説明

画像表示装置及び画像表示方法

【課題】触感で物体の質感を表現するとともに、映像も同時に表現できるようにする。
【解決手段】画像を表示する表示部200と、画像を構成する各画素Pのサイズより小さなサイズで構成され、各画素Pに対応して前記表示部200の表示面に配置された振動子Peと、振動子Peを駆動する駆動部とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置及び画像表示方法に関し、特に、画像とともに振動を提示する画像表示装置及び画像表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、映像を表示する表示装置においては、入力される映像信号を電光変換することで、映像における輝度変化を表現しており、これにより、カメラ等の撮像装置で撮像された物体を画面上に映し出している。しかしこの手法は、物体の質感をリアルに表現するという観点では、物足りなさを感じさせるものであった。
【0003】
一方、近年では、物体が有する凸凹を可動素子の伸縮方向の高さで表現可能な「触覚ディスプレイ」と呼ばれる装置の研究が進められている。物体の質感のうちの、物体の凸凹部分や形状であれば、このディスプレイを用いることで再現することができる。
【0004】
例えば特許文献1には、平面状の操作面で縦横に配列された触覚ピンの突出状態の結果により、触覚ピンで表す立体形状を触覚で認識することができる触覚ディスプレイ装置について記載されている。
【特許文献1】特開2006−47538号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したような触覚ディスプレイ装置では、可動素子の大きさが例えば1〜2mm程度と大きいことから、解像度も必然的に下がってしまうことになる。さらに、可動素子の応答速度も、映像の動きに十分対応できるものとは言い難かった。また、可動素子では映像の色や輝度変化を表現することができないため、物体の形状および質感はある程度表現できても、映像の詳細については表現することができないという問題があった。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、触感で物体の質感を表現するとともに、映像も同時に表現できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、画像を表示する表示部と、画像を構成する各画素のサイズより小さなサイズで構成され、各画素に対応して表示部の表示面に配置された振動子と、振動子を駆動する駆動部とを備えるようにしたものである。
【0008】
このようにしたことで、表示部において画像が表示されるとともに、画像を構成する各画素に対応して設けられた振動子が振動するようになる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、表示部において画像が表示されるとともに、画像を構成する各画素に対応して設けられた振動子が振動するため、視聴者は視覚と触覚の両方によって物体を認識できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態を、添付図面を参照して説明する。本実施の形態は、本発明の画像表示装置を、プロジェクタからの投射光をスクリーンに映し出す構成に適用したものである。図1は、本例によるシステムの構成例を示す図である。
【0011】
図1に示したシステムは、リアプロジェクション方式のプロジェクタとして構成した例である。即ち、プロジェクタ100と、プロジェクタ100による投射光を映すスクリーン200とが、図示しない筺体に一体に収納させて構成される。スクリーン200の背面に像光が投射されて、表面側に表示された画像をユーザが見る構成である。
【0012】
そしてスクリーン200には、画面の右側に拡大図として示したように、振動素子PeとダイオードD1、ダイオードD2とを埋め込んである。振動素子Peは、電圧が印加されることにより超音波帯域の振動を起こす圧電素子で構成してあり、本例ではピエゾ素子を用いている。振動素子Peは、プロジェクタ100から出射される映像を構成する各画素Pに、1対1で対応させて設けてある。
【0013】
本例では、振動素子Peのサイズは、画素Pよりも十分に小さいサイズで構成して、スクリーン200上での表示を邪魔しない構成としてある。振動素子Peの配置位置は、スクリーン200の表面と裏面のいずれの位置でもよい。なお、スクリーン200上の画素Pは、プロジェクタ100側の画像投射処理能力で決まるものであり、スクリーン200上に画素を構成する素子が存在するのではない。
【0014】
