説明

画像読取装置、画像読取方法、および、プログラム

【課題】前回シフトパルスが生成されてから所定時間が経過していなければシフトパル
スを生成しない画像読取装置において、読み取り画像になるべく欠落が生じないようにす
る技術を提供する。
【解決手段】モーター310により駆動される機構を備える画像読取装置50であって
、光電変換素子に蓄積された電荷をシフトパルスによって転送する画像読取部と、モータ
ー310の回転に基づいて、シフトパルスの出力タイミングを制御するシフトパルス制御
部と、を備え、シフトパルス制御部は、前回にシフトパルスを出力してから電荷の転送に
必要な規定時間が経過していない場合には、シフトパルスの出力を延期し、後で出力すべ
きシフトパルスとして記憶しておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置、画像読取方法、および、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
イメージスキャナー等の画像読取装置には、ADF(Auto Document Feeder)機能を備
え、ADFにより原稿を一定速度で搬送させながら、所定位置に静止させたイメージセン
サーにより原稿の画像データを読み取るものもある。
【0003】
このような画像読取装置では、ADFにより原稿を搬送させるモーターの回転量に応じ
てシフトパルスが生成される。そして、イメージセンサーの受光部に蓄積された電荷を、
そのシフトパルスによってシフトレジスターへシフトさせ、順次コントローラーへと転送
している(例えば、特許文献1)。
【0004】
ただし、コントローラーへの転送時間を確保するために、シフトパルスを生成すべきタ
イミングであったとしても、前回シフトパルスが生成されてから所定時間が経過していな
ければ、シフトパルスを生成できないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−246636号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような画像読取装置において、原稿の読み取り速度が、想定以上に高速になる場
合がある。かかる場合には、シフトパルスを生成すべきタイミングであったとしても、前
回シフトパルスが生成されてから所定時間が経過していないため、シフトパルスが生成で
きない。そのため、読み取り画像に欠落が生じる。
【0007】
本発明は、上記のような画像読取装置において、読み取り画像になるべく欠落が生じな
いようにする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本願発明は、モーターにより駆動される機構を有する画像読
取装置であって、光電変換素子に蓄積された電荷をシフトパルスによって転送する画像読
取部と、前記モーターの回転に基づいて、前記シフトパルスの出力タイミングを制御する
シフトパルス制御部と、を備え、前記シフトパルス制御部は、前回にシフトパルスを出力
してから前記電荷の転送に必要な規定時間が経過していない場合には、シフトパルスの出
力を延期し、後で出力すべきシフトパルスとして記憶しておく。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態の画像読取装置50の概略構成の一例を示すブロック図である。
【図2】本実施形態の画像読取制御の概要について説明するためのタイミングチャートである。
【図3】本実施形態の画像読取制御における前処理について説明するためのフローチャートである。
【図4】本実施形態の画像読取制御における主処理ついて説明するためのフローチャートである。
【図5】従来の画像読取制御の概要について説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態の一例を図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態が適用された画像読取装置50の概略構成の一例を示すブ
ロック図である。
【0012】
画像読取装置50は、筐体の上面に原稿台(不図示)を備えた、いわゆるフラットベッ
ド型画像読取装置である。画像読取装置50は、イメージセンサー220を走査して、透
明板の原稿台に載置された原稿の画像を読み取る。画像読取装置50は、スキャナーに限
られず、スキャン機能を有するファクシミリ、コピー機、複合機等であってもよい。
【0013】
画像読取装置50は、被読取媒体である原稿を載せるための上向きの原稿台(不図示)
