説明

画像誘導手術用可撓マーカー

【課題】整形外科の画像誘導手術においては、患者の骨の位置を計算するための基準として用いるボーンマーカーが、これを固定した骨に対してずれないことが重要である。一般的には、ボーンマーカーが固定された骨の柔軟性によって、ボーンマーカーが動いてしまう。
【解決手段】画像誘導手術に使用するボーンマーカーであって、骨にこのサポート部を固定するアンカー構造を備えるサポート部を備える。このマーカーは画像誘導手術システムによって検知可能で、このサポート部に取り付けられた少なくとも1つの参照部材を含む。このサポート部は弾性変形可能な少なくとも1本の肢部を持つ。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
本発明は、画像誘導手術に用いる可撓ボーンマーカーに関する。
【0002】
画像誘導手術の方法はよく知られている。例えば、整形外科においては、骨を動かした後でも患者の骨の表面の所定の場所を位置決めできるようにこの方法が用いられる。この骨の位置選定を正確に計算することで、この場所で操作する外科手術器具の信頼できるナビゲーションが可能となる。
【0003】
整形外科の画像誘導手術においては、患者の骨の位置を計算するための基準として用いるボーンマーカーが、これを固定した骨に対してずれないことが重要である。一般的には、ボーンマーカーが固定された骨の柔軟性によって、ボーンマーカーが動いてしまう。この骨の柔軟性によって、ボーンマーカーを安定かつ強固に固定することが困難となる。更に、外科医がボーンマーカーを打ち込み、一旦これが固定されると、このマーカーはこの骨のアンカーポイントで僅かに動いたり引っ張られたりする。このことは、その骨に対するずれをもたらすこととなり、特定された骨の位置の計算を不正確なものにしてしまう。また、ボーンマーカーに加えられる力がこのアンカーポイントでの骨を損傷するに足る場合は、アンカーポイントにかかるボーンマーカーを固定する握りを緩和することができる。このような場合外科医は、大幅な遅滞を引き起こすやっかいなボーンマーカーの再登録をしなければならなくなる。
【0004】
本発明は、ボーンマーカーに加えられる力に耐え、かつこのマーカーと骨のアンカーポイントに加わる力を軽減する、画像誘導手術に使用するための可撓ボーンマーカーを提供する。
【0005】
本発明の第1の特徴によれば、画像誘導手術に使用するボーンマーカーであって、サポート部であって、骨にこのサポート部を固定するためのアンカー構造を具備した、サポート部と、画像誘導システムによって検出可能な少なくとも1つの参照部材であって、この少なくとも1つの参照部材はこのサポート部に取り付けられ、このサポート部は弾性変形可能な少なくとも1つの肢部を具備した、参照部材と、を備えたボーンマーカーが提供される。
【0006】
本発明のボーンマーカーは、画像誘導手術中において、ボーンマーカーを骨に対して不注意に動かしてしまう危険を大幅に低減させる利点がある。このボーンマーカーのサポート部の可撓性は、マーカーに加えられる力の吸収が、マーカーが骨に固定される位置ではなくむしろマーカーのサポート部の構成要素によって吸収されることを意味する。このことがアンカーポイントにかかる力を低減させ、アンカーポイントでの骨の内部におけるボーンマーカーのずれを軽減させる助けとなる。また、アンカーポイントにおける骨やマーカーの損傷や、マーカーに緩みを生じる危険も低減できる。手術の継続のために、サポート部の弾力性は、マーカーがこの本来の位置から実質的に全く動いていないかのように、ほぼ正確に素早く本来の位置に復帰することを保証するものである。
【0007】
更に、固定場所では非常に小さな負荷とすることが求められることから、骨にマーカーを固定する力を低減することを可能とする。これにより、マーカーをしっかりと固定するための非常に小さな固定器具を使用できるので、アンカーポイントでの骨への損傷を最小限にすることができる。
【0008】
ボーンマーカーは、骨にこのマーカーを固定するためのアンカーと、少なくとも1つの参照部材を取り付けるサポート部とを備える。アンカー部は、恒久的にサポート部に固定することができる。望ましくは、このアンカー部はサポート部に着脱可能に取り付けられる。
【0009】
アンカー部は、好ましくは、骨にボーンマーカーを固定する固定具と、この固定具にサポート部を着脱着可能に取り付ける連結器とを有する。固定具は、この連結器に恒久的に固定することができる。できれば、この固定具は連結器と着脱可能に取付けられる。