振動素子Peは圧電素子で構成してあるため、振動素子Peに電圧が印加するために、水平データ線Ldと垂直アドレス線La、ダイオードD1、ダイオードD2とをスクリーン200の表面(又は裏面)に実装してある。これらの詳細については後述する。
【0015】
図2は、図1に示したスクリーン200を側面から見た図である。図2に示すように、振動素子Peはスクリーン200の表面上に、画素Pに対応した間隔で取り付けてあり、表示される画像の画素数に対応した数だけ、振動素子Peを配置してある。但し、画像の中央付近の画素に対応した位置にだけ振動素子を配置して、画像の周辺部の画素については振動素子を省略してもよい。図2においては、説明を分かりやすくするため振動素子Peのサイズを大きくしてあるが、実際には、上述したように、画素Pの1つのサイズよりも小さなサイズで構成されているものとする。
【0016】
また本例では、画素Pに対応して複数配置した振動素子Peを振動させる数(振動時間)を、スクリーン200に投射される画像の特徴量に基づいて変更するようにしてある。具体的には、表示される画像中で絵柄に凸凹がある箇所では振動素子Peを振動させ、平坦な箇所では振動素子Peを振動させない制御を行う。この制御についての説明図を図3に示してある。図3において、上段は各振動素子Peにかけられる電圧の変化を時間軸で示したものであり、下段は、振動素子Peにおける振動の状態を示したものである。
【0017】
図3によれば、画像において絵柄に凸凹があると判断された箇所(ディテール部分)では、振動素子PeにEvoltの電圧が印加され、平坦であると判断された箇所(平坦部分)では、電圧は印加されない。このような制御が行われることにより、画像の凸凹部分では振動素子Peが振動し、平坦な部分では振動素子Peは振動しないようになる。
【0018】
振動素子Peの振動数は、ピエゾ素子の物理サイズにより決まるものである。従って、本例のようにピエゾ素子のサイズを揃えている場合において、ピエゾ素子の配置位置によって振動数を変えたい場合には、各ピエゾ素子に電圧が印加される時間を調整するようにすればよい。つまり、画像における凸凹が細かい箇所ではEvoltのかかる時間を長くし、凸凹が粗い箇所ではEvoltのかかる時間を短くすることで、振動素子Peのそれぞれにおける振動数を、画像の質感に対応して変化させることができる。振動数の制御の詳細については後述する。
【0019】
次に、図4を参照して、本実施の形態におけるシステムの内部構成例について説明する。まず、プロジェクタ100の構成から説明すると、プロジェクタ100は、1フレーム分の映像信号を蓄積する画像メモリ101と、画像メモリ101に対する読み書きの制御を、映像同期信号に同期して行うメモリ制御部102とを有する。
【0020】
またプロジェクタ100は、映像同期信号に基づいて、駆動すべき垂直アドレス線を選択する垂直駆動部103を備える。さらに、メモリ制御部102の制御に基づいて画像メモリ101から出力された1ライン分の映像信号を、順次アナログの映像信号に変換して、水平データ線のそれぞれに出力する水平駆動部104を備える。垂直アドレス線と水平データ線と、それらによって制御される画素Pとは、画像表示パネル105上にマトリクス状に配置されている。垂直駆動部103と水平駆動部104の詳細の構成については、後述する。
【0021】
スクリーン200は、制御部210と、振動時間信号用メモリ205と、メモリ制御部206と、垂直駆動部207と、水平駆動部208と、振動素子パネル209とを備える。制御部210は、振動動子Peの振動時間を決定するためのパラメータを算出して、それらに基づいて、振動時間の長さ情報を記した振動時間信号を生成し、生成した振動時間信号を振動時間信号用メモリ205に出力する。制御部210の詳細については後述する。
【0022】
振動時間信号用メモリ205は、制御部210で生成された振動時間信号を蓄積する。メモリ制御部206は、振動時間信号用メモリ205に対する読み書きの制御を、映像同期信号に同期して行う。垂直駆動部207は、映像同期信号に基づいて、駆動すべき垂直アドレス線La(図1参照)を選択する。水平駆動部208は、メモリ制御部206の制御に基づいて振動時間信号用メモリ205から出力された1ライン分の振動時間信号を、PWM(Pulse Width Modulation)信号に変換して、水平データ線Ld(図1参照)のそれぞれに出力する。垂直アドレス線Laと水平データ線Ldと、それらによって制御される振動素子Peとは、振動素子パネル209上にマトリクス状に配置されている。なお、本例においては、振動素子パネル209における各振動素子Peの配置位置は、画像表示パネル105での各画素Pの位置と1対1で対応させてある。