と、この原稿台の原稿載置面(盤面)およびイメージ読取窓を上からカバーする蓋(不図
示)と、を備える。蓋は、原稿台にヒンジ機構を介して結合しており、開閉可能である。
【0014】
また、蓋と一体となって、イメージ読取窓の上側に、ADF(給紙装置)300が設け
られている。ADF300は、DCモーター310、給紙トレイ(不図示)、搬送ローラ
ー(不図示)、排紙トレイ(不図示)、等を備える。ここで、搬送ローラーの回転は、D
Cモーター310によって制御される。ADF300は、給紙トレイ上に載置された原稿
を、イメージ読取窓の上面へ送り込んで通過させることができる。なお、DCモーター3
10には、搬送ローラーの回転量(すなわち、原稿の搬送量)に応じてパルスを出力する
第1エンコーダーが備えられている。
【0015】
また、画像読取装置50は、図示するように、LED光源210及びイメージセンサー
(例えば、CCDカラーイメージセンサー)220を搭載したキャリッジ200を原稿台
の下に備える。さらに、画像読取装置50は、キャリッジ200の往復移動を制御するキ
ャリッジ駆動機構(不図示)と、画像読取装置50の全体を制御し、画像を読み取るため
の種々の処理を行うコントローラー100と、を備えている。
【0016】
キャリッジ200は、イメージセンサー220を副走査方向に運搬する。キャリッジ2
00は、原稿台の盤面およびイメージ読取窓に対し平行なガイド用のシャフト等にスライ
ド自在に取り付けられており、キャリッジ駆動機構のモーターにより回転するベルトによ
り牽引され、往復移動する。キャリッジ200の移動量は、キャリッジ駆動機構のモータ
ーの回転量に応じてパルスを出力する第2エンコーダーの出力値により制御される。
【0017】
すなわち、キャリッジ駆動機構は、キャリッジに取り付けられたベルトを回転させるた
めのモーターと、モーターの回転量に応じてパルスを出力するエンコーダーと、を備えて
いる。
【0018】
なお、ADF300により原稿を搬送させながら読み取りを行う場合、キャリッジ20
0は、イメージ読取窓の下の所定位置に固定される。
【0019】
LED光源210は、赤色(R)LED、緑色(G)LED、青色(B)LEDからな
り、RGBの3色の光を所定の順序で発生する。本実施形態では、LED光源210は、
通常の原稿の1ライン分の読み取りを行う場合には、赤色LED、緑色LED、青色LE
Dの順に光を発生する。そして、原稿の画像データの生成に必要なライン数分の読み取り
を行うために、同様の発光動作を繰り返す。各色のLEDの発光時間は、色ごとに予め定
められており、点灯してからその定められた時間が経過したときに、消灯する。なお、各
色のLED光源210の点灯は、所定電流(後述するメイン制御部110からの電流)が
供給されて行われる。
【0020】
イメージセンサー220は、原稿に反射した光を受光し、受光量に応じた電荷を蓄積し
、画像読取データ(電気信号)として、コントローラー100に送る。
【0021】
イメージセンサー220は、主走査方向に並んだ複数のセンサーチップからなる。各セ
ンサーチップは、通常のCIS(Contact Image Sensor)やCCD(Charge Coupled Dev
ice)イメージセンサーと同様の構成を備えている。すなわち、各センサーチップは、光
電変換素子(フォトダイオード)と、シフトゲートと、シフトレジスターと、を備える。
そして、光電変換素子に蓄積された電荷を、シフトゲートを開通させてシフトレジスター
へ転送し、シフトレジスターにより電荷を順次移動させながら出力する。
【0022】
シフトゲートの開通(電荷の転送)は、シフトパルス(後述するメイン制御部110か
らの信号)の印加に応答して行われる。光電変換素子は、常時、光の受光量に応じて電荷
を蓄積しているため、電荷のシフトレジスターへの転送タイミングが、次の発光色の光に
ついての電荷を蓄積する開始タイミングとなる。シフトレジスターに転送された電荷は、
シフトレジスターの末端の出力部より、電気信号(アナログデータ)に変換されて、A/
D変換部120に送られる。
【0023】
シフトレジスターに格納された電荷の出力は、所定の読み出しクロック(後述するメイ
ン制御部110からの信号)に応答して行われる。例えば、1クロック毎に1画素の電荷
がアナログデータとして出力される。
【0024】
コントローラー100は、イメージセンサー220から出力されたアナログデータをデ
ジタルデータに変換するA/D変換部120と、A/D変換部120から出力されたデジ
タルデータに対して各種補正を行うデータ処理部130と、データ処理部130による各
