説明

画像表示装置の制御方法

【課題】低階調領域において、変調パルス波形印加時の高周波成分による他配線の電圧変動を小さくし、電圧変動による輝度変動を抑制する技術を提供する。
【解決手段】複数の表示素子が複数の列配線と複数の行配線によりマトリクス配置された表示パネルを備える画像表示装置の制御方法であって、駆動対象の行配線に選択電位を出力するステップと、画像データの値に基づき変調パルスを生成し、前記変調パルスを列配線に出力するステップとを備え、画像データの値Iの最小値をImin、最大値をImaxとし、Imin<I1<I2≦Imaxとしたときに、前記変調パルスを生成し出力するステップは、Imin≦I≦I1の階調領域では、前記変調パルスとして台形状パルスを生成し、値Iが大きくなるほど前記台形状パルスの波高値を大きくし、I1<I≦I2の階調領域では、値Iが大きくなるほど前記台形状パルスのパルス幅を長くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
平面型画像表示装置としては、電子放出素子を用いた表示装置(電子線表示装置)、液晶表示装置、プラズマ表示装置、有機EL表示装置などが知られている。この種の平面型画像表示装置は、多数の表示素子がマトリクス状に配列された表示パネル(マトリクスパネル)と、表示素子を駆動するための駆動回路とを備えている。一般的に、駆動対象となる表示素子には、画像信号に応じて変調された変調信号(変調パルス)が供給される。変調方式としては、パルス幅変調、振幅変調などが知られている。
【0003】
特許文献1は、パルス幅変調と振幅変調を組み合わせた変調方式を開示する。さらに特許文献1は、パルス波形の立ち上がりと立ち下がりを階段状にする変調回路を開示する。特許文献2は、入力される画像データに応じて、画像データレベルの大きい部分に相当する行配線の走査時間が長く、画像データレベルの小さい部分に相当する行配線の走査時間が短くなるように、走査駆動回路と変調駆動回路を制御することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−173159号公報
【特許文献2】特開2003−228317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
表示パネルの高精細化や駆動の高速化に伴い、波形遷移時の電圧変動をより一層抑制し、安定した駆動を実現することが望まれている。特に電子線表示装置のようなマトリクス駆動タイプの画像表示装置では、マトリクスパネルの容量が大きく、駆動電圧も大きいことから、変調パルス波形印加時に、高周波成分により他配線に電圧変動が起こり、輝度が変動してしまうことが問題となっている。特に低階調領域では、変調パルス波形が小さいため、電圧変動による輝度変動の割合が、高階調領域と比較して相対的に高い。このため低階調領域での変調パルス波形に含まれる高周波成分を可及的に小さくすることが望まれている。
【0006】
本発明は、低階調領域において、変調パルス波形印加時の高周波成分による他配線の電圧変動を小さくし、電圧変動による輝度変動を抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数の表示素子が複数の列配線と複数の行配線によりマトリクス配置された表示パネルを備える画像表示装置の制御方法であって、駆動対象の行配線に選択電位を出力するステップと、画像データの値に基づき変調パルスを生成し、前記変調パルスを列配線に出力するステップとを備え、画像データの値Iの最小値をImin、最大値をImaxとし、Imin<I1<I2≦Imaxとしたときに、前記変調パルスを生成し出力するステップは、Imin≦I≦I1の階調領域では、前記変調パルスとして台形状パルスを生成し、値Iが大きくなるほど前記台形状パルスの波高値を大きくし、I1<I≦I2の階調領域では、値Iが大きくなるほど前記台形状パルスのパルス幅を長くする方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低階調領域において、変調パルス波形印加時の高周波成分による他配線の電圧変動を小さくし、電圧変動による輝度変動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明による変調パルス波形の階調制御方法の概略図。
【図2】本発明による変調パルス波形の階調制御方法の例。
【図3】本発明による変調パルス波形の階調制御方法の例。
【図4】(a)画像表示装置と(b)変調回路の構成を示す図。
【図5】変調回路の(a)ロジック回路と(b)出力回路の構成を示す図。
【図6】参照波形発生回路の(a)第一実施形態と(b)第二実施形態を示す図。
【図7】(a)立ち上がりと(b)立ち下がりのスロープ波形の生成回路を示す図。
【図8】出力回路のタイミングチャート。
【図9】出力回路の論理表。
【図10】RGB独立調整についての説明図。
【図11】電源電圧出力用のスイッチSH、SLを設ける構成図。
【図12】第三実施形態の走査時間の可変制御を示す図。
【図13】変調パルス、選択電位についての説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の画像表示装置は、複数の表示素子が複数の列配線と複数の行配線でマトリクス配置された表示パネル(マトリクスパネル)を有する画像表示装置であり、例えば、電子線表示装置、プラズマ表示装置、有機EL表示装置などを包含している。特に、電子線表示装置は、マトリクスパネルの配線容量や素子容量が大きく、素子に供給する駆動電圧も大きいという点から、本発明が適用される好ましい形態である。電子線表示装置では、表示素子として、FE型電子放出素子、MIM型電子放出素子、表面伝導型放出素子などの冷陰極素子(電子放出素子)が用いられる。
【0011】
[第一の実施形態]
一般的に、画像表示装置は、表示パネルを駆動するための駆動手段として、走査回路と変調回路を備えている。走査回路は駆動対象の一つまたは複数の行配線に選択電位を出力する回路であり、変調回路は画像データに基づき変調パルスを生成し、その変調パルスを列配線に出力する回路である。本発明の画像表示装置の変調回路は、スロープ状に立ち上がる第1波形、波高値を規定する第2波形、スロープ状に立ち下がる第3波形を適宜組み合わせて、変調パルスの波形(源波形)を生成する。変調回路は、画像データに基づき、波形制御のための制御信号を生成するロジック回路を有しており、この制御信号によって、第1波形、第2波形、第3波形を切替えるタイミングや第2波形の波高値などを自由に制御することができる。
【0012】
