画像計測装置
【課題】光学部材を透過した投影画像のドット画像の形状をぼけにくくし、光学部材から反射した投影画像及び光学部材を透過した投影画像の各光学特性の各計測を同時にでき、かつ正確なドット画像の計測を行うことができる。
【解決手段】計測対象のプロジェクタ20から投射された光画像を投影する計測用のスクリーン11の投影光の波長域での反射率を90%以上97%以下とする。計測用のスクリーン11が透過機能に特化した機能を持つことで生じるドット形状の変形という弊害を排除しつつ、スクリーン11で反射された投影画像を観察すると同時に、スクリーンの背面側に配置された撮影装置12によって透過した投影画像を撮影する。
【解決手段】計測対象のプロジェクタ20から投射された光画像を投影する計測用のスクリーン11の投影光の波長域での反射率を90%以上97%以下とする。計測用のスクリーン11が透過機能に特化した機能を持つことで生じるドット形状の変形という弊害を排除しつつ、スクリーン11で反射された投影画像を観察すると同時に、スクリーンの背面側に配置された撮影装置12によって透過した投影画像を撮影する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクタからスクリーンに投影された投影画像の光学特性を計測する画像計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プロジェクタは、光源から照射された光束を画像情報に応じて変調して作成した光画像を、投影画像の投影光の一部を拡散透過させる材料で作られた光学部材であるスクリーンに投影するものである。そのスクリーンが反射型スクリーンであれば投影画像をスクリーンの表面側から観察でき、透過型スクリーンであれば投影画像をスクリーンの背面側から観察できる。そして、このプロジェクタから投影された投影画像の品質は、解像度、明るさや色味などの光学特性で判断される。この光学特性は、プロジェクタが投影する投影画像の最小単位であるドット画像の再現性やフォーカス性に起因する特性である。よって、ドット画像の再現性やフォーカス性の良し悪しで、プロジェクタの画像品質が左右されることになる。
【0003】
このドット画像の再現性やフォーカス性の良し悪しは、これまで計測評価者が目視で計測用のスクリーン上に投影した投影画像を観察して評価していた。しかし、目視で主観的に評価する官能評価方法では、各計測評価者によって評価結果に違いが生じたり、ばらつきが出たりする問題が生じていた。そこで、計測用のスクリーン上の投影画像を撮影装置で撮影してその画像信号を解析して投影画像の光学特性を算出して数値化する方法がある。この方法では、各計測評価者による評価結果の違いやばらつきなどの問題が生じない。しかし、光学特性を数値化する方法では、投影画像のドット画像を詳細に計測するために、計測用のスクリーン上における全領域の投影画像を複数の領域に分割し各領域毎のスクリーン上の投影画像をそれぞれ撮影しなければならなかった。特に計測用のスクリーンが反射型スクリーンであると、この反射型スクリーンの全領域の投影画像を撮影して光学特性を計測する場合ではプロジェクタと反射型スクリーンとの間に撮影装置が位置して移動することになる。このため、計測箇所によってはプロジェクタからの投影画像を遮り、計測できない領域の投影画像が生じるという問題がある。そこで、計測用のスクリーンに透過型スクリーンを用いて投影画像の光学特性を算出するが提案されている。この方法として、特許文献1に記載されたものが知られている。この特許文献1のプロジェクタ検査装置では、プロジェクタからの投影画像が透過型スクリーンを透過し、透過した投影画像をスクリーンの背面側から透過画像撮影装置で撮影する。このため、投影画像を遮ることなくスクリーンの全域の投影画像を透過画像撮影装置で撮影でき投影画像の光学特性を算出して数値化できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のプロジェクタ検査装置における透過型スクリーンは不透明樹脂層に光学ビーズを均一に分散させて構成されている。この光学ビーズは不透明樹脂層に入射した光束を集束させるレンズ機能を有している。上記特許文献1のプロジェクタ検査装置では、投影画像を上記光学ビームのレンズ機能によって集束させながらスクリーンを透過させ、透過した投影画像をスクリーンの背面側から透過画像撮影装置で撮影している。図15の(a)に示すような投影パターンを反射型スクリーンに投影した場合であれば図15の(b)に示すように投影パターンの白色ラインの部分がドット画像で撮影される。上記特許文献1の透過型スクリーンでは、図15の(c)に示すように、ドット画像に対応する光学ビーズを含めドット画像を中心にした周辺の光学ビーズ部位が光るので、周辺の光学ビーム部位の光によってドット画像の形状がぼけてしまう。このため、上記特許文献1の透過型スクリーンでは、正確なドット画像の計測ができないという不具合がある。
【0005】
また、上記特許文献1のプロジェクタ検査装置では、スクリーンの計測領域やフォーカス位置に応じて撮影装置を三次元に移動させる移動機構がスクリーンの透過側に設けられている。この移動機構は金属等の金具を用いることが多く、そのためスクリーンを透過した投影画像の投影光が透過画像撮影装置の移動機構の表面に反射し、その一部が再度透過型スクリーンの背面に照射する。そして、その照射された光がスクリーンの背面で再び反射して透過画像撮影装置で撮影される。この反射光はフレア光と呼ばれる。このフレア光がスクリーンの背面に照射されると、フレア光が重なった投影画像を透過画像撮影装置によって撮影することになる。このため、投影画像が明るくなりすぎてしまう。このため、ドット画像全体がぼけてしまい、正確なドット画像の計測ができなかった。
【0006】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、光学部材の投影画像におけるドット画像を正確に計測できる画像計測装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、投射される投影画像の投影光の一部を拡散透過させる材料で作られた光学部材と、該光学部材上に投影されて透過した投影画像を撮影する透過画像撮影装置と、該撮影装置から出力される画像信号を解析して前記投影画像の光学特性を算出して数値化する画像処理装置とを備え、前記投影画像の光学特性を計測する画像計測装置において、前記光学部材の投影光の波長域での反射率を90%以上97%以下とすることを特徴とするものである。
【0008】
本発明においては、投影される光学部材の投影光の波長域での反射率を90%以上97%以下と規定する。後述する実験に示すように、投影光の反射によって光学部材を透過した投影画像がぼけにくくなり、透過した透過側の投影画像を形成するドット画像の形状の変形を抑えられることがわかった。このため、光学部材を透過した投影画像のドット画像の形状が光学部材で反射した投影画像のドット画像の形状とほぼ同じとなる。これにより、光学部材を透過した投影画像を撮影することで正確なドット画像の計測が可能となった。