種補正に用いられる補正用データ(白基準データや黒基準データ)や、補正対象の読取デ
ータ(画像データ)を記憶する記憶部140と、データ処理部130からのデータをパー
ソナルコンピューターなどのホストに送るための出力部150と、コントローラー100
内の各機能部を全体的に制御するとともに、キャリッジ200内のLED光源210やイ
メージセンサー220、及び、キャリッジ駆動機構を制御するメイン制御部110と、を
備えている。
【0025】
A/D変換部120は、例えば、AFE(Analog Front End)によって実現され、イメ
ージセンサー220から出力されたアナログデータをデジタルデータに変換する。
【0026】
データ処理部130は、A/D変換部110から出力されたデジタルデータにシェーデ
ィング補正などの各種補正を施して、出力部150に出力する。
【0027】
なお、データ処理部130は、主制御装置であるCPUと、プログラム等が記憶された
ROMと、メインメモリーとしてデータ等を一時的に格納するRAMと、を備えたコンピ
ューターで構成することができる。もちろん、データ処理部130は、各種補正処理を専
用に行うように設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)で構
成されていてもよい。
【0028】
記憶部140は、例えば、バッファによって実現される。記憶部140は、先入れ先出
しのFIFO形式で、A/D変換部120から出力されたデジタルデータを一時的に記憶
し、先に記憶したデータから順に出力部150に送る。
【0029】
出力部150は、ネットワーク接続やUSB接続を行うためのインターフェイスにより
実現される。出力部150は、ホストの処理能力に応じた転送速度で、記憶部140のデ
ータを、ホストコンピューター(スキャナー制御装置)に送信する。
【0030】
メイン制御部110は、ADF300と、キャリッジ200と、キャリッジ駆動機構(
不図示)と、を制御して、画像の読み取りを行う(「画像読取制御」を行う)。具体的に
は、メイン制御部110は、図示するように、モーター制御部111と、読取制御部11
2と、を有する。
【0031】
モーター制御部111は、ADF300のDCモーター(駆動モーター)310を制御
(PID制御)して、給紙トレイの原稿を搬送し、イメージ読取窓に通過させる。例えば
、モーター制御部111は、DCモーター310を定速で駆動することができる。
【0032】
また、モーター制御部111は、キャリッジ駆動機構のモーター(不図示)を制御して
、キャリッジ200の往復移動を制御する。例えば、モーター制御部111は、キャリッ
ジ200を定速で駆動することができる。
【0033】
読取制御部112は、イメージセンサー220による、画像読み取りを制御する。具体
的には、読取制御部112は、ADF300のDCモーター310の回転(すなわち、第
1エンコーダーの出力値)、或いは、キャリッジ駆動機構のモーターの回転(すなわち、
第2エンコーダーの出力値)に基づいて、シフトパルスをイメージセンサー220に対し
て出力する。
【0034】
なお、図2は、画像読取制御の概要について説明するためのタイミングチャートである

【0035】
図示するように、読取制御部112は、例えば、ADF300を用いて画像読み取りを
行う場合には、第1エンコーダーの出力値(現在位置)が設定値(図示する例では「4×
(整数N)−1」)に一致するタイミング(例えば、ENC Aの立ち下がりタイミング
)を、シフトパルスの出力予定タイミング(図示する「A」、「B」、・・・、「M」の
位置)とする。また、読取制御部112は、ADF300を用いずに原稿台に載置された
原稿を読み取る場合には、第2エンコーダーの出力値(現在位置)が設定値(図示する例
では「4×(整数N)−1」)に一致するタイミング(例えば、ENC Aの立ち下がり
タイミング)を、シフトパルスの出力予定タイミング(図示する「A」、「B」、・・・
、「M」の位置)とする。
【0036】
ただし、読取制御部112は、シフトパルスの出力予定タイミングであっても、前回に
シフトパルスを出力してから、規定シフト時間が経過してない場合(図示する「A」、「
E」、「F」、「G」、「H」、「I」、「J」、「K」、「L」、「M」)には、シフ
トパルスの出力を延期し、後で出力すべきシフトパルスとして記憶しておく(例えば、シ
フトパルスの出力残数をインクリメントする)。なお、規定シフト時間とは、イメージセ
ンサー220の光電変換素子に蓄積された電荷(例えば、1ライン分)が、シフトレジス
ターを経てコントローラー100まで転送されるのに必要な最低限の時間とする。また、