【0010】
固定具は、好ましくは実質的に長さ方向に沿った一定の断面形状を有する。できれば、この固定具の断面形状は概ね丸い。例えば断面は円形である。また、固定具の最大幅は5mm以上、できれば3mm以上、更に好ましくは2mm以上、特に1mm以上である。固定具の最大幅は10mm以下、できれば5mm以下、更に好ましくは2mm以下、特に1mm以下である。望ましくは、この固定具は、骨に挿入する第1の端部がより狭く、骨の表面から突出して連結器に取り付けられる第2の端部がより広い。好ましくは、固定具は骨に打ち込むことを可能とする概ね滑らかな軸部を有する。固定具はまた、望ましくは、ねじ山が形成された軸部を備え、骨にねじ込むことが可能である。できれば固定具は、第1の狭い円筒軸と、第2の広い円筒軸と、この第1の狭い円筒軸から第2の広い円筒軸へと外側へ傾斜した錐台形の軸部を備える。固定具は骨に挿入するのに適した材料から形成する。特に好ましい材料は、特定のステンレス鋼を含む。できれば、アンカー部は2つの固定具を備える。アンカー部は好ましくは3つ以上の固定具を備える。しかしながら、骨にボーンマーカーを固定するための適切な機構であればいかなるものでも利用可能である。
【0011】
連結器は、望ましくは調整可能な連結器である。できれば連結器は、固定具にこの連結器を取り外し可能に取り付けるための第1の取付け手段を備える。連結器は好ましくは、サポート部に連結器を取り外し可能に取り付けるための第2の取付け手段を備える。連結器はまた、望ましくは、サポート部が固定具の周囲を回転できるようにする。できれば連結器は、サポート部が固定具の縦軸の周囲を回転できるようにする少なくとも1つの旋回点を具備する。好ましくは、連結器は、固定具の縦軸に平行な状態と固定具の縦軸に垂直な状態との間において、サポート部を回転できるようにする少なくとも1つの旋回点を具備する。旋回点は望ましくは、所定の位置に固定できる軸受けを具備し、故にサポート部は、旋回点の周囲を回転可能かつ所望の位置に固定可能である。しかしながら、固定具にサポート部を取り付けるための適切な連結器であれば、いかなるものでも利用可能である。このサポート部はたった1つの肢部を備える。好ましくは、この肢部の第1の端部はアンカー部に取り付けられている。
【0012】
望ましくは、このサポート部は複数の肢部を有する。この肢部は同じ寸法および形状であってもよい。しかしながら、好ましくはこの肢部は同じではない。全ての肢部はアンカー部に取り付けることができる。しかしながら、できればサポート部は、このアンカー部に取り付けられた第1の端部と、少なくとも1本の腕部が取り付けられた第2の端部とを有する、少なくとも1本の脚部を具備する。望ましくは、腕部の第1の端部は脚部に取り付けられる。この脚部は同じ寸法および形状としてもよい。しかしながら、脚部は好ましくは同じでない。この腕部は同じ寸法および形状としてもよい。しかしながら、腕部は好ましくは同じでない。
【0013】
望ましくは、肢部の軸方向の長さとこれを横断する方向(肢部が円形の断面を有する場合はその直径)の大きさの比率は2:1以上、より好ましくは、4:1以上、特に8:1以上である。
【0014】
参照部材は、1本の肢部のどの場所でも取り付けることが可能である。更に、2つ以上の参照部材を1本の肢部に取り付けてもよい。しかしながら、好ましくは、1つの参照部材を1本の肢部の端部に取り付ける。
【0015】
望ましくは、サポート部の肢部の少なくとも1つが弾性変形可能である。できれば、弾性変形可能な肢部は、肢部が変形した後にほぼ元の位置へ戻るように十分弾力性を有する。好ましくは、弾性変形可能な肢部は、一旦弾性限界内で変形した後、元の位置から0.25mm以内、より好ましくは元の位置から0.2mm以内、特に0.1mm以内の位置へ戻るよう十分な弾性を有する。
【0016】
弾性変形可能な肢部の先端は、好ましくはその弾性限界を越える前にその軸から最大45°まで偏向させることができる。より好ましくは、弾性変形可能な肢部の先端はその弾性限界を越える前に、その軸から最大90°まで偏向させることが可能である。また、弾性変形可能な肢部の先端は、好ましくは、その弾性限界を越える前、肢部の軸長の70%の距離までその軸から離間して垂直に偏向させることが可能である。好ましくは、弾性変形可能な肢部の先端はその弾性限界を越える前、肢部の軸長の100%の距離までその軸から離間して垂直に偏向させることができる。
【0017】
