説明

画像表示装置

【課題】色調、コントラスト等に悪影響を与えることなく、画像の全体の輝度を変化させる。
【解決手段】カソード電極15の各々に接続されるエミッタ16と、ゲート電極13と、アノード電極3と、トランジスタTr1と、トランジスタTr2と、コンデンサ12とを備えるようにし、各々のコンデンサ12の電圧を変化させて画像の表示を行うとともにゲート電極13に一定の電圧を加え、印加される時比率Duを変化するようにして画面全体の輝度を調整できる画像表示装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置に関し、特に、電界放出素子を用いる画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、平面型の画像表示装置として、FED(Field Emission Display)に注目が集まっている。そして、その駆動回路についても、種々の研究がなされており、アクテイブ素子を用いるアクテイブマトリックス方式(例えば、特許文献1を参照)が知られている。
【0003】
図5に示すアクテイブマトリックス方式では、薄膜トランジスタ部(TFT部)1と、コーン状のエミッタ16とエミッタ16が接続されるカソード電極15と多数個の穴部13aが形成されるゲート電極13とを有するカソード部(FEC部)と、表示基板部としての蛍光体層5が表面に塗布されたアノード電極3と、を備えている。そして、薄膜トランジスタ部1は、トランジスタTr1とトランジスタTr2とを有しており、エミッタ16とトランジスタTr1のドレイン8とが、カソード電極15を介して接続され、トランジスタTr1のゲート11とトランジスタTr2のソース7aとが接続されている。また、このトランジスタTr1のゲート11にコンデンサ12が接続され、トランジスタTr2のゲート11aに走査信号が与えられるとともにドレイン8aにクリア信号と表示信号の何れかが選択的に与えられる。このような構成によって、ドレイン8からソース7に流れる電流、すなわち、ゲート電極13からゲート電極13に近接して設けられるエミッタ16に電界電子放出作用によって流れる電流の大きさを制御するものである。図5では、各々のカソード電極15に対して複数のエミッタ16が接続されているが、各々のカソード電極に1個のエミッタ16を接続するものも採用されている。
【0004】
このように、基板部上に形成された薄膜トランジスタ部1と同一の構成を有する複数の薄膜トランジスタ部からなるTFTアレイをアレイ駆動の列毎に時分割的に選択し、同時にこれに同期させて、アレイ配列の各行に表示信号を付与するマトリックス駆動を行う。一方、このTFTアレイの各々の薄膜トランジスタ部1と、FEC部と同一の構成を有する複数のFEC部からなるFECアレイの各々とが接続されているので、特定の薄膜トランジスタ部のコンデンサの電圧が選択的に更新され、このコンデンサの電圧の値に応じて、電界放出作用により電子が放出される。この際、TFTアレイの、他の各々のコンデンサは、次にコンデンサの値が更新されるまで、現在の電圧値を保持するので、この間、電子放出は、各々のコンデンサの電圧値に応じて各々のFEC部から持続して行われる。この際に、ゲート電極13の電圧値は、カソード部(FEC部)の電圧値よりも高い値の固定値とされている。
【0005】
また、表示基板部上に形成された一個又は複数個のアノード電極上には蛍光体層5が被着され、かつ陽極電圧が付与されている。したがって、各々のFEC部から放出された電子は、蛍光体層の相対する部分に衝突し、発光が生ずる。そして、この蛍光体層の相対する部分は、次にコンデンサの電圧値が更新されるまで、同一輝度で発光し、発光の時比率(Duty Ratio)は、ほぼ1となり、高輝度発光が可能となる。
【0006】
図6は、このような薄膜トランジスタ部1とカソード部とがどのように構成されているかについて説明するため図である。向かって左側は、基板部に形成された薄膜トランジスタ部1の一部であるトランジスタTr1の断面図を示し、向かって右側はカソード部のエミッタ16とエミッタ16が接続されるカソード電極15とを示すものである。絶縁材料であるガラス製の陰極基板6上にソース7およびドレイン8を形成し、これら電極を橋絡するようにポリSiの半導体層9を被着し、その上にSiO2等のゲート絶縁膜10を積層してゲート11を形成し、トランジスタTr1とするものである。一方、ゲート絶縁膜10及びドレイン8のリードは、陰極基板6上をFEC部まで延在してカソード電極15を形成する。そして、カソード電極15にエミッタ16が接続されている。さらに、図示はしていないが、ソース7のリードは接地され、またソース7のリードとゲート11のリードは、絶縁層を介して積設され、ここにコンデンサ12が形成される。そしてゲート11のリードが、トランジスタTr2のソース7aとリード線を介して接続される。
【0007】
このように、アクテイブ素子であるTFTアレイを有する構成において、ゲート電極に一定値の直流電圧を与えておき、列毎に時分割的に選択し、アレイ配列の各行にコンデンサに充電される電圧として表示信号を付与するマトリックス的な駆動方法を採用するものが、アクテイブマトリックス方式として知られる公知の技術である。
【特許文献1】特許第2656843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような、アクテイブマトリックス方式においては、蛍光体層の発光輝度は、原理的には、上述したように各々のコンデンサの電圧値に応じて定まるものであるが、アクテイブマトリックス方式では、平面型の画像表示装置に表示される画像の全体の輝度、あるいは、いくつかに領域分割された画像の一部領域の輝度を周囲環境に応じて変化させる場合において、色調、コントラスト等をできるだけ変化させずに、輝度のみを変化させる状況を作りだすことは困難であった。すなわち、全体の輝度ごとに、各々のコンデンサの電圧値を更新しなければならず、その制御は極めて困難なものとなっていた。
【0009】
