説明

画像記録方法、及びセット

【課題】 ブロンズ現象の抑制、耐オゾン性及び写像均一性の向上を高いレベルで両立した画像が得られる画像記録方法を提供すること。
【解決手段】 顔料を含有するインクを記録媒体に付与する工程、400nm乃至800nmの波長域における最大吸光度と最小吸光度の比(最大吸光度/最小吸光度)が1.0以上2.0以下であり、樹脂微粒子を含有する第1の液体組成物を、前記インクを付与する領域と少なくとも一部で重なるように前記記録媒体に付与する工程、及び、400nm乃至800nmの波長域における最大吸光度と最小吸光度の比(最大吸光度/最小吸光度)が1.0以上2.0以下であり、水溶性樹脂を含有する第2の液体組成物を、前記インク及び前記第1の液体組成物を付与する領域と少なくとも一部で重なるように前記記録媒体に付与する工程を有することを特徴とする画像記録方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像記録方法、かかる画像記録方法に用いるセットに関する。
【背景技術】
【0002】
画像記録方法において、画像の堅牢性を向上させる目的で、色材として顔料を含有するインク(以下、「顔料インク」ともいう)が用いられている。しかし、記録媒体に顔料インクを用いて記録を行うと、画像の表面に写る物体の像の鮮鋭度にムラができる、即ち、写像均一性が低くなるという課題が生じる。この現象は、同じ画像内において、記録媒体に付与される顔料の量が異なる領域(例えば、高濃度記録領域と低濃度記録領域と非記録領域など)の間で、顔料が堆積して形成される顔料層の厚さが異なること、即ち、画像の平滑性が低いことが原因で発生するものである。この写像均一性の低下は、表面の平滑性の高い記録媒体、特に、透気性支持体(紙など)上に無機顔料及びバインダーを含有する多孔質性インク受容層を備えた光沢紙に顔料インクを用いて記録した画像において特に顕著に発生する。この写像均一性の低下を解決するためには、得られる画像の平滑性を高めることが必要である。具体的には、顔料インクを用いて画像を形成する工程に加えて、更に、樹脂を含有し色材を実質的に含有しない液体組成物(以下、「クリアインク」ともいう)を付与する工程を有する画像記録方法が検討されている(特許文献1及び2)。特許文献1には、特定の構造を有する樹脂微粒子を含有するクリアインクを用いることで、光沢均一性が向上することが記載されている。特許文献2には、光硬化型の樹脂を含有するクリアインクを2種類用いる画像形成方法により、光硬化反応を2段階で行うことで、良好な光沢のコート層が得られることが開示されている。
【0003】
一方、光沢紙などの表面の平滑性の高い記録媒体に顔料インクを用いて記録された画像は、金属光沢様のぎらつきを起こしたり、記録物の観測角度によって反射光が顔料本来の色とは異なる色に見えたりする、所謂「ブロンズ現象」が生じるという課題もある。これは、画像において、顔料が粒子として存在するために、光の散乱を受けやすいことが原因で発生するものである。このブロンズ現象を抑制するために、顔料粒子の表面を樹脂で被覆したマイクロカプセル顔料を用いる方法が検討されている(特許文献3)。特許文献3には、特定の繰り返し構造を有する樹脂でマイクロカプセル化した顔料を用いることで、耐ブロンズ性能や写像性が改善することが開示されている。
【0004】
また、上述の通り、顔料自体は堅牢性が高いものであるが、画像において顔料粒子の表面が露出している場合は、オゾンや光などの影響を受けやすい。特に、オゾンは顔料に直接接触することで、顔料分子を破壊するため、画像の褪色の原因となる。このとき、上述した顔料で形成された画像をクリアインクでコートする画像記録方法(特許文献1及び2)や顔料自体を樹脂で被覆する方法(特許文献3)を用いれば、オゾンと顔料の接触が抑制されるため、画像の耐オゾン性が改善される。また、特許文献4には、皮膜形成能を有する樹脂を含有するクリアインクを、画像全面に付与することで画像の耐オゾン性が改善されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−335058号公報
【特許文献2】特開2011−084030号公報
【特許文献3】特開2006−028460号公報
【特許文献4】特開2005−081754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の方法では、画像の写像均一性は改善されるものの、本発明で求めるような高いレベルの画像の耐オゾン性は得られなかった。これは、クリアインクに含有する樹脂の造膜性が低いため、オゾンと顔料の接触を防げるような、顔料層を被覆する樹脂コート層を十分に形成できないためである。
【0007】
また、特許文献3では、耐ブロンズ性能は改善されるものの、画像の写像均一性が低かった。これは、特許文献3に記載の方法では、記録媒体に付与される顔料の量が異なる領域間での顔料層の厚さの違いが、解消されないからである。更に、本発明者らが検討したところ、画像の耐オゾン性は改善されるものの、本発明で求めるような高いレベルのものは得られなかった。これは、特許文献3に記載のマイクロカプセル顔料の製造方法では、顔料粒子が樹脂で完全に被覆される訳ではなく、顔料粒子の表面が露出している部分が存在するため、オゾンとの接触を防ぐことができないためである。
【0008】
特許文献4では、皮膜形成能のある樹脂として、水系で溶解状態の樹脂(所謂、水溶性樹脂)を含有するクリアインクと、水系で分散状態の樹脂(所謂、樹脂微粒子)を含有するクリアインクがそれぞれ例示されている。本発明者らの検討によると、前者のクリアインクを用いた場合、記録媒体への水溶性樹脂の浸透性は高く、画像表面に樹脂が残りにくいため、十分な耐オゾン性を得るにはクリアインクを多量に付与する必要があることが分かった。一方、後者のクリアインクを用いた場合、記録媒体への樹脂微粒子の浸透性は低く、画像表面に樹脂が残りやすいが、樹脂の造膜性が低いため、上述の特許文献1及び2に記載のクリアインクと同様の理由で、高いレベルの耐オゾン性は得られなかった。また、本発明者らが検討したところ、特許文献4に記載の何れのクリアインクも、ブロンズ現象の抑制と画像の写像均一性の向上を高いレベルで両立するものではなかった。
【0009】
したがって、本発明の目的は、ブロンズ現象の抑制、耐オゾン性及び写像均一性の向上を高いレベルで両立した画像が得られる画像記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的は以下の本発明によって達成される。即ち、本発明にかかる画像記録方法は、顔料を含有するインクを記録媒体に付与する工程、400nm乃至800nmの波長域における最大吸光度と最小吸光度の比(最大吸光度/最小吸光度)が1.0以上2.0以下であり、樹脂微粒子を含有する第1の液体組成物を、前記インクを付与する領域と少なくとも一部で重なるように前記記録媒体に付与する工程、及び、400nm乃至800nmの波長域における最大吸光度と最小吸光度の比(最大吸光度/最小吸光度)が1.0以上2.0以下であり、水溶性樹脂を含有する第2の液体組成物を、前記インク及び前記第1の液体組成物を付与する領域と少なくとも一部で重なるように前記記録媒体に付与する工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ブロンズ現象の抑制、耐オゾン性及び写像均一性の向上を高いレベルで両立した画像が得られる画像記録方法を提供することができる。また、本発明の別の実施態様によれば、前記画像記録方法に用いるセットを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、好適な実施の形態を挙げて、本発明を詳細に説明する。本発明の画像記録方法は、顔料を含有するインクを記録媒体に付与する工程、400nm乃至800nmの波長域における最大吸光度と最小吸光度の比(最大吸光度/最小吸光度)が1.0以上2.0以下であり、樹脂微粒子を含有する第1の液体組成物を、前記インクを付与する領域と少なくとも一部で重なるように前記記録媒体に付与する工程、及び、400nm乃至800nmの波長域における最大吸光度と最小吸光度の比(最大吸光度/最小吸光度)が1.0以上2.0以下であり、水溶性樹脂を含有する第2の液体組成物を、前記インク及び前記第1の液体組成物を付与する領域と少なくとも一部で重なるように前記記録媒体に付与する工程を有することを特徴とする。