弾性変形可能な肢部は、好ましくは適切な時間内に元の形状に復帰する。できれば、適切な時間は3秒以内である。より好ましくは、適切な時間が2秒以内である。とりわけ好ましいいのは、適切な時間が1秒以内である。しかしながら、肢部が元の姿勢に復帰する時間は、使用される画像誘導手術のシステムの条件に依存する。多くの材料が、適切な時間内に元の姿勢に復帰する十分な弾力性質を示す。適合する弾性材料や構造は公知である。本発明の器具は材料および構造の組合せであり、例えば、螺旋形状もしくはその他のばねを具備してもよい。この器具は減衰用構成部品、例えば補助的な螺旋もしくはその他のばね、またはポリマー(特にエラストマー系の)成分を含む。金属部品、特にばね部品が、特に手術用に適すると認められる特定のステンレス鋼や特定の形状記憶合金のような他の合金から形成することが可能である。
【0018】
自重もしくは自重に加えてこれに取り付けられた部分の重さ(例えば、肢部は少なくとも1つの参照部材やこれに取り付けられた少なくとも1つの他の肢部を有してもよい)を受けてもそれほど変形しないように十分な堅さがある。できれば、弾性変形可能な肢部は、水平にした場合に0.25mm以内、より好ましくは0.2mm以内、とりわけ望ましいのは0.1mm以内の変形となるように十分な堅さを有する。
【0019】
弾性変形可能な肢部は、好ましくは、その縦軸に沿って中空である。できれば、弾性変形可能な肢部の外径と内径の比率は5:4以下、より好ましくは3:2以下、とりわけ望ましくは1:1、更に好ましくは3:1以下である。
【0020】
弾性変形可能な肢部は、前述の特性を持っていればいかなる材料から形成してもよい。できれば、肢部は前述の特性を持つ持減衰用弾性材料から形成される。より好ましくは、肢部は形状記憶合金から形成される。特に望ましいのは、肢部が前述の特性を持つ、緊密に巻かれたつるまき巻きばねから形成され、特に、変形していない場合には各ワイヤーの巻きが隣接していることである。このワイヤーの隣接面は好ましくは平坦である。より好ましくは、全てのワイヤーの表面は平坦である。できれば、ワイヤーの断面形状は長方形である。より好ましくは、ワイヤーの断面形状は正方形である。できれば、ワイヤーの奥行きと幅の比率は、3:1以下、より好ましくは2:1以下、特に好ましくは1:1以下である。できれば、ワイヤーの幅と奥行きの比率は2:1以下、より好ましくは3:1以下、特に望ましいのは4:1以下である。
【0021】
好ましくは、緊密に巻かれたつる巻きばねのワイヤーは、ステンレス鋼から形成される。しかしながら、緊密に巻かれたつる巻きばねのワイヤーは、前述の弾性変形可能な肢部の要件を満たすいかなる材料から形成されてもよい。
【0022】
サポート部が複数の肢部を具備する場合は、サポート部の肢部の1本が堅くてもよい。更に、サポート部の肢部の2本以上が堅くてもよい。好ましくは柔軟性のない肢部は、外力を加えても著しく変形しない十分な堅さがある。できれば、非柔軟性の肢部は、ステンレス鋼から形成される。しかしながら、前述の要件に適った肢部を形成する場合、外科手術中に用いるのに適したいかなる材料も使用可能である。
【0023】
肢部や参照部材の数および配置は、使用する画像誘導手術システムの要件に依存する。本発明のサポート部は、これに取り付ける少なくとも1つ、もしくは2つ、あるいはそれ以上の参照部材を具備する。好ましくは3つの参照部材がよい。できれば、これらの参照部材は同一平面状に配置される。好ましくは、これらの参照部材は互いに垂直な2つの基準面を規定するように配置される。できれば、これらの参照部材は3つの基準面を規定するように配置される。画像誘導手術システムに使用する、参照部材の放射状構成のような適切な配置は当業者によく知られており、そのようなシステムの詳細な論議は本発明を不明瞭にしないためにこの説明には含めない。
【0024】
好ましくは、参照部材は画像誘導手術システムによって検知される。できれば参照部材は画像誘導手術システムに無線で検知される。
【0025】
参照部材は好ましくはアクセス可能部材である。できればアクセス可能部材は画像誘導手術システムに信号を送信する。好ましくは、このアクセス可能部材は画像誘導手術システムによって検知される信号を送る。できればこの信号は超音波信号である。望ましくは、この信号は赤外線信号である。また、好ましくはこの信号は電波である。できれば、アクセス可能部材は連続的に信号を送信する。好ましくは、このアクセス可能部材は定期的に信号を送信する。また、アクセス可能部材の大きさは、約40×40×5mmである。