本発明の電界放出素子の駆動回路は、上述した課題を解決し、色調、コントラスト等に悪影響を与えることなく、画像の全体の輝度あるいは、一部領域の輝度を容易に変化させることができる電界放出素子を用いる画像表示装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の画像表示装置は、絶縁性材料を有する基板部と、前記基板部上に形成される複数のカソード電極の各々に接続されるエミッタと、前記エミッタに近接して設けられるゲート電極と、前記複数のエミッタの各々から放出する電子が衝突し発光する蛍光体層を備えるアノード電極と、前記基板部に形成され、前記複数のカソード電極の各々に接続されるカソード電流制御用電力端子および該カソード電流制御用電力端子を通過する電流量を制御するカソード電流制御端子を有する複数のカソード電流制御用素子と、前記複数のカソード電流制御端子の各々に接続され電子放出量に応じた電圧を保持する複数のコンデンサと、前記複数のコンデンサの各々に接続されるコンデンサ電圧制御用電力端子、前記複数のコンデンサの各々に保持される電圧値を定めるために第1グループ単位で相互に接続される第1コンデンサ電圧制御端子および前記複数のコンデンサのいずれに前記電子放出量に応じた電圧値を保持するかを定めるために第2グループ単位で相互に接続される第2コンデンサ電圧制御端子を有する複数のコンデンサ電圧制御用電力素子と、繰り返し一定電圧が印加される時間の比率である時比率が変化する信号を前記ゲート電極に与えるゲート電極制御回路と、を備えることとした。
【0011】
この画像表示装置は、絶縁性材料を有する基板部と、前記基板部上に形成される複数のカソード電極に接続されるエミッタと、前記エミッタに近接して設けられたゲート電極と、を備える。このような構造を有することによって、ゲート電極とカソード電極との間に電圧を加えて各々のエミッタから電子を放出することができる。
【0012】
また、この基板部に、複数のカソード電流制御用素子と複数のコンデンサと複数のコンデンサ電圧制御用電力素子と、が形成されている。そして、複数のカソード電流制御用素子の各々は、カソード電流制御用電力端子とエミッタ電圧制御用端子とを有し、各々のカソード電流制御用電力端子には複数のカソード電極の各々が接続され、複数のエミッタ電圧制御用端子の各々には、複数のコンデンサの各々が接続され、この各々のコンデンサに保持される電圧値に応じた放出量の電子を各々のエミッタから放射させるようにできる。そして、この各々のエミッタから放射された電子は、アノード電流としてアノード電極から流れ込み、等しい量の電流がカソード電流としてカソード電極から流れ出す。
【0013】
さらに、各々のコンデンサに保持される電圧値を特定するために電圧制御用電力素子が配されており、複数のコンデンサ電圧制御用電力素子の各々は、コンデンサ電圧制御用電力端子と、第1コンデンサ電圧制御端子と、第2コンデンサ電圧制御端子と、を有している。そして、コンデンサ電圧制御用電力端子の各々は各々のコンデンサに接続されており、各々の第1コンデンサ電圧制御端子は、第1グループ単位に相互に接続されており、コンデンサに保持されるべき電圧値を定める。また、各々の第2コンデンサ電圧制御端子は、第2グループ単位で相互に接続されており複数のコンデンサのいずれに電圧値を保持するかを定める。ここで、第1グループ単位と第2グループ単位とにグループ化して制御することによって、第1グループ単位に属する数と第2グループ単位に属する数の積の数のコンデンサの各々の電圧値を制御するに際して、第1グループ単位に属する数と第2グループ単位に属する数の和の制御信号で制御が可能となる。
【0014】
また、さらに、ゲート電極に加えられる信号は、繰り返し一定電圧が印加される時間の比率である時比率が変化する信号であり、このような信号を発生するゲート電極制御回路を備えている。一定値の電圧を時比率に応じた時間ゲート電極に印加して、この時比率の大きさに応じて、そのゲート電極に対応するエミッタからの電子放出量を制御できるので、広範囲な画面の輝度の調整をゲート電極に対する制御のみで、精度良くおこなえる。
【0015】
本発明の別の画像表示装置は、絶縁性材料を有する基板部と、前記基板部上に形成される複数のカソード電極の各々に接続されるエミッタと、前記エミッタに近接して設けられるゲート電極と、前記複数のエミッタの各々から放出する電子が衝突し発光する蛍光体層を備えるアノード電極と、前記基板部に形成され、前記複数のカソード電極の各々に接続される第1カソード電流制御用電力端子と、該第1カソード電流制御用電力端子からの電流を通過させる第2カソード電流制御用電力端子と、前記第1カソード電流制御用電力端子と前記第2カソード電流制御用電力端子との間を通過する電流量を制御する第1カソード電流制御端子とを具備し、各々の前記第2カソード電流制御用電力端子が第1グループ単位で相互に接続され、各々の前記第1カソード電流制御端子が第2グループ単位で相互に接続される複数の第1カソード電流制御用素子と、前記第1グループ単位で相互に接続される各々の前記第2カソード電流制御用電力端子を通過する電流量を制御する第2カソード電流制御端子を有する第2カソード電流制御用素子と、前記第1カソード電流制御端子又は前記第2カソード電流制御端子のいずれかの一方に、当該グループに属するカソード電流制御用素子を導通させるための選択信号を印加する選択信号発生回路と、前記第1カソード電流制御端子又は前記第2カソード電流制御端子の他の一方に、当該グループに属するカソード電流制御用素子に流れる電流量を制御する制御信号を印加する制御信号発生回路と、繰り返し一定電圧が印加される時間の比率である時比率が変化する信号を前記ゲート電極に与えるゲート電極制御回路と、を備えることとした。
【0016】
この画像表示装置は、絶縁性材料を有する基板部と、前記基板部上に形成される複数のカソード電極に接続されるエミッタと、前記エミッタに近接して設けられたゲート電極と、を備える。このような構造を有することによって、ゲート電極とカソード電極との間に電圧を加えて各々のエミッタから電子を放出することができる。
【0017】