【0013】
本発明者らが、上記本発明の効果(ブロンズ現象の抑制、耐オゾン性及び写像均一性の向上の高いレベルでの両立)を達成するための条件を検討したところ、顔料で形成された画像に樹脂を含有する液体組成物を付与することで、「画像及び記録媒体の表面及びその近傍に残り、かつ、均一な樹脂コート層を形成すること」が重要であるとの知見を得た。そして、本発明者らが、そのような樹脂コート層を形成するための液体組成物について検討を行った結果、上記本発明の構成により、上記本発明の効果を達成できることを見出した。これを以下に詳細に説明する。
【0014】
本発明者らが検討したところ、第1の液体組成物に使用する樹脂微粒子は粒径を有するため、ある程度の嵩高さがあり、記録媒体の繊維間の隙間に入り込みにくく、画像及び記録媒体の表面及びその近傍に残留しやすい。しかし、画像の表面に残留した樹脂微粒子は、隣り合う樹脂微粒子と融着する部分はあるものの、粒子の形状が残りやすく流動性が低いため、均一な膜を形成しにくい(造膜性が低い)。その結果、樹脂によって被覆されていない画像領域が多くなってしまう。一方、第2の液体組成物に使用する水溶性樹脂は、記録媒体に付与された時点では水性媒体中に溶解しているため、記録媒体内部に浸透しやすく、画像及び記録媒体の表面及びその近傍に残留しにくい。しかし、水溶性樹脂自体は流動性が高く、付与された箇所の形状に沿った均一な膜を形成することができる(造膜性が高い)ものである。上述したような樹脂微粒子を含有する第1の液体組成物と、水溶性樹脂を含有する第2の液体組成物を共に使用した場合に、上記本発明の効果を達成できた理由は、以下のメカニズムによると推測している。即ち、第1の液体組成物由来の樹脂微粒子が画像及び記録媒体の表面及びその近傍に残留することにより、第2の液体組成物由来の水溶性樹脂は、記録媒体への浸透が抑制され画像の表面に残留する。その結果、画像の表面に残留した第2の液体組成物由来の水溶性樹脂がその流動性の高さにより、均一な膜を形成することができる。このようにして、樹脂微粒子及び水溶性樹脂が互いに相乗的に機能することで、画像及び記録媒体の表面及びその近傍に残り、かつ、均一な樹脂コート層を形成することができたのである。本発明者らの検討によると、1種の液体組成物中に樹脂微粒子と水溶性樹脂を含有した場合では、上記の本発明の効果は達成されなかった。これは、液体組成物中で樹脂間の相互作用が起きてしまい、上述の樹脂微粒子と水溶性樹脂のそれぞれの機能が発現しないためである。つまり、本発明の効果は、樹脂微粒子を含有する第1の液体組成物と水溶性樹脂を含有する第2の液体組成物の2種の液体組成物を併用するという本発明の構成によって初めて達成されるものである。
【0015】
以上のメカニズムのように、本発明の各構成が相乗的に働くことで、従来公知の方法では両立することができなかったブロンズ現象の抑制、耐オゾン性の向上、及び写像均一性の向上を高いレベルで両立するという本発明の効果を達成することが可能となるものである。
【0016】
[画像記録方法]
本発明の画像記録方法は、顔料を含有するインクを記録媒体に付与する工程、樹脂微粒子を含有する第1の液体組成物を前記インクを付与する領域と少なくとも一部で重なるように前記記録媒体に付与する工程、及び、水溶性樹脂を含有する第2の液体組成物を前記インク及び前記第1の液体組成物を付与する領域と少なくとも一部で重なるように前記記録媒体に付与する工程を有する。本発明における「記録」とは、記録媒体に対してインク及び液体組成物を用いて記録する態様、ガラス、プラスチック、フィルムなどの非吸液性の基材に対してインク及び液体組成物を用いてプリントを行う態様を含む。記録媒体としては、普通紙や光沢紙が挙げられる。本発明においては、特に光沢紙に記録することがより好ましい。これは、本発明が解決しようとする課題のうちのブロンズ現象の発生や写像均一性の低下といった現象は、光沢紙において特に顕著に発生するものであるからである。
【0017】
本発明において、第1及び第2の液体組成物の記録媒体への付与手段としては、インクジェット方式や塗布方式などが挙げられる。また、インクの記録媒体への付与手段としては、記録信号に応じて、インクジェット方式により記録ヘッドの吐出口からインクを吐出させて記録媒体に記録を行うインクジェット記録方法が好ましい。特に、インクに熱エネルギーを作用させて記録ヘッドの吐出口からインクを吐出させる方式のインクジェット記録方法がより好ましい。
【0018】
本発明においては、各工程の順序は、インクを記録媒体に付与する工程、第1の液体組成物を記録媒体に付与する工程、第2の液体組成物を記録媒体に付与する工程の順であることが好ましい。これは、上述の本発明のメカニズムから明らかである。
【0019】
本発明において、インク、第1の液体組成物、及び第2の液体組成物の記録媒体への付与手段が、インクジェット方式で多パス記録の場合は、上記の好ましい工程の順序で付与された領域を必然的に含むため、本発明の効果が常に好ましいレベルで得られる。具体的には、インクの吐出口列、第1の液体組成物の吐出口列、及び第2の液体組成物の吐出口列が、どのような並び順序であったとしても、本発明の効果が好ましいレベルで得られる。これは、以下の理由による。
【0020】
インクジェット方式で多パス記録をした場合において、インク、第1の液体組成物、及び第2の液体組成物の吐出口列の並び順序によっては、単位領域内において同一パス内で水溶性樹脂が樹脂微粒子より先に付与されることや、水溶性樹脂や樹脂微粒子より後にインクが付与されることがあり得る。しかし、異なるパス間においては、インク、第1の液体組成物、第2の液体組成物の順に付与される領域が必然的に存在し得る。これを具体的に、単位領域内の同一のパス(「第1のパス」とする)内では、第2の液体組成物→インク→第1の液体組成物の順序で付与される場合を例に説明を行う。このとき、第1のパスに続くパスを第2のパス、第3のパスとした場合、第1のパスで付与されたインク、第2のパスで付与された第1の液体組成物、第3のパスで付与された第2の液体組成物のみに注目すると、これらが重ねて付与される場合は、インク→第1の液体組成物→第2の液体組成物の順序で付与されたこととなる。本発明者らが検討したところ、このような異なるパス間で、上記の好ましい工程の順序で重ねて付与された領域を含む場合も、本発明の効果が好ましいレベルで得られることが分かった。尚、多パス記録とは、記録ヘッドの主走査方向において、該記録ヘッドを複数回走査させることによって単位領域の画像を記録する方法であり、単位領域とは、1画素や1バンドなどのことであり、必要に応じて種々の領域として単位領域を設定できる。また、1画素とは、解像度に対応した1画素のことであり、1バンドとは、1回の記録ヘッドの走査で記録される画像の領域のことである。本発明においては、3パス以上で記録する場合が、更に好ましい。以下、本発明の画像記録方法に用いる第1の液体組成物、第2の液体組成物、及びインクについて説明する。
【0021】
(1)液体組成物