【0023】
次に、制御部210の構成の詳細について説明する。制御部210は、隣接画素差分算出部201と、絶対値和平均値算出部202と、極性変化回数計数部203と、振動時間決定LUT(Look Up Table)204とを含む。隣接画素差分算出部201は、例えば画像の水平方向のN(Nは自然数)画素等の、注目画素を中心とした所定の領域における、隣接画素間の差分値を算出する。なお、本例では画像の水平方向において画素値の差分を求めるようにしているが、垂直方向で求めるようにしてもよく、また、水平方向と垂直方向との両方で求めるようにしてもよい。
【0024】
絶対値和平均値算出部202は、隣接画素差分算出部201で算出された、所定の領域内の隣接画素間差分値の絶対値を加算して総和を出し、その値を画素Pの数で除算することにより隣接画素差分の絶対値和の平均値を算出する。極性変化回数計数部203は、画像の水平方向における画素値の極性の変化を検出し、所定の領域内における極性変化の回数を計数する。
【0025】
振動時間決定LUT204は、隣接画素差分の絶対値和の平均値と、極性変化回数と、振動動子Peを振動させる振動時間との対応付けを記したテーブルである。このテーブルにおいて、隣接画素差分の絶対値和の平均値と、極性変化回数と、振動素子Peを振動させる振動時間との値が定まることで、振動時間が一意に求まる。
【0026】
図5に、隣接画素差分算出部201と、絶対値和平均値算出部202と、極性変化回数計数部203とによる各種パラメータの算出例を示してある。図5の上部に示したグラフは、画像の水平方向における輝度値の変化を表したものであり、横軸は水平方向、縦軸は輝度値(画素値)を示す。グラフ中の丸印は画素を表したものであり、図5に示した例では、注目画素Pdを中心とした、画素P1〜画素P8の8個の画素Pからなる領域において、各種パラメータを算出している。
【0027】
図5の下部に示した表は、上段に、各画素Pにおける隣接画素との差分値の絶対値を示してあり、下段には、各画素P間での極性の変化を「+(プラス)」と「−(マイナス)」で示してある。隣接画素差分算出部201は、表の上段に記載されているように、所定の領域における各画素Pにおける隣接画素との差分値の絶対値を算出し、差分値の総和を画素Pの数で除算することにより、隣接画素差分の絶対値和の平均値を算出する。図5の表に示した例においては、各画素Pにおける隣接差分値の絶対値は、水平方向に3,1,4,0,0,5,1,1であるため、隣接差分値の絶対値和の平均値は、(3+1+4+0+0+5+1+1)/8=1.875≒2となる。
【0028】
また、画像の水平方向における画素値の極性の変化は、図5においては、画素P1から画素P2においては、画素値が上がっているため極性は+となり、画素P2から画素P3においては、画素値が下がっているため極性は−となる。画素P3と画素P4とは画素値が同じであるため、極性の変化はなしとなる。また、画素P5から画素P8にかけては、画素数が単調増加しているため、極性はすべて+となる。従って、この区間における極性の変化はなしとなる。従って、この領域における極性の変化回数は2回ということになる。極性変化回数計数部203は、このような処理を行うことにより、極性変化の回数を計数する。
【0029】
つまり、所定の領域内における極性の変化回数が多い場合には、その領域における画像の凸凹は、きめ細かいものであると判断できる。そして、極性の変化回数が少ない場合には、その領域における画像の凸凹は粗いものであるか、または、変化のある画像であってもその変化が単調であるものと判断できる。
【0030】
図6は、振動時間決定LUT204の構成例を示したものである。図6に示した振動時間決定LUT204は、横軸に隣接画素差分の絶対値和の平均値をとってあり、縦軸に極性変化回数をとってある。横軸、縦軸のいずれにおいても、原点から離れるに従って値が大きくなるようにしている。振動時間を示す数値は、最小を0.0、最大を1.0として実際の数値を正規化したものを用いている。振動時間の正規化値も、原点から右上の方向に進むにつれて値が大きくなるように、LUT上に配置させてある。
【0031】
すなわち、所定の領域における隣接画素差分の絶対値和の平均値が大きいほど、また、極性変化の回数が多いほど、振動素子Peに電圧が印加される時間としての振動時間も長くなる。なお、振動時間決定LUT204内の正規化された振動時間(以下、正規化振動時間とも称する)は、任意の係数を乗算する等の処理を行うことにより調整が可能である。
【0032】