また、基板部には、複数の第1カソード電流制御用素子及び第2カソード電流制御用素子が形成される。この第1カソード電流制御用素子の各々は、各々のカソード電極に接続される第1カソード電流制御用電力端子と、この第1カソード電流制御用電力端子からの電流を通過させる第2カソード電流制御用電力端子と、第1カソード電流制御用電力端子と第2カソード電流制御用電力端子との間を通過する電流量を制御する第1カソード電流制御端子とを具備している。そして、各々の第2カソード電流制御用電力端子が第1グループ単位で相互に接続され、各々の第1カソード電流制御端子が第2グループ単位で相互に接続されている。また、第1グループ単位で相互に接続される各々の第2カソード電流制御用電力端子を通過する電流量を制御する第2カソード電流制御端子を有する第2カソード電流制御用素子を備えている。
さらに、選択信号を印加する選択信号発生回路と制御信号を印加する制御信号発生回路とを備えており、第1カソード電流制御端子又は第2カソード電流制御端子のいずれかの一方に、当該グループに属するカソード電流制御用素子を導通させるための選択信号を印加し、第1カソード電流制御端子又は前記第2カソード電流制御端子の他の一方、すなわち、選択信号が印加されなかった第1カソード電流制御端子又は第2カソード電流制御端子のいずれかの一方に、当該グループに属するカソード電流制御用素子に流れる電流量を制御する制御信号を印加する。
【0018】
また、さらに、ゲート電極に加えられる信号は、繰り返し一定電圧が印加される時間の比率である時比率が変化する信号であり、このような信号を発生するゲート電極制御回路を備えている。一定値の電圧を時比率に応じた時間ゲート電極に印加して、この時比率の大きさに応じて、そのゲート電極に対応するエミッタからの電子放出量を制御できるので、広範囲な画面の輝度の調整をゲート電極に対する制御のみで、精度良くおこなえる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、色調、コントラスト等に悪影響を与えることなく、画像の全体の輝度あるいは、一部領域の輝度を容易に変化させることができる電界放出素子を用いる画像表示装置を提供することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、発明を実施するための最良の形態について、図を参照して説明する。図1は、本実施形態の画像表示装置の要部を表した図である。
【0021】
図1の図面上部は、画像表示装置の電子放出と制御に係る電極である、カソード電極15およびゲート電極13を主要部とするカソード部並びにアノード電極3の電極構造を示す模式図であり、カソード電極15nmは、n行m列目に配置された1個のカソード電極15を示すものである。図面中央部は、薄膜トランジスタ部1の回路構成を示す図であり、薄膜トランジスタ部1nmは、カソード電極15nmを駆動する1個の薄膜トランジスタ部1を示すものである。図面下部は、ゲート電極制御回路23を含む電極制御部20を示すものである。図1に沿って、各部の内容をより詳細に説明する。
【0022】
図1に示す電極構造および薄膜トランジスタ部1nmは、図5、図6に背景技術として示すものとほぼ同様である。電極構造については、コーン状のエミッタ16とエミッタ16が接続されるカソード電極15nmを含むカソード電極15nmと同一構成を有する複数のカソード電極15と、多数個の穴部13aが形成されるゲート電極13とを有するカソード部(FEC部)と、表示基板部としてのアノード電極3と、蛍光体層5と、を備えている。ここで、カソード電極15nmは、行方向にn番目、列方向にm番目のカソード電極を示す。カソード電極は行方向にN個、列方向にM個設けられており、カソード電極の総数はM×N個配置されている。このカソード電極は絶縁性材料からなる基板部の上に配置されている。
【0023】
ゲート電極13は、エミッタ16に近接して設けられ、1の画面に1枚のゲート電極13が配置されるようにしても良いが、1画面を複数、例えば、縦方向(列方向)に2面、横方向(行方向)に2面の4画面に分割するように1枚のゲート電極13を4枚の図示しないゲート電極13A(図示せず)、ゲート電極13B(図示せず)、ゲート電極13C(図示せず)、ゲート電極13D(図示せず)に分割しても良いものである。このように、ゲート電極13を4枚に分割して、その各々に異なる種類の画像(コンテンツ)を表示する場合には、そのコンテンツごとに輝度の制御が可能となる。ゲート電極13には、コーン状のエミッタ16の各々に対応して穴部13aが設けられており、この各々の穴部13aの周囲部と各々のエミッタ16との間に生じる電界によってエミッタ16から電子の電界放出が生じ、放出された電子はこの穴部を通って、対抗する面の蛍光体層5が配されたアノード電極3に衝突して発光するようになされている。
【0024】
また、薄膜トランジスタ部1nmは、背景技術に示すと同様に、基板部に形成される薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor)とされている。そして、複数からなるカソード電極15の各々に接続されるカソード電流制御用電力端子として機能するドレイン8と、このドレインを通過する電流量を制御するカソード電流制御端子として機能するゲート11とを有する複数のカソード電流制御用素子として機能するトランジスタTr1を有している。また、複数のトランジスタTr1の各々に接続される複数のコンデンサ12を有している。さらに、複数のコンデンサ12の各々に接続されるコンデンサ電圧制御用電力端子として機能するソース7a、複数のコンデンサ12の各々に保持される電圧値を定める第1コンデンサ電圧制御端子として機能するドレイン8aおよびこれらのコンデンサ12のいずれに電圧値を保持するかを定める第2コンデンサ電圧制御端子として機能するゲート11aを有するコンデンサ電圧制御用電力素子として機能する複数のトランジスタTr2を有している。
【0025】
そして、カソード電極15nmに薄膜トランジスタ部1nmのトランジスタTr1のドレイン8が接続されている。また、トランジスタTr1のゲート11とトランジスタTr2のソース7aとが接続されている。また、このトランジスタTr1のゲート11にコンデンサ12が接続されている。図1に示す薄膜トランジスタ部1nmは薄膜トランジスタ部1の1要素を示し、カソード電極15nmに接続されているが、他の薄膜トランジスタ部1の各々も個別に各々のカソード電極15に接続されているので、画像表示装置を構成する薄膜トランジスタ部1およびカソード電極15の総数は、M×N個となっている。このM×Nの個数は蛍光体で構成される画素数に対応する。