シフトパルスを出力してからの経過時間は、所定のタイマーを用いて計測される。
【0037】
また、読取制御部112は、シフトパルスの出力予定タイミングであり、かつ、前回に
シフトパルスを出力してから、規定シフト時間が経過している場合には、シフトパルスを
出力する(図示する「A’」、「B’」、「C’」、「D’」、「E’」、「G’」、「
I’」、「J’」、「K’」、「L’」)。このとき、読取制御部112は、シフトパル
スの出力残数をデクリメントするとともに、シフトパルスを出力してからの経過時間を計
測するタイマーをリセットする。
【0038】
ところで、図2に示す例のように、ADF300のDCモーター310、或いは、キャ
リッジ駆動機構のモーターが、想定以上に高速になる場合がある(例えば、タイミングD
からタイミングIまでの期間)。かかる場合には、もちろん、前回にシフトパルスを出力
してから、次にシフトパルスの出力が予定されているときまでの間隔(以下では「シフト
予定周期T」とよぶ)は短くなる。
【0039】
そうすると、シフト予定周期Tの期間内においてシフトパルスを1回も出力できなくな
る場合がある(図示する網掛け部分のFからGまでの期間と、HからIまでの期間)。
【0040】
通常は、シフト予定周期Tの期間内において(すなわち、シフトパルスの出力予定タイ
ミング毎に)、1回はシフトパルスを出力しなければ、読み取り画像に欠落が生じてしま
う。
【0041】
そこで、本実施形態の読取制御部112は、シフト予定周期Tの期間内においてシフト
パルスを1回も出力できない場合であっても、読み取り画像に欠落が生じないように、後
で出力可能なときにシフトパルスを出力する。
【0042】
具体的には、読取制御部112は、図2に示すように、シフト予定周期Tの期間内にお
いて追加のシフトパルスを出力できる場合(例えば、図示するドット部分のJからKまで
の期間)に、過去に延期された(タイミングFで延期された)分のシフトパルスを出力す
る(図示する「F’」)。もちろん、この場合にも、読取制御部112は、シフトパルス
の出力残数をデクリメントするとともに、シフトパルスを出力してからの経過時間を計測
するタイマーをリセットする。
【0043】
こうして、本実施形態の読取制御部112は、ADF300のDCモーター310、或
いは、キャリッジ駆動機構のモーターが、想定以上に高速になる場合であっても、出力で
きるタイミングをみつけてシフトパルスを出力するため、読み取り画像に欠落が生じない

【0044】
なお、読取制御部112は、シフトパルスの出力タイミングでイメージセンサー220
に対して読み出しクロックの供給を行い、シフトレジスターに格納されている電荷のコン
トローラー100(A/D変換部120)への出力を制御する。
【0045】
このとき、イメージセンサー220から出力されたデータ(アナログデータ)は、A/
D変換部120でデジタルデータに変換され、データ処理部130によって各種補正が施
される。
【0046】
それから、読取制御部114は、データ処理部130に指示信号を通知して、各種補正
が施されたデータを記憶部140に格納(バッファリング)する。
【0047】
また、読取制御部114は、ADF300を用いた原稿の読み取り時には、キャリッジ
200をイメージ読取窓の下に停止させた状態にしておく。
【0048】
かかるメイン制御部110は、主制御装置であるCPUと、プログラム等が記憶された
ROMと、メインメモリーとしてデータ等を一時的に格納するRAMと、を備えたコンピ
ューターで構成される。ただし、各処理を専用に行うように設計されたハードウェア(例
えば、ASIC)で構成することもできる。
【0049】
本実施形態が適用された画像読取装置50は、以上のような構成からなる。ただし、こ
の構成は、本願発明の特徴を説明するにあたって主要構成を説明したのであって、上記の
構成に限られない。また、一般的な画像読取装置が備える他の構成を排除するものではな
い。また、A/D変換部120は、キャリッジ200内の基板に搭載されていてもよい。
【0050】
また、上記した各構成要素は、画像読取装置50の構成を理解容易にするために、主な
処理内容に応じて分類したものである。構成要素の分類の仕方や名称によって、本願発明
が制限されることはない。画像読取装置50の構成は、処理内容に応じて、さらに多くの
構成要素に分類することもできる。また、1つの構成要素がさらに多くの処理を実行する
ように分類することもできる。また、各構成要素の処理は、1つのハードウェアで実行さ
れてもよいし、複数のハードウェアで実行されてもよい。