以下に、本実施形態の変調回路で出力可能な変調パルスの出力方法について具体的に説明する。
変調回路は、画像データの値I(Iは、最小値Imin≦I≦最大値Imaxの整数である。)に基づき、台形状または略台形状の変調パルスを生成する。具体的には、変調回路は、(1)Imin≦I≦I1の階調領域では、値Iが大きくなるほど台形状パルスの波高値を大きくしていき、(2)I1<I≦I2の階調領域では、値Iが大きくなるほど台形状パルスのパルス幅を長くしていく。ただし、Imin<I1<I2≦Imaxである。
【0013】
上記(1)の制御では、変調回路は、波高値h(I)までスロープ状に立ち上げ、時間
t1の期間、波高値h(I)を維持し、スロープ状に立ち下げる制御を行う。h(I)は、Iが大きくなるにしたがって増加する、0より大きい値である。なおh(I)は典型的にはIの一次関数であるが、単調増加する関数であれば一次関数には限らない。時間t1は固定値でもよいし、Iの関数でもよい。この制御により、矩形パルスや三角形状パルスを用いるのに比較して、低階調領域の変調パルスの高周波成分を低減できる。
上記(2)の制御では、変調回路は、波高値h(I1)までスロープ状に立ち上げ、時間t1+f(I)の期間、波高値h(I1)を維持し、スロープ状に立ち下げる制御を行う。f(I)は、Iが大きくなるにしたがって増加する、0より大きい値である。なおf(I)は典型的にはIの一次関数であるが、単調増加する関数であれば一次関数には限らない。上記(2)の制御は、画像データを増やすにしたがって、波高値を一定に保ったまま、パルス幅(台形状パルスの平坦部分の長さ)を伸ばしていく制御である。この制御により、全ての階調の刻みを台形状パルスの波高値で制御する場合に比べて、波高値の刻み数を少なくすることができる。
【0014】
上記(1)、(2)の制御に、さらに下記の制御(3)〜(6)を適宜追加することも好ましい。
(3)I2<I≦I3の階調領域(I2<I3≦Imax)
変調回路が、変調パルスとして、波高値h1までスロープ状に立ち上がり、時間t1の期間、波高値h1を維持し、波高値h2までスロープ状に立ち下がり、時間t2の期間、波高値h2を維持し、スロープ状に立ち下がる略台形状パルスを生成する。値Iが大きくなるほど、略台形状パルスの時間t2を長くする。ここで、h1は、I=I2の場合の波高値、t1は、I=I2の場合の台形状パルスの上辺長の長さに相当する。t2は、Iが大きくなるにしたがって増加する、0より大きい値である。
(4)I3<I≦I4の階調領域(I3<I4≦Imax)
変調回路が、変調パルスとして、波高値h1までスロープ状に立ち上がり、時間t1の期間、波高値h1を維持し、波高値h2までスロープ状に立ち下がり、時間t2の期間、波高値h2を維持し、波高値h3までスロープ状に立ち下がり、時間t3の期間、波高値h3を維持し、スロープ状に立ち下がる略台形状パルスを生成する。値Iが大きくなるほど、略台形状パルスの時間t3を長くする。ここで、t3は、Iが大きくなるにしたがって増加する、0より大きい値である。
(5)I2<I≦I5の階調領域(I2<I5≦Imax)
変調回路が、変調パルスとして、I=I2に対応する台形状パルスよりも大きい第2の台形状パルスを生成する。そして、値Iが大きくなるほど第2の台形形状パルスの波高値を大きくする。
(6)I5<I≦I6の階調領域(I5<I6≦Imax)
変調回路が、値Iが大きくなるほど、第2の台形状パルスのパルス幅を長くする。
【0015】
図1は本発明による変調パルス波形の階調制御方法の概略図を示している。図1は、(1)低階調領域における階調制御を、台形波形の波高値を増やすことにより行い、(2)高階調領域における階調制御を、台形波形の波高値を一定に保ったままパルス幅を増やすことにより行うことを示す。図2(a)〜(c)、図3(a)〜(b)は、本発明による変調パルス波形の階調制御方法の例を示している。なお、パルス波形の中の黒い部分は、1階調前のパルス波形からの増分を表している。
【0016】
図2(a)〜(c)は、Imin=1、I1=n+1の例を示している。
図2(a)は低階調領域(画像データ1〜n+1)では、台形状パルスの下辺長を一定に保ちつつ、台形状パルスの波高値を徐々に大きくしていくことにより階調を刻む。高階調領域(画像データn+2〜)では、台形状パルスの波高値を一定に保ったまま、パルス幅を徐々に長くしていくことにより階調を刻む。
図2(b)は低階調領域(画像データ1〜n+1)では、台形状パルスの上辺長を一定
に保ちつつ、台形状パルスの波高値を徐々に大きくしていくことにより階調を刻む。高階調領域(画像データn+2〜)では、台形状パルスの波高値を一定に保ったまま、パルス幅を徐々に長くしていくことにより階調を刻む。
図2(a)および図2(b)の例では、スロープの立ち上がりおよび立ち下がりの傾きを全ての階調で一定としたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、階調ごとに傾きを変えてもよい。図2(c)は階調ごとに傾きを変えた一例である。また、図2(a)の例では、台形状パルスの下辺長を低階調領域(画像データ1〜n+1)で一定にし、図2(b)の例では、台形状パルスの上辺長を低階調領域(画像データ1〜n+1)で一定にしたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、上辺長および下辺長を階調ごとに変えてもよい。
【0017】
図3(a)は低階調領域(画像データ1〜n+1)では、図2(a)と同様の手順により階調を刻む。第1の高階調領域(画像データn+2〜n+m−1)では、台形状パルスの波高値を一定に保ったまま、パルス幅を徐々に長くしていくことにより階調を刻む。さらに、第2の高階調領域(画像データn+m〜)では、第1の高階調領域(画像データn+2〜n+m−1)での波高値よりも低い波高値を一定に保ったまま、パルス幅を徐々に長くしていくことにより階調を刻む。
【0018】
図3(b)は低階調領域(画像データ1〜n+1)では、図2(a)と同様の手順により階調を刻む。第1の高階調領域(画像データn+2〜n+m−1)では、台形状パルスの波高値を一定に保ったまま、パルス幅を徐々に長くしていくことにより階調を刻む。第2の高階調領域(画像データn+m〜n+m+2)では、台形状パルスの波高値を徐々に大きくしていくことにより階調を刻む。第3の高階調領域(画像データn+m+3〜)では、台形状パルスの波高値を一定に保ったまま、パルス幅を徐々に長くしていくことにより階調を刻む。
【0019】
