説明

画像表示装置

【課題】低温下で緑色レーザ光源装置は発振効率が悪く、立ち上がりの際に時間がかかる。このため、画像表示装置の起動直後は緑色が表示できず、所望の画像表示ができないという問題が生じる。
【解決手段】1フレームを構成する複数の点灯区間ごとに光源装置の点灯を制御するとともに、空間光変調素子での各色光の出力を制御する制御部を備え、この制御部は、起動時から緑色の光源装置の照射光量があらかじめ決められた値以上となるまでの間、緑色の光源装置の点灯割当区間において緑色の光源装置を点灯(LD−GON=H)させるとともに、緑色以外の光源装置の点灯割当区間の少なくともいずれかにおいて、本来点灯させるべき光源装置に代えて緑色の光源装置を点灯(LD−GON=H)させる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源として半導体レーザを用いたレーザ光源装置を備えた時分割表示方式の画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スクリーン上に画面を投射する投射式の画像表示装置の光源に半導体レーザを用いる技術が注目されている。この半導体レーザは、従来から画像表示装置に多用されてきた水銀ランプに比較して、色再現性がよい点、瞬時点灯が可能である点、長寿命である点、高効率で消費電力を低減することができる点、および小型化が容易である点など種々の利点を有している。
【0003】
このような半導体レーザを用いた画像表示装置においては、カラー画像を形成するために、赤色、緑色および青色の3つのレーザ光源装置と、1つの液晶表示素子からなる空間光変調素子を用い、各レーザ光源装置から出射される各色のレーザ光を空間光変調素子に順次入射させる時分割表示方式(フィールドシーケンシャル方式)による技術が知られている(特許文献1参照)。この時分割表示方式は、スクリーン上に投射された各色の画像を視覚の残像効果によってカラー画像として認識させるようにしたものであり、空間光変調素子が1つで済むため、装置の小型化を図る上で都合がよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−91927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、このような時分割表示方式では、1フレームを複数の点灯区間(サブフレーム)に分割し、その点灯区間ごとに赤色、緑色および青色の各レーザ光源装置を点灯させ、この点灯タイミングに同期して空間光変調素子にて各色レーザ光の出力を制御する。
【0006】
ところが、低温下で緑色レーザ光源装置は発振効率が悪く、立ち上がりの際に時間がかかる。このため、画像表示装置起動直後は緑色が表示できず、所望の画像表示ができないという問題が生じる。例えば起動直後に白色画像を表示した場合、緑色が表示できないため赤色と青色の混合色であるマゼンタ色となる。この対策として、起動後、緑色レーザ光源装置の立ち上がるまで待機し、緑色レーザ光源装置の立ち上がり後に画像表示させることは可能だが、ユーザに不安感を与え、かつ長い待機時間を強いることとなる。
【0007】
本発明では、このような問題点を解決するべく案出されたものであり、その主な目的は、起動から映像表示までの時間を短縮できるとともに、映像が表示されるまでの待機時間においてもユーザに不安感を与えることがない画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の画像表示装置は、赤色、緑色および青色の各色光をそれぞれ出力する赤色、緑色および青色の各光源装置と、これらの各光源装置から時分割で出力される各色光を映像信号に基づいて変調する空間光変調素子と、1フレームを構成する複数の点灯区間ごとに前記光源装置の点灯を制御するとともに、前記空間光変調素子での各色光の出力を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、起動時から前記緑色の光源装置の照射光量があらかじめ決められた値以上となるまでの間、前記緑色の光源装置の点灯割当区間において前記緑色の光源装置を点灯させるとともに、緑色以外の光源装置の点灯割当区間の少なくともいずれかにおいて、本来点灯させるべき光源装置に代えて前記緑色の光源装置を点灯させる構成とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、起動時における緑色レーザ光源装置の立ち上がり時間を短縮することができ、立ち上がりの際には緑色レーザ光源装置以外のレーザ光源装置を用いて表示をすることで、ユーザに与える不安感の解消、および待機時間の短縮を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による画像表示装置を携帯型情報処理装置に内蔵した例を示す斜視図
