説明

画像記録装置、及び、画像記録方法

【課題】照射部のメンテナンスを容易にすること。
【解決手段】電磁波が照射されると硬化する電磁波硬化型インクを被記録媒体に吐出するノズルと、前記電磁波を照射するための照射部であって、前記ノズルよりも前記被記録媒体の搬送方向の下流側に配置された照射部と、を備え、前記ノズルが前記被記録媒体への前記電磁波硬化型インクの吐出を開始してから、前記照射部が前記被記録媒体上の前記電磁波硬化型インクに前記電磁波を照射する前までの間に、前記照射部の照射面に付着した異物が除去されることを特徴とする画像記録装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像記録装置、及び、画像記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像記録装置(以下、プリンター)の中には、紫外線を照射すると硬化する紫外線硬化型インク(以下、UVインク)を使用するものがある。このようなプリンターにおいて、紫外線を照射する照射部からの光量が低下すると、未硬化のインクが残った印刷物が出力されてしまう。そこで、照射部の光量を測定する手段を有し、光量測定手段による測定値が目標値未満のときは、その測定結果をユーザーに通知するプリンターが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−195966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
照射部の光量低下の原因の1つとして、照射部に付着したUVインクによる紫外線照射の妨げが挙げられる。照射部に付着したUVインクに紫外線が照射されると、照射部にてUVインクが硬化してしまう。そのため、UVインクの除去が難しくなり、照射部の光量(紫外線の照射強度)が低下したままとなってしまう。
そこで、本発明では、照射部のメンテナンスを容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決する為の主たる発明は、電磁波が照射されると硬化する電磁波硬化型インクを被記録媒体に吐出するノズルと、前記電磁波を照射するための照射部であって、前記ノズルよりも前記被記録媒体の搬送方向の下流側に配置された照射部と、を備え、前記ノズルが前記被記録媒体への前記電磁波硬化型インクの吐出を開始してから、前記照射部が前記被記録媒体上の前記電磁波硬化型インクに前記電磁波を照射する前までの間に、前記照射部の照射面に付着した異物が除去される、ことを特徴とする画像記録装置である。
本発明の他の特徴は、本明細書、及び添付図面の記載により、明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】プリンターの全体構成ブロック図である。
【図2】インクを吐出するヘッドの周辺を説明する図である。
【図3】ヘッド及び本照射部を移動方向から見た概略断面図である。
【図4】印刷処理のフローを説明する図である。
【図5】図5Aは本照射部のメンテナンスの様子を説明する図であり、図5Bは比較例の本照射部を説明する図である。
【図6】図6Aから図6Cは本照射部の変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
===開示の概要===
本明細書の記載、及び添付図面の記載により、少なくとも次のことが明らかとなる。
【0008】
即ち、電磁波が照射されると硬化する電磁波硬化型インクを被記録媒体に吐出するノズルと、前記電磁波を照射するための照射部であって、前記ノズルよりも前記被記録媒体の搬送方向の下流側に配置された照射部と、を備え、前記ノズルが前記被記録媒体への前記電磁波硬化型インクの吐出を開始してから、前記照射部が前記被記録媒体上の前記電磁波硬化型インクに前記電磁波を照射する前までの間に、前記照射部の照射面に付着した異物が除去される、ことを特徴とする画像記録装置である。
このような画像記録装置によれば、電磁波硬化型インクが照射面から剥がれ易い状態で、照射面から電磁波硬化型インクを除去することができ、照射部のメンテナンスが容易となる。
【0009】
かかる画像記録装置であって、前記ノズルが前記被記録媒体への前記電磁波硬化型インクの吐出を終了してから、前記照射部が前記被記録媒体上の前記電磁波硬化型インクに前記電磁波を照射する前までの間に、前記照射部の照射面に付着した異物が除去されること。
このような画像記録装置によれば、電磁波硬化型インクが照射面から剥がれ易い状態で、照射面から電磁波硬化型インクを除去することができ、照射部のメンテナンスが容易となる。
【0010】