本発明の画像記録方法に用いる液体組成物は、インクで記録した画像に影響を及ぼさないために、無色、乳白色、又は白色である必要がある。そのため、可視光の波長域である400nm乃至800nmの波長域における最大吸光度と最小吸光度の比(最大吸光度/最小吸光度)が1.0以上2.0以下である必要がある。これは、可視光の波長域において、吸光度のピークを実質的に有さないか、有していてもピークの強度が極めて小さいことを意味する。更に、本発明において、液体組成物は、色材を含有しないことが好ましい。後述する本発明の実施例では、上記の吸光度は、非希釈の液体組成物を用いて、日立ダブルビーム分光光度計U−2900(日立ハイテクノロジーズ製)によって測定した。尚、このとき、液体組成物を希釈して吸光度を測定してもよい。これは、液体組成物の最大吸光度と最小吸光度の値は共に希釈倍率に比例するため、最大吸光度と最小吸光度の比(最大吸光度/最小吸光度)の値は希釈倍率に依存しないからである。また、本発明において、液体組成物に使用する樹脂(樹脂微粒子、水溶性樹脂)は、重合された状態で含まれることが好ましい。したがって、記録媒体上で光などの活性エネルギー線によって重合するようなものは含まない方が好ましい。具体的には、活性エネルギー線重合性開始剤は含まない方が好ましい。以下、本発明の第1の液体組成物、第2の液体組成物を構成する各成分について、それぞれ説明する。尚、以下「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」と記載した場合は、それぞれ「アクリル酸、メタクリル酸」、「アクリレート、メタクリレート」を示すものとする。
【0022】
<第1の液体組成物>
本発明の画像記録方法に用いる第1の液体組成物は、樹脂微粒子を含有する。
【0023】
(樹脂微粒子)
本発明において、「樹脂微粒子」とは、粒径を有する状態で存在する樹脂を意味する。更に、本発明において、樹脂微粒子は液体組成物中に分散した状態、所謂、樹脂エマルションであることが好ましい。本発明に使用する樹脂微粒子は体積平均粒子径が30nm以上200nm以下であることが好ましい。更には、40nm以上170nm以下であることがより好ましい。体積平均粒子径が30nmより小さいと、液体組成物を記録媒体に付与した際に、記録媒体の内部に浸透する樹脂微粒子の割合が増えるため、画像及び記録媒体の表面に残る樹脂コート層が十分に形成されない場合がある。一方、体積平均粒子径が200nmより大きいと、樹脂コート層内の樹脂微粒子間の隙間が大きくなり、第2のクリアインク由来の水溶性樹脂が記録媒体へ浸透しやすくなるため、均一に造膜する樹脂コート層が十分に形成されない場合がある。尚、本発明において樹脂微粒子の体積平均粒子径は、純水で50倍(体積基準)に希釈した樹脂微粒子を含有する水溶液について、UPA−EX150(日機装製)を使用して、SetZero:30s、測定回数:3回、測定時間:180秒、屈折率:1.5の測定条件で測定した体積平均粒子径のことである。また、樹脂微粒子のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により得られるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、3,000以上100,000以下であることが好ましい。Mwが上記好ましい範囲を外れると、体積平均粒子径が上記の好ましい範囲とならない場合がある。
【0024】
本発明において、樹脂微粒子としては、上述の樹脂微粒子の定義を満たすものであれば、何れのものも第1の液体組成物に使用することができる。樹脂微粒子に用いられるモノマーとしては、乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法などで重合可能なモノマーであれば何れのものも用いることが可能である。モノマーの違いによって、例えば、アクリル系、酢酸ビニル系、エステル系、エチレン系、ウレタン系、合成ゴム系、塩化ビニル系、塩化ビニリデン系、オレフィン系などの樹脂微粒子が挙げられるが、中でも、アクリル樹脂微粒子、ウレタン樹脂微粒子を用いることが好ましい。
【0025】
アクリル樹脂微粒子に具体的に使用可能なモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、アンゲリカ酸、イタコン酸、フマル酸などのα,β−不飽和カルボン酸及びその塩;メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、マレイン酸モノブチル、イタコン酸ジメチルなどのα,β−不飽和カルボン酸のエステル化合物;(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルプロピル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、マレイン酸モノアミド、クロトン酸メチルアミドなどのα,β−不飽和カルボン酸のアルキルアミド化合物;スチレン、α−メチルスチレン、フェニル酢酸ビニル、ベンジル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどのアリール基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物;エチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレートなどの多官能アルコールのエステル化合物などが挙げられる。これらは、単一のモノマーが重合した単重合体でもよく、2種以上のモノマーが重合した共重合体でもよい。樹脂微粒子が共重合体の場合は、ランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい。中でも、親水性のモノマーと疎水性のモノマーを用いた樹脂微粒子が好ましい。親水性モノマーとしては、α,β−不飽和カルボン酸及びその塩が挙げられ、疎水性モノマーとしてはα,β−不飽和カルボン酸のエステル化合物やアリール基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物が挙げられる。
【0026】
ウレタン樹脂微粒子は、2つ以上のイソシアネート基を有する化合物であるポリイソシアネートと、2つ以上のヒドロキシル基を有する化合物であるポリオール化合物を反応させて合成する樹脂微粒子である。本発明においては、上記樹脂微粒子の条件を満たすものであれば、公知のポリイソシアネート化合物と公知のポリオール化合物を反応させて得られるウレタン樹脂微粒子を何れも用いることができる。本発明に用いることができるポリイソシアネートとしては、具体的に、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。本発明に用いることができるポリオールとしては、ポリエステルポリオールを用いたポリエステル系樹脂、ポリエーテルポリオールを用いたポリエーテル系樹脂、ポリカーボネートジオールを用いたポリカーボネート系樹脂、その他の酸基を有さないポリオールを用いた樹脂(例えば、ポリヒドロキシポリアセタール、ポリヒドロキシポリアクリレート、ポリヒドロキシポリエステルアミド、ポリヒドロキシポリチオエーテルなど)が挙げられる。また、ウレタン樹脂微粒子を合成する際に、上記のポリイソシアネート化合物やポリオール化合物の他に、酸性基を有するジオール化合物、鎖延長剤などを使用してもよい。酸性基を有するジオール化合物としては、例えば、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸などが挙げられる。これらは必要に応じて1種又は2種以上を用いることができる。本発明においては、特に、ジメチロールプロピオン酸を用いることが好ましい。