図3(a)の例では、波高値を低くする制御を1回だけ行ったが、必ずしもこれに限定されるものではなく、波高値を複数回低くしてもよい。図3(b)の例では、台形状パルスの波高値を徐々に大きくしていく制御と台形状パルスの波高値を一定に保ったまま、パルス幅を徐々に長くしていく制御を2回組み合わせたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、複数回組み合わせてもよい。また、後述するように、蛍光体の発光効率の違いを補正するために、色毎に波高値を変えることも好ましい。
【0020】
次に、上述した変調パルスを出力するための画像表示装置の構成および制御方法について具体的に説明する。
【0021】
図4(a)は、本発明の画像表示装置の構成を示すブロック図である。画像表示装置は、概略、表示パネル(画像表示部)としてのマルチ電子源A1と、マルチ電子源A1を駆動する駆動装置とを備えている。
【0022】
駆動装置は、出力データ回路、変調回路A2、走査回路A3、変調電源回路A7、および走査電源回路A8で構成される。出力データ回路は、タイミング発生回路A4、データ変換回路A5、パラレル/シリアル変換回路A6などを備えている。
【0023】
マルチ電子源A1は、複数の電子放出素子、複数の行配線、複数の列配線を備えており、行配線と列配線の交差部のそれぞれに電子放出素子が形成されている。行配線に選択電位を供給し、列配線に変調パルスを供給すると、選択電位と変調パルスの電位差である駆動電圧が電子放出素子に印加される。この駆動電圧の印加時間や電圧値を適宜制御することにより、所望の素子を所望の輝度で発光させることができる。
【0024】
変調回路A2は、マルチ電子源A1の列配線に接続されている。この変調回路A2は、出力データ回路から供給される画像データに基づいて変調信号(変調パルス)を生成し、その変調信号をマルチ電子源A1の各列配線に出力する回路である。
変調電源回路A7は、複数の電圧値を出力可能に構成された電源回路である。変調電源回路A7は、変調回路A2の回路動作用の電源であるとともに、変調回路A2から出力される変調パルスの電圧値を規定するための電源である。変調電源回路A7は、一般的に電圧源回路であるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0025】
走査回路A3は、マルチ電子源A1の行配線に接続されている。走査回路A3は、全行配線の中から駆動対象とする一本または数本の行配線を選択し、選択する行配線を順次切り替えるための回路である。一般的には、一行ずつ順次行選択する線順次走査が行われるが、これに限定されるものではない。走査回路A3は、飛び越し走査(インタレース走査)、複数行を選択したり面状に選択したりすること(マルチライン走査)も可能である。走査回路A3は、駆動対象の行配線(選択ライン)に対しては選択電位を供給し、その他の行配線(非選択ライン)に対しては非選択電位を供給する。
走査電源回路A8は、複数の電圧値(選択電位、非選択電位)を出力する電源回路である。一般的には電圧源回路であるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0026】
タイミング発生回路A4は、変調回路A2、走査回路A3、データ変換回路A5およびパラレル/シリアル変換回路A6のそれぞれ回路のタイミングを制御する制御データとしてのタイミング信号を発生する回路である。
データ変換回路A5は、入力された輝度階調データを、変調回路A2およびマルチ電子源A1に適した画像データに変換する回路である。たとえば、データ変換回路A5は、輝度階調データに対して、逆γ変換、輝度補正、色補正、解像度変換、最大値調整(リミッタ)などの信号処理を施すことができる。
パラレル/シリアル変換回路A6は、データ変換回路A5から出力された画像データをパラレルデータからシリアルデータに変換し、変調回路A2に出力する回路である。
【0027】
図4(b)は、変調回路A2の回路構成を示すブロック図である。変調回路A2は、シリアル/パラレル変換回路A9、シフトレジスタA10、データサンプリング回路A11、ロジック回路A12、出力回路A13で構成されている。
【0028】
以下に、本実施形態における変調回路A2の動作を説明する。
出力データ回路から出力された画像データは、シリアル/パラレル変換回路A9でパラレルデータに変換される。パラレルデータに変換された画像データは、シフトレジスタA10によって、順次データサンプリング回路A11に格納される。
マルチ電子源A1の水平方向の画素数(以下、水平方向の画素数をMとする)に相当する画像データが、データサンプリング回路A11に格納される。その後、データサンプリング回路A11に格納された各画素用の画像データをもとに、ロジック回路A12が、出力回路A13の制御信号(制御シーケンス)を生成し、出力回路A13に送出する。
出力回路A13は、制御信号(制御シーケンス)に基づき、変調パルスを生成し、その変調パルスをマルチ電子源A1の列配線に出力する。
【0029】
図5(a)は、変調回路のロジック回路A12の構成を示すブロック図である。
ロジック回路A12は、M個のロジック回路A14を備えている。それぞれのロジック回路A14は、各画素に対応している。以下、1画素分のロジック回路A14を例に、具体的な構成、動作を説明する。
【0030】
ロジック回路A14は、デコーダA14aとシーケンス発生回路A14bとを備えている。データサンプリング回路A11でサンプリングされた画像データは、デコーダA14
aに入力される。デコーダA14aは、画像データと出力データ回路からのタイミング信号とから、変調パルスの立ち上がり・立ち下がりタイミング用の制御データを生成する。その制御データは、シーケンス発生回路A14bに入力され、コンパレータ用データとして使用される。また、デコーダA14aは、画像データとタイミング信号とから、変調パルスの出力レベルを規定するための制御信号Levelを生成する。制御信号Levelは出力回路A13に入力される。
【0031】
シーケンス発生回路A14bは、タイミング信号として供給されるクロック信号に基づき、クロック数をカウントする。シーケンス発生回路A14b内のコンパレータは、そのカウント値と、立ち上がり・立ち下がりタイミング用の制御データとを比較する。そして、コンパレータの値に基づき、変調パルスの立ち上がりタイミングを規定するための制御信号Trと、変調パルスの立ち下がりタイミングを規定するための制御信号Tfと、が生成される。制御信号Tr、Tfは出力回路A13に入力される。
【0032】
図5(b)は、変調回路の出力回路A13の構成を示すブロック図である。