かかる画像記録装置であって、前記搬送方向に並んだ複数の前記ノズルが前記被録媒体に対して前記搬送方向と交差する移動方向に移動しながら前記電磁波硬化型インクを吐出する記録動作と、前記被記録媒体を前記ノズルに対して前記搬送方向の下流側に搬送する搬送動作とを、交互に繰り返し、前記記録動作が終了してから次の前記搬送動作が開始する前までの間に、前記照射部の照射面に付着した異物が除去されること。
このような画像記録装置によれば、ノズルが電磁波硬化型インクの吐出を終了してから、照射部が電磁波硬化型インクに電磁波を照射する前までの間に、照射部の照射面に付着した異物を除去することができる。
【0011】
かかる画像記録装置であって、単位面積あたりの前記電磁波の照射強度が前記照射部よりも弱い仮の照射部を有し、前記仮の照射部は、複数の前記ノズルと共に前記移動方向に移動しながら、前記被記録媒体上の前記電磁波硬化型インクに前記電磁波を照射すること。
このような画像記録装置によれば、照射部が電磁波を照射する前に仮の照射部が被記録媒体上の電磁波硬化型インクに電磁波を照射するため、電磁波硬化型インクの流動を抑えることができ、画像の画質劣化を抑制することができる。
【0012】
かかる画像記録装置であって、前記照射部の照射面に付着した異物が除去されてから次の前記記録動作が開始する前までの間に、前記照射面に洗浄剤が塗布されること。
このような画像記録装置によれば、照射面に付着した異物を除去し易くすることができ、照射面に付着した電磁波硬化型インクの取り残しを低減することができる。
【0013】
かかる画像記録装置であって、前記照射面に当接しながら前記照射面に対して前記照射面の所定方向における一端部から他端部まで相対移動するワイパー部材によって、前記照射面に付着した異物を除去し、前記照射面の前記他端部は前記所定方向に対して傾斜していること。
このような画像記録装置によれば、ワイパー部材の引っ掛かりを防止することができ、照射面に付着した電磁波硬化型インクの取り残しを低減することができる。
【0014】
かかる画像記録装置であって、前記照射部は、前記電磁波を透過するカバー部材を有し、前記ワイパー部材は、前記カバー部材が有する面のうちの前記被記録媒体側の面である露出面に付着した異物を除去し、前記カバー部材の前記所定方向における一端部及び他端部は、前記露出面の反対面から前記露出面にかけて、前記カバー部材の前記所定方向における中央部側に傾斜し、前記カバー部材の支持部材は、前記一端部の傾斜部分及び前記他端部の傾斜部分を支持すること。
このような画像記録装置によれば、ワイパー部材の引っ掛かりを防止することができ、照射面に付着した電磁波硬化型インクの取り残しを低減することができる。
【0015】
かかる画像記録装置による画像記録方法である。
このような画像記録方法によれば、照射部に付着した電磁波硬化型インクによる電磁波照射の妨げが抑えられるので、電磁波硬化型インクの硬化が十分な画像を被記録媒体に記録することができる。
【0016】
===印刷システム===
画像記録装置をインクジェットプリンター(以下、プリンター)とし、プリンターとコンピューターが接続された印刷システムを例に挙げて、実施形態を説明する。
図1は、プリンター1の全体構成ブロック図であり、図2は、インクを吐出するヘッド41の周辺を説明する図である。なお、図2では、ヘッド41の上方から見たノズルの配列を仮想的に示す。
本実施形態のプリンター1は、紫外線(電磁波)の照射によって硬化する紫外線硬化型インク(電磁波硬化型インク)を用いて、被記録媒体S(例えば、用紙、布、フィルムなど)に画像を印刷(記録)する。なお、紫外線硬化型インク(以下、UVインク)は、紫外線硬化樹脂を含むインクであり、紫外線の照射を受けると紫外線硬化樹脂において光重合反応が起こることにより硬化する。
【0017】
コンピューター80は、プリンター1と通信可能に接続されており、プリンター1に画像を印刷させるための印刷データをプリンター1に出力する。
コントローラー10は、プリンター1の制御を行うための制御ユニットである。インターフェース部11はコンピューター80とプリンター1との間でデータの送受信を行うためのものである。CPU12はプリンター1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー13はCPU12のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものである。CPU12はユニット制御回路14により各ユニットを制御する。なお、プリンター1内の状況を検出器群70が監視し、その検出結果に基づいて、コントローラー10は各ユニットを制御する。
【0018】