図7に、実際の画像と、制御部210の処理によって求められた正規化振動時間との対応例を示してある。図7(a)には実際の画像を示してあり、(b)には、画像の特徴量に応じて正規化振動時間が割り当てられた状態を示している。図7(a)の左上方にあるハンカチには柄があるため、隣接画素間の差分値は大きくなり、画素間における画素値の極性の変化回数も多くなる。従って、図7(b)に示したように、その領域においては0.9という大きな正規化振動時間が割り当てられている。反対に、机の部分など、輝度値の変化がなくのっぺりとした箇所においては、0.0や0.1のように、小さな正規化振動時間が割り当てられていることがわかる。
【0033】
次に、図8と図9を参照して、画像表示パネル105と振動素子パネル209の駆動部分の構成の詳細について説明する。図8は、画像表示パネル105用の垂直駆動部103及び水平駆動部104の内部構成例を示す図であり、図9は、振動素子パネル209用の垂直駆動部207及び水平駆動部208の内部構成例を示す図である。
【0034】
図8に示した垂直駆動部103は、垂直アドレス・カウンタ103aと、垂直アドレス・デコーダ103bとで構成される。垂直アドレス・カウンタ103aは、後述する同期分離部104aから供給される垂直同期パルスと水平同期パルスに同期して垂直アドレス線Lap1〜Lapmのカウントを行い、カウントの結果求まった垂直方向のアドレスを、垂直アドレス・デコーダ103bに出力する。垂直アドレス・デコーダ103bは、垂直アドレス・カウンタ103aから出力された垂直方向のアドレスによって定まる垂直アドレス線Lapi(iは自然数)に、Low(ロー)信号を供給する。
【0035】
水平駆動部104は、映像同期信号から垂直同期パルスと水平同期パルスを分離する同期分離部104aと、水平同期パルスに基づいて各種制御信号を生成する水平制御信号生成部104bと、水平シフト・レジスタ104cとを備える。また、水平シフト・レジスタ104cから出力される映像信号をアナログの映像信号に変換するデジタル・アナログ変換部104d1〜104dnを有する。
【0036】
水平制御信号生成部104bは、水平同期パルスと画素クロックに同期してクリア信号Csとイネーブル信号Esを生成し、水平シフト・レジスタ104cに出力する。水平シフト・レジスタ104cは、画像メモリ101(図4参照)から出力された水平ラインの1ライン分の映像信号を順次蓄積する。そして、クリア信号Csが入力されるタイミングで、映像信号をデジタル・アナログ変換部104d1〜104dnに対して順次出力する。デジタル・アナログ変換部104d1〜104dnは、水平シフト・レジスタ104cから供給される映像信号をアナログの映像信号に変換して、水平データ線Ldp1〜Ldpnのそれぞれに出力する。
【0037】
図9に示した振動素子パネル209用の垂直駆動部207は、垂直アドレス・カウンタ207aと、垂直アドレス・デコーダ207bとで構成される。垂直アドレス・カウンタ207aは、後述する同期分離部208aから供給される垂直同期パルスと水平同期パルスに同期して垂直アドレス線La1〜Lamのカウントを行い、カウントの結果求まった垂直方向のアドレスを、垂直アドレス・デコーダ207bに出力する。垂直アドレス・デコーダ207bは、垂直アドレス・カウンタ207aから出力された垂直方向のアドレスによって定まる垂直アドレス線Laiに、Low信号を供給する。
【0038】
水平駆動部208は、同期分離部208aと、水平制御信号生成部208b、水平シフト・レジスタ208c、振動時間変換部208dとを備える。
【0039】
同期分離部208aは、映像同期信号から垂直同期パルスと水平同期パルスを分離する。 水平制御信号生成部208bは、水平同期パルスに同期してクリア信号Csとイネーブル信号Esを生成し、水平シフト・レジスタ208cに出力する。水平シフト・レジスタ208cは、振動時間信号用メモリ205(図4参照)から出力された水平ラインの1ライン分の振動時間信号を順次蓄積する。そして、クリア信号Csが入力されるタイミングで、振動時間信号を振動時間変換部208dに順次出力する。振動時間変換部208dは、水平シフト・レジスタ208cから出力される振動時間信号をPWM信号に変換し、PWM信号を水平データ線Ld1〜Ldnのそれぞれに順次供給する。
【0040】
次に、図10と図11のタイミングチャートを参照して、振動素子Peを駆動する垂直駆動部207と水平駆動部208の各部における処理の例について説明する。図10は、垂直駆動部207における動作を示すタイミングチャートであり、図11は、水平駆動部208における動作を示すタイミングチャートである。
【0041】