【0026】
さらに、薄膜トランジスタ部1に配置されるM×N個のトランジスタTr2のドレイン8aは、列方向に配列されたM個(第1グループ単位)が相互に接続されている。そして、この第1グループ単位の数はM個あり、この第1グループ単位で相互に接続されるM個のドレインは、各々のコンデンサ12に保持される電子放出量に応じた電圧値を定める第1のコンデンサ電圧制御端子として機能する。一方、薄膜トランジスタ部1に配置されるM×N個のトランジスタTr2のゲート11aは、行方向に配列されたN個(第2グループ単位)が相互に接続されている。そして、この第2グループ単位の数はN個あり、この第2グループ単位で相互に接続されるN個のゲートは、各々のコンデンサ12のいずれの電圧値を更新するか(電圧値を保持するか)を定める第2のコンデンサ電圧制御端子として機能する。このように行方向にN個、列方向にM個にグループ単位で分けることによって、M×N個の画素の各々のアノード電流(カソード電流)の値をM+N本の制御線(制御情報)で制御することが可能となる。
【0027】
第1グループ単位を列方向ではなく行方向に選択し、第2グループ単位を行方向ではなく列方向に選択することも可能であり、さらに、第1グループ単位を行方向でも列方向でもなく斜め方向に選択することも可能であり、この場合に、第2グループ単位をこれと幾何学的に直交する方向に選択する場合には、制御線に加えられる制御情報に変化がない場合には、画面の表示内容を適宜所望の角度で回転させることができる。また、第1グループと第2グループとを必ずしも直交させる必要はなく、どのように選択するかによって、正常な画像表示のみならず、種々のトリック画像を演出することができる。この選択は、予め行われるトランジスタTr2の各々のゲート11aの相互接続、および各々のドレイン8aの相互接続、さらには、後述する電極制御部20の信号分離・駆動信号発生部25において行われる。なお、列方向、行方向は、特定の方向を示す用語ではないが、本実施形態の説明の中では、列方向は、重力の働く方向、行方向はこれと直交する方向として、説明をするものであるが、どのように定義をしても技術思想の特定に特段影響をおよぼすものではない。
【0028】
また、表示基板部上に形成されたアノード電極3には蛍光体層5が被着され、かつ陽極電圧が付与されている。したがって、各々のエミッタ16から放出された電子は、蛍光体層5の相対する部分に衝突し、発光が生ずる。そして、この蛍光体層の相対する部分は、次にコンデンサ12の電圧値が、更新されるまで、同一輝度で発光し、発光の時比率(Duty Ratio)Duは、ほぼ1となり、高輝度発光が可能となる。
【0029】
本実施形態においても薄膜トランジスタ部1とカソード電極15との関係は、背景技術を示した図6におけると同様の構成を有しており、図6を再び参照して説明すると、向かって左側は、基板部に形成された薄膜トランジスタ部1の第1のトランジスタTr1の断面図を示し、向かって右側はカソード部のエミッタ16とエミッタ16が接続されるカソード電極15とを示すものである。絶縁材料であるガラス製の陰極基板6上にソース7およびドレイン8を形成し、これら電極を橋絡するようにポリSiの半導体層9を被着し、その上にSiO2等のゲート絶縁膜10を積層してゲート11を形成し、トランジスタTr1とするものである。一方、ゲート絶縁膜10及びドレイン8のリードは、陰極基板6上をFEC部まで延在してカソード電極15を形成する。さらに、図示はしていないが、ソース7のリードは接地され、またソース7のリードとゲート11のリードは、絶縁層を介して積設され、ここにコンデンサ12が形成される。そしてゲート11のリードが、前段のトランジスタTr2のソース7aとリード線を介して接続される。
【0030】
このような、アクテイブマトリックス方式においては、Lを発光輝度(cd/m×m)、Sをアノード面積(m×m)、Vaをアノード電圧、Iaをアノード電流(カソード電流と等しい)(A)、Duを時比率(1以下の実数)、ηを蛍光体の発光効率(Lm/W)、αを有効電流効率(1以下の実数)、τrを蛍光体光透過効率(1以下の実数)とすると、輝度Lは(式1)で表される。
【0031】
(式1)
L=(Va×Ia×η×Du×α×τr)/(π×S)
【0032】
(式1)から明らかなように、高輝度を得るためには、分子部分をできるだけ大きくし、分母部分をできるだけ小さくすることとなる。しかしながら、各々のパラメータには制限がある。例えば、蛍光体の発光効率η、有効電流効率αおよび蛍光体光透過効率τrの各々の値は、画像表示装置の構造によりほぼ決まるものである。また、背景技術に示すアクテイブマトリックス方式においては、時比率Duの値は、1である。
【0033】
一方本実施形態においては、新たな制御方式として、ゲート電極13に付与する電圧の時比率Duを制御する方式を採用している。すなわち、後述するゲート電極制御回路23を用いて、時比率Duを可変としている。なお、アノード電極の電圧である電圧Vaは、アノード電極3とカソード電極15との間の最大電圧(耐電圧)以上には上げることができないので一定の制限がある。また、アノード電極3に流れる電流である電流Ia(カソード電極に流れる電流と等しい)の値は、各々の第1グループ単位で相互に接続されるN個のドレインに加えられる電圧VYとゲート電極13の電圧VGとの電位差によって原理的には特定されるものである。すなわち、ゲート電極13の電圧VGを固定した場合には、アノード電極3に流れる電流である電流Ia(カソード電極に流れる電流と等しい)の値は、電圧VYによって制御される。
【0034】
以上のような条件の下に、画像表示装置における輝度を変化させる場合には、第1グループ単位ごとのトランジスタTr2のドレイン電圧である電圧VYと第2グループ単位ごとのトランジスタTr2のゲートの電圧である電圧VXとを制御して各々のコンデンサ12に保持される電圧VCを変化させることとなる。時比率Duの制御については後述する。
【0035】