搬送ユニット20は、被記録媒体S(以下、媒体)を印刷可能な位置に送り込み、印刷時には搬送方向に所定の搬送量で媒体Sを搬送するためのものである。
キャリッジユニット30は、キャリッジ31に搭載されたヘッド41及び仮照射部51a,51bを、搬送方向と交差する移動方向に移動するためのものである。
【0019】
ヘッドユニット40は、媒体SにUVインクを吐出するためのものであり、ヘッド41を有する。ヘッド41の下面には、図2に示すように、イエローインクを吐出するノズル列Yと、マゼンタインクを吐出するノズル列Mと、シアンインクを吐出するノズル列Cと、ブラックインクを吐出するノズル列Kと、が設けられている。各ノズル列では、インクを吐出する複数のノズル(#1〜#180)が搬送方向に所定の間隔おきに並んでいる。なお、ノズルからのインク吐出方式は、駆動素子(ピエゾ素子)に電圧をかけてインク室を膨張・収縮させることによりノズルからインクを吐出させるピエゾ方式でもよいし、発熱素子を用いてノズル内に気泡を発生させ、その気泡によってノズルからインクを吐出させるサーマル方式でもよい。
【0020】
照射ユニット50は、媒体S上のUVインクに紫外線を照射して、UVインクを硬化するためのものであり、仮照射部51a,51bと本照射部52を有する。なお、紫外線照射の光源として、例えば、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)や、メタルハライドランプ、水銀ランプなどが挙げられるが、本実施形態では発光ダイオード(LED)を用いるとする。また、仮照射部51a,51bや本照射部52による単位面積あたりの紫外線の照射量(照射エネルギー(mJ/cm))は、単位面積あたりの紫外線の照射強度(mW/cm)と照射時間(s)の積で定められる。
【0021】
仮照射部51a,51bは、ヘッド41を挟んでキャリッジ31の移動方向における両端部に設けられ、キャリッジ31の移動に伴ってヘッド41と共に移動方向に移動する。キャリッジ31が移動方向の左側に移動する時には、ヘッド41よりも右側に位置する仮照射部51aにより紫外線が照射され、キャリッジ31が移動方向の右側に移動する時にはヘッド41よりも左側に位置する仮照射部51bにより紫外線が照射される。そのため、ヘッド41から吐出されたUVインクは媒体Sに着弾すると直ぐに仮照射部51a,51bにより硬化され、UVインクの流動による滲みや混色を抑えることができる。ただし、仮照射部51a,51bは、本照射部52に比べて、単位面積あたりの紫外線の照射強度(mW/cm)が弱く、UVインクが完全に硬化ない程度にUVインクを仮硬化する。
【0022】
本照射部52(照射部に相当)は、ヘッド41よりも搬送方向の下流側に固定して配置され、本照射部52の移動方向の長さは、最大サイズの媒体Sの移動方向の長さ以上である。本照射部52は、下を通過する媒体S上のUVインクに向けて、UVインクが完全に硬化する程に強い紫外線を照射する。
【0023】
メンテナンスユニット60は、仮照射部51a,51b及び本照射部52の照射面に付着した異物(UVインク,埃,紙粉など)を除去するためのものである(詳細は後述)。
【0024】
このような構成のプリンター1にて、キャリッジ31がヘッド41及び仮照射部51a,51bを移動方向に移動しながらヘッド41がUVインクを吐出する記録動作と、搬送ユニット20がヘッド41に対して媒体Sを搬送方向の下流側に搬送する搬送動作と、が交互に繰り返させる。そして、媒体S上のUVインクは、記録動作時に仮照射部51a,51bにより仮硬化され、搬送動作時に本照射部52により完全に硬化される。なお、以下では、1回の記録動作を「パス」とも呼ぶ。
【0025】
===インクミストの問題===
図3は、ヘッド41及び本照射部52を移動方向から見た概略断面図である。図3に示すように、本照射部52は、紫外線照射の光源である複数のLEDと、紫外線を透過するカバーガラス521(カバー部材に相当)と、LED及びカバーガラス521を支持する本体部522と、を有する。LEDは、カバーガラス521に覆われて保護されており、カバーガラス521を介して媒体S上のUVインクに紫外線を照射する。なお、LEDのカバー部材は、ガラスに限らず、紫外線を透過するものであればよい。
【0026】
ところで、ヘッド41のノズルからインク滴が吐出される際にインクミスト(微小なインク滴)が発生する。インクミストは、媒体Sに着弾せずに、ヘッド41周辺を浮遊する。そのため、ヘッド41の近傍に配置された本照射部52のカバーガラス521の下面(媒体側の面)にインクミストが付着してしまう。カバーガラス521にインクミストが付着したまま放置してしまうと、UVインク(インクミスト)が堆積し、堆積したUVインクがLEDからの紫外線照射を妨げ、媒体S上のUVインクに照射される紫外線の照射量(照射強度)が低下してしまう。そうすると、媒体S上に未硬化のUVインクが残り、印刷物の品質が低下してしまう。
