説明

画像読取装置、及びこれを備えた画像形成装置

【課題】 接着剤や、軸受け固定だけを目的とした部材を用いることなく、簡易な構成でキャリッジフレームに軸受けを固定することができる画像読取装置を提供することを目的とする。
【解決手段】キャリッジは、光源と受光素子が載置されるキャリッジフレームと、前記キャリッジフレームをガイド軸に摺動可能に支持する軸受けと、前記キャリッジフレームの上面を覆うキャリッジカバーを備え、前記キャリッジカバーが前記軸受けのキャリッジフレームからの抜脱を防止することから、接着剤や抜け止め専用部材を使用することなく簡単な構成でキャリッジに挿入された軸受けの抜け止めを行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源と受光素子を搭載したキャリッジフレームからの軸受の抜脱を防止することができる画像読取装置、及びこれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像読取装置において、CCD(Charge Coupled Device)やCIS(Contact Image Sensor)等のイメージセンサーは、キャリッジに搭載されている。このキャリッジが搭載される画像読取装置は、原稿を走査することにより原稿の読み取りを行う複写機や複合機等に搭載されるスキャナーとして一般的に知られている。
複写機等に搭載されるイメージセンサー等を備えるキャリッジは、原稿の走査方向と平行に設置されたガイド軸に沿って摺動して往復運動を行う。このためキャリッジは少なくとも一対の軸受を備え、ガイド軸をこの軸受に挿嵌させることによりキャリッジの往復摺動運動を可能としている。この軸受は、キャリッジ移動時の摩擦を低減するために取付けられることから潤滑油等を軸受に含侵させたりしている。
【0003】
従来の画像読取装置に用いられているキャリッジを図4に示す。キャリッジ(A)は、ガイド軸(B)に沿って摺動して往復運動する。従って、ガイド軸(B)を受けるための軸受(C)は、キャリッジフレーム(D)から外れないように確実に固定される必要がある。そこでキャリッジ(A)にガイド軸カバー部(E)を設け、軸受(C)をガイド軸カバー部(E)に固定している。この固定方法としては、一般的に接着固定が用いられることが多く、図4に示される箇所(F)に接着剤を注入して固定する場合が多い。しかしながら、軸受(C)をキャリッジフレーム(D)に接着固定すると、全く異なる材質で構成される軸受(C)とキャリッジフレーム(D)が接着されることになるため、製品廃棄時の材料分別が不可能になるという問題がある。
【0004】
このような問題を解決するために特許文献1では、軸受への潤滑油供給のための給油部材をキャリッジに保持するために、別途保持部材を設けることが提案されている。
また特許文献2では、樹脂成形されたキャリッジ本体の両サイドに、軸受部を挿入するための取付け孔を設け、キャリッジの両側から取付け孔へ軸受部を圧入する方法が開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されるように保持部材を別途設ける場合には、新たに専用部材が必要となることから、組立工数が増え、製造工程が複雑となり、ひいては製造コストを引き上げるという問題が発生する。
また、特許文献2に記載されるように軸受を取付け孔に圧入する場合には、軸受及び取付け孔に関する部品の内径及び外径の寸法が非常に厳密なものとなる。従って、量産を行った場合に不良品率が増加したり、軸受と取付け孔の材料が異なることに起因する高温・低温環境下での熱膨張率の差による軸受の脱落や破損といった問題が発生する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−96224号公報
【特許文献2】特開2001−277637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明は上記問題を解決するために、接着剤や、軸受固定だけを目的とした部材を用いることなく、簡易な構成でキャリッジフレームからの軸受の抜けを防止することができる画像読取装置、及びこれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本発明は以下の構成からなる。