【発明の効果】
【0009】
以上、本発明によれば、光学部材の投影画像におけるドット画像を正確に計測できる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態の画像計測装置の構成を示す概略図である。
【図2】反射側から計測したコントラスト比と透過側から計測したコントラスト比との相関関係を示す特性図である。
【図3】スクリーンの厚さと反射率との関係を示す特性図である。
【図4】スクリーンの拡散透過光の光量測定実験の構成を示す概略図である。
【図5】スクリーン厚さ20[μm]のときの光量センサの画角と拡散透過光の光量との関係を示す特性図である。
【図6】スクリーン厚さが50[μm]と100[μm]のときの光量センサの画角と拡散透過光の光量との関係を示す特性図である。
【図7】スクリーンの拡散透過光の光量測定実験の別の構成を示す概略図である。
【図8】評価者によるフォーカス感値と算出のコントラスト比との関係を示す特性図である。
【図9】本実施形態の画像計測装置による画像計測動作を示すフローチャートである。
【図10】検査処理を示すフローチャートである。
【図11】本実施形態の変形例1の画像計測装置の校正を示す概略図である。
【図12】画像計測装置の校正手順を示すフローチャートである。
【図13】本実施形態の変形例2の画像計測装置の構成を示す概略図である。
【図14】本実施形態の変形例3の画像計測装置の構成を示す概略図である。
【図15】投影パターンを反射型スクリーン又は透過型スクリーンに投影したときのドット画像の形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を適用した画像計測装置の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は実施形態の画像計測装置の構成を示す概略図である。同図に示す画像計測装置10は、投影画像の投影光の一部を拡散透過させる材料で作られた光学部材の一つであるスクリーン11及び撮影装置12を含んで構成されている。スクリーン11は、全波長域で反射率が90%以上97%以下と規定し、詳細にはフラットである白色の分光特性を有し、計測対象のプロジェクタ20から投射された投影画像21が表面11−1で拡散反射する同時に入射光画像の一部が透過するスクリーンとした。入射光画像が透過していく際、その光の分散によって、透過側の投影画像22がぼけることを防ぐために十分薄い素材とする。以上の条件を満たすスクリーンとしては、例えばポリエステルなどの強靭な素材のフィルムに1[μm]以下厚さとなる染料または顔料などを分散させたもので、20〜100[μm]の範囲の厚さのものなどである。実験からは50[μm]の厚さが好ましい。具体的には、このフィルムの厚さが20[μm]より薄いと透過した投影画像光が十分拡散するが、透過した光の画像がぼけてしまう。また、フィルムの厚さが100[μm]より厚いと透過した投影画像光の像はぼけにくいが、光の拡散反射が十分でなくなり、フィルム上で光の画像が形成されなくなって透過側からの計測が困難となる。例えばスクリーンの部材をガラスにしたと考えれば計測できないことと同じである。
【0012】
そこで、フィルムの厚さを決定する判断の一例として、フィルムの厚さの異なる2枚の拡散透過型のAフィルム及びBフィルム(フィルムAの厚さ>フィルムBの厚さ)を用いて反射側から計測したコントラスト比と透過側から計測したコントラスト比との相関関係を図2に示すように、両者のコントラスト比において、反射側からの計測値が基準値となり、透過側からの計測値が反射側からの計測値に近い値であるほど、投影光の波長域で反射率が90%以上の適正なフィルム条件となる。一方、反射率が100%に近づくと結果的に透過する光が少なくなり、透過光による投影画像の計測ができなくなる。そして、上述したようにスクリーン11のポリエステルなどのフィルムには1[μm]以下の厚さの染料または顔料などが分散されており、投影画像の投影光の一部はフィルム、あるいは分散されている染料又は顔料に吸収される。これらにより、スクリーン11の反射率は最大97%程度になると考えられる。以上説明したように、反射率に関しては図3で示すようにスクリーン11の厚さにも関係があり、反射率90%以上97%以下を確保するためには、50[μm]以上の厚さが必要となる。
【0013】
また、上述したように、本実施形態で使用されるフィルムの素材としてのポリエステルなどの強靭な素材には、可視光領域での分光特性がフラットな乳白剤を分散させたものである。この乳白剤としては、シリカなどの不溶性の鉱物、各種脂肪酸の金属塩、合成ポリマーなどが知られている。また、上述したように、スクリーンに投影されたプロジェクタによるドット画像を拡大撮影する機能を考慮して、その素材は1[μm]以下のサイズであることが望ましい。上記フィルムを用いたスクリーンは、入射してきた光に対して拡散反射する成分と拡散透過する成分が得られるものである。
【0014】
上述したように、本実施形態で使用されるフィルムの素材としてのポリエステルなどの強靭な素材には、可視光領域での分光特性がフラットな乳白剤を分散させたものである。この乳白剤としては、シリカなどの不溶性の鉱物、各種脂肪酸の金属塩、合成ポリマーなどがある。また、上述したように、スクリーンに投影されたプロジェクタによるドット画像を拡大撮影する機能を考慮して、その素材は1[μm]以下の厚さであることが望ましい。上記フィルムを用いたスクリーンは、入射してきた光に対して拡散反射する成分と拡散透過する成分が得られるものである。
【0015】
また、本実施形態の画像計測装置における撮影装置12には、マクロレンズ13が具備され、マクロレンズ13のピント、及びマクロレンズ13からスクリーンの光学面までの距離はスクリーン11の光学面を撮影できるよう設定する。スクリーン11の光学面での撮影倍率は、想定されるプロジェクタのドット画像サイズに応じて選定し、少なくともドット画像の解像度より高い必要がある。
【0016】
通常、このようなスクリーンは透過率が低すぎるため、透過光を計測するためのスクリーンとして用いられることは無い。これに対して、プロジェクタの投影画像を本実施形態のスクリーンに投影した場合、反射側の投影画像と、透過側の投影画像は、画像のコントラストや解像度において、ほぼ同等のドット画像を得られ、実際に使用される状態と同じ画像を撮影することが可能となる。
【0017】
更に、スクリーン11の反射率が90%以上としたため、通常のプロジェクタの反射型スクリーンに対して、目視で反射側の投影画像を観察することも同時に可能となる。すなわち、実施形態の画像計測装置10によって透過側に設けられた撮影装置12による撮影結果や解析結果を得られると共に、直接目視によって行われる官能評価も同時に行うことができる。
【0018】