【図2】図1に示した光学エンジンユニットに内蔵される光学エンジン部の概略構成図
【図3】図2に示した緑色レーザ光源装置におけるレーザ光の状況を示す模式図
【図4】図1に示した画像表示装置の機能ブロック図
【図5】緑色レーザ光源装置、赤色レーザ光源装置および青色レーザ光源装置を点灯させて白色表示を行う従来の点灯シーケンスと、空間光変調素子の動作との関係を示す図
【図6】図5に示す従来の点灯シーケンスにより緑色レーザ光源装置の点灯を開始した直後の出力を示す図
【図7】緑色レーザ光源装置、赤色レーザ光源装置および青色レーザ光源装置を点灯させて青色表示を行う従来の点灯シーケンスと、空間光変調素子の動作との関係を示す図
【図8】本発明の実施の形態により緑色レーザ光源装置、赤色レーザ光源装置および青色レーザ光源装置を点灯させて青色表示を行う点灯シーケンスと、空間光変調素子の動作との関係を示す図
【図9】本発明の点灯シーケンスにより緑色レーザ光源装置の点灯を開始した直後の出力を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1は、本発明による画像表示装置1を携帯型情報処理装置2に内蔵した例を示す斜視図である。携帯型情報処理装置2(例えばノートPCなど)の本体3には、光ディスク装置などの周辺機器が取り替え可能に収容される収容スペース、いわゆるドライブベイが、キーボード4の裏面側に形成されており、このドライブベイに画像表示装置1が取り付けられている。
【0013】
画像表示装置1は、筐体11と、筐体11に対して出し入れ可能に設けられた可動体12と、を有している。可動体12は、レーザ光をスクリーンSに投射するための光学部品が収容された光学エンジンユニット13と、この光学エンジンユニット13内の光学部品を制御するための基板などが収容された制御ユニット14とで構成され、光学エンジンユニット13が上下方向に回動可能に制御ユニット14に支持されている。
【0014】
この画像表示装置1は、不使用時に可動体12が筐体11内に格納され、使用時には可動体12が筐体11から引き出され、光学エンジンユニット13を回動させて、光学エンジンユニット13からのレーザ光の投射角度を調整することで、レーザ光をスクリーンS上に適切に投射させることができる。
【0015】
図2は、図1に示した光学エンジンユニット13に内蔵される光学エンジン部21の概略構成図である。この光学エンジン部21は、緑色レーザ光を出力する緑色レーザ光源装置22と、赤色レーザ光を出力する赤色レーザ光源装置23と、青色レーザ光を出力する青色レーザ光源装置24と、映像信号に応じて各レーザ光源装置22〜24からのレーザ光の変調を行う空間光変調素子25と、各レーザ光源装置22〜24からのレーザ光を反射させて空間光変調素子25に照射させるとともに空間光変調素子25から出射された変調レーザ光を透過させる偏光ビームスプリッタ26と、各レーザ光源装置22〜24から出射されるレーザ光を偏光ビームスプリッタ26に導くリレー光学系27と、偏光ビームスプリッタ26を透過した変調レーザ光をスクリーンSに投射する投射光学系28と、を備えている。
【0016】
この光学エンジン部21は、いわゆるフィールドシーケンシャル方式でカラー画像を表示するものであり、各レーザ光源装置22〜24から各色のレーザ光が時分割で順次出力され、各色のレーザ光による画像が視覚の残像効果によってカラー画像として認識される。
【0017】
リレー光学系27は、各レーザ光源装置22〜24から出射される各色のレーザ光を平行ビームに変換するコリメータレンズ31〜33と、コリメータレンズ31〜33を通過した各色のレーザ光を所要の方向に導く第1および第2のダイクロイックミラー34,35と、ダイクロイックミラー34,35により導かれたレーザ光を拡散させる拡散板36と、拡散板36を通過したレーザ光を収束レーザに変換するフィールドレンズ37と、を備えている。
【0018】