請求項1に係る発明は、光源と受光素子を搭載したキャリッジを走査して原稿を読み取る画像読取装置において、前記キャリッジは、前記光源と前記受光素子が載置されるキャリッジフレームと、前記キャリッジフレームをガイド軸に摺動可能に支持する一対の軸受と、前記キャリッジフレームの上面を覆うキャリッジカバーを備え、前記キャリッジカバーが、前記軸受の前記キャリッジフレームからの抜脱を防止する抜け止め部を有することを特徴とする画像読取装置に関する。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記抜け止め部が、一対の前記軸受の各々の内側面に近接するように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置に関する。
【0010】
請求項3に係る発明は、前記軸受の片側端部につば部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像読取装置に関する。
【0011】
請求項4に係る発明は、一対の前記軸受のつば部が、対向するように設けられていることを特徴とする請求項3に記載の画像読取装置に関する。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の画像読取装置を備えることを特徴とする画像形成装置に関する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、光源と受光素子を搭載したキャリッジを走査して原稿を読み取る画像読取装置において、前記キャリッジは、前記光源と前記受光素子が載置されるキャリッジフレームと、前記キャリッジフレームをガイド軸に摺動可能に支持する一対の軸受と、前記キャリッジフレームの上面を覆うキャリッジカバーを備え、前記キャリッジカバーが、前記軸受の前記キャリッジフレームからの抜脱を防止することから、接着剤や抜け止め専用部材を使用することなく簡単な構成でキャリッジに挿入された軸受の抜け止めを行うことができる。従って、製品廃棄の際、材料分別を行うことができ、さらに軸受の抜け止め専用部材が必要とならないことから組立工数や部材点数を減らすことができる。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、抜け止め部が、前記一対の軸受の各々の内側面に近接するように設けられることから、接着剤や抜け止め専用部材を使用することなくより簡単な構成でキャリッジに挿入された軸受の内方向への抜け止めを確実に行うことができる。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、軸受の片側端部につば部を有することから、つば部が抜け止め作用を発揮するとともにキャリッジカバーの抜け止め部を用いて軸受のつば部を確実に押さえられることにより軸受の抜け止めを確実に行うことができる。
【0016】
請求項4に係る発明によれば、一対の軸受のつば部を対向するように設けることから、軸受の外方向への抜けを確実に防止することができる。そのため、キャリッジカバーの抜け止め部を軸受の内側のみに設けることで、軸受けのキャリッジからの抜脱を確実に防止することができる。従って、キャリッジカバーの抜け止め部を簡単な形状とすることができる。
【0017】
請求項5に係る発明によれば、請求項1乃至4のいずれかに記載の画像読取装置を備える画像形成装置であるため、製品廃棄の際、材料分別を行うことができ、さらに軸受の抜け止め専用部材が必要とならないことから画像形成装置の組立工数や部材点数を減らすことができる画像読取装置を備えた画像形成装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る画像読取装置を備えた画像形成装置の概略側面断面図である。
【図2】本発明に係る画像読取装置のキャリッジ部の拡大図である。
【図3】本発明に係る画像読取装置のキャリッジ部の軸受断面図である。
【図4】従来のキャリッジ部の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態に係る画像読取装置、及びこれを備えた画像形成装置について、図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る画像読取装置を備えた画像形成装置の説明図、図2は本発明の一実施形態に係る画像読取装置のキャリッジ部の拡大図、図3は本発明の一実施形態に係る画像読取装置のキャリッジ部の軸受断面図である。
【0020】
図1に示す画像形成装置(1)は、画像読取部(2)と、画像形成部(3)と、原稿搬送部(4)とを備えている。
画像読取部(2)は、フラットベットスキャナー(FBS:Flatbed Scanner)として機能する原稿読取台(5)が備えられ、原稿読取台(5)の上面には、透明板(図示せず)が設置されている。