また、スクリーン11の厚さは、スクリーン11から透過する光にも関係している。本画像計測装置では、計測対象のプロジェクタの投影開始位置(投影レンズ位置)から見て、スクリーン11に対して、さまざまな入射角度で投影光が入射されることになる。これら、様々な入射角度で投影光が入射されても、撮影装置12による安定した撮影を果たすためには入射角に対する透過光強度分布がいわゆるランバート分布であることが望ましい。具体的には、図4に示すようにスクリーン11のレーザ光の光学面の裏側に光量センサ23を設置する。そして、スクリーン11を透過拡散する光の光量を光量センサ23でレーザ光の照射方向を基準にした画角θを変化させて測定する。そして、図4のスクリーン11の厚さが20μmとした場合、図5に示すように、レーザ光に対する透過光がランバート分布を示さず、ちょうど直進した位置にある光量が大きくなってしまう。
【0019】
このような状態の場合、もし計測対象のプロジェクタの投影開始位置(投影レンズ位置)が、光学面の真正面にあるとき、その透過光は非常に大きくなってしまうのに対して、真正面でなく斜めから投影光が入射する位置にあるとその透過光は相対的に小さくなってしまう。このような状況の場合、この透過光を撮影する撮影装置12側は大きなダイナミックレンジが必要となり、例えばその状況によって撮影装置12のレンズの絞りを変更して撮影光量を調整する必要があるなど、使いづらくなってしまう。一方、図6に示すようにスクリーン11の厚さが100[μm]であれば完全に拡散していることがわかる。これらの理由からも、スクリーンの厚さは50[μm]以上が望ましい。
【0020】
ところで、本実施形態の画像計測装置では、スクリーン11の光学面に到達した光を反射拡散させ、撮影装置12によって当該光学面を撮影することで光学面のコントラストを検出している。その際光学面での像がぼけてしまうと、正しく計測することができない。そこで、図7の(a)に示す実験を通じて、フィルム31の光源32による照射側にレチクル33を設置させている。このレチクル33は光学ガラスで作られ、図7の(b)に示すようにフィルム31側に万線パターンピッチが蒸着されている。この万線パターンピッチが実際にプロジェクタ投影画像のパターンピッチ相当になっていることが重要である。図7の(c)に示すように、100[μm]を大きく超えるような厚さになると、投影画像に対して透過した画像のコントラスト比が急激に減少してしまう。このように、スクリーンの光学面で反射する光やスクリーンを透過する光を様々な観点で見た場合、スクリーンの光学面の反射率が90%以上97%以下、スクリーンの厚さが50[μm]〜100[μm]であることが望ましいと言える。
【0021】
また、画像のフォーカスの良し悪しは、評価者が数値化したフォーカス感という値と、撮影された画像から画像処理をして算出したコントラスト比を使って図8に示すようなグラフを形成できる。このグラフは、評価者が主観評価した数値と、画像計測装置により算出された光学特性値の関係を表す。このため、フォーカス感がある値以上ある場合は良品、それ以下の場合は不良品と判断される。この場合、その判断を対応するコントラスト比から判断できることが分かる。この関係から、評価者によってフォーカス感との同時チェックを行うことや、例えば朝一番のチェックを評価者が行い、フォーカス感とコントラスト比の関係に間違いがないかなどのチェックを行うこともできる。更に、これまで行われていた官能評価に対する画像計測装置により算出された光学特性値との相関値をとることで、この相関値を用いて画像計測装置によって得られた光学特性値に対応する官能評価による評価結果を導き出すことも可能となる。
【0022】
実際の画像計測動作のフローを示す図9に従って説明すると、計測対象のプロジェクタから検査画像をスクリーンに投影する(ステップS101)。そして、スクリーンに投影された画像を背面側からマクロレンズを有する撮影装置がスクリーンを透過して拡散反射した投影画像を撮影する(ステップS102)。そして、その画像信号が画像入力装置(図示せず)を介して画像処理装置(図示せず)に送られ、当該画像処理装置で光学特性計測が行われる(ステップS103、S104)。画像処理装置では、画像信号からプロジェクタのドット画像が解析され、例えばドット面積やドット明るさなどの光学特性値として出力される(ステップS105)。また、図10に示す検査処理フローに示すように、プロジェクタの良品・不良品の検査に使う場合は、取り込んだ光学特性値を閾値と比較して光学特性値が閾値より以上であれば良品とし(ステップS201、ステップS202:YES、ステップ203)、閾値より小さいときは不良品として処理する(ステップS202:NO、ステップS204)。この他にも、複数の特徴量を使う方法や、官能評価との併用も考えられる。特に、官能評価は、上述したように、主観的な評価であるため評価者によって評価のバラツキが生じるが、スクリーンの全体の色等のバランス評価は評価者による官能評価のほうが優れていると言われている。また、これまでの官能評価の実績を鑑みれば官能評価における判定の相関データも活用したい観点からも官能評価との併用を行うことが好ましい。
【0023】
次に、実施形態の変形例1について以下に説明する。
図11は実施形態の変形例1の画像計測装置の校正を示す概略図である。図12は校正手順を示すフローチャートである。図11において、図1と同じ参照符号は同じ構成要素を示す。図11に示す本変形例の画像計測装置の校正は、光学特性の評価実施前に画像計測装置の精度を保証、または補正する一例である。図12の校正手順に従い、図11のスクリーン11の反射側の投影画像21をマイクロレンズ15で取り込んで撮影装置14で撮影し(ステップS301、S302)、透過側の投影画像をマイクロレンズ13で取り込んで撮影装置12で撮影する(ステップS303)。それぞれ撮影した画像を解析して両者の解析結果を比較して補正量を算出する(ステップS304)。そして、算出した補正量に基づいて透過側の撮影装置12を校正する(ステップS305)。このように、反射側の画像と、透過側の画像とのドット形状は基本的には同一であるが多少のボケ、歪みは発生してしまうため、この比較によりどの程度のボケや歪みが生じているかを確認する。その結果、有意な差がある場合、反射側の投影画像の解析結果を基準として透過側の投影画像の解析結果に対する補正量を求め、画像計測装置の光学特性計測時に補正を行う。一例としては反射側の撮影装置14で撮影した光学特性を基準にして透過側の撮影装置で撮影した光学特性の補正量を求め、当該補正量に基づいて透過側の撮影装置の撮影環境や撮影条件を校正することで、ボケや歪みを低減させる。これらの校正は、計測動作開始前あるいは随時行うものである。
【0024】
次に、本実施形態の変形例2について以下に説明する。