【0027】
また、カバーガラス521に付着したUVインクをワイパー部材で除去するとしても、その前に、カバーガラス521に付着したUVインクに紫外線が照射されてしまうと、カバーガラス521上でUVインクが硬化し(固着し)、ワイパー部材によるUVインクの除去が難しくなってしまう。即ち、カバーガラス521からUVインクが剥がれ難くなってしまう。
【0028】
このようにカバーガラス521に付着したUVインクをワイパー部材で除去することが出来ない場合には、カバーガラス521を交換したり、LEDに流す電流値を上げて紫外線の照射強度を強めたりしなければならない。そうすると、ユーザーの手間が増え、無駄に電力が消費されてしまう。
【0029】
===印刷処理===
図4は、印刷処理のフローを説明する図であり、図5Aは、本照射部52のメンテナンスの様子を説明する図であり、図5Bは、比較例の本照射部52’を説明する図である。
【0030】
印刷処理を説明する前に、まず、メンテナンスユニット60について説明する。メンテナンスユニット60は、前述のように、仮照射部51a,51bの照射面及び本照射部52の照射面(カバーガラス521)に付着したUVインク等の異物を除去するためのものである。なお、異物を除去する方法は仮照射部51a,51bと本照射部52とで同じであるため、ここでは、本照射部52を例に挙げて説明する。本照射部52の照射面から異物を除去するために、メンテナンスユニット60は、図5Aに示すように、ワイパー部材61と、塗布部材62と、洗浄液タンク63と、移動機構64と、を有する。ワイパー部材61は、弾性変形可能な部材(例えば、ゴムなど)で形成された板状部材であり、洗浄液タンク63は、洗浄液(洗浄剤に相当)を貯留し、塗布部材62は、洗浄液タンク63から供給された洗浄液を吸収保持する部材(例えば、スポンジや不織布など)で形成された板状部材である。洗浄液は、UVインクをカバーガラス521から剥がし易くする性質、例えば、UVインクを軟化させたり、UVインクの硬化を抑制したりする性質を有するものである。
【0031】
なお、ワイパー部材61は、弾性部材に限らず、カバーガラス521に付着したUVインクを除去できる部材であればよく、例えば、布などで形成してもよい。塗布部材62は、洗浄液を吸収保持する板状部材に限らず、カバーガラス521に洗浄液を塗布できればよく、例えば、ゴムで形成されたローラーなどでもよい。カバーガラス521に塗布する洗浄剤は、液体に限らず、例えば、ゲル状であってもよい。
【0032】
そして、ワイパー部材61及び塗布部材62は、移動機構64によって、カバーガラス521の下面521a(露出面に相当)に当接しながら、カバーガラス521に対して移動方向に移動する。なお、ワイパー部材61及び塗布部材62の搬送方向の長さは、カバーガラス521の搬送方向の長さと同程度であるとする。よって、ワイパー部材61及び塗布部材62は、移動方向に移動するだけで、カバーガラス521の下面521aの全域と当接する。また、移動機構64は移動方向の右側から左側へ移動し、ワイパー部材61は塗布部材62よりも左側に位置するため、ワイパー部材61の方が塗布部材62よりも先にカバーガラス521に当接する。
【0033】
次に、印刷処理について説明する。
図4に示すように、プリンター1のコントローラー10は、印刷ジョブを受信すると(S01)、最初のパス1の印刷を実行する(S02)。即ち、コントローラー10が、キャリッジ31によりヘッド41及び仮照射部51a,51bを移動方向に移動させながら、ヘッド41からUVインクを吐出させ、仮照射部51a,51bにより媒体S上のUVインクを仮硬化させる。この時、本照射部52のLEDは非点灯状態であり、本照射部52は紫外線を照射しない。また、この時、本照射部52のワイパー部材61等は非印刷領域(媒体Sが通過しない領域)に退避している。
【0034】
パス1の印刷によって、本照射部52のカバーガラス521の下面521aにインクミスト(UVインク)が付着してしまう。そこで、コントローラー10は、次に、図5Aに示すように、移動機構64によって、ワイパー部材61及び塗布部材62の先端をカバーガラス521の下面521aに当接させながら、カバーガラス521の移動方向における右側端部521cから左側端部521dまで(所定方向における一端部から他端部まで)、ワイパー部材61及び塗布部材62を移動方向へ移動させる(本照射部52の照射面をワイピングする)。
【0035】