【0027】
また、鎖延長剤としては、例えば、トリメチロールメラミン及びその誘導体、ジメチロールウレア及びその誘導体、ジメチロールエチルアミン、ジエタノールメチルアミン、ジプロパノールエチルアミン、ジブタノールメチルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、ヘキシレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、イソホロンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、水素添加ジフェニルメタンジアミン、ヒドラジンなどの多価アミン化合物、ポリアミドポリアミン、ポリエチレンポリイミンなどが挙げられる。また、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。これらの鎖延長剤は、必要に応じて1種又は2種以上を用いることができる。
【0028】
一方、樹脂微粒子の構造としては、単層構造の樹脂微粒子と、コアシェル構造などの複層構造の樹脂微粒子が挙げられる。本発明においては、複層構造の樹脂微粒子を用いることが好ましい。特に、コアシェル構造を有する樹脂微粒子を用いることがより好ましい。樹脂微粒子がコアシェル構造を有することで、コア部分とシェル部分とで明確に機能分離される。このようなコアシェル構造を有する樹脂微粒子は、単層構造の樹脂微粒子と比較して、より多くの機能をクリアインクに付与することができるという利点がある。
【0029】
市販されている樹脂微粒子としては、以下のものが挙げられる。例えば、アクリル系樹脂微粒子としては、セビアンA−4635,46583,4601(ダイセル化学工業製)、Nipol Lx811、814、821、820、857(日本ゼオン製)、AE318、343(日本合成ゴム製)など;酢酸ビニル系樹脂微粒子としては、ビニブラン1566(日信化学社製)、WD−size、WMS(イーストマンケミカル製)など;エステル系樹脂微粒子としては、FINETEX ES650、611、675、850(DIC製)など;エチレン系樹脂微粒子としては、ノプコートPEM17(サンノプコ製)など;ウレタン系樹脂微粒子としては、タケラックW6061(三井化学製)、HYDRAN AP10、20、30、40(DIC製)など;合成ゴム系樹脂微粒子としては、ポリラック752A(三井化学製)、0569(日本合成ゴム製)など;塩化ビニル系樹脂微粒子としては、ビニブラン240(日信化学製)など;塩化ビニリデン系樹脂微粒子としては、L502、L513(旭化成工業製)など;オレフィン系樹脂微粒子としては、ケミパールV100(三井化学製)などが挙げられる。本発明において、樹脂微粒子は、必要に応じて1種又は2種以上を用いることができる。
【0030】
<第2の液体組成物>
本発明の画像記録方法に用いる第2の液体組成物は、水溶性樹脂を含有する。
【0031】
(水溶性樹脂)
本発明において、「水溶性樹脂」とは、水、又は、水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体に溶解することができる樹脂であり、粒径を有さない状態で存在する樹脂を意味する。より具体的には、体積平均粒子径が30nm未満である、又は、体積平均粒子径が測定できないものを「水溶性樹脂」と判定するものとする。尚、体積平均粒子径の測定条件は、上記の樹脂微粒子の体積平均粒子径の測定条件と同一である。
【0032】
本発明において、第2の液体組成物に使用する水溶性樹脂としては、水溶性アクリル樹脂、水溶性ウレタン樹脂、及びポリビニルアルコールなどが挙げられる。水溶性アクリル樹脂とは、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、アンゲリカ酸、イタコン酸、フマル酸などのα,β−不飽和カルボン酸及びその塩をモノマーとして用いた重合体である。本発明においては、水溶性樹脂となるのであれば、α,β−不飽和カルボン酸及びその塩が置換基を有していてもよい。また、本発明においては、水溶性樹脂となるのであれば、α,β−不飽和カルボン酸及びその塩とその他のモノマーの共重合体であってもよい。α,β−不飽和カルボン酸及びその塩と共重合するその他のモノマーとしては、公知のものを何れも使用することができる。具体的には、上記のアクリル樹脂微粒子において使用可能なモノマーとして挙げたもののうち、α,β−不飽和カルボン酸及びその塩以外のものを何れも使用することができる。中でも、「α,β−不飽和カルボン酸及びその塩」と「α,β−不飽和カルボン酸のエステル化合物又はアリール基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物」をモノマーとして含む共重合体が好ましい。更には、(メタ)アクリル酸及びスチレンをモノマーとして含む共重合体を用いることがより好ましい。また、本発明において水溶性アクリル樹脂の酸価は、110mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であることが好ましい。酸価が110mgKOH/gより小さいと、記録媒体に付与された際の凝集が早く、造膜性が十分でない場合がある。また、酸価が250mgKOH/gより大きいと、記録媒体への浸透性が高く、造膜性が十分でない場合がある。何れの場合も、耐オゾン性が十分に得られない場合がある。
【0033】
市販されている水溶性アクリル樹脂としては、以下のものが挙げられる。例えば、ジョンクリル68(分子量:10,000、酸価:195mgKOH/g)、ジョンクリル61J(分子量:10,000、酸価:195mgKOH/g)、ジョンクリル680(分子量:3,900、酸価:215mgKOH/g)、ジョンクリル682(分子量:1,600、酸価:235mgKOH/g)、ジョンクリル550(分子量:7,500、酸価:200)mgKOH/g、ジョンクリル555(分子量:5,000、酸価:200mgKOH/g)、ジョンクリル586(分子量:3,100、酸価:105mgKOH/g)、ジョンクリル683(分子量:7,300、酸価:150mgKOH/g)、ジョンクリルB−36(分子量:6,800、酸価:250mgKOH/g)などが挙げられる。
【0034】
水溶性ウレタン樹脂は、2つ以上のイソシアネート基を有する化合物であるポリイソシアネートと、2つ以上のヒドロキシル基を有する化合物であるポリオール化合物を反応させて合成する樹脂である。本発明においては、上記水溶性樹脂の条件を満たすものであれば、公知のポリイソシアネート化合物と公知のポリオール化合物を反応させて得られる水溶性ウレタン樹脂を何れも用いることができる。本発明において、水溶性ウレタン樹脂の原料として用いることができるポリイソシアネート、ポリオール、酸性基を有するジオール化合物、鎖延長剤としては、上記のウレタン樹脂微粒子において使用可能なものとして挙げたものと同様のものを使用することができる。
【0035】
ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルをけん化することで得られる樹脂である。ポリビニルアルコールの水溶性の大きさは、けん化度に影響される。したがって、本発明においては、けん化度は80%以上100%以下であることが好ましい。また、本発明においては、水溶性樹脂となるのであれば、ポリビニルアルコールは置換基を有していてもよい。例えば、炭素数が1乃至7のアルキル基で置換されていてもよい。具体的には、ポリ(α−メチルビニルアルコール)、ポリ(α−ブチルビニルアルコール)などが挙げられる。また、本発明においては、水溶性樹脂となるのであれば、ビニルアルコールとその他のモノマーの共重合体であってもよい。ビニルアルコールと共重合するその他のモノマーとしては、公知のものを何れも使用することができる。