投射光学系28からスクリーンSに向けてレーザ光が出射される側を前側とすると、青色レーザ光源装置24から青色レーザ光が後方に向けて出射され、この青色レーザ光の光軸に対して緑色レーザ光の光軸および赤色レーザ光の光軸が互いに直交するように、緑色レーザ光源装置22および赤色レーザ光源装置23から緑色レーザ光および赤色レーザ光が出射され、この青色レーザ光、赤色レーザ光、および緑色レーザ光が、2つのダイクロイックミラー34,35で同一の光路に導かれる。すなわち、青色レーザ光と緑色レーザ光が第1のダイクロイックミラー34で同一の光路に導かれ、青色レーザ光および緑色レーザ光と赤色レーザ光が第2のダイクロイックミラー35で同一の光路に導かれる。
【0019】
第1および第2のダイクロイックミラー34,35は、表面に所定の波長のレーザ光を透過および反射させるための膜が形成されたものであり、第1のダイクロイックミラー34は、青色レーザ光を透過するとともに緑色レーザ光を反射させる。第2のダイクロイックミラー35は、赤色レーザ光を透過するとともに青色レーザ光および緑色レーザ光を反射させる。
【0020】
これらの各光学部材は、筐体41に支持されている。この筐体41は、各レーザ光源装置22〜24で発生した熱を放熱する放熱体として機能し、アルミニウムや銅などの熱伝導性の高い材料で形成されている。
【0021】
緑色レーザ光源装置22は、側方に向けて突出した状態で筐体41に形成された取付部42に取り付けられている。この取付部42は、リレー光学系27の収容スペースの前方と側方にそれぞれ位置する前壁部43と側壁部44とが交わる角部から側壁部44に直交する向きに突出した状態で設けられている。赤色レーザ光源装置23は、ホルダ45に保持された状態で側壁部44の外面側に取り付けられている。青色レーザ光源装置24は、ホルダ46に保持された状態で前壁部43の外面側に取り付けられている。
【0022】
赤色レーザ光源装置23および青色レーザ光源装置24は、いわゆるCANパッケージで構成され、レーザ光を出力するレーザチップが、ステムに支持された状態で缶状の外装部の中心軸上に光軸が位置するように配置されたものであり、外装部の開口に設けられたガラス窓からレーザ光が出射される。この赤色レーザ光源装置23および青色レーザ光源装置24は、ホルダ45,46に開設された取付孔47,48に圧入するなどしてホルダ45,46に対して固定される。青色レーザ光源装置24および赤色レーザ光源装置23のレーザチップの発熱は、ホルダ45,46を介して筐体41に伝達されて放熱され、各ホルダ45,46は、アルミニウムや銅などの熱伝導率の高い材料で形成されている。
【0023】
緑色レーザ光源装置22は、励起用レーザ光を出力する半導体レーザ51と、半導体レーザ51から出力された励起用レーザ光を集光する集光レンズであるFAC(Fast−AxisCollimator)レンズ52およびロッドレンズ53と、励起用レーザ光により励起されて基本レーザ光(赤外レーザ光)を出力する固体レーザ素子54と、基本レーザ光の波長を変換して半波長レーザ光(緑色レーザ光)を出力する波長変換素子55と、固体レーザ素子54とともに共振器を構成する凹面ミラー56と、励起用レーザ光および基本波長レーザ光の漏洩を阻止するガラスカバー57と、各部を支持する基台58と、各部を覆うカバー体59と、を備えている。
【0024】
この緑色レーザ光源装置22は、基台58を筐体41の取付部42に取り付けて固定され、緑色レーザ光源装置22と筐体41の側壁部44との間に所要の幅(例えば0.5mm以下)の間隙が形成される。これにより、緑色レーザ光源装置22の熱が赤色レーザ光源装置23に伝わりにくくなり、赤色レーザ光源装置23の昇温を抑制して、温度特性の悪い赤色レーザ光源装置23を安定的に動作させることができる。また、赤色レーザ光源装置23の所要の光軸調整代(例えば0.3mm程度)を確保するため、緑色レーザ光源装置22と赤色レーザ光源装置23との間に所要の幅(例えば0.3mm以上)の間隙が設けられている。
【0025】
図3は、図2に示した緑色レーザ光源装置22におけるレーザ光の状況を示す模式図である。半導体レーザ51のレーザチップ61は、波長808nmの励起用レーザ光を出力する。FACレンズ52は、レーザ光のファースト軸(光軸方向に対して直交しかつ図の紙面に沿う方向)の拡がりを低減する。ロッドレンズ53は、レーザ光のスロー軸(図の紙面に対して直交する方向)の拡がりを低減する。
【0026】
固体レーザ素子54は、いわゆる固体レーザ結晶であり、ロッドレンズ53を通過した
波長808nmの励起用レーザ光により励起されて波長1064nmの基本波長レーザ光