図2に、電圧VYと電圧VXとをどのように選択するかのタイムチャートを示す。図2の各々の縦軸は電圧値を示し、第1グループ単位(1行目ないしN行目各々が該当するが、図2では、第1行目、第n行目、第N行目が表されている)の第1列目に対応する電圧VY1、第1グループ単位の第m列目に対応する電圧VYm、第1グループ単位の第M列目に対応する電圧VYMのみが表され、他は省略されている。また、横軸は時間軸を表し、上述したように、第2グループ単位の第1行目に対応する電圧VX1、第2グループ単位の第n行目に対応する電圧VXn、第2グループ単位の第N行目に対応する電圧VXNのみが表され、他は省略されている。
【0036】
例えば、電圧VX1がハイレベル(図2において上方の電位)となる場合には、電圧VY1、電圧VYm、電圧VYM、および他の第1グループ単位の電圧(図2において、(1、1)、(1、m)、(1、M))に応じた値がサンプルされ、電圧VX1がローレベル(図2において下方の電位)となる場合には、それらの値が各々のコンデンサ12にホールドされる。すなわち、各々の薄膜トランジスタ部1に配された各々のコンデンサ12の電圧VCの値が更新されて、保持される。このようにして、例えば、第1行の列方向の各々のエミッタ16の電圧が定まり、水平走査がなされる。次の第2グループ単位である2行目を同様に走査して、図2に示す第n番目の行を走査して(図2において、(n、1)、(n、m)、(n、M)が該当)、最後に第N番目の行を走査して(図2において、(N、1)、(N、m)、(N、M)が該当)、再び、第1行目の走査を行う。ここで、ゲート電極13に与える電圧VGの値を所定の一定電圧に保ち続ければ所定の輝度の画像が画像表示装置の蛍光体層5を介して視認可能となる。
【0037】
次に、図3にゲート電極13の値を所定の一定電圧に保つ場合において、トランジスタTr2のドレイン電圧である電圧VY(電圧VY1ないし電圧VYMを総称して電圧VYで表す)の値に対するアノード電流である電流Iaの関係を示す。電圧VYの値が閾値の電圧VYtに達すると電子放出が開始され、電圧VYbに達し、電流Iaの値が電流Ibとなると、黒レベルの輝度で発光する。また、電圧VYwに達し、電流Iaの値が電流Iwとなると、白レベルの輝度で発光する。なお、黒レベル、白レベルは予め定める所定の輝度であり、例えば黒レベルは発光していると視認できる最小の輝度であり、白レベルは蛍光体層5の寿命等を考慮して制限する最大の輝度である。図3に示す特性は、1個のカソード電極15、例えば、カソード電極15nmの特性を示すものであり、画像表示装置に配されるM×N個のカソード電極15は各々異なる特性を有している。この特性の異なりの原因は、トランジスタTr1、トランジスタTr2、コンデンサ12、カソード電極に配されたエミッタ16の構造に基づく電界強度分布の差異、等のばらつきによるものである。
【0038】
次に、図1に示す電極制御部20について説明する。電極制御部20は、信号分離・駆動信号発生部25、ドレイン駆動回路21、ゲート駆動回路22、ゲート電極制御回路23、光センサ24を備える。
【0039】
信号分離・駆動信号発生部25は、コンポジット映像信号Svを入力され、水平同期信号、垂直同期信号、映像信号を生成する。そして、水平同期信号に基づき、行方向に配列する各々の列方向の映像信号である電圧VY1ないし電圧VYMをドレイン駆動回路21に出力する。ドレイン駆動回路21は、電力増幅回路であり、各々のトランジスタTr2のドレイン8aを駆動する電力を発生する。また、信号分離・駆動信号発生部25は、垂直同期信号に基づき、各々の列方向のどの行を選択するかを決定するための電圧VX1ないし電圧VXNをゲート駆動回路22に出力する。電圧VX1ないし電圧VXNは、トランジスタTr2のドレインとソース間をON/OFFするための電圧であり、ハイレベルの場合にトランジスタTr2のドレインとソース間をONとし、ローレベルの場合にトランジスタTr2のドレインとソース間をOFFとする。ゲート駆動回路22は、電力増幅回路であり、各々のトランジスタTr2のゲート11aを駆動する電力を発生する。また、信号分離・駆動信号発生部25は、ゲート電極制御回路23に第1ゲート制御信号を出力する。光センサ24は、ゲート電極制御回路23に第2ゲート制御信号を出力する。第1ゲート制御信号および第2ゲート制御信号については後述する。
【0040】
次に上述した構成を有する画像表示装置において、本実施形態において採用する新規なゲート電極13の駆動方式についての具体的形態の代表例について説明する。
【0041】
(第1実施形態)
第1実施形態におけるゲート電極13に印加される電圧の波形は、後述する他の実施形態と同様に、一周期の間のある時間には、ゲート電極13に印加される電圧の電圧値を電界放出が可能とされる一定の値とし、一周期における残りの時間は、ゲート電極13に電界放出ができないような電圧値の電圧を印加する繰り返し波形である。ここで、上述の一周期を1の割合とするときの時比率Duの範囲は、0から1までの値ある。すなわち、時比率Duに応じた時間、すなわち一周期の時間と時比率Duとの積で表される時間は、ゲート電極13に印加される電圧によってエミッタ16からの電界放出が可能となり、一周期における残りの時間は、ゲート電極13に印加される電圧によってエミッタ16からの電界放出ができないようになされている。第1実施形態においては、時比率Duが1である場合に、画面の発光輝度が白レベルとなるような電圧を電圧VY1ないし電圧VYMとしてドレイン駆動回路21に出力するものである。このようにすれば、色調、コントラスト等に悪影響を与えることなく、時比率Duを1から0までの範囲で変化させて、画像の全体の輝度を容易に変化させることができる。
【0042】
(第2実施形態)