図13は実施形態の変形例2の画像計測装置の構成を示す概略図である。同図において、図1と同じ参照符号は同じ構成要素を示す。同図の(a)に示す本変形例の画像計測装置40は、撮影装置12及びマクロレンズ13の全体を遮光する筐体41を備えている。この筐体41の一部には、撮影装置12の撮影領域に設けられたスクリーン11が設けられている。このスクリーン11は画像計測に必要なサイズを有し、必要以上に大きくしないようにしている。このように撮影装置等の一体構成にすることで撮影環境を一定にすることでレンズ13のレンズピントのズレなど撮影条件の変化による影響を排除できる。また、筐体41によって撮影装置等の全体を遮光していることで、外部からの光の進入を防ぐことができる。すなわち、図13の(a)に示すように、画像計測に関係ない画像光24がある撮影環境であっても無関係な画像光24がフレア光としてスクリーンに到達することを完全に遮断している。
【0025】
更に、図13の(b)に示すように、計測対象のスクリーン11における投影面を所定のサイズで複数の撮影領域に分割し、分割した各投影面毎のスクリーン42−1〜42−n(nは正の整数)の撮影領域に画像計測装置40をそれぞれ設置することで、各投影面における光学特性の計測を容易に行うことができる。つまり、本変形例の画像計測装置40は撮影装置とその撮影面のサイズでのみ規定されるので、装置そのもののサイズはプロジェクタ投影画像のサイズに比べて非常に小型である。そのため、複数の撮影領域の同時設置が可能となる。
【0026】
次に、図14は実施形態の変形例3の画像計測装置の構成を示す概略図である。同図において、図7及び図13と同じ参照符号は同じ構成要素を示す。本変形例の画像計測装置では、デジタルカメラに搭載されているレンズのCCD面相当位置にレクチル33を設置して、レクチル33の背面から光源32から照明光を照射する。そして、レンズ34の焦点位置に相当する撮影面の位置に本変形例の画像計測装置40を設置する。これにより、レンズ34の撮影解像度を任意位置ごとに容易に計測することができる。
【0027】
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様A)
本実施形態の画像計測装置において、光学部材の投影光の波長域での反射率を90%以上97%以下とする。これによれば、上記実施形態について説明したように、計測用のスクリーンが透過機能に特化した機能を持つことで生じるドット形状の変形という不具合を排除しつつ、計測対象のプロジェクタの投影画像を観察できると同時に、正確なドット画像形状の透過側の投影画像を撮影できる。これにより、反射側の投影画像と透過側の投影画像を容易にかつ同時に比較でき、透過側の投影画像の撮影において高品位な画像を計測できる。また、反射側の投影画像に対する目視評価と透過側の投影画像を撮影した画像信号での光学特性の計測を同時に行うことで、官能評価を同時に行うことができる。
(態様B)
(態様A)において、光学部材の反射側と透過側にそれぞれ撮影装置を設置して各撮影画像の各光学特性を比較することで反射側の撮影装置による撮影画像を基準とした補正量を求める。これによれば、上記実施形態の変形例1について説明したように、求めた補正量に基づいて透過側の撮影装置を校正して計測精度を向上させることができる。
(態様C)
(態様A)において、外部からの光を遮断する筐体内に撮影装置を設け、撮影装置の撮影領域であって該筐体の一部に光学部材を備え、撮影装置を光学部材から所定の位置に設置固定する。これによれば、上記実施形態の変形例2について説明したように、フレア光による撮影画像のコントラスト低下を防止して、計測精度の低下を抑制することができる。また、スクリーンと撮影装置との位置関係を固定した状態で投影画像に対する計測位置の変更を行う場合でもスクリーンと撮影装置の距離のずれによる撮影ボケによる計測精度の低下を防ぎながら容易に計測を行うことができる。また、画像計測装置そのものを小型にできるので、大きなスクリーンを用いた投影の一部に本装置を組み込んで、他の計測と併用でき、複数個の画像計測装置を同時運用して、さらにそのレイアウトを変更することで柔軟な計測環境を構築できるなどの効果も有する。
(態様D)
(態様A)〜(態様C)のいずれかにおいて、光学部材はスクリーンであり、該スクリーンに投射される投影画像はプロジェクタからの投影画像である。これによれば、上記実施形態について説明したように、スクリーンの反射側の投影画像とスクリーンの透過側の投影画像を容易にかつ同時に比較でき、スクリーンの透過側の投影画像の撮影において高品位な画像を計測できる。また、スクリーンの反射側の投影画像に対する目視評価とスクリーンの透過側の投影画像を撮影した画像信号での光学特性の計測を同時に行うことで、官能評価を同時に行うことができる。
(態様E)
(態様A)〜(態様C)のいずれかにおいて、光学部材に投射される投影画像は、レンズを介した画像である。これによれば、上記実施形態の変形例3について説明したように、レンズを介して光学部材に投影されて反射する画像とレンズを介して光学部材を透過した画像とを容易にかつ同時に比較でき、レンズの解像度を容易に計測できる。
【符号の説明】
【0028】
10 画像計測装置
11 スクリーン
12 撮影装置
13 マクロレンズ
20 計測対象のプロジェクタ
21 投影画像
22 透過側の投影画像
23 光量センサ
24 画像計測に関係ない画像光
31 フィルム
32 光源
33 レチクル
34 レンズ
40 画像計測装置
41 筐体
42−1〜42−n スクリーン
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【特許文献1】特許第4,100,075号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクタからスクリーンに投影された投影画像の光学特性を計測する画像計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プロジェクタは、光源から照射された光束を画像情報に応じて変調して作成した光画像を、投影画像の投影光の一部を拡散透過させる材料で作られた光学部材であるスクリーンに投影するものである。そのスクリーンが反射型スクリーンであれば投影画像をスクリーンの表面側から観察でき、透過型スクリーンであれば投影画像をスクリーンの背面側から観察できる。そして、このプロジェクタから投影された投影画像の品質は、解像度、明るさや色味などの光学特性で判断される。この光学特性は、プロジェクタが投影する投影画像の最小単位であるドット画像の再現性やフォーカス性に起因する特性である。よって、ドット画像の再現性やフォーカス性の良し悪しで、プロジェクタの画像品質が左右されることになる。
【0003】