透明板の下には原稿を読み取るための画像読取装置(6)が内蔵されている。原稿を走査する場合には、透明板の上面に原稿を載置し、原稿カバー(7)を閉じて透明板上に原稿を固定する。原稿を読み取る画像読取装置(6)が、透明板に沿って長手方向(図の左右方向)に走査され、原稿の読み取りが行われる。
【0021】
画像形成部(3)は、読み取られた原稿の情報を記録材(S)に転写する。給紙カセット(8)の右方には、第1用紙搬送部(9)が備えられている。第1用紙搬送部(9)は、給紙カセット(8)から送り出された記録材(S)を受け取り、画像形成部(3)の右側面に沿って垂直上方に印刷手段(10)まで搬送する。原稿の情報が転写された記録材(S)は、定着部(11)へと送られ、熱ローラ(12)と加圧ローラ(13)とによりトナー像が加熱、加圧されて定着され、排出部(14)へと送られる。
【0022】
原稿搬送部(4)は、原稿読取台(5)の背面側に原稿カバー(7)が開閉可能に取り付けられている。原稿カバー(7)の上部には、原稿を自動搬送するための搬送装置が備えられている。
【0023】
画像読取装置は、キャリッジ(15)、ガイド軸(16)及びベルト駆動機構(17)を備えている。キャリッジ(15)は、画像を読み取るための光源と受光素子(図示せず)を内部に搭載している。ガイド軸(16)は、透明板の下部空間の長手方向(画像形成装置の操作側)に設置され、キャリッジ(15)がガイド軸(16)に摺動可能に支持される。キャリッジ(15)は、駆動機構(17)により透明板の長手方向に沿って往復運動を行うことができる。
【0024】
図2に示すキャリッジ(15)は、光源と受光素子が載置されるキャリッジフレーム(18)と、キャリッジフレーム(18)をガイド軸(16)に摺動可能に支持する一対の軸受(20)と、キャリッジフレーム(18)の上面を覆うキャリッジカバー(19)とを備えている。
キャリッジフレーム(18)に載置された光源及び受光素子は透明板と近接するように配置されており、光源が原稿に光を照射し、受光素子が光を照射された原稿からの反射光を受け取って電気信号に変換する。そして、キャリッジ(15)は、図1に示すベルト駆動機構(17)によりガイド軸(16)に沿って透明板の長手方向に往復運動することにより、原稿読取部(2)が原稿の情報を読み取ることができる。
【0025】
キャリッジフレーム(18)は、一対の筒状部を有するガイド軸カバー部(21)を備えており、このガイド軸カバー部(21)の筒状部に一対のすべり軸受(20)が挿嵌されている。これにより、キャリッジ(15)は、軸受(20)を介してガイド軸(16)に沿ってスムーズに往復運動することができる。
軸受(20)は、キャリッジ(15)の往復運動をスムーズに行わせるためのすべり部材であることから、潤滑油を保持できる材質などが選択される。例えば、軸受(20)の材質としては、不織布のフェルト、含油ポリアセタール、含油焼結材、フッ素樹脂等が用いられる。さらに軸受(20)に潤滑油を供給するための給油部材を設けてもよい。
【0026】
キャリッジカバー(19)は、軸受(20)がキャリッジフレーム(18)から抜脱するのを防ぐための抜け止め部(22)を有している。
図示例において、抜け止め部(22)は、一対の軸受(20)の各々の内側面に近接するように、キャリッジカバー(19)の側面から軸受(20)の方向に延出した一対の突出片からなる。
このような抜け止め部(22)を設けることにより、別途専用の抜け止め部材を設けたり接着剤を使用したりすることなく、軸受(20)がキャリッジカバー(19)のガイド軸カバー部(21)から内方向に抜けることを防止することができる。
抜け止め部(22)は、図示例では一対(2つ)の突出片から形成されているが、一対の軸受(20)の間を埋めるような幅広の1つの突出片から形成してもよい。
【0027】
また、図示しないが、本発明においては、抜け止め部(22)を、一対の軸受(20)の各々の外側面に近接するように、キャリッジカバー(19)の側面から軸受(20)の方向に延出した一対の突出片として形成してもよい。
このような抜け止め部を設けることにより、別途専用の抜け止め部材を設けたり接着剤を使用したりすることなく、軸受(20)がキャリッジカバー(19)のガイド軸カバー部(21)から外方向に抜けることを防止することができる。
【0028】
更に、本発明においては、キャリッジカバー(19)に上記した2種類の抜け止め部(内側と外側の抜け止め部)を両方設けてもよい。
これにより、別途専用の抜け止め部材を設けたり接着剤を使用したりすることなく、軸受(20)がキャリッジカバー(19)のガイド軸カバー部(21)から内方向と外方向に抜けることを防止することができる。