(赤外レーザ光)を出力する。この固体レーザ素子54は、Y(イットリウム)VO4(バナデート)からなる無機光学活性物質(結晶)にNd(ネオジウム)をドーピングしたものであり、より具体的には、母材であるYVO4のYに蛍光を発する元素であるNd+3に置換してドーピングしたものである。
【0027】
固体レーザ素子54におけるロッドレンズ53に対向する側には、波長808nmの励起用レーザ光に対する反射防止と、波長1064nmの基本波長レーザ光および波長532nmの半波長レーザ光に対する高反射の機能を有する膜62が形成されている。固体レーザ素子54における波長変換素子55に対向する側には、波長1064nmの基本波長レーザ光および波長532nmの半波長レーザ光に対する反射防止の機能を有する膜63が形成されている。
【0028】
波長変換素子55は、いわゆるSHG(Second Harmonics Generation)素子であり、固体レーザ素子54から出力される波長1064nmの基本波長レーザ光(赤外レーザ光)の波長を変換して波長532nmの半波長レーザ光(緑色レーザ光)を生成する。この波長変換素子55は、強誘電体結晶に、分極が反転した領域とそのままの領域を交互に形成した、周期的な分極反転構造を備えたものであり、分極反転周期方向(分極反転領域の配列方向)に基本波長レーザ光を入射させる。なお、強誘電体結晶には、例えばLN(ニオブ酸リチウム)にMgOを添加したものが用いられる。
【0029】
波長変換素子55における固体レーザ素子54に対向する側には、波長1064nmの基本波長レーザ光に対する反射防止と、波長532nmの半波長レーザ光に対する高反射の機能を有する膜64が形成されている。波長変換素子55における凹面ミラー56に対向する側には、波長1064nmの基本波長レーザ光および波長532nmの半波長レーザ光に対する反射防止の機能を有する膜65が形成されている。
【0030】
凹面ミラー56は、波長変換素子55に対向する側に凹面を有し、この凹面には、波長1064nmの基本波長レーザ光に対する高反射と、波長532nmの半波長レーザ光に対する反射防止の機能を有する膜66が形成されている。これにより、固体レーザ素子54の膜62と凹面ミラー56の膜66との間で、波長1064nmの基本波長レーザ光が共振して増幅される。
【0031】
波長変換素子55では、固体レーザ素子54から入射した波長1064nmの基本波長レーザ光の一部が波長532nmの半波長レーザ光に変換され、変換されずに波長変換素子55を通過した波長1064nmの基本波長レーザ光は、凹面ミラー56で反射されて波長変換素子55に再度入射し、波長532nmの半波長レーザ光に変換される。この波長532nmの半波長レーザ光は、波長変換素子55の膜64で反射されて波長変換素子55から出射される。
【0032】
ここで、固体レーザ素子54から波長変換素子55に入射して波長変換素子55で波長変換されて波長変換素子55から出射されるレーザ光のビームB1と、凹面ミラー56で一旦反射されて波長変換素子55に入射して膜64で反射されて波長変換素子55から出射されるレーザ光のビームB2とが互いに重なり合う状態では、波長532nmの半波長レーザ光と波長1064nmの基本波長レーザ光とが干渉を起こして出力が低下する。
【0033】
そこでここでは、波長変換素子55を光軸方向に対して傾斜させて、入射面および出射面での屈折作用により、レーザ光のビームB1、B2が互いに重なり合わないようにして、波長532nmの半波長レーザ光と波長1064nmの基本波長レーザ光との干渉を防ぐようにしており、これにより出力低下を避けることができる。
【0034】
なお、図2に示したガラスカバー57には、波長808nmの励起用レーザ光および波長1064nmの基本波長レーザ光が外部に漏洩することを防止するため、これらのレーザ光を透過しない膜が形成されている。
【0035】
図4は、図1に示した画像表示装置1の機能ブロック図である。制御ユニット14には、各色のレーザ光源装置22〜24を制御するレーザ光源制御部71と、携帯型情報処理装置2から入力される映像信号を変換する映像信号変換部72およびその出力信号に基づいて空間光変調素子25を制御する空間光変調素子制御部73を備えた画像表示制御部74と、携帯型情報処理装置2から供給される電力をレーザ光源制御部71および画像表示制御部74に供給する電源部75と、各部を総括的に制御する主制御部76と、を有している。
【0036】
