に1個の反射光学素子を採用した場合のプロジェクタの平面図である。
【図8】表示制御装置のハードウエア構成を示すブロック図である。
【図9】輝度変調ライトバルブの制御値登録テーブルのデータ構造図である。
【図10】色変調ライトバルブの制御値登録テーブルのデータ構造図である。
【図11】制御値の生成方法のフローチャートである。
【図12】トーンマッピング処理の説明図である。
【図13】色変調ライトバルブの透過率を仮決定する場合の説明図である。
【図14】色変調ライトバルブの各画素に対応する輝度変調ライトバルブの各領域の透過率を算出する場合の説明図である。
【図15】輝度変調ライトバルブの各画素の透過率を決定する場合の説明図である。
【図16】色変調ライトバルブの各画素の透過率を決定する場合の説明図である。
【図17】本願発明者らが開発したプロジェクタの平面図である。
【図18】従来のリレーレンズ系の説明図である。
【符号の説明】
【0101】
10‥光源 60G‥色変調ライトバルブ 90‥リレーレンズ系 94,96‥反射光学素子 100‥輝度変調ライトバルブ
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置およびプロジェクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、LCD(Liquid Crystal Display)、EL(Electro-luminescence)ディスプレイ、プラズマディスプレイ、CRT(Cathode Ray Tube)、プロジェクタ等の電子ディスプレイ装置における画質改善は目覚しく、解像度、色域については人間の視覚特性にほぼ匹敵する性能を有する装置が実現されつつある。しかし、輝度ダイナミックレンジについてみると、その再現範囲は1〜102[nit]程度の範囲であり、また階調数は8ビットが一般的である。一方、人間の視覚は、一度に知覚し得る輝度ダイナミックレンジの範囲が10−2〜104[nit]程度あり、また輝度弁別能力は0.2[nit]でこれを階調数に換算すると12ビット相当といわれている。このような視覚特性を通じて現在のディスプレイ装置の表示画像を見ると、輝度ダイナミックレンジの狭さが目立ち、加えてシャドウ部やハイライト部の階調が不足しているため、表示画像のリアリティや迫力に対して物足りなさを感じることになる。
【0003】
映画やゲーム等で使用されるCG(Computer Graphics)では、人間の視覚に近い輝度ダイナミックレンジや階調特性を有する画像データ(以下、HDR(High Dynamic Range)画像データという。)を用いて、描写のリアリティを追求する動きが主流になりつつある。しかし、それを表示するディスプレイ装置の性能が不足しているために、CGコンテンツが本来有する表現力を充分に発揮できないという課題がある。
【0004】
さらに、次世代OS(Operating System)においては、16ビット色空間の採用が予定されており、現在の8ビット色空間と比較してダイナミックレンジや階調数が飛躍的に増大する。そのため、16ビット色空間を生かすことができる高ダイナミックレンジ・高階調の電子ディスプレイ装置実現への要求が高まると予想される。
【0005】
ディスプレイ装置の中でも、液晶プロジェクタや、DLP(Digital Light Processing、TI社の登録商標)プロジェクタといった投射型表示装置は、大画面表示が可能であり、表示画像のリアリティや迫力を再現する上で効果的なディスプレイ装置である。この分野では上記の課題を解決するために、以下に述べる提案がなされている。
【0006】
高ダイナミックレンジのディスプレイ装置としては、例えば、特許文献1に開示されている技術があり、光源と、光の全波長領域の輝度を変調する第2光変調素子と、光の波長領域のうちRGB3原色の各波長領域についてその波長領域の輝度を変調する第1光変調素子とを備え、光源からの光を第2光変調素子で変調して所望の輝度分布を形成し、その光学像を第1光変調素子の表示面に結像して色変調し、2次変調した光を投射するというものである。第2光変調素子及び第1光変調素子の各画素は、HDR表示データから決定される第1制御値及び第2制御値に基づいてそれぞれ別個に制御される。光変調素子としては、透過率が独立に制御可能な画素構造またはセグメント構造を有し、二次元的な透過率分布を制御し得る透過型変調素子が用いられる。その代表例としては、液晶ライトバルブがあげられる。また、透過型変調素子の代わりに反射型変調素子を用いてもよく、その代表例としては、DMD(Digital Micromirror Device)素子があげられる。
【0007】
いま、暗表示の透過率が0.2%、明表示の透過率が60%の光変調素子を使用する場合を考える。光変調素子単体では、輝度ダイナミックレンジは、60/0.2=300となる。上記ディスプレイ装置は、輝度ダイナミックレンジが300の光変調素子を光学的に直列に配置することに相当するので、300×300=90000の輝度ダイナミックレンジを実現することができる。また、階調数についてもこれと同等の考えが成り立ち、8ビット階調の光変調素子を光学的に直列に配置することにより、8ビットを超える階調数を得ることができる。
【特許文献1】特開2001−100689号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献1記載の発明においては、光学収差が大きい照明光学系用の光学素子を用いて第1変調素子で形成した光学像を第2変調素子に伝達しているために所望の光強度分布を有する照明光を第1光変調素子上に正確に伝達することが困難であるという問題があった。
【0009】
そこで、本願発明者らは、図17に示すプロジェクタを開発している。図17に示すプロジェクタは、表示画像データに基づき光源10からの光を変調して画像を表示するものであって、光源10からの光の光伝搬特性を制御する複数の第1光変調素子60R,60G,60Bと、各第1光変調素子からの光を合成する光合成手段80と、光合成手段によって合成された合成光の光伝搬特性を制御する第2光変調素子100と、前記第1光変調素子60R,60G,60B上に形成された光学像を前記第2光変調素子100上に伝達するリレーレンズ系90とを有するものである。
【0010】
このような構成であれば、複数の第1光変調素子60R,60G,60B上に形成された光学像を、結像性能が高いリレーレンズ系90によって第2光変調素子100上に伝達することが可能である。これにより合成光伝達時の光学収差の低減が可能となる。つまり、光合成手段80からの合成光を第2光変調素子100へと比較的高い精度で伝達することができるので、従来に比して前記合成光の第2光変調素子100への結像精度を向上できるという効果が得られる。
【0011】
図18は、従来のリレーレンズ系の説明図である。しかしながら、上述したリレーレンズ系90は、(1)プロジェクタの十分な光束を確保するため、Fナンバーが2程度の明るさを必要とし、(2)透過型液晶ライトバルブの画素単位の光量分布を伝達するため、10μm程度の解像能力を必要とし、(3)液晶の視角依存性による画質劣化を回避するため、両側テレセントリック特性を必要とする、といった各種性能を満足する必要がある。ここで、第1光変調素子60R,60G,60Bおよび第2光変調素子100として画面サイズが1インチ程度の透過型液晶ライトバルブを使用した場合に、上記(1)〜(3)の性能を兼ね備えるリレーレンズ系90は、水平方向における長さが200mm以上の長いものになる。その結果、第1光変調素子と第2光変調素子との間の距離である共役長が300mm以上となって、プロジェクタが大型化するという問題がある。