そうすることで、カバーガラス521の下面521aに付着していたUVインク等の異物をワイパー部材61により除去し、その後、塗布部材62によりカバーガラス521の下面521aに洗浄液を塗布することができる(S03)。この時も、本照射部52のLEDは非点灯状態のままである。従って、1パスの印刷(記録動作)が終了してから、本照射部52が紫外線を照射する前までの間に、本照射部52の照射面に付着したUVインクが除去される。
【0036】
なお、媒体S上のUVインクに強い紫外線を照射するために、本照射部52による紫外線照射時には、カバーガラス521と媒体Sとの距離を比較的に狭くするように設定されている場合がある。その場合、本照射部52を上下方向に移動可能とし、カバーガラス521に付着した異物を除去する時は本照射部52の位置を上げて、ワイパー部材61が本照射部52と媒体Sとの間を通過できるようにし、紫外線照射時には本照射部52の位置を下げるとよい。
【0037】
また、コントローラー10は、本照射部52のカバーガラス521に付着した異物を除去する際に、キャリッジ31に伴って非印刷領域に退避した仮照射部51a,51bの照射面(カバーガラス)に対しても、ワイパー部材(不図示)によってUVインク等の異物を除去し、塗布部材(不図示)によって洗浄液を塗布する(S03)。
【0038】
次に、コントローラー10は、本照射部52のLEDを点灯し、媒体Sを搬送方向の下流側に搬送させる。そうすることで、本照射部52の下を通過する媒体S上のUVインクは完全に硬化される(S04)。その後、コントローラー10は、次のパスの有無を確認し(S05)、パスが無くなるまで、上述の一連の動作(1パスの印刷,本照射部52のワイピング,搬送動作及び本照射部52による紫外線照射)が繰り返される。
【0039】
以上のように、本実施形態のプリンター1では、1パスの印刷(記録動作)が終了してから(ヘッド41がUVインクの吐出を終了してから)、次の搬送動作が開始する前までの間に、ワイパー部材61が本照射部52(照射部に相当)の照射面(カバーガラス521の下面521a)に付着したUVインク等の異物を除去する。つまり、本照射部52の照射面に付着したUVインクが、本照射部52のLEDから照射される紫外線により硬化する前に、ワイパー部材61によって除去される。
【0040】
従って、UVインクが硬化する前の除去し易い状態で(カバーガラス521からUVインクを剥がし易い状態で)、本照射部52の照射面に付着したUVインクを除去することができる。そのため、本照射部52の照射面に付着したUVインクの取り残しを低減することができ、本照射部52の照射面をきれいな状態に保つことができる。よって、照射面に付着したUVインクによる紫外線照射の妨げを防止でき、即ち、本照射部52が媒体S上のUVインクに照射する紫外線の強度低下を防止でき、媒体S上のUVインクを確実に硬化することができる。
【0041】
本照射部52の照射面に付着したUVインクをワイパー部材61で除去できるので、カバーガラス521の交換頻度を減らすことができ、また、LEDに流す電流値を上げて紫外線の照射強度を強める必要が無くなる。以上のように、本実施形態のプリンター1では、本照射部52のメンテナンスが容易となる。
【0042】
また、特に、本照射部52はUVインクを完全に硬化する程の強い紫外線を照射するため、本照射部52が一度紫外線を照射してしまうと、仮照射部51a,51bに比べて、照射面に付着したUVインクの除去が難しくなってしまう。そのため、本実施形態では、印刷中(インクミストの発生時)は本照射部52のLEDを非点灯とし、本照射部52のLEDを点灯する前に本照射部52の照射面に付着したUVインク等の異物を除去する。
【0043】
一方、単位面積あたりの紫外線の照射強度が本照射部52よりも弱い仮照射部51a,51b(仮の照射部に相当)は、ヘッド41と共に移動方向に移動しながら、媒体S上のUVインクに紫外線を照射する。即ち、印刷中(インクミストの発生時)に、仮照射部51a,51bのLEDは点灯している。しかし、仮照射部51a,51bは、本照射部52に比べて、UVインクを完全には硬化しない程度の弱い紫外線を照射するため、印刷中に仮照射部51a,51bが紫外線を照射しても、仮照射部51a,51bの照射面に付着したUVインクをワイパー部材61によって除去することができる。
【0044】
なお、ここでは、1回のパスが終了するごとに仮照射部51a,51bの照射面に付着した異物を除去しているが、これに限らず、複数回のパスごとに異物を除去するようにしてもよい。即ち、仮照射部51a,51bの照射面にUVインクが固着する前に、照射面のUVインクを除去するようにすればよい。
【0045】