【0036】
<樹脂の含有量>
第1の液体組成物中の樹脂微粒子の含有量B(質量%)は、第1の液体組成物全質量を基準として0.3質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。また、第2の液体組成物中の水溶性樹脂の含有量B(質量%)が、第2の液体組成物全質量を基準として0.3質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。それぞれ上記の含有量の好ましい範囲を外れると、「画像及び記録媒体の表面に残り、かつ、均一に造膜する樹脂コート層」が形成されにくく、本発明の効果が十分に得られない場合がある。
【0037】
<記録媒体に付与される樹脂の量>
第1及び第2の液体組成物のそれぞれの記録デューティが同じ場合(例えば、何れも記録デューティが20%の場合など)に、記録媒体に付与される、第1の液体組成物由来の樹脂微粒子の量は、第2の液体組成物由来の水溶性樹脂の量に対して、質量比率で0.3倍以上4.0倍以下が好ましい。更には、0.5倍以上2.0倍以下がより好ましい。具体的には、第1の液体組成物中の樹脂微粒子の含有量B(質量%)と第2の液体組成物中の水溶性樹脂の含有量B(質量%)の比B/Bで表すことができる。0.5倍より小さい場合は、水溶性樹脂に対して樹脂微粒子の量が少なく、水溶性樹脂が記録媒体へ浸透しやすいため、耐オゾン性の向上効果及びブロンズ現象の抑制効果が十分に得られない場合がある。2.0倍より大きい場合は、樹脂微粒子に対して水溶性樹脂の量が少なく、造膜性が低いため、画像の耐オゾン性の向上効果が十分に得られない場合がある。
【0038】
また、インク、第1及び第2の液体組成物のそれぞれの記録デューティが同じ場合(例えば、何れも記録デューティが20%の場合など)に、記録媒体に付与される、顔料の量(質量%)が、第1及び第2の液体組成物に由来する樹脂の合計の量(質量%)に対して、質量比率で0.15倍以上1.50倍以下であることが好ましい。更には、0.20倍以上1.00倍以下がより好ましい。尚、この値は、インク中の顔料の含有量と第1及び第2の液体組成物中の樹脂の含有量の比として表すことができる。具体的には、インク全質量を基準とした、インク中の顔料の含有量P(質量%)と、第1の液体組成物中の樹脂微粒子の含有量B(質量%)と第2の液体組成物中の水溶性樹脂の含有量B(質量%)の合計の含有量B+Bの比P/(B+B)で表すことができる。P/(B+B)が、0.20倍より小さいと、樹脂の量が顔料に対して多いため、樹脂膜が厚くなり、画像の写像の向上効果が十分に得られない場合がある。P/(B+B)が1.00倍より大きいと、顔料の量が樹脂に対して多いため、十分に顔料層を被覆できず、本発明の効果(ブロンズ現象の抑制、耐オゾン性及び写像均一性の向上の高いレベルでの両立)が十分に得られない場合がある。
【0039】
<第1及び第2の液体組成物に共通の成分>
(水性媒体)
本発明に用いる液体組成物は、水、又は、水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を用いることができる。液体組成物中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、液体組成物全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。水溶性有機溶剤としては、従来、インクに一般的に用いられているものを何れも用いることができる。例えば、アルコール類、グリコール類、アルキレン基の炭素原子数が2乃至6のアルキレングリコール類、ポリエチレングリコール類、含窒素化合物類、含硫黄化合物類などが挙げられる。これらの水溶性有機溶剤は、必要に応じて1種又は2種以上を用いることができる。水は脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。液体組成物中の水の含有量(質量%)は、液体組成物全質量を基準として、50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。
【0040】
(その他の成分)
本発明に用いる液体組成物は、上記の成分以外にも必要に応じて、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの多価アルコール類や、尿素、エチレン尿素などの尿素誘導体など、常温で固体の水溶性有機化合物を含有してもよい。更に、本発明に用いる液体組成物は、必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤、及び上記以外の樹脂などの種々の添加剤を含有してもよい。
【0041】
(2)インク
本発明の画像記録方法に用いるインクは、色材として顔料を含有する。本発明に用いるインクを構成する各成分について、それぞれ説明する。
【0042】
<顔料>
本発明に用いるインクには、公知の無機顔料や有機顔料を何れも使用することができる。顔料の分散方法としては、分散剤として樹脂を用いる樹脂分散タイプの顔料(樹脂分散剤を使用した樹脂分散顔料、顔料粒子の表面を樹脂で被覆したマイクロカプセル顔料、顔料粒子の表面に樹脂を含む有機基が化学的に結合した樹脂結合型自己分散顔料)や顔料粒子の表面に親水性基を導入した自己分散タイプの顔料(自己分散顔料)が挙げられる。無論、分散方法の異なる顔料を併用することも可能である。顔料の含有量としては、インク全質量を基準として、0.1質量%以上20.0質量%以下が適しており、更には1.0質量%以上15.0質量%以下とするのがより好ましい。
【0043】
<水性媒体及びその他の成分>
インクには、水、又は、水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を用いることができる。インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。水溶性有機溶剤としては、液体組成物に使用可能なものとして挙げた水溶性有機溶剤と同様のものを使用することができる。水は脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。また、インクには、上記の液体組成物に使用可能なものとして挙げたその他の成分と同様のものを使用することができる。
【0044】
[セット]
本発明のセットは、顔料を含有するインク、樹脂微粒子を含有する第1の液体組成物、及び、水溶性樹脂を含有する第2の液体組成物を含むことを特徴とする。尚、セットとして組み合わせることのできる顔料を含有するインクについての限定は特になく、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクなどを用いることができる。中でも、ブロンズ現象が特に顕著に発生する、シアンインクやブラックインクと液体組成物のセットが好ましい。
【実施例】
【0045】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を更に詳細に説明する。本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。尚、以下の実施例の記載において、「部」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。
【0046】
[第1の液体組成物]
以下の手順に従って、第1の液体組成物を調製した。
【0047】
<樹脂微粒子分散液の調製>