図10において、水平同期パルスを(a)として示してあり、垂直同期パルスを、(b)に示してある。水平同期パルスは映像信号の1水平ライン毎に発するパルスであり、垂直同期パルスは映像信号の1フレーム毎に発するパルスである。図10の(c)〜(h)には、垂直アドレス線La1からLamまでを示してあり、垂直アドレス線La5〜Lam−2までは図示を省略している。
【0042】
図10には、垂直同期パルスに同期して生成されたLow信号が、垂直アドレス線La1〜Lamのそれぞれに対して、順次供給される様子が示されている。Low信号の期間は水平ラインの時間と同じであり、水平同期パルスに同期して、垂直方向に順次1つ1つの水平ラインが指定されていることになる。
【0043】
図11は、水平駆動部208での動作の例を示したものであり、(a)は画素クロック、(b)は水平同期パルス、(c)はクリア信号、(d)はイネーブル信号、(e)は振動時間信号を示している。また、(f)から(k)までは、水平データ線Ld1からLdnまでを示している。なお、図11においては、水平データ線Ld5からLdn−2までの図示を省略している。
【0044】
図11において、水平同期パルスに同期して生成されたクリア信号Csとイネーブル信号Esに基づいて水平シフト・レジスタ208cが動作し、画素Pの単位で設定された振動時間信号が、順次水平シフト・レジスタ208cに蓄積される。そして、水平シフト・レジスタ208cに蓄積された振動時間信号は、クリア信号Csが出力されるタイミングで、水平データ線Ld1〜Ldnに同時に出力される。そして、水平データ線Ld1〜Ldnのそれぞれにおいて、長さの異なるHigh(ハイ)信号が供給される。
【0045】
水平データ線Ldを介してHigh信号の供給を受けている間は、振動素子Peが振動し、High信号が供給されていない間は、振動素子Peは振動しない。
【0046】
水平データ線Ld1〜Ldnのそれぞれにおいて、High信号の長さが異なっているのは、振動時間信号によって指定された時間の長さが、それぞれの水平データ線Ld1〜Ldn毎に異なるためである。
【0047】
つまり、垂直アドレス線LaiにかけられるLow信号の供給時間と、水平データ線Ldj(jは自然数)にかけられるHigh信号の供給時間の長さによって、垂直方向のi番目,かつ水平方向のj番目に配置された振動素子Peへの電圧印加時間が決まる。
【0048】
図12は、本実施の形態における画像表示装置の処理の例を示すフローチャートである。まず、制御部210の隣接画素差分算出部201で、注目画素を中心とした所定の領域における隣接画素との差分が算出され(ステップS1)、絶対値和平均値算出部202で、隣接画素との差分の絶対値和の平均値が算出される(ステップS2)。次に、極性変化回数計数部203で、所定の領域における各画素間での極性の変化回数が算出され(ステップS3)、振動時間決定LUT204において、絶対値和の平均値と極性変化回数とによって求まる振動時間が抽出される(ステップS4)。
【0049】
そして、振動時間に基づいてPWM信号が生成され(ステップS5)、そのPWM信号が、垂直駆動部207と水平駆動部208との制御に基づいて特定の振動素子Peに印加されることにより、振動素子Peが駆動され、振動する(ステップS6)。
【0050】
上述した実施の形態によれば、振動素子Peは画素Pに1対1に対応して設けられるため、表示画面上では、映像が表示されるとともに振動素子Peによる振動も起こるようになる。このため視聴者は、物体を映像で視覚的に認識するのと同時に、触覚的にも物体を把握することができるようになる。
【0051】
この場合、振動素子Peの大きさを画素Pの大きさより十分小さいサイズで構成し、かつ画素Pのそれぞれに対応させて配置したため、振動によって物体が提示される提示面においても、画像が表示される画面での解像度と同等の解像度を確保することができる。
【0052】
またこの場合、振動素子Peの振動時間を規定する、振動素子Peへの電圧の印加時間が、画素P間の画素値の変化量に基づいて設定されるため、振動素子Peでの振動が、画像として表示される内容と対応するようになる。
【0053】
また、垂直アドレス線Laと水平データ線Ldとによって、振動素子Peを個別にアドレッシングできるようにしたため、振動素子Peと対応する画素Pでの表示内容に応じて、各振動素子Peにそれぞれ異なる振動をさせることができる。
【0054】
また本発明の一実施の形態によれば、振動素子Peへの電圧印加時間は、予め設定しておいた振動時間決定LUT204を参照することにより求まる。この振動時間決定LUT204では、画素間の画素値の変化が大きいほど、また極性変化の回数が多いほど、振動時間が長くなるような設定をしている。このため、画像中で凸凹のある部分においては振動素子Peが振動し、絵柄が平坦な部分では振動素子Peは振動しないようになる。