また、本実施形態のプリンター1のように、本照射部52だけでなく、仮照射部51a,51bも備える場合、ヘッド41から吐出されて媒体S上に着弾したUVインクに対して直ぐに仮照射部51a,51bが紫外線を照射することができ、UVインクを仮硬化することができる。従って、本実施形態のプリンター1のように、ヘッド41がUVインクを吐出してから本照射部52が媒体S上のUVインクに紫外線を照射する前までの間に、ワイパー部材61が本照射部52の照射面から異物を除去するとしても、即ち、ヘッド41がUVインクを吐出してから本照射部52が媒体S上のUVインクに紫外線を照射するまでの時間が長くとも、媒体S上のUVインクは仮照射部51a,51bにより仮硬化されているため、UVインクの流動による滲みや混色を抑えることができる。よって、画像の画質劣化を抑制することができる。
【0046】
また、本実施形態のプリンター1では、仮照射部51a,51b及び本照射部52の照射面(カバーガラス521の下面521a)に付着したUVインク等の異物が除去されてから、次の記録動作が開始する前までの間に、塗布部材62によって照射面に洗浄液(洗浄剤に相当)が塗布される。
そのため、仮照射部51a,51b及び本照射部52の照射面に付着したUVインク等の異物をワイパー部材61でより除去し易くすることができ、照射面に付着したUVインクの取り残しをより低減することができる。言い換えれば、ワイパー部材61をカバーガラス521に弱い力で当接させてもUVインクを除去することが出来るため、カバーガラス521の疵付きを防止することができる。
【0047】
また、図5Bに示す比較例の本照射部52’では、本体部522’におけるカバーガラス521の支持部522a’が、カバーガラス521の下面521aを支持している。そのため、比較例の本照射部52’では、ワイパー部材61が本照射部52の下面を移動する領域に、下方に(媒体S側に)突出した部位(即ち、支持部522a’)が存在し、段差が生じている。また、下方に突出した支持部522a’がワイパー部材61と接触する面(右側側面)と、カバーガラス521の下面521aと、が成す角度が90度となっている。
【0048】
この場合、図5Bに示すように、下方に突出した支持部522a’にワイパー部材61が引っ掛かり易く、支持部522a’とカバーガラス521とが成す角部に(支持部522a’とワイパー部材61との間に)UVインクが残留し易くなり、支持部522a’にUVインクが固着してしまう。そうすると、固着したUVインクにより紫外線照射が妨げられてしまう。また、定期的にカバーガラス521を取り外して清掃したり交換したりしても、支持部522a’に固着したUVインクによりカバーガラス521が汚れてしまう。
【0049】
これに対して、本実施形態の本照射部52では、図5Aに示すように、カバーガラス521(照射面)のうち、ワイパー部材61が移動する側である左側の端部521dが、移動方向に対して傾斜している。
より詳しく言えば、カバーガラス521の移動方向における右側端部521cと左側端部521dが、カバーガラス521の上面521b(露出面の反対面に相当)から下面521a(露出面に相当)にかけて、カバーガラス521の移動方向における中央部側に傾斜し、カバーガラス521の支持部522a(支持部材に相当)が、右側端部521cの傾斜部分及び左側端部521dの傾斜部分を支持している。
【0050】
そのため、本実施形態の本照射部52では、比較例(図5B)のようにワイパー部材61が本照射部52の下面を移動する領域に下方に突出する部位が無くなり、また、ワイパー部材61が移動する側である左側の端部521dが傾斜しているため、ワイパー部材61の引っ掛かりを防止することができる。また、本実施形態の本照射部52では、比較例のように支持部522a’とカバーガラス521の下面521aとが成す90度の角部が無くなる。よって、ワイパー部材61によるUVインクの取り残しをより低減することができる。
【0051】
===変形例===
前述の実施形態では、図4に示すように、1パスの印刷が終了してから次の搬送動作が開始する前までの間に、本照射部52の照射面に付着したUVインク等の異物を除去しているが、これに限らない。例えば、1パスの印刷時(記録動作時)と同じタイミングで、本照射部52の照射面に付着した異物を除去してもよい。つまり、ヘッド41(ノズル)が媒体SへのUVインクの吐出を開始してから、本照射部52が媒体S上のUVインクに紫外線を照射する前までの間に、本照射部52の照射面に付着した異物を除去してもよい。
この場合にも、印刷中に発生して本照射部52の照射面に付着したインクミスト(UVインク)を、本照射部52が紫外線を照射する前に、照射面から剥がし易い状態で除去できる。
【0052】