樹脂微粒子分散液は下記の方法で調製した。尚、ウレタン樹脂微粒子、エチレン樹脂微粒子、及びエステル樹脂微粒子は、何れも市販のものを用いた。
【0048】
(アクリル樹脂微粒子分散液AE1の調製)
撹拌機、還流冷却装置、及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、100.0部のイオン交換水を添加した後、窒素ガスを導入し、撹拌下で80℃に昇温させた。更に、水100.0部、ラウリル硫酸ナトリウム(乳化剤)1.0部、アクリル酸−2−エチルヘキシル30.8部、メタクリル酸メチル52.4部、及びアクリル酸16.8部を混合し、モノマーの乳化物を調製した。上記の四つ口フラスコに、モノマーの乳化物と濃度5.0質量%の過硫酸カリウム水溶液10.0部を3時間かけて滴下した。そして、80℃で2時間撹拌した後、適量のイオン交換水を加え、固形分25.0質量%のアクリル樹脂微粒子分散液AE1を得た。AE1中のアクリル樹脂微粒子は、酸価が130mgKOH/g、体積平均粒子径が83nmであった。
【0049】
(アクリル樹脂微粒子分散液AE2の調製)
モノマーの乳化物の原料を、ラウリル硫酸ナトリウム(乳化剤)1.0部、アクリル酸n−ブチル34.0部、メタクリル酸n−ブチル50.0部、及びメタクリル酸16.0部とした以外は、上記(アクリル樹脂微粒子分散液AE1の調製)と同様にして、固形分25.0質量%のアクリル樹脂微粒子分散液AE2を得た。AE2中のアクリル樹脂微粒子は、酸価が104mgKOH/g、体積平均粒子径が101nmであった。
【0050】
(ウレタン樹脂微粒子分散液の調製)
市販のポリウレタン樹脂微粒子であるタケラックW6061(三井化学製)に、適量のイオン交換水を加え、固形分25.0質量%のポリウレタン樹脂微粒子分散液を得た。
【0051】
(エチレン樹脂微粒子分散液の調製)
市販のポリエチレン樹脂微粒子であるノプコートPEM17(サンノプコ製)に、適量のイオン交換水を加え、固形分25.0質量%のポリエチレン樹脂微粒子分散液を得た。
【0052】
(エステル樹脂微粒子分散液の調製)
市販のポリエステル樹脂微粒子であるFINETEX ES650(DIC製)に、適量のイオン交換水を加え、固形分25.0質量%のポリエステル樹脂微粒子分散液を得た。
【0053】
(コアシェル構造を有するアルキル樹脂微粒子分散液CS1の調製)
撹拌機、還流冷却装置、及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、100.0部のエチレングリコールモノブチルエーテルを添加した後、窒素ガスを導入し、撹拌下で反応温度110℃に昇温させた。このフラスコに、アクリル酸−2−エチルヘキシルを22.0部、メタクリル酸メチルを38.0部、及びアクリル酸を40.0部の各モノマーの混合物と、1.3部のtert−ブチルパーオキサイド(重合開始剤)のエチレングリコールモノブチルエーテル溶液を3時間かけて滴下した。その後、110℃で2時間撹拌し、更にエチレングリコールモノブチルエーテルを減圧下で除去して、固形のポリマーを得た。このようにして得られたポリマーを、その酸価と当量の水酸化カリウム及び適量のイオン交換水を加えて80℃で中和溶解して、固形分の含有量が30.0質量%であるシェルポリマーの水溶液を得た。このようにして酸価311mgKOH/g、GPCにより得られるポリスチレン換算の重量平均分子量15,000のシェルポリマーを得た。
【0054】
更に、得られたシェルポリマーの水溶液(固形分:30.0質量%)233部を、撹拌機、還流冷却装置、及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに添加した後、窒素ガスを導入し、撹拌下で反応温度80℃に昇温させた。このフラスコに、アクリル酸−2−エチルヘキシル6.0部、メタクリル酸n−ブチル6.0部とメタクリル酸メチル18.0部の混合物と、1.0部の過硫酸カリウム(重合開始剤)をイオン交換水16.7部に溶解した液体を3時間かけて滴下した。そして、80℃で2時間撹拌した後、適量のイオン交換水を加え、固形分25.0質量%のコアシェル構造を有するアルキル樹脂微粒子分散液CS1を得た。CS1中のアルキル樹脂微粒子は、酸価が218mgKOH/g、体積平均粒子径が102nmであった。
【0055】
(コアシェル構造を有するアルキル樹脂微粒子分散液CS2の調製)
撹拌機、還流冷却装置、及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、100.0部のエチレングリコールモノブチルエーテルを添加した後、窒素ガスを導入し、撹拌下で反応温度110℃に昇温させた。このフラスコに、アクリル酸−2−エチルヘキシルを38.0部、メタクリル酸メチルを34.0部、及びアクリル酸を28.0部の各モノマーの混合物と、1.3部のtert−ブチルパーオキサイド(重合開始剤)のエチレングリコールモノブチルエーテル溶液を3時間かけて滴下した。その後、110℃で2時間撹拌した後、更にエチレングリコールモノブチルエーテルを減圧下で除去して、固形のポリマーを得た。このようにして得られたポリマーを、その酸価と当量の水酸化カリウム及び適量のイオン交換水を加えて80℃で中和溶解して、固形分の含有量が30.0質量%であるシェルポリマーの水溶液を得た。このようにして酸価218mgKOH/g、GPCにより得られるポリスチレン換算の重量平均分子量15,000のシェルポリマーを得た。
【0056】
更に、得られたシェルポリマーの水溶液(固形分:30.0質量%)200部を、撹拌機、還流冷却装置、及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに添加した後、窒素ガスを導入し、撹拌下で反応温度80℃に昇温させた。このフラスコに、アクリル酸−2−エチルヘキシル8.0部、メタクリル酸メチル32.0部の混合物と、1.0部の過硫酸カリウム(重合開始剤)をイオン交換水16.7部に溶解した液体を3時間かけて滴下した。そして、80℃で2時間撹拌した後、適量のイオン交換水を加え、固形分25.0質量%のコアシェル構造を有するアルキル樹脂微粒子分散液CS2を得た。CS2中のアルキル樹脂微粒子は、酸価が130mgKOH/g、体積平均粒子径が70nmであった。
【0057】
<第1の液体組成物の調製>
上記で得られた樹脂微粒子分散液を下記の組成で混合した。各第1の液体組成物に用いる樹脂微粒子分散液の種類及び含有量、グリセリン及びジエチレングリコールの含有量は表1に示した。尚、イオン交換水の残部は、第1の液体組成物を構成する全成分の合計が100.0質量%となる量のことである。
・樹脂微粒子分散液(樹脂の含有量は25.0質量%) 表1参照
・グリセリン 表1参照
・ジエチレングリコール 表1参照
・ポリエチレングリコール(数平均分子量:1,000) 5.0質量%
・トリメチロールプロパン 5.0質量%
・トリエチレングリコールモノブチルエーテル 3.0質量%
・界面活性剤:アセチレノールE100(川研ファインケミカル製) 0.5質量%
・イオン交換水 残部
【0058】
これを十分撹拌して分散し、ポアサイズ1.2μmのメンブレンフィルター(HDCIIフィルター;ポール製)でろ過し、第1の液体組成物を調製した。上記で得られた第1の液体組成物について、400nm乃至800nmの波長域における最大吸光度Amaxと最小吸光度Aminを日立ダブルビーム分光光度計U−2900によって測定し、比Amax/Aminを算出したところ何れの液体組成物も1.0以上2.0以下であった。
【0059】
【表1】

【0060】
[第2の液体組成物]
以下の手順に従って、第2の液体組成物を調製した。
【0061】
<水溶性樹脂水溶液の合成>