【0012】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、小型化の可能な画像表示装置およびプロジェクタの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の画像表示装置は、表示画像データに基づき光源からの光を変調して画像を表示する装置であって、前記光源からの光を変調する第1光変調素子と、前記第1光変調素子からの光を変調する第2光変調素子と、前記第1光変調素子と前記第2光変調素子との間に配され、前記第1光変調素子の光学像を前記第2光変調素子の受光面に結像するリレーレンズ系と、前記リレーレンズ系を構成する複数のレンズの間に配置された少なくとも1個の反射光学素子と、を備えることを特徴とする。
特に、前記リレーレンズ系は、前記第1光変調素子から入射した光の進行方向を、前記反射光学素子により反転させて、前記第2光変調素子に出射することが望ましい。
このように、反射光学素子を採用して光路を折り曲げたリレーレンズ系の水平方向の長さは、反射光学素子を採用しない場合と比べて短くなる。したがって、画像表示装置を小型化することができる。
【0014】
また、前記リレーレンズ系は、両側テレセントリック性を有することが望ましい。
両側テレセントリック性を有することにより、画面の各領域における画像コントラストが略同一となり、良好な画像表示品質を有する画像表示装置を提供することができる。そして、両側テレセントリック性を有するリレーレンズ系は、多くのレンズで構成されるため、水平方向の長さが長くなる。したがって、反射光学素子を採用して光路を折り曲げることにより、画像表示装置を小型化することができる。
【0015】
また、前記反射光学素子は、前記リレーレンズ系を構成する複数のレンズのうち前記反射光学素子の前段レンズ群と前記反射光学素子の後段レンズ群とが、対称となる位置に配置されていることが望ましい。
この構成によれば、リレーレンズ系の光学設計が容易になる。
【0016】
また、前記反射光学素子は、反射型偏光子であることが望ましい。
反射型偏光子は、光束のうちの一部の偏光を透過し一部の偏光を反射するものであるから、各光変調素子の偏光板として機能させることができる。これにより、各光変調素子の偏光板を省略することができるので、コストを低減することができる。
【0017】
また、前記反射光学素子は、ワイヤグリッド型偏光フィルタであることが望ましい。
このワイヤグリッド型偏光フィルタは、構造が単純なので容易に製造することができる。また、無機素材で構成されるため、極めて耐熱性に優れるとともに、光吸収をほとんど生じない。そして、各光変調素子の偏光板を省略してワイヤグリッド型偏光フィルタを用いることにより、画像表示装置の耐熱性を向上させることができる。
なお、前記反射光学素子は、偏光ビームスプリッタであってもよい。
【0018】
また、前記反射光学素子は、反射プリズムのプリズム面に形成されていることが望ましい。
反射プリズムを採用することにより、リレーレンズ系の空気換算光路長が短くなる。したがって、リレーレンズ系の光学設計上の制約が少なくなる。
【0019】
一方、本発明のプロジェクタは、上述した画像表示装置と、投射手段と、を備えることを特徴とする。
この構成によれば、プロジェクタを小型化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態例を図面に基づいて説明する。
【0021】
[第1の実施形態]
図1および図2は、本実施形態の画像表示装置及びプロジェクタの一例であり、プロジェクタPJ1の主たる光学構成を示す図である。図1は側面図であり、図2(a)は図1のA−A線における平面断面図であり、図2(b)は図1のB−B線における平面断面図である。
図1および図2に示すように、プロジェクタPJ1は、光源10と、光源10から入射した光の輝度分布を均一化する均一照明系20と、均一照明系20から入射した光の波長領域のうちのRGB3原色の輝度をそれぞれ変調する色変調部25(第1変調手段としての3つの透過型液晶ライトバルブ60B,60G,60Rを含む)と、色変調部25から入射した光をリレーするリレーレンズ系90と、リレーレンズ系90から入射した光の全波長領域の輝度を変調する第2変調手段としての透過型液晶ライトバルブ100と、液晶ライトバルブ100から入射した光をスクリーン(不図示)に投射する投射レンズ110と、を含んで構成されている。
【0022】
[プロジェクタの全体構成]
光源10は、超高圧水銀ランプやキセノンランプ等からなるランプ11と、ランプ11からの射出光を反射・集光するリフレクタ12とを含んで構成されている。
【0023】
均一照明系20は、フライアイレンズ等からなる2つのレンズアレイ21,22と、偏光変換素子23と、集光レンズ24とを含んで構成されている。そして、光源10からの光の輝度分布を2つのレンズアレイ21,22により均一化し、均一化した光を偏光変換素子23により色変調部の入射可能偏光方向に偏光し、偏光した光を集光レンズ24により集光して色変調部25に射出する。なお、偏光変換素子23は、例えばPBS(偏光ビームスプリッタ)アレイおよび1/2波長板で構成されており、ランダム偏光を特定の直線偏光に変換するものである。
【0024】
色変調部25は、光分離手段としての2つのダイクロイックミラー30,35と、3つのミラー(反射ミラー36,45,46)と、5つのフィールドレンズ(レンズ41、リレーレンズ42、平行化レンズ50B,50G,50R)と、3つの液晶ライトバルブ60B,60G,60Rと、クロスダイクロイックプリズム80と、を含んで構成されている。
【0025】
ダイクロイックミラー30,35は、光源10からの光(白色光)を、赤色光(R光)、緑色光(G光)、青色光(B光)のRGB3原色光に分離(分光)するものである。ダイクロイックミラー30は、B光及びG光を反射し、R光を透過する性質のダイクロイック膜をガラス板等に形成したもので、光源10からの白色光に含まれるB光及びG光を反射し、R光を透過する。ダイクロイックミラー35は、G光を反射し、B光を透過する性質のダイクロイック膜をガラス板等に形成したもので、ダイクロイックミラー30を透過したG光及びB光のうち、G光を反射して平行化レンズ50Gに伝達し、B光を透過してレンズ41に伝達する。
【0026】
リレーレンズ42はレンズ41近傍の光(光強度分布)を平行化レンズ50B近傍に伝達するもので、レンズ41はリレーレンズ42に光を効率よく入射させる機能を有する。レンズ41に入射したB光はその強度分布をほぼ保存された状態で、かつ光損失を殆ど伴うことなく空間的に離れた液晶ライトバルブ60Bに伝達される。
【0027】
平行化レンズ50B,50G,50Rは、対応する液晶ライトバルブ60B,60G,60Rに入射する各色光を略平行化して入射光の角度分布を狭め、液晶ライトバルブ60B,60G,60Rの表示特性を向上させる機能を有している。そして、ダイクロイックミラー30,35で分光されたRGB3原色の光は、上述したミラー(反射ミラー36,45,46)及びフィールドレンズ(レンズ41、リレーレンズ42、平行化レンズ50B,50G,50R)を介して、液晶ライトバルブ60B,60G,60Rに入射する。
【0028】
液晶ライトバルブ60B,60G,60Rは、画素電極及びこれを駆動するための薄膜トランジスタや薄膜ダイオード等のスイッチング素子がマトリクス状に形成されたガラス基板と、全面にわたって共通電極が形成されたガラス基板との間にTN型液晶を挟み込むとともに、外面に偏光板を配置したアクティブマトリクス型の液晶表示素子である。
【0029】