第1実施形態に示した制御方法では、各々のFEC部の放射特性のばらつきの影響を受け、輝度の制御が、電圧VY1ないし電圧VYMの制御のみでは困難な場合もある。例えば、低輝度領域においては、電圧VY1ないし電圧VYMをすべて同じ値とした場合でも、各々のトランジスタの特性誤差、各々のコンデンサに生じるリーク電流の大きさのばらつき等によって、あるFEC部からは、十分に電子放出が行われて、発光が視覚によって関知され、別のあるFEC部からは、十分に電子放出が行われず、発光が視覚によって関知されない状態が生じてしまう場合があった。このように、輝度のばらつきが、表示画面の部分(画素)ごとにばらつく場合においては、その都度、表示画面の部分ごとの輝度のばらつきを補正しなければならない場合も生じる。第2実施形態は係る点を考慮したものである。図3にトランジスタTr2のドレインに与える電圧VYと、各々のカソード電極15に対応したアノード電極3の当該部分に流れる電流Ia(すなわち、各々のカソード電極15に流れる電流Ia)との関係を示した。ここで、各々のカソード電極15に流れる電流Iaの大きさのばらつきは、電圧VYが大きい領域ほど小さいことが統計的に知られている。すなわち、(式2)で与えられる、電圧VYが比較的大きい範囲である電圧VY1のときの標準偏差値Nv1の値は、電圧VYが比較的小さい範囲である電圧VY2のときの標準偏差値Nv2の値よりも小さいことが統計的に明らかにされている。Varは、M×N個について、電圧VYを一定としたときの電流Iaの標準偏差を求めることを略記するものである。
【0043】
(式2)
Nv1=Var(Ia1ij)
Nv2=Var(Ia2ij)
【0044】
したがって、低輝度で画面全体を発光させる場合においては、ゲート電極13に直流の一定の電圧VGを印加(時比率Duの値を1として使用)し、電圧VYの値を低くするような制御をおこなうよりも、ゲート電極13の電圧VGの印加の時比率Duを小さくして、電圧VYの値を高くした制御をおこなう方が、より、良質の画像が得られる。そこで、電圧VGの値として、連続印加(時比率Duを1)とする場合には、蛍光体層の輝度が白レベル以上となるような電圧値に電圧VGを設定し、時比率Duを蛍光体層5の輝度が白レベル以下となるような範囲に設定して発光させれば良好な画質を得ることができることとなる。例えば、直流の電圧(時比率Duを1)であれば、白レベルに対応する電流Iwの2倍の電流を流すことができる電圧VGを予め与えておき、時比率Duの値を0.5に固定して使用することにより、トランジスタTr1、トランジスタTr2、コンデンサ12、カソード電極に配されたエミッタ16の構造のばらつきが、抑圧されて、より良好なる画質を得ることができる。
【0045】
この場合において、このような大きな値に電圧VGを定め電圧VGの値を固定して、時比率Duの値を0から0.5の範囲で調整すれば、時比率Duを制御することによって良好な制御が可能となるものである。すなわち、発光輝度が低い場合には時比率Duを小さくして対応するので、このばらつきの小ささの効果はそのまま維持され、さらに、時比率Duが小さくなるのに比例してばらつきの絶対量も小さくなるので、このような制御をおこなえば、良質な画面が得られるものである。
【0046】
このような輝度調整を行う具体例としては、光センサ24で周囲の明るさを検出し、暗い場合には、ゲート電極13の電圧VGの時比率Duを小さくし、明るい場合には、電圧VGの時比率Duを大きくすることにより、色調、コントラスト等に悪影響を与えることなく、画像の全体の輝度を容易に変化させることができる。図2にゲート電極13の電圧VGの時比率Duが大きい場合をパルス幅T1で示し、時比率Duが小さい場合をパルス幅T2で示す。パルス幅T1またはパルス幅T2の時間だけ所定値の電圧VGが印加され、他の時間では電圧VGの値は零とされている。ここで、一周期幅Tに対するパルス幅T1の時比率Duの値はT1/T、パルス幅T2の時比率Duの値はT2/Tで表せる。
【0047】
また、ゲート電極13を複数に分割して、その各々の分割部分で、異なる画面を表示する場合、例えば、ゲート電極13Aのカバーする範囲の画面においては、野球放送を受像し、ゲート電極13Bのカバーする範囲の画面においては、ニュースを受像する場合などは、ゲート電極13Aとゲート電極13Bの電圧VGの時比率Duを各々異ならせ、一方を比較的暗くする等も容易にできる。
【0048】
(第2実施形態の変形例)
上述した時比率Duの調整は、画像表示装置を用いる者が手動で時比率Duを制御し、好みの画像輝度を得るものであっても良いが、この他、種々の方法で時比率Duを制御することもできる。例えば、信号分離・駆動信号発生部25からの第1ゲート制御信号によって電圧VGの時比率Duを制御し、周囲の明るさを光センサ24で検出して、光センサ24からの情報に基づく第2ゲート制御信号によって、電圧VGの値を制御しても良く、また、第1ゲート制御信号によって電圧VGの値を制御し、第2ゲート制御信号によって、時比率Duを制御しても良く、このように、電圧VGとの制御を併用しても良い。
【0049】
(第3実施形態)
信号分離・駆動信号発生部25は、図示しないRAM(Random Access Memory)を有して、上述した電圧VYに対するアノード電極3に流れる電流である電流Iaのばらつきを個々のカソード電極15ごとに吸収するようにすることもできる。ここで、図3に示すように、電圧VYに対する電流Iaの関係は非線形であり、電圧VYt、電圧VYb、電圧VYwの値は、別個独立にばらつくものである。すなわち、図3に示す特性のカーブの形状は各々のカソード電極15ごとにばらつくものである。したがって、電圧VYに対する電流Iaのばらつき幅を狭領域ではある程度合わせ込めたとしても、すべての領域における特性をRAMで合わせ込むのは極めて困難である。そこで、本実施形態では、以下のようにして、RAMで各々のトランジスタTr1、トランジスタTr2、コンデンサ12、カソード電極に配されたエミッタ16の構造のばらつき、さらには蛍光体層5のばらつきを吸収している。
【0050】
図2より、電流Iaの値が白レベルに近い部分の比較的狭い範囲では、電圧VYに対する電流Iaの関係は、ほぼ線形と見なせるので、(式3)で両者の関係を近似することができる。ここで、(式3)は、i行j列目の薄膜トランジスタ部1のトランジスタTr2の電圧VYjとi行j列目のカソード電極15に関して成立する式であり、[kij]はi行j列のマトリックスであり、各々の要素である係数kijは図3に示す破線の傾きkの各々を示すものである。また。[Vkij]はi行j列のマトリックスであり、係数Vkijは、この破線が横軸と交わる点の電圧であるオフセット電圧Vkの各々の値を示すものである。[VYj]は列ベクトルであり、各々の列に属するトランジスタTr2のドレイン8aに印加される電圧の値を示すものである。