(水溶性アクリル樹脂水溶液A1〜A9の調製)
表2に示す組成、酸価、及び重量平均分子量を有する水溶性アクリル樹脂水溶液を用意した。何れも固形分が20.0質量%であった。
【0062】
【表2】

【0063】
(水溶性ウレタン樹脂水溶液U1の調製)
ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量2,000)58.6部をメチルエチルケトン中で十分撹拌溶解し、次いでイソホロンジイソシアネート26.9部、ジメチロールプロピオン酸14.5部を加え75℃で1時間反応させた。次いで得られたプレポリマー溶液を30℃まで冷却して、エチレンジアミン1.6部を加え、アミン鎖延長反応を30℃にて12時間行った。フーリエ変換型赤外分光装置(FT−IR)によりイソシアネート基の存在が確認されなくなったところで水酸化カリウム水溶液を加え、カルボキシル基を中和した後、イオン交換水を添加、撹拌し均一な溶液となったところで、この樹脂溶液を加熱減圧下、メチルエチルケトンを留去し、固形分20.0質量%の水溶性ウレタン樹脂水溶液U1(樹脂の酸価:60mgKOH/g、GPCにより得られるポリスチレン換算の樹脂の重量平均分子量:15,000)を得た。
【0064】
(水溶性ウレタン樹脂水溶液U2の調製)
ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量2,000)62.8部をメチルエチルケトン中で十分撹拌溶解し、次いでヘキサメチレンジイソシアネート21.7部、ジメチロールプロピオン酸15.5部を加え75℃で1時間反応させた。次いで得られたプレポリマー溶液を30℃まで冷却して、エチレンジアミン1.6部を加え、アミン鎖延長反応を30℃にて12時間行った。フーリエ変換型赤外分光装置(FT−IR)によりイソシアネート基の存在が確認されなくなったところで水酸化カリウム水溶液を加え、カルボキシル基を中和した後、イオン交換水を添加、撹拌し均一な溶液となったところで、この樹脂溶液を加熱減圧下、メチルエチルケトンを留去し、固形分20.0質量%の水溶性ウレタン樹脂水溶液U2(樹脂の酸価:60mgKOH/g、GPCにより得られるポリスチレン換算の樹脂の重量平均分子量:14,000)を得た。
【0065】
(ポリビニルアルコール水溶液PVA1の調製)
撹拌機、温度計、窒素導入管を備えたフラスコに、酢酸ビニルとアゾビスイソブチロニトリル(重合開始剤)を仕込み、溶媒としてメタノールを用いて、窒素ガス還流下、温度60℃で重合反応を行った。重合後、減圧留去にて残存酢酸ビニルを留去し、次いで水酸化ナトリウム水溶液を添加しアルカリけん化することで粗粒状のポリビニルアルコールを得た。得られた粗粒状のポリビニルアルコールをジェットミルにて粉砕し、イオン交換水を加え40℃に加温、撹拌溶解し、適量のイオン交換水を加え、固形分20.0質量%ポリビニルアルコール水溶液PVA1(重合度:500、けん化度:98.5mol%)を得た。尚、けん化度はJIS−K−6726に基づき測定した。
【0066】
(ポリビニルアルコール水溶液PVA2の調製)
撹拌機、温度計、窒素導入管を備えたフラスコに、酢酸ビニルとアゾビスイソブチロニトリル(重合開始剤)を仕込み、溶媒としてメタノールを用いて、窒素ガス還流下、温度60℃で重合反応を行った。重合後、減圧留去にて残存酢酸ビニルを留去し、次いで水酸化ナトリウム水溶液を添加しアルカリけん化することで粗粒状のポリビニルアルコールを得た。得られた粗粒状のポリビニルアルコールをジェットミルにて粉砕し、イオン交換水を加え40℃に加温、撹拌溶解し、適量のイオン交換水を加え、固形分20.0質量%ポリビニルアルコール水溶液PVA2(重合度:500、けん化度:80.0mol%)を得た。
【0067】
<第2の液体組成物の調製>
上記で得られた水溶性樹脂水溶液を下記の組成で混合した。各第2の液体組成物に用いる水溶性樹脂水溶液の種類及び含有量、グリセリン及びジエチレングリコールの含有量は表3に示した。尚、イオン交換水の残部は、第1の液体組成物を構成する全成分の合計が100.0質量%となる量のことである。
・水溶性樹脂水溶液(樹脂の含有量は20.0質量%) 表3参照
・グリセリン 表3参照
・ジエチレングリコール 表3参照
・ポリエチレングリコール(数平均分子量:1,000) 5.0質量%
・トリメチロールプロパン 5.0質量%
・トリエチレングリコールモノブチルエーテル 3.0質量%
・界面活性剤:アセチレノールE100(川研ファインケミカル製) 0.5質量%
・イオン交換水 残部
【0068】
これを十分撹拌して分散し、ポアサイズ1.2μmのメンブレンフィルター(HDCIIフィルター;ポール製)でろ過し、第2の液体組成物を調製した。上記で得られた第2の液体組成物について、400nm乃至800nmの波長域における最大吸光度Amaxと最小吸光度Aminを日立ダブルビーム分光光度計U−2900によって測定し、比Amax/Aminを算出したところ何れの液体組成物も1.0以上2.0以下であった。
【0069】
【表3】

【0070】
[インク]
<顔料分散体の調製>
(シアン顔料分散液の調製)
顔料20.0部、ポリマー水溶液(固形分の含有量:20.0質量%)60.0部、及び水20.0部を、0.3mm径のジルコニアビーズの充填率を80%としたビーズミル(LMZ2;アシザワファインテック製)に入れ、回転数1,800rpmで5時間分散した。尚、顔料としては、C.I.ピグメントブルー15:3(商品名:ジェットシアンGLX;BASF製)を、また、ポリマー水溶液としては、ジョンクリル678(BASF製)を、酸価と当量の水酸化カリウムで中和したものを用いた。その後、回転数5,000rpmで30分間遠心分離を行うことにより凝集成分を除去し、更にイオン交換水で希釈することで、顔料の含有量が15.0質量%であるシアン顔料分散液を得た。
【0071】
(マゼンタ顔料分散液の調製)
前記シアン顔料分散液の顔料をC.I.ピグメントレッド122(商品名:トナーマゼンタE02;クラリアント製)とする以外は同様にして顔料の含有量が15.0質量%であるマゼンタ顔料分散液を得た。
【0072】
(イエロー顔料分散液の調製)
前記シアン顔料分散液の顔料をC.I.ピグメントイエロー74(商品名:ハンザイエロー5GXB;クラリアント製)とする以外は同様にして顔料の含有量が15.0質量%であるイエロー顔料分散液を得た。
【0073】
(ブラック顔料分散体の調製)
前記シアン顔料分散液の顔料をカーボンブラック(商品名:モナーク1100;キャボット製)とする以外は同様にして顔料の含有量が15.0質量%であるブラック顔料分散液を得た。
【0074】
<顔料インクの調製>
上記で得られた各顔料分散液を下記の組成で混合した。
・顔料分散液(顔料の含有量は15.0質量%) 10.0質量%
・グリセリン 10.0質量%
・ポリエチレングリコール(平均分子量:1,000) 5.0質量%
・トリメチロールプロパン 5.0質量%
・トリエチレングリコールモノブチルエーテル 3.0質量%
・界面活性剤:アセチレノールE100(川研ファインケミカル製) 0.5質量%
・イオン交換水 66.5質量%
これを十分撹拌して分散し、ポアサイズ1.2μmのメンブレンフィルター(HDCIIフィルター;ポール製)でろ過し、顔料インク(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)を調製した。
【0075】
[評価]