【0051】
次に、上記のように構成される画像読取装置50の特徴的な動作について説明する。
【0052】
<画像読取制御における前処理>
図3は、画像読取制御における前処理を説明するためのフローチャートである。
【0053】
読取制御部112は、所定のタイミングで本フローを開始する。例えば、読取制御部1
12は、原稿の読み取りを開始する指示がされると、本フローを開始する。
【0054】
本フローを開始すると、読取制御部112は、画像読取制御を行うためのパラメータを
初期化する(ステップS101)。具体的には、読取制御部112は、最初にシフトパル
スを出力すべき位置(第1エンコーダー或いは第2エンコーダーの設定値)を初期化する
(図2に示す例では「3」)。また、読取制御部112は、シフトパルスの出力残数をリ
セット(図示する例では「0」)する。また、読取制御部112は、規定シフト時間(イ
メージセンサー220の光電変換素子に蓄積された電荷が、コントローラー100まで転
送されるのに必要な最低限の時間)を設定する。
【0055】
画像読取制御を行うためのパラメータを初期化後、読取制御部112は、本フローを終
了する。
【0056】
本実施形態の読取制御部112は、画像読取制御に先立って上記フローの処理を行うこ
とで、適切に画像の読み取りを行うことができる。
【0057】
<画像読取制御における主処理>
図4は、画像読取制御における主処理を説明するためのフローチャートである。
【0058】
読取制御部112は、上記の前処理が終了後、画像読取制御を開始する。そして、画像
読取制御を開始すると、モーター制御部111は、ADF300のDCモーター310、
或いは、キャリッジ駆動機構のモーターの駆動を開始する。ここで、DCモーター310
、或いは、キャリッジ駆動機構のモーターの回転量に応じて、原稿読み取りの現在位置(
すなわち、第1エンコーダーの出力値、或いは、第2エンコーダーの出力値)は変化する
(図2に示す例では増加する)。
【0059】
そして、読取制御部112は、画像読取制御が開始後、所定のタイミングで本フローを
開始する。例えば、読取制御部112は、所定間隔(例えば、数ms間隔)で繰り返し本
フローを開始する。或いは、読取制御部112は、原稿読み取りの現在位置が変化する毎
に、本フローを開始するようにしてもよい。
【0060】
本フローを開始すると、まず、読取制御部112は、原稿読み取りの現在位置(すなわ
ち、第1エンコーダーの出力値、或いは、第2のエンコーダーの出力値)を特定する(ス
テップS201)。
【0061】
それから、読取制御部112は、ステップS201で特定した現在位置が、シフトパル
スを出力すべき位置(上述した「シフトパルスの出力予定タイミング」)であるか否か判
別する(ステップS202)。具体的には、読取制御部112は、ステップS201で特
定した現在位置と、シフトパルスを出力すべき位置(シフトパルスの出力予定タイミング
)として設定された値(例えば、上記の前処理で設定された設定値)と、を比較する。そ
して、読取制御部112は、現在位置が、シフトパルスを出力すべき位置(例えば、「4
×(整数k)−1」)に一致している場合には、シフトパルスを出力すべき位置と判定す
る。一方、読取制御部112は、現在位置がシフトパルスを出力すべき位置(例えば、「
4×(整数k)−1」)に到達していない場合には、シフトパルスを出力すべき位置では
ないと判定する。
【0062】
ここで、シフトパルスを出力すべき位置と判定された場合には(ステップS202;Y
es)、読取制御部112は、次回にシフトパルスを出力すべき位置を設定する(ステッ
プS203)。例えば、読取制御部112は、第1エンコーダー或いは第2エンコーダー
の設定値を、「4×(整数k+1)−1」とする。
【0063】
また、読取制御部112は、シフトパルスの出力残数(以降、出力すべきシフトパルス
の残数)をインクリメントし、所定の記憶装置に格納する(ステップS204)。なお、
ステップS203、S204の処理は、図2に示す例では、タイミング「A」〜「M」で
行われる。
【0064】
その後、読取制御部112は、処理をステップS205へ移行する。
【0065】
一方、ステップS202において、シフトパルスを出力すべき位置ではないと判定され
た場合には(ステップS202;No)、読取制御部112は、ステップS203、S2
04の処理を省略し、処理をステップS205へ移行する。
【0066】
処理がステップS205へ移行すると、読取制御部112は、前回にシフトパルスを出
力してから、規定シフト時間(上記の前処理で設定された規定シフト時間)が経過してい