【0051】
(式3)
[Iaij]=[kij]×[VYj]−[Vkij]
【0052】
(式3)は、所定の電圧VYに対する各々の電流Iaijを表しているので、逆にこの電圧VYに補正をおこなえば、各々の電流Iaijをばらつくことなく一定の値に納めることができる。すなわち、(式3)から(式4)を得て、これに基づき処理をおこなうことを考える。ここで、[Lij]は、各々の列に属するトランジスタTr2のドレイン8aに同一の電圧を与えた場合の各々の電流Iaijの値を等しくするような予め求めた行列である。
【0053】
(式4)
[VYnj]={[Lij]}{[Ia]+[Vkij]}
=[knij]{[Ia]+[Vkij]}
【0054】
M×N個の要素を有する、マトリックス[knij]の値と[Vkij]の値とを予め求めておけば、(式2)に示す変換式を用いてその特性変化を容易に吸収することができる。このとき、RAMに収納する係数の数は2×M×N個となる。
【0055】
さらに、(式4)に、蛍光体層5の輝度のばらつきの要素も入れておけば、さらに、電子衝突効果のばらつき、蛍光体の発光効率η、蛍光体光透過効率τrのばらつきも吸収することができ、ばらつきがすくないものとできる。(式4)の変換式の演算は、信号分離・駆動信号発生部25でおこなわれ、第2ゲート制御信号によってゲート電極制御回路23を制御する。
【0056】
このような、電圧変換の操作をおこないつつ、第2実施形態と同様に、ゲート電極13の制御も併用している。つまり、電圧VGの時比率Duの値を制御して低輝度領域の輝度調整をおこなっている。例えば、ゲート電極13に印加する電圧VGの時比率Duを半分とすると、(式1)から明らかなように、電圧VY1ないし電圧VYMを制御することなく、輝度Lを半分としたこととなり、電圧VGの時比率Duを変化させると輝度は完全に比例して極めて良好な制御ができることとなる。つまり、画面全体が低輝度で発光している場合には、時比率Duの値を小さくして、ゲート電極13とカソード電極15の間の電圧に関係する電圧VYの値は大きくして使うことにより、各々のトランジスタTr1、トランジスタTr2、コンデンサ12、カソード電極に配されたエミッタ16の構造に基づく電界強度分布の差異、等に基づくばらつきを圧縮して、簡便なる回路構成で良質な画像を得ることができるものである。
【0057】
さらに、第2実施形態と同様に具体例としては、光センサ24で周囲の明るさを検出し、暗い場合には、ゲート電極13の電圧VGの時比率Duを小さくし、明るい場合には、電圧VGの時比率Duを大きくすることにより、色調、コントラスト等に悪影響を与えることなく、画像の全体の輝度を容易に変化させることができる。
【0058】
(第4実施形態)
図4を参照して、第4実施形態の画像表示装置について説明する。第1実施形態ないし第3実施形態におけると同一部分については、同一の符号を付して説明を省略する。図4に示す第4実施形態は、絶縁性材料を有する基板部(図4では省略、図6を参照)と、この基板部上に形成される複数のカソード電極15の各々に接続されるエミッタ16と、このエミッタ16に近接して設けられるゲート電極13と、各々のエミッタ16から放出する電子が衝突し発光する蛍光体層5を備えるアノード電極3と、を備える。また、基板部には、第1カソード電流制御用素子として機能するトランジスタTr3が複数個、形成されている。このトランジスタTr3の各々は、各々のカソード電極15に接続される第1カソード電流制御用電力端子として機能するドレイン58と、このドレイン58からの電流を通過させる第2カソード電流制御用電力端子として機能するソース57と、ドレイン58とソース57との間を通過する電流量を制御する第1カソード電流制御端子として機能するゲート51とを具備している。そして、各々のトランジスタTr3のソース57は、第1グループ単位の一例である行方向に相互に接続され、各々のトランジスタTr3のゲート51は、第2グループ単位の一例である列方向に相互に接続されている。また、行方向に相互に接続される各々のソース57には、トランジスタTr3を通過する電流量が第2カソード電流制御端子であるゲート41によって制御される第2カソード電流制御用素子として機能するトランジスタTr4が備えられている。
【0059】
さらに、信号分離・駆動信号発生部25と同様の機能を有する信号分離・駆動信号発生部35、ドレイン駆動回路21と同様の機能を有する制御信号発生回路31、ゲート駆動回路22と同様の機能を有する選択信号発生回路32及び光センサ24と同様の機能を有する光センサ34とを電極制御部30として具備するものである。そして、行方向の各行に属する各々のトランジスタTr3のゲート51には、当該列に属する各々のトランジスタTr3のソース57を導通させるための選択信号である選択信号である電圧VX’1ないし電圧VX’Nを印加する。この選択信号は、選択信号発生回路32から発生される。また、他の一方である、トランジスタTr4のゲート41には、当該行に属する各々のトランジスタTr3に流れる電流に流れる電流量を制御する制御信号である電圧VY’1ないし電圧VY’Mを印加する。この制御信号は、制御信号発生回路31から発生される。なお、図4では、行としてY’m行の一部のみが表示され、列としてX’n列の一部のみが表示され他の部分の記載は省略されている。また、選択信号発生回路32から発生される電圧VX’1ないし電圧VX’M(この場合には、個数Nの数が個数Mとなる)をトランジスタTr4のゲート41に与え、制御信号発生回路31から発生する電圧VY’1ないし電圧VY’N(この場合には、個数Mの数が個数Nとなる)をトランジスタTr3のゲート51に与えるようにしても同様の効果を奏するものである。
【0060】