また、液晶ライトバルブ60B,60G,60Rは、電圧非印加状態で白/明(透過)状態、電圧印加状態で黒/暗(非透過)状態となるノーマリーホワイトモード、またはその逆のノーマリーブラックモードで駆動され、電極間に与えられた制御値(制御電圧)に応じて明暗間の階調がアナログ制御される。液晶ライトバルブ60Bは、入射されたB光を制御値に基づいて光変調し、光学像を内包した変調光を射出する。液晶ライトバルブ60Gは、入射されたG光を制御値に基づいて光変調し、光学像を内包した変調光を射出する。液晶ライトバルブ60Rは、入射されたR光を制御値に基づいて光変調し、光学像を内包した変調光を射出する。
【0030】
クロスダイクロイックプリズム80は、4つの直角プリズムが貼り合わされた構造からなり、その内部には、B光を反射する誘電体多層膜(B光反射ダイクロイック膜81)及びR光を反射する誘電体多層膜(R光反射ダイクロイック膜82)が断面X字状に形成されている。そして、液晶ライトバルブ60GからのG光を透過し、液晶ライトバルブ60RからのR光と液晶ライトバルブ60BからのB光とを折り曲げてこれらの3色の光を合成し、カラー画像を形成する。
【0031】
リレーレンズ系90は、クロスダイクロイックプリズム80で合成された液晶ライトバルブ60B,60G,60Rからの光学像(光強度分布)を、液晶ライトバルブ100の表示面上に伝達するものである。本実施形態のリレーレンズ系90は、クロスダイクロイックプリズム80からの出射光を上方に屈折させ、さらに水平方向に屈折させて、クロスダイクロイックプリズム80の上方に配置された液晶ライトバルブ100に対して、光学像を伝達するものである。リレーレンズ系90の構成および機能については、後で詳しく説明する。
【0032】
液晶ライトバルブ100は、前述した液晶ライトバルブ60B,60G,60Rと同等の構成からなり、入射した光の全波長領域の輝度を制御値に基づいて変調する。そして、最終的な光学像を内包した変調光を、ミラー109により90°屈折させて、投射レンズ110に射出する。
投射レンズ110は、液晶ライトバルブ100の表示面上に形成された光学像を、図示しないスクリーン上に投射してカラー画像を表示する。
【0033】
次に、プロジェクタPJ1の全体的な光伝達の流れを説明する。光源10からの白色光はダイクロイックミラー30,35により赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)の3原色光に分光されるとともに、平行化レンズ50B,50G,50Rを含むレンズ及びミラーを介して、液晶ライトバルブ60B,60G,60Rに入射される。その液晶ライトバルブ60B,60G,60Rは、後述するHDR画像データに基づいて生成された制御値によって駆動され、画素単位で光透過率を変化させうるようになっている。したがって、液晶ライトバルブ60B,60G,60Rに入射した各々の色光は、それぞれの波長領域に応じて色変調され、光学像を内包した変調光として射出される。
【0034】
液晶ライトバルブ60B,60G,60Rからの各変調光は、それぞれクロスダイクロイックプリズム80に入射し、そこで一つの光に合成され、リレーレンズ系90に入射する。リレーレンズ系90は、入射した合成光を上方に屈折させ、さらに水平方向に屈折させて、液晶ライトバルブ100に伝達する。液晶ライトバルブ100も同様に、後述するHDR画像データに基づいて生成された制御値によって駆動され、画素単位で光透過率を変化させうるようになっている。したがって、液晶ライトバルブ100に入射した合成光は、全波長域について輝度変調され、最終的な光学像を内包した変調光として投射レンズ110へ射出される。そして、投射レンズ110において、液晶ライトバルブ100からの最終的な合成光を図示しないスクリーン上に投射し所望の画像を表示する。
【0035】
このように、プロジェクタPJ1では、第1光変調素子としての液晶ライトバルブ60B,60G,60Rで光学像(画像)を形成した変調光を用いて、最終的な表示画像を第2光変調素子としての液晶ライトバルブ100で形成する形態を採用しており、直列に配置された2つのライトバルブを介して、2段階の画像形成過程によって光源10からの光を変調する。その結果、プロジェクタPJ1は、輝度ダイナミックレンジの拡大と階調数の増大を実現することができるようになっている。
【0036】
また、プロジェクタPJ1では、第1光変調素子としての液晶ライトバルブ60B,60G,60R及びクロスダイクロイックプリズム80の後段に、結像性能が優れたリレーレンズ系90を介して第2光変調素子としての液晶ライトバルブ100を配置したので、液晶ライトバルブ100を、ダイクロイックミラー30,35および液晶ライトバルブ60B,60G,60Rの前段に配置する従来の類似の光学系と比べて、伝達光の光学収差を低減し、結像(伝達)精度を向上することが可能となる。
【0037】
ここで、液晶ライトバルブ60B,60G,60R及び液晶ライトバルブ100は、いずれも透過光の強度を変調しその変調度合いに応じた光学像を内包する点で一致するが、後者の液晶ライトバルブ100が全波長域の光(白色光)を変調するのに対して、前者の液晶ライトバルブ60B,60G,60Rが光分離手段であるダイクロイックミラー30,35で分光された特定波長領域の光(R,G,Bなどの色光)を変調する点で異なっている。したがって、液晶ライトバルブ60B,60G,60Rで行われる光強度変調を色変調、液晶ライトバルブ100で行われる光強度変調を輝度変調と便宜的に呼称して区別する。また、同様の観点から、以下の説明では液晶ライトバルブ60B,60G,60Rを色変調ライトバルブ、液晶ライトバルブ100を輝度変調ライトバルブと呼称して区別する場合がある。
【0038】
そして、色変調ライトバルブ及び輝度変調ライトバルブに入力する制御値の内容については、後ほど詳述する。なお、本実施形態では、色変調ライトバルブは輝度変調ライトバルブよりも高い解像度を有し、よって、色変調ライトバルブが表示解像度(プロジェクタPJ1の表示画像を観測者が見たときに観測者が知覚する解像度をいう。)を決定する場合を想定している。勿論、表示解像度の関係はこれに限定されず、同じ解像度の色変調ライトバルブ及び輝度変調ライトバルブを採用することも可能であるし、また輝度変調ライトバルブが色変調ライトバルブよりも高い解像度を有し、輝度変調ライトバルブが表示解像度を決定する構成を採用することも可能である。
【0039】
[リレーレンズ系]
次に、リレーレンズ系の構成および機能につき、図を用いて詳しく説明する。
図3は、本実施形態のリレーレンズ系90の構成を示す側面図である。なお図3では、理解を容易にするため、3原色用の3個の色変調ライトバルブを1個の色変調ライトバルブ60で代表して描き、なおかつ色変調ライトバルブ60とリレーレンズ系90との間にあるクロスダイクロイックプリズムを省略して描いているが、光学的には図1および図2の構成と等価なものである。
【0040】
図3のリレーレンズ系90は、各色変調用の液晶ライトバルブ60B,60G,60Rの光学像を液晶ライトバルブ100の画素面に結像するものであって、開口絞り95に対してほぼ対称に配置された前段レンズ群92及び後段レンズ群98からなる等倍結像レンズである。前段レンズ群92及び後段レンズ群98は、複数の凸レンズ及び凹レンズを含んで構成され、両側テレセントリック性を有している。ただし、レンズの形状、大きさ、配置間隔及び枚数、テレセントリック性、倍率その他のレンズ特性は、要求される特性によって適宜変更され得るものであり、図3の例に限定されるものではない。リレーレンズ系90は、多数枚のレンズから構成されるので、収差補正がよく、各色変調用の液晶ライトバルブ60B,60G,60Rで形成される輝度分布を正確に液晶ライトバルブ100に伝達することができる。