前述の実施形態では、図5Aに示すように、同じ移動機構64によってワイパー部材61と塗布部材62が移動し、塗布部材62がパスごとに照射面に洗浄液を塗布しているが、これに限らない。例えば、ワイパー部材61とは異なる移動機構で塗布部材62を動かし、複数回のパスごとに塗布部材52が照射面に洗浄液を塗布するようにしてもよい。また、洗浄液を塗布しなくてもよい。
【0053】
前述の実施形態では、仮照射部51a,51bがヘッド41と共に移動しながら媒体S上のUVインクに紫外線を照射するとしているが、仮照射部51a,51bを設けずに、本照射部52だけで媒体S上のUVインクを硬化するようにしてもよい。
【0054】
前述の実施形態では、図5Aに示すように、移動機構64によりワイパー部材61が自動に移動し、本照射部52の照射面に付着した異物を除去しているが、これに限らない。例えば、ユーザーの手動によってワイパー部材61を移動してもよいし、ユーザーが布などで本照射部52の照射面に付着したUVインクを拭き取るようにしてもよい。この場合、例えば、コントローラー10が、本照射部52の照射面から異物を除去するタイミングをユーザーに通知する。また、ワイパー部材61に対して本照射部52が移動方向に移動することによって、本照射部52の照射面に付着した異物を除去するようにしてもよい。
【0055】
前述の実施形態では、本照射部52と仮照射部51a,51bとで照射面から異物を除去するタイミングを同じにしているが(記録動作と搬送動作の間にしているが)、これに限らない。仮照射部51a,51bは、搬送動作時に媒体S上のUVインクに紫外線を照射しないため、あるパス(記録動作)が終了してから次のパスが開始する前までの間に、照射面のUVインクを除去すればよい。従って、媒体Sの搬送動作中に仮照射部52a,51bの照射面から異物を除去してもよい。
【0056】
前述の実施形態では、ヘッド41が移動方向に移動しながらインクを吐出する記録動作と、媒体が搬送方向の下流側に搬送される搬送動作とが、交互に繰り返されるプリンター1を例に挙げているが、これに限らない。
例えば、印刷領域に搬送された媒体(ロール紙やカット紙)に対して、ヘッド41がX方向に移動しながら画像を印刷する動作と、ヘッド41がY方向に移動する動作と、を繰り返して、印刷領域の媒体部位に2次元の画像を印刷した後に、媒体をX方向に搬送して新たな媒体部位を印刷領域に搬送するプリンター1でもよい。また、媒体の紙幅(Y方向の長さ)以上にヘッド41を延ばし、印刷領域の媒体部位に対してヘッド41をX方向にだけ移動することで、印刷領域の媒体部位に2次元の画像を印刷するプリンターでもよい。
このようなプリンター1においても、印刷領域の媒体部位に画像を印刷してから、媒体をX方向に移動しながらヘッド41よりも下流側の照射部で媒体S上のUVインクを照射する前までの間に、照射部の照射面に付着した異物を除去するとよい。
【0057】
図6Aから図6Cは、本照射部52の変形例を説明する図である。前述の実施形態(図5A)では、本照射部52の本体部522における支持部522aが、カバーガラス521の移動方向における両端部521c,521dの傾斜部を支持しているが、これに限らない。
【0058】
例えば、図6Aに示すように、移動方向における両端部521c,521dが傾斜したカバーガラス521を、本体部522の下面522bに貼り付けるようにしてもよい。この場合にも、ワイパー部材61が移動する側(左側)の照射面の端部を傾斜させ、ワイパー部材61が本照射部52の下面を移動する領域に下方に突出した部位を存在させないようにすることができる。よって、ワイパー部材61の引っ掛かりを防止し、ワイパー部材61によるUVインクの取り残しをより低減することができる。
【0059】
また、図6Bに示すように、カバーガラス521のうち、ワイパー部材61が当接しない搬送方向の両端部であれば、カバーガラス521の下面を支持部522aが支持してもよい。この場合には、カバーガラス521よりも下方に突出した部材(支持部522a)にワイパー部材61が引っ掛かることが無いため問題がない。
【0060】
また、図6Cでは、支持部522aがカバーガラス521の移動方向における両端部の下面を支持しているが、支持部522aのうち、ワイパー部材61と接触する右側側面が移動方向に対して傾斜している。そのため、図6Cでは、図5Bの比較例に比べて、ワイパー部材61が引っ掛かり難く、支持部522aの右側側面とワイパー部材61との間にUVインクが残留し難い。よって、ワイパー部材61によるUVインクの取り残しをより低減することができる。
【0061】
===その他の実施の形態===