このドット画像の再現性やフォーカス性の良し悪しは、これまで計測評価者が目視で計測用のスクリーン上に投影した投影画像を観察して評価していた。しかし、目視で主観的に評価する官能評価方法では、各計測評価者によって評価結果に違いが生じたり、ばらつきが出たりする問題が生じていた。そこで、計測用のスクリーン上の投影画像を撮影装置で撮影してその画像信号を解析して投影画像の光学特性を算出して数値化する方法がある。この方法では、各計測評価者による評価結果の違いやばらつきなどの問題が生じない。しかし、光学特性を数値化する方法では、投影画像のドット画像を詳細に計測するために、計測用のスクリーン上における全領域の投影画像を複数の領域に分割し各領域毎のスクリーン上の投影画像をそれぞれ撮影しなければならなかった。特に計測用のスクリーンが反射型スクリーンであると、この反射型スクリーンの全領域の投影画像を撮影して光学特性を計測する場合ではプロジェクタと反射型スクリーンとの間に撮影装置が位置して移動することになる。このため、計測箇所によってはプロジェクタからの投影画像を遮り、計測できない領域の投影画像が生じるという問題がある。そこで、計測用のスクリーンに透過型スクリーンを用いて投影画像の光学特性を算出するが提案されている。この方法として、特許文献1に記載されたものが知られている。この特許文献1のプロジェクタ検査装置では、プロジェクタからの投影画像が透過型スクリーンを透過し、透過した投影画像をスクリーンの背面側から透過画像撮影装置で撮影する。このため、投影画像を遮ることなくスクリーンの全域の投影画像を透過画像撮影装置で撮影でき投影画像の光学特性を算出して数値化できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のプロジェクタ検査装置における透過型スクリーンは不透明樹脂層に光学ビーズを均一に分散させて構成されている。この光学ビーズは不透明樹脂層に入射した光束を集束させるレンズ機能を有している。上記特許文献1のプロジェクタ検査装置では、投影画像を上記光学ビームのレンズ機能によって集束させながらスクリーンを透過させ、透過した投影画像をスクリーンの背面側から透過画像撮影装置で撮影している。図15の(a)に示すような投影パターンを反射型スクリーンに投影した場合であれば図15の(b)に示すように投影パターンの白色ラインの部分がドット画像で撮影される。上記特許文献1の透過型スクリーンでは、図15の(c)に示すように、ドット画像に対応する光学ビーズを含めドット画像を中心にした周辺の光学ビーズ部位が光るので、周辺の光学ビーム部位の光によってドット画像の形状がぼけてしまう。このため、上記特許文献1の透過型スクリーンでは、正確なドット画像の計測ができないという不具合がある。
【0005】
また、上記特許文献1のプロジェクタ検査装置では、スクリーンの計測領域やフォーカス位置に応じて撮影装置を三次元に移動させる移動機構がスクリーンの透過側に設けられている。この移動機構は金属等の金具を用いることが多く、そのためスクリーンを透過した投影画像の投影光が透過画像撮影装置の移動機構の表面に反射し、その一部が再度透過型スクリーンの背面に照射する。そして、その照射された光がスクリーンの背面で再び反射して透過画像撮影装置で撮影される。この反射光はフレア光と呼ばれる。このフレア光がスクリーンの背面に照射されると、フレア光が重なった投影画像を透過画像撮影装置によって撮影することになる。このため、投影画像が明るくなりすぎてしまう。このため、ドット画像全体がぼけてしまい、正確なドット画像の計測ができなかった。
【0006】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、光学部材の投影画像におけるドット画像を正確に計測できる画像計測装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、投射される投影画像の投影光の一部を拡散透過させる材料で作られた光学部材と、該光学部材上に投影されて透過した投影画像を撮影する透過画像撮影装置と、該撮影装置から出力される画像信号を解析して前記投影画像の光学特性を算出して数値化する画像処理装置とを備え、前記投影画像の光学特性を計測する画像計測装置において、前記光学部材の投影光の波長域での反射率を90%以上97%以下とすることを特徴とするものである。
【0008】
本発明においては、投影される光学部材の投影光の波長域での反射率を90%以上97%以下と規定する。後述する実験に示すように、投影光の反射によって光学部材を透過した投影画像がぼけにくくなり、透過した透過側の投影画像を形成するドット画像の形状の変形を抑えられることがわかった。このため、光学部材を透過した投影画像のドット画像の形状が光学部材で反射した投影画像のドット画像の形状とほぼ同じとなる。これにより、光学部材を透過した投影画像を撮影することで正確なドット画像の計測が可能となった。
【発明の効果】
【0009】
以上、本発明によれば、光学部材の投影画像におけるドット画像を正確に計測できる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態の画像計測装置の構成を示す概略図である。
【図2】反射側から計測したコントラスト比と透過側から計測したコントラスト比との相関関係を示す特性図である。
【図3】スクリーンの厚さと反射率との関係を示す特性図である。
【図4】スクリーンの拡散透過光の光量測定実験の構成を示す概略図である。
【図5】スクリーン厚さ20[μm]のときの光量センサの画角と拡散透過光の光量との関係を示す特性図である。
【図6】スクリーン厚さが50[μm]と100[μm]のときの光量センサの画角と拡散透過光の光量との関係を示す特性図である。
【図7】スクリーンの拡散透過光の光量測定実験の別の構成を示す概略図である。
【図8】評価者によるフォーカス感値と算出のコントラスト比との関係を示す特性図である。
【図9】本実施形態の画像計測装置による画像計測動作を示すフローチャートである。
【図10】検査処理を示すフローチャートである。
【図11】本実施形態の変形例1の画像計測装置の校正を示す概略図である。
【図12】画像計測装置の校正手順を示すフローチャートである。
【図13】本実施形態の変形例2の画像計測装置の構成を示す概略図である。
【図14】本実施形態の変形例3の画像計測装置の構成を示す概略図である。
【図15】投影パターンを反射型スクリーン又は透過型スクリーンに投影したときのドット画像の形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を適用した画像計測装置の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は実施形態の画像計測装置の構成を示す概略図である。同図に示す画像計測装置10は、投影画像の投影光の一部を拡散透過させる材料で作られた光学部材の一つであるスクリーン11及び撮影装置12を含んで構成されている。スクリーン11は、全波長域で反射率が90%以上97%以下と規定し、詳細にはフラットである白色の分光特性を有し、計測対象のプロジェクタ20から投射された投影画像21が表面11−1で拡散反射する同時に入射光画像の一部が透過するスクリーンとした。入射光画像が透過していく際、その光の分散によって、透過側の投影画像22がぼけることを防ぐために十分薄い素材とする。以上の条件を満たすスクリーンとしては、例えばポリエステルなどの強靭な素材のフィルムに1[μm]以下厚さとなる染料または顔料などを分散させたもので、20〜100[μm]の範囲の厚さのものなどである。実験からは50[μm]の厚さが好ましい。具体的には、このフィルムの厚さが20[μm]より薄いと透過した投影画像光が十分拡散するが、透過した光の画像がぼけてしまう。また、フィルムの厚さが100[μm]より厚いと透過した投影画像光の像はぼけにくいが、光の拡散反射が十分でなくなり、フィルム上で光の画像が形成されなくなって透過側からの計測が困難となる。例えばスクリーンの部材をガラスにしたと考えれば計測できないことと同じである。