【0041】
図4は、テレセントリック性の説明図であり、図4(a)は両側テレセントリック性を有するリレーレンズ系であり、図4(b)は有しないリレーレンズ系である。
図4(b)のリレーレンズ系190では、色変調ライトバルブ60から出射された光が、レンズ195を介して、輝度変調ライトバルブ100に伝達されている。この場合、色変調ライトバルブ60の各領域から所定の角度範囲に出射された光61のうち、一部の角度範囲に出射された光191のみが輝度変調ライトバルブ100に伝達されている。そして、色変調ライトバルブ60の各領域では、異なる角度範囲に出射された光が輝度変調ライトバルブ100に伝達されている。一方、輝度変調ライトバルブ100の各領域に対しては、異なる角度で光が入射するようになっている。ところで、一般に液晶ライトバルブは視角依存性を有するため、光の出入射角度によってコントラストが異なることになる。そして、液晶ライトバルブの各領域に対して異なる角度で出入射する光を利用すると、画面の各領域において表示画像のコントラストが区々となり、プロジェクタの画像表示品質が低下することになる。
【0042】
これに対して、図4(a)のリレーレンズ系90では、色変調ライトバルブ60から出射した光が、前段レンズ92、絞り95および後段レンズ98を介して、輝度変調ライトバルブ100に伝達されている。この場合、色変調ライトバルブ60から出射した光61のうち、中央部の光91のみが輝度変調ライトバルブ100に伝達されている。すなわち、リレーレンズ系90の光軸に対して略平行に色変調ライトバルブ60の各領域から出射した光91のみが利用されている。このように、液晶ライトバルブのどの領域からの出射光についても、同じ角度範囲の出射光を利用しうる性能が、出射側テレセントリック性である。また、液晶ライトバルブのどの領域に対しても、同じ角度範囲で光を入射させうる性能が、入射側テレセントリック性である。そして、リレーレンズ系90が両側テレセントリック性を有することにより、画面の各領域における画像コントラストが略同一となり、良好な画像表示品質を有するプロジェクタを提供することができる。
【0043】
図3に戻り、本実施形態のリレーレンズ系90では、複数のレンズの間に少なくとも1個の反射光学素子94,96が配設されて、光路が折り曲げられている。なお、光学設計の容易性の観点から、反射光学素子94,96より前方のレンズ群と後方のレンズ群とがほぼ対称となるように、反射光学素子94,96を配設することが望ましい。図3では、前段レンズ群92と後段レンズ群98とが対称に配置されるように、絞り95と前段レンズ群92との間に前段反射光学素子94が配設され、絞り95と後段レンズ群98との間に後段反射光学素子96が配設されている。
【0044】
その前段反射光学素子94は、リレーレンズ系90の入口から水平に入射した光を、上方に反射するように配設されている。また後段反射光学素子96は、前段反射光学素子により反射された光を、リレーレンズ系90の出口に向かって水平に反射するように配設されている。すなわちリレーレンズ系90は、色変調ライトバルブ60から入射した光の進行方向を、反射光学素子94,96により反転させて、輝度変調ライトバルブ100に出射するように構成されている。そのため、反射光学素子94,96を採用したリレーレンズ系90における水平方向の長さは、反射光学素子を採用しない場合の水平方向の長さに比べて、半分程度になっている。これにより、プロジェクタを小型化することができる。
【0045】
上述した各反射光学素子94,96として、反射ミラーを採用することができる。またミラー以外に、ワイヤグリッド型偏光フィルタや偏光ビームスプリッタ等の反射型偏光子を採用することも可能である。反射型偏光子は、光束のうちの一部の偏光を透過し、一部の偏光を反射するものである。特に、互いに直交する直線偏光のうちの一方を透過し、他方を反射するものを用いることができる。なお、前段反射光学素子94および後段反射光学素子96の両方に反射型偏光子を採用してもよく、一方に反射型偏光子を採用し他方に反射ミラーを採用してもよい。
【0046】
反射型偏光子として、具体的には、複屈折性を有する薄膜Aと複屈折性を有しない薄膜Bとを複数積層した多層構造フィルムを用いる。ここで、薄膜AのX方向の屈折率が、薄膜Bの屈折率と同じになるように構成する。この場合、X方向には各層間の屈折率差がないことから、多層構造フィルムに入射したX方向の直線偏光は、そのまま透過する。一方、多層構造フィルムに入射したY方向の直線偏光は、薄膜Aと薄膜Bとの界面で反射される。このとき、入射光の波長との関係で、薄膜Aと薄膜Bとの膜厚比を適当に設定しておく。
【0047】
また、反射型偏光子として、ワイヤグリッド型偏光フィルタを採用することも可能である。ワイヤグリッド型偏光フィルタは、構造複屈折型偏光板の一種であり、透明基板上に形成された金属薄膜に、所定方向に延びる微細な溝が形成された構造を有している。この金属薄膜は、アルミニウムやタングステン等を用いて、蒸着法やスパッタ法によって形成することができる。また微細溝は、2光束干渉露光法や、電子線描画法、X線リソグラフィー法等と、エッチングとを組み合わせることによって形成することができる。そして、この微細溝のピッチは、反射すべき光の波長より短く形成されている。これにより、微細溝と平行方向の直線偏光を反射し、垂直方向の直線偏光を透過することができるようになっている。このワイヤグリッド型偏光フィルタは、構造が単純なので容易に製造することができる。また、無機素材で構成されるため、極めて耐熱性に優れるとともに、光吸収をほとんど生じない。
【0048】
図5は、偏光ビームスプリッタを採用したリレーレンズ系の側面図である。リレーレンズ系290の反射光学素子294,296として、反射型偏光子の一種である偏光ビームスプリッタを採用してもよい。この場合にも、他の反射型偏光子と同様の効果を得ることができる。
【0049】
ところで、色変調ライトバルブに採用される液晶パネルは、一対の基板により液晶層を挟持して構成されている。一対の基板の内側にはそれぞれ電極および配向膜が形成され、一対の基板の外側にはそれぞれ偏光板が配置されている。この偏光板は所定方向の直線偏光のみを透過させるものであり、各偏光板は透過軸を約90°交差させて配置されている。そして、一対の基板の電極により液晶層に電界を印加して、液晶分子の配向を変化させ、液晶パネルに入射した直線偏光の偏光方向を制御することにより、画像表示が行われるようになっている。
【0050】
上述した反射型偏光子はいずれも、直交する直線偏光のうちの一方を透過し、他方を反射するものである。そこで、リレーレンズ系の反射光学素子として反射型偏光子を採用すれば、その反射型偏光子を液晶パネルの偏光板として機能させることができる。具体的には、図3の前段反射光学素子94として採用された反射型偏光子は、色変調ライトバルブ60の出射側偏光板として機能させることが可能であり、後段反射光学素子96として採用された反射型偏光子は、輝度変調ライトバルブ100の入射側偏光板として機能させることが可能である。なお、各反射型偏光子の反射軸方向は、対応する偏光板の透過軸方向と一致させる。
【0051】
このように、リレーレンズ系90の反射型偏光子を液晶パネルの偏光板として機能させれば、液晶パネルの偏光板を省略することができるので、コストを低減することができる。なお、一般に液晶パネルの偏光板は、ポリビニルアルコール等の偏光基材に、ヨウ素等の偏光素子を吸着させて構成されている。このように有機材料からなる偏光板は、耐熱性が低いという問題がある。特にプロジェクタでは、画像の輝度を向上させるため、光源から強い光を照射する必要がある。そこで、偏光度が低い変光板を複数枚使用して、個々の偏光板の発熱を抑制することが行われている。これに対して、無機材料からなるワイヤグリッド型偏光フィルムは、耐熱性に優れている。したがって、リレーレンズ系の反射光学素子としてワイヤグリッド型偏光フィルムを採用すれば、プロジェクタの耐熱性を向上させることが可能になり、ひいては画像の輝度を向上させることができる。