また、さらに、ゲート電極13に加える一定の電圧が印加される時間の比率である時比率Duを変化させるための、ゲート電極制御回路23と同様の機能を有するゲート電極制御回路33を本実施形態においては備えており、一定の電圧を時比率Duに応じた時間、ゲート電極13に印加して、この時比率Duの大きさに応じて、そのゲート電極13に対応するエミッタからの電子放出量を制御できるので、広範囲な画面の輝度の調整をゲート電極13に対する制御のみで精度良くおこなえる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】実施形態の画像表示装置の要部を示す図である。
【図2】実施形態の画像表示装置のタイムチャートを示す図である。
【図3】トランジスタのドレイン電圧とカソード電極の電流との関係を示す図である。
【図4】実施形態の画像表示装置の要部を示す図である。
【図5】背景技術の画像表示装置の要部を示す図である。
【図6】背景技術の画像表示装置の要部の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0062】
1 薄膜トランジスタ部、3 アノード電極、5 蛍光体層、7、7a ソース、8、8a ドレイン、11、11a ゲート、12 コンデンサ、13 ゲート電極、13a 穴部、15、15nm カソード電極、20、30 電極制御部、21 ドレイン駆動回路、22 ゲート駆動回路、23 ゲート電極制御回路、24、34 センサ、25、35 信号分離・駆動信号発生部、Tr1 トランジスタ、Tr2 トランジスタ、30 カソード電流制御用素子制御回路、31 制御信号発生回路31、32 選択信号発生回路32

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性材料を有する基板部と、
前記基板部上に形成される複数のカソード電極の各々に接続されるエミッタと、
前記エミッタに近接して設けられるゲート電極と、
前記複数のエミッタの各々から放出する電子が衝突し発光する蛍光体層を備えるアノード電極と、
前記基板部に形成され、前記複数のカソード電極の各々に接続されるカソード電流制御用電力端子および該カソード電流制御用電力端子を通過する電流量を制御するカソード電流制御端子を有する複数のカソード電流制御用素子と、
前記複数のカソード電流制御端子の各々に接続され電子放出量に応じた電圧を保持する複数のコンデンサと、
前記複数のコンデンサの各々に接続されるコンデンサ電圧制御用電力端子、前記複数のコンデンサの各々に保持される電圧値を定めるために第1グループ単位で相互に接続される第1コンデンサ電圧制御端子および前記複数のコンデンサのいずれに前記電子放出量に応じた電圧値を保持するかを定めるために第2グループ単位で相互に接続される第2コンデンサ電圧制御端子を有する複数のコンデンサ電圧制御用電力素子と、
繰り返し一定電圧が印加される時間の比率である時比率が変化する信号を前記ゲート電極に与えるゲート電極制御回路と、
を備える画像表示装置。
【請求項2】
前記ゲート電極制御回路は、
前記時比率を、周囲の明るさに応じて変化させることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記ゲート電極制御回路は、
前記ゲート電極に前記一定電圧が連続して印加される場合において前記蛍光体層の輝度が最大輝度である白レベル以上となるような電圧に前記一定電圧を設定し、前記時比率の範囲を前記蛍光体層の輝度が白レベル以下となるように設定することを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記ゲート電極は、複数に分割されて形成され、
前記ゲート電極制御回路は、
前記複数に分割されて形成された各々のゲート電極に、各々の時比率の一定電圧を印加することを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記ゲート電極制御回路は、
前記複数のカソード電極の特性に合わせて、前記第1コンデンサ電圧制御端子に入力される電圧の値を変換するRAMを有すことを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項6】
絶縁性材料を有する基板部と、
前記基板部上に形成される複数のカソード電極の各々に接続されるエミッタと、
前記エミッタに近接して設けられるゲート電極と、
前記複数のエミッタの各々から放出する電子が衝突し発光する蛍光体層を備えるアノード電極と、
前記基板部に形成され、前記複数のカソード電極の各々に接続される第1カソード電流制御用電力端子と、該第1カソード電流制御用電力端子からの電流を通過させる第2カソード電流制御用電力端子と、前記第1カソード電流制御用電力端子と前記第2カソード電流制御用電力端子との間を通過する電流量を制御する第1カソード電流制御端子とを具備し、各々の前記第2カソード電流制御用電力端子が第1グループ単位で相互に接続され、各々の前記第1カソード電流制御端子が第2グループ単位で相互に接続される複数の第1カソード電流制御用素子と、
前記第1グループ単位で相互に接続される各々の前記第2カソード電流制御用電力端子を通過する電流量を制御する第2カソード電流制御端子を有する第2カソード電流制御用素子と、
前記第1カソード電流制御端子又は前記第2カソード電流制御端子のいずれかの一方に、当該グループに属するカソード電流制御用素子を導通させるための選択信号を印加する選択信号発生回路と、
前記第1カソード電流制御端子又は前記第2カソード電流制御端子の他の一方に、当該グループに属するカソード電流制御用素子に流れる電流量を制御する制御信号を印加する制御信号発生回路と、
繰り返し一定電圧が印加される時間の比率である時比率が変化する信号を前記ゲート電極に与えるゲート電極制御回路と、
を備える画像表示装置。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−133115(P2007−133115A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−325617(P2005−325617)
【出願日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(000201814)双葉電子工業株式会社 (201)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】