出力回路A13は、M個の出力回路A15を備えている。それぞれの出力回路A15は、各画素(各列配線)に対応している。以下、1画素分の出力回路A15を例に、具体的な構成、動作を説明する。
【0033】
出力回路A15は、レベルシフト回路A16、参照波形発生回路A17、出力段A18から構成される。
ロジック回路A14から送出された制御信号Tr、Tf、Levelが出力回路A15に入力される。レベルシフト回路A16が、制御信号Tr、Tf、Levelの電圧をロジックレベルから出力回路A15の動作電圧レベルに変換する。レベルシフト回路A16から出力された制御信号Tr、Tf、Levelは、参照波形発生回路A17に入力される。
【0034】
図6(a)は、参照波形発生回路A17の構成を示すブロック図である。参照波形発生回路A17は、立ち上がり参照波形生成部A17a、出力レベル生成部A17b、立ち下がり参照波形生成部A17c、波形切替え部A17dから構成される。
この実施形態では、立ち上がり参照波形生成部A17a、出力レベル生成部A17b、立ち下がり参照波形生成部A17cが、それぞれ、本発明の第1波形生成部、第2波形生成部、第3波形生成部に対応する。また、波形切替え部A17dが、本発明の波形切替え部に対応する。
【0035】
次に、立ち上がり波形生成動作を説明する。
レベルシフトされた制御信号Trは、立ち上がり参照波形生成部A17aに入力される。立ち上がり参照波形生成部A17aは、制御信号Trが入力されると、所定の傾きを持つ立ち上がりスロープ波形を生成し、出力する。立ち上がりスロープ波形(第1波形)としては、スロープ状に緩やかに立ち上がる波形であればどのような波形を用いてもよい。好ましくは単調増加する波形、より好ましくは一定の傾きをもつ波形が好適である。階調制御が容易になるからである。
【0036】
図7(a)は、立ち上がりスロープ波形を生成するための回路構成例である。この回路は、スイッチS1、S2と、電流源Itrと、容量Ctrから構成される。
制御信号Trがオン状態(High)の時、スイッチS1はオン状態、スイッチS2はオフ状態となる。スイッチS1がオン状態に変化する事で、電流源Itrから一定の電流が流れ込み、電荷が容量Ctrに充電される。この動作により、出力電圧Tr_OUTは、一定の傾きを持つ波形となる。なお、階調に応じてスロープ波形の傾きを変化させる場合には、この回路を複数種類設ければよい。
制御信号Trがオフ状態(Low)に変化すると、スイッチS1はオフ状態、スイッチS2はオン状態となる。この動作により、容量Ctrに充電された電荷は放電され、出力電圧Tr_OUTは0Vとなる。なお、本例では、スイッチS2側にグランドに向けての電流源を接続しても良い。
【0037】
次に、出力レベル生成動作を説明する。
レベルシフトされた制御信号Levelは、出力レベル生成部A17bに入力される。出力レベル生成部A17bは、制御信号Levelをデジタル/アナログ変換して、一定電圧の電圧レベル信号LEVEL_OUTを出力する。この電圧レベル信号LEVEL_OUTが、変調パルスの波高値を規定するための波形(第2波形)である。
【0038】
次に、立ち下がり波形生成動作を説明する。
レベルシフトされた制御信号Tfは、立ち下がり参照波形生成部A17cに入力される。立ち下がり参照波形生成部A17cは、波形切替え部A17dから出力される参照波形REF_WFの電圧を常に受けている。立ち下がり参照波形生成部A17cが参照波形REF_WFの電圧を常に受ける理由は、波形切替え部A17dから出力されている電圧レベルからの立ち下がり波形を生成するためである。すなわち、制御信号Tfが入力されると、立ち下がり参照波形生成部A17cは、参照波形REF_WFの電圧値から、所定の傾きを持つ立ち下がりスロープ波形を生成し、出力電圧Tf_OUTを出力する。
立ち下がりスロープ波形(第3波形)としては、スロープ状に緩やかに立ち下がる波形であればどのような波形を用いてもよい。好ましくは単調減少する波形、より好ましくは一定の傾きをもつ波形が好適である。階調制御が容易になるからである。
【0039】
図7(b)は、立ち下がりスロープ波形を生成するための回路構成例である。この回路は、スイッチS3、S4と、電流源Itfと、容量Ctfとから構成される。
制御信号Tfがオン状態(High)の時、スイッチS3はオン状態、スイッチS4はオフ状態となる。このため参照波形REF_WFと同じ電圧が入力され、容量Ctfが充電される。
制御信号Tfがオフ状態(Low)の時、スイッチS3はオフ状態、スイッチS4はオン状態となる。この動作により、出力電圧Tf_OUTは、立ち下がり開始直前の参照波形REF_WFの電圧から、一定の傾きを持つ立ち下がり波形となり、やがてグランドレベルとなる。なお、階調に応じてスロープ波形の傾きを変化させる場合には、この回路を複数種類設ければよい。
【0040】
次に、波形切替え動作、および、出力波形動作を説明する。
波形切替え部A17dは、制御信号Tr、Tfに基づき、立ち上がり参照波形生成部A17a、出力レベル生成部A17b、立ち下がり参照波形生成部A17cの参照波形(出力電圧)を切替えることで、参照波形REF_WFを生成し、出力段A18に出力する。具体的には、波形切替え部A17dは、制御信号TrがHighの時、立ち上がり参照波形生成部A17aの出力電圧Tr_OUTを選択し、制御信号TrがLowの時、出力レベル生成部A17bの出力電圧LEVEL_OUTを選択する。
また、波形切替え部A17dは、制御信号TfがHighの時、制御信号Trの論理を優先し、制御信号TfがLowの時、立ち下がり参照波形生成部A17cの出力電圧Tf_OUTを選択する。
出力段A18は、波形切替え部A17dからの出力波形REF_WFを参照して、同形もしくは相似の波形をもつ変調パルスを生成する。変調パルスOUTは、マルチ電子源A1の列配線に出力される。出力段A18は、図6(a)のようなオペアンプA18aを用いたユニティゲインバッファ構成が好適である。また、オペアンプの増幅段構成を出力段に採用してもよい。
【0041】
(動作例1)
図8(a)および図9(a)を参照して、本実施形態に関する出力回路A15の動作タイミングの一例を説明する。図8(a)は出力回路A15の動作例1を示すタイミングチャートであり、図9(a)は論理表である。動作例1は、電圧レベルVの変調パルスを出力する場合の制御である。
【0042】
制御信号Levelが、出力レベル生成部A17bに入力され、電圧レベル信号LEVEL_OUTが出力される。この例ではVレベルが出力される。
制御信号TrがHighレベルの時、立ち上がり参照波形生成部A17aから、一定の傾きを持つ立ち上がり波形Tr_OUTが出力される。制御信号TrがLowレベルに変化すると、容量Ctrに充電された電荷が放電された後、Tr_OUTは0V(グランドレベル)となる。