本発明においては下記の各評価項目の評価基準において、AA〜Bが好ましいレベルとし、Cは許容できないレベルとした。上記で得られた第1の液体組成物、第2の液体組成物、及びインクを、それぞれ液体カートリッジに充填し、表4に示す組合せでセットとし、インクジェット記録装置PIXUS Pro9500(キヤノン製)に装着した。このとき、シアンの位置にインクを、フォトマゼンタの位置に第1の液体組成物を、フォトシアンの位置に第2の液体組成物を装着した。そして、キヤノン写真用紙・光沢ゴールドGL−101(キヤノン製)に対して、濃色画像、淡色画像、クリア画像の3種の画像を記録した評価用サンプルを作成した。このとき、それぞれの画像は、インクを記録媒体に付与し、その後、第1の液体組成物を記録媒体の前記インクを付与した領域に重ねて付与し、次いで、第2の液体組成物を記録媒体の前記インク及び前記第1の液体組成物を付与した領域に重ねて付与することで記録した。濃色画像は、インクの記録デューティが100%のベタ画像と重なるように第1の液体組成物及び第2の液体組成物をそれぞれ記録デューティ20%で付与した画像である。淡色画像は、インクの記録デューティが20%のベタ画像と重なるように第1の液体組成物及び第2の液体組成物をそれぞれ記録デューティ20%で付与した画像である。クリア画像は、インクを記録せず、第1の液体組成物及び第2の液体組成物をそれぞれ記録デューティ20%で付与した画像である。得られた評価用サンプルを常温で24時間保存した後、以下の評価を行った。尚、記録条件は、温度:23℃、相対湿度:55%とした。尚、上記インクジェット記録装置では、解像度600dpi×600dpiで1/600インチ×1/600インチの単位領域に3.5ng(ナノグラム)のインク滴を8ドット付与する条件を、記録デューティが100%であると定義される。
【0076】
<画像の写像均一性>
上記で得られた評価用サンプルの3種の画像(濃色画像、淡色画像、及びクリア画像)について、写像性測定器ICM−1(スガ試験機製)を用いて、JIS H 8686−2に規定された写像性試験方法に基づき、写像性の評価を行なった。このとき、測定条件は、測定方法:反射、測定角度(入射角、受光角):60°とし、5種の光学くし(2.0mm、1.0mm、0.5mm、0.25mm、0.125mm)を用いた。具体的には、3種の画像それぞれについて、各光学くしにおける最高波高(M)及び最低波高(m)の測定を行った。得られたM及びmの値から、下記式を用いて各光学くしの写像性c値を算出し、それらの値を加算することにより、それぞれの画像の写像性C値(%)を求めた。このとき得られた濃色画像の写像性をC(%)、淡色画像の写像性をC(%)、クリア画像の写像性をC(%)としたときの、△C=C−C、△C=C−C、△C=C−Cを算出し、△C、△C、及び△Cの絶対値の平均値△C=(|△C|+|△C|+△|C|)/3を求め、画像の写像均一性を評価した。尚、△Cが小さい程、画像の写像均一性が高いことを意味する。画像の写像均一性の評価基準は以下の通りである。評価結果を表4に示す。
写像性c値(%)={(M−m)/(M+m)}×100
AA:△Cが15.0未満であった
A:△Cが15.0以上20.0未満であった
B:△Cが20.0以上25.0未満であった
C:△Cが25.0以上であった。
【0077】
<画像の耐オゾン性>
上記で得られた評価用サンプルを更に、オゾンウェザーメーターOMS−HS(スガ試験機製)を用い、温度:23℃、相対湿度:50%の環境下、オゾン濃度2ppmで1000時間の条件でオゾン暴露試験を行った。試験前後の評価用サンプルの濃色画像及び淡色画像を目視で比較し、画像の耐オゾン性を評価した。画像の耐オゾン性の評価基準は以下の通りである。評価結果を表4に示す。
AA:暴露試験前後で、濃色画像及び淡色画像、共に画像濃度の変化が少なかった
A:暴露試験前後で、淡色画像のみ、画像濃度がやや低下した
B:暴露試験前後で、濃色画像及び淡色画像、共に画像濃度がやや低下した
C:暴露試験前後で、濃色画像及び淡色画像、共に画像濃度が激しく低下した。
【0078】
<画像のブロンズ現象>
上記で得られた評価用サンプルの3種の画像のうち、濃色画像及び淡色画像を目視で確認し、ブロンズ現象の発生の有無を評価した。画像のブロンズ現象の評価基準は以下の通りである。評価結果を表4に示す。
AA:濃色画像及び淡色画像、共にブロンズ現象はほとんど発生していなかった
A:淡色画像ではブロンズ現象はほとんど発生していなかった。濃色画像ではブロンズ現象が僅かに発生していたが、ほとんど気にならないレベルであった
B:濃色画像及び淡色画像、共にブロンズ現象が僅かに発生していたが、ほとんど気にならないレベルであった
C:濃色画像及び淡色画像、共にブロンズ現象が発生していた。
【0079】
【表4】

【0080】
<実施例41>
表4の実施例6の組合せでセットとし、マルチパスで記録を行うインクジェット記録装置PIXUS Pro9500(キヤノン製)に装着した。このとき、シアンの位置に第2の液体組成物を、フォトマゼンタの位置にインクを、フォトシアンの位置に第1の液体組成物を装着した。この装着順序では、単位領域内における最初のパスでは第2の液体組成物→インク→第1の液体組成物の順序で付与される。そして、上記と同様にして、3種の画像を記録した評価用サンプルを作成した。このとき、上記と同様の3つの評価(画像の写像均一性、耐オゾン性、ブロンズ抑制)を行ったところ、何れもAA評価となった。尚、本発明者らが確認したところ、上記画像においては、インク、第1の液体組成物、及び第2の液体組成物がそれぞれ重ねて付与される領域が存在した。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料を含有するインクを記録媒体に付与する工程、
400nm乃至800nmの波長域における最大吸光度と最小吸光度の比(最大吸光度/最小吸光度)が1.0以上2.0以下であり、樹脂微粒子を含有する第1の液体組成物を、前記インクを付与する領域と少なくとも一部で重なるように前記記録媒体に付与する工程、及び、
400nm乃至800nmの波長域における最大吸光度と最小吸光度の比(最大吸光度/最小吸光度)が1.0以上2.0以下であり、水溶性樹脂を含有する第2の液体組成物を、前記インク及び前記第1の液体組成物を付与する領域と少なくとも一部で重なるように前記記録媒体に付与する工程を有することを特徴とする画像記録方法。
【請求項2】
前記第1の液体組成物中の前記樹脂微粒子の含有量(質量%)が、前記第2の液体組成物中の前記水溶性樹脂の含有量(質量%)に対して、質量比率で0.5倍以上2.0倍以下である請求項1に記載の画像記録方法。
【請求項3】
前記インク中の前記顔料の含有量(質量%)が、前記第1の液体組成物中の前記樹脂微粒子の含有量(質量%)と前記第2の液体組成物中の前記水溶性樹脂の含有量(質量%)の合計の含有量に対して、質量比率で0.20倍以上1.00倍以下である請求項1又は2に記載の画像記録方法。
【請求項4】
前記第2の液体組成物が含有する前記水溶性樹脂が、水溶性アクリル樹脂、水溶性ウレタン樹脂、及びポリビニルアルコールから選択される少なくとも1種である請求項1乃至3の何れか1項に記載の画像記録方法。
【請求項5】
顔料を含有するインク、400nm乃至800nmの波長域における最大吸光度と最小吸光度の比(最大吸光度/最小吸光度)が1.0以上2.0以下であり、樹脂微粒子を含有する第1の液体組成物、及び、400nm乃至800nmの波長域における最大吸光度と最小吸光度の比(最大吸光度/最小吸光度)が1.0以上2.0以下であり、水溶性樹脂を含有する第2の液体組成物を含むことを特徴とするセット。


【公開番号】特開2013−18155(P2013−18155A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151920(P2011−151920)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】