【0052】
図6は、反射プリズムを採用したリレーレンズ系の側面図である。図6のリレーレンズ系390では、前段レンズ群92の出口から後段レンズ群98の入口にかけて、反射プリズム395が配設されている。この反射プリズムは、屈折率が1.0を超えるガラス等の媒質で構成されている。また、反射プリズム395における各レンズ群92,98との対向面とは反対側の下端部および上端部に、傾斜した反射面394,396が設けられている。そして、前段レンズ群92から反射プリズム395に入射した光は、反射面394により上方に反射され、さらに反射面396により水平方向に反射されて、反射プリズム395から後段レンズ群98に出射するようになっている。この反射面394,396は、上記と同様に、反射ミラーや反射型偏光子、ワイヤグリッド偏光フィルタ等で構成することが可能である。
【0053】
ところで、図18のように直線配置された従来のリレーレンズ系に比べて、図3や図5のように光路を折り曲げたリレーレンズ系では、前段レンズ群92と後段レンズ群98との間隔を広げる必要があり、リレーレンズ系の光学設計に制約が生じる傾向がある。これに対して、図6のように反射プリズム395を採用したリレーレンズ系390では、前段レンズ群92と後段レンズ群98との間に、屈折率が1.0を超える媒質を配置しているため、光学的長さである空気換算光路長が短くなる。したがって、図3や図5の場合よりリレーレンズ系の光学設計上の制約が少なくなる。
【0054】
図7は、リレーレンズ系に1個の反射光学素子を採用した場合のプロジェクタの平面図である。上述したリレーレンズ系ではいずれも、2個の反射光学素子を採用して、入射光の光路を上方に折り曲げ、さらに水平方向に折り曲げて、入射光と反対方向に出射させた。これに対して、図7に示すリレーレンズ系490のように、1個の反射光学素子495のみを採用し、入射光の光路を水平方向のみに折り曲げてもよい。この場合でも、反射光学素子を採用したリレーレンズ系490の水平方向の長さは、図18のように反射光学素子を採用しないリレーレンズ系の水平方向の長さに比べて、半分程度になっている。これにより、プロジェクタを小型化することができる。また図7のリレーレンズ系490は、図3のように2個の反射光学素子94,96を採用したリレーレンズ系90に比べて、光利用効率が高いという利点を有する。
【0055】
[液晶ライトバルブの変調の具体例]
次に、表示画像データに基づく色変調ライトバルブ及び輝度変調ライトバルブの変調の具体例について詳しく説明する。
プロジェクタPJ1(図1参照)では、映像信号から生成された色変調信号で色変調ライトバルブ(図1に示す液晶ライトバルブ60B,60G,60R)を、輝度変調信号で輝度変調ライトバルブ(図1に示す液晶ライトバルブ100)を駆動することにより、輝度ダイナミックレンジの拡大と階調数の増大を実現する。液晶ライトバルブの変調制御は、次に説明する表示制御装置によって行う。
【0056】
図8は、表示制御装置200のハードウエア構成を示すブロック図である。
表示制御装置200は、図8に示すように、制御プログラムに基づいて演算及びシステム全体を制御するCPU170と、所定領域にあらかじめCPU170の制御プログラム等を格納しているROM172と、ROM172等から読み出したデータやCPU170の演算過程で必要な演算結果を格納するためのRAM174と、外部装置に対してデータの入出力を媒介するI/F178とで構成されており、これらは、データを転送するための信号線であるバス179で相互にかつデータ授受可能に接続されている。
【0057】
I/F178には、外部装置として、輝度変調ライトバルブ及び色変調ライトバルブを駆動するライトバルブ駆動装置180と、データやテーブル等をファイルとして格納する記憶装置182と、外部のネットワーク199に接続するための信号線とが接続されている。
【0058】
記憶装置182には、輝度変調ライトバルブ及び色変調ライトバルブを駆動するためのHDR表示データおよび制御値登録テーブルが記憶されている。
【0059】
HDR画像データは、従来のsRGB等の画像フォーマットでは実現できない高い輝度ダイナミックレンジを実現することが可能な画像データであり、画素の輝度レベルを示す画素値を画像の全画素について格納している。本実施形態では、HDR画像データとして、1つの画素についてRGB3原色ごとに輝度レベルを示す画素値を浮動小数点値として格納した形式を用いる。例えば、1つの画素の画素値として(1.2,5.4,2.3)という値が格納されている。また、格納する値としては、放射輝度(Radiance)や輝度(Luminance)等の物理的な輝度に関する値を格納しているのも特徴である。放射輝度に人間の視感特性をかけたものが輝度であるため、以後の説明では二つを区別せずに輝度と呼ぶ。
【0060】
なお、HDR画像データの生成方法の詳細については、例えば、「P.E.Debevec,J.Malik,"Recovering High Dynamic Range Radiance Maps from Photographs",Proceedings of ACM SIGGRAPH97 ,pp.367-378(1997)」に掲載されている。
【0061】
図9は、輝度変調ライトバルブに入力するための制御値を登録した制御値登録テーブル400のデータ構造の説明図である。制御値登録テーブル(ルックアップテーブル;LUT)400の各レコードは、輝度変調ライトバルブの制御値を登録したフィールドと、各制御値に対応する輝度変調ライトバルブの透過率を登録したフィールドとを含んで構成されている。
【0062】
図9の例では、第1段目のレコードには、制御値として「0」が、透過率として「0.003」がそれぞれ登録されている。これは、輝度変調ライトバルブに対して制御値「0」を入力すると、輝度変調ライトバルブの透過率が0.3%となることを示している。なお、図9には輝度変調ライトバルブの階調数が4ビット(0〜15値)である場合の例を示したが、実際には輝度変調ライトバルブの階調数に相当するレコードが登録される。例えば、階調数が8ビットである場合は、256個のレコードが登録される。
【0063】
図10は、色変調ライトバルブに入力するための制御値を登録した制御値登録テーブル420Rのデータ構造の説明図である。制御値登録テーブル(ルックアップテーブル;LUT)420Rの各レコードは、図2の色変調ライトバルブ60Rの制御値を登録したフィールドと、色変調ライトバルブ60Rの透過率を登録したフィールドとを含んで構成されている。
【0064】
図10の例では、第1段目のレコードには、制御値として「0」が、透過率として「0.004」がそれぞれ登録されている。これは、色変調ライトバルブに対して制御値「0」を入力すると、色変調ライトバルブの透過率が0.4%となることを示している。なお、図10には色変調ライトバルブの階調数が4ビット(0〜15値)である場合の例を示したが、実際には色変調ライトバルブの階調数に相当するレコードが登録される。例えば、階調数が8ビットである場合は、256個のレコードが登録される。
また、図2の色変調ライトバルブ60B,60Gに対応する制御値登録テーブルのデータ構造については特に図示しないが、図10の制御値登録テーブル420Rと同様のデータ構造を有している。ただし、同一の制御値に対して異なる透過率が登録されている場合もある。
【0065】
[表示制御方法]