主制御部76は、画像表示制御部74から入力される画像表示信号に基づき、各色のレーザ光源装置22〜24の点灯を制御する制御信号として、各レーザ光源装置22〜24の点灯を許可する点灯許可信号(LD ON)と、赤色、緑色および青色の各レーザ光源装置22〜24をそれぞれ点灯させる赤色点灯信号(LD RON)、緑色点灯信号(LD GON)および青色点灯信号(LD BON)を生成して、これらの制御信号をレーザ光源制御部71に出力する。
【0037】
レーザ光源制御部71は、主制御部76から入力される制御信号に基づき、各レーザ光源装置22〜24に対する駆動電流の印加を制御するための駆動制御信号(Ig、Ir、およびIb)を各レーザ光源装置22〜24に出力する。
【0038】
空間光変調素子制御部73は、映像信号変換部72から出力される映像信号に基づき、空間光変調素子25の動作を制御する制御信号として、基準電圧信号(LCOS VCOM)および画素電圧信号(LCOS ΔV)を生成して、これらの制御信号を空間光変調素子25に出力する。画素電圧信号(LCOS ΔV)は、実際には、空間光変調素子25が有する画素数分の信号数が存在するが、本実施の形態においては便宜上、空間光変調素子25が有するn番目の画素の画素電圧信号を「LCOS ΔV」として説明する。
【0039】
空間光変調素子25は、反射型の液晶表示素子、いわゆるLCOS(Liquid Crystal On Silicon)であり、シリコン基板上に形成した液晶層を透過したレーザ光をシリコン基板上の反射層で反射させて出射させる構成のものである。この空間光変調素子25では、空間光変調素子制御部73から入力される画素電圧信号(LCOS ΔV)に応じてレーザ光の出力(輝度)が増減し、各色のレーザ光源装置22〜24から時分割で入力される各色のレーザ光の出力を増減することで、所要の色相を表示させることができる。
【0040】
また、この空間光変調素子25は、空間光変調素子制御部73から入力される基準電圧信号(LCOS VCOM)に基づいて極性(pおよびn)が制御され、画素電圧信号(LCOS ΔV)は、基準電圧信号(LCOS VCOM)に応じて正負が反転する。
【0041】
図5は、緑色レーザ光源装置22、赤色レーザ光源装置23および青色レーザ光源装置24を点灯させて白色表示を行う従来の点灯シーケンスと、空間光変調素子25の動作との関係を示す図である。
【0042】
図5に示す従来例では、1フレームが3つの点灯区間(サブフレーム)に分割され、1フレームで緑色、赤色および青色をそれぞれ1回点灯させる表示となっており、1フレームにおいて赤色、緑色および青色の順序で点灯する。
【0043】
前記のように(図4を併せて参照されたい)、点灯許可信号(LD ON)と、赤色点灯信号(LD RON)、緑色点灯信号(LD GON)および青色点灯信号(LD BON)とが主制御部76からレーザ光源制御部71に出力され、点灯許可信号(LD ON)がオンとなると、赤色点灯信号(LD RON)、緑色点灯信号(LD GON)および青色点灯信号(LD BON)に応じて、赤色、緑色および青色の各レーザ光源装置22〜24が点灯する。
【0044】
また、基準電圧信号(LCOS VCOM)および画素電圧信号(LCOS ΔV)が空間光変調素子制御部73から空間光変調素子25に出力され、基準電圧信号(LCOS VCOM)に応じて空間光変調素子25の極性が切り替えられ、画素電圧信号(LCOS ΔV)に応じて空間光変調素子25の透過率が変化して各色レーザ光の出力(輝度)が調整される。
【0045】
ここで、白色を表示する場合、空間光変調素子25で赤色、緑色、青色のレーザを変調させればよく、画素電圧信号の絶対値(LCOS |ΔV|)は、赤色、緑色、青色全ての点灯区間A1〜A6、B1〜B6、C1〜C3で最低電圧となり、出力(輝度)は最大レベル(255)となる。またここでは、赤色、緑色および青色の順序で点灯するRGB点灯パターンを採用しているため、空間光変調素子25に対して赤色、緑色、青色の順序でレーザ光が出力される。
【0046】