制御信号TfがHighレベルの時、立ち下がり参照波形生成部A17cはREF_WFの電圧を取り込む。制御信号TfがLowレベルになるまで、立ち下がり参照波形生成部A17cはREF_WFの電圧を取り込み続け、その電圧をTf_OUTとして出力する。制御信号TfがLowレベルになると、Tf_OUTはREF_WFから一定の傾きで立ち下がり、やがて、0Vとなる。
【0043】
波形切替え部A17dは、制御信号TrがHighレベルになると、立ち上がり参照波形生成部A17aから出力された参照波形Tr_OUTを選択し、出力する。図8(a)では、制御信号Trは、Tr_OUTの電圧がVレベルに達するまでの期間、Highレベルとなっている。
波形切替え部A17dは、制御信号TrがLowレベルになると、制御信号TfがHighレベルの場合は、LEVEL_OUTを選択し、出力する。制御信号TfがLowレベルになると、波形切替え部A17dは、Tf_OUTを選択し、出力する。
上記動作により、出力波形用の参照波形REF_WFは、グランドレベルから一定の傾きを持って立ち上がり、指定された電圧レベルを出力後、一定の傾きを持ってグランドレベルまで立ち下がる。
【0044】
出力電圧レベルを出力している期間Pulth_Widthは、制御信号Tr、TfのHigh期間を調整することで、制御可能である。これにより、参照波形REF_WFのパルス幅を制御することができ、波高値を一定に保ったままパルス幅を広げていくという波形出力が可能となる。
【0045】
(動作例2)
図8(b)および図9(b)を参照して、動作例1とは異なる出力回路A15の動作タイミングの一例を説明する。図8(b)は出力回路A15の動作例2を示すタイミングチャートであり、図9(b)は論理表である。動作例1と異なる点は、制御信号Levelの電圧が、Vレベルよりも低いVn−1レベルである点と、制御信号TrのHigh期間が短くなっている点であり、それ以外は動作例1と同様の制御を行う。これにより、出力波形の波高値を変えることが可能となる。
上述した動作例1、2は、互いの波高値が異なっており、色調整、色毎の階調制御特性の調整などに好適に利用することができる。
【0046】
以下に、RGB独立調整について説明する。
本発明の画像表示装置は、マルチ電子源から放出される電子をRGB各色の蛍光体が塗布された面に衝突させることで、RGBの発光を得ている。しかし、一般的にこれら蛍光体はRGB毎に発光効率が異なっている。このため、同一の放出電子量(電荷量)を各色の蛍光体に投入しても、得られる発光量は同一ではない。そこで、発光効率を考慮した駆動電圧値をRGB個別に設定し、その電圧レベルでパルス幅変調を行うことにより、RG
Bの発光量を一致させることができる。
【0047】
図10(a)〜図10(f)を参照して具体例を説明する。
図10(a)は、マルチ電子源に形成されている電子放出素子の駆動電圧Vf−放出電流Ieの特性を示している。図10(b)は、RGB各色の電子放出素子に印加した駆動波形を示している。ここでは、RGB各色に同一の駆動電圧Vdを与えている。図10(c)は、RGB各色の、画像データに対する輝度特性を示している。この例では、蛍光体の発光効率がR>G>Bであり、RGBの各素子を同一の駆動電圧で駆動すると、同一の画像データを与えてもR>G>Bのように輝度が異なることが判る。
【0048】
そこで、図10(d)のように、発光効率の高い蛍光体に対応する電子放出素子ほど駆動電圧が小さくなるように、各色の駆動電圧を設定する。図10(d)の例では、Rの駆動電圧VrをVdよりも小さく、Gの駆動電圧VgをVdと同じに、Bの駆動電圧VbをVdよりも大きくする。これにより、図10(e)のように、RGB毎で波高値(出力電圧レベル)の異なるパルス幅変調が行われる。このような変調パルスで駆動することにより、図10(f)に示すように、RGBの輝度特性を一致させることができる。
【0049】
以上のように、RGB毎に駆動電圧値を適宜選ぶことで、RGB毎の階調特性を調整する事が可能となる。なおγ特性等の調整など、非線形の階調制御を実施する際には、適宜画像データを選択する事で、非線形性の階調制御が可能となる。
【0050】
なお、本実施形態の回路構成では、それぞれの出力回路A15が、立ち上がり参照波形生成部A17a、出力レベル生成部A17b、立ち下がり参照波形生成部A17cを備えている。よって、M画素分の出力回路A15のそれぞれが、変調パルスの立ち上がりタイミング、電圧レベルとその出力期間、および、立ち下がりタイミングを独立で制御可能である。言い換えれば、画素毎(列配線毎)に、変調パルスの立ち上がりや立ち下がりのタイミングを異ならせたり、電圧レベルを異ならせたりすることができる。
【0051】
[第二の実施形態]
図6(b)は、本発明の第二の実施形態に係る参照波形発生回路A17の構成を示すブロック図である。
第一の実施形態と異なる点は、複数の参照波形発生回路A17が共通の立ち上がり参照波形生成部A17aを共有している点と、電圧レベル信号LEVEL_OUTを出力するタイミングを規定する制御信号LEVEL_contを有している点である。それ以外は第一の実施形態と同様の形態である。つまり、本実施形態では、出力レベル生成部A17b、立ち下がり参照波形生成部A17c、および、波形切替え部A17dは列配線毎に設けられているが、立ち上がり参照波形部A17aの数は列配線の数よりも少ない。一般に、変調回路A2は、1つまたは複数の集積回路(ICチップ)で構成され、1つの集積回路内に複数の出力回路A15が設けられている。本実施形態では、集積回路内の全ての出力回路A15が1つの立ち上がり参照波形部A17aを共通に利用する構成を採用することで、チップサイズを縮小することができる。なお、本実施形態の構成は、立ち上がり波形の開始タイミング・動作タイミングが常に一定である制御に適用可能である。
【0052】
(動作例3)
図8(c)および図9(c)を参照して、本実施形態に関する出力回路A15の動作タイミングの一例を説明する。図8(c)は出力回路A15の動作例3を示すタイミングチャートであり、図9(c)は論理表である。
【0053】
制御信号Levelが、出力レベル生成部A17bに入力され、一定レベルの電圧レベル信号LEVEL_OUTが出力される。この例ではVレベルが出力されるが、V
外のレベルの場合も同様の動作となる。