次に、上述したHDR画像データから各ライトバルブの制御値を生成して、プロジェクタを駆動する方法について説明する。
いま、HDR画像データにおける画素pの輝度レベルをRp、プロジェクタ全体における画素pに対応する領域の光変調率をTp,輝度変調ライトバルブにおける画素pに対応する領域の透過率をT1、色変調ライトバルブにおける画素pに対応する領域の透過率をT2とすると、下式(1),(2)が成立する。
Rp = Tp×Rs (1)
Tp = T1×T2×G (2)
ただし、上式(1),(2)において、Rsは光源の輝度、Gはゲインであり、いずれも定数である。
例えば、画素pの輝度レベルRp(R,G,B)が(1.2,5.4,2.3)、光源の輝度Rs(R,G,B)が(10000,10000,10000)であるとすると、画素pの光変調率Tpは、(1.2,5.4,2.3)/(10000,10000,10000)=(0.00012,0.00054,0.00023)となる。
【0066】
図11は、制御値の生成方法のフローチャートである。
まず、ステップS100では、CPU170が記憶装置182からHDR画像データを読み出す。
【0067】
次いで、ステップS102に移行して、読み出したHDR画像データを解析し、画素値のヒストグラムや、輝度レベルの最大値、最小値及び平均値等を算出する。この解析結果は、暗めのシーンを明るくしたり、明るすぎるシーンを暗くしたり、中間部コントラストを協調するなどの自動画像補正に使用したり、トーンマッピングに使用したりするためである。
【0068】
次いで、ステップS104に移行して、ステップS102の解析結果に基づいて、HDR画像データの輝度レベルを、プロジェクタの輝度ダイナミックレンジにトーンマッピングする。
図12は、トーンマッピング処理の説明図である。HDR画像データを解析した結果、HDR画像データに含まれる輝度レベルの最小値がSminで、最大値がSmaxであるとする。また、プロジェクタの輝度ダイナミックレンジの最小値がDminで、最大値がDmaxであるとする。図12の例では、SminがDminよりも小さく、SmaxがDmaxよりも大きいので、このままでは、HDR画像データを適切に表示することができない。そこで、Smin〜SmaxのヒストグラムがDmin〜Dmaxのレンジに収まるように正規化する。
【0069】
なお、トーンマッピングの詳細については、例えば、「F.Drago, K.Myszkowski,T.Annen,N.Chiba,"Adaptive Logarithmic Mapping For Displaying High Contrast Scenes", Eurographics 2003,(2003)」に記載されている。
【0070】
次いで、図11のステップS106に移行して、色変調ライトバルブの解像度(画素数)に合わせてHDR画像をリサイズ(拡大または縮小)する。このとき、HDR画像のアスペクト比を保持したままHDR画像をリサイズする。リサイズ方法としては、例えば、平均値法、中間値法、ニアレストネイバー法(最近傍法)が挙げられる。
【0071】
次いで、ステップS108に移行して、リサイズ画像の各画素の輝度レベルRp及び光源10の輝度Rsに基づいて、上式(1)により、リサイズ画像の各画素につき光変調率Tpを算出する。
【0072】
次いで、ステップS110に移行して、色変調ライトバルブの各画素の透過率T2として、初期値(例えば、0.2)を仮決定する。
【0073】
次いで、ステップS112に移行して、色変調ライトバルブの各画素に対応する輝度変調ライトバルブの領域につき透過率T1’を算出する。具体的には、ステップS108で算出した光変調率Tp、ステップS110で仮決定した透過率T2、及びゲインGに基づいて、上式(2)により、当該領域の透過率T1’を算出する。ここで、色変調ライトバルブが3枚の液晶ライトバルブ60B,60G,60Rで構成されていることから、同一の領域につきRGB3原色ごとに透過率T1’を算出する。そして、輝度変調ライトバルブが1枚の液晶ライトバルブ100で構成されていることから、RGB3原色ごとに算出した透過率の平均値等をその領域の透過率T1’とする。
【0074】
次いで、ステップS114に移行して、輝度変調ライトバルブの各画素につき透過率T1を算出する。具体的には、ステップS112で算出した輝度変調ライトバルブの各領域の透過率T1’のうち、輝度変調ライトバルブの画素と重なり合う領域の透過率T1’の重み付け平均値を算出して、当該画素における透過率T1を求める。重み付けは、重なり合う画素の面積比により行う。
【0075】
次いで、ステップS116に移行して、輝度変調ライトバルブの各画素につき、算出した透過率T1に対応する制御値を、図9に示す制御値登録テーブル400から読み出す。制御値の読出しでは、算出した透過率T1に最も近似する透過率を制御値登録テーブル400の中から選出し、選出した透過率に対応する制御値を読み出す。この選出は、例えば、2分探索法を用いて行うことにより高速な検索を実現する。
【0076】
次いで、図11のステップS118に移行して、色変調ライトバルブの各画素につき透過率T2を算出する。具体的には、ステップS114で算出した輝度変調ライトバルブの各画素の透過率T1のうち、色変調ライトバルブの画素と光路上で重なり合う画素の透過率T1の重み付け平均値を算出する。重み付けは、重なり合う画素の面積比により行う。その上で、算出した透過率T1の平均値、ステップS108で算出した光変調率Tp及びゲインGに基づいて、上式(2)により、当該画素の透過率T2を算出する。
【0077】
次いで、ステップS120に移行して、色変調ライトバルブの各画素につき、算出した透過率T2に対応する制御値を、図10に示す制御値登録テーブル420R等から読み出す。制御値の読出しでは、算出した透過率T2に最も近似する透過率を制御値登録テーブル420R等の中から選出し、選出した透過率に対応する制御値を読み出す。この選出は、例えば、2分探索法を用いて行うことにより高速な検索を実現する。
【0078】
次いで、図11のステップS122に移行して、ステップS116,S120で決定した制御値をライトバルブ駆動装置に格納する。その後、ライトバルブ駆動装置が格納された制御値を各ライトバルブに出力してこれらを駆動する。
【0079】
[制御値の生成方法]
次に、色変調ライトバルブ(液晶ライトバルブ60B,60G,60R)及び輝度変調ライトバルブ(液晶ライトバルブ100)に入力する制御値の生成過程を、図11〜図16に基づいて説明する。
以下では、色変調ライトバルブ(液晶ライトバルブ60B,60G,60R)は、横18画素×縦12画素の解像度及び4ビットの階調数を有し、輝度変調ライトバルブ(液晶ライトバルブ100)は、横15画素×縦10画素の解像度及び4ビットの階調数を有する場合を例にとって説明を行う。また、色変調ライトバルブおよび輝度変調ライトバルブの図はいずれも光源10の側から見たものである。
【0080】
図13は、色変調ライトバルブの透過率T2を仮決定する過程の説明図である。
ステップS110(図11参照、以下同じ)では、色変調ライトバルブの各画素の透過率T2が仮決定される。色変調ライトバルブの左上4区画の画素をp21(左上)、p22(右上)、p23(左下)、p24(右下)とした場合、画素p21〜p24の透過率T2には、図13に示すように、初期値T20が与えられる。
【0081】
図14は、色変調ライトバルブの各画素に対応する輝度変調ライトバルブの領域について、透過率T1’を算出する過程の説明図である。