【0029】
本発明においては、図示の如く、一対の軸受(20)の片側端部につば部(23)を設けることが好ましい。
このようなつば部(23)を設けることにより、軸受(20)がつば部(23)と反対方向に抜けることを防止することができる。
図示例のように、一対の軸受(20)のつば部(23)が互いに対向する位置(内側端部)に設けられていると、軸受(20)がキャリッジカバー(19)のガイド軸カバー部(21)から外方向に抜けることを防止することができる。
この場合、抜け止め部(22)を、図示例のように一対の軸受(20)の各々の内側面に近接するように設けることにより、軸受(20)がキャリッジカバー(19)のガイド軸カバー部(21)から内方向と外方向に抜けることを防止することができる。
【0030】
また、図示しないが、一対の軸受(20)のつば部(23)が互いに反対側の位置(外側端部)に設けられていると、軸受(20)がキャリッジカバー(19)のガイド軸カバー部(21)から内方向に抜けることを防止することができる。
この場合、抜け止め部(22)を、一対の軸受(20)の各々の外側面に近接するように設けることにより、軸受(20)がキャリッジカバー(19)のガイド軸カバー部(21)から内方向と外方向に抜けることを防止することができる。
【0031】
上記したように、一対の軸受(20)の片側端部につば部(23)を設けることにより、抜け止め部(22)をつば部(23)と同じ側のみに設けることで、軸受(20)がキャリッジカバー(19)のガイド軸カバー部(21)から内方向と外方向に抜けることを防止することができる。
従って、抜け止め部(22)の形状を単純なものとすることができ、簡易な構造で軸受(20)の内外両方向への抜け止め機能を確保することが可能となる。
【0032】
以上、本発明に係る画像読取装置を備えた画像形成装置の一実施形態を説明したが、本発明に係る画像読取装置を備えた画像形成装置は、上記実施形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明に係る画像読取装置、及びこれを備えた画像形成装置は、様々なコピー機、プリンター、FAX及びこれらを組み合わせた複合機に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0034】
1・・・画像形成装置
2・・・画像読取部
3・・・画像形成部
4・・・稿搬送部
5・・・原稿読取台
6・・・画像読取装置
7・・・原稿カバー
8・・・給紙カセット
9・・・第1用紙搬送部
10・・印刷手段
11・・定着部
12・・熱ローラ
13・・加圧ローラ
14・・排出部
15・・キャリッジ
16・・ガイド軸
17・・ベルト駆動機構
18・・キャリッジフレーム
19・・キャリッジカバー
20・・軸受
21・・ガイド軸カバー部
22・・抜け止め部
23・・つば部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と受光素子を搭載したキャリッジを走査して原稿を読み取る画像読取装置において、
前記キャリッジは、
前記光源と前記受光素子が載置されるキャリッジフレームと、
前記キャリッジフレームをガイド軸に摺動可能に支持する一対の軸受と、
前記キャリッジフレームの上面を覆うキャリッジカバーを備え、
前記キャリッジカバーが、前記軸受の前記キャリッジフレームからの抜脱を防止する抜け止め部を有することを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記抜け止め部が、一対の前記軸受の各々の内側面に近接するように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記軸受の片側端部につば部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
一対の前記軸受のつば部が、対向するように設けられていることを特徴とする請求項3に記載の画像読取装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の画像読取装置を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−120046(P2011−120046A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276250(P2009−276250)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】