制御信号LEVEL_contは、電圧レベル信号LEVEL_OUTの電圧を出力するタイミングを規定する信号である。第一の実施形態では、出力回路毎に制御信号TrをLowにする事により信号LEVEL_OUTを選択する事が可能であった。しかし、本実施形態のように、立ち上がり参照波形生成部A17aを共通化する場合は、立ち上がりスロープ波形から一定レベルの出力へと切り替えるタイミングが出力回路毎に異なる可能性があるため、LEVEL_contのような制御信号が必要となる。
制御信号Trの動作は、第一の実施形態と同様である。ただし、制御信号Trは、複数の出力回路のタイミング信号として用いられるため、少なくとも1つの出力回路が立ち上がり中の場合はHighレベルをとり、全ての出力回路が立ち上がった後でLowレベルとなる。
制御信号Tfの動作は、第一の実施形態と同様である。
制御信号LEVEL_contは波形切替え部A17dに入力される。波形切替え部A17dは、制御信号LEVEL_contがHighの場合、LEVEL_OUTを選択し、制御信号LEVEL_contがLowの場合、他の論理を優先する。
【0054】
以下に出力動作を説明する。波形切替え部A17dは、制御信号TrがHighレベルになると、立ち上がり参照波形生成部A17aから出力された参照波形Tr_OUTを選択し、立ち上がり波形を出力する。制御信号LEVEL_contがHighレベルになると、波形切替え部A17dは、LEVEL_OUTを選択し、レベル電圧(ここではV)を出力する。制御信号LEVEL_contがLowレベルになり、制御信号TfがLowレベルになると、波形切替え部A17dは、Tf_OUTを選択し、立ち下がり波形を出力する。
【0055】
本実施形態では、出力電圧レベルがVの例を説明したが、他の電圧レベルの出力波形も同じようにして生成することができる。
また本実施形態の回路構成では、それぞれの出力回路A15が出力レベル生成部A17bと立ち下がり参照波形生成部A17cとを備えている。よって、M画素分の出力回路A15のそれぞれが、電圧レベルとその出力期間、および立ち下がりタイミングを、独立で制御可能である。言い換えれば、画素毎(列配線毎)に、変調パルスの立ち下がりのタイミングを異ならせたり、電圧レベルを異ならせたりすることができる。
【0056】
(動作例4)
前述の動作例1〜3では、LEVEL_OUTが一定であったが、1水平期間(1H)内に、制御信号Levelの指示値を変更することで、LEVEL_OUTの電圧レベルを変更することもできる。
【0057】
図8(d)および図9(d)を参照して、動作例3とは異なる出力回路A15の動作タイミングの一例を説明する。図8(d)は出力回路A15の動作例4を示すタイミングチャートであり、図9(d)は論理表である。
【0058】
動作例3では制御信号LevelがHighレベルの期間はLEVEL_OUTが常にVレベルであったのに対し、動作例4では、LEVEL_OUTが途中でVレベルからVn−1レベルに切り替わっている。これにより、1水平期間(1H)内で出力レベルを変更することが可能となる。
【0059】
なお、ここでは出力レベルがVからVn−1に変化する例を説明したが、制御信号Levelを制御することで出力レベルを任意に変更可能である。また1H内で出力レベルを2段階以上変更することも可能である。さらに、ここでは第二の実施形態の回路構成で動作例4を実現したが、第一の実施形態の回路構成を用いて同様の変調パルス波形を生成
することも可能である。
【0060】
(出力段の変形例)
上記実施形態の出力段A18は、参照波形をアンプもしくはバッファで出力する構成を採用している。ここで、電源電圧と同じレベルの出力が必要な場合は、図11に示すように、電源電圧出力用のスイッチSH、SLを設けるとよい。これにより電源電圧VCC、VSSと同レベルの出力を安定して得ることができる。
【0061】
具体的には、立ち上がり部分はオペアンプA18aで立ち上げ、その後、スイッチSHをオンすることで電源電圧VCCを直接出力することができる。立ち下がり時は、スイッチSHをオフすると同時に、オペアンプA18aで電圧を下げきった後、スイッチSLをオンすることで電源電圧(基準電圧)VSSを直接出力することができる。
【0062】
[第三の実施形態]
本発明の第三の実施形態は、上記実施形態で述べた変調パルスを用いる画像表示装置において、画像のピーク輝度を可及的に大きくすることを目的とするものである。
図12(a)は、第一及び第二実施形態で用いた通常の走査時間制御を示しており、図12(b)は、本実施形態で用いる走査時間の可変制御を示している。図12(a)及び図12(b)において、上段は列配線に出力される変調パルスを示し、中段はM行目の行配線に出力される選択パルスを示し、下段はM+1行目の行配線に出力される選択パルスを示している。通常の走査時間制御では、変調パルスの時間長さによらず、全ての行配線に同一の走査時間が割り当てられる。これに対し、本実施形態では、走査時間の長さを行配線毎に可変にして、暗い行の走査時間を短くするとともに、明るい行に対して長い走査時間を割り当てることで、ピーク輝度の増大を図る。各行配線の走査時間の長さは、当該行配線に選択パルスを出力している間に列配線に出力される全ての(一行分の)変調パルスの時間長さの内の最大値(変調パルスの最大継続期間ともいう)、に応じて設定する。図12(b)の変調パルスが、最大継続期間に対応する変調パルスを示していると仮定する。この場合、M行よりもM+1行の最大継続期間のほうが長いため、M行の走査時間は短縮され、M+1行の走査時間が伸長される。そして伸長した走査時間に合わせて、画像データを大きくし、変調パルスのパルス幅も伸長する。他の行についても画像データを大きくした分変調パルスの振幅あるいはパルス幅を大きくする。これにより、ハッチングで示した分に対応した輝度の増加が得られる。
なお、走査時間の可変制御については特開2006−209152号公報に詳しく開示されており、同公報と基本的に同じ構成を本実施形態の画像表示装置にも適用可能であるため、ここでは回路構成の詳しい説明は省略する。
【0063】
本発明者らが検討を行った結果、本実施形態の変調パルスに対しては、以下に示す方法が最適であることがわかった。
図2(a)、図2(c)、図3(a)、図3(b)に示す変調パルスにおいて、低階調領域(画像データ1〜n+1)の期間は振幅変調を行っている期間であり、変調パルスの印加にほぼ一定の時間が必要である。高階調領域(画像データn+2〜)では、変調パルスのパルス幅(時間)が伸びていく。本実施形態で用いる変調パルスは、上記の様な特徴がある。
【0064】
まず、図13(a)及び図13(b)を用いて、通常の走査時間制御について説明を行う。なお、図13(a)及び図13(b)は、図2(a)の変調パルスを例示しているが、図2(a)以外の変調パルスを用いる場合も同様に考えればよい。