ステップS112では、色変調ライトバルブの各画素に対応する輝度変調ライトバルブの領域について透過率T1’が算出される。色変調ライトバルブの画素p21〜p24に着目した場合、これに対応する輝度変調ライトバルブの領域における透過率T11〜T14は、図14に示すように、画素p21〜p24の光変調率をTp1〜Tp4、ゲインGを「1」とすれば、下式(3)〜(6)により算出することができる。
T11 = Tp1/T20 (3)
T12 = Tp2/T20 (4)
T13 = Tp3/T20 (5)
T14 = Tp4/T20 (6)
【0082】
例えば、Tp1=0.00012、Tp2=0.05、Tp3=0.02、Tp4=0.01、T20=0.1である場合には、上式(3)〜(6)により、T11=0.0012、T12=0.5、T13=0.2、T14=0.1となる。
【0083】
図15は、輝度変調ライトバルブの各画素の透過率T1を決定する過程の説明図である。
ステップS114では、輝度変調ライトバルブの各画素の透過率T1が決定される。輝度変調ライトバルブと色変調ライトバルブとは、リレーレンズ系90によって互いに倒立結像する関係にあるので、色変調パネルの左上4区画の画素は輝度変調ライトバルブの右下部に結像される。そこで、図15(a)に示すように、輝度変調ライトバルブの右下4区画の画素をp11(右下)、p12(左下)、p13(右上)、p14(左上)とする。ここで、色変調ライトバルブと輝度変調ライトバルブとは解像度が異なることから、画素p11は画素p21〜画素p24(図14参照)と光路上で重なり合う。色変調ライトバルブの解像度が18×12で、輝度変調ライトバルブの解像度が15×10であるので、各ライトバルブの画素数の最小公倍数に基づいて、図15(b)に示すように画素p11は6×6の矩形領域に区分することができる。そして、画素p11が画素p21〜p24とそれぞれ重なり合う面積比は、25:5:5:1となる。したがって、画素p11の透過率T15は、下式(7)により算出することができる。
T15=(T11×25+T12×5+T13×5+T14×1)/36 (7)
【0084】
例えば、T11=0.0012、T12=0.5、T13=0.2、T14=0.002である場合は、上式(7)により、T15=0.1008となる。
図15(c)に示す画素p12〜p14の透過率T16〜T18についても、画素p11と同様に、面積比による重み付け平均値を算出することにより求めることができる。
【0085】
次いで、図11のステップS116では、輝度変調ライトバルブの画素ごとに、その画素について算出された透過率T1に対応する制御値が、図9に示す制御値登録テーブル400から読み出される。例えば、T15=0.1008であるので、制御値登録テーブル400を参照すると、0.09が最も近似した値となる。したがって、制御値登録テーブル400からは、画素p11の制御値として「8」が読み出される。
【0086】
図16は、色変調ライトバルブの各画素の透過率T2を決定する過程の説明図である。
ステップS118では、色変調ライトバルブの各画素の透過率T2が決定される。上述したように、色変調ライトバルブと輝度変調ライトバルブとは解像度が異なることから、図16(a)に示すように、画素p24は画素p11〜画素p14(図15参照)と光路上で重なり合う。また、色変調ライトバルブの解像度が18×12で、輝度変調ライトバルブの解像度が15×10であるので、輝度変調ライトバルブの画素数の最小公倍数に基づいて、図16(b)に示すように画素p24は5×5の矩形領域に区分することができる。そして、画素p24が画素p11〜p14とそれぞれ重なり合う面積比は、1:4:4:16となる。したがって、画素p24に対応する輝度変調ライトバルブの透過率T19は、画素p11〜p14の透過率の重み付け平均値として、下式(8)により算出することができる。
T19=(T15×1+T16×4+T17×4+T18×16)/25 (8)
そして、画素p24の透過率T24は、ゲインGを「1」として、下式(9)により算出することができる。
T24=Tp4/T19 (9)
【0087】
例えば、T15=0.09、T16=0.33、T17=0.15、T18=0.06、Tp4=0.01である場合は、上式(8),(9)により、T19=0.1188、T24=0.0842となる。
図16(c)に示す画素p21〜p23の透過率T21〜T23についても、画素p24と同様に、面積比による重み付け平均値を算出することにより求めることができる。
【0088】
次いで、図11のステップS120では、色変調ライトバルブの画素ごとに、その画素について算出された透過率T2に対応する制御値が、図10に示す制御値登録テーブル420R等から読み出される。例えば、液晶ライトバルブ60Rの画素p24についてT24=0.0842である場合、制御値登録テーブル420Rを参照すると、0.07が最も近似した値となる。したがって、制御値登録テーブル420Rからは、画素p24の制御値として「7」が読み出される。
【0089】
そして、ステップS122において、ステップS116,S120で決定された制御値をライトバルブ駆動装置に格納する。その後、ライトバルブ駆動装置が格納された制御値を各ライトバルブに入力して、光変調および輝度変調を行うことによりプロジェクタを駆動する。
【0090】
[その他の変形例]
上記実施形態では、3板式のプロジェクタを例にして説明したが、単板式のプロジェクタに本発明を適用することも可能である。この単板式のプロジェクタは、光源、均一照明系、第1光変調素子、リレーレンズ系、第2光変調素子および投射レンズを主として構成され、光源として白色光源を採用した場合には、第1光変調素子または第2光変調素子としての液晶ライトバルブにカラーフィルタが配設される。
【0091】
また、上記実施形態では、投射型表示装置を例にして説明したが、直視型表示装置に本発明を適用することも可能である。この直視型表示装置では、第2変調素子上で変調された画像光を直接見ることとなる。直視型表示装置は、明るい場所での鑑賞に適するという利点がある。
【0092】
また、上記実施形態では、色変調ライトバルブで色変調された光に対し、輝度変調ライトバルブにて輝度変調を行うように構成したが、これに限らず、輝度変調ライトバルブで輝度変調された光に対し、色変調ライトバルブにて色変調を行うように構成することもできる。また、輝度変調ライトバルブ及び色変調ライトバルブを用いて光の輝度を2段階に変調するように構成したが、これに限らず、輝度変調ライトバルブを2セット用いて光の輝度を2段階に変調するように構成することもできる。
【0093】
また、上記実施形態では、光源10として白色光を射出する単体の光源を用い、この白色光をRGBの3原色の光に分光するようにしているが、これに限らず、RGBの3原色にそれぞれ対応した、赤色の光を射出する光源、青色の光を射出する光源及び緑色の光を射出する光源の3つの光源を用い、白色光を分光する手段を取り除いた構成としても良い。
【0094】
また、上記実施形態では、液晶ライトバルブ60B,60G,60R、100としてアクティブマトリックス型の液晶表示素子を用いて構成したが、これに限らず、液晶ライトバルブ60B,60G,60R、100としてパッシブマトリックス型の液晶表示素子及びセグメント型の液晶表示素子を用いて構成することもできる。アクティブマトリックス型の液晶表示は、精密な階調表示ができるという利点があり、パッシブマトリックス型の液晶表示素子及びセグメント型の液晶表示素子は、安価に製造できるという利点を有する。
【0095】
また、上記実施形態では、輝度変調ライトバルブまたは色変調ライトバルブを透過型の光変調素子である液晶パネルによって構成したが、これに限らず、DMD(Digital Micromirror Device)等の反射型の光変調素子で構成することもできる。
【0096】