るか否か判別する(ステップS205)。具体的には、読取制御部112は、前回にシフ
トパルスを出力したときからの経過時間を計測しているタイマーの値を取得して、規定シ
フト時間が経過しているか否か判別する。但し、最初のシフト信号を出力するタイミング
(図2に示す例では現在位置「3」)では、前回のシフトパルスがないため前回にシフト
パルスを出力してからの経過時間が測定できない。従って最初のシフト信号を出力するタ
イミングではステップS205の判定を実施せずに、2回目以降のシフト信号を出力する
タイミング(図2に示す例では現在位置「7」以降)でステップS205の判定を実施す
る。
【0067】
ここで、読取制御部112は、規定シフト時間が経過している場合には(ステップS2
05;Yes)、次に、シフトパルスの出力残数が「1」以上であるか否か判別する(ス
テップS206)。具体的には、読取制御部112は、所定の記憶装置(例えば、カウン
ター)からシフトパルスの出力残数を読み出し、読み出した値が「1」以上であるか否か
判別する。
【0068】
そして、読取制御部112は、シフトパルスの出力残数が「1」以上である場合には(
ステップS206;Yes)、シフトパルスをイメージセンサー220に対して出力する
(ステップS207)。なお、ステップS207の処理は、図2に示す例では、タイミン
グ「A’」〜「G’」、「I’」〜「L’」等で行われる。
【0069】
もちろん、ここでのシフトパルスの出力タイミングで、読取制御部112は、イメージ
センサー220に対して読み出しクロックの供給を行い、シフトレジスターに格納されて
いる電荷のコントローラー100(A/D変換部120)への転送を開始する。
【0070】
それから、読取制御部112は、シフトパルスの出力残数をデクリメントし、所定の記
憶装置に格納する(ステップS208)。また、読取制御部112は、シフトパルスを出
力する毎に、シフトパルスを出力してからの経過時間を計測するタイマーをリセットする

【0071】
その後、読取制御部112は、本フローを終了する。
【0072】
一方、読取制御部112は、ステップS205で規定シフト時間が経過していないと判
定された場合(ステップS205;No)や、ステップS206でシフトパルスの出力残
数が「0」である場合(ステップS206;No)には、シフトパルスの出力を延期して
、本フローを終了する。なお、図2に示す例では、タイミング「A」、「D」〜「J」、
「L」、「M」等で、シフトパルスを出力せずに、本フローを終了する。
【0073】
以上のように、本実施形態の画像読取装置50は、シフトパルスの出力予定タイミング
であっても(上記のステップS202;Yes)、前回にシフトパルスを出力してから規
定シフト時間が経過してない場合(上記のステップS205;No)には、シフトパルス
の出力を延期し、後で出力すべきシフトパルスとして記憶している(上記のステップS2
04)。
【0074】
これとともに、本実施形態の画像読取装置50は、前回にシフトパルスを出力してから
規定シフト時間が経過さえしていれば(上記のステップS205;Yes)、シフトパル
スの出力残数に応じて(上記のステップS206;Yes)、シフト予定周期Tの期間内
に何度でもシフトパルスを出力できる(上記のステップS207、図2に示す例ではタイ
ミング「J’」、「F’」)。
【0075】
そのため、本実施形態の画像読取装置50は、原稿の読み取り速度が想定以上に高速に
なり、予定されていたタイミングでシフトパルスを出力できなかったとしても、その分の
シフトパルスを後で出力できる。その結果、読み取り画像に欠落が生じなくなる。
【0076】
なお、上記実施形態におけるフローの各処理単位は、画像読取装置50を理解容易にす
るために、主な処理内容に応じて分割したものである。処理ステップの分類の仕方やその
名称によって、本願発明が制限されることはない。画像読取装置50が行う処理は、さら
に多くの処理ステップに分割することもできる。また、1つの処理ステップが、さらに多
くの処理を実行してもよい。また、処理ステップの順序についても、これに制限されるも
のではなく、可能な限り変更することができる。
【0077】
また、上記の実施形態は、本発明の要旨を例示することを意図し、本発明を限定するも
のではない。多くの代替物、修正、変形例は当業者にとって明らかである。
【0078】
なお、以下では、参考までに、従来の画像読取制御について説明する。図5は、従来の
画像読取制御の概要について説明するためのタイミングチャートである。
【0079】