【0065】
図13(a)及び図13(b)において、上段の波形は変調パルスを示している。図13(a)には、低階調領域(画像データ1〜n+1)の変調パルス(B1、B2)を示す
。低階調領域(画像データ1〜n+1)では、変調パルスのパルス幅は(ほとんど)変化せず、振幅方向、つまり(1)の矢印方向に画像データの増加に伴い増加する。低階調領域の画像データの最大値(n+1)の変調パルスはB2であり、それを超える画像データでは高階調領域の変調パルスとなる。図13(b)には、高階調領域(画像データn+2〜)の変調パルス(B3、B4)を示す。高階調領域(画像データn+2〜)では、変調パルスは、時間方向、すなわち(2)の矢印方向に画像データの増加に伴い増加する。最大の画像データが入力されたときの変調パルスをB4で示す。
【0066】
図13(a)及び図13(b)において、中段の波形は通常の走査時間制御における選択パルスを示している。図13(a)には、低階調領域(画像データ1〜n+1)の選択パルス(B5)を示す。図13(b)には、高階調領域(画像データn+2〜)の選択パルス(B5)を示す。最も長い変調パルス(B4)であっても行配線が選択電位となっている期間に収まるように、変調パルス(B4)よりも長いパルス幅を持つ選択パルスが印加される。図中、「変調パルス時間」を変調パルスの下辺長に対応する時間として定義した。
【0067】
本実施形態の画像表示装置のように選択行配線を順次切り替える線順次駆動においては、行配線の電位変化が変調パルスの波形を乱すおそれがある。よって、選択パルスと変調パルスの立ち上がり・立ち下りのタイミングに一定の遅延(ずれ)を設けることが画質向上のために必要である。そのため、変調パルスの立ち上げ前と立ち下げ後に、「非駆動時間」とよばれる、行配線の電位を切り替えるための時間を確保することが望ましい。「非駆動時間」は、行配線が非選択電位から選択電位になり変調パルスを印加可能になるまでの時間(非駆動時間1)と、変調パルスが立ち下がってから行配線電位を非選択電位にするまでの時間(非駆動時間2)の合計である。前述したように、「非駆動時間」は変調パルスの波形形状が乱れないように余裕を見込んで決定するので、非駆動時間の長さは実際には図13(a)及び図13(b)で示したものとは多少異なる場合もある。
通常の走査時間制御では、最大の「変調パルス時間」+「非駆動時間」が1走査時間と等しくなるように、設計されている。言い換えれば、1走査時間(フレーム周波数や行数などから自動的に決定される)から非駆動時間を引いた時間が、最大の変調パルス時間となり、これによりピーク輝度が決まる。
【0068】
ところで、図13(a)に示した低階調領域では、「変調パルス時間」が短いため、「変調パルス時間」+「非駆動時間」は1走査時間に対して短く、発光に寄与しない「無駄な時間M」が生じている。高階調領域でも、図13(b)の変調パルス(B3)の場合、同様に「無駄な時間M」が生じることがわかる。パルス幅が最も長い変調パルス(B4)においては、「無駄な時間M」は発生しない。
【0069】
図13(a)及び図13(b)において、符号B6は、パラレル/シリアル変換回路A6が出力したシリアル化された一行分の画像データを変調回路A2に転送するのに要する時間(「データ転送時間」とよぶ)を示している。当然ではあるがこの「データ転送時間」(B6)は、画像データによらず一定の時間がかかる。パラレル/シリアル変換回路A6や変調回路A2を構成するIC等の回路のスピード、シリアル化の方式により、実際に転送する時間が決まる。もちろん、一行の走査時間中に一行分の全列のデータが転送できるように設計されている。
図13(a)及び図13(b)に示したように、「データ転送時間」(B6)は1走査時間より短く、1走査時間内で画像データを転送していない時間(「無駄な時間D」)が発生する。この「無駄な時間D」は画像データを転送していない時間であるので、1走査時間から「無駄な時間D」の時間を短くしても画像データの転送には影響がない。
【0070】
特開2006−209152号公報の走査時間可変制御では、これらの条件から、各行
毎に全ての列の最大の「変調パルス時間」(「変調信号最大継続期間」)に「非駆動時間」を加算した時間から「無駄な時間M」を計算する。そして、「無駄な時間M」と「無駄な時間D」のどちらか短いほうの時間(「無駄な時間」)に着目し、この「無駄な時間」を他の行の走査時間に割り振ることにより、明るい行の「変調パルス時間」を長くし、画像のピーク輝度を高める。言い換えれば、「変調信号最大継続期間+非駆動時間」と「データ転送時間」のどちらか長いほうを全行について合計し、単位フレーム時間に対する余りの時間を求める。そして、その余りの時間(「無駄な時間」の単位フレームでの合計)を各行の走査時間に割り振り、「変調パルス時間」を長くすることによって、画像のピーク輝度を高める。
【0071】
本発明者らが検討を重ねた結果、このような走査時間可変制御において、低階調領域(画像データ1〜n+1)の「変調パルス時間」に「非駆動時間」を加算した時間を「データ転送時間」以下の時間に設定すると画像のピーク輝度を大きくする効果がより得られることがわかった。特に、低階調領域(画像データ1〜n+1)の「変調パルス時間」に「非駆動時間」を加算した時間と「データ転送時間」を一致させることによって、画像のピーク輝度を最も大きくできることがわかった。その理由について、以下説明する。
【0072】
走査時間の最小値は、「変調信号最大継続期間+非駆動時間」または、「データ転送時間」のどちらか長い時間により決定される。通常のパルス幅変調では、画像データが小さく変調パルスのパルス幅が短い場合(暗い行の場合)、「変調信号最大継続期間」が短いので「データ転送時間」により走査時間が決定される。逆に、「変調信号最大継続期間+非駆動時間」が「データ転送時間」より長くなるような明るい行では、行配線の走査時間の割り振りは「変調信号最大継続期間+非駆動時間」で決まる走査時間により決定される。当然ではあるが、余りの時間が少なくなるほど画像のピーク輝度を大きくする効果は小さくなる。
本実施形態の変調パルスの場合、低階調領域では振幅変調を行うため、画像データが1階調目であっても、n+1階調目と同じ「変調パルス時間」が必要となる。このため、暗い行であっても、全ての列の画像データが0階調でない限り、「変調信号最大継続期間」が画像データn+1に相当する長い「変調パルス時間」となってしまう。低階調領域(画像データ1〜n+1)の「変調パルス時間+非駆動時間」が「データ転送時間」より長い場合、0階調目は「データ転送時間」が走査時間を決めるが、1階調目からは「変調パルス時間+非駆動時間」が走査時間を決定することになる。すなわち、1階調目から走査時間の余り時間が少なくなるため、画像のピーク輝度を大きくする効果が低減してしまう。