また、リレーレンズ系と輝度変調ライトバルブとの間に、光の偏光状態を補償する偏光補償光学系を配設してもよい。偏光補償光学系としては、偏光補償機能を有する誘電体膜や、レクチファイアを用いた構成を採用することができる。
【0097】
また、上記各実施の形態において、図11のフローチャートに示す処理を実行するにあたっては、ROM172にあらかじめ格納されている制御プログラムを実行する場合について説明したが、これに限らず、これらの手順を示したプログラムが記憶された記憶媒体から、そのプログラムをRAM174に読み込んで実行するようにしてもよい。
【0098】
ここで、記憶媒体とは、RAM、ROM等の半導体記憶媒体、FD、HD等の磁気記憶型記憶媒体、CD、CDV、LD、DVD等の光学的読取方式記憶媒体、MO等の磁気記憶型/光学的読取方式記憶媒体であって、電子的、磁気的、光学的等の読み取り方法のいかんにかかわらず、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体であれば、あらゆる記憶媒体を含むものである。
【0099】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明に係る画像表示装置(プロジェクタ)の側面図である。
【図2】本発明に係る画像表示装置(プロジェクタ)の平面断面図である。
【図3】実施形態のリレーレンズ系の構成を示す側面図である。
【図4】テレセントリック性の説明図である。
【図5】偏光ビームスプリッタを採用したリレーレンズ系の側面図である。
【図6】反射プリズムを採用したリレーレンズ系の側面図である。
【図7】リレーレンズ系に1個の反射光学素子を採用した場合のプロジェクタの平面図である。
【図8】表示制御装置のハードウエア構成を示すブロック図である。
【図9】輝度変調ライトバルブの制御値登録テーブルのデータ構造図である。
【図10】色変調ライトバルブの制御値登録テーブルのデータ構造図である。
【図11】制御値の生成方法のフローチャートである。
【図12】トーンマッピング処理の説明図である。
【図13】色変調ライトバルブの透過率を仮決定する場合の説明図である。
【図14】色変調ライトバルブの各画素に対応する輝度変調ライトバルブの各領域の透過率を算出する場合の説明図である。
【図15】輝度変調ライトバルブの各画素の透過率を決定する場合の説明図である。
【図16】色変調ライトバルブの各画素の透過率を決定する場合の説明図である。
【図17】本願発明者らが開発したプロジェクタの平面図である。
【図18】従来のリレーレンズ系の説明図である。
【符号の説明】
【0101】
10‥光源 60G‥色変調ライトバルブ 90‥リレーレンズ系 94,96‥反射光学素子 100‥輝度変調ライトバルブ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示画像データに基づき光源からの光を変調して画像を表示する装置であって、
前記光源からの光を変調する第1光変調素子と、
前記第1光変調素子からの光を変調する第2光変調素子と、
前記第1光変調素子と前記第2光変調素子との間に配され、前記第1光変調素子の光学像を前記第2光変調素子の受光面に結像するリレーレンズ系と、
前記リレーレンズ系を構成する複数のレンズの間に配置された少なくとも1個の反射光学素子と、
を備えることを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記リレーレンズ系は、前記第1光変調素子から入射した光の進行方向を、前記反射光学素子により反転させて、前記第2光変調素子に出射することを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記リレーレンズ系は、両側テレセントリック性を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記反射光学素子は、前記リレーレンズ系を構成する複数のレンズのうち前記反射光学素子の前段レンズ群と前記反射光学素子の後段レンズ群とが、対称となる位置に配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記反射光学素子は、反射型偏光子であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記反射光学素子は、ワイヤグリッド型偏光フィルタであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記反射光学素子は、偏光ビームスプリッタであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項8】
前記反射光学素子は、反射プリズムのプリズム面に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の画像表示装置と、
投射手段と、を備えることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項1】
表示画像データに基づき光源からの光を変調して画像を表示する装置であって、
前記光源からの光を変調する第1光変調素子と、
前記第1光変調素子からの光を変調する第2光変調素子と、
前記第1光変調素子と前記第2光変調素子との間に配され、前記第1光変調素子の光学像を前記第2光変調素子の受光面に結像するリレーレンズ系と、
前記リレーレンズ系を構成する複数のレンズの間に配置された少なくとも1個の反射光学素子と、
を備えることを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記リレーレンズ系は、前記第1光変調素子から入射した光の進行方向を、前記反射光学素子により反転させて、前記第2光変調素子に出射することを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記リレーレンズ系は、両側テレセントリック性を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記反射光学素子は、前記リレーレンズ系を構成する複数のレンズのうち前記反射光学素子の前段レンズ群と前記反射光学素子の後段レンズ群とが、対称となる位置に配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記反射光学素子は、反射型偏光子であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記反射光学素子は、ワイヤグリッド型偏光フィルタであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記反射光学素子は、偏光ビームスプリッタであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項8】
前記反射光学素子は、反射プリズムのプリズム面に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の画像表示装置と、
投射手段と、を備えることを特徴とするプロジェクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2006−38994(P2006−38994A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−215397(P2004−215397)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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