上記の実施形態は、主として画像記録装置について記載されているが、画像記録方法等の開示が含まれている。また、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【0062】
<インクについて>
前述の実施形態では、紫外線硬化型インク(UVインク)を使用する場合を例に挙げているが、これに限らない。例えば、電子線、X線、可視光線等の電磁波を照射すると硬化するインクを使用する場合にも、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 プリンター、10 コントローラー、11 インターフェース部、
12 CPU、13 メモリー、14 ユニット制御回路、
20 搬送ユニット、30 キャリッジユニット、31 キャリッジ、
40 ヘッドユニット、41 ヘッド、50 照射ユニット、
51a 仮照射部、51b 仮照射部、52 本照射部、
521 カバーガラス、522 本体部、
60 メンテナンスユニット、61 ワイパー部材、62 塗布部材、
63 洗浄液タンク、64 移動機構、
70 検出器群、80 コンピューター、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波が照射されると硬化する電磁波硬化型インクを被記録媒体に吐出するノズルと、
前記電磁波を照射するための照射部であって、前記ノズルよりも前記被記録媒体の搬送方向の下流側に配置された照射部と、
を備え、
前記ノズルが前記被記録媒体への前記電磁波硬化型インクの吐出を開始してから、前記照射部が前記被記録媒体上の前記電磁波硬化型インクに前記電磁波を照射する前までの間に、前記照射部の照射面に付着した異物が除去される、
ことを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像記録装置であって、
前記ノズルが前記被記録媒体への前記電磁波硬化型インクの吐出を終了してから、前記照射部が前記被記録媒体上の前記電磁波硬化型インクに前記電磁波を照射する前までの間に、前記照射部の照射面に付着した異物が除去される、
画像記録装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像記録装置であって、
前記搬送方向に並んだ複数の前記ノズルが前記被録媒体に対して前記搬送方向と交差する移動方向に移動しながら前記電磁波硬化型インクを吐出する記録動作と、前記被記録媒体を前記ノズルに対して前記搬送方向の下流側に搬送する搬送動作とを、交互に繰り返し、
前記記録動作が終了してから次の前記搬送動作が開始する前までの間に、前記照射部の照射面に付着した異物が除去される、
画像記録装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像記録装置であって、
単位面積あたりの前記電磁波の照射強度が前記照射部よりも弱い仮の照射部を有し、
前記仮の照射部は、複数の前記ノズルと共に前記移動方向に移動しながら、前記被記録媒体上の前記電磁波硬化型インクに前記電磁波を照射する、
画像記録装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の画像記録装置であって、
前記照射部の照射面に付着した異物が除去されてから次の前記記録動作が開始する前までの間に、前記照射面に洗浄剤が塗布される、
画像記録装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の画像記録装置であって、
前記照射面に当接しながら前記照射面に対して前記照射面の所定方向における一端部から他端部まで相対移動するワイパー部材によって、前記照射面に付着した異物を除去し、
前記照射面の前記他端部は前記所定方向に対して傾斜している、
画像記録装置。
【請求項7】
請求項6に記載の画像記録装置であって、
前記照射部は、前記電磁波を透過するカバー部材を有し、
前記ワイパー部材は、前記カバー部材が有する面のうちの前記被記録媒体側の面である露出面に付着した異物を除去し、
前記カバー部材の前記所定方向における一端部及び他端部は、前記露出面の反対面から前記露出面にかけて、前記カバー部材の前記所定方向における中央部側に傾斜し、
前記カバー部材の支持部材は、前記一端部の傾斜部分及び前記他端部の傾斜部分を支持する、
画像記録装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7の何れか1項に記載の画像記録装置による画像記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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