ところが、低温下で緑色レーザ光源装置22は発振効率が悪く、立ち上がりの際に時間がかかる。図6は、図5に示す従来の点灯シーケンスにより緑色レーザ光源装置22の点灯を開始した直後の出力を示す図である。図6に示すように、緑色の出力が安定し、例えばあらかじめ決められた値である0.25W以上となるまでには、起動後90sec程度の時間がかかる。このため、画像表示装置1を起動してから暫くの間は緑色が表示できないか、または他の色のレーザ光とバランスが取れるだけの光量を得ることができず、所望の画像表示ができないという問題が生じる。例えば起動直後に白色画像を表示した場合、緑色が表示できないため赤色と青色の混合色であるマゼンタ色となる。しかもその表示色は時間とともに変化し、通常あるべき表示色に徐々に近づいていく。このような異常な表示色の変化状態は、白色画像のみに関わらず、他の画像や映像においても同様に起こる。したがってユーザは、自分が先入観として持っているものとは異なる表示色を有する画像や映像を観ることになるため、実際には故障ではないのに、画像表示装置1が故障したのではないか、と勘違いすることになる。
【0047】
この問題を解決するためには、例えば以下のような手段がある。図7は、緑色レーザ光源装置22、赤色レーザ光源装置23および青色レーザ光源装置24を点灯させて青色表示を行う従来の点灯シーケンスと、空間光変調素子25の動作との関係を示す図である。図7に示すように、画像表示装置1を起動してから緑色レーザ光の出力が安定すると思われるまでの一定時間は、青色のみを投影するようにする。すなわち、いわゆるブルーバックを表示すればよい。そうすれば、緑色レーザの出力が安定していなくても、投影画像にはその異常が見られないため、問題にはならない。
【0048】
ここで、青色を表示する場合、空間光変調素子25で青色レーザを変調させればよく、画素電圧信号の絶対値(LCOS |ΔV|)は、青色の点灯区間A3、A6、B3、B6、C3で最低電圧となり、出力(輝度)は最大レベル(255)となる。
【0049】
しかしながら、この方法では、起動直後から暫くの間、緑色レーザ光源装置22の起動遅延により異常な表示色の変化を有する画像や映像が表示されてしまうという問題を回避することはできるが、画像表示装置1の起動時間の短縮にはならず、ユーザに与える不安感の解消には不十分である。
【0050】
これをさらに改善するためには、例えば図8に示す制御を行えばよい。図8は、本発明の実施形態により緑色レーザ光源装置22、赤色レーザ光源装置23および青色レーザ光源装置24を点灯させて青色表示を行う点灯シーケンスと、空間光変調素子25の動作との関係を示す図である。
【0051】
この実施の形態では、通常時、緑色レーザ光源装置22を点灯させる区間A2、A5、B2、B5、C2に加え、緑色以外のレーザ光源装置が点灯する区間(図8では赤色の点灯区間A1、A4、B1、B4、C1)でも緑色レーザ光源装置22が点灯する構成となっている。すなわち、本来は赤色レーザ光源装置23の点灯割当区間A1、A4、B1、B4、C1を、追加的に緑色レーザ光源装置22の点灯に充てている。それに加えて、追加的に充てた緑色レーザ光源装置22の点灯区間A1、A4、B1、B4、C1は通常時の緑色レーザ光源装置22の点灯区間A2、A5、B2、B5、C2と隣接させることで、全体的な緑色レーザ光源装置22の点灯区間が長くなり、それにより励起レーザの発熱が促され、励起効率が向上し、その結果、緑色レーザ光源装置22の起動時間を短縮することができる。低温下では緑色レーザ光源装置22の起動に時間がかかるが、本実施の形態をとることでレーザ自身の発熱により起動時間を短縮することができる。
【0052】
また、本実施の形態において、追加的に緑色レーザ光源装置22の点灯に充てなかったのは、青色レーザ光源装置24の点灯区間A3、A6、B3、B6、C3である。この青色レーザ光源装置24の点灯時間は、例えば図7と同様に、画像表示装置1を起動してから緑色レーザ光の出力が安定すると思われるまでの一定時間は、青色のみを投影するようにする。すなわち、いわゆるブルーバックを表示すれば、緑色レーザの出力が安定していなくても、投影画像にはその異常が見られないため、問題にはならない。
【0053】
図9は、本発明による緑色レーザ光源装置起動時の出力を示す図である。起動後、緑色の出力が例えばあらかじめ決められた値である0.25W以上と安定するまでに20secと短縮されるため、所望の画像表示を行う時間を90secから20secに短縮することができる。その結果、ユーザが所望する映像の表示にいち早く切り替えることができる。
【0054】
また緑色レーザ光源装置22の照射光量があらかじめ決められた値以上となるまでの間は、緑色レーザ光源装置22を点灯させる区間(図8では点灯区間A1、A2、A4、A5、B1、B2、B4、B5、C1、C2)においては、緑色レーザ光源装置22からの出射光が外部へ投射されないよう、空間光変調素子25を制御し、緑色以外の光源装置を点灯させる区間(図8では青色の点灯区間A3、A6、B3、B6、C3)においては、その光源装置からの出射光が外部へ投射されるよう、空間光変調素子25を制御することで、ユーザに与える不安感の解消することができる。