図示するように、従来の画像読取制御では、シフトパルスの出力予定タイミング「A」
〜「M」であっても、前回にシフトパルスを出力してから規定シフト時間が経過してない
場合には、その規定シフト時間が経過してからシフトパルスを出力している。
【0080】
しかし、本実施形態の画像読取装置50とは異なり、シフト予定周期Tの期間内におい
てシフトパルスを1回も出力できない場合には(図示する網掛け部分のFからGまでの期
間と、HからIまでの期間)、出力できなかったシフトパルスを後で出力することができ
ない。そのため、従来の画像読取装置50では、読み取り画像に欠落が生じてしまう。
【0081】
これに対し、本願の上記実施形態の画像読取制御では、シフトパルスの出力残数を保持
しておくことによって、シフト予定周期Tの期間内にシフトパルスを1回も出力できない
場合であっても、後で出力することができる。そのため、読み取り画像に欠落が生じない

【符号の説明】
【0082】
50・・・画像読取装置、100・・・コントローラー、110・・・メイン制御部、1
11・・・モーター制御部、112・・・読取制御部、120・・・A/D変換部、13
0・・・データ処理部、140・・・記憶部、150・・・出力部、200・・・キャリ
ッジ、210・・・LED光源、220・・・イメージセンサー、300・・・ADF、
310・・・DCモーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モーターにより駆動される機構を備える画像読取装置であって、
光電変換素子に蓄積された電荷をシフトパルスによって転送する画像読取部と、
前記モーターの回転に基づいて、前記シフトパルスの出力タイミングを制御するシフト
パルス制御部と、を備え、
前記シフトパルス制御部は、
前回にシフトパルスを出力してから前記電荷の転送に必要な規定時間が経過していない
場合には、シフトパルスの出力を延期し、後で出力すべきシフトパルスとして記憶してお
く、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像読取装置であって、
前記シフトパルス制御部は、
前回にシフトパルスを出力してから、次にシフトパルスの出力が予定されているときま
でに、追加のシフトパルスが出力可能な場合には、延期していた前記シフトパルスを出力
する、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像読取装置であって、
シフト出力残数カウンターをさらに備え、
前記シフトパルスの出力が予定されているタイミングで前記シフト出力残数カウンター
をインクリメントし、
前記規定時間が経過した場合であって、前記シフト出力残数カウンターが1以上である
場合には、シフトパルスを出力して、前記シフト出力残数カウンターをデクリメントする

ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項4】
モーターにより駆動される機構を備える画像読取装置における画像読取方法であって、
光電変換素子に蓄積された電荷をシフトパルスによって転送する画像読取ステップと、
前記モーターの回転に基づいて、前記シフトパルスの出力タイミングを制御するシフト
パルス制御ステップと、を行い、
前記シフトパルス制御ステップでは、
前回にシフトパルスを出力してから前記電荷の転送に必要な規定時間が経過していない
場合には、シフトパルスの出力を延期し、後で出力すべきシフトパルスとして記憶してお
く、
ことを特徴とする画像読取方法。
【請求項5】
コンピューターを、モーターにより駆動される機構を備える画像読取装置として機能さ
せるプログラムであって、
光電変換素子に蓄積された電荷をシフトパルスによって転送する画像読取ステップと、
前記モーターの回転に基づいて、前記シフトパルスの出力タイミングを制御するシフト
パルス制御ステップと、を前記コンピューターに実行させ、
前記シフトパルス制御ステップでは、
前回にシフトパルスを出力してから前記電荷の転送に必要な規定時間が経過していない
場合には、シフトパルスの出力を延期し、後で出力すべきシフトパルスとして記憶してお
く、
ことを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−169963(P2012−169963A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30533(P2011−30533)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】