【0026】
好ましくは参照部材は受動型の部材である。できれば、参照部材は画像誘導手術システムから送信された信号を反射して、画像誘導手術システムがこの反射された信号を検出する。好ましくはこの信号は超音波信号である。できれば、この信号は赤外線信号である。更に、好ましくはこの信号は電波である。望ましくは、この参照部材は球状の部材である。できれば、前述のどの信号をも反射するのに適したいかなる材料かなるものからでも形成される。好ましくは、この受動型の部材の大きさは約100×100×5mmである。より好ましくは、この受動型の部材の大きさはおよそ10×10×5mmである。
【0027】
画像誘導手術システムでの使用に適した、参照部材、その材料、更にその位置を検知および計算する方法は当業者によく知られており、そのようなシステムの詳細な論議は本発明を不明瞭にしないためにもこの説明には含めない。
【0028】
望ましくは、ボーンマーカーの高さは15cm以上、より好ましくは10cm以上、特に5cm以上である。できれば、ボーンマーカーの高さは20cm以内、より好ましくは15cm以内、特に5cm以内である。
【0029】
好ましくは、ボーンマーカーの最大幅は、1cm以上、より好ましくは5cm以上、特に10cm以上である。できれば、ボーンマーカーの最大幅は、15cm以内、より好ましくは10cm以内、特に5cm以内である。
【0030】
図面を参照すると、図1は、画像誘導手術システム(図示せず)において使用する、全体的に1で示されるボーンマーカーを表す。ボーンマーカー1は、互いに脱着可能に取り付けられたアンカー部2およびサポート部3を備える。
【0031】
アンカー部2は、骨(図示せず)にこのボーンマーカーを固定するための固定具4、および可調機構付連結器5を備える。この可調機構付連結器5は、固定具4に脱着可能に取り付けられている。
【0032】
固定具4は、骨に固定するための複数の鋭利な突起6を持つ第1の端部とこの第1の端部よりも遠位に位置する第2の端部とを備えた第1の円筒軸7を具備する。また、固定具4は、直径が第1の円筒軸7よりも大きい第2の円筒軸9を持つ。第1の円筒軸7と第2の円筒軸9は、第1の円筒軸7の第2の端部から第2の円筒軸9の第1の端部へと外側に向かって傾斜した錐台部8によって接続されている。
【0033】
可調機構付連結器5は、可調機構付連結器5を固定具4に取り付けるための第1のねじ10を備える。この第1のねじ10は、第2の円筒軸9内のソケットで受け入れ可能なねじ山が形成された軸部(図示せず)と、このねじ10を円筒軸9内に固定させるためのヘッド11とを具備する。固定具4の長手方向軸に垂直に伸長している可調アーム12は、ヘッド11に関して回転可能となるように、可調アーム12の第1の端部でヘッド11に取り付けられている。この可調アーム12は、固定ねじ13によって所定の位置に固定することができる。固定具4の長手方向軸と平行に伸長しているシャフト15は、可調アーム12の第2の端部に関して回転可能になるように、可調アーム12の第2の端部に取り付けられている。シャフト15に対し独立して回転可能なナット14は、このシャフト15を所定の位置に固定するために設けられている。このシャフト15は、可調アーム12に組み付けられた端部より遠位でシャフト15の端部に固定されたヘッド16を具備する。ヘッド16は、ねじ17を受け入れるための第1の端部を持つ。ねじ17は、サポート部3に解除可能に固定するための機構を備える。また、ねじ17は、ねじ17の第1の端部に位置するスクリューヘッド18の回転によって、緩めたり締めたりすることができる。更に、ねじ17は、ねじ17の第1の端部より遠位の第2の端部に設けられた複数の歯を具備し、ヘッド16の第1の端部に設けられた複数の歯と噛み合う。これによって、スクリューヘッド18を緩めると、ねじ17がこのねじの長さ方向に沿った軸の周囲を回転でき、スクリューヘッド18を締めることで所定の位置に固定することができる。
【0034】
ボーンマーカー1のサポート部3は、肢部20および胴部21を備える。肢部20および胴部21は、お互い恒久的に組み付けられている。
【0035】
肢部20は弾性的に変形可能である。また、肢部20は、緊密に巻かれたつる巻きばね部材22を備えており、ステンレス鋼などの材料から形成されたワイヤーが幾重も連続的に隣接させて巻かれている。外力を加えた場合、バネ部材22によって軸から外れて極端に柔軟な動きが可能となるが、一旦その外力を解除すれば本来の位置に素早く戻る。また、バネ部材22は、開放可能なねじ17に挿入することによって、可調機構付連結器5に移動可能に固定できる第1の端部を備えている。更に、バネ部材22は、第1の端部よりも遠位の第2の端部を備え、胴部21に恒久的に組み付けられている。