【0055】
本実施の形態においては、画像表示装置1の起動直後から一定時間、ブルーバックを表示するようにした。しかしながら、追加的に緑色以外のレーザ光源装置のいずれかの点灯区間を緑色レーザ光源の点灯に充て、かつ緑色レーザ光源の点灯時に緑色レーザ光が外部へ投影されないよう制御するのであれば、表示画像はブルーバックに限定しなくてもよい。例えば、正常時はブルーバックを表示し、異常時はレッドバックを表示するようにしてもよい。もしくは、緑色以外を使用して起動時間のメータを表示し起動までの残り時間を表示するようにしてもよいし、緑色以外を使用して会社のロゴ、機器の操作方法、注意事項を表示する、などの画像表示を行ってもよい。この場合、緑色レーザ光源装置22を点灯させる区間を増やしながら、緑色以外の光源装置を点灯させる区間で、フレームおきに青色および赤色の点灯を行い、色表現を行うこととなる。
【0056】
以上のように本発明によれば、起動時における緑色レーザ光源装置の立ち上がり時間を短縮することができ、立ち上がりの際には緑色レーザ光源装置以外のレーザ光源装置を用いて表示をすることで、ユーザに与える不安感の解消、および待機時間の短縮を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明にかかる画像表示装置は、低温下での緑色レーザ光源装置の起動時間を短縮する効果を有し、光源として半導体レーザを用いたレーザ光源装置を備えた時分割表示方式の画像表示装置などとして有用である。
【符号の説明】
【0058】
1 画像表示装置
22 緑色レーザ光源装置
23 赤色レーザ光源装置
24 青色レーザ光源装置
25 空間光変調素子
54 固体レーザ素子
55 波長変換素子
71 レーザ光源制御部
72 映像信号変換部
73 空間光変調素子制御部
74 画像表示制御部
76 主制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤色、緑色および青色の各色光をそれぞれ出力する赤色、緑色および青色の各光源装置と、
これらの各光源装置から時分割で出力される各色光を映像信号に基づいて変調する空間光変調素子と、
1フレームを構成する複数の点灯区間ごとに前記光源装置の点灯を制御するとともに、前記空間光変調素子での各色光の出力を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、起動時から前記緑色の光源装置の照射光量があらかじめ決められた値以上となるまでの間、前記緑色の光源装置の点灯割当区間において前記緑色の光源装置を点灯させるとともに、緑色以外の光源装置の点灯割当区間の少なくともいずれかにおいて、本来点灯させるべき光源装置に代えて前記緑色の光源装置を点灯させることを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記1フレーム内において、前記本来点灯させるべき光源装置に代えて緑色の光源装置を点灯させる区間は、前記緑色の光源装置の点灯割当区間と隣接していることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記起動時から緑色の光源装置の照射光量があらかじめ決められた値以上となるまでの間、前記緑色光源を点灯させる区間においては、前記緑色の光源装置からの出射光が外部へ投射されないよう、前記空間光変調素子を制御することを特徴とする請求項1〜2記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記緑色以外の光源装置を点灯させる区間の少なくともいずれかにおいては、その光源装置からの出射光が外部へ投射されるよう、前記空間光変調素子を制御することを特徴とする請求項3記載の画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−242708(P2012−242708A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114325(P2011−114325)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】