【0012】
そこで、フィルムの厚さを決定する判断の一例として、フィルムの厚さの異なる2枚の拡散透過型のAフィルム及びBフィルム(フィルムAの厚さ>フィルムBの厚さ)を用いて反射側から計測したコントラスト比と透過側から計測したコントラスト比との相関関係を図2に示すように、両者のコントラスト比において、反射側からの計測値が基準値となり、透過側からの計測値が反射側からの計測値に近い値であるほど、投影光の波長域で反射率が90%以上の適正なフィルム条件となる。一方、反射率が100%に近づくと結果的に透過する光が少なくなり、透過光による投影画像の計測ができなくなる。そして、上述したようにスクリーン11のポリエステルなどのフィルムには1[μm]以下の厚さの染料または顔料などが分散されており、投影画像の投影光の一部はフィルム、あるいは分散されている染料又は顔料に吸収される。これらにより、スクリーン11の反射率は最大97%程度になると考えられる。以上説明したように、反射率に関しては図3で示すようにスクリーン11の厚さにも関係があり、反射率90%以上97%以下を確保するためには、50[μm]以上の厚さが必要となる。
【0013】
また、上述したように、本実施形態で使用されるフィルムの素材としてのポリエステルなどの強靭な素材には、可視光領域での分光特性がフラットな乳白剤を分散させたものである。この乳白剤としては、シリカなどの不溶性の鉱物、各種脂肪酸の金属塩、合成ポリマーなどが知られている。また、上述したように、スクリーンに投影されたプロジェクタによるドット画像を拡大撮影する機能を考慮して、その素材は1[μm]以下のサイズであることが望ましい。上記フィルムを用いたスクリーンは、入射してきた光に対して拡散反射する成分と拡散透過する成分が得られるものである。
【0014】
上述したように、本実施形態で使用されるフィルムの素材としてのポリエステルなどの強靭な素材には、可視光領域での分光特性がフラットな乳白剤を分散させたものである。この乳白剤としては、シリカなどの不溶性の鉱物、各種脂肪酸の金属塩、合成ポリマーなどがある。また、上述したように、スクリーンに投影されたプロジェクタによるドット画像を拡大撮影する機能を考慮して、その素材は1[μm]以下の厚さであることが望ましい。上記フィルムを用いたスクリーンは、入射してきた光に対して拡散反射する成分と拡散透過する成分が得られるものである。
【0015】
また、本実施形態の画像計測装置における撮影装置12には、マクロレンズ13が具備され、マクロレンズ13のピント、及びマクロレンズ13からスクリーンの光学面までの距離はスクリーン11の光学面を撮影できるよう設定する。スクリーン11の光学面での撮影倍率は、想定されるプロジェクタのドット画像サイズに応じて選定し、少なくともドット画像の解像度より高い必要がある。
【0016】
通常、このようなスクリーンは透過率が低すぎるため、透過光を計測するためのスクリーンとして用いられることは無い。これに対して、プロジェクタの投影画像を本実施形態のスクリーンに投影した場合、反射側の投影画像と、透過側の投影画像は、画像のコントラストや解像度において、ほぼ同等のドット画像を得られ、実際に使用される状態と同じ画像を撮影することが可能となる。
【0017】
更に、スクリーン11の反射率が90%以上としたため、通常のプロジェクタの反射型スクリーンに対して、目視で反射側の投影画像を観察することも同時に可能となる。すなわち、実施形態の画像計測装置10によって透過側に設けられた撮影装置12による撮影結果や解析結果を得られると共に、直接目視によって行われる官能評価も同時に行うことができる。
【0018】
また、スクリーン11の厚さは、スクリーン11から透過する光にも関係している。本画像計測装置では、計測対象のプロジェクタの投影開始位置(投影レンズ位置)から見て、スクリーン11に対して、さまざまな入射角度で投影光が入射されることになる。これら、様々な入射角度で投影光が入射されても、撮影装置12による安定した撮影を果たすためには入射角に対する透過光強度分布がいわゆるランバート分布であることが望ましい。具体的には、図4に示すようにスクリーン11のレーザ光の光学面の裏側に光量センサ23を設置する。そして、スクリーン11を透過拡散する光の光量を光量センサ23でレーザ光の照射方向を基準にした画角θを変化させて測定する。そして、図4のスクリーン11の厚さが20μmとした場合、図5に示すように、レーザ光に対する透過光がランバート分布を示さず、ちょうど直進した位置にある光量が大きくなってしまう。
【0019】
このような状態の場合、もし計測対象のプロジェクタの投影開始位置(投影レンズ位置)が、光学面の真正面にあるとき、その透過光は非常に大きくなってしまうのに対して、真正面でなく斜めから投影光が入射する位置にあるとその透過光は相対的に小さくなってしまう。このような状況の場合、この透過光を撮影する撮影装置12側は大きなダイナミックレンジが必要となり、例えばその状況によって撮影装置12のレンズの絞りを変更して撮影光量を調整する必要があるなど、使いづらくなってしまう。一方、図6に示すようにスクリーン11の厚さが100[μm]であれば完全に拡散していることがわかる。これらの理由からも、スクリーンの厚さは50[μm]以上が望ましい。
【0020】
ところで、本実施形態の画像計測装置では、スクリーン11の光学面に到達した光を反射拡散させ、撮影装置12によって当該光学面を撮影することで光学面のコントラストを検出している。その際光学面での像がぼけてしまうと、正しく計測することができない。そこで、図7の(a)に示す実験を通じて、フィルム31の光源32による照射側にレチクル33を設置させている。このレチクル33は光学ガラスで作られ、図7の(b)に示すようにフィルム31側に万線パターンピッチが蒸着されている。この万線パターンピッチが実際にプロジェクタ投影画像のパターンピッチ相当になっていることが重要である。図7の(c)に示すように、100[μm]を大きく超えるような厚さになると、投影画像に対して透過した画像のコントラスト比が急激に減少してしまう。このように、スクリーンの光学面で反射する光やスクリーンを透過する光を様々な観点で見た場合、スクリーンの光学面の反射率が90%以上97%以下、スクリーンの厚さが50[μm]〜100[μm]であることが望ましいと言える。
【0021】