【0036】
胴部21は、2本の堅く短い腕部23および1本の堅く長い腕部24を具備し、T構造をなしている。肢部20は、腕部23および24の交差部分において胴部21に取り付けられている。腕部23および24は、ステンレス鋼の単一成分から形成される。
【0037】
参照部材25は、長短各両腕部23および24の末端に恒久的に取り付けられている。また、参照部材25は、ボーンマーカーの位置決め計算に用いるための画像誘導手術システムによって検出可能である。
【0038】
一旦ボーンマーカー1が骨に固定されると、この画像誘導手術システムは較正を行い、患者の骨の所定の場所に対するこの参照部材25の位置を登録する。また、一旦この参照部材25と骨の場所の間の相対位置が登録されると、骨が動いた後でも、この参照部材の位置を知るだけで骨の場所を位置決定することができる。このことは、例えば、骨の場所を正確に追尾する外科装置によって、たとえその骨が動いた後でさえ、その骨の場所での操作を可能にするものである。
【0039】
図1のボーンマーカー1を表す図2に示すように、ボーンマーカー1が手術中に打ち込まれれば、肢部20は変形することが可能である。したがって、肢部20はボーンマーカー1に加えられた力の一部を吸収し、これによって骨のアンカーポイントにおいて加わる力を軽減する。
【0040】
図3は、本発明の第2の実施例に基づいて第2のボーンマーカーを全体的に参照番号10として示す。図1および図2のボーンマーカー1とボーンマーカー100で相当する部分は同じ参照番号で示す。
【0041】
ボーンマーカー100は、アンカー部2およびサポート部3を備える。サポート部3は、肢部20および胴部21を備える。図2のボーンマーカーとは異なり、肢部20は非可撓性部材27であり、ステンレス鋼のような堅い材料で形成される。更に、短腕部23及び長腕部24は各々、参照番号28、29および30によって示される緊密に巻かれた単独のつる巻きバネ部材を備える。各バネ部材28、29および30は、これらに外力を加えた場合には、それらの軸から外れて極端に柔軟な動きを可能とするが、一旦その力を解除するとそれらの本来の位置に素早く戻る。
【0042】
図3に示されるように、短腕部23および長腕部24は、これらが手術中に打ち込まれれば、変形することが可能となる。したがって、短腕部23および長腕部24は、ボーンマーカー1に加えられた力の一部を吸収し、これによって骨のアンカーポイントにおいて加えられる力を軽減することができる。
【0043】
〔実施の態様〕
(1)画像誘導手術に使用するボーンマーカーであって、
骨に固定するためのアンカー構造を具備した、サポート部と、
画像誘導システムによって検出可能な少なくとも1つの参照部材であって、前記少なくとも1つの参照部材は前記サポート部に取り付けられ、前記サポート部は弾性変形可能な少なくとも1つの肢部を具備した、参照部材と、を備えたボーンマーカー。
(2)実施態様1に記載のボーンマーカーであって、
前記サポート部は少なくとも1つの堅い肢部を更に具備する、ボーンマーカー。
(3)実施態様1に記載のボーンマーカーであって、
前記弾性変形可能な肢部は緊密に巻かれたつる巻きばねである、ボーンマーカー。
(4)実施態様3に記載のボーンマーカーであって、ワイヤーの隣接面は平坦である、ボーンマーカー。
(5)実施態様1に記載のボーンマーカーであって、
前記弾性変形可能な肢部は減衰用弾性材から形成される、ボーンマーカー。
【0044】
(6)実施態様1に記載のボーンマーカーであって、
前記弾性変形可能な肢部は形状記憶合金から形成される、ボーンマーカー。
(7)実施態様1に記載のボーンマーカーであって、
前記弾性変形可能な肢部の外径と内径の比率は多くとも3:1である、ボーンマーカー。
(8)実施態様1に記載のボーンマーカーであって、
前記アンカー構造は、前記骨に前記ボーンマーカーを固定するための少なくとも一つの固定具と、前記サポート部を前記固定具と連結するための連結器とを具備する、ボーンマーカー。
(9)実施態様8に記載のボーンマーカーであって、
前記連結器は、前記固定具の周囲で前記サポート部の回転を許す調整が可能である、ボーンマーカー。
(10)実施態様8に記載のボーンマーカーであって、