【0073】
そこで、本実施形態では、データ転送時間をT1、非駆動時間をT2としたときに、振幅変調を行う低階調領域(画像データ1〜n+1)の「変調パルス時間」を、「T1−T2以下」となるように、設定する。これにより、余り時間を最大限に確保できるため、明るい行(高階調領域の画像データを含む行)に対する走査時間の割り当てを増やすことができ、画像のピーク輝度を最も大きくすることができる。特に、「変調パルス時間」が「T1−T2」と同じになるように、低階調領域(画像データ1〜n+1)の「変調パルス時間」を設定することが好ましい。これにより、走査時間の無駄を最小にでき、走査時間の割り当てを最も効率よく行うことができる。
以上説明したように、本実施形態の走査時間可変制御によれば、低階調領域で台形状パルスの波高値を大きくし、その後台形状パルスのパルス幅を長くしていくという変調方式において、ピーク輝度の大きな良好な画像を表示することが可能となる。
【符号の説明】
【0074】
A1 マルチ電子源(表示パネル)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の表示素子が複数の列配線と複数の行配線によりマトリクス配置された表示パネルを備える画像表示装置の制御方法であって、
駆動対象の行配線に選択電位を出力するステップと、
画像データの値に基づき変調パルスを生成し、前記変調パルスを列配線に出力するステップとを備え、
画像データの値Iの最小値をImin、最大値をImaxとし、Imin<I1<I2≦Imaxとしたときに、
前記変調パルスを生成し出力するステップは、
Imin≦I≦I1の階調領域では、前記変調パルスとして台形状パルスを生成し、値Iが大きくなるほど前記台形状パルスの波高値を大きくし、
I1<I≦I2の階調領域では、値Iが大きくなるほど前記台形状パルスのパルス幅を長くする
ことを特徴とする画像表示装置の制御方法。
【請求項2】
前記変調パルスを生成し出力するステップは、
Imin≦I≦I1の階調領域では、前記台形状パルスの下辺長または上辺長を一定に保ちつつ、値Iが大きくなるほど前記台形状パルスの波高値を大きくすることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置の制御方法。
【請求項3】
前記変調パルスを生成し出力するステップは、
I1<I≦I2の階調領域では、前記台形状パルスの波高値を一定に保ちつつ、値Iが大きくなるほど前記台形状パルスのパルス幅を長くすることを特徴とする請求項1または2に記載の画像表示装置の制御方法。
【請求項4】
前記変調パルスを生成し出力するステップにおいて、
スロープ状に立ち上がる第1波形と、波高値を規定する第2波形と、スロープ状に立ち下がる第3波形とを組み合わせることにより、前記台形状パルスが生成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の画像表示装置の制御方法。
【請求項5】
前記第1波形の傾きが画像データの全ての値について同一であることを特徴とする請求項4に記載の画像表示装置の制御方法。
【請求項6】
前記第3波形の傾きが画像データの全ての値について同一であることを特徴とする請求項4または5に記載の画像表示装置の制御方法。
【請求項7】
I2<I3≦Imaxとしたときに、
前記変調パルスを生成し出力するステップは、
I2<I≦I3の階調領域では、前記変調パルスとして、波高値h1までスロープ状に立ち上がり、時間t1の期間、波高値h1を維持し、波高値h2までスロープ状に立ち下がり、時間t2の期間、波高値h2を維持し、スロープ状に立ち下がる略台形状パルスを生成し、
値Iが大きくなるほど前記略台形状パルスの時間t2を長くすることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の画像表示装置の制御方法。
【請求項8】
I3<I4≦Imaxとしたときに、
前記変調パルスを生成し出力するステップは、
I3<I≦I4の階調領域では、前記変調パルスとして、波高値h1までスロープ状に立ち上がり、時間t1の期間、波高値h1を維持し、波高値h2までスロープ状に立ち下
がり、時間t2の期間、波高値h2を維持し、波高値h3までスロープ状に立ち下がり、時間t3の期間、波高値h3を維持し、スロープ状に立ち下がる略台形状パルスを生成し、
値Iが大きくなるほど前記略台形状パルスの時間t3を長くすることを特徴とする請求項7に記載の画像表示装置の制御方法。
【請求項9】
I2<I5≦Imaxとしたときに、
前記変調パルスを生成し出力するステップは、
I2<I≦I5の階調領域では、前記変調パルスとして、I=I2に対応する台形状パルスよりも大きい第2の台形状パルスを生成し、値Iが大きくなるほど前記第2の台形状パルスの波高値を大きくすることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の画像表示装置の制御方法。
【請求項10】
I5<I6≦Imaxとしたときに、
前記変調パルスを生成し出力するステップは、
I5<I≦I6の階調領域では、値Iが大きくなるほど前記第2の台形状パルスのパルス幅を長くすることを特徴とする請求項9に記載の画像表示装置の制御方法。
【請求項11】
選択電位が出力される期間である走査時間の長さが、行配線毎に可変であり、
各行配線の走査時間の長さは、当該行配線に選択電位を出力している間に前記複数の列配線に出力される全ての変調パルスの時間長さの内の最大値、に応じて設定されることを特徴とする請求項1〜10のうちいずれか1項に記載の画像表示装置の制御方法。
【請求項12】
画像データに基づき変調パルスを生成する変調回路に対して、一行分の画像データを転送するのに要する時間を、T1、
行配線の電位を切り替えるために、変調パルスの立ち上げ前及び立ち下げ後に少なくとも確保すべき時間の合計を、T2、
としたときに、
Imin≦I≦I1の階調領域における変調パルスの長さが、T1−T2以下に設定されていることを特徴とする請求項11に記載の画像表示装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−18012(P2011−18012A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9676(P2010−9676)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】