また、画像のフォーカスの良し悪しは、評価者が数値化したフォーカス感という値と、撮影された画像から画像処理をして算出したコントラスト比を使って図8に示すようなグラフを形成できる。このグラフは、評価者が主観評価した数値と、画像計測装置により算出された光学特性値の関係を表す。このため、フォーカス感がある値以上ある場合は良品、それ以下の場合は不良品と判断される。この場合、その判断を対応するコントラスト比から判断できることが分かる。この関係から、評価者によってフォーカス感との同時チェックを行うことや、例えば朝一番のチェックを評価者が行い、フォーカス感とコントラスト比の関係に間違いがないかなどのチェックを行うこともできる。更に、これまで行われていた官能評価に対する画像計測装置により算出された光学特性値との相関値をとることで、この相関値を用いて画像計測装置によって得られた光学特性値に対応する官能評価による評価結果を導き出すことも可能となる。
【0022】
実際の画像計測動作のフローを示す図9に従って説明すると、計測対象のプロジェクタから検査画像をスクリーンに投影する(ステップS101)。そして、スクリーンに投影された画像を背面側からマクロレンズを有する撮影装置がスクリーンを透過して拡散反射した投影画像を撮影する(ステップS102)。そして、その画像信号が画像入力装置(図示せず)を介して画像処理装置(図示せず)に送られ、当該画像処理装置で光学特性計測が行われる(ステップS103、S104)。画像処理装置では、画像信号からプロジェクタのドット画像が解析され、例えばドット面積やドット明るさなどの光学特性値として出力される(ステップS105)。また、図10に示す検査処理フローに示すように、プロジェクタの良品・不良品の検査に使う場合は、取り込んだ光学特性値を閾値と比較して光学特性値が閾値より以上であれば良品とし(ステップS201、ステップS202:YES、ステップ203)、閾値より小さいときは不良品として処理する(ステップS202:NO、ステップS204)。この他にも、複数の特徴量を使う方法や、官能評価との併用も考えられる。特に、官能評価は、上述したように、主観的な評価であるため評価者によって評価のバラツキが生じるが、スクリーンの全体の色等のバランス評価は評価者による官能評価のほうが優れていると言われている。また、これまでの官能評価の実績を鑑みれば官能評価における判定の相関データも活用したい観点からも官能評価との併用を行うことが好ましい。
【0023】
次に、実施形態の変形例1について以下に説明する。
図11は実施形態の変形例1の画像計測装置の校正を示す概略図である。図12は校正手順を示すフローチャートである。図11において、図1と同じ参照符号は同じ構成要素を示す。図11に示す本変形例の画像計測装置の校正は、光学特性の評価実施前に画像計測装置の精度を保証、または補正する一例である。図12の校正手順に従い、図11のスクリーン11の反射側の投影画像21をマイクロレンズ15で取り込んで撮影装置14で撮影し(ステップS301、S302)、透過側の投影画像をマイクロレンズ13で取り込んで撮影装置12で撮影する(ステップS303)。それぞれ撮影した画像を解析して両者の解析結果を比較して補正量を算出する(ステップS304)。そして、算出した補正量に基づいて透過側の撮影装置12を校正する(ステップS305)。このように、反射側の画像と、透過側の画像とのドット形状は基本的には同一であるが多少のボケ、歪みは発生してしまうため、この比較によりどの程度のボケや歪みが生じているかを確認する。その結果、有意な差がある場合、反射側の投影画像の解析結果を基準として透過側の投影画像の解析結果に対する補正量を求め、画像計測装置の光学特性計測時に補正を行う。一例としては反射側の撮影装置14で撮影した光学特性を基準にして透過側の撮影装置で撮影した光学特性の補正量を求め、当該補正量に基づいて透過側の撮影装置の撮影環境や撮影条件を校正することで、ボケや歪みを低減させる。これらの校正は、計測動作開始前あるいは随時行うものである。
【0024】
次に、本実施形態の変形例2について以下に説明する。
図13は実施形態の変形例2の画像計測装置の構成を示す概略図である。同図において、図1と同じ参照符号は同じ構成要素を示す。同図の(a)に示す本変形例の画像計測装置40は、撮影装置12及びマクロレンズ13の全体を遮光する筐体41を備えている。この筐体41の一部には、撮影装置12の撮影領域に設けられたスクリーン11が設けられている。このスクリーン11は画像計測に必要なサイズを有し、必要以上に大きくしないようにしている。このように撮影装置等の一体構成にすることで撮影環境を一定にすることでレンズ13のレンズピントのズレなど撮影条件の変化による影響を排除できる。また、筐体41によって撮影装置等の全体を遮光していることで、外部からの光の進入を防ぐことができる。すなわち、図13の(a)に示すように、画像計測に関係ない画像光24がある撮影環境であっても無関係な画像光24がフレア光としてスクリーンに到達することを完全に遮断している。
【0025】
更に、図13の(b)に示すように、計測対象のスクリーン11における投影面を所定のサイズで複数の撮影領域に分割し、分割した各投影面毎のスクリーン42−1〜42−n(nは正の整数)の撮影領域に画像計測装置40をそれぞれ設置することで、各投影面における光学特性の計測を容易に行うことができる。つまり、本変形例の画像計測装置40は撮影装置とその撮影面のサイズでのみ規定されるので、装置そのもののサイズはプロジェクタ投影画像のサイズに比べて非常に小型である。そのため、複数の撮影領域の同時設置が可能となる。
【0026】
次に、図14は実施形態の変形例3の画像計測装置の構成を示す概略図である。同図において、図7及び図13と同じ参照符号は同じ構成要素を示す。本変形例の画像計測装置では、デジタルカメラに搭載されているレンズのCCD面相当位置にレクチル33を設置して、レクチル33の背面から光源32から照明光を照射する。そして、レンズ34の焦点位置に相当する撮影面の位置に本変形例の画像計測装置40を設置する。これにより、レンズ34の撮影解像度を任意位置ごとに容易に計測することができる。
【0027】
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様A)
本実施形態の画像計測装置において、光学部材の投影光の波長域での反射率を90%以上97%以下とする。これによれば、上記実施形態について説明したように、計測用のスクリーンが透過機能に特化した機能を持つことで生じるドット形状の変形という不具合を排除しつつ、計測対象のプロジェクタの投影画像を観察できると同時に、正確なドット画像形状の透過側の投影画像を撮影できる。これにより、反射側の投影画像と透過側の投影画像を容易にかつ同時に比較でき、透過側の投影画像の撮影において高品位な画像を計測できる。また、反射側の投影画像に対する目視評価と透過側の投影画像を撮影した画像信号での光学特性の計測を同時に行うことで、官能評価を同時に行うことができる。
(態様B)
(態様A)において、光学部材の反射側と透過側にそれぞれ撮影装置を設置して各撮影画像の各光学特性を比較することで反射側の撮影装置による撮影画像を基準とした補正量を求める。これによれば、上記実施形態の変形例1について説明したように、求めた補正量に基づいて透過側の撮影装置を校正して計測精度を向上させることができる。