前記少なくとも1つの固定具はねじである、ボーンマーカー。
【0045】
(11)実施態様10に記載のボーンマーカーであって、
前記ねじの直径は約2mm以下である、ボーンマーカー。
(12)実施態様1に記載のボーンマーカーであって、
前記参照部材は信号を送信する、ボーンマーカー。
(13)実施態様1に記載のボーンマーカーであって、
前記参照部材は信号を反射する、ボーンマーカー。
(14)画像誘導手術システムであって、
実施態様1から13のいずれかに記載のボーンマーカーと、
参照部材の位置と前記参照部材の位置に対する骨の位置とを計算するための処理システムと、
前記処理システムによって計算された位置に器具を移動させるための作動システムと、を具備した画像誘導手術システム。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施例によるボーンマーカーの正面図を示す。
【図2】ボーンマーカーの可撓性を表す本発明の第1の実施例によるボーンマーカーの正面図を示す。
【図3】本発明の第2の実施例によるボーンマーカーの正面図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像誘導手術に使用するボーンマーカーであって、
骨に固定するためのアンカー構造を具備した、サポート部と、
画像誘導システムによって検出可能な少なくとも1つの参照部材であって、前記少なくとも1つの参照部材は前記サポート部に取り付けられ、前記サポート部は弾性変形可能な少なくとも1つの肢部を具備した、参照部材と、を備えたボーンマーカー。
【請求項2】
請求項1に記載のボーンマーカーであって、
前記サポート部は少なくとも1つの堅い肢部を更に具備する、ボーンマーカー。
【請求項3】
請求項1に記載のボーンマーカーであって、
前記弾性変形可能な肢部は緊密に巻かれたつる巻きばねである、ボーンマーカー。
【請求項4】
請求項3に記載のボーンマーカーであって、ワイヤーの隣接面は平坦である、ボーンマーカー。
【請求項5】
請求項1に記載のボーンマーカーであって、
前記弾性変形可能な肢部は減衰用弾性材料から形成される、ボーンマーカー。
【請求項6】
請求項1に記載のボーンマーカーであって、
前記弾性変形可能な肢部は形状記憶合金から形成される、ボーンマーカー。
【請求項7】
請求項1に記載のボーンマーカーであって、
前記弾性変形可能な肢部の外径と内径の比率は多くとも3:1である、ボーンマーカー。
【請求項8】
請求項1に記載のボーンマーカーであって、
前記アンカー構造は、前記骨に前記ボーンマーカーを固定するための少なくとも一つの固定具と、前記サポート部を前記固定具と連結するための連結器とを具備する、ボーンマーカー。
【請求項9】
請求項8に記載のボーンマーカーであって、
前記連結器は、前記固定具の周囲で前記サポート部の回転を許す調整が可能である、ボーンマーカー。
【請求項10】
請求項8に記載のボーンマーカーであって、
前記少なくとも1つの固定具はねじである、ボーンマーカー。
【請求項11】
請求項10に記載のボーンマーカーであって、
前記ねじの直径は約2mm以下である、ボーンマーカー。
【請求項12】
請求項1に記載のボーンマーカーであって、
前記参照部材は信号を送信する、ボーンマーカー。
【請求項13】
請求項1に記載のボーンマーカーであって、
前記参照部材は信号を反射する、ボーンマーカー。
【請求項14】
画像誘導手術システムであって、
請求項1から13のいずれかに記載のボーンマーカーと、
参照部材の位置と前記参照部材の位置に対する骨の位置とを計算するための処理システムと、
前記処理システムによって計算された位置に器具を移動させるための作動システムと、を具備した画像誘導手術システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2007−503898(P2007−503898A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525174(P2006−525174)
【出願日】平成16年8月24日(2004.8.24)
【国際出願番号】PCT/GB2004/003618
【国際公開番号】WO2005/023128
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(500353989)デピュー インターナショナル リミテッド (40)
【Fターム(参考)】