【0055】
また、振動時間決定LUT204では、画素値の変化量の大きさと、画素値の変化時の極性変化回数の多さに応じて、個別に振動時間を設定してある。これにより、画像中で凸凹がきめ細やかな部分では振動素子Peの振動が大きくなり、凸凹が粗い部分では、振動素子Peの振動は小さくなる。従って、物体の質感を、振動によって詳細に表現することができるようになる。
【0056】
なお、上述した実施の形態では、リアプロジェクション方式のプロジェクタ100を用いた例を挙げたが、システムの構成はこれに限定されるものではない。例えば、フロントプロジェクション方式のプロジェクタとスクリーンとで構成されるシステムに適用してもよい。または、LCD(Liquid Crystal Display)やPDP(Plasma Display Panel)などの、パネルそのものが表示を行うタイプのディスプレイに適用してもよい。
【0057】
図13は、例えば液晶パネルで構成されるLCDに適用した場合の、画素Pと振動素子Peとの配置例を示した図である。図13には、画素P駆動用の垂直アドレス線Lap′と水平データ線Ldp′の交点に、トランジスタ等で構成された画素駆動部Trが配置されている様子が示されている。また、画素Pに対応して設けられた振動素子Peに対しても、ダイオードD1を介して垂直アドレス線Laが、ダイオードD2を介して水平データ線Ldが接続されている状態が示されている。
【0058】
このように、画素Pの1つ1つに対応して振動素子Peを設けることで、LCD等によるディスプレイにおいても、画像と振動とを同時に提示することができるようになる。
【0059】
なお、上述した実施の形態では、画素Pと振動素子Peとを1対1で対応させた例を挙げたが、2対1や3対1など、他の比率で対応させるようにしてもよい。即ち、所定数の画素Pごとに1つの振動素子Peを配置して、振動素子Peの数を画素数Pから間引いたものとしてもよい。
【0060】
また、上述した実施の形態では、振動素子Peへの電圧の印加時間によって、振動素子Peでの振動時間を制御する構成としたが、PWM信号のパルス幅の調整による制御を行うようにしてもよい。
【0061】
また、上述した実施の形態では、振動素子Peをピエゾ素子で構成した例を挙げたが、圧電素子であれば他の素子を用いるようにしてもよい。
【0062】
なお、ここまで説明した実施の形態では、振動素子Peによる振動によって、画面上に表示させた画像の質感を再現する場合を例に挙げたが、これに限定されるものではない。例えば、疑似カラー表示することにより表現される内容と、振動とを対応させるようにしてもよい。自然画で表現される領域での温度分布を疑似カラー表示する場合などは、一番温度の高い部分を示す色に対応させて、振動素子Peを振動させるようにする等の用法が考えられる。また、絵柄は平坦であるが、階調が穏やかに変化しているグラデーションのある局面などを疑似カラー表示する場合に、階調の境目部分に配置された振動素子Peを振動させることで、傾きを振動で表現することができる。
【0063】
もしくは、画像におけるエッジ部分を抽出し、エッジとして抽出された箇所に配置された振動素子Peのみを振動させることにより、触覚による物体の形状の認識を容易とする構成等に適用してもよい。
【0064】
または、画像中の物体を、パターンマッチング等の手法を用いてトラッキングしたり、物体そのものを抽出する処理を行う場合に、トラッキングの結果の物体の動きや、物体の位置の情報を振動により認識させる構成に適用してもよい。
【0065】
さらに、医用画像の動画像において、心臓部分における鼓動を振動で再現するようなアプリケーションに適用してもよい。この場合は、映像中から、心臓部分の特徴量として動きベクトルの代表値や平均値を算出したり、または面積などを算出する。そして、算出された値と比例する振動を振動素子Peに行わせるようにすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施の形態によるシステムの構成例を示す概略図である。
【図2】本発明の一実施の形態によるスクリーンの構成例を示す側面図である。
【図3】本発明の一実施の形態による振動素子の駆動例を示す説明図である。
【図4】本発明の一実施の形態によるシステムの内部構成例を示すブロック図である。
【図5】本発明の一実施の形態による振動子の振動時間を決定する各パラメータの算出例を示す説明図である。
【図6】本発明の一実施の形態による振動時間決定LUTの構成例を示す説明図である。
【図7】本発明の一実施の形態による画像と正規化振動時間との対応例を示す説明図であり、(a)は画像を示し、(b)は画像に対応して設定された正規化振動時間を示す。