(態様C)
(態様A)において、外部からの光を遮断する筐体内に撮影装置を設け、撮影装置の撮影領域であって該筐体の一部に光学部材を備え、撮影装置を光学部材から所定の位置に設置固定する。これによれば、上記実施形態の変形例2について説明したように、フレア光による撮影画像のコントラスト低下を防止して、計測精度の低下を抑制することができる。また、スクリーンと撮影装置との位置関係を固定した状態で投影画像に対する計測位置の変更を行う場合でもスクリーンと撮影装置の距離のずれによる撮影ボケによる計測精度の低下を防ぎながら容易に計測を行うことができる。また、画像計測装置そのものを小型にできるので、大きなスクリーンを用いた投影の一部に本装置を組み込んで、他の計測と併用でき、複数個の画像計測装置を同時運用して、さらにそのレイアウトを変更することで柔軟な計測環境を構築できるなどの効果も有する。
(態様D)
(態様A)〜(態様C)のいずれかにおいて、光学部材はスクリーンであり、該スクリーンに投射される投影画像はプロジェクタからの投影画像である。これによれば、上記実施形態について説明したように、スクリーンの反射側の投影画像とスクリーンの透過側の投影画像を容易にかつ同時に比較でき、スクリーンの透過側の投影画像の撮影において高品位な画像を計測できる。また、スクリーンの反射側の投影画像に対する目視評価とスクリーンの透過側の投影画像を撮影した画像信号での光学特性の計測を同時に行うことで、官能評価を同時に行うことができる。
(態様E)
(態様A)〜(態様C)のいずれかにおいて、光学部材に投射される投影画像は、レンズを介した画像である。これによれば、上記実施形態の変形例3について説明したように、レンズを介して光学部材に投影されて反射する画像とレンズを介して光学部材を透過した画像とを容易にかつ同時に比較でき、レンズの解像度を容易に計測できる。
【符号の説明】
【0028】
10 画像計測装置
11 スクリーン
12 撮影装置
13 マクロレンズ
20 計測対象のプロジェクタ
21 投影画像
22 透過側の投影画像
23 光量センサ
24 画像計測に関係ない画像光
31 フィルム
32 光源
33 レチクル
34 レンズ
40 画像計測装置
41 筐体
42−1〜42−n スクリーン
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【特許文献1】特許第4,100,075号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
投射される投影画像の投影光の一部を拡散透過させる材料で作られた光学部材と、該光学部材上に投影されて透過した投影画像を撮影する透過画像撮影装置と、該撮影装置から出力される画像信号を解析して前記投影画像の光学特性を算出して数値化する画像処理装置とを備え、前記投影画像の光学特性を計測する画像計測装置において、
前記光学部材の投影光の波長域での反射率を90%以上97%以下とすることを特徴とする画像計測装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像計測装置において、
前記光学部材で反射した投影画像を撮影する反射画像撮影装置を設け、反射側の前記反射画像撮影装置によって撮影した投影画像の光学特性と透過側の前記透過画像撮影装置によって撮影した投影画像の光学特性とを比較して反射側の反射画像撮影装置によって撮影した投影画像の光学特性を基準とした補正量を算出することを特徴とする画像計測装置。
【請求項3】
請求項1記載の画像計測装置において、
外部からの光を遮断する筐体内に前記透過画像撮影装置を設け、前記透過画像撮影装置の撮影領域であって該筐体の一部に前記光学部材を備え、前記透過画像撮影装置を前記光学部材から所定の位置に設置固定することを特徴とする画像計測装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の画像計測装置において、
前記光学部材はスクリーンであり、該スクリーンに投射される投影画像は、プロジェクタからの投影画像であることを特徴とする画像計測装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の画像計測装置において、
前記光学部材に投射される投影画像は、レンズを介した画像であることを特徴とする画像計測装置。
【請求項1】
投射される投影画像の投影光の一部を拡散透過させる材料で作られた光学部材と、該光学部材上に投影されて透過した投影画像を撮影する透過画像撮影装置と、該撮影装置から出力される画像信号を解析して前記投影画像の光学特性を算出して数値化する画像処理装置とを備え、前記投影画像の光学特性を計測する画像計測装置において、
前記光学部材の投影光の波長域での反射率を90%以上97%以下とすることを特徴とする画像計測装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像計測装置において、
前記光学部材で反射した投影画像を撮影する反射画像撮影装置を設け、反射側の前記反射画像撮影装置によって撮影した投影画像の光学特性と透過側の前記透過画像撮影装置によって撮影した投影画像の光学特性とを比較して反射側の反射画像撮影装置によって撮影した投影画像の光学特性を基準とした補正量を算出することを特徴とする画像計測装置。
【請求項3】
請求項1記載の画像計測装置において、
外部からの光を遮断する筐体内に前記透過画像撮影装置を設け、前記透過画像撮影装置の撮影領域であって該筐体の一部に前記光学部材を備え、前記透過画像撮影装置を前記光学部材から所定の位置に設置固定することを特徴とする画像計測装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の画像計測装置において、
前記光学部材はスクリーンであり、該スクリーンに投射される投影画像は、プロジェクタからの投影画像であることを特徴とする画像計測装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の画像計測装置において、
前記光学部材に投射される投影画像は、レンズを介した画像であることを特徴とする画像計測装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−19886(P2013−19886A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−91716(P2012−91716)
【出願日】平成24年4月13日(2012.4.13)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年4月13日(2012.4.13)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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