【図8】本発明の一実施の形態による画像表示パネル用の垂直駆動部及び水平駆動部の内部構成例を示すブロック図である。
【図9】本発明の一実施の形態による振動素子パネル用の垂直駆動部及び水平駆動部の内部構成例を示すブロック図である。
【図10】本発明の一実施の形態による振動素子パネル用の垂直駆動部の動作の例を示すタイミングチャートである。
【図11】本発明の一実施の形態による振動素子パネル用の水平駆動部の動作の例を示すタイミングチャートである。
【図12】本発明の一実施の形態による画像表示装置における処理の例を示すフローチャートである。
【図13】本発明の一実施の形態の他の例による画素と振動素子との対応例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0067】
100…プロジェクタ、101…画像メモリ、102…メモリ制御部、103…垂直駆動部、104…水平駆動部、105…画像表示パネル、200…スクリーン、201…隣接画素差分算出部、202…絶対値和平均値算出部、203…極性変化回数計数部、204…振動時間決定LUT、205…振動時間信号用メモリ、206…メモリ制御部、207…垂直駆動部、208…水平駆動部、209…振動素子パネル、210…制御部、P,P1〜P8…画素、Pe…振動素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示する表示部と、
前記画像を構成する各画素のサイズより小さなサイズで構成され、前記各画素に対応して前記表示部の表示面に配置された振動子と、
前記振動子を駆動する駆動部とを備えた
画像表示装置。
【請求項2】
前記振動子は、電圧が印加されることにより振動する圧電素子である
請求項1記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記振動子は、前記振動子の配置位置に対応してマトリクス状に設けられた電極によって、個別に制御される
請求項2記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記駆動部は、前記表示部に表示される画像から検出した特徴量に応じて、前記それぞれの振動子を振動させる
請求項3記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記画像の特徴量は、注目画素を中心とした所定の領域における画素値の変化量である
請求項4記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記画像の特徴量を抽出する制御部を備え、
前記制御部は、注目画素を中心とした所定の範囲における隣接画素間の差分値を算出する隣接画素差分算出部と、
前記隣接画素差分算出部で算出された隣接画素差分の絶対値和の平均値を算出する絶対値和平均算出部と、
前記所定の範囲における隣接画素間の極性の変化回数を求める極性変化回数計数部と、
前記隣接画素差分の絶対値和の平均値と、前記極性の変化回数と、前記振動子の振動時間との対応を記したテーブルとを備える
請求項5記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記テーブルは、前記隣接画素差分の絶対値和の平均値と前記極性の変化回数の値が大きくなるほど、前記振動子の振動時間が長くなるように設定されている
請求項6記載の画像表示装置。
【請求項8】
前記画像の特徴量として抽出する情報は、画像の色である
請求項4記載の画像表示装置。
【請求項9】
前記画像の特徴量として抽出する情報は、画像のエッジ部分である
請求項4記載の画像表示装置。
【請求項10】
前記画像の特徴量として抽出する情報は、動画像における動きベクトルである
請求項4記載の画像表示装置。
【請求項11】
前記画像の特徴量として抽出する情報は、画像に対して行ったパターンマッチング処理の結果である
請求項4記載の画像表示装置。
【請求項12】
画像を表示するステップと、
前記画像を構成する各画素のサイズより小さなサイズで構成され、前記各画素に対応して前記表示部の表示面に配置された振動子を、前記画像から検出した特徴量に応じた駆動量で駆動するステップとを含む
画像表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−258309(P2009−258309A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−106133(P2008−106133)
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】